戻しばねとして用いられるねじりコイルばねは、線材をコイル成形加工等した後に焼入れ処理することによって得られ、この焼入れ処理時に変形するため、ねじりコイルばねを所定の寸法、形状どおりに形成することは困難であり、両端部がコイル部から半径方向へ延出していると、巻取軸の回転部と非回転部とに連結されるこれらの延出端部も所定の寸法精度や形状精度で形成することは難しい。そして、これらの端部が所定の寸法精度、形状精度で仕上げられていないときには、ねじりコイルばねを巻取軸に配置するために、これらの両端部を巻取軸の回転部と非回転部とに連結しようとしたときに、この連結作業に多くの手間と時間がかかることになる。
また、巻取軸の回転部と非回転部とに連結されるそれぞれの端部がねじりコイルばねのコイル部から半径方向へ延出していると、前述した戻しばね力を蓄圧するためにねじりコイルばねが巻き締められたときに、これらの端部では巻き締め力がコイル部から半径方向へ作用することになり、このため、ねじりコイルばねのコイル部に半径方向への予定外の大きな変形が生ずるおそれがあり、本来の戻しばね力を蓄圧できないおそれが生ずる。
本発明の目的は、開閉体を巻き取り、繰り出す巻取構造体の戻しばねとしてねじりコイルばねを用いる場合に、焼入れ処理を経て生産されるこのねじりコイルばねを所定の寸法精度、形状精度で形成でき、また、このねじりコイルばねを予定外の大きな変形が生ずることなく巻き締めることができるようになる開閉体用巻取構造体の戻しばね構造を提供するところにある。
本発明に係る開閉体用巻取構造体の戻しばね構造は、開閉体を巻き取り、繰り出すために正逆回転可能となった回転部、及び前記巻き取り、繰り出しのための前記正逆回転時における前記回転部に対して回転しない非回転部を有している巻取構造体と、この巻取構造体と同軸的又は略同軸的に配置されているとともに、前記回転部と前記非回転部とに両端部が連結され、前記正逆回転のうちの一方の回転時に戻しばね力が蓄圧され、他方の回転時にこの戻しばね力が利用されるねじりコイルばねによる戻しばねと、を含んで構成される開閉体用巻取構造体の戻しばね構造において、前記戻しばねの前記両端部のうちの少なくとも一方の端部は、この一方の端部と対応する前記回転部と前記非回転部とのうちの一方に、前記戻しばねのコイル部の中心部から同じ又は略同じ半径位置において連結されていることを特徴とするものである。
この開閉体用巻取構造体の戻しばね構造では、戻しばねの両端部のうちの少なくとも一方の端部は、この一方の端部と対応する巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの一方に、戻しばねのコイル部の中心部から同じ又は略同じ半径位置において連結されており、このコイル部から半径方向へ延出していないため、戻しばねであるねじりコイルばねを焼入れ処理を経て製造しても、前記一方の端部についての寸法精度、形状精度を確保して戻しばねとして用いられるねじりコイルばねを生産できる。また、この一方の端部では、戻しばねが巻き締められて戻しばね力が蓄圧されるときに、コイル部から半径方向へ作用する巻き締め力が生じず、このため、戻しばねを、コイル部に半径方向への予定外の大きな変形が発生するのをなくして巻き締めることができる。
このように戻しばねのコイル部の中心部から同じ又は略同じ半径位置で巻取構造体を構成する部分と連結される戻しばねの端部は、戻しばねの一方の端部だけでもよく、両方の端部でもよい。戻しばねのそれぞれの端部をコイル部の中心部から同じ又は略同じ半径位置で巻取構造体の回転部と非回転部とに連結するようにすると、上述した戻しばねの端部についての寸法精度、形状精度の確保と、巻き締め時におけるコイル部での半径方向への大きな変形の発生防止とを一層有効に達成することができる。
なお、上記巻取構造体は、少なくとも巻取軸を含んで構成されたものであればよく、巻取軸のみで構成されたものでもよく、巻取軸と他の部材、例えば、この巻取軸を支持する支持部材とを含んで構成されたものでもよい。巻取構造体が巻取軸とこの巻取軸を支持する支持部材とを含んで構成される場合には、支持部材は、全体又は一部が上記回転部となっている巻取軸を回転せずに支持する部材となるため、この支持部材は、上記巻取構造体における上記非回転部を構成する部材となる。
また、巻取構造体に配置される戻しばねは、開閉体を巻き取り、繰り出す上記回転部から軸方向に離して配置してもよく、この回転部と軸方向に一部又は全部を重複させて配置してもよい。
後者の場合であって、戻しばねの軸方向全体が回転部の内部に配置される場合には、回転部は戻しばねの軸方向全体の外周側に配置された外周部を有することになり、この外周部において開閉体の巻き取り、繰り出しを行うことになる。このように回転部に戻しばねの軸方向全体の外周側に配置された外周部が設けられていても、本発明では、戻しばねの両端部のうちの少なくとも一方の端部は、この一方の端部と対応する巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの一方に、戻しばねのコイル部の中心部から同じ又は略同じ半径位置において連結され、戻しばねの少なくともこの一方の端部の側では、戻しばねのコイル部に半径方向への予定外の大きな変形が生ずるのを防止できるため、半径方向へ大きく変形したコイル部が上記外周部に当接してしまい、この当接で異音などが発生するという事態を防止することができる。
また、戻しばねのコイル部に予定外の大きな変形が生ずるのを防止できるため、上記外周部の位置をできるだけ戻しばねに近づけることも可能となり、これにより、巻取構造体の全体外径寸法を小さくでき、巻取構造体を有している装置の全体を小型化することも可能となる。
なお、回転部における戻しばねの軸方向全体の外周側に配置される上記外周部は、パイプ状部材で形成されるように、戻しばねの軸方向全体を遮蔽状態で覆うものでもよく、骨組み部材で形成されるように、戻しばねの軸方向全体をスケルトン状態で覆うものでもよい。
戻しばねの前記一方の端部を巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの一方に連結するための連結構造は任意である。その一例は、戻しばねの前記一方の端部を、戻しばねのコイル部から円周方向へ向きが反転したU字状又は略U字状のフック状端部とし、このフック状端部を巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの前記一方に引っ掛けることにより、この一方に戻しばねの前記一方の端部を連結することである。また、他の例は、戻しばねの前記一方の端部に円環状部又は略円環状部を設け、この部分に挿入したビス等の結合具により、巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの前記一方に戻しばねの前記一方の端部を連結することである。
前者によると、戻しばねの前記一方の端部であるフック状端部を巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの前記一方に引っ掛けるだけにより、この一方に戻しばねの前記一方の端部を連結することができるため、この連結作業を容易に行えることになる。
また、前者のように、戻しばねの前記一方の端部を戻しばねのコイル部から円周方向へ向きが反転したU字状又は略U字状のフック状端部とし、このフック状端部を巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの一方に引っ掛けるようにした場合において、その引っ掛け構造は、任意な形状、構成等とすることができる。その一例は、戻しばねのコイル部よりも軸方向外側にある巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの前記一方の部分に、フック状端部を引っ掛けるための引っ掛け部を、戻しばねのコイル部の円周方向への長さを有して形成された切除部によって設けることである。また、他の例は、巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの前記一方に、ピンやねじ軸等によって、あるいはこの一方を形成している部材に対する切り欠き加工やプレス加工等によって突起を設け、この突起に戻しばねのフック状端部を引っ掛けることである。
