しかし、開閉機を巻取体本体と別軸的に配置することにより、シャッター装置全体が大型化してしまう。このため、戻しばねを備えたシャッター装置全体を小型化できる戻しばね付きの巻取体構造の工夫が求められている。
本発明の目的は、戻しばねを備えた開閉装置全体の小型化を図ることができるようになる開閉装置の戻しばね付き巻取体構造を提供するところにある。
本発明に係る開閉装置の戻しばね付き巻取体構造は、開閉体を開閉移動させるためにこの開閉体を巻き取り、繰り出す巻取体と、この巻き取り、繰り出しのための前記巻取体の正逆回転のうちの一方の回転時に戻しばね力が蓄圧され、この蓄圧された戻しばね力が前記巻取体の他方の回転のための補助力として利用される戻しばねと、前記巻取体に前記正逆回転のうちの少なくとも一方の回転力を付与するための駆動装置と、を含んで構成される開閉装置の戻しばね付き巻取体構造において、前記巻取体は、少なくとも前記巻き取り、繰り出し時に回転しない中心軸と、前記開閉体を巻き取り、繰り出すためにこの中心軸を中心に正逆回転自在であって、前記中心軸の外周に配置された巻取体本体と、を有して構成されており、前記戻しばねは、前記中心軸の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部に向かって渦巻き状に巻回している渦巻きばねであり、この渦巻きばねの一端は前記中心軸に取り付けられているとともに、他端は前記巻取体本体に取り付けられており、前記駆動装置は、前記中心軸に取り付けられていることを特徴とするものである。
この開閉装置の戻しばね付き巻取体構造では、巻取体は、中心軸と、この中心軸の外周に配置された正逆回転自在な巻取体本体と、を有して構成されており、戻しばねは、前記中心軸の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部に向かって渦巻き状に巻回している渦巻きばねであり、この渦巻きばねの一端は前記中心軸に取り付けられているとともに、他端は前記巻取体本体に取り付けられており、駆動装置は、前記中心軸に取り付けられている。すなわち、本発明では、駆動装置は巻取体本体と同軸的に配置されるようになっている。
このため、本発明によると、駆動装置が巻取体本体と別軸的に配置されている従来の開閉装置の戻しばね付き巻取体構造と比較して、開閉装置全体の小型化を図ることができるようになる。
なお、前述の「少なくとも前記巻き取り、繰り出し時に回転しない中心軸」とは、この中心軸は常時回転しない軸となっていてもよく、あるいは、例えば、戻しばねに所定の戻しばね力を蓄圧するための巻き締め作業等を行うときには、この中心軸を回転させてもよい等との意味である。
また、本発明では、戻しばねが中心軸の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部に向かって渦巻き状に巻回している渦巻きばねとなっている。このため、この渦巻きばねの軸方向における幅寸法を小さくできることになり、これにより、戻しばねが配置される巻取体全体の軸長寸法を短くできる。
さらに、渦巻きばねは軸方向における幅寸法が小さいばねであるため、開閉体の幅寸法を開閉体の開閉移動長さよりも小さくすること、言い換えると、開閉体の開閉移動長さを開閉体の幅寸法よりも大きくすることが可能となる。
また、戻しばねを渦巻きばねとする場合には、この渦巻きばねは、板材を渦巻き状に巻回して形成されているばね、すなわち、ぜんまいばねでもよく、断面円形や断面楕円形、断面矩形の線材等を渦巻き状に巻回したものでもよい。また、これらのいずれかで戻しばねを形成した場合には、巻き数や全長等は任意である。
渦巻きばねを板材を渦巻き状に巻回して形成したぜんまいばねとすると、板材の厚さは小さいため、戻しばね全体の直径を小さくでき、これにより、巻取体全体の直径方向の寸法(直径寸法)を小さくすることができる。
本発明において、巻取体に正逆回転のうちの少なくとも一方の回転力を付与するための駆動装置の大きさ、形状等は任意であるが、この駆動装置の中心軸の直径方向の最大寸法は、巻取体本体の直径寸法と同じ又はこれよりも小さいことが好ましい。
これによると、開閉装置の中心軸の直径方向の大きさをより小型化することができるようになる。
本発明において、駆動装置の中心軸の直径方向の最大寸法は、渦巻きばねの直径寸法と同じ又はこれよりも小さいことがより好ましい。
巻取体の径を小さくするときに、渦巻きばねの直径寸法は、開閉体のストローク長さに関係することから径を小さくできない(言い換えると、渦巻きばねの長さを短くできない)。なぜならば、巻取体の径を小さくすれば開閉体の同じストローク当たりの巻取体の回転数は増えるため、さらに長い渦巻きばねが必要になり、渦巻きばねの直径寸法はむしろ大きくしなければならないからである。このため、巻取体の径(内径)の最小サイズ(寸法)は、渦巻きばねの直径寸法と同じ又はこれより大きいものとなる。
したがって、駆動装置の中心軸の直径方向の最大寸法が、渦巻きばねの直径寸法と同じ又はこれよりも小さければ、巻取体の径を駆動装置がない場合と同様の最小サイズまで小型化することが可能となる。
本発明において、駆動装置を中心軸に取り付ける位置は任意であり、例えば、中心軸におけるこの中心軸の外周に巻取体本体が配置されている位置でもよく、中心軸における巻取体本体から軸方向に離れた位置(例えば、中心軸の軸方向端部等)でもよい。なお、駆動装置は、中心軸の全周を囲むように設けられていてもよく、中心軸の全周のうちの一部の周方向側に偏って設けられていてもよい。
本発明において、巻取体本体の形状、構造等は任意であるが、この巻取体本体の第1の例として、中心軸の外周に配置された1個の円筒形の回転体で構成され、この回転体の内周面と中心軸の外周面との間に渦巻きばねを配置し、この渦巻きばねの他端を前記回転体の内周面に取り付けたものを挙げることができる。なお、この第1の例において、配置する渦巻きばねの個数は1個でもよく、複数個でもよい。
巻取体本体の第2の例として、中心軸の外周に軸方向に離れて配置された複数個の回転体と、中心軸の軸方向に延びる長さを有し、これらの回転体同士を連結する連結部材と、を有して構成されているものを挙げることができる。この第2の例では、前記複数個の回転体のうちの少なくとも1個の回転体に渦巻きばねの他端を取り付ければよい。そして、この第2の例において、駆動装置は、連結部材よりも中心軸の直径方向内側に配置されることが好ましい。
なお、この巻取体本体の第2の例において、駆動装置を配置する位置は任意であるが、前記複数個の回転体のうちの2個の回転体の間に配置することがより好ましい。駆動装置を2個の回転体の間に配置することにより、巻取体の袖寸法(開閉体が巻き取り、繰り出されない部分の寸法)をより短くすることができるようになる。また、駆動装置を2個の回転体の間のスペースを有効に利用して配置できる。
なお、前記複数個の回転体のうちの2個の回転体の間に駆動装置を配置する場合には、これらの回転体の間隔は、駆動装置を配置できる大きさがあれば任意であり、駆動装置の大きさと同じでもよく、この大きさよりも大きくてもよい。
また、この巻取体本体の第2の例において、渦巻きばねの他端が取り付けられている前記少なくとも1個の回転体は、中心軸の直径方向へ立ち上がった立上り部と、中心軸の軸方向への幅を有し、渦巻きばねを格納するための筒部と、を有して構成され、渦巻きばねの他端は前記筒部に取り付けられるものでもよい。そして、駆動装置を中心軸の軸方向両端部のうちの一方の端部に配置した場合には、渦巻きばねの他端が取り付けられている前記少なくとも1個の回転体は、前記駆動装置に中心軸の軸方向内側に隣接して配置され、この回転体の前記筒部は、前記立上り部に対して前記駆動装置側とは反対側に配置されるようにすることがより好ましい。
これによると、前記少なくとも1個の回転体の前記筒部を前記立上り部に対して駆動装置側と同じ側に配置した場合と比較して、中心軸の軸方向の長さを前記筒部の中心軸の軸方向への幅分だけ短くすることができるため、巻取体の袖寸法をより短くすることができるようになる。
なお、複数個の回転体を中心軸の外周に軸方向に離れて配置する場合において、これらの回転体の間隔は任意であり、回転体の個数を3個以上とする場合には、それぞれの間隔を同じにしてもよく、異なるようにしてもよい。
また、前記少なくとも1個の回転体に設ける渦巻きばねの個数は、1個でもよく、複数個でもよい。前記少なくとも1個の回転体に設ける渦巻きばねの個数を複数個とするためには、回転体の大きさをその最大個数の渦巻きばねを配置できる大きさとするとともに、これらの渦巻きばねの一端と他端を取り付けることができる部分を中心軸側と回転体の筒部に設け、これにより、最大個数から選択された任意の個数の渦巻きばねの一端と他端をこれらの部分に取り付けることができるようにすればよい。
また、渦巻きばねの一端を中心軸に取り付けるためには、例えば、巻取体の円周方向の一方の側へ折り曲げた渦巻きばねの一端を、中心軸に直接設けた溝、スリット、突起、孔等による被係止部に係止してもよく、あるいは、中心軸に、渦巻きばねが設けられる回転体ごとに用意した巻芯部材を固定し、この巻芯部材に設けた溝、スリット、突起、孔等による被係止部に渦巻きばねの一端を係止してもよい。
後者によると、渦巻きばねの一端は、渦巻きばねが設けられる回転体ごとに用意された巻芯部材に係止されることになるため、1個の渦巻きばねに、回転体と渦巻きばねと巻芯部材とを含んで構成される1個の戻しばねユニットを形成できることになり、このため、中心軸への渦巻きばねの配置作業を容易化できるなどの効果を得られる。
