JP4728907B2 - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents
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Description
[1] プラスチック基材(I)上に、無機化合物からなる蒸着膜層(II)、コーティング膜層(III)を順次設けた構成のガスバリア性積層フィルムにおいて、前記コーティング膜層(III)を形成するコーティング用組成物が、
水酸基を有する水溶性高分子(A)、
カルボキシル基を有する水溶性高分子(B)、
金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物(C)、および
1分子中に金属酸化物と結合を形成できる官能基と、カルボキシル基と結合を形成できる官能基とをそれぞれ1つ以上有する化合物(D)を含み、
前記(D)において、金属酸化物と結合を形成できる官能基がアルコキシシリル基であり、カルボキシル基と結合を形成できる官能基がアミノ基であり、
前記(A)と前記(B)の重量比が97/3から3/97であり、
前記(C)の含有量が、前記(A)と前記(B)の合計100重量部に対し(以下、同様)、1重量部以上450重量部以下であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
[2] 前記コーティング用組成物が、さらに、エステル化触媒(E)を含み、その含有量が、0.01重量部以上100重量部以下である前記[1]記載のガスバリア性積層フィルム。
[3] 前記(D)の含有量が、1重量部以上20重量部以下である前記[1]または[2]のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
[4] 前記(E)が、無機酸の金属塩、有機酸の金属塩、有機リン化合物、カルボン酸およびその誘導体、スルホン酸およびその誘導体、鉱酸の有機アンモニウム塩またはピリジニウム塩、シアノ基含有有機化合物、イソシアノ基含有有機化合物、ケテン誘導体、ジカルコゲニド化合物、塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、およびヘキサクロロアセトンからなる群から選ばれる1種以上の化合物である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
[5] 前記(A)が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、および糖類からなる群から選ばれる1種以上の水溶性高分子である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
[6] 前記(B)が、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、またはその部分中和物のいずれかである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
[7] 前記(C)が、アルコキシシラン、アルコキシジルコニウム、アルコキシアルミニウム、およびアルコキシチタンからなる群から選ばれる1種以上である前記[1]〜[6]のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
[8] 前記(C)が、アルコキシシランの縮合物、アルコキシジルコニウムの縮合物、アルコキシアルミニウムの縮合物およびアルコキシチタンの縮合物から選ばれる1種以上である前記[1]〜[7]のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
[9] 前記(C)が、水および触媒の存在下でゾル−ゲル反応により得られる金属酸化物である前記[1]〜[8]のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
本発明におけるガスバリア性とは、酸素、水蒸気、その他被コーティング材料の品質劣化を促すガスを遮断することを指す。特に食品、医療等の包装材料や電子材料においては、酸素ガスのバリア性に優れていることが求められている。本発明においては、コーティング膜の酸素透過性及び水蒸気透過性を測定することにより、コーティング膜のガスバリア性を評価した。
プラスチック基材(I)は、プラスチックフィルムであれば、特に制限はなく、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンコポリマーなどのポリオレフィン樹脂フィルム、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等のエンプラフィルムなどが挙げられる。また、これらの樹脂の混合物からなるフィルム、またはこれらのフィルムの積層体であってもよい。これらのフィルムは未延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよい。更に、プラスチック基材(I)の表面をコロナ処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、アルカリ処理等の表面改質を行い、被膜の密着性を向上させることも可能である。