戻しばねのフック状端部を引っ掛けるための引っ掛け部を、戻しばねのコイル部よりも軸方向外側にある巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの前記一方の部分に設けるために、この一方に、戻しばねのコイル部の円周方向への長さを有する切除部を形成する場合には、フック状端部のコイル部とは軸方向反対側の部分を、このコイル部の円周方向へ短く延びる短延出部とし、上記切除部についてのコイル部の円周方向長さをこの短延出部についてのコイル部の円周方向長さよりも長くすることが好ましい。
これによると、短延出部を切除部に容易に挿入することができ、そして、この挿入後、フック状端部をコイル部の円周方向へ移動させることにより、フック状端部を巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの前記一方に設けられている上記引っ掛け部に簡単に引っ掛けることができる。
なお、切除部は、回転部と非回転部とのうちの前記一方を形成している部材の一部を切り欠いた切欠部でもよく、この部材に貫通形成した孔等でもよく、フック状端部を引っ掛けることができるものであれば、任意の形態の切除部でよい。
また、このようにフック状端部を切除部等による引っ掛け部に引っ掛けるようにした場合には、巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの前記一方には、U字状又は略U字状となっているフック状端部の開口部に対するコイル部の円周方向反対側においてビスやピン等でストッパを設け、このストッパとフック状端部との間隔を、引っ掛け部へのフック状端部の引っ掛け侵入距離よりも小さくすることが好ましい。
これによると、フック状端部を引っ掛け部に引っ掛けた後に、巻取構造体の回転部と非回転部とのうちの前記一方に上記ストッパを設けることにより、フック状端部が引っ掛け部から脱出しようとしても、脱出する前にフック状端部がストッパに当接するため、引っ掛け部からのフック状端部の脱出を防止することができる。
また、本発明において、戻しばねのU字状又は略U字状となっているフック状端部の開口部を、戻しばねに戻しばね力を生じさせる巻き締め回転力の方向とは反対側に向かせることが好ましい。
これによると、戻しばねに戻しばね力を付与する巻き締め時において、フック状端部が、このフック状端部が引っ掛けられた箇所から脱落するのを巻き締め力によって防止することができ、しかも、この脱落防止のために特別の手段を講じる必要がないという効果を得られる。
また、本発明において、巻取構造体には、戻しばねの少なくともフック状端部の側における戻しばねのコイル部の端部部分の内部に挿入された中子部を設け、巻取構造体の中心軸よりも外径が大きいこの中子部により、フック状端部の側におけるコイル部の端部部分の半径方向へ変位を阻止するようにすることが好ましい。
前述したように両端部が巻取構造体の回転部と非回転部とに連結される戻しばねは、巻き締められて戻しばね力が蓄圧されると、コイル部の巻数が増加してコイル部を形成しているそれぞれの円環部の間隔が小さくなる又はゼロになるため、巻き締め前に、巻き締めを所定どおり行えるようにするために、コイル部が軸方向に伸ばされた状態となって戻しばねの両端部は巻取構造体の回転部と非回転部とに連結されることになる。これによると、戻しばねのフック状端部の側における戻しばねのコイル部の端部部分が半径方向へ変位してしまうおそれがあるが、上述のように、巻取構造体に、戻しばねの少なくともフック状端部の側における戻しばねのコイル部の端部部分の内部に挿入される中子部を設けておき、巻取構造体の中心軸よりも外径が大きいこの中子部により、フック状端部の側におけるコイル部の端部部分の半径方向への変位を阻止するようにしておくと、コイル部を軸方向に伸ばした状態にして戻しばねの両端部を巻取構造体の回転部と非回転部とに連結しても、コイル部の端部部分の半径方向へ変位を中子部によって阻止でき、これにより、戻しばねを、コイル部を本来の形状又はこれに近い形状に維持して巻き締めることができるため、この巻き締めによって所定どおりの戻しばね力を発生させることができる。
また、本発明において、巻取構造体に、戻しばねのコイル部の外周側に配置された外周部と、コイル部の内部にこのコイル部の全長又は略全長に渡って挿入された内周部とを設ける場合には、外周部とコイル部との間隔よりも内周部とコイル部との間隔を小さくすることが好ましい。
これによると、巻取構造体の正逆回転可能となった回転部が正逆回転の一方への回転を行うことにより、戻しばねが巻き締められて戻しばね力が蓄圧されるときや、この戻しばね力が利用されて回転部が他方への回転を行うときに、戻しばねのコイル部が直径方向へ振れ運動を行っても、このコイル部は先に内周部に当接するため、コイル部が外周部に当接することが防止される。コイル部が外周部に当接した場合には、外周部は内周部よりも巻取構造体及び戻しばねの中心部からの距離が遠いため、戻しばね力に基づくトルクの大きさに大きな影響が生ずるが、上述のように、内周部によってコイル部が外周部に当接することが防止されることにより、このような問題の発生を防止することができる。
なお、上述のように巻取構造体の外周部と戻しばねのコイル部との間隔よりも巻取構造体の内周部と戻しばねのコイル部との間隔が小さくなっていることは、少なくとも開閉体が開閉移動している戻しばねの使用領域において実現されていれば足り、開閉体の閉じ移動開始時(すなわち、開閉体の全開時)又は開き移動開始時(すなわち、開閉体の全閉時)において戻しばねに初期の戻しばね力を付与するようにしている場合には、戻しばね力が付与されていないときの戻しばねについては、巻取構造体の外周部と戻しばねのコイル部との間隔よりも巻取構造体の内周部と戻しばねのコイル部との間隔が大きくなっていてもよく、また、これらの間隔が同じになっていてもよい。
以上説明した本発明は、開閉体を巻き取り、繰り出すために正逆回転可能となった回転部と、開閉体の巻き取り、繰り出しのための正逆回転時における回転部に対して回転しない非回転部とを有している巻取構造体であれば、任意な構造、形式となっている巻取構造体に適用することができる。
すなわち、巻取構造体は、回転部と非回転部とが軸方向に並んで配置されたものでよく、半径方向に内外関係で一部同士や全部同士等が軸方向に重複配置されたものでもよく、中心に配置された中心軸と、この中心軸の外周に、開閉体を巻き取り、繰り出すために配置された回転部とを含んで構成されたものでもよい。第3番目の例における巻取構造体の中心軸は、回転部の一部となっているものでもよく、回転部の一部となっていないものでもよく、回転部と共に回転する軸(言い換えると、上記回転部の一部を構成する軸)と、回転部と共に回転しない軸(言い換えると、上記非回転部の一部を構成する軸)とを含んで形成されたものでもよい。このように巻取構造体の中心軸が、回転部の一部を構成する軸と、非回転部の一部を構成する軸とを含んで形成されている場合には、これらの軸は軸方向に並んで配置されていてもよく、半径方向に内外関係で一部同士や全部同士等が重複配置されていてもよい。
また、上記第3番目の例における巻取構造体の回転部は、中心軸が中心に挿入された複数個のホイール部材と、中心軸の軸方向に離間して配置されたこれらのホイール部材同士を連結するバー状等の連結部材とを含んで形成されたものでもよく、あるいは、これらのホイール部材と、これらのホイール部材の外周に嵌合固定されてホイール部材同士を結合するパイプ状等の巻取構造体本体とを含んで形成されたもの等でもよい。巻取構造体がこのようなバー状等の連結部材やパイプ状の巻取構造体本体を有している場合には、これらのバー状等の連結部材やパイプ状等の巻取構造体本体が、前述した回転部における開閉体の巻き取り、繰り出しを行う前記外周部に相当するものとなる。
