JP4722594B2 - 開閉装置の戻しばね付き巻取体構造 - Google Patents

開閉装置の戻しばね付き巻取体構造 Download PDF

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Description

本発明は、開閉体を開閉移動させるためにこの開閉体を巻き取り、繰り出す正逆回転可能な巻取体であって、正逆回転のうちの一方の回転時に蓄圧された戻しばね力が他方の回転のための補助力として利用される戻しばねを備えた巻取体の構造に係り、例えば、開閉体がシャッターカーテンとなっている防災用シャッター装置及び開口部用シャッター装置を含む各種のシャッター装置や、ロールブラインド装置、オーニング装置、防煙垂れ幕装置等の巻取体構造に利用できるものである。
下記の特許文献1には、開閉体であるシャッターカーテンを開閉移動させるためにこのシャッターカーテンを巻き取り、繰り出す巻取体に、この巻き取り、繰り出しのための巻取体の正逆回転のうちの一方の回転時に戻しばね力が蓄圧され、この蓄圧された戻しばね力が巻取体の他方の回転のための補助力として利用される戻しばねを設けたシャッター装置の戻しばね付き巻取体構造が示されている。このような巻取体構造では、巻取体は、少なくともシャッターカーテンの巻き取り、繰り出し時に回転しない中心軸と、シャッターカーテンを巻き取り、繰り出しのためにこの中心軸を中心に回転自在であって、中心軸の外周に配置された回転体と、を有しており、戻しばねの一端は中心軸に連結され、他端は回転体に連結される。
特許第2697541号公報(段落番号0007,0008、図2)
戻しばねの一端を中心軸に連結し、他端を回転体に連結するための構造として種々のものが考えられるが、戻しばね力の締め付け力を有効に活用して戻しばねの一端、他端を中心軸、回転体に連結できるものとして、戻しばねの一端を巻取体の円周方向の一方の側へ折り曲げて、この一端を中心軸側に係止するとともに、戻しばねの他端を巻取体の円周方向の他方の側へ折り曲げて、この他端を回転体側に係止するという構造を採用できる。
また、戻しばねが設けられる回転体の個数を1個とせず、中心軸の軸方向に離れて配置された複数個とすることもでき、さらに、それぞれの回転体を中心軸の外周に回転自在に配置して、これらの回転体によって1個のシャッターカーテンを巻き取り、繰り出すことができるようにするために、それぞれの回転体を、中心軸の直径方向へ立ち上がった立上り部と、中心軸の軸方向への幅を有する筒部とを有するものとすることができ、このような回転体については、筒部に戻しばねの前記他端が係止されることになる。
以上のように、巻取体の構造を、中心軸の外周に軸方向に離れて配置された複数個の回転体を有するものとし、それぞれの回転体が、中心軸の直径方向へ立ち上がった立上り部と、中心軸の軸方向への幅を有する筒部とを備えたものになっていて、戻しばねの一端を巻取体の円周方向の一方の側へ折り曲げ、この一端を中心軸側に係止するとともに、戻しばねの他端を巻取体の円周方向の他方の側へ折り曲げ、この他端を回転体の筒部に係止する場合には、立上り部に対する戻しばねの配置位置によっては、筒部に戻しばねの他端を係止するために設ける被係止部の向きが逆になることがある。これによると、それぞれの巻回方向が同じになっている戻しばねが配置される複数個の回転体を異なる形状としなければならなくなり、その分だけ複数個の回転体を含んで構成される巻取体全体の製造コストが高くなる。このため、戻しばねが設けられる回転体の形状を、複数個の回転体について共通化できるようになる工夫が求められる。
本発明の目的は、戻しばねが設けられる回転体の形状の共通化を、複数個の回転体について実現できるようになる開閉装置の戻しばね付き巻取体構造を提供するところにある。
本発明に係る開閉装置の戻しばね付き巻取体構造は、開閉体を開閉移動させるためにこの開閉体を巻き取り、繰り出す巻取体と、この巻き取り、繰り出しのための前記巻取体のの正逆回転のうちの一方の回転時に戻しばね力が蓄圧され、この蓄圧された戻しばね力が前記巻取体の他方の回転のための補助力として利用される戻しばねと、を含んで構成される開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、前記巻取体は、少なくとも前記巻き取り、繰り出し時に回転しない中心軸と、前記開閉体を巻き取り、繰り出しのためにそれぞれがこの中心軸を中心に正逆回転自在であって、前記中心軸の外周に軸方向に離れて配置された複数個の回転体と、を有して構成されており、これらの回転体のうちの少なくとも2個の回転体に設けられている前記戻しばねの一端は、前記巻取体の円周方向の一方の側へ折り曲げられて前記中心軸側に係止されているとともに、前記戻しばねの他端は、前記巻取体の円周方向の他方の側へ折り曲げられて前記回転体側に係止され、前記戻しばねが設けられている前記少なくとも2個の回転体は、前記中心軸の直径方向へ立ち上がった立上り部と、前記中心軸の軸方向への幅を有する筒部と、を有して形成され、この筒部に前記戻しばねの前記他端が係止されているとともに、前記少なくとも2個の回転体の前記筒部は、前記立上り部に対して前記中心軸の軸方向の同じ側に配置されていることを特徴とするものである。
この開閉装置の戻しばね付き巻取体構造では、巻取体は、中心軸と、この中心軸の外周に軸方向に離れて配置された複数個の正逆回転自在な回転体と、を有して構成されており、これらの回転体のうちの少なくとも2個の回転体に戻しばねが設けられ、戻しばねの一端は、巻取体の円周方向の一方の側へ折り曲げられて中心軸側に係止されているとともに、戻しばねの他端は、巻取体の円周方向の他方の側へ折り曲げられて回転体側に係止され、戻しばねが設けられている上記少なくとも2個の回転体は、中心軸の直径方向へ立ち上がった立上り部と、中心軸の軸方向への幅を有する筒部と、を有して形成され、これらの筒部に戻しばねの他端が係止され、これらの筒部は、立上り部に対して前記中心軸の軸方向の同じ側に配置されているため、戻しばね力の締め付け力を有効に活用して戻しばねの一端を中心軸側へ係止でき、他端を回転体の筒部に係止できるようにしても、上記少なくとも2個の回転体について、これらの回転体の形状を共通化することができ、これにより、その分だけこれらの回転体を含んで構成される巻取体全体の製造コストを低減できる。
また、上記少なくとも2個の回転体に設けるそれぞれの戻しばねは、巻回方向が同じになっている戻しばねでよくなり、戻しばねの共通化も達成することができる。
なお、前述の「少なくとも前記巻き取り、繰り出し時に回転しない中心軸」とは、この中心軸は常時回転しない軸となっていてもよく、あるいは、例えば、戻しばねに所定の戻しばね力を蓄圧するための巻き締め作業等を行うときには、この中心軸を回転させてもよい等との意味である。
また、前記中心軸の外周に軸方向に離れて配置される複数個の回転体の間隔は任意であり、回転体の個数を3個以上とする場合には、それぞれの間隔を同じにしてもよく、異なられてもよく、さらには、回転体の個数が2個以上である場合には、全部の回転体同士又は一部の回転体同士を互いに接触させて配置してもよい。
さらに、本発明に係る開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、回転体の個数は2個でもよく、3個以上でもよい。
回転体の個数が3個以上であって、これらの回転体の全部に戻しばねが設けられる場合に、これらの回転体の全部について、筒部を、立上り部に対して中心軸の軸方向の同じ側に配置することにより、これらの回転体の全部の形状を共通化することができ、すなわち、全部の回転体を同じ形状、構造にでき、形状及び構造が異なる回転体を用意する必要がなくなる。
また、本発明において、前記少なくとも2個の回転体に設ける戻しばねは、戻しばね力の特性が同じとなっているばねでもよく、異なっているばねでもよい。言い換えると、これらの戻しばねは、材質が同じであって、厚さや直径、幅等の寸法も同じ、全長も同じとなっている材料を同じ回数分だけ巻回することにより生産した1種類のばねでもよく、材質と、厚さや直径、幅等の寸法と、全長と、巻回数とのうち、少なくとも1つが異なっている複数種類のばねでもよい。そして、前記少なくとも2個の回転体に設ける戻しばねを、材質が同じであって、厚さや直径、幅等の寸法も同じ、全長も同じとなっている材料を同じ回数分だけ巻回することにより生産した1種類のばねとした場合には、これらの戻しばねを設ける前記回転体の寸法等を同じにできるため、これらの回転体の形状の共通化を一層有効に達成できることになる。
なお、このように前記少なくとも2個の回転体に設ける戻しばねを、戻しばね力の特性が同じになっている1種類のばねとする場合には、これらの戻しばねを開閉体の幅方向中央に対して対称の位置又は略対称の位置に配置することが好ましい。これによると、それぞれの戻しばねによる戻しばね力の特性が開閉体の幅方向中央に対して同一の特性又は略同一の特性となり、これにより、開閉体全体を中心軸の軸方向に渡ってバランスよく巻き取り、繰り出すことができるようになる。
