以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と略記することがある。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。ここで、実施の形態に係る機能性複合体の製造方法は、基材の少なくとも片面に、(A)成分:粒子径が1nm〜400nmの金属酸化物と、(B)成分:粒子径が10nm〜800nmの重合体エマルジョン粒子と、を含有する組成物を塗布して塗膜を得る工程(以下、「第1の工程」という)と、その塗膜に対して70℃以上の加熱処理及び/又は0.1kPa以上の加圧処理を施す工程(以下、「第2の工程」という)とを有する機能性複合体の製造方法である。ここで、上記(B)成分は、(b1)成分:加水分解性珪素化合物と、(b2)成分:水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、エーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するビニル単量体と、(b3)成分:乳化剤と、(b4)成分:水とを含む重合原液を重合して得られる重合体エマルジョン粒子である。また、上記組成物(以下、「コーティング組成物」ともいう)において、(A)成分と(B)成分との質量比(A)/(B)は50/100〜450/100である。
実施の形態において、(A)成分は(B)成分と相互作用し、(B)成分の硬化剤として作用しうる。当該相互作用としては、例えば、(A)成分が一般に有する水酸基と、(B)成分が有する水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、及びエーテル基からなる群より選ばれる官能基との水素結合の形成、あるいは、(A)成分が一般に有する水酸基と、(B)成分を構成する(b1)成分の重合生成物との縮合(化学結合)等がある。また、(A)成分が、(B)成分と相互作用しながら、(B)成分の粒子間に連続層を形成することが好ましい。これにより、得られるコーティング組成物の透明性及び耐候性が、より向上し得る。
(A)成分に用いられる金属酸化物としては、(B)成分との相互作用の観点から、例えば、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉛、酸化鉄、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、及び酸化セリウム等が使用可能である。なかでも、相互作用の強さの観点から、表面水酸基の多い二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アンチモン、及びそれらの複合酸化物等が好ましい。なお、(A)成分として、上述した金属酸化物の2種以上を併用してもよい。
さらに、(A)成分に用いられる金属酸化物に、防汚染性を付与する観点から、光照射により光触媒活性及び/又は親水性を発現する化合物(以下、単に「光触媒」と略記することがある)を用いてもよい。(A)成分として、光照射により光触媒活性を発現する化合物を用いることにより、得られるコーティング組成物の表面に、汚染有機物質の優れた分解活性や耐汚染性を発現し得る。なお、本実施の形態において「親水性」とは、測定対象物表面に対する水(23℃)の接触角が、好ましくは60゜以下、より好ましくは30゜以下、更に好ましくは20゜以下になることを意味する。
光触媒として、より具体的には、TiO2、ZnO、SrTiO3、BaTiO3、BaTiO4、BaTi4O9、K2NbO3、Nb2O5、Fe2O3、Ta2O5、K3Ta3Si2O3、WO3、SnO2、Bi2O3、BiVO4、NiO、Cu2O、RuO2、及びCeO2等が使用可能である、さらに、光触媒として、Ti、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(例えば特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)が使用可能である。これらの光触媒の中でも、TiO2(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、及びブルッカイト型のいずれも使用できる。
また、(A)成分に用いられる金属酸化物として、得られるコーティング組成物の帯電防止性能等を発現する観点から、導電性を有する金属酸化物を用いることができる。導電性を有する金属酸化物としては、例えば、錫をドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、酸化スズ、及び酸化亜鉛等が使用可能である。
(A)成分は、例えば、粉体、分散液、及びゾル等の形態で使用される。ここで、分散液又はゾルとは、(A)成分が、水及び/又は親水性有機溶媒中に0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%の濃度で、一次粒子及び/又は二次粒子として分散されたものを意味する。上記親水性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等、さらにはこれらの2種以上の混合物が使用可能である。
分散液又はゾルで観察される(A)成分の数平均粒子径(1次粒子と2次粒子との混合物であってもよいし、1次粒子、2次粒子何れかのみであってもよい)は、好ましくは1nm〜400nmであり、より好ましくは1nm〜100nmであり、更に好ましくは3nm〜80nmであり、特に好ましくは5nm〜50nmである。(A)成分の数平均粒子径は、得られるコーティング組成物を用いて形成される機能性複合体の光学特性等に寄与し得る。特に、数平均粒子径を100nm以下とすることにより、得られる機能性複合体の透明性を大きく向上させ得る。なお、本実施の形態における数平均粒子径(単に、「粒子径」と略記することがある)とは、後述する実施例の方法に準じて測定された値である。
実施の形態で使用される金属酸化物(A)としては、取扱い性の観点からコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカは、ゾル−ゲル法で調製されてもよいし、市販品を利用してもよい。ゾル−ゲル法で調製する場合には、Werner Stober et al;J.Colloid and Interface Sci., 26, 62−69 (1968)、Rickey D.Badley et al;Lang muir 6, 792−801 (1990)、色材協会誌,61 [9] 488−493 (1988)等を参照できる。コロイダルシリカは、二酸化ケイ素を基本単位とするシリカの水又は水溶性溶媒の分散体である。コロイダルシリカの粒子径は1〜400nmであり、好ましくは1〜100nmであり、より好ましくは5〜50nmである。粒子径が1nm以上の場合、塗液の貯蔵安定性が良好となる傾向にある。また、粒子径が400nm以下の場合、透明性が良好となる傾向にある。