また、本発明は、開閉体の開閉移動が、巻取構造体の回転部の正逆回転による巻き取り、繰り出しによって行われる任意な開閉装置に適用でき、この開閉装置は、開閉体がシャッターカーテンとなっているシャッター装置でもよく、ロールブランド装置でもよく、オーニング装置等でもよく、防煙垂れ幕装置等でもよい。
また、開閉装置がシャッター装置である場合には、シャッターカーテンは、全体又は略全体がスラットで形成されたものでもよく、パネルで形成されたものでもよく、シートで形成されたものでもよく、リンクで連結されたパイプで形成されたものでもよく、ネットで形成されたものでもよく、さらには、種類が異なる複数の部材の複合、例えば、スラットとシートのように、複数種類のカーテン構成材の複合で形成されたもの等でもよい。
また、本発明をシャッター装置に適用する場合には、そのシャッター装置は、出入口や窓等の開口部をシャッターカーテンで開閉するためのものでもよく、防災シャッター装置のように、全閉となったシャッターカーテンで建物や地下街、船舶等の構造物内に防災区画等の区域を区画形成するためのものでもよい。また、シャッター装置は、ガレージ用シャッター装置でもよく、トラック等の車両の荷台に設置されるシャッター装置等でもよい。さらに、防災シャッター装置には、エレベータ用シャッター装置も含まれる。
さらに、本発明は、開閉体の開閉移動が電動モータ等の駆動力によって行われる自動式開閉装置や、手操作や重力で行われる手動式又は重力式開閉装置にも適用でき、また、本発明は、開閉体の閉じ移動と開き移動とのうちの一方が手操作又は重力で行われ、他方が電動モータ等の駆動力によって行われる開閉装置にも適用でき、これらの開閉装置において、戻しばねに戻しばね力が蓄圧される開閉体の移動は、閉じ移動でもよく、開き移動でもよい。
また、開閉体の開閉方向は任意であり、この開閉方向が、例えば、上下方向である場合には、開閉体の閉じ移動方向が下方向で、開き移動が上方向でもよく、あるいは、閉じ移動方向が上方向で、開き移動が下方向でもよい。
本発明によると、開閉体を巻き取り、繰り出す巻取構造体の戻しばねとしてねじりコイルばねを用いる場合に、焼入れ処理を経て生産されるこのねじりコイルばねを所定の寸法精度、形状精度で形成でき、また、このねじりコイルばねを予定外の大きな変形が生ずることなく巻き締めることができるようになるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る開閉体用巻取構造体の戻しばね構造が適用されている減速機付きシャッター装置の全体を示す正面図である。図2は、図1のS2−S2線断面図であり、図3は、シャッター装置の縦断面図である。初めにこのシャッター装置の全体を説明する。
このシャッター装置はエレベータ用の防災シャッター装置であり、このエレベータ用の防災シャッター装置は、図2及び図3で示されているとおり、単なる通路を含むエレベータホール1から見て、エレベータ扉2の手前側において、開閉体である防災用シャッターカーテン20が上下に開閉移動するものとなっており、このシャッターカーテン20がエレベータホール1とエレベータ扉2との間で全閉となることにより、エレベータホール1とエレベータ扉2との間で遮断された防災区画が形成される。
図2及び図3で示されている建物内の縦穴3で昇降するエレベータの昇降箱4は、エレベータ用の防災シャッター装置が設置されている建物の各階で停止し、図3で示されているとおり、エレベータホール1から見てエレベータ扉2の手前上部には、昇降箱4の現在位置等を表示するインジケータ5が、各階の間の床スラブ6から垂下した建物躯体である下がり壁7の内部に組み込み配置されている。左右2個のエレベータ扉2は、図3で示された上下のガイド部材8,9で案内されて左右に開閉移動自在となっているため、昇降箱4が停止した階のエレベータ扉2は、図示しない駆動装置の駆動力で開閉移動する。
図2で示すように、エレベータ扉2よりエレベータホール1側の左右両側の建物躯体となっている側壁10には、シャッターカーテン20の左右方向である幅方向の両端部がスライド自在に挿入されたガイドレール21が取り付けられ、ガイド部材となって上下に延びているこれらのガイドレール21でシャッターカーテン20の開閉移動が案内される。ガイドレール21の内部において、シャッターカーテン20には抜け止め部材22が取り付けられ、これらの抜け止め部材22で抜け止めされながらシャッターカーテン20は開閉移動する。
図3で示されているように、前記下がり壁7にはシャッターケース11が取り付けられ、図1で示されているように、左右方向に長いこのシャッターケース11の内部には、正逆回転することによってシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出す巻取軸24が水平に収納配置されている。この巻取軸24は、本実施形態における巻取構造体となっており、シャッターカーテン20の上端が結合されているこの巻取軸24は、シャッターケース11の内部に配置されていて下がり壁7に取り付けられている左右の第1及び第2支持部材25,26によって正逆回転自在に支持されている。図3で示されているように、シャッターケース11の下端部は、シャッターカーテン20が上下に挿通された左右に長いスリット12が形成されたまぐさ13となっており、このまぐさ13のスリット12を通ってシャッターカーテン20は、巻取軸24の繰り出しによる下降である閉じ移動及び巻取軸24の巻き取りによる上昇である開き移動を行う。
なお、図2で示されているそれぞれのガイドレール21におけるシャッターカーテン20の幅方向の端部が挿入された開口部に、シャッターカーテン20と接触する遮煙部材を設け、この遮煙部材により、火災の発生で生じた煙が全閉位置に達しているシャッターカーテンと上記開口部との間の隙間及びガイドレール21の内部を通過してシャッターカーテンの反対側に達するのを防止するようにしてもよい。
また、まぐさ13のスリット12にも上述した遮煙部材と同様な遮煙部材を設け、この遮煙部材により、火災の発生で生じた煙がシャッターケース11の内部を通過してシャッターカーテンの反対側に達することを防止するようにしてもよい。
図1及び図3で示されているように、シャッターケース11の内部には、シャッターカーテン20が全開位置に達しているときに、シャッターカーテン20の下端部又はこの下端部近くに取り付けられた逆L字状の被係止部材28を係止するための係止装置29が配置されている。この係止装置29は、上片部30Aと下片部30Bとを有する二股状となっている係止部材30を有し、この係止部材30は上下に回動自在である。通常時の係止部材30は、係止装置29に組み込まれているストップ手段のストップ機能により、上片部30Aと下片部30Bが水平姿勢となった状態で下向き回動が阻止されており、このときには、下片部30Bの上面に、全開位置に達しているシャッターカーテン20に設けられている逆L字状の被係止部材28の上端水平突起部28Aが係止されているため、全開位置のシャッターカーテン20は、係止装置29の係止作用によってこの全開位置に維持される。
エレベータ用の防災シャッター装置がそれぞれの階に設置されている建物において火災が発生すると、この火災を検知したセンサからの信号が入力した制御装置により、又は火災の発生を知った人が図示しない操作部材を操作することにより、それぞれの階のエレベータ用の防災シャッター装置における係止装置29の上記ストップ手段のストップ機能が解除されるため、シャッターカーテン20の自重と、上記ストップ機構を作動させるばね等の弾性部材の弾性力とにより、係止部材30が下向きに回動し、この下向き回動で被係止部材28の上端水平突起28Aが係止部材30の下片部30Bから離脱するため、シャッターカーテン20は下方へ閉じ移動し、この閉じ移動は、シャッターカーテン20の自重による巻取軸24の正回転によってなされ、シャッターカーテン20は巻取軸24から繰り出されて全閉位置に達する。
