JP7026446B2 - 防曇塗膜およびコーティング組成物 - Google Patents

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本発明は、防曇塗膜およびコーティング組成物に係る。本発明は、特に厚膜成膜性、防曇性、防曇持続性に優れる防曇塗膜およびこれを製造するためのコーティング組成物に関する。
ガラス板の代替として軽量化や成形性の観点から樹脂成形体が広く用いられている。用途として、自動車部品、家電部品、ハウジング、容器、フィルム、シート等の広い分野で使用されている。特に透明プラスチックは、各種窓、光学用レンズ、ミラー、眼鏡、ゴーグル、遮音壁、信号機灯のレンズ、前照灯レンズ、カーブミラー、風防、銘板等に使用されている。しかし、プラスチック等の樹脂基材は、外気との温湿度差により、基材の一方の面が露点温度以下になった場合や、急激な温湿度変化が生じた場合に基材表面が結露し、表面に微細な水滴が付着し透過光を散乱することがある。そのような場合、樹脂成形体は、透明性が損なわれ、いわゆる曇りが発生する。
この曇りを防ぐ方法として下記のような提案がなされてきた。
(1)基材表面に吸水性化合物の塗膜を作製する方法。
(2)基材表面に界面活性剤等の親水化合物の塗膜を作製することで基材表面を親水性にする方法。
具体的には、(1)の方法として、特許文献1では、硬化エポキシド樹脂、あるいはウレタン樹脂からなる吸水性の架橋樹脂層を有し、前記吸水層が金属酸化物微粒子を含有する防曇性物品等が提案されている。また、特許文献2では、硬化エポキシ樹脂とポリオキシエチレンアルキルエーテル系の界面活性剤を含有する吸水層を具備した防曇性物品が提案されている。
しかしながら、これらの方法においては、一定のレベルまでは防曇性を維持できるが、吸水能以上の水分が該物品に凝集、付着すると曇りが生じる。そのため、高い防曇持続性を発現させるためには膜厚を厚くする必要があるといった不都合があった。
(2)の方法として、特許文献3、特許文献4では、塗膜表面がコロイダルシリカであることを特徴とする親水性、防汚性塗膜が開示されている。具体的には、特許文献3、特許文献4では、コロイダルシリカとノニオン系界面活性剤とを含有する防汚塗膜が開示されている。しかしながら、この例ではコロイダルシリカが塗膜最表面に偏在していることを特徴としている。そのため、初期の親水性、防曇性には優れるものの、高温多湿環境下などの過酷な環境下においては塗膜表面への異物の吸着等により、防曇性の低下が起こりうる。
さらに、コロイダルシリカを多く含む塗膜の場合、樹脂基材と塗膜との熱膨張係数の差が大きい。そのため、塗膜の膜厚が1μmを超える場合、成膜後にクラックなどの外観不良が生じるといった不都合があった。
国際公開第2012/161330号 国際公開第2015/008672号 特許第4812902号 国際公開第2010/104146号
本発明は、従来技術にない新規な塗膜を提供することを課題とする。上述した従来技術の不都合に鑑み、本発明は、好ましくは1μmを超える膜厚であっても成膜性が良好であり、防曇性に優れ、高温多湿下などに晒された場合においても防曇性を持続可能な塗膜を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の諸態様は、以下のとおりである。
〔1〕
金属酸化物(A)と親水性化合物(B)とを含み、表面のXPSによる元素分析においてC1sスペクトルと金属酸化物由来の金属(M)スペクトルから得られるC元素と金属元素との元素濃度比(C1s/M)が10以上である塗膜。
〔2〕
水接触角の値が40°以上、水接触角変化度の値が1以上3以下である、上記〔1〕項に記載の塗膜。
〔3〕
表面のXPSによる元素分析において炭素-酸素結合及び/又は炭素-窒素結合に由来するC1sスペクトルから得られるC元素の相対元素濃度が5atomic%以上である、上記〔1〕又は〔2〕項に記載の塗膜。
〔4〕
上記金属酸化物(A)が、コロイダルシリカである、上記〔1〕~〔3〕項のいずれか一項に記載の塗膜。
〔5〕
上記親水性化合物(B)が、非共有結合及び/又は共有結合を介して上記金属酸化物表面に結合していることを特徴とする、上記〔1〕~〔4〕項のいずれか一項に記載の塗膜。
〔6〕
イソシアネート系化合物(C)をさらに含むことを特徴とする、上記〔1〕~〔5〕項のいずれか一項に記載の塗膜。
〔7〕
重合体粒子(D)をさらに含む、上記〔1〕~〔6〕項のいずれか一項に記載の塗膜。
〔8〕
金属酸化物(A)、親水性化合物(B)、並びに、任意選択で、イソシアネート化合物(C)及び/又は重合体粒子(D)及び/又は水を含有し、上記〔1〕~〔7〕項のいずれか1項に記載の塗膜を製造するためのコーティング組成物。
本発明によれば、従来技術にない新規な塗膜が提供される。また、本発明によれば、好ましくは防曇性に優れ、1μmを超える膜厚であっても成膜性が良好であり、高温多湿下のような過酷な環境下に晒された場合においても防曇性が持続される塗膜を提供可能である。
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の各構成成分について説明する。
一実施形態に係る塗膜は、例えば、水等の溶媒等に分散させたコーティング組成物(「水分散体」と略記することがある)を基材上に塗工し、乾燥して形成される。従って、基本的に、塗膜とコーティング組成物とは、溶媒を除いて成分構成及びその割合が同一である。すなわち、本発明に係る塗膜は、特に断りがない限り、以下で説明するコーティング組成物の成分群が有する特性及び量比を備える。従って、以下では、コーティング組成物の構成を中心に説明する。
一実施形態に係るコーティング組成物は、(A)成分:金属酸化物と、(B)成分:親水性化合物とを含む。
(A)成分:金属酸化物
(A)成分に用いられる金属酸化物としては、(B)成分との相互作用の観点から、例えば、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、及び酸化セリウム等が使用可能である。なかでも、相互作用の強さの観点から、表面水酸基の多い二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アンチモン、及びそれらの複合酸化物等が好ましい。なお、(A)成分として、上述した金属酸化物の2種以上を併用してもよい。
さらに、(A)成分に用いられる金属酸化物として、防汚染性を付与する観点から、光照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現する化合物(以下、単に「光触媒」と略記することがある)を用いてもよい。(A)成分として、光照射により光触媒活性を発現する化合物を用いることにより、コーティング組成物から形成される塗膜の表面に、汚染有機物質の優れた分解活性や耐汚染性を発現し得る。なお、本明細書において塗膜の「親水性」とは、測定対象物表面に対する水(23℃)の飽和水接触角が、好ましくは60゜以下になることを意味する。飽和水接触角および水接触角の測定方法については実施例にて後述する。なお、ここで言う「光照射により親水性を発現する化合物」は、元来親水性を有する(B)成分の親水性化合物とは区別される。
光触媒として、より具体的には、TiO、ZnO、SrTiO、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、KTaSi、WO、SnO、Bi、BiVO、NiO、CuO、RuO、及びCeO等が使用可能である。さらに、光触媒として、Ti、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば、特開昭62-74452号公報、特開平2-172535号公報、特開平7-24329号公報、特開平8-89799号公報、特開平8-89800号公報、特開平8-89804号公報、特開平8-198061号公報、特開平9-248465号公報、特開平10-99694号公報、特開平10-244165号公報等参照)が使用可能である。これらの光触媒のなかでも、TiO(酸化チタン)は、無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、及びブルッカイト型のいずれも使用できる。
また、(A)成分に用いられる金属酸化物として、コーティング組成物から形成される塗膜の帯電防止性能等を発現する観点から、導電性を有する金属酸化物を用いることができる。導電性を有する金属酸化物としては、例えば、錫をドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、酸化スズ、及び酸化亜鉛等が使用可能である。
(A)成分は、コーティング組成物の原料として、例えば、粉体、分散液、及びゾル等の形態で使用される。ここで、分散液又はゾルとは、(A)成分が、水及び/又は親水性有機溶媒中に0.01~80質量%、好ましくは0.1~50質量%の濃度で、一次粒子及び/又は二次粒子として分散されたものを意味する。親水性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン、N-メチルピロリドン等、さらにはこれらの2種以上の混合物が使用可能である。
粉体、分散液又はゾル中で観察される(A)成分の数平均粒子径(1次粒子と2次粒子との混合物であってもよいし、1次粒子、2次粒子何れかのみであってもよい)は、好ましくは1nm~400nmであり、より好ましくは1nm~100nmであり、更に好ましくは3nm~80nmであり、特に好ましくは4nm~50nmである。ここでの特定範囲の数平均粒子径は、形成された塗膜中でも通常維持される。(A)成分の数平均粒子径は、得られるコーティング組成物を用いて形成される塗膜の光学特性等に寄与し得る。特に、数平均粒子径を100nm以下とすることにより、得られる塗膜の透明性を大きく向上させ得る。なお、(A)成分についての明細書における数平均粒子径(単に、「粒子径」と略記することがある)とは、後述する実施例の方法に準じて測定された値である。
一実施形態において、金属酸化物(A)は、取扱い性の観点からコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカは、ゾル-ゲル法で調製されてもよいし、市販品を利用してもよい。ゾル-ゲル法で調製する場合には、Werner Stober et al;J.Colloid and Interface Sci., 26, 62-69 (1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6, 792-801 (1990)、色材協会誌,61 [9] 488-493 (1988)等を参照できる。コロイダルシリカは、二酸化ケイ素を基本単位とするシリカの水又は水溶性溶媒の分散体である。コロイダルシリカの数平均粒子径は1~400nmであり、好ましくは1~100nmであり、より好ましくは4~50nmである。数平均粒子径が1nm以上の場合、コーティング組成物の貯蔵安定性が良好となる傾向にある。また、数平均粒子径が400nm以下の場合、透明性が良好となる傾向にある。
上記範囲の数平均粒子径のコロイダルシリカは、水性分散液の状態で、酸性及び塩基性のいずれであっても用いることができる。混合する親水性化合物(B)の安定領域に応じて、適宜液性を選択することができる。両者が非共有結合する場合、コロイダルシリカと親水性化合物との非共有結合が強固になることからpH7以下の酸性領域であることが好ましい。水を分散媒体とする酸性のコロイダルシリカとしては、例えば市販品として日産化学工業(株)製スノーテックス(登録商標)-OXS、スノーテックス-OS、スノーテックス-O、スノーテックス-OL、スノーテックス-OYL、旭電化工業(株)製アデライト(登録商標)AT-20Q、クラリアントジャパン(株)製クレボゾール(登録商標)20H12、及びクレボゾール30CAL25などが利用できる。
塩基性のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及びアミンの添加で安定化したシリカがある。例えば、日産化学工業(株)製スノーテックス-20、スノーテックス-30、スノーテックス-C、スノーテックス-C30、スノーテックス-CM40、スノーテックス-N、スノーテックス-N30、スノーテックス-K、スノーテックス-XL、スノーテックス-YL、スノーテックス-ZL、スノーテックスPS-M、及びスノーテックスPS-L等が使用可能である。あるいは、旭電化工業(株)製アデライトAT-20、アデライトAT-30、アデライトAT-20N、アデライトAT-30N、アデライトAT-20A、アデライトAT-30A、アデライトAT-40、及びアデライトAT-50等も使用可能である。さらに、クラリアントジャパン(株)製クレボゾール30R9、クレボゾール30R50、及びクレボゾール50R50等や、デュポン社製ルドックス(登録商標)HS-40、ルドックスHS-30、ルドックスLS、及びルドックスSM-30等も使用可能である。