また、前記少なくとも2個の回転体のそれぞれに設ける戻しばね個数は、1個でもよく、複数個でもよい。これらの回転体のそれぞれに設ける戻しばねの個数を複数個とするためには、回転体の大きさをその最大個数の戻しばねを配置できる大きさとするとともに、これらの戻しばねの一端と他端を係止することができる部分を中心軸側と回転体の筒部に設け、これにより、最大個数から選択された任意の個数の戻しばねの一端と他端をこれらの部分に係止できるようにすればよい。
また、戻しばねの一端を上記中心軸側に係止するためには、巻取体の円周方向の一方の側へ折り曲げた戻しばねの一端を、中心軸に直接設けた溝、スリット、突起、孔等による被係止部に係止してもよく、あるいは、中心軸に、戻しばねが設けられる回転体ごとに巻芯部材を固定し、この巻芯部材に設けた溝、スリット、突起、孔等による被係止部に戻しばねの一端を係止してもよい。
後者によると、戻しばねの一端は、戻しばねが設けられる回転体ごとに用意された巻芯部材に係止されることになるため、1個の戻しばねごとに、回転体と戻しばねと巻芯部材とを含んで構成される1個の戻しばねユニットを形成できることになり、このため、中心軸への戻しばねの配置作業を容易化できるなどの効果を得られる。
また、戻しばねが設けられる回転体の構造は、前記記立上り部と筒部とを有するものであれば、任意なものでよく、例えば、プレス成形等により立上り部と筒部とが一体となって形成されたものでもよく、あるいは、立上り部を形成する第1部材と、筒部を形成する第2部材とを含んで形成され、これらの第1部材と第2部材との結合によって形成されたもの等でもよい。
回転体を、立上り部を形成する第1部材と筒部を形成する第2部材とを含んで形成されていて、これらの第1部材と第2部材との結合によって形成されたものとすると、この回転体を、第1部材と第2部材とを含む分割構造の製品とすることができるため、立上り部及び筒部の形成が容易となり、また、戻しばねの前記他端を係止する上記被係止部を筒部に形成する作業も容易に行える。
さらに、本発明において、前記戻しばねは、開閉体を巻き取り、繰り出す巻取体の正逆回転のうちの一方の回転時に戻しばね力が蓄圧され、この蓄圧された戻しばね力を巻取体の他方の回転のための補助力として利用することができるものであれば、任意なばねでよく、例えば、ねじりコイルばねでもよく、前記中心軸の軸方向に次第に変位しながら巻回しているばね、すなわち、円錐形ばねやたる形ばねでもよく、前記中心軸の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部に向かって渦巻き状に巻回している渦巻きばね等でもよい。
戻しばねを、中心軸の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部に向かって渦巻き状に巻回している渦巻きばねとすると、中心軸の軸方向における戻しばねの幅寸法を小さくできることになり、これにより、巻取体全体の軸長寸法を短くできる。
また、戻しばねを、中心軸の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部に向かって渦巻き状に巻回している渦巻きばねにした場合には、この戻しばねの中心軸の軸方向の長さはねじりコイルばねよりも小さいため、開閉体を巻き取り、繰り出す前記複数個の回転体を、開閉体の幅方向の寸法と対応する中心軸の軸方向の位置に配置することにより、中心軸の全長を開閉体の幅寸法よりも少し大きい程度にすることができ、すなわち、中心軸の全長を、開閉体の幅方向の寸法と戻しばねの中心軸の軸方向の寸法とを足した程度の寸法にすることができ、戻しばねの配置だけのために必要となる中心軸の軸部分の長さを短縮できるため、中心軸の長さを短くできる。
また、戻しばねを渦巻きばねとする場合には、この渦巻きばねは、板材を渦巻き状に巻回して形成されているばね、すなわち、ぜんまいばねでもよく、断面円形や断面楕円形、断面矩形の線材等を渦巻き状に巻回したものでもよい。また、これらのいずれかで戻しばねを形成した場合には、巻き数や全長等は任意である。
渦巻きばねを、板材を渦巻き状に巻回して形成したぜんまいばねとすると、板材の厚さは小さいため、戻しばね全体の直径を小さくでき、これにより、戻しばねを中心軸の直径方向の寸法が小さい空間に有効に配置することができる。
このように戻しばねを、ぜんまいばねを含む渦巻きばねとする場合には、渦巻きばねは、開閉体の開閉特性に応じて、巻き締め初期から巻き締め終期までのうちの任意な範囲を利用することができる。すなわち、渦巻きばねの巻き締め初期から巻き締め終期までの全体範囲を利用してもよく、巻き締め初期を含む初期範囲と巻き締め終期を含む終期範囲とを除いた中間範囲だけを利用してよく、これらの初期範囲と終期範囲とのうちの一方と、上記中間範囲とを利用してもよく、巻き締め初期範囲と巻き締め終期範囲とのうちの少なくとも一方のみを利用してもよい。
また、渦巻きばねは、巻き締め初期において外層部と内層部とのうちの一方が密巻き部となっていて他方が粗巻き部となっているとともに、巻き締め終期において前記一方が粗巻き部となって前記他方が密巻き部となるものでもよい。このような渦巻きばねの場合であって、開閉体の開閉移動方向が、上向き移動が開き移動となった鉛直方向の成分を有する方向である場合には、巻き締め初期を含む初期範囲と巻き締め終期を含む終期範囲とを除いた中間範囲を、開閉体の全開位置から全閉位置までの開閉移動領域と対応する範囲として利用することが好ましい。
これによると、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクを、開閉体を開き移動させるために必要な開閉体開き移動トルクと近似させることができる。
これを具体的に説明すると、渦巻きばねのばね定数は一定ではなく、そのばね力は、有効長の変化に対応して全体的に非線形の特性を有している。そして、開閉体を上向きに開き移動させるために必要な開閉体開き移動トルクの大きさは、巻取体から繰り出されている開閉体の自重による中心軸回りの自重トルクと、これ以外のトルクとの合計、例えば、開閉体を開き移動させるときに生ずる開閉体用ガイド部材と開閉体との摩擦力等の抵抗力による中心軸回りの抵抗トルクとの合計となる。これらのトルクのうち、自重トルクは、巻取体から繰り出されている開閉体の自重と、中心軸の中心からこの自重が作用している位置までの水平距離との積算値となり、これらの自重と水平距離の両方は巻取体からの開閉体の繰り出し量(巻取体の回転数)と関係している。このため、開閉体開き移動トルクは、一般的には、巻取体の回転数に対して直線的に変化せず、曲線的に変化するものとなるが、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクは、渦巻きばねのばね力が全体的に非線形の特性を有しているため、巻き締め初期を含む初期範囲と巻き締め終期を含む終期範囲とを除いた渦巻きばねの中間範囲において、開閉体開き移動トルクと同様に曲線的に変化するものとなる。
したがって、巻き締め初期を含む初期範囲と巻き締め終期を含む終期範囲とを除いた渦巻きばねの中間範囲を、開閉体の全開位置から全閉位置までの開閉移動領域と対応する範囲として利用することにより、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクを、開閉体を上向きに開き移動させるために必要な開閉体開き移動トルクと近似させることができる。
なお、上述の密巻き部には、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触しているものと、接触していないものとの両方が含まれるが、上記開閉体の開閉移動領域で密巻き部を用いる場合には、この密巻き部は、上記開閉体開き移動トルクの特性に対応させて、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触しているものでもよく、接触していないものでよい。また、粗巻き部は、この粗巻き部が1回転未満となっている巻き部によって形成されているものでよく、1回転以上となっている巻き部によって形成されているものでもよい。
また、開閉体の全開位置から全閉位置までの開閉移動領域の全体又は略全体について、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクの大きさを、開閉体を上向きに開き移動させるために必要な中心軸回りの開閉体開き移動トルクの大きさ以下であって、開閉体を下向きに閉じ移動させようとする中心軸回りの開閉体閉じ移動トルクの大きさ以上としてもよく、言い換えると、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクの大きさを、開閉体を上向きに開き移動させるために必要な中心軸回りの開閉体開き移動トルクの大きさと同じかこれよりも小さくし、かつ開閉体を下向きに閉じ移動させようとする中心軸回りの開閉体閉じ移動トルクの大きさと同じかこれよりも大きくしてもよい。