シャッターカーテン20は、図1及び図3で示されているとおり、閉じ側先端部材となっている座板31と、この座板31が下端部に取り付けられ、シャッターカーテン20の大部分の面積を形成しているカーテン本体32とを有し、カーテン本体32は、耐火性及び遮煙性を有するシートに耐火性塗料を塗布及び/又は含浸させて形成されている。上記被係止部材28は座板31に取り付けられている。
図1で示されているように、シャッターカーテン20のエレベータ扉2側の面には、シャッターカーテン20を上方へ開き移動させる際に、手を掛けてシャッターカーテン20を持ち上げるための手掛け部材34が設けられている。この手掛け部材34は、火災発生時にエレベータの昇降箱4の中にいた避難者が、エレベータ用の防災シャッター装置が設置されている階に停止した昇降箱4から出てきたなどのときに、その防災シャッター装置の全閉位置に達しているシャッターカーテン20を持ち上げてその下を通過できるようにするのものである。手掛け部材34は、カーテン本体32に水平に配置されていて、シャッターカーテン20の補強部材となっている棒状部材35の一部によって形成されている。
この棒状部材35を具体的に説明すると、カーテン本体32は、上下の重なり部分を有して上下に配置された複数のシート32Aで形成され、これらのシート32Aのうち、最下段のシート32Aには、前記エレベータ扉2と対面する側において、上下寸法が小さくて左右寸法が大きい細幅の袋部用シート37が取り付けられ、シート32Aとこの袋部用シート37との間は袋部となっており、この袋部の内部に、両端が左右のガイドレール21の内部に挿入された棒状部材35が挿入されている。また、袋部用シート37には複数の切れ目36が形成され、これらの切れ目36から露出した棒状部材35の一部が、上記手掛け部材34となっている。このような手掛け部材34は、本実施形態では、カーテン本体32に上下複数段、同じ高さ位置に左右複数個設けられ、図示例では、上下2段、左右2個設けられている。
なお、カーテン本体32におけるエレベータ扉2と対面する側の面に手掛け部材34を設けるための構造は、以上の構造に限定されず、例えば、カーテン本体32を形成する上下のシート32Aの重なり部分を袋部とし、この袋部に棒状部材35を挿入し、この袋部に複数形成した切れ目から露出させた棒状部材35の一部を手掛け部材34としてもよい。そして、このような構造による手掛け部材34と、図1で示した構造による手掛け部材34とをカーテン本体32に併設してもよい。
昇降箱4から出てきた前記避難者が、全閉位置に達しているシャッターカーテン20を持ち上げてその下を通過するときには、先ず、上下2段設けられている手掛け部材34のうちの上段の手掛け部材34に手を掛けてシャッターカーテン20を持ち上げ、次に下段の手掛け部材34に手を掛けてシャッターカーテン20をさらに持ち上げる。
巻取軸24の内部には、後述するように、シャッターカーテン20が閉じ移動する巻取軸24の正回転時に戻しばね力が蓄圧される戻しばねが配置されており、シャッターカーテン20は、この戻しばね力を蓄圧しながら全閉位置に達する。
前述したように、自重で閉じ移動する自重閉鎖式となっているシャッターカーテン20が全閉位置に達した後、このシャッターカーテン20を手掛け部材34で持ち上げると、巻取軸24は、戻しばねの蓄圧された戻しばね力で逆回転してシャッターカーテン20を巻き取ることになり、このため、手掛け部材34によるシャッターカーテン20の持ち上げは戻しばねの戻しばね力で補助されることになり、このため、上記避難者は、小さい力によってシャッターカーテン20を軽く持ち上げてその下を通過することができる。
なお、避難訓練等のためにシャッターカーテン20を全閉とした後、シャッターカーテン20を全開位置に戻すときには、シャッターカーテン20を大きな力で持ち上げて全開位置まで上昇させる。これにより、前述したように係止装置29の下向き回動していた係止部材30の上片部30Aの下面に前記被係止部材28の上端水平突起28Aが当接し、この当接によって係止部材30は上向きに回動して水平姿勢に戻るとともに、下片部30Bの上面に被係止部材28の上端水平突起28Aが係止される。このときには、係止装置29の前記ストップ手段のストップ機能は回復しているため、水平姿勢に戻った係止部材30によってシャッターカーテン20は全開位置で停止し、これにより、全部がシャッターカーテン20の閉じ移動開始前の状態に戻る。
また、本実施形態では、前記手掛け部材34はシャッターカーテン20のエレベータ扉2側の面に設けられていたが、このような手掛け部材又はこれとは形状、構造が異なる手掛け部材を、シャッターカーテン20のエレベータホール1側の面に設けてもよく、また、シャッターカーテン20のエレベータ扉2側の面とエレベータホール1側の面との両方に設けてもよい。
図4は、巻取軸24及びこの巻取軸24に連結されている減速機70の内部構造を示す平断面図である。巻取軸24は、図1で示された左右の第1及び第2支持部材25と26のうち、第1支持部材25側の第1中心軸41と、第2支持部材26側の第2中心軸42と、第1中心軸41が中心に挿通され、この第1中心軸41に対して軸受け43,44で回転自在となっている円板状の第1及び第2ホイール部材45,46と、第2中心軸42が中心に挿通され、この第2中心軸42に溶接等で結合されている円板状の第3及び第4ホイール部材47,48と、第1支持部材25側から第2支持部材26側へ軸方向に離れて配置されているこれらの第1〜第4ホイール部材45〜48のうち、第1及び第4ホイール部材45,48の外周に溶接等で嵌合固定され、第2及び第3ホイール部材46,47は単に内部に嵌入されているパイプ状の巻取軸本体49とを含んで形成されている。なお、第2及び第3ホイール部材46,47も巻取軸本体49に溶接等で固定してもよい。第1中心軸41は軸受け50で第1支持部材25に支持され、第2中心軸は軸受け51で第2支持部材26に支持されており、巻取軸24によるシャッターカーテン20の巻き取り、繰り出しは、巻取軸本体49において行われる。
また、第1中心軸41には、第1ホイール部材45と第2ホイール部材46との間において、それぞれのホイール部材45〜48と同様に円板状に形成されたばね連結部材52が配置され、このばね連結部材52は第1中心軸41に溶接等で結合されているとともに、巻取軸本体49の内部に、この巻取軸本体49の内周面との間に隙間を明けて挿入できるように、それぞれのホイール部材45〜48よりも小径に形成されている。
第1ホイール部材45とばね連結部材52との間には、第1中心軸41の外周に嵌合されたねじりコイルばねによる戻しばね53が配置され、巻取軸24と同軸的に配置されているこの戻しばね53における第2支持部材26側の一方のフック状端部53Aは、ばね連結部材52に形成された切除部である切欠部52Aの周辺部に連結係止され、第1支持部材25側の他方のフック状端部53Bは、第1ホイール部材45に形成された切除部である切欠部45Aの周辺部に連結係止されている。
また、軸受け50を介して第1支持部材25で支持されている第1中心軸41は、第1支持部材25に対する回転が回転止め部材60によって止められている。図5には、この回転止め部材60による回転止め構造の分解斜視図が示されている。第1支持部材25から突出している第1中心軸41の端部には、互いに反対側の2箇所41A,41Bの面取り加工により、第1中心軸41の直径よりも厚さが小さくなったフラット状部41Cが形成され、このフラット状部41Cが内部に挿入係合される溝61が回転止め部材60に形成されている。板金の折り曲げ加工品であるこの回転止め部材60は、両端のフランジ部60A,60Bと、これらのフランジ部60A,60Bの間で隆起した隆起部60Cとを有し、この隆起部60Cに溝61が設けられている。
