JP4727593B2 - ブロックコポリエーテルエステルエラストマーおよびそれらの調製 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
本発明は、ポリエステルハードブロックおよびポリ(アルキレンオキシド)ブロックを含む、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーを調製するためのプロセスに関し、ここで、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、少なくとも1種のアルキレンジオール、およびエチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)を含むポリ(アルキレンオキシド)ポリオールをエステル化する。本発明はさらに、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、少なくとも1種のアルキレンジオール、およびエチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)を含むポリ(アルキレンオキシド)ポリオールをエステル化することにより得られる、ポリエステルハードブロックおよびポリ(アルキレンオキシド)ブロックを含むブロックコポリエーテルエステルエラストマーにも関する。
そのようなプロセスは、米国特許第4,687,835号明細書およびそのファミリー特許の欧州特許第203634B号明細書、ならびに米国特許第4,205,158号明細書において公知である。米国特許第4,687,835号明細書および米国特許第4,205,158号明細書のいずれにも、短鎖エステル単位のハードブロックと、15〜35重量%のエチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)グリコールのソフトブロックとからなり、1500〜2800の(数平均)分子量を有する、コポリエーテルエステルの記載がある。その短鎖エステル単位には、少なくとも75モルパーセントの1,4−ブチレンテレフタレート単位と、米国特許第4,687,835号明細書においては25〜55重量%のコポリエーテルエステル、米国特許第4,205,158号明細書においては25〜48重量%のコポリエーテルエステルとが、それぞれ含まれる。
米国特許第4,205,158号明細書に従えば、溶融縮合重合の際に過度のポリマー分解を起こすことなく充分に高い重合度を得るためには、上述のタイプのコポリエーテルエステルの調製は、100モルのジカルボン酸あたり、少なくとも1.5当量、好ましくは2.5〜5.5当量の分岐化剤の存在下で実施するべきである。米国特許第4,205,158号明細書ではさらに、そこに与えられた組成物のコポリエーテルエステルの調製において分岐化剤を使用しないと、そのコポリエーテルエステルで得られる物理的性質たとえば、引張強さや引き裂き抵抗性が、類似の硬度を有するポリテトラメチレンオキシドグリコールをベースとするものに比較してまったく不充分なものとなる、との記載がある。
したがってこの米国特許第4,205,158号明細書のプロセスは、ジカルボン酸100モルあたり、分岐化剤がゼロまたは1.5当量未満の組成物には不適切であるという欠点を有する。ポリマーの分岐は、ある種の用途たとえばフィルムの場合には有利に働くが、その一方で他の用途たとえば繊維などの場合には、分岐がまったくないか、極めてわずかしかない方が有利となる。米国特許第4,687,835号明細書においては、米国特許第4,205,158号明細書の実施例に従った場合であっても、比較的大量の分岐化剤をそのコポリエーテルエステルに加えることによって前記の物理的性質が改良できるとの記載があるが、大量の分岐化剤を使用すると、いくつかの物理的性質、たとえば破断時伸び、(ノッチ付き)引張衝撃エネルギー、および引き裂きエネルギーなどでは、さらなる改良が必要とされる。
米国特許第4,687,835号明細書によると、このことは、ジカルボン酸100モルあたりゼロまたは1.5当量未満の分岐化剤を含み、そのメルトインデックスが特定の範囲にある、上述のコポリエーテルエステルを用いれば達成される。米国特許第4,687,835号明細書においては、それらのコポリエーテルエステルは、2段のプロセスを用いて調製されているが、その第1段では、溶融縮合によって相対粘度が1.8〜2.5のコポリエーテルエステルを調製し、次いで、不活性ガス流れ中または真空中で170℃〜220℃の温度をかけて、固相状態において後縮合をさせて、相対粘度を2.45〜5.0とする。米国特許第4,687,835号明細書によれば、これらのコポリエーテルエステルは、米国特許第4,205,158号明細書のプロセスによって調製された類似の組成と硬度を有するコポリエーテルエステルに比較して、より高い破断時伸び、(ノッチ付き)引張衝撃エネルギー、および引き裂きエネルギーを示す。
米国特許第4,687,835号明細書のプロセスは、粘度を慎重に調節しなければならない2段の工程を含み、固相後縮合に時間がかかることから、面倒なプロセスとなってしまうという欠点を有している。さらに不利な点があって、米国特許第4,687,835号明細書に従った前記のプロセスは、2800より高い数平均分子量を有する、エチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)グリコールには適していないが、その理由は、そのグリコールでは相分離を起こす可能性があるからである。本発明者らの経験からくる知識では、コポリエーテルエステル調製の際に相分離が起きると、一般的には、機械的性質が極めて劣ったポリマーが得られる。
したがって、本発明の目的は、米国特許第4,687,835号明細書および米国特許第4,205,158号明細書のプロセスの不利な面を有さない、エチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)グリコールのソフトブロックを有するコポリエーテルエステルを調製するためのプロセスを提供することであって、すなわち、米国特許第4,205,158号明細書のプロセスの場合よりも、分岐化剤(存在させるならば)の使用およびその量の選択がよりフレキシブルであるようなプロセス、そして米国特許第4,205,158号明細書のような後縮合工程を必要としないプロセス、を目的としている。さらなる目的は、数平均分子量が2800よりも高いエチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)グリコールを使用することが可能で、しかも良好な機械的性質を有するコポリエーテルエステルが得られるような、プロセスを提供することである。
この目的は、本発明によるプロセスを用いることにより達成されるが、ここでは、
・ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの全重量を基準にして、22〜90重量%の間のエチレンオキシド含量を有し、そして
・そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの1kgあたり35meq未満の不飽和含量(すなわち、ビニル基およびアリル基の合計含量)を有する。
本発明によるプロセスの利点は、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの1kgあたり35meq未満の不飽和含量(すなわち、ビニル基およびアリル基の合計含量)を有するポリ(アルキレンオキシド)ポリオールを使用することによって、ジカルボン酸100モルあたり1.5当量未満の分岐化剤を使用した場合であっても、固相後縮合工程を実施することなく、高可撓性、低硬度そして良好な機械的性質を有する、ブロックコポリエーテルエステルポリマーを得ることができるところにある。さらに、本発明のプロセスを用いることにより、2800を超える数平均分子量(Mn)を有するPO−EOポリオールを使用することが可能となり、さらに、良好な機械的性質を有するコポリエーテルエステルが得られる。具体的な実施態様においては、本発明のプロセスを用いて得られるコポリエーテルエステルは、米国特許第4,687,835号明細書および米国特許第4,205,158号明細書に記載の公知のプロセスを用いて得られるコポリエーテルエステルよりも、さらに優れた機械的性質を有する。