また、水溶性溶剤を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製MA-ST-M(数平均粒子径が20~25nmのメタノール分散タイプ)、IPA-ST(数平均粒子径が10~15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG-ST(数平均粒子径が10~15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EG-ST-ZL(数平均粒子径が70~100nmのエチレングリコール分散タイプ)、及びNPC-ST(数平均粒子径が10~15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)等が使用可能である。
なお、これらのコロイダルシリカは、一種又は二種類以上組み合わせて使用されてもよい。また、少量成分として、アルミナ、及びアルミン酸ナトリウム等を含んでいてもよい。さらに、コロイダルシリカは、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニウムなど)等を含んでいてもよい。
(B)成分:親水性化合物
(B)成分は、(A)成分の分散性向上、及び/又は、非共有結合及び/又は共有結合を介した(A)成分表面への固定化による防曇持続性・耐湿性の向上、ならびに、塗膜の成膜性向上等の目的のために、コーティング組成物に含有される。
(B)成分に用いられる親水性化合物としては、コーティング組成物の分散安定性の観点から水に溶解及び/又は分散可能な化合物が使用可能である。水に溶解及び/又は分散可能であれば親水性基の他、疎水性基を有しても良い。また、金属酸化物(A)との相互作用部位を含有していることが塗膜の耐久性の観点から好ましい。そのような相互作用部位の例としては水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、シラノール基、スルホ基、ポリオキシアルキレン部位、アンモニウム塩部位、ピリジニウム塩部位、イミダゾリウム塩部位などが挙げられる。
一実施態様として、親水性化合物(B)は、ノニオン系化合物、アニオン系化合物及び両性イオン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。ノニオン系化合物、アニオン系化合物及び両性イオン系化合物としては、これらのイオン特性を有する公知の化合物のいずれかを用いることができる。
ノニオン系化合物の例としては、親水性部位として水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基などを有する化合物などが挙げられる。
アニオン系化合物の例としては、カルボン酸部位、スルホン酸部位、リン酸部位、ボロン酸部位を有する化合物などが挙げられる。
両性イオン系化合物の例としては、カルボン酸部位、スルホン酸部位、リン酸部位、ボロン酸などのアニオン性部位と、四級アンモニウム部位、イミダゾリウム部位、ピリジニウム部位、スルホニウム部位、ホスホニウム部位などのカチオン性部位を同一分子内に有する化合物などが挙げられる。
また、一実施態様として、親水性化合物(B)は、分子内にイソシアネート基(イソシアネート化合物(C)が有する基である)と反応し得る官能基を1つまたは2つ以上、好ましくは2つ以上有しているものであってよい。イソシアネート基と反応し得る官能基の例としては、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、シラノール基、スルホ基等が挙げられる。
この中でも、親水性化合物(B)は、分子内に少なくとも1つの水酸基を有する親水性化合物が好ましい。分子内に2つ以上の水酸基を有する親水性化合物がより好ましい。
金属酸化物(A)との相互作用部位を有する親水性化合物を用いることにより、金属酸化物(A)(例えばコロイダルシリカ)表面へ非共有結合及び/又は共有結合を介して固定化され、高温多湿環境下や水中に晒された場合の防曇持続性が向上する。
また、分子内にイソシアネート基と反応し得る官能基を1つまたは2つ以上、好ましくは2つ以上有する親水性化合物を用いることにより、当該親水性化合物が塗膜中に固定化され、水との接触による溶出を防止することができる。
具体的には、上記相互作用部位であると共にイソシアネート基と反応し得る官能基を分子内に2つ以上有する親水性化合物(B)の例として、特に限定されないが、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンオキシプロピレンオキシエチレントリブロックコポリマー、ポリオキシプロピレンオキシエチレンオキシプロピレントリブロックコポリマー等のアルキレングリコール部位含有ポリマー群 、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートの共重合体などが挙げられる。これらを一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でもポリオキシエチレンオキシプロピレンオキシエチレントリブロックコポリマーを含有すると、コロイダルシリカ表面への固定化、防曇持続性向上、及び成膜性の観点から好ましい。
一般に、金属酸化物および水を含むコーティング組成物を塗工して得られる塗膜は、金属酸化物成分が最表面に存在することになる。よって、例えば上述のコロイダルシリカを含むコーティング組成物を用いる場合は、塗膜の最表面はシリカの成分が存在することになる。
一方、本発明の塗膜は、表面のXPSによる元素分析においてC1sスペクトルと金属酸化物由来の金属(M)スペクトルとから得られるC元素と金属元素との元素濃度比(C1s/M)が10以上である。C1s/Mが10以上であることにより、塗膜表面の金属酸化物の露出度がより小さくなり、高温多湿環境下に晒された場合に異物による汚染が抑制され、防曇性が所望のレベルに維持される。さらにC1s/Mが10以上であると樹脂基材と塗膜との熱膨張係数差が小さくなるために1μm以上の膜厚であってもクラック等の外観不良を生じることなく成膜可能になる。
さらに、表面のXPSによる元素分析において炭素-酸素結合及び/又は炭素-窒素結合に由来するC1sスペクトルから得られるC元素の相対元素濃度が5atomic%以上であることで塗膜の防曇性、親水性が一層向上する。
塗膜表面のXPSによる元素分析においてC1s/Mの下限は、好ましくは10超(10を含まない)、より好ましくは10.5以上、更に好ましくは11以上である。
一方、C1s/Mの上限は、限定されるものではないが、典型的には50以下程度である。すなわち、非限定的な典型例として、C1s/Mは、10以上50以下、10超50以下、10.5以上50以下、11以上50以下であってよい。
塗膜表面のXPSによる元素分析は、例えば下記の装置及び測定条件で行うことができる。
使用機器としては、例えば、アルバックファイ株式会社製のVerasa probe IIを用い、励起源としてmonoAlK・(15kV×3.3mA)を用いることができる。測定試料の塗膜の表面に1mm×2mmのマスクを被せて測定範囲とする。
光電子取出し角は45°で行い、取込領域はSurvey scanが0~1,100 eV、Narrow scanがC1s、N1s、Si2p、O1sの領域を行う。また、Pass EnergyはSurvey scanが117.5 eV、Narrow scanが46.95eVで行う。
一実施形態では、塗膜において、C1s/Mを上記範囲に制御するための方法としては、塗膜に含まれる金属酸化物の表面を、C原子を含有し金属酸化物との相互作用部位を含有する成分によって被覆することによって達成することができる。
C原子を含有する成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば先述した親水性化合物あるいはその他の金属酸化物との相互作用部位を有する有機成分などが挙げられる。その他の金属酸化物との相互作用を有する有機成分の例としては、有機珪素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などの有機金属酸化物などが挙げられる。これらの中でも親水性化合物であることが好ましい。金属酸化物の表面積に対して上記成分の含有量を一定の範囲にすることによって、C1s/Mを制御することができる。
C1sピークとしては、例えば283~285eV付近に観測されるハイドロカーボンに帰属されるピーク、285~287eV付近に観測されるエーテル結合に帰属されるピーク、288eV付近に観測されるアミド結合に帰属されるピーク、288~290eV付近に観測されるウレタン結合に帰属されるピークなどが挙げられる。
炭素-酸素結合及び/又は炭素-窒素結合に由来するC1sスペクトルから得られるC元素の相対元素濃度の範囲を5atomic%以上に制御するための方法としては、上記親水性化合物に含まれる炭素-酸素結合及び/又は炭素-窒素結合の量によって達成することができる。
金属酸化物表面を親水性化合物等の有機成分で被覆する方法としては、例えば(A)金属酸化物の数平均粒子径(D)、密度(ρ)、(A)に対する(B)の重量比(W)、(B)親水性化合物の平均粒径(D)、(B)成分の密度(ρ)から算出される、(B)の(A)に対する被覆率(P)が300%以上の範囲に制御することとなる有機成分の含有量であることが、成膜性、防曇持続性の観点から好ましい。この被覆率(P)は、350%以上であることがより好ましく、400%以上であることがさらに好ましい。
Figure 0007026446000001

なお、(B)親水性化合物の平均粒径(D)は(B)親水性化合物の分子量、密度から算出できる。被覆率(P)が300%以上であることにより、塗膜と樹脂基材との熱膨張係数差が小さくなり膜厚が1μmを超える場合であってもクラックなどの外観不良を生じることなく成膜できる。さらに被覆率(P)が300%以上であることにより、塗膜表面の金属酸化物の露出量がより小さくなり、高温多湿環境下に晒された場合でも防曇性が維持される。
ここで、(A)に対する(B)の重量比(W)は、(A)および(B)の粒子径に依存する。(A)の粒子径が1~400nmであるとき、被覆率が300%以上となるためには、0.04<Wであり、被覆率が400%以上となるためには、0.05<Wである。
本発明の塗膜は、水接触角の値を40°以上、水接触角変化度の値を1以上3以下の範囲とすることで防曇性、防曇持続性が一層向上する。水接触角の値は、好ましくは40°以上60°以下、さらに好ましくは40°以上50°以下である。水接触角が40°以上であることにより高温多湿環境下に晒された場合においても塗膜内部への水蒸気の拡散、および塗膜の膨潤が抑制され、塗膜外観が良好に維持される傾向にある。水接触角が60°以下であることにより初期の防曇性が良好になる傾向にある。水接触角変化度の上限はより好ましくは2.9以下、さらに好ましくは2.8以下である。言い換えると、水接触角変化度の値は、好ましくは1以上2.9以下、さらに好ましくは1以上2.8以下である。水接触角変化度が1以上であることにより、塗膜表面に水滴が付着した際に瞬時に水膜を形成しやすくなり、防曇性が良好になる傾向にある。水接触角変化度が3以下であることにより高温多湿環境下に晒された際の塗膜の膨潤が抑制され、外観が良好に維持される傾向にある。
(B)親水性化合物は、グリフィン法で求められるHLB値(親水性親油性バランス)が2~14であることが好ましい。HLB値が2以上であることにより、水への溶解性が所定レベルに保たれるので、水溶液中で均一分散され、得られる塗膜の外観が良好に維持されるので好適である。HLB値が14以下であることにより、金属酸化物との相互作用が保持され、金属酸化物上への固定化によって防曇持続性が発現し得る。水溶液中における金属酸化物と上記親水性化合物との非共有結合による固定化は、粒子径測定による粒子径変化の有無、表面張力測定による表面張力変化の有無によって測定可能である。(B)親水性化合物のHLB値は、より好ましくは2~12である。
本発明の塗膜を作製するために使用されるコーティング組成物の固形分濃度は、15質量%以上であることが好ましい。コーティング組成物の固形分濃度が15質量%以上であることにより、(A)成分と(B)成分の非共有結合及び/又は共有結合によって形成されるネットワークが強固になるため、成膜性、耐湿性の点で好ましい。
コーティング組成物のpHは8未満であることが好ましく、7未満であることがより好ましい。コーティング組成物のpHが8未満であることによって金属酸化物と親水性化合物との相互作用が強固になる。そのようなコーティング組成物から得られる塗膜は外観、耐湿性が良好である。