それぞれのフランジ部60A,60Bには、第1支持部材25側へ直角に突出した突片60Dが設けられており、溝61の内部に第1中心軸41のフラット状部41Cを挿入係合しながら、これらの突片60Dを第1支持部材25に形成された細長開口部62に挿入し、上下2本のボルト63を回転止め部材60のフランジ部60A,60Bの孔64に挿入するとともに、第1支持部材25の孔65にも挿入し、これらのボルト63を第1支持部材25に溶接等で固定されたナット66に螺入して締め付けることにより、回転止め部材60は第1支持部材25に取り付けられる。そして、この回転止め部材60の溝61にフラット状部41Cが挿入係合された第1中心軸41は、第1支持部材25及び軸受け50に対する回転が止められることになる。
このように第1中心軸41の回転が止められると、第1中心軸41に溶接等で結合されている図4のばね連結部材52の回転も止められることになる。これに対して第1中心軸41上に図4で示した軸受け43,44で配置されている第1及び第2ホイール部材45,46は回転自在となり、第1ホイール部材45に溶接等で結合されている巻取軸本体49も回転自在となり、さらに、巻取軸本体49に溶接等で結合されている第4ホイール部材48及びこの第4ホイール部材48に溶接等で結合されている第2中心軸42も回転自在となる。この第2中心軸42の回転は、軸受け部材51を介して第2支持部材26によって支持される。
以上のことから明らかなとおり、巻取軸24は、第1〜第4ホイール部材45〜48と巻取軸本体49と第2中心軸42等で構成された回転部Aと、第1中心軸41とばね連結部材52等で構成された非回転部Bとを有している。そして、シャッターカーテン20が巻き取られ、繰り出される巻取軸本体49は、回転部Aの外周部を形成しており、この外周部は、戻しばね53の軸方向全体の外側に配置されている。
前述したとおりにシャッターカーテン20が自重によって閉じ移動することは、以上のように回転自在となっている回転部Aの巻取軸本体49が正回転してシャッターカーテン20を繰り出すことにより行われ、巻取軸本体49が正回転すると、巻取軸本体49に結合されている第1ホイール部材45も正回転するが、第1中心軸41と共に非回転部Bを形成しているばね連結部材52は回転しないため、これらの第1ホイール部材45とばね連結部材52とに両端のフック状端部53A,53Bが連結されている前記戻しばね53には、シャッターカーテン20の繰り出しに伴い、巻取軸本体49の正回転による巻き締めによって戻しばね力が蓄圧される。
そして、全閉となったシャッターカーテン20を前記手掛け部材34で持ち上げると、巻取軸本体49は、戻しばね53の蓄圧された戻しばね力で逆回転し、この逆回転により、シャッターカーテン20は持ち上げられた分だけ巻取軸本体49に巻き取られることになり、戻しばね53の戻しばね力によって巻取軸本体49の逆回転が付勢されるため、手掛け部材34によるシャッターカーテン20の持ち上げを軽く行える。
図4で示されているとおり、第2支持部材26には、前記減速機70が取り付けられている。本実施形態では、この取り付けは、ブラケット71に減速機70を取り付け、このブラケット71の前面折曲部71Aと第2支持部材26の前面折曲部26Aとをボルト・ナットによる結合具72で結合することによって行われている。
減速機70は、巻取軸24の第2中心軸42の回転が遊動許容カップリング手段100を介して伝達される入力軸80と、この入力軸80の回転が歯車81,82で伝達されるアイドル軸83と、アイドル軸83の回転が歯車84,85で伝達される被動軸86と、被動軸86と一体に回転するロータリーベース部材87とを有し、このロータリーベース部材87には、2個のピン88を間に挟んで互いに向かい合っているとともに、これらのピン88で案内されて内外径方向に移動自在となった一対のブレーキシュー90が配置され、通常時のこれらのブレーキシュー90は、ばね89で内径方向の移動限位置に達している。巻取軸24の第2中心軸42からの回転力によってロータリーベース部材87が回転すると、一対のブレーキシュー90は遠心力によりばね89に抗して外径方向へ移動し、これらのブレーキシュー90がブレーキドラム91に圧接することにより、巻取軸24の第2中心軸42の回転、言い換えると、巻取軸24の巻取軸本体49等によって形成されている前記回転部Aの回転が減速される。
このため、本実施形態に係る減速機70は、ブレーキシュー90が遠心力でブレーキドラム91に圧接することによって減速力を生じさせる遠心力式減速機となっている。なお、減速機はこの形式のものに限定されず、摩擦板式等の任意な形式のものでよい。
また、この減速機70は、ロータリーベース部材87とブレーキシュー90とブレーキドラム91の部分によって形成されている減速手段70Aと、シャッターカーテン20が巻取軸24から繰り出されるときの第2中心軸42の正回転を減速手段70Aに伝達し、シャッターカーテン20を巻取軸24が巻き取るときの第2中心軸42の逆回転を減速手段70Aに伝達しないクラッチ手段70Bとを有するものとなっている。逆回転時の第2中心軸42と減速手段70Aとの間を切断するこのクラッチ手段70Bは、入力軸80と、この入力軸80の外周に嵌合された歯車81との間において、円周方向に複数配置されたニードル92を含んで形成されており、入力軸80が挿入されている歯車81の中心孔には、それぞれのニードル92が個別に収納された複数の収納空間が円周方向に形成されており、これらの収納空間は、第2中心軸42の正回転方向へ入力軸80との間隔が次第に小さくなった傾斜空間となっている。
このため、第2中心軸42の正回転が遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80に伝達されると、この回転は、正回転方向と同じ方向へ移動するニードル92を介して歯車81に伝達されることになり、言い換えると、このときにはクラッチ手段70Bの接続が行われ、これにより、第2中心軸42の正回転は減速手段70Aに伝達されてこの減速手段70Aで減速される。一方、第2中心軸42が逆回転し、この回転が遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80に伝達された場合には、ニードル92は正回転方向とは反対方向へ移動するため、第2中心軸42の逆回転は減速手段70Aに伝達されない。言い換えると、このときにはクラッチ手段70Bの切断が行われ、第2中心軸42は、前述した戻しばね53の蓄圧された戻しばね力で自由に逆回転する。
このように、本実施形態に係るクラッチ手段70Bは、ニードル式のクラッチ手段となっている。なお、クラッチ手段はこの形式のものに限定されず、摩擦板式等の任意な形式のものでよい。
そして、本実施形態に係る減速機70は、前記減速手段70Aとクラッチ手段70Bとが同じハウジング93の内部に組み込まれた一体型となっており、第2中心軸42に遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80を連結すると、減速手段70Aがクラッチ手段70Bを介して第2中心軸42に接続されるようになっている。このため、本実施形態では、入力軸80は、第2中心軸42の回転をクラッチ手段70Bに入力させるための軸にもなっている。
また、第2中心軸42の正回転時には、言い換えると、シャッターカーテン20を繰り出す巻取軸24の回転部Aの正回転時には、クラッチ手段70Bが接続されて減速手段70Aが作動するため、巻取軸24の正回転は減速されることになり、そして、このシャッターカーテン20の繰り出し時には、戻しばね53が蓄圧されるため、この戻しばね53の蓄圧分だけシャッターカーテン20の繰り出し速度は一層低下し、前述したように、火災発生時に全開位置から全閉位置へ達するシャッターカーテン20はこのように制動された速度で下降するため、シャッターカーテン20の下を避難者が安全に通過することができる。そして、シャッターカーテン20が全閉となった後に、エレベータの昇降箱4から出てきた避難者は、前述したように、前記手掛け部材34によってシャッターカーテン20を持ち上げることができ、この持ち上げ時には、巻取軸24の回転部Aは戻しばね53の蓄圧された戻しばね力によって逆回転し、この逆回転はクラッチ手段70Bによって減速手段70Aに伝達されないため、シャッターカーテン20の持ち上げは、シャッターカーテン20が逆回転する回転部Aに巻き取られることにより、小さい手操作力によって迅速に行うことができる。