これによると、開閉体に特別の閉じ移動力や開き移動力を加えない限り、開閉体の開閉移動領域の全体又は略全体におけるいずれの位置でも開閉体を停止させることができる。また、手動操作や自動装置で開閉体に閉じ移動や開き移動を行わせる場合には、上記特別の閉じ移動力や開き移動力に相当する比較的小さな閉じ移動力や開き移動力をこの手動操作や自動装置によって開閉体に加えることにより、開閉体を所望どおり移動させることができる。
なお、ここでいう、開閉体の開閉移動領域の略全体について、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクの大きさを、開閉体を上向きに開き移動させるために必要な中心軸回りの開閉体開き移動トルクよりも小さく、かつ開閉体を下向きに閉じ移動させようとする中心軸回りの開閉体閉じ移動トルクよりも大きくする、とは、前述した巻取体がある回転角度になったときにおいて、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクの大きさが、開閉体を上向きに開き移動させるために必要な中心軸回りの開閉体開き移動トルクの大きさと、開閉体を下向きに閉じ移動させようとする中心軸回りの開閉体閉じ移動トルクの大きさとの間の大きさとなっていなくてもよいとの意味である。
このような巻取体の回転角度の一例は、巻取体と開閉体の上端部との連結部が、巻取体の中心に対して水平となる位置に達したときである。このときには、開閉体の上端部に、この上端部を巻取体に連結するための吊り元部材等の連結部材が設けられ、この連結部材の厚さ分だけ巻取体の中心から開閉体の繰り出し位置までの水平距離が大きくなるため、巻取体から繰り出されている開閉体の自重による中心軸回りの開閉体閉じ移動トルクや開閉体開き移動トルクが大きくなる。
また、開閉体が全開位置に達したとき又は全開位置の近くに達したときに、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクの大きさが、中心軸回りの開閉体の開き移動トルクの大きさよりも大きくなるようにしてもよい。これによると、開閉体が全開位置又は全開位置の近くに達すると、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクによって開閉体は上方へ付勢されることになり、これにより、開閉体の閉じ側の端部である下端部に設けられている座板等のエンド部材を、まぐさ等の開閉体全開位置規定部材に当接させることができるため、開閉体を全開位置にこの当接力をもって停止させることができる。
また、開閉体が全閉となっているときにおける渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクの大きさが、開閉体を上向きに開き移動させるために必要な中心軸回りの開閉体開き移動トルクよりも大きくなっていて、開閉体が全閉位置から手操作等で開き移動させることが容易な高さ位置まで達したときに、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクの大きさが、開閉体を上向きに開き移動させるために必要な中心軸回りの開閉体開き移動トルクの大きさ以下であって、開閉体を下向きに閉じ移動させようとする中心軸回りの開閉体閉じ移動トルクの大きさ以上となるようにしてもよい。
これによると、全閉位置で施錠装置によって施錠されていた開閉体を開錠すると、この開閉体を、渦巻きばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクにより、手操作等で開き移動させることが容易な高さ位置まで自動的に開き移動させることができ、この後、開閉体を手操作等で容易に開き移動させることができる。
また、開閉体の開閉移動領域の全体又は略全体について、戻しばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクの大きさを、開閉体の自重が開閉体を下向きに閉じ移動させようとする中心軸回りの開閉体閉じ移動トルクの大きさよりも大きいか、これと同程度の大きさとしてもよい。これによると、開閉体の開閉移動領域の全体又は略全体について、開閉体が自重によって大きく加速しながら閉じ移動してしまうのを防止できる。
さらに、本発明に係る開閉装置は、開閉体を巻き取り、繰り出して回転体を開閉移動させるための前記巻取体の正逆回転の回転力が手操作力によって付与されるものでもよく、巻取体に正逆回転の回転力を付与するための電動モータ等による駆動装置を備え、この駆動装置からの駆動力で巻取体が正逆回転するものでもよい。すなわち、本発明は、手動式の開閉装置にも適用でき、自動式開閉装置にも適用でき、また、本発明は、手動と自動の併用式の開閉装置にも適用できる。さらに、本発明は、開閉体が自重によって閉じ移動する自重閉鎖式の開閉装置や、開閉体が自重と手操作力の両方によって閉じ移動する自重手動式の開閉装置にも適用できる。
開閉装置に、巻取体に正逆回転の回転力を付与するための電動モータ等による駆動装置を設ける場合には、この駆動装置は任意な場所に配置することができる。その一例は、前記戻しばねが設けられている前記少なくとも2個の回転体を前記中心軸の軸方向に互いに隣り合わせて配置し、駆動装置をこれらの回転体の間に配置することである。
これによると、駆動装置を2個の回転体の間のスペースを有効に利用して配置できる。また、戻しばねを、前述したように、中心軸の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部に向かって渦巻き状に巻回している渦巻きばねとしている場合には、この渦巻きばねは、中心軸の軸方向における幅寸法が小さいため、駆動装置を含めた巻取体全体の軸長寸法を小さくすることが可能となり、これにより、開閉装置全体を任意な大きさに設定するができて、この大きさを必要に応じてコンパクト化することも実現できるようになる。
また、上述のように、前記中心軸の軸方向に互いに隣り合って配置された前記少なくとも2個の回転体の間に駆動装置を配置する場合には、これらの回転体の間隔は、駆動装置を配置できる大きさがあれば任意であり、駆動装置の大きさと同じでもよく、この大きさよりも大きくてもよい。
さらに、本発明は任意な開閉装置に適用できる。すなわち、本発明は、開閉体がシャッターカーテンとなっているシャッター装置や、ロールブラインド装置、オーニング装置、防煙垂れ幕装置等の任意な開閉装置に適用でき、シャッター装置は、窓や出入口等の開口部をシャッターカーテンで開閉する開口部用シャッター装置でもよく、全閉となったシャッターカーテンで防災区画を形成するための防災用シャッター装置でもよく、車庫用シャッター装置でもよく、物置用シャッター装置でもよく、トラック等の車両の荷台やコンテナのためのシャッター装置等でもよい。そして、防災用シャッター装置には、火災等の災害発生時にシャッターカーテンがエレベータとエレベータホールとの間で閉じ移動するエレベータ用防災シャッター装置が含まれ、また、防災用シャッター装置には、通常時のシャッターカーテンは閉じていたり、人の出入り等のために開閉したりし、火災等の災害発生時には消火活動等を行えるようにするためにシャッターカーテンが開くようになっているシャッター装置も含まれる。
また、本発明をシャッター装置に適用する場合には、シャッターカーテンは任意な材料で形成されているものでよい。すなわち、シャッターカーテンは、その全部又は主要部が複数のスラットの連設で形成されたものでもよく、複数のパネルの連設で形成されたものでもよく、リンクで連結された複数のパイプで形成されたものでもよく、布やシート等の薄厚部材で形成されたものでもよく、ネットで形成されたものでもよく、これらのうちの少なくとも2つの複合で形成されたもの等でもよい。
本発明によると、戻しばねが設けられる回転体の形状の共通化を、複数個の回転体について実現できるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本実施形態に係る戻しばね付き巻取体構造が採用されている開閉装置であるシャッター装置の全体正面図が示され、このシャッター装置は、開閉体であるシャッターカーテン1で建物の出入口10を開閉するための出入口用シャッター装置である。また、このシャッター装置は、シャッターカーテン1の自重及び手動操作によりシャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させ、手動操作によりシャッターカーテン1を上向きに開き移動させる手動式のタイプのものとなっている。