極めて高分子量のコポリエーテルポリオールを使用した、ブロックコポリエーテルエステルポリマーが、米国特許第4,562,232号明細書に記載されている。米国特許第4,562,232号明細書によれば、そのブロックコポリエーテルエステルポリマーにおいて使用されるコポリエーテルポリオールは、約350〜約12000の分子量を有することができ、そのコポリエーテルポリオールは、いくつかの他のものも含まれるが、その中でもエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるのがよい。そのポリマーを調製するには、一般的には、固相においてプレポリマーをさらに重縮合させることにより実施することができる。唯一の実施例は、分子量が1000および2000のポリテトラメチレングリコールに関するものである。米国特許第4,562,232号明細書には、エチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)のブロックコポリマーポリオールを有するコポリエーテルエステルポリマーや、それらのポリマーの調製についての詳細は記されていない。米国特許第4,562,232号明細書には、本発明の根拠となった問題点については、何の記載も参照もない。米国特許第4,562,232号明細書においては、本発明において問題としていることに対する解決法に関しては、何の言及も示唆もなされていない。
本発明によるプロセスは、各種公知の方法によって実施することができる。コポリエーテルエステルの例や調製法は、たとえば以下のようなものに記載されている:O.オラビシ(O.Olabishi)編、『ハンドブック・オブ・サーモプラスチックス(Handbook of Thermoplastics)』第17章(マーセル・デッカー・インコーポレーテッド(Marcel Dekker Inc.)、ニューヨーク(New York)、1997年、ISBN0−8247−9797−3)、『サーモプラスチック・エラストマーズ(Thermoplastic Elastomers)第2版』第8章(カール・ハンザー・フェルラーク(Carl Hanser Verlag)、1996年、ISBN1−56990−205−4)、『エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)第12巻』p.75〜117(ワイリー・アンド・サンズ(Wiley & Sons)、ニューヨーク(New York)、1988年、ISBN0−471−80944)ならびに、それらに引用されている文献類。
ポリ(プロピレンオキシド)のブロックとポリ(エチレンオキシド)のブロックとを含むポリオールは、EO−POブロックコポリマーとしても知られている。エチレンを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)という用語は、中央のブロックとしてポリ(プロピレンオキシド)(PPO)を、そして両末端にポリ(エチレンオキシド)(PEO)のブロックを有する、トリブロックコポリマーを示す。ソフトブロックとしてそのようなポリエーテルが有利な点としては、そのヒドロキシル官能性と、ポリエーテルエステルを合成する際の良好な反応性および相溶性が挙げられる。本明細書においては、エチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)を含むポリ(アルキレンオキシド)ポリオールも、PO−EOポリオールと呼ぶこととする。
本発明によるプロセスにおいて使用可能なポリ(アルキレンオキシド)ポリオールは、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの1kgあたり35meq未満の不飽和を有し、かつ、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの全重量を基準にして22〜90重量%の間のエチレンオキシド含量を有する、PO−EOポリオールであれば、いかなるものであってもよい。
本発明のプロセスにおいて使用されるポリ(アルキレンオキシド)ポリオールは、2500〜5000g/molの間のMnを有しているのが好ましい。Mnが2800〜5000の間であればより好ましく、Mnが3000〜5000の間であればさらにより好ましい。最小のMnの値が高いことの利点は、より高い伸びを有する、よりソフトなコポリエーテルエステルが得られる点にある。
さらに、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの全重量を基準にして、25〜80%の間のエチレンオキシド含量(EO含量)を有していれば好ましく、30〜70%の間であればより好ましく、40〜60重量%の間であれば、さらにより好ましい。本発明によるプロセスにおいてより高いEO含量を有するPO−EOポリオールを使用するメリットは、そのポリマーから得られるフィルムが、極めて良好な機械的性質を維持しながらも、より高い水蒸気透過速度(water vapour transmission rate、MVTR)を有する点にある。最大のEO含量の値が低いほど、フィルムが示す膨潤度が低いという利点がある。
ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの1kgあたり30meq未満の不飽和含量(すなわち、ビニル基およびアリル基の合計含量)を有していれば好ましく、25meq、さらには20meq未満であればより好ましく、15meq未満であればさらにより好ましい。より低い不飽和含量を有するPO−EOポリオールを使用する利点は、コポリエーテルエステルコポリマーの調製に関してプロセスの安定性が増し、コポリエーテルエステルコポリマーが良好またはより良好な機械的性質、特により高い伸びを有し、より良好なMVTR値を有する状況を維持しながらも、PO−EOポリオールの含量がさらに高く、またより高い分子量を有するPO−EOポリオールを含む、コポリエーテルエステルコポリマーを製造することが可能となるところにある。
本発明によるプロセスにおいて使用可能なPO−EOポリオールは、常法により調製することができる。ポリ(プロピレンオキシド)ホモポリマーおよびポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)ブロックコポリマーは一般に、塩基性触媒、たとえば水酸化カリウムもしくは水酸化ナトリウムまたはそれらのアルコラートを使用することにより調製される。それらのポリマーには、ヒドロキシル、ビニル、アリルおよびプロペニル末端基が主として含まれる。ビニルおよびアリル不飽和は、重合の際の副反応によって導入される。重合の際に形成されるアリル末端基は、塩基性の重合媒体中では、転位されてプロペニル末端基を形成することができる(E.J.ファンデンベルク(E.J.Vandenberg)、『ポリエーテルス(Polyethers)』、ACS・シンポジウム・シリーズ(ACS Symposium Series)No.6、パブリッシュ・ACS(Publ.ACS)、ワシントン(Washington)、1975、ISBN0−8412−0228−1、第2章)。次いで酸性条件下で、ビニルおよびプロペニル末端基を加水分解させることによって、ポリオール中の不飽和末端基の全量を減らすことができる(J.マーチ(J.March)『アドバンスト・オーガニック・ケミストリー(Advanced Organic Chemistry)』、A.ワイリー・インターサイエンス・パブリケーション(A.Wiley−International Publication)、1992年、p.373)。不飽和末端基の数が少ないポリ(プロピレンオキシド)ホモポリマーまたはコポリマーを得るための他の方法としては、別な重合触媒、たとえばヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体の群からの触媒を使用することによる方法がある(E.J.ファンデンベルク(E.J.Vandenberg)、『ポリエーテルス(Polyethers)』、ACS・シンポジウム・シリーズ(ACS Symposium Series)No.6、パブリッシュ・ACS(Publ.ACS)、ワシントン(Washington)、1975年、ISBN0−8412−0228−1、第2章)。不飽和の量を減らすのは時間のかかるプロセスであるために、通常は実施されることはない。このことが、市販されているポリオール、特に高いMnのポリオールにおける不飽和含量が高い理由である。本発明においては、高EO含量、すなわち22〜90重量%の間であることに加えて、低不飽和含量、すなわちポリオール1kgあたり35meq未満であることが極めて重要である。
好ましい実施態様は、下記のような本発明のプロセスにより構成される:
a)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、30〜70重量%の間のエチレンオキシド含量を有する;
b)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの1kgあたり25meq未満の不飽和含量(すなわち、ビニル基およびアリル基の合計含量)を有する;そして
c)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、2500〜5000g/molの間のMnを有する。
また別な好ましい実施態様は、本発明のプロセスにより構成されるが、ここでブロックコポリエーテルエステルエラストマーは下記のようにして形成される:
d)ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール/芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の重量比が、60/40〜90/10の間である;
e)そのポリエステルブロックの平均重合度が、少なくとも3.5である;そして
f)そのブロックコポリエーテルエステルエラストマーが、少なくとも25,000g/molのMnを有する。
本発明によるプロセスにおいては、酸基またはヒドロキシル基と反応して、それぞれ鎖伸長剤または鎖分岐化剤として機能する、2個またはそれ以上の官能基を有する化合物を使用してもよい。本明細書においては、「鎖伸長剤」とは、官能基数が2である成分と理解されたい。適切な鎖伸長剤の例としては、カルボニルビスラクタム、ジイソシアネートおよびビスエポキシドなどが挙げられる。本明細書においては、「分岐化剤」とは、官能基数が3以上の成分と理解されたいが、ここでその官能基は、ヒドロキシル基および/またはカルボン酸基と反応することが可能な官能基からなる。適切な分岐化剤としては、たとえば、3官能アルコールすなわちトリオール、たとえばトリメチロールプロパン、および3官能カルボン酸、たとえば、トリメリット酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。鎖伸長剤または分岐化剤の量とタイプは、所望の溶融粘度を有するブロックコポリエーテルエステルが得られるように選択する。一般的には、鎖分岐化剤の量は、コポリエーテルエステル中に存在するジカルボン酸100モルあたり6.0当量を超えないようにする。
本発明によるプロセスの好ましい実施態様においては、ジカルボン酸100モルあたり6.0当量までのジイソシアネートの存在下で、エステル化反応を実施する。本明細書においては、「当量」は、ジカルボン酸100モルあたりについてのものを表すが、そのジカルボン酸にはそのエステル誘導体も含める。
より好ましくは、ジイソシアネートを用いる場合には、用いたジイソシアネートの反応性が極めて高く、反応器に添加した直後に反応してしまうので、前記の反応はポリマー溶融物中、たとえば押出機の中で実施するのが好ましい。
上述のように、本発明によるプロセスは、分岐化剤を使用することなく、固相後縮合工程を適用することなく実施することができる。それに加え、本発明によるプロセスはフレキシビリティを有しているので分岐化剤を使用することも可能であり、コポリエーテルエステルエラストマーの目的とする用途からくる必要性に応じて、その量を、少量たとえば0.5〜1.0当量から、多量たとえば1.5〜6.0当量まで自由に選択することができる。繊維グレード用には0〜1.0当量とするのが好ましく、それに対してフィルムグレード用ではその量を2.5〜5当量とするのが好ましい。本発明によるプロセスにおいて使用する場合、「当量」はすべて、ジカルボン酸100モルあたりについて表す。
本発明のプロセスのさらに好ましい実施態様は、本発明のプロセスを用いて得ることができるブロックコポリエーテルエステルエラストマーに関し、その好ましい実施態様については以下に述べる。
本発明はさらに、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、少なくとも1種のアルキレンジオール、およびエチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)を含むポリ(アルキレンオキシド)ポリオールをエステル化することにより得られる、ポリエステルハードブロックおよびポリ(アルキレンオキシド)ブロックを含むブロックコポリエーテルエステルエラストマーにも関する。
先にも述べたが、そのようなブロックコポリエーテルエステルエラストマーは、米国特許第4,687,835号明細書およびそのファミリー特許の欧州特許第203634B号明細書において公知である。公知のエラストマーは、テレフタル酸ジメチル(DMT)、1,4−ブタンジオール、およびエチレンオキシドで末端封止したポリ−1,2−プロピレンオキシドグリコール(EO/POブロックポリエーテル)から製造されている。その公知のエラストマー中のEO/POブロックポリエーテルは、2370g/molの数平均分子量と、20重量%のエチレンオキシド含量とを有している。その公知のエラストマーは次のような物性を有していると記載されている:硬度(ショアーD)、37;破断時伸び(E)、970%;曲げモジュラス、46MPa;引張強さ、23MPa。
この公知のエラストマーの欠点は、モジュラスと硬度が高すぎて、高度弾性繊維やフィルムに適用できないことである。軟度のより低いポリマーを製造すると、その伸びが顕著に低下し、それに対して曲げモジュラスは高いままである:硬度(ショアーD)、33.5;Eb、709%;曲げモジュラス、47MPa。
上述のようなブロックコポリエーテルエステルエラストマーは、先に挙げた他の特許、すなわち米国特許第4,205,158号明細書からも公知である。米国特許第4,205,158号明細書に記載の公知のエラストマーは、テレフタル酸ジメチル(DMT)、1,4−ブタンジオール、エチレンオキシドを用いて末端封止したポリ−1,2−プロピレンオキシドグリコール、および分岐化剤としての無水トリメリット酸から製造したものである。それら公知のエラストマーにおいて使用されたEO/POブロックポリエーテルはそれぞれ、(#1)数平均分子量(Mn)、2200g/mol;エチレンオキシド含量(EO含量)、26.3重量%:(#2)Mn、2400;EO含量、17.9重量%である。それら公知のエラストマーについては以下の物性がそれぞれ報告されている:(#1)引張強さ、15MPa;硬度(ショアーA)、85;E、1030%:(#2)E、1050%;Ts、14.7MPa。
米国特許第4,205,158号明細書の公知のエラストマーの欠点は、伸びはやや高いものの、引張強さが、米国特許第4,687、835号明細書のものに比較してかなり低い、という点にある。
米国特許第4,687,835号明細書および米国特許第4,205,158号明細書の公知のエラストマーのさらなる欠点は、高弾性繊維およびフィルムなどの用途では高変形後の塑性歪みが高すぎるのと、バリヤーコーティングに応用するには水蒸気透過性が低すぎることである。
一般に、ブロックコポリマーのモジュラスと硬度を低下させるための一般的な方法は、「ソフトブロック」の数を増やすことである。ブロックコポリエーテルエステルエラストマーの場合、このことは、モジュラスおよび硬度を低下させるためには、前記エラストマー中でソフトブロックとして機能する、ポリ(アルキレンオキシド)ブロックの数を増やさねばならない、ということを意味する。しかしながら、その公知のエラストマーを変性するためにこの方法を当てはめると、その機械的性質、特に破断時伸びが悪化する。
本発明の目的は、米国特許第4,205,158号明細書において公知のエラストマーに比較して、改良された機械的性質、特に低いモジュラスと硬度を有しながらも、米国特許第4,687,835号明細書および米国特許第4,205,158号明細書の両方からの公知の組成物に比較して、充分に高い伸びならびに破断時引張強さ、および/または改良された伸び、および/または改良された水蒸気透過性を有する、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーを提供することである。
この目的は、本発明によるプロセスにより得られるブロックコポリエーテルエステルエラストマーを用いることにより達成されるが、そのプロセスにおいては、
a)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、22〜90重量%の間のポリ(エチレンオキシド)含量を有する;
b)そのブロックコポリエーテルエステルエラストマーが、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの1kgあたり35meq未満の不飽和含量(すなわち、ビニル基およびアリル基の合計含量)を有する;
c)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、2500〜5000g/molの間のMnを有する;
d)ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール/芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の重量比が、50/50〜90/10の間である;
e)そのハードポリエステルブロックの平均重合度が、少なくとも3.5である;
f)そのブロックコポリエーテルエステルエラストマーが、少なくとも25,000g/molのMnを有する。
驚くべきことには、本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマーは、顕著に低いモジュラスとショアーA硬度を有しながら、破断時伸びは公知のエラストマーに比較して同等に維持されるか、さらには改良されている。驚くべきことには、分岐化剤を使用しなくても、それらの良好な機械的性質が得られている。本発明によるブロックコポリエーテルエステルコポリマーにおけるまた別な驚くべき利点は、それが高い湿分透過速度(moisture vapour transmission rate、MVTR)を示すことである。