コーティング組成物を作製する際は、親水性化合物と金属酸化物とを予め混合し、その後水で希釈することで所望の濃度に調製することが好ましい。親水性化合物と金属酸化物とを予め混合することによって金属酸化物表面に親水性化合物が強固に結合し、そのようなコーティング組成物から得られる塗膜は外観、耐湿性が良好である。
なお、このコーティング組成物の水の含有率は、組成物の総量を基準にして、通常85質量%以下である。また水の含有率の下限は、特に限定されないが、通常50質量%以上である。
(C)成分:イソシアネート系化合物
本発明に係る塗膜を形成するためのコーティング組成物は、(A)成分及び(B)成分に加えて、(C)成分としてイソシアネート系化合物を含んでよい。コーティング組成物及びこれから形成される本発明の塗膜は、更に(C)成分としてイソシアネート系化合物を含有することが、基材との密着性向上、耐擦過性向上の観点から好ましい。
本発明におけるイソシアネート系化合物(C)とは、少なくともイソシアネート基を1分子中に1個以上有する化合物のことをいう。イソシアネート系化合物(C)は、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する化合物であってよい。
該イソシアネ-ト系化合物(C)としては、例えば1,4-テトラメチレンジイソシアネート、エチル(2,6-ジイソシアナート)ヘキサノエート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネ-ト;1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナート-4-イソシアナートメチルオクタン、2-イソシアナートエチル(2,6-ジイソシアナート)ヘキサノエートなどの脂肪族トリイソシアネート;1,3-または1,4-ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,3-または1,4-ジイソシアナートシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル(3-イソシアナートメチル)シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,5-または2,6-ジイソシアナートメチルノルボルナンなどの脂環族ジイソシアネ-ト;2,5-または2,6-ジイソシアナートメチル-2-イソシネートプロピルノルボルナンなどの脂環族トリイソシアネート;m-キシリレンジイソシアネート、α,α,α’α’-テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネートなどのアラルキレンジイソシアネート;m-またはp-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,4-または2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナート-3,3’-ジメチルジフェニル、3-メチル-ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェートなどの芳香族トリイソシアネート、さらには上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基どうしを環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するジイソシアネートあるいはポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基どうしを環化三量化して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを水と反応させることにより得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを二酸化炭素と反応せしめて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート;上記ジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを、ポリヒドロキシ化合物、ポリカルボキシ化合物、ポリアミン化合物の如き活性水素を含有する化合物と反応させて得られるポリイソシアネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して使用できる。イソシアネート化合物は、イソシアネート基をブロック化剤と反応させたブロックポリイソシアネートであってもよい。上記ブロック化剤としては、オキシム、ピラゾール、カプロラクタム、活性メチレン、アルコール、フェノール、フェノール誘導体等が挙げられる。
また、上記ポリイソシアネート化合物の中では、脂肪族系あるいは脂環族系のジイソシアネートまたはトリイソシアネート、アラルキレンジイソシアネートあるいは、それらから誘導されるポリイソシアネートが、耐候性やポットライフの面で特に好ましい。さらに該ポリイソシアネートとしては、分子内にビュウレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、アロファネート等の構造を有するものが好ましい。ビュレット構造を有するものは接着性に優れている場合が多い。イソシアヌレート構造を有するものは耐候性に優れている場合が多い。長い側鎖を有するアルコール化合物を用いたウレタン構造を有するものは弾性及び伸展性に優れている場合が多い。ウレトジオン構造あるいはアロファネート構造を有するものは低粘度である場合が多い。
本発明に用いるイソシアネート系化合物(C)としては、水分散性の点からは、上記1分子中にイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物と、ノニオン性及び/又はイオン性の親水基を有する水酸基含有親水性化合物とをイソシアネート基/水酸基の当量比が1.05~1000の範囲で反応させてなる親水性ポリイソシアネート組成物(c1)が好適である。より好ましくは当量比が2~200、さらに好ましくは4~100の範囲である。当量比が1.05以上であることで、親水性ポリイソシアネート組成物(c1)中のイソシアネート基含有率が所定のレベル以上になるため、架橋性水系被覆組成物中の架橋点が多くなり、硬化速度の増大あるいは塗膜等の被覆物の強度の向上につながり好ましい。当量比が1000以下であることで、親水性が発現し、好ましい。
かかる親水性ポリイソシアネート組成物(c1)としては、従来公知の手法により親水基を導入してなるものであれば特に制限なく使用できる。例えば、一般式RO(RO)-H(ここでRは炭素数1から30のアルキル基または芳香環を2つ以上含有する基、Rは炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2~250の整数である)で示されるものとポリイソシアネ-ト化合物との反応生成物や、親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体とポリイソシアネ-ト化合物との反応生成物、アルコキシポリアルキレングリコールとジアルカノ-ルアミンとを反応させることにより得られる乳化剤とポリイソシアネ-ト化合物との反応生成物などを挙げることができる。これらの中で、一般式RO-(RO)-H(ここでRは炭素数1から30のアルキル基または芳香環を2つ以上含有する基、Rは炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2~250の整数である)で示されるものとポリイソシアネ-ト化合物との反応生成物、親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体とポリイソシアネ-ト化合物との反応生成物は、水分散性に優れるため、特に好ましい。
一般式RO-(RO)-H(ここでRは炭素数1から30のアルキル基または芳香環を2つ以上含有する基、Rは炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2~250の整数である)で示されるものとしては、例えばポリメチレングリコ-ルモノメチルエーテル、ポリエチレングリコ-ルモノメチルエーテル、ポリエチレングリコ-ルモノエチルエーテル、ポリエチレングリコ-ルモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコ-ルモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-オキシプロピレン(ランダムおよび/またはブロック)グリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレン-オキシテトラメチレン(ランダムおよび/またはブロック)グリコールポリブチレングリコ-ルモノメチルエーテルなどのアルコキシポリアルキレングリコ-ル類、(モノ~ペンタ)スチレン化フェニル基、モノ(又はジ,トリ)スチリル-メチル-フェニル基、トリベンジルフェニル基、β-ナフチル基などの芳香環を2つ以上含有する基を有するノニオン型界面活性剤を挙げることができる。中でもポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(モノ~ペンタ)スチレン化フェニル基を有するノニオン型界面活性剤が、自己乳化能、およびポットライフの点で好ましい。
これら一般式RO-(RO)-H(ここでRは炭素数1から30のアルキル基または芳香環を2つ以上含有する基、Rは炭素数1~5のアルキレン基を表す。nは2~250の整数である)で示されるものとしては、好ましくは分子量が100~10000より好ましくは300~5000の範囲を有するものが好適に使用できる。
親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体の親水性基としては、公知の各種アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基が挙げられ、ノニオン性基であることが好ましい。ノニオン性基であることでコーティング組成物のポットライフが著しく延長し、またポリイソシアネート油滴の粒子径が小さくなるので、形成される塗膜の耐水性を更に向上させることができる。
親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体の具体例としては、例えばアクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体、ポリオレフィン系重合体等が挙げられる。これらの中でも、形成される塗膜の耐候性の観点からアクリル系重合体が好ましい。
親水性基及び水酸基を有するビニル系重合体として好適なアクリル系重合体を得るための重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、懸濁重合、乳化重合又は溶液重合が挙げられる。好ましくは親水性基を有するエチレン性不飽和単量体(i)および水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(ii)を溶液重合することによって得られるアクリル系重合体であり、必要に応じてこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(iii)を使用することもできる。
親水性基を有するエチレン性不飽和単量体(i)としては、例えばメトキシポリエチレ
ングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類の他、(メタ)アクリルアミド系単量体、アニオン型ビニル単量体等が挙げられる。また、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類のように、親水性基と水酸基を分子内に併せ持つエチレン性不飽和単量体を使用することも出来る。これらは1種又は2種以上混合して使用しても良い。
また、これらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(iii)としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類、カルボニル基含有ビニル単量体、オレフィン類、ジエン類、ハロオレフィン類、ビニルエーテル類、アリルエステル類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して使用しても良い。
親水性基及び水酸基を含有するビニル系重合体は、好ましくは重量平均分子量(ポリスチレン換算GPC法)2000~100000、より好ましくは3000~50000の範囲を有するものが好適に使用できる。