出入口10の左右両側を形成している壁や柱等による建物躯体11には、上下に延びるガイドレール2が取り付けられ、これらの左右のガイドレール2の内部に、シャッターカーテン1の幅方向両端部である左右両端部がスライド自在に挿入され、シャッターカーテン1はガイド部材であるガイドレール2に案内されて上下方向に開閉移動可能となっている。出入口10の上部には、シャッターケース3が配設され、このシャッターケース3の内部に、正逆回転自在となった巻取体4が左右のブラケット5で支持されて水平に架設されている。シャッターカーテン1の上端部はこの巻取体4に連結され、シャッターカーテン1の上下方向の開閉移動は、巻取体4が正逆回転のうちの一方へ回転することによる巻取体4からのシャッターカーテン1の繰り出し、巻取体4が他方へ回転することによって行われる巻取体4へのシャッターカーテン1の巻き取りによりなされ、このシャッターカーテン1の開閉移動は、シャッターケース3の下面3Aに設けられているまぐさのスリットをシャッターカーテン1が挿通してなされる。
シャッターカーテン1は、閉じ側の先端部である下端部に設けられた座板1Aと、この座板1Aの上部に多数連設されたスラット1Bとを含んで構成され、座板1Aがシャッターケース3の下面3Aのまぐさの高さ位置に達しているときに、シャッターカーテン1は全開位置となっており、座板1Aが出入口10の床10Aに達したときに、シャッターカーテン1は全閉位置となる。このため、これらの全開位置から全閉位置までの領域が、シャッターカーテン1の開閉移動領域Lである。
シャッターカーテン1を構成している多数のスラット1Bのうち、シャッターカーテン1が全閉位置となったときに腰と同じ高さ程度にある所定のスラット1Bには、左右2個の手掛け部6が設けられ、シャッターカーテン1が全閉位置となっているときに、これら手掛け部6に手を掛けてシャッターカーテン1を持ち上げたり、座板1Aに操作棒の先端を係合してこの操作棒でシャッターカーテン1を上昇させることにより、シャッターカーテンを、この上昇によって正逆回転のうちの前記他方への回転を行うことになる巻取体4に巻き取らせてシャッターカーテン1を全開位置まで開き移動させることができる。また、全開位置に達しているシャッターカーテン1の座板1Aに操作棒の先端を係止してこの操作棒でシャッターカーテン1を下降させたり、手掛け部6に手を掛けてシャッターカーテン1を押し下げることを行うことにより又は行わないことにより、シャッターカーテン1の自重を利用して、シャッターカーテン1を、この下降や押し下げによって正逆回転のうちの前記一方への回転を行うことになる巻取体4から繰り出させて全閉位置まで閉じ移動させることができる。
図2には巻取体4の構造が示されている。巻取体4は、回転しない非回転軸となっている中心部の中心軸20と、シャッターカーテン1の上端部が連結され、中心軸20を中心に正逆回転自在であって、正逆回転のうちの一方への回転によってシャッターカーテン1を閉じ移動させるためにこのシャッターカーテン1を繰り出し、他方への回転によってシャッターカーテン1を開き移動させるためにこのシャッターカーテン1を巻き取るための回転かご体21とを含んで構成され、中心軸20は、軸方向両端部が図1で説明した左右のブラケット5で回転不能に支持されている。回転かご体21は、中心部に中心軸20が貫通した複数個、図示例では、4個の回転体22と、中心軸20の軸方向に延びる長さを有し、中心軸20の軸方向に互いに離間して配置されたこれらの回転体22同士を連結する連結部材となっているバー状部材23とを含んで構成され、パイプやフラットバー等からなるバー状部材23は巻取体4の円周方向に複数本設けられている。
中心軸20に対してそれぞれが正逆回転自在となっている4個の回転体22の全部は同じ形状及び構造となっており、図3は、これらの回転体22のうちの1個を示す正断面図である。図4は、図3のS4−S4線断面図、図5は、図3のS5−S5線断面図である。図3で示されているとおり、回転体22は、中心軸20の軸方向の一方の端部が略閉鎖された端面部24Aとなっていて、他方の端部24Bが開口しているカップ状部材24と、このカップ状部材24の開口した端部24Bの側に配置されていて、この開口端部24Bを略閉鎖された端部とする端部部材となっているホイール部材25との組み合わせによる組合体となっている。カップ状部材24の内部空間Sに、本実施形態に係る戻しばねであって、一端から他端に向かって渦巻き状に巻回している渦巻きばね26が収納配置されている。この渦巻きばね26は、板材を中心軸20の軸方向の同一位置又は略同一位置で渦巻き状に巻回したぜんまいばねである。
このぜんまいばね26は、図2で示されているとおり、全部の回転体22に設けられているとともに、これらのぜんまいばね26は、材質が同じであって、厚さや幅等の寸法も同じ、全長も同じとなっている板材を同じ方向へ同じ回数分だけ巻回することによって生産したものであるため、この実施形態で用いられている戻しばねは、1種類のばねとなっている。
ホイール部材25は、外周面を形成している環状フランジ部25Aと、この環状フランジ部25Aにおける中心軸20の軸方向の一方の端部に設けられた端面部25Bとを有する浅皿形状であり、この端面部25Bに、それぞれの回転体22同士を連結するための前記バー状部材23が挿通結合されている。また、ホイール部材25は、開口している中心軸20の軸方向の他方の端部25Cをカップ状部材24とは反対側に向け、端面部25Bをカップ状部材24の側に向けてこのカップ状部材24に結合されている。この結合は、板金プレス成形品であるカップ状部材24の胴部24Cの前記開口端部24B側の端部に形成されている突片24Dを、ホイール部材25の端面部25Bに形成された孔25Dに挿入した後、突片24Dを折り曲げることによってなされている(図4も参照)。
以上のことから、本実施形態では、ホイール部材の端面部25Bは、中心軸20の直径方向へ立ち上がった回転体22の立上り部となっており、カップ状部材の胴部24Cは、中心軸20の軸方向の幅を有する回転体22の筒部となっている。そして、ホイール部材25は、回転体22を形成する第1部材となっており、カップ状部材24は、回転体22を形成する第2部材となっている。
図3で示されているように、ホイール部材25はカップ状部材24よりも大きい外径を有し、この外径の部分を形成しているホイール部材25の環状フランジ部25Aは、図4で示されているように、中心軸20を中心とする真円状となっておらず、円周方向へ延びるにしたがい中心軸20からの距離が次第に変化する略渦巻き状の異形円となっている。このため、環状フランジ部25Aには、中心軸20の直径方向へ窪んだ段部25Eが形成され、それぞれの回転体22における段部25Eにおいて、シャッターカーテン1の上端部がボルト等による結合具でホイール部材25の環状フランジ部25Aの外面に結合されている。このため、それぞれの回転体22における環状フランジ部25Aは、シャッターカーテン1を巻き取り、繰り出すための巻取体4における部分となっている。
このような環状フランジ部25Aを有しているホイール部材25は、上述のように開口端部25Cをカップ状部材24とは反対側に向けてカップ状部材24に連結されているため、上記のようにシャッターカーテン1の上端部を環状フランジ部25Aの外面に結合するための結合具が、環状フランジ部25Aの内面側へ突出する部分を有するボルト、ナット等であっても、この結合作業を、開口端部25Cから作業者が手や工具等を差し入れることによって容易に行える。
また、図2で示されているように、前記中心軸20の外周面におけるそれぞれの回転体22の配置位置と対応する位置には、巻芯部材27が配置されている。これらの巻芯部材27は、図3で示されているとおり、結合具28,29によって中心軸20に固定されているため、巻芯部材27は、中心軸20と同じく、回転しない非回転部材となっている。図4から分かるように、結合具28は、巻芯部材27に螺入されて先端が中心軸20に押圧固定されたボルトであり、また、図3で示されている結合具29は、巻芯部材27及び中心軸20を貫通するボルトと、巻芯部材27の反対側に突出したこのボルトの先端に螺合されたナットとからなる。
また、図4及び図5から分かるように、巻芯部材27は丸パイプ部材であり、この巻芯部材27には、図3で示されているように、カップ状部材24の配置位置と対応する位置において、軸方向の途中まで延びるスリット27Aが形成され、さらに、巻芯部材27の軸方向両端部には、切り倒し加工による受け片27Bが形成され、巻芯部材27の円周方向に等間隔で複数形成されているこれら受け片27Bにより、巻芯部材27は中心軸20と同軸的に配置され、言い換えると、巻芯部材27は、全周に亘って中心軸20から同じ又は略同じ大きさの隙間を開けて中心軸20上に配置されている。