図6は、巻取軸24の第2中心軸42と、この第2中心軸42に対して同軸的に配置されている減速機70の入力軸80とを連結している遊動許容カップリング手段100の分解斜視図を示し、図7は、これらの第2中心軸42と入力軸80とが遊動許容カップリング手段100で連結されているときを示す平面図である。
巻取軸24の減速機70側の端部には、言い換えると、第2中心軸42の入力軸80側の端部には、遊動許容カップリング手段100を構成する部材であるカップリング部材101が結合されている。このカップリング部材101には、入力軸80側の端面101Aで開口した穴102が形成されているとともに、この穴102と直交して穴102を貫通する切り込み部103が端面101Aから軸方向への切り込み深さをもって形成され、この切り込み部103は、第2中心軸42の直径方向に貫通した溝形状となっている。また、入力軸80の第2中心軸42側の端部近くには、入力軸80の軸方向と直交する方向へ突出する突起104が設けられ、この突起104は、入力軸80を直径方向へ貫通したピンによって形成されているため、突起104は入力軸80の円周方向の互いに反対側の位置に設けられている。
カップリング部材101の穴102には入力軸80の端部が挿入され、カップリング部材101の切り込み部103には入力軸80の突起104が挿入される。穴102の直径D1は入力軸80の直径D2よりも大きく、また、切り込み部103の幅寸法W1は突起104の幅寸法(直径)W2よりも大きい。このため、穴102への入力軸80の端部の挿入及び切り込み部103への突起104の挿入は、遊合状態で行われる。
本実施形態では、穴102と切り込み部103とにより、巻取軸24の第2中心軸42における凹部105が形成され、穴102に挿入される入力軸80の端部と突起104とにより、減速機70の入力軸80における凸部106が形成されている。凹部105に凸部106が上述のように遊合状態で挿入され、第2中心軸42が回転すると、凹部105と凸部106との回転方向の当接により、具体的には、切り込み部103と突起104との回転方向の当接により、第2中心軸42の回転が入力軸80に伝達される。
また、第2中心軸42が、この第2中心軸42に対して同軸的に配置されている入力軸80に対して、上記直径D1とD2との差や上記幅寸法W1とW2の差よりも小さい量だけ直径方向等へ遊動しても、第2中心軸42の回転は入力軸80に伝達される。すなわち、前記遊動許容カップリング手段100は、第2中心軸42が入力軸80に対して直径方向等へ遊動するのを許容し、第2中心軸42の回転を入力軸80に伝達できるものとなっている。
巻取軸24の回転部Aがシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出すための正逆回転を行うとき、水平となっている巻取軸24には、シャッターカーテン20の重量や巻取軸24自体の重量が作用しているため、また、巻取軸24の回転時に振れ等が生ずることがあるため、巻取軸24は撓み変形しながら回転する。このため、巻取軸24の減速機70側の端部部材となっている第2中心軸42は、巻取軸24がシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出すための回転を行うときに、直径方向等への振れ運動を行いながら回転することになる。
本実施形態では、この第2中心軸42に減速機70の入力軸80が直結されておらず、遊動許容カップリング手段100を介して第2中心軸42と入力軸80とが連結されているため、巻取軸24がシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出すための回転を行うときに、第2中心軸42が直径方向等への振れ運動を行いながら回転しても、この回転は遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80に伝達されることになり、これにより、減速機70における減速手段70A及びクラッチ手段70Bを所定どおり作動させることができる。
また、減速機70は、巻取軸24を支持している前述した第1及び第2支持部材25,26のうちの第2支持部材26にブラケット71を介して取り付けられているため、この第2支持部材26を、巻取軸24と減速機70の両方のための支持部材として利用でき、それだけシャッター装置全体の構造を簡単化できるとともに、第2支持部材26に減速機70を不動状態で取り付けても、上述のように、巻取軸24がシャッターカーテン20の重量のために撓み変形しながら回転して、第2中心軸42が直径方向等へ振れ運動した場合に、この回転を遊動許容カップリング手段100によって減速機70の入力軸80に所定どおり入力させることができる。
また、第1支持部材25と第2支持部材26との間や、第2支持部材26とブラケット71との間等に、これらの部材25,26,71の取付位置の誤差等に基づく芯ずれ等があっても、第2中心軸42の回転を遊動許容カップリング手段100によって減速機70の入力軸80に所定どおり入力させることができる。
さらに、図4で示されているとおり、第2支持部材26に減速機70を取り付けるためのブラケット71には孔71Bが形成されており、遊動許容カップリング手段100はこの孔71Bに挿入配置されているため、それだけ遊動許容カップリング手段100を含む減速機70の配置位置を巻取軸24の側へ近づけることができ、これにより、これらの巻取軸24や減速機70等からなる前記シャッターケース11の内部に収納される機器類の左右方向長さを短縮できる。
ところで、シャッターカーテン20が全開位置に達しているときにおける図4で示した戻しばね53の初期戻しばね力の大きさは、エレベータ用の防災シャッター装置が設置されるその施工現場に応じた適正値となっていることが求められる。このような適正値となった初期戻しばね力を得ることは、巻取軸24の前記回転部Aを構成する部材となっている第2中心軸42や巻取軸本体49の回転を止め、巻取軸24の前記非回転部Bを構成する部材となっている第1中心軸41を回転させ、これによって戻しばね53に対する巻き締め作業を行うことにより実現できる。
このような戻しばね53に対する巻き締め作業を行えるようにするため、巻き締め作業時に第2中心軸42が回転するのを止めるための図8の回転止め部材110が用意されており、また、この回転止め部材110を係合させるための係合部120がカップリング部材101に設けられている。これを具体的に説明すると、図6で示されているように、カップリング部材101には、面取り加工によって円周方向に4つの面101Bが形成されており、互いに反対側となっている2つの面101B同士の間隔はLであり、これら2つの面101Bによって上記係合部120が形成され、この係合部120は、カップリング部材101に2個設けられている。
図8で示した回転止め部材110には、係合部120が挿入係合される溝111が設けられており、板金の折り曲げ加工品であるこの回転止め部材110は、両端のフランジ部110A,110Bと、これらのフランジ部110A,110Bの間で隆起した隆起部110Cとを有し、この隆起部110Cに溝111が設け、この溝111の開口幅Hは係合部120の上記Lと対応する寸法となっている。それぞれのフランジ部110A,110Bには、第2支持部材26側へ直角に突出した突片110Dが設け、溝111の内部にカップリング部材101の係合部120を挿入係合しながら、これらの突片110Dを第2支持部材26に形成された細長開口部112に挿入し、上下2本のボルト113を回転止め部材110のフランジ部110A,110Bの孔114に挿入するとともに、第2支持部材26の孔115にも挿入し、これらのボルト113を第2支持部材26に溶接等で固定されたナット116に螺入して締め付けることにより、回転止め部材110は第2支持部材26に取り付けられる。そして、この回転止め部材110の溝111に係合部120が挿入係合されたカップリング部材101は、第2支持部材26に対する回転が止められることになる。