コーティング組成物におけるポリイソシアネート化合物(C)の親水性化合物(B)に対する比(X)(固形分重量比率で(X)=(C)/(B)として算出)は、形成される塗膜と基材との密着性の観点から、0.02以上が好ましく0.1以上がより好ましい。また、コーティング組成物の安定性(ゲル化、高粘度化の抑制)の観点から、10以下が好ましく、形成される塗膜の高透明性(低Haze)の観点から5以下がより好ましい。比(X)は、0.02以上10以下、0.02以上5以下、0.1以上10以下、または0.1以上5以下であってよい。
また、イソシアネート系化合物(C)の粘度は、好ましくは1~50000mPa・s(20℃)、より好ましくは1~20000mPa・s(20℃)、さらに好ましくは10~10000mPa・s(20℃)である。イソシアネート系化合物(C)の粘度は、10~50000mPa・s(20℃)、10~20000mPa・s(20℃)、または10~10000mPa・s(20℃)であってよい。ポリイソシアネート化合物(C)の粘度は、50000mPa・s以下で水への分散が容易であるため好ましい。ここでの粘度は、一般的なE型粘度計で測定可能である。一実施形態において、粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製RE-80U)を用いて、回転数2.5rpm、25℃で測定される。
(D)成分:重合体粒子
本発明に係る塗膜を形成するためのコーティング組成物は、(A)成分及び(B)成分に加え、(D)成分として重合体粒子を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に加え、(D)成分として重合体粒子を含んでよい。 コーティング組成物(及びこれから形成される本発明の塗膜)は、更に(D)成分として重合体粒子を含有することが好ましい。一実施形態において、(D)成分は、(d1)成分:加水分解性珪素化合物と、(d2)成分:水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、及びエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するビニル単量体と、(d3)成分:乳化剤と、(d4)成分:水とを含む重合原液を重合して得られる重合体粒子である。
一実施形態において、(A)成分は、(D)成分と相互作用し、(D)成分の硬化剤として作用しうる。当該相互作用としては、例えば、(A)成分が一般に有する水酸基と、(D)成分が有する水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、及びエーテル基からなる群より選ばれる官能基との水素結合の形成、あるいは、(A)成分が一般に有する水酸基と、(D)成分を構成する(d1)成分の重合生成物との縮合(化学結合)などがある。また、(A)成分が、(D)成分と相互作用しながら(D)成分の粒子間に連続層を形成することが好ましい。これにより、得られる塗膜の密着性、耐水性及び耐候性が、より向上し得る。
(d1)成分としては、下記式(4)で表される化合物やその縮合生成物、及びシランカップリング剤等が使用可能である。
SiW (4)
(式(4)において、Wは炭素数1~20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1~20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1~20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基、アミド基から選ばれた少なくとも1種の基を表す。Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1~30個のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、及び、置換されていないか又は炭素数1~20のアルキル基若しくは炭素数1~20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6~20のアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を表す。xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数である。また、x+y=4である。)
なお、シランカップリング剤とは、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、又はイソシアネート基等の有機物と反応性を有する官能基が分子内に存在する化合物を意味する。
式(4)で表される化合物としては、具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘプチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ-n-プロポキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジエトキシシラン、ジ-n-ペンチルジメトキシシラン、ジ-n-ペンチルジエトキシシラン、ジ-n-ヘキシルジメトキシシラン、ジ-n-ヘキシルジエトキシシラン、ジ-n-ヘプチルジメトキシシラン、ジ-n-ヘプチルジエトキシシラン、ジ-n-オクチルジメトキシシラン、ジ-n-オクチルジエトキシシラン、ジ-n-シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ-n-シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類等が使用可能である。また、これらは、単独で使用されてもよいし、2種以上を混合して使用されてもよい。
また、(d1)成分としては、フェニル基を有する珪素アルコキシド(例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシラン等)が使用可能である。フェニル基を有する珪素アルコキシドを用いた場合、水及び乳化剤の存在下における重合安定性が良好となり、好適である。
更に、(d1)成分は、チオール基を有するシランカップリング剤や、(d1-1)成分として、ビニル重合性基を有する加水分解性珪素化合物を含んでもよい。これらを用いた場合、得られる塗膜の長期防汚染性が良好となり好適である。チオール基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が使用可能である。
また、(d1-1)成分としては、例えば、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn-プロポキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、及び2-トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等のビニル重合性基を有するシランカップリング剤等が使用可能である。
これらシランカップリング剤は、後述する(d2)成分との共重合又は連鎖移動反応により化学結合を生成し得る。このため、ビニル重合性基やチオール基を有するシランカップリング剤を上述した(d1)成分と混合若しくは複合化させて用いた場合、(d1)の重合生成物と後述する(d2)成分の重合生成物とを化学結合により複合化し得る。なお、(d1-1)成分の「ビニル重合性基」とは、例えば、ビニル基、アリル基等であり、なかでも3-(メタ)アクリルオキシプロピル基が好ましい。
また、(d1)成分は、(d1-2)成分として、環状シロキサンオリゴマーを含んでいてもよい。(d1-2)成分を用いることにより、得られる塗膜と基材との複合体の柔軟性が増加するので、ハードコート用として好適である。
環状シロキサンオリゴマーとして、下記式(5)で表される化合物が使用可能である。
(R’SiO) (5)
(式(5)において、R’は、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数が1~30個のアルキル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、及び、置換されていないか又は炭素数1~20のアルキル基若しくは炭素数1~20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6~20のアリール基から選ばれる少なくとも1種を表す。mは整数であり、2≦m≦20である。)
環状シロキサンオリゴマーのなかでも、反応性等の点から、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
なお、(d1)成分が縮合生成物として使用される場合、縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量(GPC法による)は、好ましくは200~5000であり、より好ましくは300~1000である。重合原液の(d1)成分の質量と、(D)成分の重合体粒子の質量との比(d1)/(D)は、重合安定性の観点から、好ましくは0.01/100~80/100であり、より好ましくは0.1/100~70/100である。一方、重合原液の(d1-1)成分の質量と、(D)成分の重合体粒子の質量との比(d1-1)/(D)は、重合安定性の観点から、好ましくは0.01/100~20/100であり、より好ましくは0.5/100~10/100である。
また、重合原液における(d1-1)成分と、(d2)成分との質量比(d1-1)/(d2)は、重合安定性の観点から、好ましくは0.1/100~100/100であり、より好ましくは0.5/100~50/100である。他方、重合原液の(d1-2)成分の質量と、(D)成分の重合体粒子の質量との比(d1-2)/(D)は、親水性の観点から、好ましくは0.01/100~20/100であり、より好ましくは0.5/100~5/100である。また、重合原液における(d1-2)成分と、(d2)成分との質量比(d1-2)/(d2)は、重合安定性の観点から、好ましくは0.5/100~50/100であり、より好ましくは1.0/100~20/100である。
次に、(d2)成分としての水酸基含有ビニル単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのような各種のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル及び4-ヒドロキシブチルビニルエーテルのような各種の水酸基含有ビニルエーテル類;2-ヒドロキシエチルアリルエーテルのような各種の水酸基含有アリルエーテル類;ポリエチレングリコール等に代表されるような種々のポリエーテルポリオールと、(メタ)アクリル酸等に代表されるような種々の不飽和カルボン酸とから得られるポリオキシアルキレングリコールのモノエステル類;上述したような各種の水酸基含有単量体類と、ε-カプロラクトン等に代表されるような種々のラクトン類との付加物;グリシジル(メタ)アクリレート等に代表されるような種々のエポキシ基含有不飽和単量体と、酢酸等に代表されるような種々の酸類との付加物;さらには、(メタ)アクリル酸等に代表されるような種々の不飽和カルボン酸類と、「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)等に代表されるようなα-オレフィンのエポキサイド以外の、種々のモノエポキシ化合物との付加物等の種々の水酸基含有ビニル単量体類等が使用可能である。
また、(d2)成分としてのカルボキシル基含有ビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸のような各種の不飽和カルボン酸類;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ-n-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノメチル、及びフマル酸モノ-n-ブチルのような不飽和ジカルボン酸類と、飽和1価アルコール類とのモノエステル類(ハーフエステル類);アジピン酸モノビニル及びコハク酸モノビニルのような各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、及び無水トリメリット酸のような各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と、前述した各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物;さらには、前述した各種のカルボキシル基含有単量体類とラクトン類とを付加反応させて得られる単量体類等が使用可能である。