上記範囲の粒子径のコロイダルシリカは、水性分散液の状態で、酸性及び塩基性のいずれであっても用いることができ、混合する水性分散体(B)の安定領域に応じて、適宜選択することができる。水を分散媒体とする酸性のコロイダルシリカとしては、例えば市販品として日産化学工業(株)製スノーテックス(登録商標)−O、スノーテックス−OL、旭電化工業(株)製アデライト(登録商標)AT−20Q、クラリアントジャパン(株)製クレボゾール(登録商標)20H12、及びクレボゾール30CAL25等が利用できる。
塩基性のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及びアミンの添加で安定化したシリカがあり、例えば日産化学工業(株)製スノーテックス−20、スノーテックス−30、スノーテックス−C、スノーテックス−C30、スノーテックス−CM40、スノーテックス−N、スノーテックス−N30、スノーテックス−K、スノーテックス−XL、スノーテックス−YL、スノーテックス−ZL、スノーテックスPS−M、及びスノーテックスPS−L等が使用可能である。あるいは、旭電化工業(株)製アデライトAT−20、アデライトAT−30、アデライトAT−20N、アデライトAT−30N、アデライトAT−20A、アデライトAT−30A、アデライトAT−40、及びアデライトAT−50等も使用可能である。さらに、クラリアントジャパン(株)製クレボゾール30R9、クレボゾール30R50、及びクレボゾール50R50等や、デュポン社製ルドックス(登録商標)HS−40、ルドックスHS−30、ルドックスLS、及びルドックスSM−30等も使用可能である。
また、水溶性溶剤を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製MA−ST−M(粒子径が20〜25nmのメタノール分散タイプ)、IPA−ST(粒子径が10〜15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG−ST(粒子径が10〜15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EG−ST−ZL(粒子径が70〜100nmのエチレングリコール分散タイプ)、及びNPC−ST(粒子径が10〜15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)等が使用可能である。なお、これらコロイダルシリカは、一種又は二類以上組み合わせて使用されてもよい。また、少量成分として、アルミナ、及びアルミン酸ナトリウム等を含んでいてもよい。さらに、コロイダルシリカは、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニウムなど)等を含んでいてもよい。
次に、実施の形態にかかる機能性複合体の(B)成分は、上述したように、(b1)成分:加水分解性珪素化合物と、(b2)成分:水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、及びエーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するビニル単量体と、(b3)成分:乳化剤と、(b4)成分:水とを含む重合原液を重合して得られる重合体エマルジョン粒子である。(B)成分としては、(b1)成分に由来する水酸基と、(b2)成分の重合生成物とが、水素結合等により複合化されたものを用いることが好適である。
(b1)成分としては、下記式(4)で表される化合物やその縮合生成物、及びシランカップリング剤等が使用可能である。
SiWxRy (4)
(式(4)において、Wは炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基、アミド基から選ばれた少なくとも1種の基を示す。Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を示す。xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数である。また、x+y=4である。)
なお、シランカップリング剤とは、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、又はイソシアネート基等の有機物と反応性を有する官能基が分子内に存在する化合物を意味する。
式(4)で表される化合物としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類;等が使用可能である。また、これらは、単独で使用されてもよいし、2種以上を混合して使用されてもよい。
また、(b1)成分としては、フェニル基を有する珪素アルコキシド(例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシラン等)が使用可能である。フェニル基を有する珪素アルコキシドを用いた場合、水及び乳化剤の存在下における重合安定性が良好となり、好適である。
更に、(b1)成分は、チオール基を有するシランカップリング剤や、(b1−1)成分として、ビニル重合性基を有する加水分解性珪素化合物を含んでもよい。これらを用いた場合、得られる耐溶剤用複合体の長期防汚染性が良好となり好適である。チオール基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が使用可能である。
また、(b1−1)成分としては、例えば、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、及び2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等のビニル重合性基を有するシランカップリング剤等が使用可能である。
これらシランカップリング剤は、後述する(b2)成分との共重合又は連鎖移動反応により化学結合を生成し得る。このため、ビニル重合性基やチオール基を有するシランカップリング剤を上述した(b1)成分と混合若しくは複合化させて用いた場合、(b1)の重合生成物と後述する(b2)成分の重合生成物とを化学結合により複合化し得る。なお、(b1−1)成分の「ビニル重合性基」とは、例えば、ビニル基、アリル基等であり、なかでも3(メタ)アクリルオキシプロピル基が好ましい。
