JP2007169488A - ガスバリア膜及びガスバリア性を有する積層体 - Google Patents

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弘之 武衛
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Abstract

【課題】 優れたガスバリア性と耐摩耗性とを有するガスバリア膜、および該ガスバリア膜を有する積層体を提供すること。
【解決手段】 シリカマトリクスと水酸基を有する水溶性ポリマーとが複合された膜中に、さらに、アミノ基を有する親水性ポリマーが複合化されることにより、シリカマトリクスの架橋密度が高くなり、膜全体にわたってシロキサン結合が好適に形成され、優れたガスバリア性や透明性と共に、優れた耐摩耗性を実現できる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機−無機成分のハイブリッド塗膜からなるガスバリア膜および該ガスバリア膜が基材に積層された積層体に関するものである。
食品や医薬品等を包装するのに用いられる包装材料用積層体、あるいは電子機器関連部材等に用いられる積層体などには、その内容物や積層された部材等の変質・酸化を防止するガスバリア性を有する材料が使用されている。
このようなガスバリア材料として、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性樹脂と、金属アルコキシドあるいは金属アルコキシドの加水分解物との複合物からなる被膜を有するガスバリア材が開示されている(特許文献1参照)。該ガスバリア材は有機材料と無機材料との複合物からなるものであり、高いガスバリア性や可撓性を有する。しかし、該ガスバリア材は、その表面硬度が充分でないため、突起部分を有する部材の包装材料用途や、電子機器関連部材の流通や機器の製造工程において、その表面に傷つきが生じるため、ヘイズの低下や、磨耗を生じる問題があった。
また、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子と、金属アルコキシドやその加水分解物とを主剤とするコーティング剤からなるガスバリア性被膜層と、無機酸化物からなる蒸着薄膜層とが積層された透明積層体が開示されている(特許文献2参照)。該積層体は上記と同様の有機材料と無機材料との複合物からなるガスバリア性被膜層を有し、透明性に優れるものであるが、該ガスバリア性被膜層が表層となる場合には、上記と同様に耐摩耗性が充分でなく、傷つきが生じるものであった。
特開平6−192454号公報 特開2005−74731号公報
本発明の課題は、優れたガスバリア性と耐摩耗性とを有するガスバリア膜、および該ガスバリア膜を有する積層体を提供することにある。
本発明においては、シリカマトリクスと水酸基を有する水溶性ポリマーとが複合された膜中に、さらに、アミノ基を有する親水性ポリマーが複合化されることにより、シリカマトリクスの架橋密度が高くなり、膜全体にわたってシロキサン結合が好適に形成される。このため、本発明のガスバリア膜は、優れたガスバリア性や透明性と共に、優れた耐摩耗性を実現できる。
すなわち、本発明は、シリカマトリクス(A)中に、アミノ基を有する親水性ポリマー(B)と水酸基を有する親水性ポリマー(C)とを含有する有機無機複合膜からなるガスバリア膜、及び、該ガスバリア膜を有する積層体に関する。
本発明の有機無機複合膜からなるガスバリア膜は、優れたガスバリア性と耐摩耗性を有することから、各種包装材料用途や、電子機器関連部材等の積層体用途に有用である。
本発明のガスバリア膜は、シリカマトリクス(A)中に、アミノ基を有する親水性ポリマー(B)と水酸基を有する親水性ポリマー(C)とを含有する有機無機複合塗膜である。
[シリカマトリクス(A)]
本発明におけるシリカマトリクス(A)は、シロキサン結合により形成されたシリカのネットワークから構成されるものであり、シラン化合物の加水分解反応、およびゾルゲル反応により形成されるものである。
シリカマトリクス(A)を形成するために使用するシラン化合物としては、例えば、アルコキシシラン類、反応性基としてハロゲンを有するシラン類が挙げられる。ここで、アルコキシシラン類、ハロゲンを有するシラン類としては、アルコキシシランやハロゲンを有するシランのオリゴマーを含む。なかでも、加水分解により3つ以上のシロキサン結合を形成してシリカのネットワークを形成できる三価以上のシラン化合物が好ましく、テトラアルコキシシラン類、トリアルコキシシラン類などが特に好ましい。