(d2)成分としてのアミド基含有ビニル単量体としては、例えば、N-アルキル又はN-アルキレン置換(メタ)アクリルアミド等が使用可能である。より具体的には、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチルメタアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタアクリルアミド、N-n-プロピルメタアクリルアミド、N-メチル-N-n-プロピルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-メタクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N-アクリロイルモルホリン、N-メタクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、及びN-メチロールメタアクリルアミド等が使用可能である。
(d2)成分としてのアミノ基含有ビニル単量体としては、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジ-n-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、及びN-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリンのような各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルピリジン、及びN-ビニルカルバゾールN-ビニルキノリンのような各種の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;N-(2-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ジ-n-プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N-(4-ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミド、及びN-[2-(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリンのような各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;N-(2-ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N-(2-ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N-(2-ジ-n-プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N-(3-ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミド、及びN-(4-ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミドのような各種の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;2-ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2-ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3-ジメチルアミノプロピルビニルエーテル、及び4-ジメチルアミノブチルビニルエーテルのような各種の3級アミノ基含有ビニルエーテル類等が使用可能である。
(d2)成分としてのエーテル基含有ビニル単量体としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体のような各種のポリエーテル鎖を側鎖に有するビニルエーテル類、アリルエーテル類又は(メタ)アクリル酸エステル類のビニル単量体類等が使用可能である。具体的には、ブレンマーPE-90、PE-200、PE-350、PME-100、PME-200、PME-400、AE-350〔以上、日本油脂(株)製〕、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RA-1120、RA-2614、RMA-564、RMA-568、RMA-1114、及びMPG130-MA〔以上、日本乳化剤(株)製〕等が使用可能である。ここで、ポリオキシエチレン鎖のオキシエチレン単位は2~30が好ましい。オキシエチレン単位が2以上で、塗膜の適度な柔軟性が得られ、また30以下で、塗膜の過度な軟化が抑制され、耐ブロッキング性が保持される。
(d2)成分としてのビニル単量体は、他成分との水素結合性をより向上させる観点から、2級及び/又は3級アミド基を有することが好ましい。
重合原液の(d2)成分の質量と、(D)成分の重合体粒子の質量との比(d2)/(D)は、重合安定性の観点から、好ましくは0.1/1~0.5/1であり、より好ましくは0.2/1~0.4/1である。また、重合原液の(d2)成分の質量と、(A)成分の金属酸化物の質量との比(d2)/(A)は、(A)成分との水素結合性や配合安定性の観点から、好ましくは0.1/1~1/1であり、より好ましくは0.2/1~0.8/1である。
次に、(d3)成分としての乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤、酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、及び脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、及びイミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、及びポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤等が使用可能である。これらは1種を単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。
(d3)成分としては、得られる(D)成分の水分散安定性を向上させる観点、及び、得られる塗膜の長期防汚染性を向上させる観点から、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を用いることが好ましい。反応性乳化剤としては、より具体的には、スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体やそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、4級アンモニウム塩を有するビニル単量体等が使用可能である。
スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、且つスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~4のアルキルエーテル基、炭素数2~4のポリアルキルエーテル基、フェニル基、ナフチル基、及びコハク酸基よりなる群から選ばれる置換基を有する化合物;スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物等が使用可能である。
硫酸エステル基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~4のアルキルエーテル基、炭素数2~4のポリアルキルエーテル基、フェニル基、及びナフチル基よりなる群から選ばれる置換基を有する化合物が使用可能である。
スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物としては、具体的には、アリルスルホコハク酸塩が使用可能である。より具体的には、エレミノールJS-2(商品名)(三洋化成(株)製)、ラテムルS-120、S-180A、及びS-180(商品名)(花王(株)製)等が使用可能である。
また、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2~4のアルキルエーテル基又は炭素数2~4のポリアルキルエーテル基を有する化合物としては、具体的には、アクアロンHS-10又はKH-1025(商品名)(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE-1025N又はSR-1025(商品名)(旭電化工業(株)製)等が使用可能である。
また、ノニオン基を有するビニル単量体としては、具体的には、α-〔1-〔(アリルオキシ)メチル〕-2-(ノニルフェノキシ)エチル〕-ω-ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE-20、NE-30、NE-40等、旭電化工業(株)製)、及びポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN-10、RN-20、RN-30、RN-50等、第一製薬工業(株)製)等が使用可能である。
なお、重合原液の(d3)成分の使用量は、重合安定性の観点から、(D)成分の重合体粒子100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.001~5質量部である。
一実施形態において、塗膜の(D)成分は、上述した(d1)~(d3)の各成分、及び(d4)成分としての水を含む重合原液を重合して得られる重合体粒子である。なお、(d4)成分の使用量は、重合安定性の観点から、重合原液中の含有率として好ましくは30~99.9質量%である。また、重合原液には、(d1)~(d4)成分に加え、更に種々の成分を混合することができる。例えば、重合原液には、(d5)成分として、(d2)成分と共重合可能な他のビニル単量体を混合してもよい。生成する重合生成物の特性(ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、及び加水分解性珪素化合物(d1)の重合生成物との相溶性等)を制御する観点から、(d5)成分を用いることが好適である。
(d5)成分としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類の他、エポキシ基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、アニオン型ビニル単量体のような官能基を含有する単量体等が使用可能である。(d5)成分が、重合原液の全ビニル単量体中に占める割合は、好ましくは0.001~30質量%の範囲であり、より好ましくは0.05~10質量%の範囲である。生成する重合生成物の特性(ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、及び加水分解性珪素化合物(d1)の重合生成物との相溶性等)を制御する観点から、かかる質量%の範囲に設定することが好適である。
また、重合原液には、連鎖移動剤を混合してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、及びt-ドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、及びドデシルベンジルメルカプタンのような芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸のようなチオカルボン酸又はそれらの塩若しくはそれらのアルキルエステル類、又はポリチオール類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド及びチオグリコール、さらにはα-メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物等が使用可能である。連鎖移動剤の使用量は、重合安定性の観点から、全ビニル単量体合計量100質量部に対して、好ましくは0.001~30質量部であり、より好ましくは0.05~10質量部である。
更に、重合原液には、分散安定剤を混合してもよい。分散安定剤としては、例えば、ポリカルボン酸及びスルホン酸塩からなる群から選ばれる各種の水溶性オリゴマー類や、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水溶性又は水分散性アクリル樹脂などの合成又は天然の水溶性又は水分散性の各種の水溶性高分子物質が使用可能である。また、これらの1種又は2種以上の混合物を使用可能である。重合原液の分散安定剤の使用量は、重合体粒子(D)100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.001~5質量部である。