そして、図5で示した第1支持部材25側の回転止め部材60を第1支持部材25から取り外し、巻取軸24の前述した第1中心軸41のフラット状部41Cに図4で示した回転作業用工具130を係合し、この工具130で第1中心軸41を回転させることにより、巻取軸24の回転部Aの側の部材となっていた第2中心軸42や巻取軸本体49、第1ホイール部材45の回転が回転止め部材110で止められていて、巻取軸24の非回転部Bの側の部材となっていた第1中心軸41やばね連結部材52が回転するため、第1ホイール部材45とばね連結部材52との間に架設されている戻しばね53を、戻しばね力が適正値となるまでの巻き締めることができる。
なお、この戻しばね53の巻き締め作業を行うときには、シャッターカーテン20を全開位置に停止させておくために、図3で示した被係止部材28を係止装置29の係止部材30に係止させておいてもよく、また、係止させておかなくてもよい。そして、戻しばね53を巻き締める作業は、シャッターカーテン20が全閉位置に達しているときにも行える。
また、戻しばね53の巻き締め作業を行うときには、前記シャッターケース11は、図3及び図4で示されているように、ケース本体11Aと、このケース本体11Aの前面開口部を塞ぐ前面部材11Bと、シャッターケース11の左右両端を塞ぐエンドキャップ11C,11D等からなり、これらの部材11A〜11Dはボルト・ナットやビス等の止着具で分解可能に組み立てられているため、ケース本体11Aからの前面部材11B、エンドキャップ11C,11Dの取り外しを行う。この後、図4で示した結合具72を取り外して第2支持部材26から減速機70を分離することにより、上述した戻しばね53の巻き締め作業を、第2支持部材26への回転止め部材110の取り付け作業と、第1支持部材25からの回転止め部材60の取り外し作業と、第1中心軸41のフラット状部41Cへの回転作業用工具130の係合作業とを行うことにより、行うことができる。
なお、図6で示したカップリング部材101の面取り加工で形成される面101Bを4つとせず、互いに反対側となった2つだけとし、これにより、これら2つの面101Bによって上記係合部120の個数を1個としてもよい。
図9は、図4で示した巻取軸24の一部拡大図であり、巻取軸本体49は2点鎖線で示している。前述したように、巻取軸24と同軸的に配置されている戻しばね53における第2支持部材26側の一方のフック状端部53Aは、ばね連結部材52に形成された切欠部52Aの周辺部に連結係止され、第1支持部材25側の他方のフック状端部53Bは、第1ホイール部材45に形成された切欠部45Aの周辺部に連結係止され、これらのフック状端部53Aと53Bの間は、戻しばね53のコイル成形加工されているコイル部53Cとなっている。そして、巻取軸24は、図4で説明したように、第1〜第4ホイール部材45〜48と巻取軸本体49と第2中心軸42等で構成された回転部Aと、第1中心軸41とばね連結部材52等で構成され、回転部Aがシャッターカーテン20の巻き取り、繰り出しを行う正逆回転しているときに回転しない非回転部Bと、を含んで形成されている。
第1ホイール部材45からばね連結部材52まで達している第1中心軸41の外周には、戻しばね53を案内巻回させている長寸の筒材による案内部材150が配置され、第1ホイール部材45の近くまで達していて内部に第1中心軸41が挿入されているこの案内部材150は、ばね連結部材52に結合されているため、本実施形態では、この案内部材150は上記非回転部Bを構成する部材となっている。また、ばね連結部材52と第1ホイール部材45には、案内部材150の外周に配置された短寸の筒材による中子部材151,152が結合され、内部に第1中心軸41と案内部材150とが挿入されているこれらの中子部材151,152は互いに軸方向に向かい合っている。ばね連結部材52に結合されているために上記非回転部Bを構成する部材となっている中子部材151は、戻しばね53におけるフック状端部53Aの側のコイル部53Cの端部部分の内部に挿入され、第1ホイール部材45に結合されているために上記回転部Aを構成する部材となっている中子部材152は、戻しばね53におけるフック状端部53Bの側のコイル部53Cの端部部分の内部に挿入されている。
また、戻しばね53の一方のフック状端部53Aが引っ掛けられているばね連結部材52の切欠部52Aの周辺部は、このフック状端部53Aのための引っ掛け部153となっており、戻しばね53の他方のフック状端部53Bが引っ掛けられている第1ホイール部材45の切欠部45Aの周辺部は、このフック状端部53Bのための引っ掛け部154となっている。
図10は、図9のS10−S10線断面図であり、フック状端部53Aを代表例として示しているこの図10から分かるように、戻しばね53の両端部である2つのフック状端部53A,53Bは、コイル部53Cの中心部から同じ又は略同じ半径位置に形成されている。このため、戻しばね53の一方の端部とばね連結部材52との連結は、コイル部53Cの中心部から同じ又は略同じ半径位置で行われ、戻しばね53の他方の端部と第1ホイール部材45との連結も、コイル部53Cの中心部から同じ又は略同じ半径位置で行われている。なお、ここでいう中心部とは、巻取軸24の中心部及びこの巻取軸24と同軸的に配置されているねじりコイルばねによる戻しばね53の中心部のことである。
図11は、2つのフック状端部53Aと53Bを代表して、図4で示した回転作業用工具130で戻しばね53が巻き締められる前であって、この戻しばね53に初期戻しばね力が付与される前のフック状端部53Aを示している図9の一部拡大図である。フック状端部53Aは、コイル部53Cから円周方向に向きが反転したU字状に形成されており、このフック状端部53Aのコイル部53Cとは軸方向反対側の部分は、このコイル部53Cの円周方向へ短く延びる短延出部155となっている。そして、前記非回転部Bを構成する部材であって、コイル部53Cよりも軸方向外側にある部材となっているばね連結部材52には、フック状端部53Aを引っ掛けるための引っ掛け部153が、ばね連結部材52にコイル部53Cの円周方向への長さを有して形成された前述の切欠部52Aによって設けられ、この切欠部52Aについてのコイル部53Cの円周方向長さFは、短延出部155についてのコイル部53Cの円周方向長さEよりも長くなっている。
また、切欠部52Aの底部には、U字状となっているフック状端部53Aの開口部に対するコイル部53Cの円周方向反対側において、ピンの打ち込みやビスの螺入等によってストッパ156が立設され、このストッパ156とフック状端部53Aとの間隔Iは、引っ掛け部153へのフック状端部53Aの引っ掛け侵入距離Gよりも小さくなっている。
引っ掛け部153へフック状端部53Aを引っ掛ける作業は、切欠部52Aの底部にストッパ156を立設する前に行われ、切欠部52Aについてのコイル部53Cの円周方向長さFは、フック状端部53Aの短延出部155についてのコイル部53Cの円周方向長さEよりも長くなっているため、この短延出部155を切欠部52Aに挿入した後、コイル部53Cの円周方向へフック状端部53Aを移動させることにより、引っ掛け部153へフック状端部53Aを引っ掛ける作業を容易に行うことができる。
そして、この引っ掛け作業後、切欠部52Aの底部にストッパ156を立設する作業が行われる。ストッパ156からフック状端部53Aまでの間隔Iは、引っ掛け部153へのフック状端部53Aの引っ掛け侵入距離Gよりも小さくなっているため、フック状端部53は引っ掛け部153から抜け出す前にストッパ156に当接することになり、このため、フック状端部53Aの引っ掛け部153からの脱出が防止される。