また、(b1)成分は、(b1−2)成分として、環状シロキサンオリゴマーを含んでいてもよい。(b1−2)成分を用いることにより、得られる帯電防止用複合体の柔軟性がより良好となり、好適である。環状シロキサンオリゴマーとしては、下記式(5)で表される化合物が使用可能である。
(R’2SiO)m (5)
(式(5)において、R’は、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基若しくは炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基から選ばれる少なくとも1種を示す。mは整数であり、2≦m≦20である。)
環状シロキサンオリゴマーのなかでも、反応性等の点から、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
なお、(b1)成分が縮合生成物として使用される場合、縮合生成物のポリスチレン換算重量平均分子量(GPC法による)は、好ましくは200〜5000であり、より好ましくは300〜1000である。(b1)成分と、(B)成分との質量比(b1)/(B)は、重合安定性の観点から、好ましくは0.01/100〜80/100であり、より好ましくは0.1/100〜70/100である。一方、(b1−1)成分と、(B)成分との質量比(b1−1)/(B)は、重合安定性の観点から、好ましくは0.01/100〜20/100であり、より好ましくは0.5/100〜10/100である。
また、(b1−1)成分と、(b2)成分との質量比(b1−1)/(b2)は、重合安定性の観点から、好ましくは0.1/100〜100/100であり、より好ましくは0.5/100〜50/100である。他方、(b1−2)成分と、(B)成分との質量比(b1−2)/(B)は、親水性の観点から、好ましくは0.01/100〜20/100であり、より好ましくは0.5/100〜5/100である。また、(b1−2)成分と、(b2)成分との質量比(b1−2)/(b2)は、重合安定性の観点から、好ましくは0.5/100〜50/100であり、より好ましくは1.0/100〜20/100である。
次に、(b2)成分としての水酸基含有ビニル単量体には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのような各種のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル及び4−ヒドロキシブチルビニルエーテルのような各種の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテルのような各種の水酸基含有アリルエーテル類;ポリエチレングリコール等に代表されるような種々のポリエーテルポリオールと、(メタ)アクリル酸等に代表されるような種々の不飽和カルボン酸とから得られるポリオキシアルキレングリコールのモノエステル類;上述したような各種の水酸基含有単量体類と、ε−カプロラクトン等に代表されるような種々のラクトン類との付加物;グリシジル(メタ)アクリレート等に代表されるような種々のエポキシ基含有不飽和単量体と、酢酸等に代表されるような種々の酸類との付加物;さらには、(メタ)アクリル酸等に代表されるような、種々の不飽和カルボン酸類と、「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)等に代表されるような、α−オレフィンのエポキサイド以外の、種々のモノエポキシ化合物との付加物等の種々の水酸基含有ビニル単量体類等が使用可能である。
また、(b2)成分としてのカルボキシル基含有ビニル単量体には、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸のような各種の不飽和カルボン酸類;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、及びフマル酸モノ−n−ブチルのような不飽和ジカルボン酸類と、飽和1価アルコール類とのモノエステル類(ハーフエステル類);アジピン酸モノビニル及びコハク酸モノビニルのような各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、及び無水トリメリット酸のような各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と、前述した各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物;さらには、前述した各種のカルボキシル基含有単量体類とラクトン類とを付加反応させて得られる単量体類等が使用可能である。
(b2)成分としてのアミド基含有ビニル単量体には、例えば、N−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミド等が使用可能である。より具体的には、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルメタアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタアクリルアミド、N−n−プロピルメタアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、及びN−メチロールメタアクリルアミド等が使用可能である。
(b2)成分としてのアミノ基含有ビニル単量体には、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジ−n−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、及びN−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリンのような各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ビニルピリジン、及びN−ビニルカルバゾールN−ビニルキノリンのような各種の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(4−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミド、及びN−[2−(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリンのような各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;N−(2−ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミド、及びN−(4−ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミドのような各種の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテル、及び4−ジメチルアミノブチルビニルエーテルのような各種の3級アミノ基含有ビニルエーテル類等が使用可能である。