以上の本発明において、駆動装置の構成は任意であり、その一例として、巻取体に正逆回転のうちの少なくとも一方の回転力を付与するための駆動部と、この駆動部の駆動制御を実行する制御部と、を含んで構成され、この制御部は、前記駆動部から分離されており、前記制御部と前記駆動部とは前記中心軸の軸方向に離間して配置されているものを挙げることができる。これによると、制御部が駆動部から分離されているので、それだけ駆動装置の中心軸の直径方向の寸法を短くすることができる。
この駆動装置の一例において、駆動部と制御部とはリード線で接続されるものであってもよく、リード線で接続されるものでなくてもよい。
駆動部と制御部とがリード線で接続されるものである場合には、中心軸にはリード線がこの中心軸の軸方向に挿通される切欠部を形成してもよい。これによると、リード線を中心軸の前記切欠部に挿通、収納させることができるので、リード線が巻取体内部で邪魔になるようなことを防止することができる。
また、駆動部と制御部とがリード線で接続されるものである場合において、中心軸は中空部を有するものとし、リード線はこの中空部に挿通、収納されるようにしてもよい。これによっても、リード線が巻取体内部で邪魔になるようなことを防止することができる。
なお、駆動部と制御部とがリード線で接続されるものでない場合には、制御部には駆動部を制御するための無線信号を送信する送信部を備えるとともに、駆動部にはこの無線信号を受信するための受信部を備えるようにしてもよい。
なお、駆動部の構成は任意であり、例えば、電動モータとブレーキ等を含んで構成されているものを挙げることができ、さらに、この駆動部には、減速機(調速機)やリミットスイッチ等を含めてもよい。
以上の本発明において、前記開閉体の開閉移動方向が、上向き移動が開き移動となった鉛直方向の成分を有する方向である場合には、前記渦巻きばねは、前記蓄圧された戻しばね力によるトルクが次第に小さくなる増加率で増加する領域を有するばねとなっており、この領域内に、前記巻取体の前記一方の回転による前記開閉体の繰り出しが始まる前の開閉体全開時があり、この開閉体全開時からの前記開閉体の繰り出しに伴って前記トルクが増加するものであることが好ましい。
開閉体を巻取体の正逆回転で巻き取り、繰り出して上下に開閉移動させる開閉装置に渦巻きばねを設ける場合には、この渦巻きばねの蓄圧される戻しばね力は、開閉体が上方へ開き移動するときにこの開き移動のために用いられるとともに、開閉体が下方へ閉じ移動するときに、開閉体が自重で急激に閉じ移動するのを抑えるための抑制力としても利用されるため、渦巻きばねのばね特性は、巻取体の中心軸回りの開閉体の自重による自重トルクと適合していることが好ましい。
そして、この自重トルクは、巻取体から繰り出されている開閉体の部分の自重と、巻取体の中心軸からの開閉体の巻径とを積算した値となっており、この自重トルクは、巻取体からの開閉体の繰り出しの進行に伴って変化するが、開閉体が全開になっているときの上記巻径は大きいため、全開を始点とする開閉体の閉じ移動開始初期領域において、上記自重トルクは大きく変化する。このため、上記渦巻きばねは、このような自重トルクの変化に適合したばね特性を有していることが望ましい。
前述したように、開閉体が全開になっているときにおける巻取体中心軸からの開閉体の巻径は大きいため、開閉体を下方へ繰り出すために巻取体が1回転等の所定角度の回転を行うと、この所定角度の回転によって下方へ繰り出される開閉体の長さは、開閉体が全開となっていないときから始まる巻取体の所定角度の回転よりも長いものとなる。そして、開閉体が全開から巻取体の上記所定角度の回転によって繰り出されると、開閉体の上記巻径は減少するが、この巻径の減少よりも、全開からの開閉体の下方への繰り出し長さが開閉体の自重トルクの増大に貢献し、このときの自重トルクの増加率は大きい。
このため、上述したように渦巻きばねが、蓄圧された戻しばね力によるトルクが次第に小さくなる増加率で増加する領域を有するばねとなっており、この領域内に、巻取体の一方の回転による開閉体の繰り出しが始まる前の開閉体全開時があり、この開閉体全開時からの開閉体の繰り出しに伴って前記トルクが増加するようになっていることにより、渦巻きばねのばね特性は、開閉体が全開から下方へ繰り出されるときの開閉体の自重トルクの変化と適合することになり、これにより、開閉体を渦巻きばねの戻しばね力との関係によって円滑に上下に開閉移動させることができる。
なお、以上において、開閉体全開時が、渦巻きばねの上記トルクが次第に小さくなる増加率で増加する前記領域の始点と一致又は略一致してもよい。
また、前述したように、渦巻きばねの蓄圧された戻しばね力を開閉体の上方への開き移動のための巻取体の前記他方への回転のために利用することは、この戻しばね力だけで巻取体を前記他方へ回転させることでもよく、例えば、手操作力や、前記駆動装置が巻取体に付与する回転力を補助するために、この戻しばね力を利用することでもよい。
本発明において、上述のように蓄圧された戻しばね力によるトルクが次第に小さくなる増加率で増加する領域を有するばねであれば、その後の戻しばねのトルクの変化は任意でよく、例えば、その後のトルクの増加率は一定値又は略一定値となってもよく、あるいは、その後のトルクの増加率は増大してもよく、また、その後のトルクの増加率は次第に低下することを継続してもよい。
開閉体の全開からの繰り出しが進行すると、上記巻径は減少するため、開閉体を下方へ繰り出すために巻取体が1回転等の所定角度の回転を行ったときの開閉体の繰り出し長さは次第に短くなる。このため、開閉体の全開からの繰り出しが進行すると、開閉体の自重トルクの増加率は一定値又は一定値に近似した値になる。
このように開閉体の自重トルクが一定値又は一定値に近似した値となっているときに、開閉体が全閉位置に達するようになっている場合には、渦巻きばねを、開閉体の繰り出しの進行に伴って戻しばね力による前記トルクの増加率が一定値又は略一定値となる領域を有するばねとし、この領域内に、開閉体が全閉となる開閉体全閉時があるように設定することが好ましい。
これによると、開閉体の全開からの繰り出しが進行し、開閉体が全閉となるまでについても、戻しばねのばね特性を開閉体の自重トルクの変化と適合させることができるようになる。
なお、本発明に係る渦巻きばねは、開閉体の繰り出しの進行に伴って戻しばね力による前記トルクの増加率が一定値又は略一定値となる領域を有していれば、その後のトルク特性については任意なばねでよく、例えば、この領域で終了するばねでもよく、あるいは、その後に、例えば、トルクの増加率が増加したり減少したりするばねでもよい。後者のように、その後のトルクの増加率が変化するばねについては、開閉体が全閉位置に達するときが、トルクの増加率が一定値又は略一定値となっている領域と、このトルクの増加率が変化している領域との境界であってもよい。
なお、以上述べた渦巻きばねの上記トルク特性は、単一の渦巻きばねによるトルク特性によってであってもよく、複数の渦巻きばねによるトルク特性の合成によってであってもよい。
また、本発明において、開閉体の全開、全閉とは、開閉体で開閉される出入口等の開口部が全開、全閉となることでもよく、あるいは、前記巻取体の回転数や開閉体の開閉移動を案内するガイド部材の長さ等によって設定される巻取体による開閉体の巻き取り限界、繰り出し限界等で規定されることでもよい。
さらに、本発明は任意な開閉装置に適用できる。すなわち、本発明は、開閉体がシャッターカーテンとなっているシャッター装置や、オーバーヘッドドア装置、ロールブラインド装置、オーニング装置、防煙垂れ幕装置等の任意な開閉装置に適用でき、シャッター装置は、窓や出入口等の開口部をシャッターカーテンで開閉する開口部用シャッター装置でもよく、全閉となったシャッターカーテンで防災区画を形成するための防災用シャッター装置でもよく、車庫用シャッター装置でもよく、物置用シャッター装置でもよく、トラック等の車両の荷台やコンテナのためのシャッター装置等でもよい。そして、防災用シャッター装置には、火災等の災害発生時にシャッターカーテンがエレベータとエレベータホールとの間で閉じ移動するエレベータ用防災シャッター装置が含まれ、また、防災用シャッター装置には、通常時のシャッターカーテンは閉じていたり、人の出入り等のために開閉したりし、火災等の災害発生時には消火活動等を行えるようにするためにシャッターカーテンが開くようになっているシャッター装置も含まれる。
また、本発明をシャッター装置に適用する場合には、シャッターカーテンは任意な材料で形成されているものでよい。すなわち、シャッターカーテンは、その全部又は主要部が複数のスラットの連設で形成されたものでもよく、複数のパネルの連設で形成されたものでもよく、リンクで連結された複数のパイプで形成されたものでもよく、布やシート等の薄厚部材で形成されたものでもよく、ネットで形成されたものでもよく、これらのうちの少なくとも2つの複合で形成されたもの等でもよい。
本発明によると、戻しばねを備えた開閉装置全体の小型化を図ることができるようになるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本実施形態に係る戻しばね付き巻取体構造が採用されている開閉装置であるシャッター装置の全体正面図が示され、このシャッター装置は、開閉体であるシャッターカーテン1で建物の開口部10を開閉するための出入口用シャッター装置である。また、このシャッター装置は、シャッターカーテン1の自重及び手動操作、又は具体的な構造を後述する駆動装置によりシャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させ、手動操作又はこの駆動装置によりシャッターカーテン1を上向きに開き移動させる手動式と自動式の併用タイプのものとなっている。