図3に示されているように、カップ状部材24の前記端面部24Aと、ホイール部材25の前記端面部25Bには、中心軸20及び巻芯部材27が挿通された孔30,31が形成され、これらの孔30,31は僅かな隙間を開けて巻芯部材27が遊合した孔であるため、カップ状部材24の端面部24Aによる端部と、ホイール部材25の端面部25Bによる端部は、略閉鎖された端部となっている。このため、カップ状部材24の前記内部空間Sは、略密閉空間となっており、このように前記ぜんまいばね26が収納された内部空間Sが略密閉空間となっていることにより、ぜんまいばね26に空気中の水分等に起因する錆が発生しにくく、また、ぜんまいばね26は外部力から略遮断され、ぜんまいばね26を外部環境から保護することができる。
なお、ぜんまいばね26が収納されているこの内部空間Sを密閉性が一層向上した略密閉空間又は密閉空間とするために、カップ状部材24、ホイール部材25に取り付けられて巻芯部材27と回転自在に接触するシール部材により、孔30,31を塞いでもよい。
図3で示すように、ホイール部材25と巻芯部材27との間には軸受け35が配置され、この軸受け35により、ホイール部材25とカップ状部材24は巻芯部材27に対して回転自在となっている。軸受け35は、外輪部材35Aと、内輪部材35Bと、これらの外輪部材35Aと内輪部材35Bとの間において円周方向に複数個配設され、それぞれがリテーナ35Cで回転自在に保持されているボール35Dとを有するボール式軸受けであり、外輪部材35Aはリベット等の止着具36(図4参照)でホイール部材25の端面部25Bに止着されており、内輪部材35Bは、前述した結合具28によって巻芯部材27と共に中心軸20に結合されている。
図5で示すように、前記内部空間Sに配置されているぜんまいばね26の一方の端部である内端部26Aは折り曲げられることにより、巻芯部材27の被係止部であるスリット27Aに係止されている。また、ぜんまいばね26の他方の端部である外端部26Bは折り曲げられることにより、カップ状部材24の胴部24Cの被係止片24Eに係止されている。巻取体4の円周方向へ延びる長さを有しているこの被係止片24Eは、胴部24Cに外径方向への膨出部24Fをプレス成形等で形成する際に、一部を膨出させずに切り残すことによって形成されたものである。
このようにぜんまいばね26の内端部26Aは、前記巻取体4の中心に配置された中心軸20と結合されて非回転部材となっている巻芯部材27に連結され、外端部26Bは、中心軸20を中心に回転自在となっている前記回転体22の構成部材であるカップ状部材24に結合されている。また、ぜんまいばね26の巻回方向は、ホイール部材25の環状フランジ部25Aに巻き取られているシャッターカーテン1を繰り出す方向に巻取体4が中心軸20を中心に回転(図5中、右回転)したときに、ぜんまいばね26が巻き締められる方向になっている。そして、ぜんまいばね26の内端部26A及び外端部26Bは、巻取体4の円周方向に折り曲げられて巻芯部材27のスリット27A、カップ状部材24の胴部24Cの被係止片24Eに係止されているが、これらの内端部26A及び外端部26Bの折り曲げ方向は互いに反対側になっているとともに、これらの折り曲げ方向は、上述のようにホイール部材25の環状フランジ部25Aに巻き取られているシャッターカーテン1を繰り出す方向に巻取体4が中心軸20を中心に回転したときに、内端部26A、外端部26Bがスリット27A、被係止部24Eから離脱せず、ぜんまいばね26を巻き締めることができる方向になっている。
このため、シャッターカーテン1が巻取体4から繰り出されて閉じ移動すると、ぜんまいばね26には巻き締めによって戻しばね力が蓄圧されることになり、シャッターカーテン1を開き移動させてこのシャッターカーテン1を巻取体4に巻き取らせるときには、この蓄圧された戻しばね力が巻取体4の回転を補助するための補助力として利用される。これにより、前述した手掛け部6や操作棒を用いた手動操作によってシャッターカーテン1を上方へ開き移動させる際、この開き移動を軽く行うことができる。
図6には、ぜんまいばね26の巻き締め初期の状態が示され、図7には、巻き締め終期の状態が示されている。図6の巻き締め初期では、ぜんまいばね26の外層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触している密巻き部26Cとなっていて、内層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していない粗巻き部26Dとなっており、図7の巻き締め終期では、ぜんまいばね26の外層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していない粗巻き部26Eとなっていて、内層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触している密巻き部26Fとなっている。図6及び図7の密巻き部26C、26Fは、理解の便宜のため、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していない状態で示されている。
このような巻き締め状態で巻き締められるぜんまいばね26のばね定数は一定となっておらず、ぜんまいばね26は、内外径方向に互いに接触していない部分の長さである有効長の変化に応じた非線形のばね力特性を有しているため、図6の巻き締め初期からぜんまいばね26の巻き締めが始まると、内層部が粗巻き部26Dとなっているこの巻き締め初期を含む初期範囲では、戻しばね力は大きな増加率で増加し、その後、戻しばね力の増加率は次第に低下する。そして、外層部が粗巻き部26Eとなる図7の巻き締め終期を含む終期範囲に達すると、戻しばね力の増加率は再び大きくなり、巻き締め終期において戻しばね力は最大値に達する。
図8は、横軸を巻取体4の回転数とし、縦軸を巻取体4の中心軸20回りのトルクとしたグラフである。この図8には、巻取体4の回転数に対するぜんまいばね26の戻しばね力による巻取体4の中心軸20回りのトルクA,Bの関係が示されている。ぜんまいばね26は、上述した全体的に非線形となったばね力の特性を有しているため、ぜんまいばね26が図6から図7の状態になるときには、ぜんまいばね26の戻しばね力による巻取体4の中心軸20回りのトルクAは、巻き締め初期範囲αで大きな増加率で増加し、その後、増加率は中間範囲βで次第に小さくなり、巻き締め終期範囲γにおいて再び増加率は大きくなる。また、ぜんまいばね26が図7から図6の状態になるときにおけるトルクBは、トルクAと同様な特性となるが、トルクAと比較すると、ぜんまいばね26の材料や巻き込み状態等に基づくヒステリヒスによる差が生ずる。
なお、これらのトルクA,Bは、図2で示された全部のぜんまいばね26による合計トルクである。
図8には、シャッターカーテン1を上向きに開き移動させようとしたときに必要となる巻取体4の中心軸20回りのトルクCも示されている。このトルクCは、巻取体4から繰り出されている図5で示すシャッターカーテン1の自重(座板1Aの重量を含む)Wによる中心軸20回りの自重トルクと、シャッターカーテン1を上方へ開き移動させようとした際に、図1で示したガイドレール2とシャッターカーテン1との摩擦等に基づき生ずる抵抗力による中心軸20回りの抵抗トルクとの合計値である。シャッターカーテン1の自重Wによる自重トルクは、自重Wと、図5で示す中心軸20の中心部からこの自重Wが作用している位置までの水平距離Rとを積算した値となる。
また、図8には、シャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させようとする巻取体4の中心軸20回りのトルクDも示されている。このトルクDは、巻取体4から繰り出されているシャッターカーテン1の自重Wによる中心軸20回りの自重トルクから、シャッターカーテン1が下向きに閉じ移動しようとしたときにガイドレール2とシャッターカーテン1との摩擦等に基づき生ずる上向きの抵抗力による中心軸20回りの抵抗トルクを差し引いた値となる。
なお、自重Wによる自重トルクの大きさと、自重Wに基づき生ずる上向きの抵抗力による抵抗トルクの大きさとが同じである場合には、シャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させようとする巻取体4の中心軸20回りのトルクは、ゼロとなる。そして、シャッターカーテン1の開閉移動領域Lの全体において、これらの自重トルクと抵抗トルクの大きさが同じである場合には、トルクDは、シャッターカーテン1の開閉移動領域Lの範囲において、図8のグラフの横軸と一致する。
トルクCとトルクDの両方における自重トルクは、上述のように、巻取体4から繰り出されているシャッターカーテン1の自重Wと、中心軸20の中心部からこの自重Wが作用している位置までの水平距離Rとの関数となっており、これらの自重Wと水平距離Rのいずれも、巻取体4からのシャッターカーテン1の繰り出し量(巻取体4の回転数)と関係している。このため、シャッターカーテン1を上向きに開き移動させるために必要な中心軸20回りのトルクCも、シャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させようとする中心軸20回りのトルクDも、図8で示されているとおり、巻取体4の回転数に対して直線的に変化せず、曲線的に変化する。