重合原液の重合は、重合触媒の存在下で実施するのが好ましい。(d1)成分の重合触媒としては、例えば、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類、酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類、硫酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類、酸性又は弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、及び硝酸のような酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ-(2-アミノエチル)-アミノプロピルトリメトキシシランのような塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、及びジブチル錫ジラウレートのような錫化合物等が使用可能である。なかでも、加水分解性珪素化合物(d1)の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としても作用する酸性乳化剤類、特に炭素数が5~30のアルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸等)が好ましい。
また、(d2)成分の重合触媒としては、熱又は還元性物質などによってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好適である。水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が好ましく使用される。より具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t-ブチルヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、及び2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等が使用可能である。
重合原液における重合触媒の使用量は、全ビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.001~5質量部である。なお、重合速度の促進、及び70℃以下等の低温での重合を望まれる場合は、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、及びロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
一実施形態において、(d1)成分の重合と、(d2)成分との重合とは、別々に実施することも可能であるが、同時に実施すると、水素結合等によるミクロな有機・無機複合化が達成できるので好ましい。
一実施形態に係る塗膜の(D)成分を得る方法としては、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下で、(d1)成分と(d2)成分とを重合する、いわゆる乳化重合が適している。乳化重合の方法としては、例えば、(d1)成分と(d2)成分、更には必要に応じて(d3)成分を、そのまま、又は乳化した状態で、一括若しくは分割で、又は連続的に反応容器中に滴下し、重合触媒の存在下、好ましくは大気圧から必要により10MPaまでの圧力下で、約30~150℃の反応温度で重合させる方法がとられうる。場合によっては、これ以上の圧力、又はこれ以下の温度条件で重合を行ってもよい。なお、重合原液の配合としては、重合安定性の観点から、最終固形分量が0.1~70質量%、好ましくは1~55質量%の範囲になるよう(d1)~(d4)の各成分を配合することが好ましい。
更に、乳化重合を行なう際には、粒子径を適度に成長又は制御する観点から、シード重合法を用いることが好ましい。シード重合法とは、予め水相中にエマルジョン粒子(シード粒子)を存在させて重合させる方法である。シード重合法を行なう際の重合系中のpHは、好ましくは1.0~10.0であり、より好ましくは1.0~6.0である。重合中のpHは、燐酸二ナトリウムやボラックス、又は、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等のpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
また、(D)成分を得る方法としては、(d1)成分を重合させるのに必要な(d3)成分及び(d4)成分の存在下、(d1)成分及び(d2)成分を、必要により溶剤存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水を添加する手法も使用可能である。
さらに、(D)成分は、得られるコーティング組成物を用いて形成される塗膜の基材密着性を向上させる観点から、コア層と、コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層と、を備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。コア/シェル構造を形成する方法としては、乳化重合を多段で行なう、多段乳化重合が有用である。
多段乳化重合においては、例えば(d3)成分及び(d4)成分の存在下、(d1)、(d2)、及び(d5)成分よりなる群から選択される少なくとも1種以上を重合してシード粒子を形成する第一段階が実施され、次に、シード粒子の存在下、(d1)成分及び(d2)成分、更には必要に応じ(d5)成分を含む重合原液を添加して重合する第二段階が実施される(2段重合法)。さらに3段以上の多段乳化重合を実施する場合、(d1)成分及び(d2)成分、及び必要に応じ(d5)成分を含む重合原液を添加して重合する第三段階が実施されてもよい。このような方法は、重合安定性の観点からも好適である。なお、重合安定性の観点から、コア層において、(d2)成分と(d1)成分との質量比(d2)/(d1)は、好ましくは0.01/1~1/1である。また、シェル層の最外層において、(d2)成分と(d1)成分との質量比(d2)/(d1)は、好ましくは0.1/1~5/1であり、さらに好ましくは0.5/1~4/1である。
2段重合法において、第一段階において用いられる重合原液中の固形分質量(M1)と、第二段階において添加される重合原液中の固形分質量(M2)との質量比は、重合安定性の観点から、好ましくは(M1)/(M2)=9/1~1/9であり、より好ましくは8/2~2/8である。
また、コア/シェル構造は、重合安定性の観点から、シード粒子の粒径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)が大きく変化することなく、第二段階の重合によって粒子径が増大した構造を有することが好ましい。なお、体積平均粒子径は、数平均粒子径と同様に測定し得る。また、コア/シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析等により観察することができる。
コア/シェル構造のコア層のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下である。コア層のガラス転移温度(Tg)がこの範囲内であることにより、得られる塗膜の物性として、室温における柔軟性に優れ、割れ等が生じにくい。なお、ここでのTgは示差走査熱量測定装置(DSC)で測定することができる。
一実施形態において、コーティング組成物(及びこれから形成される塗膜)の(D)成分の数平均粒子径は、例えば10nm~800nmである。数平均粒子径が10nm~800nmの(D)成分と、数平均粒子径が1nm~400nmの(A)成分と組み合わせて組成物を形成することにより、得られる塗膜の耐候性、防汚染性が良好となる。また、得られる塗膜の光学特性、ハードコート性の観点から、(D)成分の数平均粒子径は、好ましくは20nm~250nmである。(D)成分の数平均粒子径の測定法については、(A)成分と同じものが採用され得る。
コーティング組成物(及びこれから形成される塗膜)における(A)成分と(D)成分との質量比(A)/(D)は、好ましくは50/100~1000/100であり、より好ましくは100/100~300/100である。この範囲で配合することにより、親水性、防曇性、光学特性、及び防汚染性に優れた塗膜を形成し得る。また、(A)成分の全粒子の表面積(SA)と(B)成分の全粒子の表面積(SB)との比(SA)/(SB)は、好ましくは0.001~1000の範囲である。なお、ここでの表面積は、(A)成分及び(B)成分の各々の粒子径、及び各々の配合質量数(つまり粒子径分布)から算出可能である。
(E)成分:加水分解性珪素化合物
本発明に係る塗膜を形成するためのコーティング組成物は、(A)成分及び(B)成分に加え、(E)成分として加水分解性珪素化合物を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に加え、(E)成分として加水分解性珪素化合物を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分及び(D)成分に加え、(E)成分として加水分解性珪素化合物を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分に加え、(E)成分として加水分解性珪素化合物を含んでよい。
一実施形態において、コーティング組成物(及びこれから形成される塗膜)は、(E)成分:下記式(6)、下記式(7)、又は下記式(8)で表される加水分解性珪素化合物をさらに含んでいてもよい。この場合、コーティング組成物における(A)成分と(D)成分との質量比は、例えばA/D=50/100~1000/100であり、(A)成分と(E)成分との質量比は、例えばE/A=5/100~90/100である。以下、下記式(6)で表される加水分解性珪素含有化合物を(e1)成分とし、下記式(7)で表される加水分解性珪素含有化合物を(e2)成分とする。
SiX4-n (6)
(式(6)において、Rは水素又は炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を表す。またこれらの置換基上にさらにハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基等の官能基を有していてもよい。Xは加水分解基を表し、nは0~3の整数である。加水分解基とは加水分解により水酸基が生じる基であればよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基等が挙げられる。)
Si-R -SiX (7)
(式(7)において、Xは加水分解基を表し、Rは炭素数1~6のアルキレン基又はフェニレン基を表す。また、nは0又は1である。)
(e1)成分及び(e2)成分としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン、テトラ(i-プロポキシ)シラン、テトラ(n-ブトキシ)シラン、テトラ(i-ブトキシ)シラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3-ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリフルオロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、テトラキス(メチルエチルケトキシム)シラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン等が使用可能である。
また、下記式(8)で表される加水分解性珪素含有化合物を(e3)成分とする。(e3)成分としては、具体的には、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「Mシリケート51」多摩化学工業(株)製、商品名「MSI51」コルコート(株)製)、商品名「MS51」、「MS56」三菱化学(株)製)、テトエトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「シリケート35」、「シリケート45」多摩化学工業(株)製、商品名「ESI40」、「ESI48」コルコート(株)製)、及びテトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの共部分加水分解縮合物(商品名「FR-3」多摩化学工業(株)製、商品名「EMSi48」コルコート(株)製)等が使用可能である。