本発明において用いられる蒸着膜層(II)は、無機化合物からなる。具体的には、Si,Ta,Nb,Al,In,W,Sn,Zn,Ti,Cu,Ce,Ca,Na,B,Pb,Mg,P,Ba,Ge,Li,K,Zrから選ばれる1種以上を含む酸化物または窒化物または酸化窒化物を主成分とすることが望ましい。特に、コーティング膜層(III)との密着性及び親和性、製造の安定性、安全性やコストの観点から、Si,Alの酸化物または窒化物または酸化窒化物がより好ましい。
[水酸基を有する水溶性高分子(A)]
本発明において用いられる水酸基を有する水溶性高分子(A)は、水酸基をその高分子鎖中に少なくとも2個含む水溶性を示す高分子である。好ましくは、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコールを含む共重合体、セルロース類およびその他の糖類からなる群から選ばれる1種以上の化合物である。これらは単独または2種以上用いてもよい。
1)エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2以上30以下のオレフィン類
2)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などの炭素数3以上30以下の不飽和カルボン酸類、そのエステル、塩、無水物およびアミド
3)アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの炭素数3以上30以下の不飽和ニトリル類
4)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどの炭素数3以上30以下のビニルエーテル類
水酸基を有する水溶性高分子(A)の上記例示のうち、ポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。ケン化度は100%に近いほどガスバリア性の観点からは好ましいが、通常は90%以上、好ましくは95%以上である。数平均重合度は通常50以上5000以下である。
本発明におけるカルボキシル基を有する水溶性高分子(B)は、カルボキシル基をその高分子鎖中に少なくとも2個含む水溶性を示す高分子であり、たとえばポリカルボン酸である。カルボキシル基を有する水溶性高分子(B)は、好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸またはその部分中和物であり、さらに好ましくは分子内に少なくも2個以上のアクリル酸またはメタアクリル酸単位を有するポリマーであり、より好ましくは、アクリル酸またはメタアクリル酸の単一重合体(ポリアクリル酸またはポリメタアクリル酸)、アクリル酸とメタアクリル酸の共重合体、また他のモノマー単位を含む共重合体でである。これらは単独または2種以上用いてもよい。
本発明における金属アルコキシドは、下記式(1)で表されるものを指す。
(R1)xM(OR2)y (1)
式中、R1は、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。R2は、炭素数1以上6以下、好ましくは炭素数1以上4以下の低級アルキル基を表す。xおよびyは、x+y=4かつ、xは2以下となる整数を表す。Mは、金属であり、具体的には、珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウムなどであり、それらを組み合わせて使ってもよい。なかでも珪素化合物は、比較的安価で入手しやすく、反応が緩やかに進行するため、工業的な利用価値が高い。また、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物(C)は、水および触媒の添加により、ゾルゲル反応することで、金属酸化物となる化合物であってもよい。
CL9
本発明において、金属アルコキシドの加水分解縮合物としては、アルコキシシランの縮合物、アルコキシジルコニウムの縮合物、アルコキシアルミニウムの縮合物、およびアルコキシチタンの縮合物が好ましい。
本発明で用いられる、1分子中に金属酸化物と結合を形成できる官能基と、カルボキシル基と結合を形成できる官能基とをそれぞれ1つ以上有する化合物(D)(以下、化合物(D)と略す。)は、有機材料である水酸基を有する水溶性高分子(A)およびカルボキシル基を有する水溶性高分子(B)と、無機材料である金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物(C)との材料分散性を向上するために添加し、その使用により、より一層透明性の高い塗膜を得ることができる。
本発明におけるエステル化触媒(E)は、酸とアルコールからエステルを合成する反応を促進する化合物のことである。酸は、有機酸または無機酸である。このような化合物であれば本発明のエステル化触媒(E)として用いることができる。好ましくは無機酸の金属塩、有機酸の金属塩、有機リン化合物、カルボン酸およびその誘導体、スルホン酸およびその誘導体、鉱酸の有機アンモニウム塩またはピリジニウム塩、シアノ基含有有機化合物、イソシアノ基含有有機化合物、ケテン誘導体、ジカルコゲニド化合物、塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、ヘキサクロロアセトンが挙げられる。
1)リン酸モノブチル、リン酸ジオクチル、リン酸ジブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸オクチルジフェニルなどの炭素数1以上50以下のリン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル、