開口部10の左右両側を形成している壁や柱等による建物躯体11には、上下に延びるガイドレール2が取り付けられ、これらの左右のガイドレール2の内部に、シャッターカーテン1の幅方向両端部である左右両端部がスライド自在に挿入され、シャッターカーテン1はガイド部材であるガイドレール2に案内されて上下方向に開閉移動可能となっている。開口部10の上部には、シャッターケース3が配設され、このシャッターケース3の内部に、正逆回転自在となった巻取体4が左右のブラケット5で支持されて水平に架設されている。シャッターカーテン1の上端部はこの巻取体4に連結され、シャッターカーテン1の上下方向の開閉移動は、巻取体4が正逆回転のうちの一方へ回転することによる巻取体4からのシャッターカーテン1の繰り出し、巻取体4が他方へ回転することによって行われる巻取体4へのシャッターカーテン1の巻き取りによりなされ、このシャッターカーテン1の開閉移動は、シャッターケース3の下面3Aに設けられているまぐさのスリットをシャッターカーテン1が挿通してなされる。
シャッターカーテン1は、閉じ側の先端部である下端部に設けられた座板1Aと、この座板1Aの上部に多数連設されたスラット1Bとを含んで構成され、座板1Aがシャッターケース3の下面3Aのまぐさの高さ位置に達しているときに、シャッターカーテン1は全開位置となっており、座板1Aが開口部10の床10Aに達したときに、シャッターカーテン1は全閉位置となる。このため、これらの全開位置から全閉位置までの領域が、シャッターカーテン1の上下開閉移動長さH、すなわち、開閉移動領域Hである。
そして、本実施形態に係るシャッター装置においては、シャッターカーテン1の左右の幅寸法Dは、この上下開閉移動長さHよりも短い長さとなっている。
シャッターカーテン1を構成している多数のスラット1Bのうち、シャッターカーテン1が全閉位置となったときに腰と同じ高さ程度にある所定のスラット1Bには、左右2個の手掛け部6が設けられ、シャッターカーテン1が全閉位置となっているときに、これら手掛け部6に手を掛けてシャッターカーテン1を持ち上げたり、座板1Aに操作棒の先端を係合してこの操作棒でシャッターカーテン1を上昇させることにより、シャッターカーテンを、この上昇によって正逆回転のうちの前記他方への回転を行うことになる巻取体4に巻き取らせてシャッターカーテン1を全開位置まで開き移動させることができる。また、全開位置に達しているシャッターカーテン1の座板1Aに操作棒の先端を係止してこの操作棒でシャッターカーテン1を下降させたり、手掛け部6に手を掛けてシャッターカーテン1を押し下げることを行うことにより又は行わないことにより、シャッターカーテン1の自重を利用して、シャッターカーテン1を、この下降や押し下げによって正逆回転のうちの前記一方への回転を行うことになる巻取体4から繰り出させて全閉位置まで閉じ移動させることができる。
また、図1に示すように、左右一対のガイドレール2のうちの一方(図1では右側)のガイドレール2付近の建物躯体11には、シャッターカーテン1を自動で開閉移動させるための操作手段である押しボタン式の開閉スイッチ12が設けられている。この開閉スイッチ12は、開ボタン13と、閉ボタン15と、停止ボタン14とで構成され、リード線16を介して巻取体4の中心軸に取り付けられている駆動装置である開閉機50に接続されている。具体的な構成を後述する開閉機50は、電動モータとブレーキ等からなる駆動部と、制御部である制御盤とを含んで構成されるものである。
開閉スイッチ12の開ボタン13を操作すると、開閉機50の電動モータの正逆駆動のうちの一方の駆動がなされ、これにより、巻取体4の正逆回転のうちの一方の回転でシャッターカーテン1が巻取体4に巻き取られながら開き移動を行う。シャッターカーテン1が左右一対のガイドレール2に案内されて開放動作し、座板1Aがシャッターケース3の下面を形成しているまぐさに達し、開閉機50に備えられた図示しない上限リミットスイッチが作動するまで、シャッターカーテン1が巻取体4に巻き取られることにより、シャッターカーテン1は開口部10を全開状態又は略全開状態にする。
一方、開閉スイッチ12の閉ボタン15を操作すると、開閉機50の電動モータの正逆駆動のうちの他方の駆動がなされ、これにより、巻取体4の正逆回転のうちの他方の回転でシャッターカーテン1は巻取体4から繰り出されながら閉じ移動を行い、座板1Aが床10Aに接触して開閉機50に備えられた図示しない下限リミットスイッチが作動し、シャッターカーテン1が全閉状態又は略全閉状態となることにより、開口部10はシャッターカーテン1で閉鎖される。このとき、自動又は手動による図示しないロック機構の作動により、シャッターカーテン1は全閉状態又は略全閉状態が維持される。
なお、このシャッターカーテン1の開閉動作を手動で行うためには、図示しない手動切替手段である手動切替ワイヤーを牽引することにより可能となっている。
本実施形態では、開閉スイッチ12は、開閉機50とはリード線16で接続される有線式の開閉スイッチであったが、無線の開閉制御信号を送信する送信機と、開閉機50に取り付けられ、この送信機から送信された無線信号を受信するためのアンテナ付きの受信機とを有して構成される無線式の開閉スイッチをさらに備えるようにしてもよい。
図2には巻取体4の構造が示されている。巻取体4は、回転しない非回転軸となっている中心部の中心軸20と、シャッターカーテン1の上端部が連結され、中心軸20を中心に正逆回転自在であって、正逆回転のうちの一方への回転によってシャッターカーテン1を閉じ移動させるためにこのシャッターカーテン1を繰り出し、他方への回転によってシャッターカーテン1を開き移動させるためにこのシャッターカーテン1を巻き取るための巻取体本体21とを含んで構成され、中心軸20は、軸方向両端部が図1で説明した左右のブラケット5で回転不能に支持されている。巻取体本体21は、中心部に中心軸20が貫通した複数個、図示例では、4個の回転体22と、中心軸20の軸方向に延びる長さを有し、中心軸20の軸方向に互いに離間して配置されたこれらの回転体22同士を連結する連結部材となっているバー状部材23とを含んで構成され、パイプやフラットバー等からなるバー状部材23は巻取体4の円周方向に複数本設けられている。
中心軸20に対してそれぞれが正逆回転自在となっている4個の回転体22の全部は同じ形状及び構造となっており、図3は、これらの回転体22のうちの1個を示す正断面図である。図4は、図3のS4−S4線断面図、図5は、図3のS5−S5線断面図である。図3で示されているとおり、回転体22は、中心軸20の軸方向の一方の端部が略閉鎖された端面部24Aとなっていて、他方の端部24Bが開口しているカップ状部材24と、このカップ状部材24の開口した端部24Bの側に配置されていて、この開口端部24Bを略閉鎖された端部とする端部部材となっているホイール部材25との組み合わせによる組合体となっている。カップ状部材24の内部空間Sに、本実施形態に係る戻しばねであって、一端から他端に向かって渦巻き状に巻回している渦巻きばね26が収納配置されている。この渦巻きばね26は、板材を中心軸20の軸方向の同一位置又は略同一位置で渦巻き状に巻回したぜんまいばねである。
このぜんまいばね26は、図2で示されているとおり、全部の回転体22に設けられているとともに、これらのぜんまいばね26は、材質が同じであって、厚さや幅等の寸法も同じ、全長も同じとなっている板材を同じ方向へ同じ回数分だけ巻回することによって生産したものであるため、この実施形態で用いられている戻しばねは、1種類のばねとなっている。なお、これらのぜんまいばね26は、全長が同じとなっている板材を同じ方向へ同じ回数分だけ巻回しているので、それぞれのぜんまいばね26同士において、互いのカップ状部材24の被係止部24E同士の軸周方向における軸芯を中心とした中心角と、互いの巻芯部材27のスリット27A同士の中心角は同じ又は略同じとなっている。
ホイール部材25は、外周面を形成している環状フランジ部25Aと、この環状フランジ部25Aにおける中心軸20の軸方向の一方の端部に設けられた端面部25Bとを有する浅皿形状であり、この端面部25Bに、それぞれの回転体22同士を連結するための前記バー状部材23が挿通結合されている。また、ホイール部材25は、開口している中心軸20の軸方向の他方の端部25Cをカップ状部材24とは反対側に向け、端面部25Bをカップ状部材24の側に向けてこのカップ状部材24に結合されている。この結合は、板金プレス成形品であるカップ状部材24の胴部24Cの前記開口端部24B側の端部に形成されている突片24Dを、ホイール部材25の端面部25Bに形成された孔25Dに挿入した後、突片24Dを折り曲げることによってなされている(図4も参照)。
以上のことから、本実施形態では、ホイール部材の端面部25Bは、中心軸20の直径方向へ立ち上がった回転体22の立上り部となっており、カップ状部材の胴部24Cは、中心軸20の軸方向の幅を有する回転体22の筒部となっている。そして、ホイール部材25は、回転体22を形成する第1部材となっており、カップ状部材24は、回転体22を形成する第2部材となっている。
図3で示されているように、ホイール部材25はカップ状部材24よりも大きい外径を有し、この外径の部分を形成しているホイール部材25の環状フランジ部25Aは、図4で示されているように、中心軸20を中心とする真円状となっておらず、円周方向へ延びるにしたがい中心軸20からの距離が次第に変化する略渦巻き状の異形円となっている。このため、環状フランジ部25Aには、中心軸20の直径方向へ窪んだ段部25Eが形成され、それぞれの回転体22における段部25Eにおいて、シャッターカーテン1の上端部がボルト等による結合具でホイール部材25の環状フランジ部25Aの外面に結合されている。このため、それぞれの回転体22における環状フランジ部25Aは、シャッターカーテン1を巻き取り、繰り出すための巻取体4における部分となっている。