-(O-Si(OR-OR (8)
(式(8)において、Rは、炭素数1~6のアルキル基を表す。nは、2~8の整数である。)
加水分解性珪素化合物(E)は、単独又は2種以上の混合物として用いてよい。また、コーティング組成物における(A)成分と(E)成分との質量比は、E/A=5/100~90/100であり、好ましくはE/A=5/100~70/100である。E/Aが5/100以上であることで、形成される塗膜の耐擦過性を十分なものとすることができ、E/Aが90/100以下であることで、塗膜の強度が適当に保持され、良好なハードコート性能が得られる。
他の任意成分
本発明に係る塗膜を形成するためのコーティング組成物は、(A)成分及び(B)成分に加え、以下に例示されるような任意成分((C)、(D)または(E)成分以外のもの)を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に加え、以下に例示されるような任意成分((D)または(E)成分以外のもの)を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分及び(D)成分に加え、以下に例示されるような任意成分((C)または(E)成分以外のもの)を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分及び(E)成分に加え、以下に例示されるような任意成分((C)または(D)成分以外のもの)を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分に加え、以下に例示されるような任意成分((E)成分以外のもの)を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(E)成分に加え、以下に例示されるような任意成分((D)成分以外のもの)を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分に加え、以下に例示されるような任意成分((C)成分以外のもの)を含んでよい。また、コーティング組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分に加え、以下に例示されるような任意成分を含んでよい。
一実施形態において、塗膜を得るためのコーティング組成物には、その用途及び使用方法などに応じて、通常、塗料や成型用樹脂に添加配合される添加剤成分、例えば、界面活性剤、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等を、それぞれの目的に応じて選択したり、組み合わせたりして配合することができる。
界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸、脂肪酸ナトリウム、アルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルリン酸塩のようなアニオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、塩化アルキルピリジニウム、塩化ベンザルコニウムのようなカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、アルキルモノグリセリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのようなノニオン性界面活性剤、ラウリルジアルキルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジアルキルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジアルキルスルホプロピルベタイン、ヘキサデシルアミノメチルジアルキルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジアルキルスルホプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルメチル-β-アラニン、ラウリルジメチルアミンN-オキシド、オレイルジメチルアミンN-オキシドのような両性イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらを親水性化合物(B)と併用することによって、得られる塗膜の親水性、防曇性、耐水性がより向上する。これらの界面活性剤は、これらの中でも、特に炭素数が10以上の長鎖アルキル基を有する界面活性剤、及び/又はフッ素原子を分子内に有する界面活性剤を用いた場合、塗膜内から水への溶出が抑制される傾向にあることから、耐水性の観点でより好ましい。
架橋反応触媒及び/又は硬化触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等のジアルキルスズジカルボキシレートや、ジブチルスズオキサイド等のスズオキサイド化合物、2-エチルヘキサン酸スズ、2-エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩等の金属カルボン酸塩、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’-エンドエチレンピペラジン、及びN,N’-ジメチルピペラジンのような3級アミン類等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく用いられる。なかでも、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性光安定剤が好ましい。また、紫外線吸収剤としては、例えば有機系紫外線吸収剤が使用可能である。有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤等が使用可能である。なかでも、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤を用いることが好ましい。また、紫外線吸収能の高いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。なお、光安定剤を、有機系紫外線吸収剤と併用することが好ましい。両者を併用することにより、コーティング組成物から形成される塗膜の耐候性を向上させ得る。なお、これらの有機系紫外線吸収剤及び光安定剤等の各種添加剤成分は、(A)成分及び(D)成分に単に配合してもよいし、(D)成分を合成する際に共存させてもよい。
これらの任意成分は、特に限定されないが、通常、(A)成分及び(B)成分ならびに任意選択の(C)成分及び/又は(D)成分及び/又は(E)成分に対して、10質量部以下、5質量部以下、または3質量部以下の配合量で用いることができる。
基材
基材は、コーティング層により特に優れた防曇性、防曇持続性を付与される対象として位置付けられる。種々の材料を基材として採用することができる。なお、一実施形態においては、基材は、樹脂製であることが好ましい。上記樹脂製の基材としては、特に限定されないが、例えば、合成樹脂や天然樹脂等の有機基材を挙げることができる。
上記合成樹脂としては、熱可塑性樹脂と硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂等)を使用することができる。より詳細には、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン-アクリル樹脂等を挙げることができる。しかしながら、上記に限定されるものではない。
また、上記天然樹脂としては、特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂、天然ゴム等のイソプレン系樹脂、カゼイン等のタンパク質系樹脂等を挙げることができる。
一実施形態において、樹脂板の表面は、コロナ放電処理やフレーム処理、プラズマ処理等の表面処理がされてあっても構わないが、これらの表面処理は必須ではない。
使用される基材の種類、厚みや、表面処理により形成される膜の厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜設定することができる。
コーティング組成物の製造
典型的な一実施態様において、本発明に係る塗膜を形成するためのコーティング組成物は、(A)成分と(B)成分を予め混合後、水と混合する工程、および40℃未満で10分以上撹拌する工程を含む方法によって製造することができる。一般に水を含むコーティング組成物を製造する際は、コーティング組成物中に含まれる各成分をそれぞれ水で希釈後に混合する方法、水の中に各成分を混合する方法、および予め各成分を混合後、水で希釈する方法などが挙げられる。本発明においては(A)成分と(B)成分を予め混合することが好ましい。予め混合することによって(A)成分と(B)成分が強固に相互作用を形成し得る。そのようにして作成したコーティング組成物から得られる塗膜は耐水性が優れるため好ましい。さらに40℃未満で10分以上撹拌することにより、(A)成分と(B)成分が均一に分散したコーティング組成物を形成し得る。25℃以下で混合し1時間以上混合することにより、(A)成分と(B)成分とが安定な分散体を形成し、シリカ表面の被覆率が上昇し成膜性が向上するためより好ましい。そのようにして作成したコーティング組成物から得られる塗膜は、透明性が高く外観が優れるため好ましい。
塗膜の製造
一実施形態に係る塗膜は、例えば、水等の溶媒等に分散させたコーティング組成物(「水分散体」と略記することがある)を基材上に塗工し、乾燥して形成されうる。水分散体の粘度としては、好ましくは20℃において0.1~100000mPa・sであり、好ましくは1~10000mPa・sである(振動式粘度計により測定)。塗工方法としては、例えばスプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、及びフレキソ印刷法等が使用可能である。なお、基材と塗膜との複合体は、例えば、塗膜を基材上で乾燥した後、所望により好ましくは20℃~500℃、より好ましくは40℃~250℃での熱処理や紫外線照射等を行って形成してもよい。
一実施形態において、コーティング組成物を基材上に塗工後、第一乾燥過程として50℃以上120℃以下の温度で10分乃至15分熱処理を行い、さらに第二乾燥過程として70℃以上120℃以下の温度で10分乃至30分熱処理を行うことが、基材との密着性、外観、耐擦過性の観点で好ましい。この第一乾燥過程における熱処理の温度は、塗膜外観の観点からは50℃以上80℃以下がより好ましい。第二乾燥過程における熱処理の温度は、生産性、適用可能な基材種の観点からは100℃以下が好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
このように形成された塗膜の表面についての望ましいXPS元素分析による特性は、(B)成分に関連して上述したとおりである。
塗膜の厚みは、好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.2~10μmである。透明性の面から、塗膜は100μm以下であることが好ましく、耐候性及び防汚染性等の機能を発現するためには、0.1μm以上であることが好ましい。なお、一実施形態において、「塗膜」は必ずしも連続膜である必要はなく、不連続膜、島状分散膜等の態様であっても構わない。一実施態様において、塗膜の厚みは、0.1~50μm、0.1~10μm、0.2~100μm、0.2~50μm、0.5~100μm、0.5~50μm、0.5~10μm、1~100μm、1~50μm、または1~10μmであってもよい。
また、本発明の塗膜は、1μmを超える膜厚であっても成膜性が良好であり、防曇性に優れ、高温多湿下などに晒された場合においても防曇性を持続可能な防曇塗膜を提供することができる。好ましい一実施形態において、本発明の塗膜は、3μmを超える膜厚であっても成膜性が良好であり、防曇性に優れ、高温多湿下などに晒された場合においても防曇性を持続可能な防曇塗膜を提供することができる。さらに好ましい一実施形態において、本発明の塗膜は、4μmを超える膜厚であっても成膜性が良好であり、防曇性に優れ、高温多湿下などに晒された場合においても防曇性を持続可能な防曇塗膜を提供することができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。本発明の主題は、あくまで添付の特許請求の範囲によって決定され得るものであり、その文言上の範囲に加え、当業者によって自明な変更、均等物などを含む。
なお、各種物性は下記の方法で評価した。
<数平均粒子径>