アルコキシシラン類の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(2−エタノール)オルソシリケート、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(イソプロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシシラン、プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン類;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有トリアルコキシシラン類;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有トリアルコキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有トリアルコキシシラン;3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有トリアルコキシシラン類;1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド等のビスシリル化合物類が挙げられる。
反応性基としてハロゲンを有するシラン類の例としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシランといったクロロシラン類などが挙げられる。
また、上記シラン類を前もって部分加水分解して、オリゴマー化したものも使用できる。該オリゴマー化したものは、シラノールとなったシリカゾル状態で使用しても良い。オリゴマー化したアルコキシシランを使用する場合には、その平均重合度は2〜20程度のものを好適に使用することができる。この場合の加水分解触媒としては、公知各種の酸類、アルカリ類を用いることができる。
前記のシラン類を前もって部分加水分解して、オリゴマー化したものとして市販品を使用することもできる。例えば、テトラメトキシシランのオリゴマー化したものとして、メチルシリケート51、メチルシリケート53A[コルコート(株)製]、テトラエトキシシランのオリゴマー化したものとして、エチルシリケート40、エチルシリケート48[コルコート(株)製]等が挙げられる。
本発明の水性塗料組成物中においては、前記三価以上のシラン化合物以外のシラン化合物も発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン等のアルコキシシラン類が挙げられる。
また、シラン化合物以外のアルコキシ金属化合物、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタン等のアルコキシチタン類;トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウム類も発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
本発明において使用するシラン化合物は、一種であっても複数種であってもよいが、官能基の多いシラン化合物、特にテトラアルコキシシランを使用した場合には、得られる塗膜のガスバリア性を高くすることができるため好ましい。
[親水性ポリマー(B)]
本発明において使用するアミノ基を有する親水性ポリマー(B)(以下、アミノ基含有ポリマー(B)と略記する。)は、ガスバリア膜作製時に、シラン化合物の縮合反応の触媒として働く。この際、一般的な酸触媒に比べて該アミノ基含有ポリマー(B)は、シラン化合物の縮合反応をより架橋密度が高まるように進行させる特徴がある。この結果、該アミノ基含有ポリマー(B)を含有するガスバリア膜は架橋密度が高いため、優れたガスバリア性や耐摩耗性、高い表面硬度を有する。
前記アミノ基含有ポリマー(B)としては、入手のしやすさという観点から、生体系ポリアミン又は合成ポリアミンであることが望ましい。該アミノ基含有ポリマー(B)として使用できる生体系ポリアミンの例としては、キチン、キトサン、スペルミジン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、ホモスペルミジン、スペルミンなどの側鎖に塩基性アミノ酸残基を多く有する生体ポリマー、あるいは、ポリリシン、ポリヒスチン、ポリアルギニンなどの合成ポリペプチドをはじめとする生体系ポリアミンが挙げられる。
また、合成ポリアミンの例としては、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンなどの主鎖にアミノ基を含有するポリアミン、あるいは、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(アミノエチルメタクリレート)、ポリ[4−(N,N−ジメチルアミノメチルスチレン)]などの側鎖にアミノ基を含有するポリアミンをはじめとする合成ポリアミンが挙げられる。なかでも、ポリエチレンイミンは、入手が容易であることと、シリカゾルの分散性が良好であることから好ましい。