本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマーには、「ハードブロック」としてのポリエステルブロックと、「ソフトブロック」としてのポリアルキレンオキシドブロックとが含まれる。
そのハードポリエステルブロックは、少なくとも1種のアルキレンジオールと少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とから誘導される繰り返し単位から構成されている。そのアルキレンジオールには、2〜6個の炭素原子、好ましくは2〜4個の炭素原子が含まれる。そのようなものの例としては、エチレングリコール、プロピレンジオールおよびブチレンジオールが含まれる。1,4−ブチレンジオールを使用するのが好ましい。好適な芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸およびそれらの組合せを挙げることができる。場合によっては、ハードセグメントには、他のジカルボン酸、たとえばイソフタル酸から誘導される少量の単位がさらに含まれていてもよい。他のジカルボン酸の量は、特にコポリエーテルエステルの結晶化挙動が悪影響をもたらすことがない様に、好ましくは10mol%以下、より好ましくは5mol%以下に限定する。そのハードセグメントは、繰り返し単位として、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、特にブチレンテレフタレートからのもので構成されているのが好ましい。それら容易に利用できる単位の利点は、好ましい結晶化挙動と高融点を有するために、得られるコポリエーテルエステルに良好な加工性と、優れた耐熱性および耐薬品性を与える点にある。本発明によるコポリエーテルエステルの他の好ましい実施態様においては、コポリエーテルエステルの中のハードセグメントは、エチレングリコール、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、テレフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸、ならびに任意成分の少量の他の二酸および/またはジオールから誘導される単位で構成されている。それらのコポリエーテルエステルは高い結晶融点を示し、溶融物から冷却すると速やかに結晶化する。
ソフトなポリ(アルキレンオキシド)ブロックには、エチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)が含まれる。そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールはジオールであるのが好ましい。本明細書においては、「ジオール」とは、末端基として本質的に2個のヒドロキシル基を有する、すなわち約1.7〜2.3のヒドロキシル官能性を有する、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールであると理解されたい。官能基数が低すぎると、充分な分子量のブロックコポリエーテルエステルエラストマーの合成が妨害されるし、逆に官能基数が高すぎると、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーの鎖分岐が望ましくない程度に高くなったり、架橋が導入されたりする。したがって、ヒドロキシル官能性は、好ましくは1.8〜2.2、より好ましくは1.9〜2.1、さらにより好ましくは約2である。
本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマーにおいて使用されるポリ(アルキレンオキシド)ポリオールは、2500〜5000g/molの間、好ましくは2800〜5000g/molの間、より好ましくは3000〜5000g/molの間のMnを有する。通常用いられる低Mnのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールに代えて、高Mnのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールを使用すると、比較的高いMn、その結果比較的長いポリ(アルキレンオキシド)ブロックが得られる。そのような「長い」ポリ(アルキレンオキシド)ブロックを使用することによって、ブロックコポリエーテルエステルエラストマー中のソフトブロックの含量を高くすることが可能となり、それによりブロックコポリエーテルエステルコポリマーが柔らかくなり、しかも、充分な結晶化挙動と充分な引き裂き抵抗性および引張強さを示すポリエーテルエステルが得られる。本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマーにおいて、ポリエステルの結晶化が起きるという点が重要である。容易に破壊されうる小さな不規則なポリエステル微結晶は、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーの回復性に悪影響をおよぼす、不可逆な変形にさらに寄与する可能性がある。さらに、ポリエステルハードブロックの結晶化が不充分であると、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーの融点/結晶化温度が低くて望ましくないということにもなりうる。いくつかの用途、たとえば繊維の紡糸においては、結晶化温度が高いということが極めて重要である。場合によっては、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーの結晶化温度を、成核剤を添加することによって上げることも可能である。
ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールは、22〜90重量%の間、好ましくは30〜70重量%の間、より好ましくは40〜60重量%の間、最も好ましくは45〜55重量%の間のポリ(エチレンオキシド)含量を有する。ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール中でのポリ(エチレンオキシド)の量およびポリ(アルキレンオキシド)ポリオールのMnを選択して、エステル化反応の際に、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーの機械的性質を損なう可能性のある、マクロ相分離が起きないようにするのが好ましい。溶融縮合条件下において、ハードセグメントとソフトセグメントがもはや互いに相溶しないようになると、マクロ相分離が起きる。これが起きると、比較的大きなスケール(マイクロメートル)でのコポリエーテルエステルの2相モルホロジーを誘導し、そこでは1相がソフトセグメントリッチに、他の相がハードセグメントリッチとなる。マクロ相分離についてはたとえば、N.R.レッゲ(N.R.Legge)、G.ホールデン(G.Holden)、H.E.シュレーダー(H.E.Schroeder)『サーモプラスチック・エラストマーズ(Thermoplastic elastomers)』(カール・ハンザー・フェルラーク(Carl Hanser Verlag)、ミュンヘン(Munich)、1987年)において定義されている。一般的に知られていることであるが、ポリ(エチレンオキシド)含量が高いほど、ポリエステルとポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの混合が良好となり、その結果、マクロ相分離する傾向が抑制される。他方、ポリ(エチレンオキシド)含量が高すぎると、低温性能の面で限界を与える、ポリ(エチレンオキシド)の結晶化を招く可能性もある。したがって、ポリ(エチレンオキシド)含量は、可能なかぎり、マクロ相分離の回避とポリ(エチレンオキシド)結晶化の間のバランスをとるようにする。
ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール/芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の重量比は、50/50〜90/10の間、好ましくは60/40〜90/10の間である。好適な量は、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールのMnに依存する、すなわち、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールのMnが高いほど、ポリエステルの結晶化度を極端に損ねることなく、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールをより多量にブロックコポリエーテルエステルエラストマーに組み入れることができる。高弾性および高軟度を有するブロックコポリエーテルエステルエラストマーを得るためには、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール/芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体の比を可能な限り大きくし、しかも充分なポリエステルの結晶化を維持させるのが好ましい。