(b2)成分としてのエーテル基含有ビニル単量体には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体のような各種のポリエーテル鎖を側鎖に有するビニルエーテル類、アリルエーテル類又は(メタ)アクリル酸エステル類のビニル単量体類等が使用可能である。具体的には、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、AE−350〔以上、日本油脂(株)製〕、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、及びMPG130−MA〔以上、日本乳化剤(株)製〕等が使用可能である。ここで、ポリオキシエチレン鎖のオキシエチレン単位は2〜30が好ましい。2未満では塗膜の柔軟性が不十分となる場合があり、30を超えると塗膜が軟らかくなり、耐ブロッキング性が劣化する場合がある。
(b2)成分としてのビニル単量体は、他成分との水素結合性をより向上させる観点から、2級及び/又は3級アミド基を有することが好ましい。
(b2)成分と、(B)成分との質量比(b2)/(B)は、重合安定性の観点から、好ましくは0.1/1〜0.5/1であり、より好ましくは0.2/1〜0.4/1である。また、(b2)成分と、(A)成分との質量比(b2)/(A)は、(A)成分との水素結合性や配合安定性の観点から、好ましくは0.1/1〜1/1であり、より好ましくは0.2/1〜0.8/1である。
次に、(b3)成分としての乳化剤には、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤、酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、及び脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、及びイミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、及びポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤等が使用可能である。これらは1種を単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。
(b3)成分としては、得られる(B)成分の水分散安定性を向上させる観点、及び、得られる機能性複合体の長期防汚染性を向上させる観点から、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を用いることが好ましい。反応性乳化剤としては、より具体的には、スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体やそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、4級アンモニウム塩を有するビニル単量体等が使用可能である。
スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、且つスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、フェニル基、ナフチル基、及びコハク酸基よりなる群から選ばれる置換基を有する化合物;スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物等が使用可能である。
硫酸エステル基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、フェニル基、及びナフチル基よりなる群から選ばれる置換基を有する化合物が使用可能である。
スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩のような置換基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物としては、具体的には、アリルスルホコハク酸塩が使用可能である。より具体的には、エレミノールJS−2(商品名)(三洋化成(株)製)、ラテムルS−120、S−180A、及びS−180(商品名)(花王(株)製)等が使用可能である。
また、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物としては、具体的には、アクアロンHS−10又はKH−1025(商品名)(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−1025N又はSR−1025(商品名)(旭電化工業(株)製)等が使用可能である。
また、ノニオン基を有するビニル単量体としては、具体的には、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業(株)製)、及びポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)等が使用可能である。
なお、(b3)成分の使用量は、重合安定性の観点から、(B)成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.001〜5質量部である。
実施の形態に係るコーティング組成物の(B)成分は、上述した(b1)〜(b3)の各成分、及び(b4)成分としての水を含む重合原液を重合して得られる重合体エマルジョン粒子である。なお、(b4)成分の使用量は、重合安定性の観点から、重合原液中の含有率として好ましくは30〜99.9質量%である。また、重合原液には、(b1)〜(b4)成分に加え、更に種々の成分を混合することができる。例えば、重合原液には、(b5)成分として、(b2)成分と共重合可能な他のビニル単量体を混合してもよい。生成する重合生成物の特性(ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、及び加水分解性珪素化合物(b1)の重合生成物との相溶性等)を制御する観点から、(b5)成分を用いることが好適である。