前記アミノ基含有ポリマー(B)は、アミノ基含有ポリマー(B)の親水性やカチオン性を阻害しない範囲で、メチルメタクリレート単位や、ブチルメタクリレート単位といった、公知各種のアクリレート単位や、ウレタン結合を含む公知各種の構造単位、エステル結合を含む公知各種の構造単位などのアミノ基を有さない構造単位が含まれていてもよい。アミノ基含有ポリマー(B)が、これらアミノ基を有さない構造単位を含有する場合には、該アミノ基を有さない構造単位の割合が、アミノ基含有ポリマー(B)中の全構造単位に比して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。アミノ基を有さない構造単位の割合が上記範囲のものは、シリカマトリクス(A)形成時のシラン化合物の加水分解又は脱水縮合反応において良好な反応速度で反応させることができる
前記アミノ基含有ポリマー(B)の分子量としては、300〜500,000の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、500〜80,000の範囲であり、1,000〜50,000の範囲であることが特に好ましい。
前記アミノ基含有ポリマー(B)のうちの合成ポリマーは、上記アミノ基を有するモノマーから、ラジカル重合、カチオン重合、縮合重合など各種公知の重合方法でもって合成することができるし、アミド基などの保護基を有するポリマーを同様の方法で重合させたのち、保護基を、例えば酸加水分解などで、取り除くことによって合成することもできる。
[水酸基を有する親水性ポリマー(C)]
本発明において使用する水酸基を有する親水性ポリマー(C)は、ガスバリア膜に可撓性を与えるとともに、シラン化合物の縮合反応の結果生成するシリカの成膜過程において、水酸基を有する水溶性ポリマー(C)の有する水酸基が、シラノール基との強い水素結合によって強固なネットワークを形成する。このため、本発明のガスバリア膜は、高い表面硬度と可撓性とをあわせ持ち、且つ優れたガスバリア性を有する。
前記水酸基を有する親水性ポリマー(C)としては、天然物系の多糖類や、合成系のポリアルコール化合物が例として挙げられる。
天然物系の多糖類の具体例としては、キチン、セルロース、澱粉などが挙げられる。これらの天然物系の多糖類に関しては、例えば、一部の水酸基のアルコキシ化といった、化学的な修飾反応を行って用いても良い。
合成系のポリアルコール化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール;ポリアリルアルコール;ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルアクリレート)等のポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート);ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)等のポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);ポリ(ヒドロキシスチレン)等のポリ(ヒドロキシフェニルアクリレート);ポリセリン等の合成タンパク質;変性されたエポキシ樹脂類などが挙げられる。
上記の合成系ポリアルコール化合物のなかでも、ポリビニルアルコールは入手が容易であり、また、シリカとの複合塗膜を得られやすいことから好適に使用できる。ポリビニルアルコールは、公知の方法で製造できるが、例えば、ビニルエステル系単量体を重合させることでビニルエステル系重合体を製造し、次いで、得られたビニルエステル系重合体をケン化する方法で製造できる。
かかるビニルエステル系重合体の製造に使用できるビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミルスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられ、工業的には酢酸ビニルを使用することが好ましい。
また、前記ビニルエステル系重合体を製造するにあたり、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ビニルエステル系単量体と共重合可能なその他のモノマーを併用してもよい。
かかるその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類などが挙げられる。
前記ポリビニルアルコールのケン化度は、70モル%以上であることが好ましい。より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは、90モル%以上である。かかる範囲に調整することで、良好なガスバリア膜を形成することができる。