このようなトルクC,Dの変化特性は、前述したぜんまいばね26の戻しばね力による中心軸20回りのトルクA,Bのうち、初期範囲αと終期範囲γとを除いた中間範囲βにおける中心軸20回りのトルクの特性と近似している。また、中間範囲βにおける中心軸20回りのトルクA,Bの大きさを、トルクCよりも小さく、かつトルクDよりも大きくすることができる。
言い換えると、本実施形態に係るシャッター装置では、初期範囲αと終期範囲γとを除いた中間範囲βにおいて、戻しばね力による中心軸20回りのトルクの特性がシャッターカーテン1の開閉移動に関するトルクC,Dの変化特性と近似しているぜんまいばね26であって、中間範囲βにおける戻しばね力による中心軸20回りのトルクの大きさが、トルクCよりも小さくかつトルクDよりも大きくなっているぜんまいばね26を使用している。
そして、本実施形態に係るシャッター装置では、中間範囲βが、図1で示したシャッターカーテン1の全開位置から全閉位置までの開閉移動領域Lの全体と対応するように、渦巻きばね26の使用範囲が設定されている。
このため、本実施形態では、閉じ移動の途中と開き移動の途中において、シャッターカーテン1に作用させている手操作力を解除することにより、シャッターカーテン1を全開位置と全閉位置との間の任意な位置において停止させることができる。
なお、シャッターカーテン1が全開位置に達しているときに、シャッターカーテン1に予定外の下向きの外部力が作用してもシャッターカーテンが下向きに閉じ移動しないようにするため、巻取体4に、この巻取体4の回転を阻止する手動式のブレーキ装置を設けたり、前記まぐさ等の配置箇所に、座板等のシャッターカーテン構成部材に係脱自在に係合する係合部材を備えた手動式のストップ装置を設けたりし、シャッターカーテン1を下向きの閉じ移動させる際には、手動操作によってこれらのブレーキ装置やストップ装置を解除できるようにしてもよい。
以上の本実施形態によると、シャッターカーテン1の下方への繰り出し時に戻しばね力が蓄圧され、この蓄圧された戻しばね力がシャッターカーテン1の上方への巻き取り時における巻取体4の回転付勢力として利用される戻しばねは、渦巻きばねであるぜんまいばね26となっており、このぜんまいばね26は、ばね定数が一定となっていなくて、全体的に非線形の戻しばね力の特性を有しているため、ぜんまいばね26の戻しばね力による中心軸20回りのトルクA,Bを、図8のグラフで示されているように、シャッターカーテン1を開き移動させるために必要なトルクや、シャッターカーテン1を閉じ移動させようとするトルクであって、巻取体4の回転数に対して曲線的に変化するものとなっているトルクC,Dと容易に対応させることができる。
これにより、閉じ移動の途中で停止させたシャッターカーテン1を開き移動させるためには、図8のグラフにおいて、トルクCとトルクAの差のトルクに相当する持ち上げ力をシャッターカーテン1に加えればよく、また、開き移動の途中で停止させたシャッターカーテン1を閉じ移動させるためには、トルクBとトルクDの差のトルクに相当する押し下げ力をシャッターカーテン1に加えればよく、シャッターカーテン1の開閉操作を容易に行える。
また、ぜんまいばね26は巻き締め初期から巻き締め終期までの全部の範囲が使用されているのではなく、外層部が密巻き部26Cとなっていて内層部が粗巻き部26Dとなっている巻き締め初期を含む初期範囲αと、外層部が粗巻き部26Eとなっていて内層部が密巻き部26Fとなっている巻き締め終期を含む終期範囲γとを除いた中間範囲βが、シャッターカーテン1の全開位置から全閉位置までの開閉移動領域Lと対応する範囲となって利用されているため、ぜんまいばね26の戻しばね力による中心軸回りのトルクを、シャッターカーテンを開き移動させるために必要なシャッターカーテン開き移動トルクCや、シャッターカーテン1を閉じ移動させようとするシャッターカーテン閉じ移動トルクDと一層適確に対応させることができる。
さらに、シャッターカーテン1の全開位置から全閉位置までの開閉移動領域Lの全体について、ぜんまいばね26の戻しばね力による中心軸20回りのトルクA、Bの大きさは、シャッターカーテン1を上向きに開き移動させるために必要な中心軸20回りのシャッターカーテン開き移動トルクCよりも小さく、かつシャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させようとする中心軸20回りのシャッターカーテン閉じ移動トルクDよりも大きいため、シャッターカーテン1に特別の閉じ移動力や開き移動力を加えない限り、シャッターカーテン1の開閉移動領域Lの全体におけるいずれの位置でもシャッターカーテン1を停止させることができる。また、シャッターカーテン1を閉じ移動、開き移動させるときには、小さな閉じ移動力や開き移動力を加えればよく、このため、シャッター装置の操作性が向上する。
なお、図8で示したトルクEは、戻しばね力が巻取体4の回転数に対して直線的に変化する特性、言い換えると、線形の特性となっているねじりコイルばねによる中心軸20回りのトルクの場合を示している。このねじりコイルばねによる中心軸20回りのトルクEは、巻取体4の回転数に対して単に比例的に変化するだけであるため、トルクEをシャッターカーテン開き移動トルクCやシャッターカーテン閉じ移動トルクDと対応させることは困難であり、また、シャッターカーテン1の全開位置から全閉位置までの開閉移動領域Lの全体について、トルクEの大きさを、シャッターカーテン開き移動トルクCよりも小さくかつシャッターカーテン閉じ移動トルクDよりも大きくすることは難しい。
図9は、ぜんまいばね26の戻しばね力による中心軸20回りのトルクA、Bの大きさが、シャッターカーテン1を上向きに開き移動させるために必要な中心軸20回りのシャッターカーテン開き移動トルクC’よりも小さく、かつシャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させようとする中心軸20回りのシャッターカーテン閉じ移動トルクD’よりも大きくなっている範囲が、シャッターカーテン1の全開位置から全閉位置までの開閉移動領域L’の全体ではなく、全開位置と、この全開位置から下向きのある距離までの範囲とを除いた略全体となっている実施形態を示す。
このような実施形態は、シャッターカーテン1の開閉移動距離L’が大きいシャッター装置、言い換えると、シャッターカーテン1の全開位置が高い位置となっているシャッター装置に特に有効に適用でき、手を上げても届かない高い位置にシャッターカーテン1が達しているときに、トルクA,BがトルクC’,D’よりも大きくなっていることにより、座板1Aが前記まぐさに当接する全開位置へシャッターカーテン1を自動的に開き移動させ、その当接位置で停止させることができる。
なお、図9で示されているα’は、このような実施形態において、巻き締め終期範囲γと共にシャッターカーテン1の開閉移動のために使用されないぜんまいばね26の巻き締め初期範囲であり、β’は中間範囲である。この中間範囲β’が、シャッターカーテン1の開閉移動領域L’と対応する範囲となる。
図3の巻取体4を構成するそれぞれのカップ状部材24の内部空間Sに収納配置されていて、本実施形態に係る戻しばねとなっているぜんまいばね26は、戻しばね力が図8で示された開閉移動領域Lで使用されるものになっていてもよく、図9で示された開閉移動領域L’で使用されるものになっていてもよい。
そして、ぜんまいばね26の所定の戻しばね力が図8の開閉移動領域Lや図9の開閉移動領域L’で適確に使用されるようにするためには、シャッターカーテン1の全開時、全閉時等のぜんまいばね26の巻き締め状態が図8、図9のトルク特性を実現できるものとなっていなければならず、これを実現できる作業を、ぜんまいばね26について実施しなければならない。この作業は、以下のように行う。
それぞれの回転体22の巻芯部材27を図3で示した前記結合具28,29で中心軸20に結合する前に、これらの回転体22と前記バー状部材23とで形成された巻取体4の回転を図示しない拘束具等で止めながら、図3で示す工具40によってそれぞれの巻芯部材27を中心軸20に対して回転させ、これにより、カップ状部材24の内部空間Sに収納されているそれぞれのぜんまいばね26を巻き締める。工具40は、巻芯部材27の軸方向端部に前記受け片27Bを切り倒し加工によって形成した際に生ずる切り欠き部41に係合する突起を備えているものであり、工具40を回転操作すると、突起からの回転力によって巻芯部材27は中心軸20を中心に回転する。このような回転操作によってそれぞれのぜんまいばね26は巻き締められ、これらのぜんまいばね26の巻き締めは、言い換えると、これらのぜんまいばね26に戻しばね力を蓄圧する作業は、図8、図9で示されているシャッターカーテン1の全閉時における全部のぜんまいばね26の戻しばね力による巻取体4の中心軸20回りのトルクと同じ大きさのトルクがこれらのぜんまいばね26によって生ずるまで行う。