(b5)成分としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類の他、エポキシ基含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、アニオン型ビニル単量体のような官能基を含有する単量体等が使用可能である。(b5)成分が全ビニル単量体中に占める割合は、好ましくは0.001〜30質量%の範囲であり、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲である。ガラス転移温度、分子量、水素結合力、極性、分散安定性、耐候性、及び加水分解性珪素化合物(b1)の重合生成物との相溶性等を制御する観点から、かかる質量%の範囲に設定することが好適である。
また、重合原液には、連鎖移動剤を混合してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、及びt−ドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、及びドデシルベンジルメルカプタンのような芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸のようなチオカルボン酸又はそれらの塩若しくはそれらのアルキルエステル類、又はポリチオール類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド及びチオグリコール、さらにはα−メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物等が使用可能である。連鎖移動剤の使用量は、重合安定性の観点から、全ビニル単量体合計量100質量部に対して、好ましくは0.001〜30質量部であり、より好ましくは0.05〜10質量部である。
更に、重合原液には、分散安定剤を混合してもよい。分散安定剤としては、例えば、ポリカルボン酸及びスルホン酸塩からなる群から選ばれる各種の水溶性オリゴマー類や、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水溶性又は水分散性アクリル樹脂などの合成又は天然の水溶性又は水分散性の各種の水溶性高分子物質が使用可能であり、また、これらの1種又は2種以上の混合物を使用可能である。分散安定剤の使用量は、重合体エマルジョン粒子(B)100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.001〜5質量部である。
重合原液の重合は、重合触媒の存在下で実施するのが好ましい。(b1)成分の重合触媒としては、例えば、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類、酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類、硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類、酸性又は弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、及び硝酸のような酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランのような塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、及びジブチル錫ジラウレートのような錫化合物等が使用可能である。なかでも、加水分解性珪素化合物(b1)の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としても作用する酸性乳化剤類、特に炭素数が5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸等)が好ましい。
また、(b2)成分の重合触媒としては、熱又は還元性物質などによってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好適である。水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が好ましく使用される。より具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が使用可能である。
重合触媒の使用量は、全ビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部である。なお、重合速度の促進、及び70℃以下等の低温での重合が望まれる場合は、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、及びロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
本実施の形態において、(b1)成分の重合と、(b2)成分の重合とは、別々に実施することも可能であるが、同時に実施すると、水素結合等によるミクロな有機・無機複合化が達成できるので好ましい。
実施の形態に係るコーティング組成物の(B)成分を得る方法としては、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下で、(b1)成分と(b2)成分とを重合する、いわゆる乳化重合が適している。乳化重合の方法としては、例えば、(b1)成分と(b2)成分、更には必要に応じて(b3)成分を、そのまま、又は乳化した状態で、一括若しくは分割で、又は連続的に反応容器中に滴下し、重合触媒の存在下、好ましくは大気圧から必要により10MPaの圧力下で、約30〜150℃の反応温度で重合させる方法がとられうる。場合によっては、これ以上の圧力、又はこれ以下の温度条件で重合を行ってもよい。なお、重合原液の配合としては、重合安定性の観点から、最終固形分量が0.1〜70質量%、好ましくは1〜55質量%の範囲になるよう、(b1)〜(b4)の各成分を配合することが好ましい。
更に、乳化重合を行なうに際には、粒子径を適度に成長又は制御する観点から、シード重合法を用いることが好ましい。シード重合法とは、予め水相中にエマルジョン粒子(シード粒子)を存在させて重合させる方法である。シード重合法を行なう際の重合系中のpHは、好ましくは1.0〜10.0であり、より好ましくは1.0〜6.0である。重合系中のpHは、燐酸二ナトリウムやボラックス、又は、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等のpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