このような環状フランジ部25Aを有しているホイール部材25は、上述のように開口端部25Cをカップ状部材24とは反対側に向けてカップ状部材24に連結されているため、上記のようにシャッターカーテン1の上端部を環状フランジ部25Aの外面に結合するための結合具が、環状フランジ部25Aの内面側へ突出する部分を有するボルト、ナット等であっても、この結合作業を、開口端部25Cから作業者が手や工具等を差し入れることによって容易に行える。
また、図2で示されているように、前記中心軸20の外周面におけるそれぞれの回転体22の配置位置と対応する位置には、巻芯部材27が配置されている。これらの巻芯部材27は、図3で示されているとおり、結合具29によって中心軸20に固定されているため、巻芯部材27は、中心軸20と同じく、回転しない非回転部材となっている。図3で示されている結合具29は、巻芯部材27及び中心軸20を貫通するボルトと、巻芯部材27の反対側に突出したこのボルトの先端に螺合されたナットとからなる。なお、結合具28は、内輪部材35Bと巻芯部材27とを締結するためのものである。
また、図4及び図5から分かるように、巻芯部材27は丸パイプ部材であり、この巻芯部材27には、図3で示されているように、カップ状部材24の配置位置と対応する位置において、軸方向の途中まで延びるスリット27Aが形成され、さらに、巻芯部材27の軸方向両端部には、切り倒し加工による受け片27Bが形成され、巻芯部材27の円周方向に等間隔で複数形成されているこれら受け片27Bにより、巻芯部材27は中心軸20と同軸的に配置され、言い換えると、巻芯部材27は、全周に亘って中心軸20から同じ又は略同じ大きさの隙間を開けて中心軸20上に配置されている。
図3に示されているように、カップ状部材24の前記端面部24Aと、ホイール部材25の前記端面部25Bには、中心軸20及び巻芯部材27が挿通された孔30,31が形成され、これらの孔30,31は僅かな隙間を開けて巻芯部材27が遊合した孔であるため、カップ状部材24の端面部24Aによる端部と、ホイール部材25の端面部25Bによる端部は、略閉鎖された端部となっている。このため、カップ状部材24の前記内部空間Sは、略密閉空間となっており、このように前記ぜんまいばね26が収納された内部空間Sが略密閉空間となっていることにより、ぜんまいばね26に空気中の水分等に起因する錆が発生しにくく、また、ぜんまいばね26は外部力から略遮断され、ぜんまいばね26を外部環境から保護することができる。
なお、ぜんまいばね26が収納されているこの内部空間Sを密閉性が一層向上した略密閉空間又は密閉空間とするために、カップ状部材24、ホイール部材25に取り付けられて巻芯部材27と回転自在に接触するシール部材により、孔30,31を塞いでもよい。
図3で示すように、ホイール部材25と巻芯部材27との間には軸受け35が配置され、この軸受け35により、ホイール部材25とカップ状部材24は巻芯部材27に対して回転自在となっている。軸受け35は、外輪部材35Aと、内輪部材35Bと、これらの外輪部材35Aと内輪部材35Bとの間において円周方向に複数個配設され、それぞれがリテーナ35Cで回転自在に保持されているボール35Dとを有するボール式軸受けであり、外輪部材35Aはリベット等の止着具36(図4参照)でホイール部材25の端面部25Bに止着されており、内輪部材35Bは、前述した結合具28によって巻芯部材27と共に中心軸20に結合されている。
図5で示すように、前記内部空間Sに配置されているぜんまいばね26の一方の端部である内端部26Aは折り曲げられることにより、巻芯部材27の被係止部であるスリット27Aに係止されている。また、ぜんまいばね26の他方の端部である外端部26Bは折り曲げられることにより、カップ状部材24の胴部24Cの被係止部24Eに係止されている。巻取体4の円周方向へ延びる長さを有しているこの被係止部24Eは、胴部24Cに外径方向への膨出部24Fをプレス成形等で形成する際に、一部を膨出させずに切り残すことによって形成されたものである。
このようにぜんまいばね26の内端部26Aは、前記巻取体4の中心に配置された中心軸20と結合されて非回転部材となっている巻芯部材27に連結され、外端部26Bは、中心軸20を中心に回転自在となっている前記回転体22の構成部材であるカップ状部材24に結合されている。また、ぜんまいばね26の巻回方向は、ホイール部材25の環状フランジ部25Aに巻き取られているシャッターカーテン1を繰り出す方向に巻取体4が中心軸20を中心に回転(図5中、右回転)したときに、ぜんまいばね26が巻き締められる方向になっている。そして、ぜんまいばね26の内端部26A及び外端部26Bは、巻取体4の円周方向に折り曲げられて巻芯部材27のスリット27A、カップ状部材24の胴部24Cの被係止部24Eに係止されているが、これらの内端部26A及び外端部26Bの折り曲げ方向は互いに反対側になっているとともに、これらの折り曲げ方向は、上述のようにホイール部材25の環状フランジ部25Aに巻き取られているシャッターカーテン1を繰り出す方向に巻取体本体21が中心軸20を中心に回転したときに、内端部26A、外端部26Bがスリット27A、被係止部24Eから離脱せず、ぜんまいばね26を巻き締めることができる方向になっている。
このため、シャッターカーテン1が巻取体4から繰り出されて閉じ移動すると、ぜんまいばね26には巻き締めによって戻しばね力が蓄圧されることになり、シャッターカーテン1を開き移動させてこのシャッターカーテン1を巻取体4に巻き取らせるときには、この蓄圧された戻しばね力が巻取体4の回転を補助するための補助力として利用される。これにより、前述した手掛け部6や操作棒を用いた手動操作によってシャッターカーテン1を上方へ開き移動させる際には、この開き移動を軽く行うことができる。
また、中心軸20における複数個の回転体22のうちの2個の回転体22の間(図2では、後述するように、左端の回転体22と、この回転体22の右側に隣接して配置されている回転体22との間)には、巻取体4に正逆回転の回転力を付与するための駆動装置である開閉機50が取り付けられている。
図6には、ぜんまいばね26の巻き締め初期の状態が示され、図7には、巻き締め終期の状態が示されている。図6の巻き締め初期では、ぜんまいばね26の外層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触している密巻き部26Cとなっていて、内層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していない粗巻き部26Dとなっており、図7の巻き締め終期では、ぜんまいばね26の外層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していない粗巻き部26Eとなっていて、内層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触している密巻き部26Fとなっている。図6及び図7の密巻き部26C、26Fは、理解の便宜のため、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していない状態で示されている。
ところで、前述のように、中心軸20に結合された巻芯部材27に内端部26Aが係止されてシャッターカーテン1の繰り出しによって巻き締めされるぜんまいばね26は、材料力学上、中心軸20側の一端が固定端となっていて他端が自由端となっている片持ち梁と同じであるとみなすことができる。この片持ち梁の弾性係数をE、断面係数をI、長さをLとし、片持ち梁に曲げモーメント(トルク)Tを作用させたときにこの片持ち梁の自由端にたわみ角度θ(ラジアン)が生じた場合には、材料力学上、T=EIθ/Lなる式が成立する。
そして、ぜんまいばね26の幅寸法をb、厚さ寸法をhとしたとき、ぜんまいばね26の断面係数Iは、I=bh3/12である。また、たわみ角度θはぜんまいばね26の巻回数Nに対応する値であり、巻回数が1回である場合のたわみ角度θは、θ=2πとなる。
このため、ぜんまいばね26の巻回数がNである場合には、上記T=EIθ/Lを、T=πEbh3N/6Lと書き換えることができる。この場合におけるTは、ぜんまいばね26の巻き締めによって生ずるこのぜんまいばね26の戻しばね力による巻回中心回り、すなわち、巻取体4の中心軸20回りのトルクとなる。また、Lは、ぜんまいばね26のうちの巻回数が上記Nとなっている有効長さ、すなわち、巻回されている全長のうちの互いに内外に接触していない部分の長さとなる。ぜんまいばね26の巻回されている全長のうちの互いに内外に接触している部分には、その接触によって本来のばね力が生じないからである。
ぜんまいばね26の巻き締め初期の状態を示している図6のときには、ぜんまいばね26の巻回されている大部分を占めている外層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触している密巻き部26Cとなっているため、このときの上記有効長さLは短い。図6の状態からぜんまいばね26の巻き締めが始まると、上記巻回数Nが増加するとともに、密巻き部26Cから有効長さLとなる分が生じ、この有効長さLが次第に長くなるが、このときには、この有効長さはまだ短いため、上記の式T=πEbh3N/6Lから分かるように、ぜんまいばね26の戻しばね力によるトルクTは、次第に小さくなる増加率で増加する。