2)亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリフェニルなどの炭素数1以上50以下の亜リン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル
3)トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(スルホナートフェニル)ホスフィンなどの炭素数1以上50以下の脂肪族または芳香族ホスフィン
4)トリブチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシドなどの炭素数1以上50以下の脂肪族または芳香族ホスフィンオキシド
5)クロロリン酸ジフェニル、二塩化トリフェニルホスフィン、N,N’−ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)クロロホスフィンなどの炭素数1以上50以下の有機基を含むハロゲン化リン化合物
1)ギ酸、酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、ラウリン酸、安息香酸、o−トルイル酸などの脂肪族または芳香族カルボン酸類
2)マレイン酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸などの脂肪族または芳香族ジカルボン酸類
3)クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、2−ブロモプロピオン酸、o−クロロ安息香酸などのハロゲン化脂肪族または芳香族カルボン酸類
4)上記1)〜3)に示したカルボン酸類をアミド基に変換したカルボン酸アミド類
5)上記1)〜3)に示したカルボン酸類をイミド基に変換したカルボン酸イミド類
6)上記1)〜3)に示したカルボン酸類と1級、2級、または3級のアミン類との塩、具体的には、カルボン酸アンモニウム塩類やカルボン酸ピリジニウム塩である。
7)上記1)〜3)に示したカルボン酸類の酸ハロゲン化物類
8)上記1)〜7)の化合物に、ニトロ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基などの他の官能基が結合した化合物
1)メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの脂肪族または芳香族スルホン酸類
2)クロロメタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸などハロゲン化脂肪族または芳香族スルホン酸類
3)上記1)と2)に示したスルホン酸類をアミド基に変換したスルホン酸アミド類
4)上記1)〜3)に示したスルホン酸類をイミド基に変換したスルホン酸イミド類
5)上記1)〜3)に示したスルホン酸類と1級、2級、または3級のアミン類との塩、具体的には、スルホン酸アンモニウム塩類やスルホン酸ピリジニウム塩である。
6)上記1)〜3)に示したスルホン酸類の酸ハロゲン化物類
7)上記4)に示したスルホン酸イミド類と1級、2級、または3級のアミン類との塩、具体的には、スルホン酸イミドアンモニウム塩類やスルホン酸イミドピリジニウム塩である。
8)上記1)〜7)の化合物に、ニトロ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基などの他の官能基が結合した化合物
1)硫酸ジフェニルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムクロリド、硫酸ピリジニウムなどの鉱酸の有機アンモニウム塩またはピリジニウム塩
2)プロピオニトリル、ベンゾニトリル、トリクロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリルp−クロロベンゾニトリル、シアノピリジン、トリス(2−シアノエチル)ニトロメタン、シアノメチルベンゼンスルホナート、ジシアノジアミド、1−シアノイソウレア、N−シアノホルムアミド、N−シアノアセトアミド、1−シアノベンゾトリアゾール、1−ピロリジンカルボニトリル、4−モルホリンカルボニトリル、シアン酸−p−トリル、テトラエチルアンモニウムシアナート、ピリジニウムシアナートなどのシアン酸アンモニウム塩またはピリジニウム塩などのシアノ基含有有機化合物
3)イソシアン化シクロヘキシル、イソプロピルイソシアニド、2,6−ジメチルフェニルイソシアニド、2−モルホリノエチルイソシアニド、ジエチルイソシアノメチルホスホナート、エチルイソシアノアセテートなどのイソシアノ基含有有機化合物
4)ケテン、ジケテン、ケテンジエチルアセタール、1,1−ビス(メチルチオ)エチレン、2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンなどのケテン誘導体
5)2,2’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルジセレニドなどのジカルコゲニド化合物
6)塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、ヘキサクロロアセトン
本発明におけるコーティング用組成物は、水酸基を有する水溶性高分子(A)、カルボキシル基を有する水溶性高分子(B)、金属アルコキシドおよび/または金属アルコキシドの加水分解縮合物(C)、1分子中に金属酸化物と結合を形成できる官能基と、カルボキシル基と結合を形成できる官能基とをそれぞれ1つ以上有する化合物(D)を必須成分とする。以下、これらの成分の配合を説明する。