以上は、戻しばね53の一方の端部であるフック状端部53Aについてであったが、図9で示されているとおり、他方の端部であるフック状端部53Bについても、上記短延出部155に相当する短延出部157があり、また、第1ホイール部材45に前記引っ掛け部154を設けるために形成されている切欠部45Aの底部には、上記ストッパ156に相当するストッパ158が立設されている。切欠部45Aについてのコイル部53Cの円周方向長さと、短延出部157についてのコイル部53Cの円周方向長さとの関係、及びストッパ158からフック状端部53Bまでの間隔と、引っ掛け部154へのフック状端部53Bの引っ掛け侵入距離との関係は、図11で示したフック状端部53Aの場合と同じであるため、フック状端部53Bについても、引っ掛け部154へフック状端部53Bを引っ掛ける作業を容易に行うことができ、また、フック状端部53Bの引っ掛け部154からの脱出をストッパ158で防止することができる。
なお、以上説明したフック状端部53A,53Bを引っ掛け部153,154へ引っ掛ける作業や、切欠部45A,52Aの底部にストッパ156,158を立設する作業は、第1中心軸41や第1ホイール部材45、ばね連結部材52、前記第2ホイール部材46等によって予め組み立てられた組立体がパイプ材で形成されている巻取軸本体49に内部に挿入される前に行われ、これらの作業が終了した後に、組立体は巻取軸本体49に内部に挿入され、そして、組立体の第1ホイール部材45及び第2ホイール部材46は、前述したように巻取軸本体49に溶接等で結合される。
また、フック状端部53A,53Bを引っ掛け部153,154へ引っ掛ける作業は、戻しばね53のコイル部53Cを軸方向へ伸張させて行われる。このため、両端部のフック状端部53A,53Bを含む戻しばね53の本来の自然長さは、第1ホイール部材45とばね連結部材52との間隔よりも小さい。このように戻しばね53のコイル部53Cを軸方向へ伸張させた状態でフック状端部53A,53Bを引っ掛け部153,154へ引っ掛ける作業を行う理由は、戻しばね53が巻き締められて前述の戻しばね力が蓄圧されたときには、コイル部53Cの巻数が増加し、このため、図11のコイル部53Cを形成しているそれぞれの円環部53Dの間隔が小さくなり又はゼロになるため、巻き締めによるコイル部53Cの巻数の増加を保障できるようにするためである。
コイル部53Cが軸方向に伸ばされた状態となって戻しばね53の両端部がばね連結部材52と第1ホイール部材45の引っ掛け部153,154に引っ掛けられると、戻しばね53のそれぞれの端部の側におけるコイル部53Cの端部部分が、図11の1点鎖線Jで示されているように、半径方向へ変位するおそれが生ずる。しかし、本実施形態では、前述したように、ばね連結部材52と第1ホイール部材45には、コイル部53Cの軸方向両側の端部部分の内部に挿入された中子部材151,152が設けられており、第1中心軸41よりも外径が大きいこれら中子部材151,152は、コイル部53Cの軸方向両側の端部部分が半径方向へ大きく変位するのを阻止するための巻取軸24の中子部となっている。
このため、コイル部53Cを軸方向に伸ばした状態にして戻しばね53の両端部をばね連結部材52と第1ホイール部材45の引っ掛け部153,154に連結しても、コイル部53Cの軸方向両側の端部部分が半径方向へ変位する程度を1点鎖線Jで示した程度に抑えることができ、この端部部分が半径方向へ大きく変位するのを阻止できる。これにより、戻しばね53を、コイル部53Cを本来の形状に近い形状に維持して巻き締めることができ、この巻き締めによって所定どおりの戻しばね力を発生させることができる。
また、前述したように図4の回転作業用工具130で戻しばね53を巻き締めることにより、戻しばね53に前記初期戻しばね力を付与し、巻取軸24の回転部Aの正回転でシャッターカーテン20を閉じ移動させて戻しばね53をさらに巻き締めるときや、この巻き締めによって生ずる戻しばね53の戻しばね力を利用して回転部Aを逆回転させ、シャッターカーテン20を開き移動させるときには、戻しばね53のコイル部53Cは、回転部Aの回転に伴って直径方向へ振れ運動を行うことになる。図12は、このようにコイル部53Cが直径方向へ振れ運動した場合を示す巻取軸24の縦断面図であり、振れ運動したときのコイル部53Cは2点鎖線Kで示されている。
コイル部53Cの内周側には、戻しばね53の略全長に渡る長さとなっている前述した案内部材150が配置され、この案内部材150は、巻取軸24の内周部を形成部材となっている。また、コイル部53Cの外周側には、コイル部53Cの全長に渡る長さを有している巻取軸本体49が配置され、この巻取軸本体49は、巻取軸24の外周部を形成する部材となっている。本実施形態では、シャッターカーテン20の開閉移動の全行程をとおして、巻取軸本体49とコイル部53Cとの間隔Mよりも案内部材150とコイル部53Cとの間隔Nは小さくなっている。
これによると、シャッターカーテン20の開閉移動のために巻取軸24の回転部Aが正逆回転して戻しばね53のコイル部53Cが直径方向へ振れ運動を行っても、このコイル部53Cは先に案内部材150に当接するため、コイル部53Cが巻取軸本体49に当接することが防止される。コイル部53Cが巻取軸本体49に当接した場合には、これらのコイル部53Cと巻取軸本体49との間で円周方向の擦りが生じ、巻取軸本体49は案内部材150よりも巻取軸24及び戻しばね53の中心部から遠い位置にあるため、戻しばね力に基づくトルクの大きさに大きな影響が生ずることになるが、上述のように、案内部材150によってコイル部53Cが巻取軸本体49に当接することが防止されることにより、このような問題の発生を防ぐことができる。
また、本実施形態では、戻しばね53の両端部に設けられたU字状のフック状端部53A,53Bは、これらのフック状端部53A,53Bの開口部が戻しばね53の巻き締め回転力の方向とは反対側に向いているため、戻しばね53に戻しばね力を付与する巻き締め時において、フック状端部53A,53Bがばね連結部材52と第1ホイール部材45の引っ掛け部153,154から脱落するのを巻き締め力によって防止することができ、この脱落防止のための特別の手段を講じる必要がない。
そして、本実施形態では、図10で説明したように、戻しばねの両端部のフック状端部53A,53Bは、ばね連結部材52と第1ホイール部材45の引っ掛け部153,154に、コイル部53Cの中心部から同じ又は略同じ半径位置において引っ掛けられているため、戻しばね53には、この戻しばね53をばね連結部材52と第1ホイール部材45に連結するために、コイル部53Cから半径方向へ延出した延出端部を設ける必要がない。
このため、戻しばね53として用いるねじりコイルばねを、線材をコイル成形加工して、その後に焼入れ処理等を行うことにより製造しても、焼入れ処理に影響されることなく、フック状端部53A,53Bについての寸法精度、形状精度を確保してねじりコイルばねを生産でき、これにより、フック状端部53A,53Bをばね連結部材52と第1ホイール部材45の引っ掛け部153,154に引っ掛ける作業を容易に行える。
また、ばね連結部材52と第1ホイール部材45に連結される戻しばね53の両端部がコイル部53Cから半径方向へ延出した延出端部になっていると、これらの延出端部では、戻しばね53が巻き締められて戻しばね力が蓄圧されるときに、コイル部53Cから半径方向へ作用する巻き締め力が生じ、これにより、戻しばね53のコイル部53Cには、半径方向への予定外の大きな変形が発生するおそれがあるが、本実施形態によると、このようなおそれもなくすことができる。
そして、戻しばね53のコイル部53Cには、このようにして半径方向への予定外の大きな変形が発生するおそれがないため、巻取軸24の前記回転部Aの外周部を形成しているパイプ材による巻取軸本体49の直径を小さくしても、この巻取軸本体49の内周面にコイル部53Cが当接するおそれもなく、この当接が生じたときに発生する異音等の発生をなくすことができる。
また、戻しばね53のコイル部53Cに半径方向への予定外の大きな変形が生ずることがないため、巻取軸本体49の直径を小さくして巻取軸24の全体外径寸法を小さくできることになり、これにより、シャッター装置の全体を小型化することも可能となる。