ポリエステルがポリブチレンテレフタレート(PBT)の場合、充分なPBTの結晶化を維持しながら、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーの中に組み入れることが可能なポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの量は、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの総体的な長さから計算することができる。図1は、PBTブロックあたりのブチレンテレフタレート単位の平均の数を、ブロックコポリエーテルエステルエラストマー中のポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの量の関数としてプロットしたものである。ここでは、PBTの結晶化度を維持するには、PBTブロックの長さには、平均して、少なくとも4個のブチレンテレフタレート単位を含んでいるべきである、と仮定している(H.シュレーダー(H.Schroeder)およびR.J.チェラ(R.J.Chella)、エラスチック・ポリマーズ(Elastic Polymers)、エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Encycl.Polym.Sci.Eng.)、第12巻、p.75(1986年))。たとえば図1から判るのは、ブロックコポリエーテルエステルコポリマーの中に組み入れることが可能なポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの最大量は、Mn=4600g/molのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールでは約84%、Mn=4000g/molのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールでは約82%、Mn=3300のポリ(アルキレンオキシド)ポリオールでは約79%、Mn=3000または2800のポリ(アルキレンオキシド)ポリオールでは約77%、そしてMn=2200のポリ(アルキレンオキシド)ポリオールでは約71%である。したがって、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール/PBTの重量比は、4000<Mn(ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール)≦5000g/molの場合には好ましくは90/10以下、3300<Mn(ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール)≦4000g/molの場合には好ましくは82/18以下、3000<Mn(ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール)≦3300g/molの場合には好ましくは79/21以下、そして2500≦Mn(ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール)≦3000g/molの場合には好ましくは77/23以下である。
そのポリエステルブロックの平均重合度は、少なくとも3.5である。PBTの平均重合度とは、ブロックコポリマーのPBTブロックの中のブチレンテレフタレートモノマー単位の平均の数である。平均重合度が3.5未満であると、そのブロックコポリエーテルエステルエラストマー材料は、充分な量の結晶化ができず、低い機械的性質を示す。
コポリエーテルエステルを調製するために使用するブロックコポリエーテルエステルエラストマーの不飽和含量は、好ましくはポリ(アルキレンオキシド)ポリオール1kgあたり25meq未満、好ましくはポリ(アルキレンオキシド)ポリオール1kgあたり20meq未満、より好ましくはポリ(アルキレンオキシド)ポリオール1kgあたり15meq未満である。大量の不飽和末端基(ビニルおよびアリル)を有する通常のポリ(アルキレンオキシド)ポリオールでは通常、不飽和末端基が重縮合反応における連鎖停止剤として機能するために、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーの分子量が低くなる。そのような低分子量ブロックコポリエーテルエステルエラストマーは一般に破断時歪みが低い特徴を有する。本発明によるブロックコポリエーテルエステルを調製するために使用するポリ(アルキレンオキシド)ポリオールは、不飽和含量が低く、高い反応性を有しているために、比較的短い共重合時間の後であっても高分子量のブロックコポリエーテルエステルエラストマーが得られる。高いMnと低い不飽和末端基含量のポリ(アルキレンオキシド)ポリオールを用いることにより得られる、本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマーは、充分に高い分子量を有し、改良された弾性、軟度および機械的性質を有することが見出された。
ブロックコポリエーテルエステルエラストマーのMnは、末端基、すなわち、不飽和、COOH基およびOH基から計算することが可能であって、ブロックコポリエーテルエステルエラストマー1kgあたりのmeqとして表される。分子量については次式が成立する:
Figure 0004727593

ここで、EG=末端基(COOH、OH、不飽和)である。
ブロックコポリエーテルエステルエラストマーのMnは、少なくとも25,000g/mol、好ましくは少なくとも30,000g/mol、より好ましくは少なくとも35,000g/molである。先に説明したように、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーのMnは、とりわけ、ソフトブロックを作るために使用されたポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの不飽和含量に依存する。通常Mnが高いほど、機械的性質が改良されるが、それについては、実施例において見ることができる。
本発明の好ましい実施態様においては、そのブロックコポリエーテルエステルエラストマーは、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と少なくとも1種のアルキレンジオールとから誘導される短鎖エステル単位からなるハードブロックと、エチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)ポリオールから誘導されるソフトブロックの繰り返し単位からなるが、ここで:
a)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、2800〜5000g/molの間のMnを有する;
b)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、22〜90重量%の間のエチレンオキシド含量を有する;
c)ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール/芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の重量比が、60/40〜90/10の間である;
d)そのポリエステルブロックの平均重合度は、少なくとも3.5である;
e)そのブロックコポリエーテルエステルエラストマーが、少なくとも25,000g/molのMnを有する。
本発明のまた別な好ましい実施態様においては、そのブロックコポリエーテルエステルエラストマーは、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と少なくとも1種のアルキレンジオールとから誘導される短鎖エステル単位からなるハードブロックと、エチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)ポリオールから誘導されるソフトブロックの繰り返し単位からなるが、ここで:
a)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、2500〜5000g/molの間のMnを有する;
b)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、35〜90重量%の間のエチレンオキシド含量を有する;