試料中の固形分含有量が1~20質量%となるよう適宜溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日本国日機装製マイクロトラックUPA-9230)を用いて測定した。
<水接触角>
塗膜に脱イオン水の水滴を乗せ、23℃で一定時間放置した後、接触角測定装置(日本国協和界面科学製 CA-X150型接触角計)を用いて下記に従い水接触角、および水接触角変化度を測定した。
・水接触角(°):塗膜に脱イオン水の水滴を乗せ、0.1秒経過後の水接触角
・飽和水接触角(°):塗膜に脱イオン水の水滴を乗せ、5秒経過後の水接触角
・水接触角変化度:水接触角(°)/飽和水接触角(°)
<塗膜外観>
得られた塗膜の外観を、以下のように目視で評価した。
◎:クラック、ひび割れが一切なく透明である。
○:クラック、ひび割れがないが一部白濁している。
×:クラック、ひび割れがある。
<密着性試験(碁盤目試験)>
得られた塗膜について、JIS-K5600-5-6に準拠した方法で1mm角100マスの碁盤目試験で下記のように評価した。
○:剥離がない。
△:剥離が50%未満である。
×:剥離が50%以上である。
<防曇性試験>
80℃に保った温水浴の水面から5cmの高さのところに、得られた塗膜の試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からの蒸気を塗膜に連続照射し、照射から30秒後の曇りの有無を目視によって下記のように評価した。なお、評価が△以上であれば実用上問題なく、○であればより好ましい。
○:全く曇らない。
△:曇りはないが水膜が不均一であり視認性が劣る。
×:曇る。
<耐擦過性>
塗膜表面をキムワイプで一往復擦った際の塗膜の状態をデジタル顕微鏡にて観察し、下記のように評価した。
○:傷、剥離がともにない。
△:剥離はないが傷が有る。
×:塗膜ごと剥離する。
<XPS測定>
塗膜表面の相対元素濃度をXPS(アルバックファイ Verasa probeII)により測定した。励起源はmono.AlK・(15kV×0.3mA)、分析サイズ約200mmφ、光電子取出角45°として実施した。
取り込み領域は
Survey scan: 0~1,100 eV
Narrow scan: C1s、O1s、Si2p、N1sとし、
Pass Energyは、
Survey scan: 188eV
Narrow scan: 47eV
として測定し、C1sスペクトルと金属酸化物(シリカ)由来の金属(M)スペクトルとから得られるC元素と金属元素の元素濃度比(C1s/M)および炭素-酸素結合、炭素-窒素結合由来のC元素の相対元素濃度(atomic%)を求めた。
C1sのピーク分離では各成分の半値幅が同じとなるようにした。
<耐湿試験>
作製した塗膜を85℃85%RHの環境下に24時間曝露後、23℃50%RHの環境下に一時間静置させた。得られた塗膜に関し塗膜外観、密着性、水接触角、防曇性を評価した。
<合成例1(重合体粒子(D)水分散体の合成)>
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸4gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン117gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。次にアクリル酸ブチル86g、フェニルトリメトキシシラン133g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gの混合液とN,N-ジエチルアクリルアミド137g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR-1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1900gの混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。さらに反応容器中の温度が80℃の状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で固形分を10.0質量%に調整し、数平均粒子径85nmの重合体粒子(D)水分散体を得た。
参考例1〕
金属酸化物(A)として数平均粒子径4nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックス-OXS」、日産化学工業(株)製、固形分10質量%)40.0gに、親水性化合物(B)として、あらかじめ50℃に加熱したポリオキシエチレン-オキシプロピレン-オキシエチレントリブロックコポリマー(商品名「P123」、Sigma-Aldrich Japan製、固形分100質量%、密度1.1g/cm、平均粒径2.1nm)40gをゆっくり混合後、混合液の温度が25℃になるよう水冷しながら1時間攪拌した。その後蒸留水213gを混合後、25℃でさらに1時間攪拌し、固形分15%のコーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を縦60mm×横60mm×厚さ2mmのポリカーボネート板(タキロン社製)にバーコーター#65によりコーティングし、20℃の環境で30分間乾燥させた。その後、80℃で30分間乾燥することにより、試験板を得た。得られた塗膜の膜厚は5μmであった。塗膜外観は良好(クラック無し、透明)であった。また、水接触角は、45°、水接触角変化度は1.6であった。表面のXPSによる元素分析においてC1sスペクトルとシリカ由来のSiスペクトルから得られるC元素とSi元素との元素濃度比(C1s/Si)は11、炭素-酸素結合、炭素-窒素結合に由来するC1sスペクトルから得られるC元素の相対元素濃度は43atomic%であった。得られた試験片を温度85℃、85%RHの環境試験器に24時間入れ、次いで温度23℃、50%RHの環境下に1時間静置させた後、塗膜外観、密着性、水接触角、防曇性の評価を行った結果、塗膜外観は良好で水接触角(親水性の指標の一つ)、防曇性も維持されており、耐湿性は概して良好であった。コーティング組成物の各成分の配合量(質量部)を表1に示す。初期特性を含めた各評価結果を表2に示す。
参考例2、実施例3、参考例4及び比較例1~4〕
参考例2、実施例3、参考例4及び比較例1~4にて、表1及び表3に示すとおり、成分の種類や配合量(質量部)を変えること以外は参考例1に準じた方法でコーティング組成物を製造し、塗膜試験片を作製して塗膜性能の評価を行った。初期特性を含めた塗膜性能の評価結果を表2及び表4に示す。
〔比較例5〕
金属酸化物(A)として数平均粒子径4nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックス-OXS」、日産化学工業(株)製、固形分10質量%)40.0g、親水性化合物(B)として、ポリオキシエチレン-オキシプロピレン-オキシエチレントリブロックコポリマー(商品名「P123」、Sigma-Aldrich Japan製、固形分100質量%、密度1.1g/cm、平均粒径2.1nm)40.0gを混合後50℃で1時間撹拌した。その後蒸留水17.3gを混合後、50℃で10分攪拌した。撹拌後のコーティング組成物は著しく増粘しており成膜不可であった。比較例5のコーティング組成物(塗膜の原料)の各成分の配合量(質量部)を表3に示す。
〔比較例6〕
金属酸化物(A)として数平均粒子径4nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックス-OXS」、日産化学工業(株)製、固形分10質量%)40.0g、親水性化合物(B)として、ポリオキシエチレン-オキシプロピレン-オキシエチレントリブロックコポリマー(商品名「P123」、Sigma-Aldrich Japan製、固形分100質量%、密度1.1g/cm、平均粒径2.1nm)40.0gを混合後25℃で1時間撹拌した。その後蒸留水356.0gを混合後、25℃で1時間攪拌した。撹拌後のコーティング組成物(蒸留水濃度98%;固形分濃度2%)は成膜性が低く基材上に成膜不可であった。比較例6のコーティング組成物(塗膜の原料)の各成分の配合量(質量部)を表3に示した。
Figure 0007026446000002
表1中に注記された各参照番号は、以下を意味する。
1)STOXS:日産化学工業(株)製、スノーテックス-OXS、固形分10質量%、酸性タイプ、数平均粒子径4nm
2)STO:日産化学工業(株)製、スノーテックス-O、固形分20質量%、酸性タイプ、数平均粒子径15nm
3)P123:Sigma-Aldrich Japan製、固形分100質量%
4)ポリイソシアネートA:旭化成(株)製、WT30-100、固形分100質量%
Figure 0007026446000003
Figure 0007026446000004
表3中に注記された参照番号は、以下を意味する。
5)L44:(株)ADEKA製、プルロニックL-44、固形分100質量%
6)PEG4000:東京化成工業(株)製、ポリエチレングリコール4,000、固形分100質量%
Figure 0007026446000005
比較例1、比較例5、比較例6については基材への成膜が困難であったため、各種塗膜物性評価は実施していない。
<評価結果>
表2及び表4から明らかなように、本発明の塗膜である参考例2、実施例3、参考例4は、塗膜外観、防曇性、耐湿性の全てにおいて優れた塗膜性能を有していた。特に、硬化剤(C)を配合した実施例3においては耐擦過性、耐湿試験後の塗膜の基材に対する密着性が更に改善された。重合体粒子(D)を配合した参考例4においては、耐湿試験後の塗膜の基材に対する密着性が更に改善された。一方、比較例1のコロイダルシリカのみからなるコーティング組成物を使用した場合、基材へのぬれ性、成膜性に乏しく塗膜が得られなかった。比較例2、比較例3のようにコロイダルシリカに対する親水性化合物の量が十分でない場合、成膜性が低く1μmを超える膜厚ではクラックが生じ外観が不良であった。比較例4のPEG4000を親水性化合物として用いて作製した塗膜は、コロイダルシリカと親水性化合物との相互作用が弱くコロイダルシリカ表面に親水性化合物が固定化されないため、成膜性が低く外観、耐湿性ともに非常に悪かった。比較例5のように組成物を50℃で混合、撹拌した場合、組成物の著しい増粘、凝集が生じ成膜不可であった。比較例6のように組成物中の固形分濃度が2質量%の場合、基材への濡れ性が悪く成膜不可であった。
本発明の塗膜は、厚膜成膜性、塗膜外観、親水性、防曇性に優れ、高温多湿下のような過酷な環境下においても防曇性を長期に維持可能である。従って、本発明の塗膜は高い防曇性が必要とされる防曇塗膜として、特に好適に使用できる。さらに、例えば自動車のヘッドランプ等の車両灯具などの自動車外装部品用の塗膜として、高湿度環境下での防曇耐久性が求められる用途のために用いることができる。また、本発明の塗膜は、各種機器の内部部品や高所に設置される部品のように、曇り除去のために容易に取り出すことができないような部品にも用いることができる。本発明に係る塗膜について上述した特徴及び利点の全ては、これらの防曇塗膜、自動車外装部品用塗膜、内部部品用塗膜についても適用される。

Claims (7)

  1. 金属酸化物(A)と親水性化合物(B)とを含み、表面のXPSによる元素分析においてC1sスペクトルと金属酸化物由来の金属(M)スペクトルとから得られるC元素と金属元素との元素濃度比(C1s/M)が10以上であり、水接触角の値が40°以上であり、イソシアネート系化合物(C)をさらに含むことを特徴とする塗膜。
  2. 水接触角変化度の値が1以上3以下である、請求項1に記載の塗膜。
  3. 表面のXPSによる元素分析において炭素-酸素結合及び/又は炭素-窒素結合に由来するC1sスペクトルから得られるC元素の相対元素濃度が5atomic%以上である請求項1又は2に記載の塗膜。
  4. 上記金属酸化物(A)が、コロイダルシリカである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塗膜。
  5. 上記親水性化合物(B)が、非共有結合及び/又は共有結合を介して上記金属酸化物表面に結合していることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の塗膜。
  6. 重合体粒子(D)をさらに含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の塗膜。
  7. 金属酸化物(A)、親水性化合物(B)、イソシアネート化合物(C)並びに、任意選択で、重合体粒子(D)及び/又は水を含有し、請求項1~6のいずれか一項に記載の塗膜を製造するためのコーティング組成物。
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