この後、それぞれの回転体22における巻芯部材27を前記結合具28,29で中心軸20に結合するとともに、前記軸受け35の外輪部材35Aに形成されている孔42、内輪部材35Bに形成されている孔43、巻芯部材27に形成されている孔44、さらに中心軸20に形成されている孔にボルトを挿通し、反対側まで貫通させたこのボルトの端部にナットを螺合する。これにより、これらのボルトとナットによる結合具によって巻芯部材27と回転体22を中心軸20に固定される。
なお、内輪部材35Bと巻芯部材27の孔43,44は円周方向に複数形成されており、このため、ぜんまいばね26の戻しばね力が所定値となったときにぜんまいばね26の巻き締め作業を終了させても、その戻しばね力又はその戻しばね力に近い戻しばね力を維持した状態で、上記ボルトとナットによる結合具により、巻芯部材27と回転体22を中心軸20に固定することができる。また、上記結合具29のボルトを挿通するための巻芯部材27の孔も円周方向に複数形成されている。
次いで、予め座板1Aを取り外したシャッターカーテン1を、図1で示されているシャッターケース3の下面3Aに形成されているまぐさに上方から吊り落としながら挿入する作業を行い、まぐさの下方に突出したシャッターカーテン1の幅方向両端部を左右のガイドレール2の内部に挿入した後、座板1Aの取り付けを行い、さらにシャッターカーテン1を全閉位置まで降ろす。この後、シャッターカーテン1の上端部を、前述したように、それぞれの回転体22のホイール部材25の環状フランジ部25Aに結合する作業を行う。そして、軸受け35の外輪部材35Aの孔42、内輪部材35Bの孔43、巻芯部材27の孔44、さらに中心軸20の孔に挿通されていた前記ボルトから前記ナットを取り外してこのボルトを引き抜く作業を行い、結合具28,29はそのまま残す。
これにより、ぜんまいばね26に蓄圧されていた戻しばね力は解放可能状態となり、それぞれの回転体22とバー状部材23からなる巻取体4は中心軸20を中心に回転自在となるため、シャッターカーテン1に小さな押し上げ力を与えることにより、巻取体4は、ぜんまいばね26の既に蓄圧されていた戻しばね力を回転付勢力として利用しながらシャッターカーテン1を開き移動させる回転を行い、シャッターカーテン1は全開位置に達する。
これにより、シャッターカーテン1の全開時、全閉時等における全部のぜんまいばね26の巻き締め状態は、図8、図9のトルク特性を実現できるものとなる。
以上説明した本実施形態において、図3で説明したように、巻取体4を形成する部材となっているそれぞれの回転体22において、ホイール部材25の端面部25Bは、中心軸20の直径方向へ立ち上がった立上り部となっており、また、カップ状部材24の胴部24Cは、中心軸20の軸方向への幅を有する筒部となっており、それぞれの回転体22は、このような立上り部25Bと筒部24Cとを有する形状、構造となっている。そして、ぜんまいばね26の折り曲げられた外端部26Bは、図5で説明したように、筒部24Cに形成されている被係止部24Eに係止されており、前述したように、この外端部26Bの折り曲げ方向と、巻芯部材27にスリット27Aに係止されているぜんまいばね26の内端部26Aの折り曲げ方向は、互いに巻取体4の円周方向の反対側となっている。これにより、ホイール部材25の環状フランジ部25Aに巻き取られているシャッターカーテン1を繰り出す方向に巻取体4が中心軸20を中心に回転したときに、ぜんまいばね26を、内端部26Aと外端部26Bがスリット27A、被係止部24Eから外れることなく、巻き締めることができる。
ところで、それぞれの回転体22のなかに、立上り部25Bに対する筒部24Cの位置が互いに中心軸20の軸方向の反対側となっている2種類の回転体を設けた場合には、これらの回転体のうちの一つとして、図3で示された回転体22をそのまま用いることができても、他の回転体として、図3で示された回転体22を、中心軸20の軸方向の向きを反転させてそのまま用いることはできない。なぜなら、中心軸20の軸方向の向きを反転させた回転体22については、ぜんまいばね26の外端部26Bを係止するための被係止部24Eの向きが図5の向きとは反対側となってしまい、外端部26Bを被係止部24Eに係止することはできず、ぜんまいばね26を巻き締めることができないからである。
このため、本実施形態では、図2で示されているように、それぞれの回転体22を、筒部24Cが立上り部25Bに対して中心軸20の軸方向の同じ側となるように配置している。これにより、全部の回転体22の形状、構造を同じにでき、これらの回転体22を共通化できることにより、巻取体4全体の製造コストの低減や、これらの回転体22を中心軸20に配置する際の作業の容易化を達成することができる。
また、本実施形態によると、それぞれの回転体22に設けるぜんまいばね26は、巻回方向が同じになっているぜんまいばねでよく、したがって、全部のぜんまいばね26を共通化することもできる。
また、本実施形態では、ぜんまいばね26の内端部26Aは中心軸20に係止されておらず、この内端部26Aは、それぞれの回転体22ごとに用意された巻芯部材27に係止されているため、1個のぜんまいばね26について、回転体22とぜんまいばね26と巻芯部材27とからなるぜんまいばねユニットを形成することができ、複数個のぜんまいばねユニットを中心軸20に配置するだけでそれぞれのぜんまいばね26が中心軸20に配置されたことになり、また、それぞれのぜんまいばねユニットを前述したバー状部材23で連結することにより、前述した回転かご体21を形成することができ、これらの作業を容易に行える。
さらに、本実施形態では、それぞれの回転体22は一つの部材によって形成されておらず、立上り部25Bを備える第1部材となっているホイール部材25と、筒部24Cを備える第2部材となっているカップ状部材24とを結合することによって形成されているため、被係止部24Eを有する回転体22をプレス加工等によって容易に製造することができる。
また、本実施形態における戻しばねはぜんまいばね26であり、ぜんまいばね26は、中心軸20の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部へ渦巻き状に巻回している渦巻きばねであるため、中心軸20の軸方向の幅寸法は小さく、このため、巻取体4の全体の軸長を短くすることができる。また、ぜんまいばね26は、厚さが小さい板材を渦巻き状に巻回したものであるため、ぜんまいばね26を直径方向の寸法が小さい前記空間Sに収納配置することができ、これにより、巻取体4の全体の直径寸法も小さくできる。
以上説明したシャッター装置は、シャッターカーテン1の開閉移動を手動操作で行う手動式のものであったが、次に、シャッターカーテン1の開閉移動を自動で行う自動式のシャッター装置についての実施形態を説明する。
図10で示した実施形態の巻取体4における中心軸20の両端部を支持する左右のブラケット5のうち、回転体22の筒部24Cが形成されているカップ状部材24が向いている側のブラケット5には、電動モータとブレーキの組み合わせからなる開閉機50が取り付けられ、駆動装置であるこの開閉機50の駆動軸50Aにはピニオンギヤ51が取り付けられている。また、複数個の回転体22のうち、開閉機50に最も近い回転体22のカップ状部材24の外周面には、すなわち、筒部24Cの外周面にはリングギヤ52が取り付けられ、このリングギヤ52の外周部に形成されている歯にピニオンギヤ51が噛合している。このため、開閉機50から巻取体4へ、ピニオンギヤ51とリングギヤ52を介して正逆回転の回転力が付与される。
この実施形態によると、中心軸20の軸方向に配置された複数個の回転体22同士を連結するバー状部材23の長さが、中心軸20の軸方向の両端に配置された回転体22までの長さとなっており、このため、バー状部材23が開閉機50に最も近い回転体22を越えて開閉機50側へ延長されない長さとなっていて、このバー状部材23にリングギヤ52を取り付けることができなくても、開閉機50に最も近い回転体22のカップ状部材24を利用することにより、巻取体4へのリングギヤ52の取り付けを行えることになる。
図11は、別実施形態に係る自動式のシャッター装置を示し、図12は、図11のS12−S12線断面図である。
中心軸20の軸方向に互いに隣り合って配置された2個の回転体22の間において、図12で示されているように、上ブラケット部材60と下ブラケット部材61が中心軸20を挟着しながらビス等の結合具62で互いに結合され、長軸のビス等による回り止め部材63で中心軸20に対して回り止めされた上ブラケット部材60には、図11で示されているように、電動モータとブレーキの組み合わせからなる開閉機70が取り付けられ、駆動装置であるこの開閉機70の駆動軸70Aにはピニオンギヤ71が取り付けられている。それぞれの回転体22を連結するバー状部材23にはリングギヤ72が取り付けられ、この取り付けは、図12で示されているように、リングギヤ72に形成した凹部72Aにバー状部材23を嵌合することにより行われ、このリングギヤ72の内周部に形成されている歯にピニオンギヤ71が噛合している。このため、この実施形態でも開閉機70から巻取体4へ、ピニオンギヤ71とリングギヤ72を介して正逆回転の回転力が付与される。