前記ポリビニルアルコールの重合度は、ガスバリア性や安定性を考慮すると、通常100〜4000の範囲が好ましく、300〜3000の範囲内がより好ましく、300〜2000の範囲内が更に好ましい。
[ガスバリア膜]
本発明のガスバリア膜は、少なくとも、シリカマトリクス(A)、アミノ基含有ポリマー(B)、水酸基を有する水溶性ポリマー(C)を必須として含有する有機無機複合膜からなるものである。該ガスバリア膜は、上記したように、アミノ基含有ポリマー(B)が複合化されることにより、シリカマトリクス(A)の架橋密度を高くでき、膜全体にわたって好適にシロキサン結合を形成させることができる。さらに、水酸基を有する水溶性ポリマー(C)が、膜に可撓性を付与し、水酸基がシラノール基との強い水素結合によって強固な膜を形成する。このため、本発明のガスバリア膜は、ガスバリア性や耐摩耗性に優れ、且つ、高い表面硬度と可撓性を有する。また、ポリマーが均一に複合化されているため、透明性にも優れる。
本発明のガスバリア膜の膜厚は特に制限はないが、良好なガスバリア性や、加工性を考慮すると、実用的には、0.1〜40μmの範囲が好ましく、0.2〜10μmの範囲がより好ましく、0.3〜6μmの範囲が更に好ましい。
本発明のガスバリア膜は、アミノ基含有ポリマー(B)や水酸基を有する水溶性ポリマー(C)以外の公知慣用の各種樹脂を含有していてもよい。このような樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、あるいはこれらの変性樹脂等が必要に応じて使用できる。
また、必要に応じて、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、あるいはワックス等が含有されていてもよい。
本発明のガスバリア膜は複数層積層して使用してもよく、金属蒸着層等の他の層と積層してもよい。また、実用的には各種基材上に積層した構造も好適である。積層体を形成する際の支持体となる基材としては、本発明のガスバリア膜が形成できれば特に制限されず、その用途に応じて適宜選択すればよい。
このような基材の例としては、プラスチック基材が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン類;ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類;ナイロン1、ナイロン11、ナイロン6、ナイロン66、ナイロンMX−Dなどのポリアミド類;ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系重合体;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等のアクリル系重合体;さらには、ポリカーボネート等を好適に使用できる。
これらのプラスチック基材は単層でもよいし、2層以上の積層であってもよい。また、これらのプラスチック基材が、未延伸、一軸延伸、二軸延伸されているものであってもよい。
前記プラスチック基材の形状としては、特に制限がなく、例えば、シート状、板状、または、ボトル状やカップ状にあらかじめ成型されたものでもよい。
前記プラスチック基材には、本発明のガスバリア膜との密着性を更に向上させるために、基材表面に公知の表面処理を施してもよく、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレームプラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせた処理を行ってもよい。
上述のように、本発明のガスバリア膜は本発明で特定する成分を含んでなるコーティング液を前記したプラスチック基材表面上に塗布した後、常温乾燥あるいは加熱硬化することにより形成させることができ、本発明の積層体を得ることができる。
[ガスバリア膜の製造方法]
本発明のガスバリア膜は、シリカマトリクス(A)を形成するシラン化合物と、アミノ基含有ポリマー(B)と、水酸基を有する親水性ポリマー(C)と水(D)とを含有する水性塗料組成物を、基材へ塗布して水を除去後、加熱あるいはアルカリ処理することにより、容易にゲル化され、塗膜全体がシロキサン結合のネットワークを形成する。この際、シリカゾルとイオンコンプレックスを形成していたアミノ基含有ポリマー(B)と、水性塗料組成物中の水酸基を有する親水性ポリマー(C)が、塗膜中に複合化されることにより、シリカと有機ポリマーとのハイブリッド膜が形成される。