c)ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール/芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の重量比が、60/40〜90/10の間である;
d)そのポリエステルブロックの平均重合度は、少なくとも3.5である;
e)そのブロックコポリエーテルエステルエラストマーが、少なくとも25,000g/molのMnを有する。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、そのブロックコポリエーテルエステルエラストマーは、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と少なくとも1種のアルキレンジオールとから誘導される短鎖エステル単位からなるハードブロックと、エチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)ポリオールから誘導されるソフトブロックの繰り返し単位からなるが、ここで:
a)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、2800〜5000g/molの間のMnを有する;
b)そのポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、35〜90重量%の間のエチレンオキシド含量を有する;
c)ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール/芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の重量比が、60/40〜90/10の間である;
d)そのポリエステルブロックの平均重合度は、少なくとも3.5である;
e)そのブロックコポリエーテルエステルエラストマーが、少なくとも25,000g/molのMnを有する。
本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマーは、たとえば通気性フィルムに使用するのに好適な、高い湿分透過速度(MVTR)を有しているのが好ましい。MVTRは、ASTM E96B(ウェットカップ法、38℃、相対湿度50%)に従って測定することによりMVTR(E96B)が得られ、ASTM E96BW(逆向きカップ法(inverted cup)、38℃、相対湿度50%)に従って測定することによりMVTR(E96BW)が得られる。MVTR(E96B)およびMVTR(E96BW)は、ブロックコポリエーテルエステルエラストマー中のポリ(アルキレンオキシド)の量が増えるほど、およびポリ(アルキレンオキシド)中のポリ(エチレンオキシド)の量が増えるほど、高くなる。MVTR(E96B)は、好ましくは100g・mm/m・日以上、より好ましくは112g・mm/m・日以上、最も好ましくは130g・mm/m・日以上である。MVTR(E96BW)は、好ましくは550g・mm/m・日以上、より好ましくは900g・mm/m・日以上、最も好ましくは1300g・mm/m・日以上である。
DIN53505に従って測定した本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマーのショアーA硬度は、エラストマー中のソフトブロックであるポリアルキレンオキシドの量に依存する。高い軟度が必要とされる、たとえば弾性繊維の弾性フィルムでは、低いショアーA硬度のブロックコポリエーテルエステルエラストマーが望ましい。本発明によるブロックコポリエーテルエステルのショアーA硬度は、好ましくは92以下、より好ましくは87以下、特に84以下、より特には80以下である。
ASTM D5026に従って測定した、本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマーのE’(23℃)(DMTA法により測定した引張モジュラス)もまた、エラストマー中のソフトブロックであるポリアルキレンオキシドの量に依存する。E’(23℃)は好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に20MPa以下、より特には10MPa以下である。
本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマーは、たとえば弾性繊維または弾性フィルムにおいて使用することができる。その弾性フィルムが通気性であれば好ましい。
本発明はさらに、本発明によるブロックコポリエーテルエステルコポリマーと少なくとも1種の他の添加剤とを含む組成物にも関する。
コポリエーテルエステル組成物には、たとえば耐熱安定剤およびUV安定剤、抗酸化剤、着色剤、加工助剤たとえば離型剤もしくは溶融流動促進剤、または鉱物充填剤など、各種の慣用の添加剤がさらに含まれていてもよい。組成物には、予備成形品を製造する際に比較的長い時間溶融状態におかれることを考慮に入れると、有効な量の耐熱安定剤と抗酸化剤とを組み合わせて含まれているのが好ましい。一般的には、そのような添加剤の合計量は、加えられた全組成物を基準にして、10質量%未満、好ましくは約0.05〜5または0.1〜3質量%である。
好ましい実施態様においては、その組成物に成核剤を含む。その利点は、ブロックコポリエーテルエステルコポリマーの結晶化温度が高くなる点にある。このことは、PO−EOポリオールソフトブロックの含量が高く、および/または高いMnのPO−EOポリオールソフトブロックを含むブロックコポリエーテルエステルコポリマーの場合には特に有利である。
成核剤は、場合によっては、結晶化改良剤または結晶化促進剤と呼ばれることもある。本発明のコポリエーテルエステル組成物に適した成核剤としては一般に、当業界で既知の、特にポリエステルたとえばポリ(エチレンテレフタレート)に用いられるものを挙げることができる。好適なものとしては、不活性な微粒状成核剤、モノカルボン酸およびジカルボン酸の金属塩;芳香族カルボン酸たとえば安息香酸の金属塩;含水ケイ酸マグネシウムたとえばタルカム、およびケイ酸アルミニウムたとえばクレー;ポリオールアセタールたとえば置換ソルビトール;有機リン酸の金属塩たとえばジ(4−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウムなどが挙げられる。カルボン酸の金属塩の好適な例としては、カリウム、リチウムまたはナトリウム塩がある。成核剤としてカルボン酸のナトリウム塩を選択するのが、取扱いおよび効果の面で好ましい。その金属塩を成核剤として使用することが可能な酸を挙げれば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、イタコン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸(アニス酸)、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、などである。好適なカルボン酸の金属塩としては、ステアリン酸ナトリウムおよび安息香酸ナトリウムが挙げられる。さらに、鉱物微粒子たとえば含水ケイ酸マグネシウム(タルカム)および含水ケイ酸アルミニウム(クレー)などもまた、本発明の実施の際に使用するのに適した不活性な微粒状成核剤として機能する。平均粒径が150マイクロメートル(μm)未満、100μm未満、さらには50μm未満のタルカムを成核剤として選択するのが好ましい。
本発明の好ましい実施態様においては、好ましくは粒径0.01〜40μm、より好ましくは粒径0.01〜25μmのタルカム粒子を使用するが、場合によっては、それらの粒子はあらかじめ、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーにおける所望の濃度よりは高い濃度で、キャリヤー物質好ましくはコポリエーテルエステルの中に溶融分散させておく。そのような成核剤の濃厚物は、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーや、場合によっては他の添加剤と容易にブレンドすることができる。この濃厚物を利用する方法の利点は、成核剤粒子の分散をよりよく調節し、組成物の中にそれを均質に分散させることが可能となることで、その結果、本発明によるプロセスの粘度(consistency)と再現性がさらに改良される。
本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマー組成物には、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーの質量を基準にして、好ましくは0.02〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.5または0.07〜0.25質量%の成核剤が含まれる。