また、(B)成分を得る方法として、(b1)成分を重合させるために必要な(b3)成分及び(b4)成分の存在下、(b1)成分及び(b2)成分を、必要により溶剤存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水を添加する手法も使用可能である。
さらに(B)成分は、得られるコーティング組成物を用いて形成される塗膜の基材密着性を向上させる観点から、コア層と、コア層を被覆する1層又は2層以上のシェル層と、を備えたコア/シェル構造を有することが好ましい。コア/シェル構造を形成する方法としては、乳化重合を多段で行なう、多段乳化重合が有用である。
多段乳化重合においては、例えば(b3)成分及び(b4)成分の存在下、(b1)、(b2)、及び(b5)成分よりなる群から選択される少なくとも1種以上を重合してシード粒子を形成する第一段階が実施され、次に、シード粒子の存在下、(b1)成分及び(b2)成分、更には必要に応じ(b5)成分を含む重合原液を添加して重合する第二段階が実施される(2段重合法)。さらに3段以上の多段乳化重合を実施する場合、(b1)成分、(b2)成分、及び必要に応じ(b5)成分を含む重合原液を添加して重合する第三段階が実施されてもよい。このような方法は、重合安定性の観点からも好適である。なお、重合安定性の観点から、コア層において、(b2)成分と(b1)成分との質量比(b2)/(b1)は、好ましくは0.01/1〜1/1である。また、シェル層の最外層において、(b2)成分と(b1)成分との質量比(b2)/(b1)は、好ましくは0.1/1〜5/1であり、さらには0.5/1〜4/1である。
2段重合法において、第一段階において用いられる重合原液中の固形分質量(M1)と、第二段階において添加される重合原液中の固形分質量(M2)との質量比は、重合安定性の観点から、好ましくは(M1)/(M2)=9/1〜1/9であり、より好ましくは8/2〜2/8である。
また、コア/シェル構造は、重合安定性の観点から、シード粒子の粒径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)が大きく変化することなく、第二段階の重合によって粒子径が増大した構造を有することが好ましい。なお、体積平均粒子径は、数平均粒子径と同様に測定し得る。また、コア/シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析等により観察することができる。
コア/シェル構造のコア層のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下である。この場合、得られる太陽電池用コーティング組成物の物性として、室温における柔軟性に優れ、割れ等が生じにくい太陽電池用カバー材を形成することが可能となる。なお、本実施の形態におけるTgは、示差走査熱量測定装置(DSC)で測定することができる。
実施の形態に係るコーティング組成物の(B)成分の粒子径は、例えば10nm〜800nmである。粒子径が10nm〜800nmの(B)成分と、粒子径が1nm〜400nmの(A)成分と組み合わせて組成物を形成することにより、耐候性、防汚染性が良好となる。また、得られる塗膜の耐溶剤性の観点から、(B)成分の粒子径は、好ましくは50nm〜350nmである。
(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、好ましくは150/100〜450/100であり、より好ましくは150/100〜250/100である。この範囲で配合することにより、コーティング組成物から、耐溶剤性及び防汚染性に優れた機能性複合体を形成し得る。また、(A)成分の表面積(SA)と(B)成分の表面積(SB)との比(SA)/(SB)は、好ましくは0.001〜1000の範囲である。なお表面積は、(A)成分及び(B)成分の各々の粒子径、及び各々の配合質量数から算出可能である。
本実施の形態に係るコーティング組成物には、その用途及び使用方法などに応じて、通常、塗料や成型用樹脂に添加配合される添加剤成分、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、成膜助剤、防錆剤、染料、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等をそれぞれの目的に応じて選択したり、組み合わせたりして配合することができる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく用いられる。中でも、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性光安定剤が好ましい。また、紫外線吸収剤としては、例えば有機系紫外線吸収剤が使用可能である。有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤等が使用可能である。なかでも、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性紫外線吸収剤を用いることが好ましい。また、紫外線吸収能の高いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。なお、光安定剤を、有機系紫外線吸収剤と併用することが好ましい。両者を併用することにより、得られるコーティング組成物の耐候性を向上させ得る。なお、これらの有機系紫外線吸収剤及び光安定剤等の各種添加剤成分は、(A)成分及び(B)成分に単に配合してもよいし、(B)成分を合成する際に共存させてもよい。
さらに、本実施の形態に係る帯電防止用コーティング組成物は、(C)成分:下記式(6)、下記式(7)、又は下記式(8)で表される加水分解性珪素化合物をさらに含んでいてもよい。この場合、(A)成分と(B)成分との質量比は、例えば(A)/(B)=50/100〜350/100であり、(A)成分と(C)成分との質量比は、(C)/(A)=0.5/100〜110/100である。以下、下記式(6)で表される加水分解性珪素含有化合物を(c1)成分とし、下記式(7)で表される加水分解性珪素含有化合物を(c2)成分とする。
R1 nSiX4-n (6)
(式(6)において、R1は水素又は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基を示す。またこれらの置換基上にさらにハロゲン基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基等の官能基を有していてもよい。Xは加水分解性基を示し、nは0〜3の整数である。加水分解性基とは加水分解により水酸基が生じる基であればよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、フェノキシ基、オキシム基等が挙げられる。)