この後、ぜんまいばね26がさらに巻き締められると、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していた上記密巻き部26Cが次第に消滅するとともに、有効長さLはぜんまいばね26の全長と同じ又は略同じになって、上記巻回数Nだけが増加するため、ぜんまいばね26の戻しばね力によるトルクTの次第に小さくなる増加率は、ぜんまいばね26の巻き締めの進行に伴って一定値又は略一定値まで低下する。すなわち、トルクTは、ぜんまいばね26の巻き締めの進行に伴って直線的又は略直線的に増加するようになる。
この後、さらにぜんまいばね26が巻き締められると、図7の状態に近づくため、ぜんまいばね26の内層部には、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触した密巻き部26Fが生じ始め、この密巻き部26Fは、ぜんまいばね26の巻き締めが進行するに伴って増大するため、前記有効長さLは次第に短くなり、そして、前記巻回数Nは増加するため、ぜんまいばね26の戻しばね力によるトルクTは、上記の式T=πEbh3N/6Lから分かるように、次第に大きくなる増加率で増加し、ぜんまいばね26の巻き締め終期では、図7で示されているように、ぜんまいばね26の巻回されている大部分は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触した密巻き部26Fとなっている。
図8は、横軸を、ぜんまいばね26を巻き締める巻取体4の回転数とし、縦軸を巻取体4の中心軸20回りのトルクとしたグラフである。この図8には、巻取体4の回転数に対する全部のぜんまいばね26の合計トルクとして表された上記トルクTの変化を示すラインAが示されている。このラインAは、上述の説明から分かるように、図6で示された巻き締め初期を始点として、トルクTが、巻取体4の回転数が増すと、次第に小さくなる増加率で増加する第1領域aと、この領域aに続いてトルクTの増加率が一定値又は略一定値となる第2領域bと、この領域bに続いてトルクTが次第に大きくなる増加率で増加する第3領域cとからなり、この領域cの終点が、図7で示されたぜんまいばね26の巻き締め終期となっている。なお、図8及び後述する図9のグラフの横軸である巻取体4の回転数とぜんまいばね26の巻回数Nとは、巻取体4の回転数が1増えると、ぜんまいばね26の巻回数Nが1増える関係となっている。
また、図8には、ぜんまいばね26の巻き締めに関する巻き締め初期範囲αと中間範囲βとの境界位置と一致しているシャッターカーテン1の全開位置と、中間範囲βと巻き締め終期範囲γとの境界位置と一致しているシャッターカーテン1の全閉位置とが示されている。これらの範囲α、β、γで分かるように、シャッターカーテン1の全開位置は、トルクTが次第に小さくなる増加率で増加する上記第1領域a内にあり、また、シャッターカーテン1の全閉位置は、トルクTの増加率が一定値又は略一定値となっている上記第2領域b内にある。
さらに、図8には、シャッターカーテン1を上向きに開き移動させようとしたときに必要となる巻取体4の中心軸20回りのトルクBも示されている。このトルクBは、巻取体4から繰り出されている図5で示すシャッターカーテン1の部分の自重(座板1Aの重量を含む)Wによる中心軸20回りの自重トルクと、シャッターカーテン1を上方へ開き移動させようとした際に、図1で示したガイドレール2とシャッターカーテン1との摩擦等に基づき生ずる下向きの抵抗力による中心軸20回りの抵抗トルクとの合計値である。シャッターカーテン1の自重Wによる自重トルクは、自重Wと、図5で示す中心軸20の中心部からこの自重Wが作用している位置までの水平距離、言い換えると、中心軸20の中心からのシャッターカーテン1の巻径Rとを積算した値となる。
また、図8には、シャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させようとする巻取体4の中心軸20回りのトルクCも示されている。このトルクCは、巻取体4から繰り出されているシャッターカーテン1の部分の自重Wによる中心軸20回りの自重トルクから、シャッターカーテン1が下向きに閉じ移動しようとしたときにガイドレール2とシャッターカーテン1との摩擦等に基づき生ずる上向きの抵抗力による中心軸20回りの抵抗トルクを差し引いた値となる。
トルクBとトルクCの両方における自重トルクは、上述のように、巻取体4から繰り出されているシャッターカーテン1の部分の自重Wと、中心軸20の中心部からのシャッターカーテン1の巻径Rとの関数となっており、これらの自重Wと巻径Rのいずれも、巻取体4からのシャッターカーテン1の繰り出し量(巻取体4の回転数)と関係している。また、シャッターカーテン1を上向きに開き移動させようとしたときに生ずる上記抵抗トルクと、シャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させようとしたときに生ずる上記抵抗トルクは、図1で示したシャッターカーテン1の上下開閉移動長さHの全体に亘って一定値又は略一定値となっている。
そして、全開となっていたシャッターカーテン1が、巻取体4が1回転等の所定角度の回転を行って繰り出されたときには、シャッターカーテン1が全開になっているときにおける巻径Rは大きいため、巻取体4のこの所定角度の回転によって下方へ繰り出されるシャッターカーテン1の長さは、シャッターカーテン1が全開となっていないときから始まる巻取体4の所定角度の回転の場合よりも長くなる。このため、シャッターカーテン1を全開から繰り出す巻取体4の所定角度の回転によって上記巻径Rは減少するが、この巻径Rの減少よりも、シャッターカーテン1の下方への繰り出し長さはシャッターカーテン1の自重トルクの増大に貢献することになる。このため、シャッターカーテン1が全開から繰り出されたときには、シャッターカーテン1の自重トルクの増加率は大きい。
なお、シャッターカーテン1の巻径Rは、このシャッターカーテン1を構成している前記スラット1Bの厚さ等の関係により、実際には巻取体4の回転数に対して滑らかに変化しないため、実際のトルクB,Cは図8で示されているようには滑らかに変化せず、凹凸を生じながら全体として図8のトルクB,Cのように変化する。
本実施形態によると、ぜんまいばね26は、前述したように、蓄圧された戻しばね力によるトルクTが次第に小さくなる増加率で増加する領域aを有するばねとなっており、この領域a内に、巻取体4の一方の回転によるシャッターカーテン1の繰り出しが始まる前の開閉体全開時があり、この開閉体全開時からのシャッターカーテン1の繰り出しに伴ってトルクTが増加するようになっているため、ぜんまいばね26のばね特性は、シャッターカーテン1が全開から下方へ繰り出されるときのシャッターカーテン1の自重トルクの変化、言い換えると、前記抵抗トルクを含むラインB,Cで表された前記トルクの特性と適合しており、このため、シャッターカーテン1をぜんまいばね26の戻しばね力との関係によって円滑に上下に開閉移動させることができる。
また、このようにばね特性が、シャッターカーテン1が全開から下方へ繰り出されるときのシャッターカーテン1の自重トルクと適合することは、戻しばねであるぜんまいばね26だけによって行われるので、複数個の戻しばねを組み合わせて用いる必要がないため、戻しばねに関する部品点数や構成の点で有効となる。
シャッターカーテン1の全開からの繰り出しが進行すると、上記巻径Rは減少するため、シャッターカーテン1を下方へ繰り出すために巻取体4が1回転等の前述した所定角度の回転を行ったときのシャッターカーテン1の繰り出し長さは次第に短くなる。このため、シャッターカーテン1の全開からの繰り出しが進行すると、シャッターカーテン1の自重トルクの増加率は一定値又は一定値に近似した値になり、自重トルクの増加率がこのような値になっているときに、本実施形態では、シャッターカーテン1が全閉位置に達するようになっている。
本実施形態のぜんまいばね26は、前記領域aに続いて、トルクTの増加率が一定値又は略一定値となっている前記領域bを有しており、この領域bにおいて、シャッターカーテン1は全閉となるため、シャッターカーテン1の全開からの繰り出しが進行し、シャッターカーテン1が全閉となるまでについても、ぜんまいばね26のばね特性は、シャッターカーテン1の自重トルクの変化、言い換えると、前記抵抗トルクを含むラインB,Cで表された前記トルクの特性と適合している。
図8には、ラインA1、A2が示され、これらのラインA1、A2は、ラインAで示されたぜんまいばね26の理論上の前記トルクTに対して、ぜんまいばね26の現実の材料や巻き込み状態等に基づいて発生するヒステリシスが考慮されたぜんまいばね26のトルクを示しており、ラインA1は、ぜんまいばね26が巻き締められながらシャッターカーテン1が全開位置から全閉位置に達する場合であり、ラインA2は、その反対の場合である。
そして、図8で示されているように、シャッターカーテン1の上下開閉移動長さHの全体について、ラインA1、A2で示されているトルクよりもラインBで示されたトルクが大きくなっていて、ラインA1、A2で示されているトルクよりもラインCで示されたトルクが小さくなっていることにより、シャッターカーテン1に開き移動操作力や閉じ移動操作力を作用させない状態でシャッターカーテン1を上下開閉移動長さHの任意な位置に停止させることができ、また、シャッターカーテン1を開き移動させるためには、ラインA1、A2で示されているトルクとラインBで示されたトルクとの差に相当する操作力をシャッターカーテン1に作用させればよくなり、シャッターカーテン1を閉じ移動させるためには、ラインA1、A2で示されているトルクとラインCで示されたトルクとの差に相当する操作力をシャッターカーテン1に作用させればよくなる。