化合物(D)の使用量は、水酸基を有する水溶性高分子(A)、カルボキシル基を有する水溶性高分子(B)との合計100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下が好ましく、より好ましくは、1重量部以上15重量部以下、よりさらに好ましくは、1重量部以上10重量部以下である。本発明で用いられる、1分子中に金属酸化物と結合を形成できる官能基と、カルボキシル基と結合を形成できる官能基とをそれぞれ1つ以上有する化合物(D)が少なすぎると、塗膜の透明性が低下し、多すぎると、組成物の保存安定性が低下し、ゲル化しやすくなる。
エステル化触媒(E)の使用量は、水酸基を有する水溶性高分子(A)とカルボキシル基を有する水溶性高分子(B)との合計100重量部に対して、0.01重量部以上100重量部以下である。好ましくは、0.1重量部以上60重量部以下である。エステル化触媒(E)が少なすぎると、耐水性が不十分であり、多すぎると、塗膜の透明性が低下する。上記範囲内であれば、ガスバリア性および耐擦傷性のバランスに優れたハードコートを得ることができる。
本発明のコーティング用組成物(III)は、さらに以下の1)〜4)に挙げる他の成分を含んでもよい。
コーティング用組成物(III)は、金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応における反応を促進させる目的で、以下に示すような加水分解・重合反応の触媒となりうるものを含んでいてもよい。
金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物(C)における金属アルコキシドを加水分解させる目的で、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物(C)に水を添加してもよい。添加する水の量は、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解重縮合物に含まれる総アルコキシ基に対して、10モル当量以下であり、好ましくは4モル当量以下であり、より好ましくは3モル当量以下である。
金属アルコキシド類の加水分解重縮合時の好ましい反応温度は1℃以上100℃以下であり、より好ましくは20℃以上60℃以下であり、反応時間は1時間以上50時間以下の程度が好ましい。
コーティング用組成物(III)は、さらに金属酸化物微粒子を含んでいてもよい。金属酸化物を添加することで、ハードコートの耐擦傷性が向上する。金属酸化物微粒子とは、珪素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、亜鉛、アンチモンから選ばれる少なくとも一つ以上の元素からなる酸化物微粒子を指し、BET法における平均粒子径が、耐擦傷性をさらに向上させる観点で1nm以上、透明性をさらに向上させる観点で100nm以下が望ましい。金属酸化物微粒子の具体例として下記がある。
溶媒を含むコーティング用組成物
コーティング用組成物(III)は、溶媒を含んでもよい。溶媒を含むことにより、コーティング用組成物(III)からなるコート材料を樹脂表面に塗布する工程を容易にするので好ましい。用いることのできる溶媒は、水系溶媒または有機溶媒のどちらでもよく、本発明のコーティング用組成物を溶解または分散させるものであれば特に限定はない。
コーティング膜層(III)は、本発明のコーティング用組成物の膜状物を形成しこれを熱処理することにより製造される。
本発明のガスバリア性積層フィルムは、プラスチック基材(I)、無機化合物からなる金属薄膜層(II)、およびコーティング膜層(III)とからなり、(I)/(II)/(III)の順の積層構造を有する。
本発明における接着剤層(IV)は、透明であれば公知の物を用いることができる。具体的にはエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シアノアクリレート系の瞬間接着剤、変性アクリレート系接着剤などを例としてあげることができる。
本発明における粘着材層(V)は、プラスチック基材(I)に金属薄膜層(II)、コーティング膜層(III)を積層した透明ガスバリアフィルムの二枚を貼り合せるのに用いられるほか、該ガスバリアフィルムの最外層に後述する機能性透明層(VI)を積層する場合に必要に応じて用いられる。また複数の機能性透明層を貼り合せる時にも用いることができる。本発明の粘着材層(V)は、透明であれば、公知の粘着材を制限無く用いることが出来る。具体的には、特開平10−217380号公報や特開2002−323861号公報等に記載されているものを採用することが出来る。
以下に、本発明の実施形態例を示す。尚、当然のことながら本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術範囲において、種々の形態に変更することが可能である。コート膜を設けた積層フィルムの物性評価は以下の方法で行った。尚、以下に示す実施例のうち実施例1,2,5,6は参考例として示すものである。
酸素の透過性を、23℃、90%RH雰囲気下で、酸素透過率測定装置(MOCON社製 OXTRAN 2/21MH)を用いて測定した。測定終了後、積層フィルムを装置から取り出し、湿熱試験(温度40℃、湿度90%の条件下24時間放置)を行った。その後再び、積層フィルムを装置にセットし、酸素透過率を測定した。