本発明はさらに、本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマー、または本発明のブロックコポリエーテルエステルエラストマーを含む組成物の、弾性繊維または弾性、好ましくは通気性のフィルムへの使用にも関する。本発明はさらに、少なくとも1種の本発明によるブロックコポリエーテルエステルエラストマーを含む製品、特に弾性繊維および弾性フィルムにも関する。
以下の実施例および比較実験例を用いて、本発明をさらに説明する。
出発物質
テレフタル酸ジメチル(DMT)はBP・アモコ(BP Amoco)から、ブタンジオール(BD)はBASFから、プルロニック(Pluronic)PE6201、プルロノック(Pluronoc)PE9200およびプルロニック(Pluronic)PE9400はBASFから、アクレイム(Acclaim)4220はバイエル(Bayer)から、そして、TB4040、チタン酸テトラブチル(TBT)はフルカ(Fluka)から、酢酸マグネシウム四水塩(Mg(OAc)・4HO)はアルドリッチ(Aldrich)から、入手したものをそのまま使用した。
PO−EOポリオールA〜Cは、本発明のプロセスの要求を満たすものであって2工程で調製した。まず、触媒として水酸化カリウムを用いて、所望のEO含量とMnを有するポリオールを調製した。次いで、そのようにして得られたポリオールを酸性条件下で加水分解させた。
実施例および比較実験例において使用したポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの化学組成についての情報を、表1にまとめた。
Figure 0004727593
ブロックコポリエーテルエステルエラストマー調製のための一般的な手順
DMT(150.8g、0.777mol)、BD(97.9g、1.09mol)、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール(0.139mol)、触媒TBT(384mg、1.128mmol)および助触媒Mg(OAc)・4HO(241mg、1.128mmol)ならびにイルガノックス(Irganox)1330(0.5重量%)を、実験室スケールのガラスオートクレーブの中で、窒素雰囲気下に置いた。その反応混合物を、撹拌し、少量の窒素を流しながら、徐々に加熱して室温から220℃まで昇温させた。エステル交換反応は約160℃あたりから始まった。生成するメタノールは留去した。次いで溶融温度を245℃まで上昇させ、残存している過剰のBDを真空下(<1mbar)で留去した。所望の溶融粘度に達したら、重縮合反応を停止した。撹拌速度を20rpmに維持するのに必要な電流を測定することによって、トルクを測定したが、これは溶融粘度に比例する。反応が終了したら、その溶融物に窒素圧をかけて反応器から取り出し、水浴にいれ、ロールがけをしてスレッドを形成させた。次いで、分析および加工が容易となるように、そのスレッドを細断してペレットとした。
粘度測定
粘度測定は、ウベローデ(Ubbelohde)キャピラリー粘度計(ショット(Schott)製)を用いて実施した。m−クレゾール中10重量%の液について、25℃での流動時間を測定した。ハーゲンバッハ(Hagenbach)による補正を加えた。
カルボン酸末端基分析
カルボキシル末端基の含量は、水酸化カリウムを用いた滴定によって求めたが、その平衡はメトローム(Methrohm)フォトメーターE662を用いて求めた。
OH末端基分析
OH末端基は、ブロックコポリエーテルエステルエラストマーを、内部標準の1−ヘキサデカノールと共に、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールの中に溶解させて求めた。次いで、塩化アントラセノイルを用いて、ヒドロキシル基をエステル化した。その溶液をHPLCにより分析したが、検出にはUVを用いた。
HNMR
HNMRを用いて、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール中の不飽和ビニルおよびアリル末端基、ならびにPEO含量を求めた。分析は、ブルーカー(Bruker)ARX−400で実施し、溶媒としてDMSO−dを用いた。
DSC
DSC測定は、メトラー(Mettler)DSC821で実施した。サンプルを室温から250℃まで加熱し、その温度で5分間保持した。次いでサンプルを−120℃まで冷却して、5分間保持し、再び250℃まで加熱した。加熱/冷却の速度は10℃/分であった。
DMTA
標準の加圧手段を用いて材料をプレスして、70×40mmで厚み0.08mmのフィルムとした(T=240℃)。そのフィルムから試験サンプルを切り出した。張力についてのDMTA測定は、ASTM D5026に従い、周波数1Hzを用いて、レオメトリックス(Rheometrics)製のRSA−II上で実施した。温度を、−130から240℃まで、5℃/分で変化させた。
引張試験/ヒステリシス試験
引張試験/ヒステリシス試験は、試験片(ISO527−2)について実施したが、それは、厚み2mmの射出成形板から(射出成形方向に平行に)切り出したものであった。適当なゴム用クランプ、2000Nのロードセル、および歪みを測定するための光学センサーを備えた、ツビック(Zwick)試験機を使用した。試験速度はすべて、100mm/分とした。ヒステリシス試験の場合には、それぞれのサイクルで歪みを25%まで上げ、滞留時間(それぞれのサイクルの終点での待ち時間)は0秒に設定した。試験はすべて、少なくとも3回は実施した。
湿分透過速度(MVTR)
湿分透過速度(MVTR)は加圧成形フィルム(約80〜100μm)について測定したが、それは標準の加圧手段を用いて(T=240℃)粒状物から調製したものである。この試験は、ASTM E96BおよびE96BWに従い、38℃、相対湿度50%で実施した。温度と湿度は、耐候試験機形式CTSにより調節した。
実施例I〜VIII、比較実験例1〜6
ブロックコポリエーテルエステルエラストマーの合成
ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールA〜Gを各種の量で用いて、先に述べた方法により一連のブロックコポリエーテルエステルエラストマーを合成した。ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの量は、それぞれのソフトブロックについて、PBTの結晶化の理論計算限度まで上昇させた(記載内容を参照されたい)。表2に、それぞれの反応での、重縮合時間、溶融物の外観、重縮合(pc)終了時のトルク、相対粘度ηrel、末端基分析の結果、末端基から計算した分子量を示す。
実施例I〜VIIIでは、ポリオールA、B、およびCを用いたが、これらのポリオールは、本発明のプロセスの要求を満たすものである。比較実験例1〜6においては、ポリオールD、E、F、およびGを用いた。
比較実験例1においては、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールDを用いたが、これは、Mnが2500g/molより小さく、不飽和含量は、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール1kgあたり35meqより少し高かった。
比較実験例2においては、ポリ(アキシレンオキシド)(poly(axylene oxide))ポリオールEを用いたが、これは、Mnが高く、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール1kgあたり35meqより高い不飽和含量を有していた。
比較実験例3〜5では、ポリオールFを使用したが、これは、高いMnと低い不飽和含量を有するが、エチレンオキシド含量は22重量%未満であった。
比較実験例6においては、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールGを使用したが、これのMnは2800g/molよりも大きかった。その不飽和含量は、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール1kgあたり35meqよりも高く、そのEO含量は20重量%未満であった。
Figure 0004727593
ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールE、F、およびGに比較して、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールA、B、およびCは重合の際に透明な溶融物を与えた。FとGは、A〜Cとは、とりわけポリエチレンブロックの含量が異なっていて、FとGではいずれも20%で、他のものよりも低い。Gは不飽和含量が高く、それに対してFは不飽和含量が低い。その一方でEは、不飽和が高く、35meq/kgを超えている点で、A〜Cとは異なっている。引用した従来技術からの情報から判断すると、Dが、かなりの粘度を有する透明な生成物を与えたという事実は驚くべきことであるが、その原因はおそらく、Dの分子量に限度があり、Dでは引用した従来技術の実施例よりは高いポリエチレン含量を有しており、そして、Dが本発明に関して言えば境界域に近い不飽和を有しているといったことが重なったからであろう。Dをベースとした比較実験例1をより大きなスケールで繰り返すと、良好な製品を得ようとすると、後重縮合工程を含む2段のプロセスが必要となることも判った。