X3Si−R2 n−SiX3 (7)
(式(7)において、Xは加水分解性基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基を示す。また、nは0又は1である。)
(c1)成分及び(c2)成分としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(i−ブトキシ)シラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリフェノキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリフェノキシシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリフェノキシシリル)プロパン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)シラン、トリアセトキシシラン、トリス(トリクロロアセトキシ)シラン、トリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(トリクロロアセトキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラフルオロシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリフルオロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、メチルトリフルオロシラン、テトラキス(メチルエチルケトキシム)シラン、トリス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルビス(メチルエチルケトキシム)シラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルシラン等が使用可能である。
また、下記式(8)で表される加水分解性珪素含有化合物を(c3)成分とする。(c3)成分としては、具体的には、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「Mシリケート51」多摩化学工業(株)製、商品名「MSI51」コルコート(株)製)、商品名「MS51」、「MS56」三菱化学(株)製)、テトエトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「シリケート35」、「シリケート45」多摩化学工業(株)製、商品名「ESI40」、「ESI48」コルコート(株)製)、及びテトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの共部分加水分解縮合物(商品名「FR−3」多摩化学工業(株)製、商品名「EMSi48」コルコート(株)製)等が使用可能である。
R3−(O−Si(OR3)2)n−OR3 (8)
(式(8)において、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す。nは2〜8の整数である。)
加水分解性珪素化合物(C)は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
また、(A)成分と(C)成分との質量比は、(C)/(A)=0.5/100〜110/100であり、好ましくは(C)/(A)=1/100〜80/100である。(C)/(A)が0.5/100よりも小さいと耐溶剤性が不十分となる傾向にあり、(C)/(A)が60/100を超えると塗膜が脆くなる傾向にある。
本実施の形態で使用される基材としては、ガラスや樹脂等が好ましい。また、透明性、耐候性、及び軽量化の観点から、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及びエチレン−フルオロエチレン共重合体からなる郡より選択される少なくとも1種の素材、又はそれらの複合素材が好ましい。アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、又はエチレン−フルオロエチレン共重合体には、耐候性を付与する目的で耐候剤等を更に練り込んでもよい。
本実施の形態に係る機能性複合体を得るには、例えば、第1の工程において、水等の溶媒に分散させた上述のコーティング組成物(以下、「水分散体」ともいう)を上述の基材上に塗布(塗工)し、さらに必要に応じて乾燥して、塗膜を得る。ここで、水分散体の固形分濃度は、好ましくは0.01〜60質量%、より好ましくは1〜40質量%である。水分散体の粘度は、好ましくは20℃において0.1〜100000mPa・sであり、より好ましくは1〜10000mPa・sである。上記塗工方法としては、例えば、スプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等が使用可能である。
次いで、第2の工程において、上記塗膜に対して70℃以上の加熱処理を施す。そのときの加熱温度は好ましくは100℃以上であり、また、好ましくは150℃未満である。加熱温度が150℃以上では、Tg(ガラス転移温度)の低い基材を用いた場合に基材が変形し、塗膜にクラックが生じる恐れがある。
また、上記加熱処理に加えて、または上記加熱処理に代えて、0.1kPa以上の圧力で塗膜に加圧処理を施す、すなわち塗膜を基材との積層方向に圧縮する表面処理を施すと、得られる複合体の機能性が一層向上するため好ましい。加圧処理の方法として、基材上に塗布した後の塗液を半乾燥した湿潤状態の塗膜を、鏡面仕上げの表面を有する加熱した固体のその表面に、0.1kPa以上の圧力で押しつけて圧着しつつ乾燥した後、その固体表面から剥離する方法、基材上に塗布し乾燥して得られる塗膜を、水を主体とする液により湿潤させ、上記と同様に固体表面への圧着乾燥及び剥離を行う方法、基材上に塗布し乾燥して得られる塗膜表面に平滑なテフロン(登録商標)フィルムを重ね、減圧下で加熱する方法、いわゆるラミネート法などが使用可能である。ここでいう「減圧」とは、標準大気圧よりも低い圧力を意味し、好ましくは10-4Pa以下、より好ましくは10-6Pa以下、さらに好ましくは10-8Pa以下の圧力である。減圧による圧力が低いほど、塗膜表面にかかる圧力が大気圧に近くなる。