前記塗料組成物の混合の順序は特に制限されないが、水中に前記アミノ基含有ポリマー(B)と、水酸基を有する水溶性ポリマー(C)を溶解させた後、前記シラン化合物を添加するのがもっとも好ましい。この順序で添加した場合、シラン化合物のゾル状態での分散が良好になるため好ましい。また、前記水酸基を有する水溶性ポリマー(C)を添加する順序は任意である。
混合する比率としては、ガスバリア膜中のシリカマトリクス(A)の質量と、使用するアミノ基含有ポリマー(B)および水酸基を有する水溶性ポリマー(C)の質量の和((B)+(C))との比(A)/[(B)+(C)]が、90/10〜20/80の範囲となるように適宜調整すればよく、80/20〜30/70の範囲にあることが好ましく、より好ましくは75/25〜40/60である。この(A)/[(B)+(C)]が上記範囲内であると、クラックの発生が生じにくく、ガスバリア性が良好な膜とすることができる。
上記シリカマトリクス(A)の質量は、以下の式により求められる。
(シリカマトリクス(A)の質量)=(シラン化合物の仕込み量)×(加水分解反応後のシラン化合物の式量)/(加水分解反応前のシラン化合物の式量)
混合する際のアミノ基含有ポリマー(B)と水酸基を有する水溶性ポリマー(C)との質量比(B)/(C)は、2/98〜70/30の範囲で適宜調整すればよく、5/95〜50/50の範囲にあることが好ましく、より好ましくは5/95〜30/70である。
使用する水(D)の量としては、使用するシラン化合物の0.2〜50倍量程度であることが好ましい。
前記水性塗料組成物は、そのpH値が1.0〜6.0の範囲となるように調整することが好ましい。調整方法としては、使用するアミノ基含有ポリマー(B)としてカチオン化されたものを使用する方法や、他のpH調整剤により調整する方法により調整できる。
また、アルコキシシラン(a)を前記アミノ基含有ポリマー(B)と水酸基を有する水溶性ポリマー(C)に混合した際、シラン化合物が加水分解されて、アルコール類を生じる。このアルコール類を公知慣用の方法で除去したのち前記水性塗料組成物を使用してもよいし、アルコール類を除去せずにそのまま用いても良い。
前記水性塗料組成物中に、本発明の効果を損なわない範囲で公知慣用の有機溶媒を使用することができる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーエル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネート、等が挙げられる。そして、かかる化合物はそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
また、前記水性塗料組成物中には、界面活性剤、粘度調整剤、あるいは安定剤等が含有されていてもよい。
前記水性塗料組成物を塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ブラシ塗布法、ローラ塗布法、静電塗布法、遠心塗布法等の公知の方法が挙げられる。塗布は、一回で行っても、或いは二回以上の多段階塗布で行ってもよい。さらに、基材の片面、あるいは両面のどちらでもよい。
塗布後の硬化は、例えば、室温で1日〜10日間程度、あるいは、加熱温度50℃〜200℃で、好ましくは、60〜150℃で、より好ましくは、70〜130℃の範囲で、1秒〜2時間で、好ましくは、1秒〜30分間で、より好ましくは、1秒〜10分間乾燥させることにより、透明性を保持したガスバリア膜を得ることができる。
以上のとおり、本発明のガスバリア膜および該ガスバリア膜を有する積層体は、優れたガスバリア性、可撓性、表面硬度、及び耐摩耗性を有し、また、その作製も簡便な工程であることから、各種包装材料用途や、電子機器関連部材等の積層体用途に好適に使用できる。
以下本発明の理解を容易にするため、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、各例中の部及び%は特に断らない限り質量部、質量%を表す。
(実施例1)
ポリエチレンイミン[商品名;エポミンSP−200、(株)日本触媒製 平均分子量 約10,000]の10%水溶液40部、ポリビニルアルコール[商品名;PVA−105、 (株)クラレ製 重合度500 ケン化度98.0モル%]の10%水溶液360部を混合後、1N塩酸水溶液を滴下して加えPHを約2となるように調製した。続いて、この混合液中へ撹拌しながら、テトラメトキシシラン152部を徐々に加え、さらに室温下30分間撹拌し塗料組成物を得た。この塗料組成物を2軸延伸PETフィルム(厚み38μm)上に乾燥後の膜厚が1μmになるように塗布した後、80℃の5分で乾燥し、PETフィルム上に積層されたガスバリア膜を得た。
得られたガスバリア膜の評価は、以下の方法により実施した。