水蒸気の透過性を、40℃、90%RH雰囲気下で、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 PERMATRAN W3/31)を用いて測定した。
シリカ(SiO2)含有率(wt%)(以下、SiO2含有率と略す)は、本発明の実施例および比較例で用いた(C)の成分であるTMOSが、100%反応してSiO2になったと仮定して、以下の通りに算出した。
1)TMOSの分子量;152、およびSiO2の分子量;60より、
SiO2/TMOS=60/152=0.395
すなわち、TMOSの添加量に0.395を乗じた値が、コーティング膜層中のSiO2含量となる。
2)[A]、[B]、[TMOS]、[D]、および[E]にそれぞれの成分の重量部を下記式に代入する。
SiO2含有率={[TMOS]*0.395/([A]+[B]+([TMOS]*0.395)+[D]+[E])}×100
1)ポリビニルアルコール水溶液
(A)の成分であるポリビニルアルコール(以後、PVAと略す。和光純薬工業製ポリビニルアルコール500、完全ケン化型、平均重合度約400〜600)5重量部に対して、蒸留水95重量部を加えPVAを加熱下溶解することでPVA5重量%水溶液を得た。
(B)の成分であるポリアクリル酸(以後、PAAと略す。和光純薬工業製ポリアクリル酸水溶液(25%)、8000〜12000cP(30℃))20重量部に対して、蒸留水80重量部を加えPAA5重量%水溶液を得た。
PVA5重量%水溶液1400重量部、PAA5重量%水溶液600重量部を混合し、室温で10分攪拌した。これを溶液Pとする。一方、(C)の成分であるテトラメトキシシラン(以後、TMOSと略す。)341重量部と、(E)の成分であるジシアノジアミド(以後、DCDAと略す。)11.4重量部とメタノール300重量部とを混合し、室温で10分攪拌した。これを溶液Q−1とする。更に、溶液Pと溶液Q−1を混合後、室温で1.5時間攪拌し、コーティング用組成物を得た。ここで、SiO2含有率も求めた。
厚み125μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、シリコーン樹脂コート剤(商品名:SHC900 GE東芝製)を厚み2μmとなるようにグラビアコーティングし、120℃で15分加熱し、コート膜を得た。続いて、シリコーン樹脂層上に、CVD法により、膜厚20nmとなるように窒化珪素(SiN)膜の作製を行った。以後、ここで得られたものをPET/SiN積層膜と略記する。
上記方法で作製したPET/SiN積層膜上に、上記の方法で調製したコーティング用組成物を、バーコーターを用いて、硬化後の厚みが2μmとなるように塗布した。その後、基板が着色、変形しないように、低温の110℃で2時間加熱し、コート膜を設けた積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの酸素透過率と水蒸気透過率を評価した。結果を表1に示す。
TMOSを304重量部とメタノール300重量部とを混合し、室温で10分攪拌した。これを溶液Q−2とする。実施例1で用いた同量の溶液Pと溶液Q−2を混合後、室温で1.5時間攪拌し、コーティング用組成物を得た。このコーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にして、積層フィルムを得て、それを評価した。結果を表1に示す。
PAA5重量%水溶液1400重量部を攪拌しながら、(D)の成分である3−アミノプロピルトリメトキシシラン(以後、APTMOSと略す。)とエタノールを重量比1:9で混合した溶液を52重量部滴下し、その後室温で30分攪拌した。続いて、PVA5重量%水溶液600重量部、およびDCDA22.3重量部加えて、さらに10分間攪拌した。続いて、TMOS371重量部を添加し、室温で1.5時間攪拌し、コーティング用組成物を得た。このコーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にして、積層フィルムを得て、それを評価した。結果を表1に示す。
PAA5重量%水溶液1400重量部を攪拌しながら、APTMOSとエタノールを重量比1:9で混合した溶液を52重量部滴下し、その後室温で30分攪拌した。続いて、PVA5重量%水溶液を600重量部加えて、さらに10分間攪拌した。続いて、TMOS312重量部を添加し、室温で1.5時間攪拌し、コーティング用組成物を得た。このコーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にして積層フィルムを得て、それを評価した。結果を表1に示す。
実施例1〜4と同様にして、表1に示す各成分からコーティング用組成物を得た。得られたそれらを用いて、実施例1と同様にして各積層フィルムを得て、それらを評価した。結果を表1に示す。
実施例1で作製したPET/SiN積層膜上に、コーティング膜層を積層せず、そのまま実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
実施例1の4)項において、PET/SiN積層膜の代わりに、PET/Al2O3積層膜(東セロ(株)製TL−PET、膜厚12μm)を用いた以外は、全て実施例1と同様にした。得られた積層フィルムの、湿熱試験に供する前の酸素透過率を評価した。評価結果を表2に示す。
1)シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルムの作製
ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーとの付加共重合体として、テトラシクロ〔4.4.12,5.17,10.0〕−ドデカ−3−エン(TCD−3)とエチレンとのランダム共重合体(モル比=30:70、ガラス転移温度125℃、平均屈折率1.54、吸水率0.01%)を用いて、一軸押出機(径40mm)にて、シリンダ温度280℃の条件で溶融押出し成形を行い、膜厚100μmのシクロオレフィンコポリマー(COC)フィルムを作製した。
2)COC/酸化アルミニウム積層膜の作製
上記方法で作製したCOCフィルムの上面に、反応性蒸着により、膜厚10nmの酸化アルミニウム(Al2O3)膜層を作製した。
3)積層フィルムの作製とその評価
実施例1で調製したコーティング用組成物と上記で得られたCOC/酸化アルミニウム積層膜とを用いて得られた積層フィルムを実施例5と同様に評価した。評価結果を表2に示す。
実施例5において用いたTMOSを用いないで行った以外は、実施例5と同様にした。得られた積層フィルムを実施例5と同様に評価した。評価結果を表2に示す。
実施例5または6で作製したPET/SiN積層膜またはPET/Al2O3積層膜上に、コーティング膜層を積層せず、そのまま実施例5と同様にして評価した。結果を表2に示す。
表1に示した評価結果から、水酸基を有する水溶性高分子(A)、カルボキシル基を有する水溶性高分子(B)、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物(C)を必須成分とするガスバリア性組成物を用いたコーティング膜層(III)を積層したガスバリア性積層フィルムは、実施例1〜4より、湿熱試験後の酸素バリア性および/または水蒸気バリア性に優れている。
Claims (9)
- プラスチック基材(I)上に、無機化合物からなる蒸着膜層(II)、コーティング膜層(III)を順次設けた構成のガスバリア性積層フィルムにおいて、前記コーティング膜層(III)を形成するコーティング用組成物が、
水酸基を有する水溶性高分子(A)、
カルボキシル基を有する水溶性高分子(B)、
金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物(C)、および
1分子中に金属酸化物と結合を形成できる官能基と、カルボキシル基と結合を形成できる官能基とをそれぞれ1つ以上有する化合物(D)を含み、
前記(D)において、金属酸化物と結合を形成できる官能基がアルコキシシリル基であり、カルボキシル基と結合を形成できる官能基がアミノ基であり、
前記(A)と前記(B)の重量比が97/3から3/97であり、
前記(C)の含有量が、前記(A)と前記(B)の合計100重量部に対し(以下、同様)、1重量部以上450重量部以下であることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。 - 前記コーティング用組成物が、さらに、エステル化触媒(E)を含み、その含有量が、0.01重量部以上100重量部以下である請求項1記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記(D)の含有量が、1重量部以上20重量部以下である請求項1または2のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記(E)が、無機酸の金属塩、有機酸の金属塩、有機リン化合物、カルボン酸およびその誘導体、スルホン酸およびその誘導体、鉱酸の有機アンモニウム塩またはピリジニウム塩、シアノ基含有有機化合物、イソシアノ基含有有機化合物、ケテン誘導体、ジカルコゲニド化合物、塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、およびヘキサクロロアセトンからなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記(A)が、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、および糖類からなる群から選ばれる1種以上の水溶性高分子である請求項1〜4項のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記(B)が、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、またはその部分中和物のいずれかである請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記(C)が、アルコキシシラン、アルコキシジルコニウム、アルコキシアルミニウム、およびアルコキシチタンからなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜6項のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記(C)が、アルコキシシランの縮合物、アルコキシジルコニウムの縮合物、アルコキシアルミニウムの縮合物およびアルコキシチタンの縮合物から選ばれる1種以上である請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
- 前記(C)が、水および触媒の存在下でゾル−ゲル反応により得られる金属酸化物である請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性積層フィルム。
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