なお、上記操作力は手操作によるものであるが、この操作力を駆動装置である開閉機50によるものとした場合にも適用でき、このように上記操作力を開閉機50によるものとした場合には、この開閉機50の電動モータの小さな駆動力によってシャッターカーテンを開閉移動させることができる。
図9は、これまでとは異なるばね特性を有するぜんまいばね26を用いた場合の実施形態を示す。この図9において、図8のA,A1,A2,a,b,c,α、β、γと対応するものは、A’,A’1,A’2,a’,b’,c’,α’,β’,γ’として示した。
この実施形態において、ラインA’で表されているぜんまいばね26の戻しばね力によるトルクT(ラインA’1,A’2で表されている前記ヒステリヒスが考慮されたトルクを含む)のシャッターカーテン1の全開時における値は、ラインB,Cで表された前述のトルクのシャッターカーテン1の全開時における値よりも大きくなっている。このため、シャッターカーテン1が全開位置に達すると、シャッターカーテン1の下端部の座板1Aが、図1で説明したシャッターケース3の下面3AのまぐさにトルクTで当接してこの当接状態を維持することになるとともに、シャッターカーテン1を手操作で全開位置の近くまで開き移動させることにより、座板1Aがまぐさに当接する全開位置までシャッターカーテン1はトルクTで自動的に開き移動することになる。
また、この実施形態でも、図8で説明した前記実施形態と同様に、シャッターカーテン1の全開位置は、ぜんまいばね26のトルクTが次第に小さくなる増加率で増加する領域a’内にあり、また、シャッターカーテン1の全閉位置は、ぜんまいばね26のトルクTの増加率が一定値又は略一定値となっている領域b’内にある。
なお、以上説明した図8,9のグラフのトルクA,A’は、巻取体4に設けたぜんまいばね26それぞれによるトルク(それぞれ略等しい)の合計値となっている。
なお、図8及び図9の実施形態において、シャッターカーテン1が全開位置に達しているときに、シャッターカーテン1に予定外の下向きの外部力が作用してもシャッターカーテンが下向きに閉じ移動しないようにするため、巻取体4に、この巻取体4の回転を阻止する手動式のブレーキ装置を設けたり、前記まぐさ等の配置箇所に、座板等のシャッターカーテン構成部材に係脱自在に係合する係合部材を備えた手動式のストップ装置を設けたりし、シャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させる際には、手動操作によってこれらのブレーキ装置やストップ装置を解除できるようにしてもよい。これらのブレーキ装置やストップ装置は、シャッターカーテン1が全開位置でない位置から全開位置に達したときに、例えばまぐさに当接した反動により跳ね返らないように自動的に作動するものでもよい。
図3の巻取体4を構成するそれぞれのカップ状部材24の内部空間Sに収納配置されていて、戻しばねとなっているぜんまいばね26は、図8で示されたばね特性を有するものでもよく、図9で示されたばね特性を有するものでもよい。
そして、これらのばね特性を有するぜんまいばね26を図1の上下開閉移動長さHで使用できるようにするためには、シャッターカーテン1の全開時、全閉時等におけるぜんまいばね26の巻き締め状態が図8、図9のトルク特性を実現できるものとなっていなければならず、これを実現できる作業を、ぜんまいばね26について実施しなければならない。この作業は、以下のように行う。
それぞれの回転体22の巻芯部材27を図3で示した前記結合具29で中心軸20に結合する前に、これらの回転体22と前記バー状部材23とで形成された巻取体4の回転を図示しない拘束具等で止めながら、図3で示す工具40によってそれぞれの巻芯部材27を中心軸20に対して回転させ、これにより、カップ状部材24の内部空間Sに収納されているそれぞれのぜんまいばね26を巻き締める。工具40は、巻芯部材27の軸方向端部に前記受け片27Bを切り倒し加工によって形成した際に生ずる切欠部41に係合する突起を備えているものであり、工具40を回転操作すると、突起からの回転力によって巻芯部材27は中心軸20を中心に回転する。このような回転操作によってそれぞれのぜんまいばね26は巻き締められ、これらのぜんまいばね26の巻き締めは、言い換えると、これらのぜんまいばね26に戻しばね力を蓄圧する作業は、図8、図9で示されているシャッターカーテン1の全閉時における全部のぜんまいばね26の戻しばね力による巻取体4の中心軸20回りのトルクと同じ大きさのトルクがこれらのぜんまいばね26によって生ずるまで行う。
この後、それぞれの回転体22における巻芯部材27を前記結合具28,29で中心軸20に結合するとともに、前記軸受け35の外輪部材35Aに形成されている孔42、内輪部材35Bに形成されている孔43、巻芯部材27に形成されている孔44、さらに中心軸20に形成されている孔にボルトを挿通し、反対側まで貫通させたこのボルトの端部にナットを螺合する。これにより、これらのボルトとナットによる結合具によって巻芯部材27と回転体22を中心軸20に固定される。
なお、内輪部材35Bと巻芯部材27の孔43,44は円周方向に複数形成されており、このため、ぜんまいばね26の戻しばね力が所定値となったときにぜんまいばね26の巻き締め作業を終了させても、その戻しばね力又はその戻しばね力に近い戻しばね力を維持した状態で、上記ボルトとナットによる結合具により、巻芯部材27と回転体22を中心軸20に固定することができる。また、上記結合具29のボルトを挿通するための巻芯部材27の孔も円周方向に複数形成されている。
次に、予め座板1Aを取り付けておいたシャッターカーテン1の上端部を、図1で示されているシャッターケース3の下面3Aに形成されているまぐさに下方から吊り上げながら挿入し、シャッターカーテン1の上端部を、前述したように、それぞれの回転体22のホイール部材25の環状フランジ部25Aに結合する作業を行う。このとき、シャッターカーテン1は略全閉位置まで降ろした状態となる。そして、軸受け35の外輪部材35Aの孔42、内輪部材35Bの孔43、巻芯部材27の孔44、さらに中心軸20の孔に挿通されていた前記ボルトから前記ナットを取り外してこのボルトを引き抜く作業を行い、結合具28,29はそのまま残す。そして、シャッターカーテン1を全開位置まで巻き取る。この後、左右のガイドレール2を設置する作業を行い、このとき、シャッターカーテン1の下端部の幅方向両端部が左右のガイドレール2の上端部の内部に挿入されるようにしながらガイドレール2を設置位置まで移動させる。
前述した、シャッターカーテン1を略全閉位置まで降ろした状態で、軸受け35の外輪部材35Aの孔42、内輪部材35Bの孔43、巻芯部材27の孔44、さらに中心軸20の孔に挿通されていた前記ボルトから前記ナットを取り外してこのボルトを引き抜く作業により、ぜんまいばね26に蓄圧されていた戻しばね力は解放可能状態となり、それぞれの回転体22とバー状部材23からなる巻取体本体21は中心軸20を中心に回転自在となるため、シャッターカーテン1に小さな押し上げ力を与えることにより、巻取体4は、ぜんまいばね26の既に蓄圧されていた戻しばね力を回転付勢力として利用しながらシャッターカーテン1を開き移動させる回転を行い、シャッターカーテン1は全開位置に達する。
以上説明した作業により、シャッターカーテン1の全開時、全閉時等における全部のぜんまいばね26の巻き締め状態は、図8、図9のトルク特性を実現できるものとなる。
次に、図2に示されている巻取体4の中心軸20に取り付けられ、この巻取体4に正逆回転の回転力を付与するための駆動装置である開閉機50について説明する。図10は、図2に示されている巻取体4を奥側から手前側へ90度又は略90度回転させた状態における開閉機50の拡大図であり、図11は、図2のS11−S11線断面図である。
図2に示すように、巻取体4の巻取体本体21を構成する4個の回転体22のうち、中心軸20の軸方向に互いに隣り合って配置された2個の回転体22の間(この図2では、左端の回転体22とこの回転体22の右側に隣接して配置された回転体22との間)において、図11に示すように、上ブラケット部材57と下ブラケット部材58が中心軸20を挟着しながらビス等の結合具59で互いに結合され、長軸のビス等による回り止め部材60で中心軸20に対して回り止めされた上ブラケット部材57には、図2及び図10で示されているように、電動モータ51とブレーキ52と減速機53と制御盤54とが一体となって取り付けられている。そして、電動モータ51及びブレーキ52及び減速機53が開閉機50の駆動部を構成しており、制御盤54が開閉機50の制御部となっている。また、開閉機50の電動モータ51の駆動軸51Aにはピニオンギヤ55が取り付けられている。なお、図示されていないが、開閉機50の駆動部は、下限リミットスイッチ及び上限リミットスイッチも備えている。
それぞれの回転体22を連結する連結部材であるバー状部材23にはリングギヤ56が取り付けられ、この取り付けは、図11で示されているように、リングギヤ56に形成した凹部56Aにバー状部材23を嵌合することにより行われ、このリングギヤ65の内周部に形成されている歯56Bにピニオンギヤ55が噛合している。これにより、正逆回転の回転力が、ピニオンギヤ55とリングギヤ56を介して開閉機50から巻取体4へ付与される。