ブロックポリエーテルエステルエラストマーの熱的性質
熱的性質を表3に示す。
Figure 0004727593
すべての物質において、PBT結晶化は、そのPBTブロックの平均の長さによって、明瞭に決まってくる。ソフトブロックの量が増えるほど、そしてソフトブロックの長さが短くなるほど、溶融温度が低下する。溶融温度と並行して、短く濃度の低いPBTセグメントではその結晶化プロセスが困難であることを反映して、PBT結晶化度および結晶化温度もまた低下する。
比較実験例2および3のコポリマーはいずれも、非常に低い溶融温度を示すが、その一方で結晶化温度は、比較実験例2(ポリオールE使用)では最高端、比較実験例3(ポリオールF使用)では最低端となっている。その他の数値は範囲内に収まっている。それにもかかわらず、それらのコポリマーの機械的性質は極めて劣悪で(下記参照)、そのことから、ポリオールEおよびFは、ブロックコポリエーテルエステルコポリマーを調製するには極めて不向きであることが判る。
比較実験例1(ポリオールD使用、Mn=2300)のコポリマーは、高い溶融温度と高い結晶化温度を示し、その上結晶化度も極めて高い(dH、結晶化度、総合結晶化度(室温)の値が高い)。これは、たとえば実施例IIIおよびVIのコポリマー(それらは、ほぼ同じ量のハードセグメントを有しているが、Mn=3300のポリオールBを使用している)とは対照的であるが、それらもまた、高い溶融温度と高い結晶化温度、さらにはC.E.Cよりも高いものを有しているが、結晶化度がかなり低い(dH、結晶化度、総合結晶化度(室温)の値がより低い)。
いくつかの用途、たとえば繊維紡糸などでは、結晶化温度が高いことが極めて重要である。したがって、成核剤を添加することによって結晶化温度を上昇させることが試みられた。また別な試みとして、超固相状態後重縮合工程(SSP)によって、その材料の性質を改良することも試みられた。それらの結果を、表4にまとめた。
その結果から、SSPによったとしても、結晶化温度の所望の性質の増加には限度があることは明らかである。それとは対照的に、B/75(実施例Vのブロックコポリマー、長鎖ポリオールと少量のハードセグメントを含む)に対して、射出成形時に、0.1%のミクロタルク(イミファビ・HTTP・ウルトラ(Imifabi HTTP Ultra)5Cタルクを添加(ドライブレンド)すると、結晶化温度が100℃から140℃に上がるが、これは、D/55(比較実験例1のブロックコポリマー、短鎖ポリオールと多量のハードセグメントを含む)の場合と同等の結晶化温度である。
Figure 0004727593
ブロックポリエーテルエステルエラストマーの機械的性質
表5には、各種の実施例および比較実験例における、各種のポリオールタイプのソフトブロックをベースとしたブロックコポリエーテルエステルポリマーの機械的性質の概略を示す。
Figure 0004727593
表から判るように、すべての実施例において良好ないしは極めて良好な機械的性質が認められた。特に実施例I、II、IV、V、VII、VIIIでは、極めて良好な引張強さを維持しながらも、引用された従来技術に記載された物質についての報告値のいずれよりも高い破断時伸びを示している。これらの実施例では、極めて低い硬度と、低いE’−モジュラス、極めて低い塑性歪みもさらに特徴的である。
実施例IIIおよび特に実施例VIでは、いくぶん低めの破断時伸びと高めの引張強さを示し、さらには硬度、E’−モジュラスおよび塑性歪みもいくぶん高めである。しかしながら、これらの物質は良好ないしは極めて良好な水蒸気透過性を有している。
湿分透過速度(MVTR)
表6に、ASTM E96B(ウェットカップ法)およびE96BW(逆向きカップ法)に従った湿分透過速度(MVTR)試験の結果を示している。比較のために、市販品(シンパテックス(Sympatex):30重量%PEG−4000ソフトブロックを有するポリエーテルエステル)の値も示している。
この結果から、ソフトブロックの量が増えたり、ソフトブロック中のPEOの量が増えたりした場合だけではなく、特にソフトブロックの分子量と共に、MVTRが上昇することが判る。いずれの物質も、比較例1の場合よりははるかに良好なMVTRを示している。さらに、実施例Iおよび実施例IIの物質が、シンパテックス(Sympatex)に比肩しうるMVTRを示すのに対し、実施例IVおよびVの物質は、シンパテックス(Sympatex)よりもさらに高い湿分透過速度(MVTR)を示す。
Figure 0004727593
PBTブロックあたりのブチレンテレフタレート単位の平均の数を、ブロックコポリエーテルエステルエラストマー中のポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの量の関数としてプロットしたものである。

Claims (9)

  1. 少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、少なくとも1種のアルキレンジオール、およびエチレンオキシドを用いて末端封止したポリ(プロピレンオキシド)を含むポリ(アルキレンオキシド)ポリオールをエステル化することにより得られる、ポリエステルブロックおよびポリ(アルキレンオキシド)ポリオールブロックを含むブロックコポリエーテルエステルエラストマーであって、
    a)前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、40〜60重量%の間のエチレンオキシド含量を有し;
    b)前記ブロックコポリエーテルエステルエラストマーが、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの1kgあたり35meq未満の不飽和含量(すなわち、ビニル基およびアリル基の合計含量)を有し;
    c)前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、2500〜5000g/molの間のMnを有し;
    d)前記ブロックコポリエーテルエステルエラストマーにおける、ポリ(アルキレンオキシド)ポリオール/芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の重量比が、50/50から90/10までの間であり;
    e)前記ポリエステルブロックの平均重合度が、少なくとも3.5であり;そして
    f)前記ブロックコポリエーテルエステルエラストマーが、少なくとも25,000g/molのMnを有する、ブロックコポリエーテルエステルエラストマー。
  2. 前記アルキレンジオールが1,4−ブタンジオールである、請求項に記載のブロックコポリエーテルエステルエラストマー。
  3. 前記芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体がブチレンテレフタレートである、請求項またはに記載のブロックコポリエーテルエステルエラストマー。
  4. 前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールが、3000〜5000の間のMnを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のブロックコポリエーテルエステルエラストマー。
  5. ポリ(アルキレンオキシド)ポリオールの1kgあたり15meq未満のビニル含量を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロックコポリエーテルエステルエラストマー。
  6. 少なくとも35,000g/molのMnを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のブロックコポリエーテルエステルエラストマー。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のブロックコポリエーテルエステルエラストマーおよび少なくとも1種の添加剤を含む、組成物。
  8. 弾性繊維またはフィルムにおける、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブロックコポリエーテルエステルエラストマーの使用。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の少なくとも1種のブロックコポリエーテルエステルエラストマーを含む製品であって、前記製品が好ましくは弾性繊維またはフィルムである、製品。
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