加圧の際に必要な圧力は0.1kPa以上であり、好ましくは100kPa以上である。また、その圧力は、好ましくは1000kPa未満であると好ましい。圧力が1000kPa以上であると、塗膜にクラックが入る恐れがある。
塗膜の厚さは、好ましくは0.05〜100μmであり、より好ましくは0.1〜10μmである。透明性の面から、塗膜は100μm以下の厚さを有することが好ましく、防汚染性、耐溶剤性及び表面硬度等の機能をより良好に発現するためには、0.05μm以上の厚さを有することが好ましい。
なお、本実施の形態において、「塗膜」は、必ずしも連続膜である必要はなく、不連続膜、島状分散膜等の態様であっても構わない。
本実施形態の機能性複合体は、ディスプレイ、外装表示用部材、窓用透明プラスチック、太陽光発電用透明保護材に含まれると好ましく、それらの透明部材に好適に用いられる。それらは、本実施形態の機能性複合体を含む他は、公知の構造や形態を有していればよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、各種物性は下記の方法で評価した。
1.数平均粒子径
試料中の固形分含有量が1〜20質量%となるよう適宜溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日本国日機装製マイクロトラックUPA−9230)を用いて測定した。
2.初期接触角
機能性複合体表面(比較例については塗膜表面)に脱イオン水の水滴を乗せ、23℃で1分間放置した後、接触角測定装置(日本国協和界面科学製 CA−X150型接触角計)を用いて測定した。
3.初期ヘイズ
濁度計(日本国日本電色工業製NDH2000)を用い、機能性複合体(比較例については塗膜)について、JIS−K7105に準じてヘイズ値を測定した(初期ヘイズ値)。
4.塗膜外観
機能性複合体表面(比較例については塗膜表面)の外観をマイクロスコープ(キーエンス社製)で100倍の倍率にて観察した。その結果を以下のように評価した。○:微小クラックがほとんどない、△:微小クラックが多い、×:成膜できない
5.耐溶剤性
機能性複合体(比較例については塗膜)を作製した後、アセトンを浸した綿棒でその表面を10往復擦って、その後の表面の外観を目視判定した。◎:ほとんど変化ない、○:わずかに変化有り、△:多少白化、×:著しい白化
6.表面硬度
機能性複合体(比較例については塗膜)の鉛筆硬度を鉛筆硬度計(テスター産業社製)を用いて測定した。
[製造例1]
(重合体エマルジョン粒子(B−1)水分散体の合成)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸6gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン117gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。次にアクリル酸ブチル86g、フェニルトリメトキシシラン133g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gの混合液とジエチルアクリルアミド137g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1900gの混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。さらに反応容器中の温度が80℃の状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で固形分を10.0質量%に調整し、数平均粒子径70nmの重合体エマルジョン粒子(B−1)水分散体を得た。
(重合体エマルジョン粒子(B−2)水分散体の合成)
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水1600g、ドデシルベンゼンスルホン酸4.6gを投入した後、撹拌下で温度を80℃に加温した。これに、ジメチルジメトキシシラン185g、フェニルトリメトキシシラン117gの混合液を反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて滴下し、その後、反応容器中の温度が80℃の状態で約1時間撹拌を続行した。次にアクリル酸ブチル86g、フェニルトリメトキシシラン133g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.3gの混合液とジエチルアクリルアミド137g、アクリル酸3g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)13g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液40g、イオン交換水1900gの混合液を、反応容器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。さらに反応容器中の温度が80℃の状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却し、100メッシュの金網で濾過した後、イオン交換水で固形分を10.0質量%に調整し、数平均粒子径100nmの重合体エマルジョン粒子(B−2)水分散体を得た。
[実施例1]
コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名「スノーテックスO」、(A)を水中に分散させたもの、固形分10質量%、数平均粒子径10nm)と、製造例で得られた重合体エマルジョン粒子(B−1)、(B−2)とテトラエトキシシラン(C)とを表1に示す比率で配合してコーティング組成物を得た。
5cm×5cmの基材(ポリカーボネート樹脂製、厚さ:3mm)上に、得られたコーティング組成物を膜厚が1μmとなるようにバーコートした後、70℃で10分間乾燥して塗膜を得た。さらに、LM50型真空ラミネート装置(NPC社)を用いて、条件1(150℃で5分間脱気後、10分間真空ラミネート、圧力100kPa)にて、塗膜に加熱処理及び加圧処理を施し、機能性複合体を得た。評価結果を表1に示す。
[参考例1]
組成を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を得た。5cm×5cmの基材(ポリカーボネート樹脂製、厚さ:3mm)上に、得られたコーティング組成物を膜厚が1μmとなるようにバーコートした後、70℃で10分間乾燥して塗膜を得た。さらに、条件1を条件2(大気中、150℃にて30分間加熱)に代えて、塗膜に加熱処理を施し、機能性複合体を得た。評価結果を表1に示す。