なお、開閉機50に供給される電力は、図示しないリード線で接続された外部電源から供給されるものであるが、開閉機50にバッテリー電源を取り付けるようにしてもよい。
本実施形態では、開閉機50は中心軸20に取り付けられており、この開閉機50の中心軸20の直径方向の最大寸法は、巻取体本体21を構成する3本のバー状部材23で囲まれた円の直径寸法(正確には内径寸法)よりも小さく、これらのバー状部材23よりも中心軸20の直径方向内側に配置されるようになっている。
また、本実施形態では、開閉機50は、中心軸20の軸方向に互いに隣り合って配置されている2個の回転体22の間に配置されており、それぞれの回転体22に設けられている戻しばねは、ねじりコイルばね等よりも中心軸20の軸寸法(軸方向の幅寸法)が小さい渦巻きばねであるぜんまいばね26となっているため、ぜんまいばね26の配置に最低限必要な巻取体4の軸寸法が小さいものとなっている。
このため、本実施形態によると、開閉機50を巻取体4とは別軸的に配置した従来の戻しばねを備えたシャッター装置と比較して、シャッター装置全体の小型化を図ることができるようになる。
なお、以上説明した実施形態によると、ぜんまいばね26は、シャッターカーテン1の巻取体4からの繰り出しによって蓄圧される戻しばね力によるトルクTが次第に小さくなる増加率で増加する領域a,a’(図8及び図9参照)を有するばねとなっており、この領域内a,a’に、巻取体4の一方の回転によるシャッターカーテン1の繰り出しが始まる前の全開時があり、この全開時からのシャッターカーテン1の繰り出しに伴ってトルクTが増加するようになっているため、シャッターカーテン1が全開から下方へ繰り出されるときのシャッターカーテン1の自重トルクの変化と適合したばね特性を有するぜんまいばね26を用いて、シャッター装置を構成することができる。
ぜんまいばね26は、シャッターカーテンの繰り出しの進行に伴って前記トルクTの増加率が一定値又は略一定値となる領域b,b’(図8及び図9参照)を有するばねとなっており、この領域b,b’内にシャッターカーテン1の全閉時があるため、シャッターカーテン1の全開から全閉までの全範囲に亘るシャッターカーテン1の自重トルクの変化と適合したばね特性を有するぜんまいばね26を用いて、シャッター装置を構成することができる。
また、以上説明した実施形態において、図3で説明したように、巻取体4を形成する部材となっているそれぞれの回転体22において、ホイール部材25の端面部25Bは、中心軸20の直径方向へ立ち上がった立上り部となっており、また、カップ状部材24の胴部24Cは、中心軸20の軸方向への幅を有する筒部となっており、それぞれの回転体22は、このような立上り部25Bと筒部24Cとを有する形状、構造となっている。そして、ぜんまいばね26の折り曲げられた外端部26Bは、図5で説明したように、筒部24Cに形成されている被係止部24Eに係止されており、前述したように、この外端部26Bの折り曲げ方向と、巻芯部材27にスリット27Aに係止されているぜんまいばね26の内端部26Aの折り曲げ方向は、互いに巻取体4の円周方向の反対側となっている。これにより、ホイール部材25の環状フランジ部25Aに巻き取られているシャッターカーテン1を繰り出す方向に巻取体4が中心軸20を中心に回転したときに、ぜんまいばね26を、内端部26Aと外端部26Bがスリット27A、被係止部24Eから外れることなく、巻き締めることができる。
ところで、それぞれの回転体22のなかに、立上り部25Bに対する筒部24Cの位置が互いに中心軸20の軸方向の反対側となっている2種類の回転体を設けた場合には、これらの回転体のうちの一つとして、図3で示された回転体22をそのまま用いることができても、他の回転体として、図3で示された回転体22を、中心軸20の軸方向の向きを反転させてそのまま用いることはできない。なぜなら、中心軸20の軸方向の向きを反転させた回転体22については、ぜんまいばね26の外端部26Bを係止するための被係止部24Eの向きが図5の向きとは反対側となってしまい、外端部26Bを被係止部24Eに係止することはできず、ぜんまいばね26を巻き締めることができないからである。
このため、これまで説明した実施形態では、図2で示されているように、それぞれの回転体22を、筒部24Cが立上り部25Bに対して中心軸20の軸方向の同じ側となるように配置している。これにより、全部の回転体22の形状、構造を同じにでき、これらの回転体22を共通化できることにより、巻取体4全体の製造コストの低減や、これらの回転体22を中心軸20に配置する際の作業の容易化を達成することができる。
また、本実施形態によると、それぞれの回転体22に設けるぜんまいばね26は、巻回方向が同じになっているぜんまいばねでよく、したがって、全部のぜんまいばね26を共通化することもできる。
また、これまで説明した実施形態では、ぜんまいばね26の内端部26Aは中心軸20に係止されておらず、この内端部26Aは、それぞれの回転体22ごとに用意された巻芯部材27に係止されているため、1個のぜんまいばね26について、回転体22とぜんまいばね26と巻芯部材27とからなるぜんまいばねユニットを形成することができ、複数個のぜんまいばねユニットを中心軸20に配置するだけでそれぞれのぜんまいばね26が中心軸20に配置されたことになり、また、それぞれのぜんまいばねユニットを前述したバー状部材23で連結することにより、前述した巻取体本体21を形成することができ、これらの作業を容易に行える。
さらに、これまで説明した実施形態では、それぞれの回転体22は一つの部材によって形成されておらず、立上り部25Bを備える第1部材となっているホイール部材25と、筒部24Cを備える第2部材となっているカップ状部材24とを結合することによって形成されているため、被係止部24Eを有する回転体22をプレス加工等によって容易に製造することができる。
また、これまで説明した実施形態における戻しばねはぜんまいばね26であり、ぜんまいばね26は、中心軸20の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部へ渦巻き状に巻回している渦巻きばねであるため、中心軸20の軸方向の幅寸法は小さく、このため、巻取体4の全体の軸長を短くすることができる。また、ぜんまいばね26は、厚さが小さい板材を渦巻き状に巻回したものであるため、ぜんまいばね26を直径方向の寸法が小さい前記空間Sに収納配置することができ、これにより、巻取体4の全体の直径寸法も小さくできる。
そして、ぜんまいばね26は、ねじりコイルばね等と比較すると、軸方向の寸法が小さくなっているばねであるため、図2で示されているように、複数のぜんまいばね26を中心軸20の軸方向に配置しても、この中心軸20の軸長、すなわちシャッターカーテン1を巻き取り、繰り出す巻取体4の軸方向の寸法(軸寸法)を短くすることができる。このため、図1で説明したように、シャッターカーテン1の左右の幅寸法Dがシャッターカーテン1の上下開閉移動長さHよりも小さくなったシャッター装置、言い換えると、シャッターカーテン1の上下開閉移動長さHがシャッターカーテン1の左右の幅寸法Dよりも大きくなったシャッター装置に、これまで説明した実施形態を適用することができる。
図12は、別実施形態に係る戻しばね付き巻取体構造を示す図であり、図2と同様の図である。また、図13は、図12のS13−S13線断面図であり、図14は、図12のS14−S14線断面図である。
図12に示すように、この実施形態に係る駆動装置である開閉機150は、図2に示した開閉機50と同様に、電動モータ151とブレーキ152と減速機153と制御盤154とを含んで構成されるものであるが、図2に示した開閉機50とは異なり、駆動装置の制御部である制御盤154が、駆動装置の駆動部を構成する電動モータ151及びブレーキ152及び減速機153から分離されて中心軸120に取り付けられているものである。
また、図2に示した開閉機50と同様に、それぞれの回転体122を連結する連結部材であるバー状部材23にはリングギヤ156が取り付けられ、この取り付けは、図13で示されているように、リングギヤ156に形成した凹部156Aにバー状部材23を嵌合することにより行われ、このリングギヤ156の内周部に形成されている歯156Bにピニオンギヤ155が噛合している。これにより、正逆回転の回転力が、ピニオンギヤ155とリングギヤ156を介して開閉機150から巻取体本体121と中心軸120とを有して構成されている巻取体104へ付与される。
図13に示されているように、左端の回転体122と、この回転体122の右側に隣接して配置された回転体122との間において、上ブラケット部材157と下ブラケット部材158が中心軸120を挟着しながらビス等の結合具59で互いに結合され、長軸のビス等による回り止め部材160で中心軸120に対して回り止めされた上ブラケット部材157には、開閉機150の駆動部を構成する電動モータ151及びブレーキ152及び減速機153が取り付けられており、この電動モータ151の駆動軸151A(図12参照)にはピニオンギヤ155が取り付けられている。なお、図2で示した実施形態と同様に、開閉機150の駆動部は、図示しない下限リミットスイッチ及び上限リミットスイッチも備えている。
一方、左端の回転体122の右側に隣接して配置された前記回転体122と、この回転体122の右側に隣接して配置された回転体122との間において、上ブラケット部材161と下ブラケット部材162が中心軸120を挟着しながらビス等の結合具59で互いに結合され、長軸のビス等による回り止め部材170で中心軸120に対して回り止めされた上ブラケット部材161には、電動モータ151及びブレーキ152及び減速機153から分離された前記制御盤154が取り付けられている。