酸素バリア性:JIS K7126(プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法)に従い測定した。(温度23℃、相対湿度85%) 尚、基材として用いた2軸延伸PETフィルム(厚み38μm)の酸素透過度は32ml/m・day・atmであった。
耐摩耗性:学振式磨耗試験機(大栄科学精器製作所製品、RT-200)にて評価を行った。磨耗体:スチールウール(日本スチールウール株式会社製、商品名ボンスター、品番No.0000)、荷重:500g、往復回数:250回。表の数字は、試験前後の塗膜の濁度の差を数値化したものであり、数字が少ないほど耐磨耗性が良好である。
(実施例1〜5、比較例1)
表1に示した配合にて塗料組成物を調製し、実施例1と同様にしてガスバリア膜を得た。
Figure 2007169488
表1に示すアルコキシシランは以下を使用した。
TMOS:テトラメトキシシラン(商品名;KBM−04、信越化学工業(株)製)
GPTMS:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名;SH6040、東レ・ダウコーニング(株)製)
TEOS:テトラエトキシシラン(商品名;AY43−101、東レ・ダウコーニング(株)製)
MS−51:メチルポリシリケート(商品名;メチルシリケート51、コルコート(株)製)
ES−48:エチルポリシリケート(商品名;エチルシリケート48、コルコート(株)製)
表1に示すアミノ基含有ポリマーは以下を使用した。
PEI:ポリエチレンイミン、平均分子量 約10,000(商品名;エポミンSP−200、(株)日本触媒製)
表1に示すポリアルコールは以下を使用した。
PVA−105:ポリビニルアルコール、重合度500、ケン化度98.0モル%(商品名;PVA−105、(株)クラレ製)
PVA−110:ポリビニルアルコール、重合度1,000、ケン化度98.0モル%(商品名;PVA−110、(株)クラレ製)
PVA−117:ポリビニルアルコール、重合度1,700、ケン化度98.0モル%(商品名;PVA−117、(株)クラレ製)
上記実施例、及び比較例の評価結果を表2に示す。
Figure 2007169488
また、実施例2、及び比較例1の塗膜の29Si−NMRを測定したところ、Q4成分はそれぞれ60%、50%であった。
本発明のガスバリア膜は高度の酸素ガスバリア性を有しており、食品や医薬品等の包装用材料に好適に利用でき、内容物の鮮度保持、変質・酸化防止に寄与することができる。
また、有機EL等の電子材料の劣化防止用保護膜としても利用可能である。


Claims (8)

  1. シリカマトリクス(A)中に、アミノ基を有する親水性ポリマー(B)と水酸基を有する親水性ポリマー(C)とを含有する有機無機複合塗膜からなることを特徴とするガスバリア膜。
  2. 前記シリカマトリクス(A)が、シラン化合物のゾルゲル反応により得られるものである請求項1に記載のガスバリア膜。
  3. 前記アミノ基を有する親水性ポリマー(B)が、生体系ポリアミン又は合成ポリアミンである請求項1または2に記載のガスバリア膜。
  4. 前記アミノ基を有する親水性ポリマー(B)が、ポリアルキレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ポリアミノアルキルメタクリレート、ポリアミノアルキルアクリレート、ポリアミノアルキルアクリルアミド、ポリアミノアルキルメタクリルアミド及びポリアミノアルキルスチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーである請求項1または2に記載のガスバリア膜。
  5. 前記水酸基を有する親水性ポリマー(C)が、ポリビニルアルコールである請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア膜。
  6. 前記アミノ基を有する親水性ポリマー(B)と水酸基を有する親水性ポリマー(C)との質量比(B)/(C)が、2/98〜70/30の範囲にある請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア膜。
  7. 前記シリカマトリクス(A)と、アミノ基を有する親水性ポリマー(B)および水酸基を有する親水性ポリマー(C)の質量の和[(B)+(C)]との質量比(A)/[(B)+(C)]が、90/10〜20/80の範囲にある請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア膜。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア膜が基材と積層されていることを特徴とするガスバリア性を有する積層体。
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