この実施形態によると、それぞれの回転体22に設けられている戻しばねは、ねじりコイルばね等よりも中心軸20の軸方向の幅寸法が小さいぜんまいばね26であるため、中心軸20の軸方向に互いに隣り合って配置されている2個の回転体22の間に開閉機70を配置しても、巻取体4の全体の軸長を小さくすることが可能となる。これにより、巻取体4を任意な大きさに設定することができ、巻取体4の大きさを必要に応じてコンパクト化することも実現できるようになる。
本発明は、開閉体を開閉移動させるためにこの開閉体を巻き取り、繰り出す巻取体に、この巻き取り、繰り出しのための巻取体の正逆回転のうちの一方の回転時に蓄圧された戻しばね力が巻取体の他方の回転のための補助力として利用される戻しばねを設ける場合に利用することができる。
本発明の一実施形態に係る戻しばね付き巻取体構造が採用されている開閉装置であるシャッター装置の全体を示す正面図である。 シャッターカーテンが巻き取られ、繰り出される巻取体を示す正面図である。 巻取体の構成部材である回転体を示す正断面図である。 図3のS4−S4線断面図である。 図3のS5−S5線断面図である。 戻しばねであるぜんまいばねの巻き締め初期状態を図5と同じ方向から見た図である。 ぜんまいばねの巻き締め終期状態を図5と同じ方向から見た図である。 ぜんまいばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクと、シャッターカーテンの開閉移動に関する中心軸回りのトルクとを示すグラフである。 ぜんまいばねの戻しばね力による中心軸回りのトルクと、シャッターカーテンの開閉移動に関する中心軸回りのトルクとについての別実施形態を示すグラフである。 シャッターカーテンの開閉移動を自動で行う自動式のシャッター装置の巻取体構造を示す平断面図である。 別実施形態に係る自動式のシャッター装置の巻取体構造を示す平断面図である。 図11のS12−S12線断面図である。
符号の説明
1 開閉体であるシャッターカーテン
4 巻取体
20 中心軸
22 回転体
24 第2部材であるカップ状部材
25 第1部材であるホイール部材
24C 回転体の筒部であって、カップ状部材の胴部
25B 回転体の立上り部であって、ホイール部材の端面部
26 戻しばねであるぜんまいばね
26A ぜんまいばねの内端部
26B ぜんまいばねの外端部
26C,26F ぜんまいばねの密巻き部
26D,26E ぜんまいばねの粗巻き部
27 巻芯部材
50,70 駆動装置である開閉機

Claims (11)

  1. 開閉体を開閉移動させるためにこの開閉体を巻き取り、繰り出す巻取体と、この巻き取り、繰り出しのための前記巻取体の正逆回転のうちの一方の回転時に戻しばね力が蓄圧され、この蓄圧された戻しばね力が前記巻取体の他方の回転のための補助力として利用される戻しばねと、を含んで構成される開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、
    前記巻取体は、少なくとも前記巻き取り、繰り出し時に回転しない中心軸と、前記開閉体を巻き取り、繰り出しのためにそれぞれがこの中心軸を中心に正逆回転自在であって、前記中心軸の外周に軸方向に離れて配置された複数個の回転体と、を有して構成されており
    これらの回転体のうちの少なくとも2個の回転体は、前記中心軸の直径方向へ立ち上がった立上り部と、前記中心軸の軸方向への幅を有する筒部と、を有して形成され、
    前記中心軸の外周面におけるそれぞれの前記筒部の配置位置と対応する位置には、巻芯部材が配置されているとともに、それぞれの前記筒部の内部に前記戻しばねが収納配置され、
    これらの戻しばねは、前記中心軸の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部に向かって渦巻き状に巻回している渦巻きばねであるとともに、これらの渦巻きばねは、板材を渦巻き状に巻回して形成されたぜんまいばねであり、
    これらのぜんまいばねの内端部は前記巻芯部材に形成されているスリットに係止されているとともに、外端部は前記筒部に形成されている被係止部に係止され、
    前記立上り部には、前記中心軸及び前記巻芯部材が挿通された孔が形成されているとともに、これらの巻芯部材は、前記立上り部の両側において、前記中心軸に結合具により固定され、
    前記少なくとも2個の回転体の前記筒部は、前記立上り部に対して前記中心軸の軸方向の同じ側に配置されていることを特徴とする開閉装置の戻しばね付き巻取体構造。
  2. 請求項1に記載の開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、前記巻芯部材は丸パイプ部材となっていることを特徴とする開閉装置の戻しばね付き巻取体構造。
  3. 請求項1又は2に記載の開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、前記ぜんまいばねが前記筒部の内部に収納配置されている前記回転体の個数は3個以上であり、これらの回転体の全部について、前記筒部は、前記立上り部に対して前記中心軸の軸方向の同じ側に配置されていることを特徴とする開閉装置の戻しばね付き巻取体構造。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、前記少なくとも2個の回転体は、前記立上り部を形成する第1部材と、前記筒部を形成する第2部材と、を含んで形成され、これらの第1部材と第2部材との結合によって前記回転体が形成されていることを特徴とする開閉装置の戻しばね付き巻取体構造。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、前記開閉体の開閉移動方向は、上向き移動が開き移動となった鉛直方向の成分を有する方向であり、前記ぜんまいばねは、外層部と内層部とのうちの一方が密巻き部となっていて他方が粗巻き部となっていた巻き締め初期から、前記一方が粗巻き部となって前記他方が密巻き部となる巻き締め終期までを有しているばねであるとともに、前記巻き締め初期を含む初期範囲と前記巻き締め終期を含む終期範囲とを除いた中間範囲が、前記開閉体の全開位置から全閉位置までの開閉移動領域と対応する範囲となって利用されていることを特徴とする開閉装置の戻しばね付き巻取体構造。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、前記開閉体の全開位置から全閉位置までの開閉移動領域の全体又は略全体について、前記ぜんまいばねの戻しばね力による前記中心軸回りのトルクの大きさが、前記開閉体を上向きに開き移動させるために必要な前記中心軸回りの開閉体開き移動トルクの大きさ以下であって、前記開閉体を下向きに閉じ移動させようとする前記中心軸回りの開閉体閉じ移動トルクの大きさ以上となっていることを特徴とする開閉装置の戻しばね付き巻取体構造。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、前記巻取体に前記正逆回転の回転力を付与する駆動装置を備えていることを特徴とする開閉装置の戻しばね付き巻取体構造。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、前記巻取体に前記正逆回転の回転力を付与する駆動装置を備えているとともに、前記少なくとも2個の回転体は前記中心軸の軸方向に互いに隣り合って配置され、前記駆動装置はこれらの回転体の間に配置されていることを特徴する開閉装置の戻しばね付き巻取体構造。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、前記巻芯部材には、前記結合具で前記中心軸に固定される前のこの巻芯部材を前記中心軸に対して回転させて前記ぜんまいばねを巻き締めるための工具を係合させるための部分が設けられていることを特徴とする開閉装置。
  10. 請求項9に記載の開閉装置において、前記工具を係合させるために前記巻芯部材に設けられている前記部分は、この巻芯部材に形成されている切り欠き部であることを特徴とする開閉装置。
  11. 請求項10に記載の開閉装置において、前記巻芯部材は、この巻芯部材に切り倒し加工で円周方向に複数形成されている受け片により前記中心軸に同軸的に配置され、前記切り欠き部は、前記受け片を前記で切り倒し加工で形成した際に前記巻芯部材に生じているものとなっていることを特徴とする開閉装置。
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