この制御盤154と、電動モータ151及びブレーキ152及び減速機153とは、リード線165(図14参照)で接続されており、このリード線165は、図12に示すように、中実となっている中心軸120の軸方向全長に亘って形成された切欠部である凹部120A(図13及び図14参照)に挿通され、収納されるようになっている。このため、本実施形態では、巻取体104の巻取体本体121の内部でリード線165が邪魔にならないようになっている。なお、切欠部である凹部120Aは、中心軸120の軸方向全長に亘って形成されていなくてもよく、中心軸120の軸方向の全長のうちの開閉機150が取り付けられる部分や巻芯部材27が取り付けられる部分など、部分的に形成してもよい。なお、リード線165は、電力供給手段としてのリード線であってもよく、信号伝達手段としてのリード線であってもよく、その両方でもよい。
開閉機150の駆動部である電動モータ151等に供給される電力は、前記凹部120Aに挿通された図示しないリード線で接続された外部電源から供給されるものである。一方、制御盤154には図示しない専用のバッテリー電源が内蔵されており、このバッテリー電源から供給される電力により制御盤154が動作するものであるが、この制御盤154も外部電源から供給される電力によって動作するものであってもよい。なお、電力は外部電源から制御盤154に供給され、この制御盤154にリード線165で接続された電動モータ151へ制御盤154から電力が供給されるようにし、制御盤154が電動モータ151へのこの電力供給を入切することによって電動モータ151の動作を制御するようにしてもよい。まお、電動モータ151以外の駆動部への電力供給も制御盤154を介して行うようにしてもよい。
以上説明したように、本実施形態では、開閉機150の制御盤154が、電動モータ151及びブレーキ152及び減速機153から分離されて中心軸120に取り付けられているため、開閉機150の中心軸120の直径方向の最大寸法をより小さくすることが可能となる。これにより、図13に示すように、リングギヤ156の直径寸法を小さくすることが可能となり、また、図12に示すように、巻取体104の巻取体本体121を構成する回転体122の立上り部125の直径寸法も小さくすることが可能となる。
このため、本実施形態によると、図2に示した実施形態と比較して、シャッター装置全体の小型化をより一層実現することができる。
なお、本実施形態では、制御盤154と電動モータ151及びブレーキ152及び減速機153との間に回転体122が配置されていたが、制御盤154と電動モータ151及びブレーキ152及び減速機153とを2個の回転体122の間に配置するようにしてもよい。なお、制御盤154を回転体122を挟んで分割配置するようにしてもよい。
図15には、図13で示した中心軸120に形成する切欠部の別実施形態が示されている。この図15に示すように、中心軸120に形成する切欠部は、中心軸120の上部を水平又は略水平に切り欠いた切欠部120Bのようなものでもよい。要するに、切欠部は、リード線165が挿通、収納可能な形状、構造を有するものであればよい。
図16には、中空部を有し、この中空部にリード線165が挿通されている中心軸120の断面図が示されている。この図16に示す中心軸120は、図2に示した実施形態に係る中心軸20と同様に、内部に中空部120Dを有するパイプ等の中空部材で形成されており、この中心軸120には、2個の孔120Cが中心軸120の軸方向に離間して設けられている。この実施形態では、リード線165をこれらの2個の孔120Cうちの一方の孔120Cから中心軸120の中空部120Dへ挿通した後、この挿通したリード線165の先端部を他方の孔120Cから摘み出す(引っ張り出す)ことでリード線165は中心軸120の中空部120Dに収納される。なお、この実施形態では、リード線165が開閉機の駆動部及び/又は制御部から取り外し可能であれば施工上好ましい。
なお、この図16の実施形態において、中心軸120には2個の孔120Cを形成しないで、この中心軸120の軸方向に長い1個の長孔を形成し、この長孔からリード線165を中心軸の中空部120Dに押し込むように収納するようにしてもよい。この場合には、リード線165は開閉機の駆動部及び制御部から取り外し不能であっても施工性が大きく損なわれることはない。
図17には、さらなる別実施形態に係る戻しばね付きの巻取体構造が示されている。この実施形態では、駆動装置は図2で示した開閉機50と同じものであるが、図2の実施形態とは異なり、この開閉機50は中心軸20の両端部のうちの一方の端部(図17では右端部)に取り付けられている。
そして、巻取体204の巻取体本体221を構成する回転体22の個数は2個となっているが、図17に示されているように、これらの回転体22のうちの一方の回転体である開閉機50の近傍に配置されている(言い換えると、開閉機50に中心軸20の軸方向内側に隣接して配置されている)回転体22(図17では右側の回転体22)の筒部24及び巻芯部材27は、他方の回転体である左側の回転体22の筒部24及び巻芯部材27を中心軸20の軸方向の向きに反転させたものとなっている。
なお、この図17において、右側の回転体22の筒部24Cの被係止部24Eの向きは、図示されていないが、左側の回転体22の筒部24Cの被係止部24Eの向きと同じとなっている。このような構造となっている理由は、中心軸20の軸方向の向きを単に反転させた右側の回転体22については、ぜんまいばね26の外端部26Bを係止するための被係止部24Eの向きが、左側の回転体22の被係止部24Eの向きとは反対側となってしまい、外端部26Bを被係止部24Eに係止することはできず、ぜんまいばね26を巻き締めることができないからである。
本実施形態では、中心軸20に取り付けられている開閉機50は、シャッターカーテン1を巻き取り、繰り出す巻取体204の巻取体本体221の軸方向端部から軸方向外側に離間して配置されているため、巻取体204の袖寸法(シャッターカーテン1が巻き取り、繰り出されない部分の寸法)はそれだけ長くなる。言い換えると、巻取体204の軸寸法(シャッターカーテン1が巻き取り、繰り出される部分の寸法)はそれだけ短くなる。
しかし、本実施形態では、2個の回転体22の一方の回転体である右側の回転体22は、左側の回転体22を、中心軸20の軸方向の向きを反転させたものとなっている。このため、本実施形態によると、2個の回転体22の筒部24を立上り部25Bに対して中心軸20の軸方向の同じ側に配置した場合と比較して、巻取体204の軸寸法を回転体22の筒部24の軸方向の幅寸法だけ長くすることができる。
図18には、またさらなる別実施形態に係る戻しばね付きの巻取体構造が示されている。図17の実施形態の変形例となっているこの実施形態では、中心軸20の軸方向両端部のうちの開閉機50が取り付けられている側の端部近傍には、巻取体304の巻取体本体321を構成する回転体22の立上り部25Bと同じ又は略同じ直径寸法を有し、前記複数本のバー状部材23のそれぞれが挿通結合される孔が形成された円板部材325が取り付けられている。
これにより、開閉機50は、右側の回転体22と円板部材325との間に配置されることになり、この実施形態の巻取体304の軸寸法は、図17の巻取体204の軸寸法よりも長くすることができる。言い換えると、この実施形態によると、図17の巻取体204の袖寸法をより短くすることができる。
図19及び図20には、図2で示された実施形態に係る戻しばね付きの巻取体構造の変形例が示されている。図19は、この変形例に係る巻取体4’の正面図の一部拡大図であり、図2と同様の図である。また、図20は、図19のS20−S20線断面図である。
図19に示すように、この変形例においても、図2の実施形態と同様に、巻取体4’の巻取体本体21’を構成する2個の回転体22’の間において、図20に示すように、上ブラケット部材57’と下ブラケット部材58’が中心軸20を挟着しながらビス等の結合具59で互いに結合され、長軸のビス等による回り止め部材60で中心軸20に対して回り止めされた上ブラケット部材57には、電動モータ51’とブレーキ52’と減速機53’と制御盤54’とが一体となって取り付けられている。そして、電動モータ51’及びブレーキ52’及び減速機53’が開閉機50’の駆動部を構成しており、制御盤54’が開閉機50’の制御部となっている。また、開閉機50’の電動モータ51’の駆動軸51A’にはピニオンギヤ55’が取り付けられている。それぞれの回転体22’を連結するバー状部材23にはリングギヤ56’が取り付けられており、このリングギヤ56’の内周部に形成されている歯56B’にピニオンギヤ55’が噛合している。
この変形例では、中心軸20に取り付けられている開閉機50’の中心軸20の直径方向の最大寸法は、回転体22’を構成するカップ状部材24に収納配置されているぜんまいばね26の直径寸法よりも小さくなっている。このため、図19に示すように、リングギア56’並びにホイール部材25’の直径寸法も(図10と比較して)小さくなっており、図20に示すように、カップ状部材24の膨出部24Fは、3本のバー状部材23のうちの1本に接した状態となっている。
このため、本変形例によると、巻取体の直径寸法を開閉機がない場合と同様の最小サイズまで小型化することができるようになり、図2の実施形態と比較して、シャッター装置全体のより一層の小型化を図ることができるようになる。