以上のように、開閉装置であるシャッター装置に巻取軸の回転を減速させるための減速機を設け、この減速機に巻取軸を連結する場合には、チェーン・スプロケット等の回転伝達手段を用いることなくその連結を行うようにし、これにより、その連結構造の簡単化等を図ることができるようにすることが好ましい。
しかしながら、このように減速機と巻取軸を連結する場合には、巻取軸に対して減速機の入力軸が同軸的又は略同軸的に配置されることになり、この配置関係の状態で巻取軸と減速機の入力軸とが接続されることになるが、巻取軸にはシャッターカーテンの重量や巻取軸自体の自重も作用しているため、巻取軸に撓みが生じ、また、巻取軸の回転時には振れ等も生じることがあるため、シャッターカーテンの巻き取り、繰り出しを行うとき、巻取軸は撓み変形しながら回転することになる。したがって、巻取軸と減速機の入力軸とを単に直結しただけでは、巻取軸の回転が減速機に適切に入力しないおそれがあり、このため、巻取軸が撓み変形しながら回転しても、この回転を減速機に所定どおり適切に入力させることができる工夫が求められる。
本発明の目的は、巻取軸がシャッターカーテン等の開閉体の重量等のために撓み変形しながら回転しても、この回転を減速機に所定どおり適切に入力させることができる減速機付き開閉装置を提供するところにある。
本発明に係る減速機付き開閉装置は、開閉移動自在となった開閉体と、前記開閉移動のために前記開閉体を巻き取り、繰り出すとともに、この巻き取り、繰り出しのために正逆回転自在となっている巻取軸と、この巻取軸に対して入力軸が同軸的又は略同軸的に配置されていて、前記巻取軸の正逆回転のうちの少なくとも一方の回転を減速させるための減速機とを備え、この減速機の前記入力軸と前記巻取軸とが、この巻取軸が前記入力軸に対して遊動するのを許容する遊動許容カップリング手段によって連結されていることを特徴とするものである。
この減速機付き開閉装置では、巻取軸と、この巻取軸に対して同軸的又は略同軸的に配置された減速機の入力軸とが、巻取軸が入力軸に対して遊動するのを許容する遊動許容カップリング手段によって連結されているため、水平又は略水平な巻取軸に開閉体の重量や巻取軸自体の自重が作用し、巻取軸の回転時に振れ等が生じることがあって、開閉体の巻き取り、繰り出しを行うときに、巻取軸が撓み変形しながら回転しても、巻取軸の回転は遊動許容カップリング手段によって適切に所定どおり減速機の入力軸に伝達されることになり、減速機によって巻取軸の回転を減速させることができる。
なお、上述のように、巻取軸に対して減速機の入力軸を同軸的に配置することは、巻取軸の軸延長線上に減速機の入力軸を配置することでもよく、巻取軸の外周側に外包状態で又は内周側に内包状態で減速機の入力軸を配置することでもよく、これらが複合された配置構造等でもよく、要するに、巻取軸の軸線上(巻取軸の軸延長線上も含む)に入力軸を配置することであればよい。
巻取軸は軸方向の2箇所で支持部材によって支持されることになり、減速機を開閉装置に配置するためには、これらの支持部材の一方に減速機を取り付けてもよく、これらの支持部材とは別の取付部材に減速機を取り付けてもよい。
減速機を、巻取軸を支持する支持部材に取り付けるようにすると、部材の兼用化を図ることができるため、開閉装置全体の構造を簡単化でき、また、支持部材に減速機を不動状態で取り付けても、巻取軸の撓み変形しながらの回転を遊動許容カップリング手段によって減速機に伝達することことができる。
そして、このように減速機を、巻取軸を支持する支持部材に取り付けるためには、この支持部材に減速機を直接取り付けてもよく、あるいは、ブラケット等の中間部材を介して取り付けてもよい。
また、巻取軸と減速機の入力軸とを連結する上記遊動許容カップリング手段は、減速機の入力軸に対して巻取軸が遊動するのを許容するものであれば、任意な原理、構造等のものでよく、例えば、ユニバーサルジョイントによるものでもよく、オルダムカップリングによるものでもよく、ばねやゴム等の弾性部材によるもの等でもよい。
また、上記遊動許容カップリング手段を、巻取軸と入力軸とのうちの一方の軸に設けられた凹部と、他方の軸に設けられ、回転方向での凹部との当接で回転を伝達する凸部とを含んで形成されたものであって、この凸部が凹部の内部に遊合状態で挿入されたものとしてもよい。
これによると、凸部が凹部の内部に遊合状態で挿入されている分だけ、巻取軸の撓み変形しながらの回転を減速機に伝達することができ、また、遊動許容カップリング手段を大きな強度を有するものとして構成することができるため、巻取軸の回転を減速機に大きな伝達強度で伝達することができる。
このように遊動許容カップリング手段を、巻取軸と減速機の入力軸とのうちの一方の軸に設けられた凹部と、他方の軸に設けられた凸部とを有するものとして形成する場合には、これらの凹部と凸部は任意な形状、構造のものでよい。
その一例は、凹部を、巻取軸と減速機の入力軸とのうちの一方の軸に軸方向への切り込み深さをもって形成された切り込み部を有するものとし、凸部を、他方の軸に軸方向と角度をなす方向へ突出形成され、上記切り込み部に挿入されている突起を有しているものとすることである。
また、他の例は、凹部を、巻取軸と減速機の入力軸とのうちの一方の軸に軸方向への切り込み深さをもって形成された切り込み部とし、凸部を、他方の軸の端部に、この他方の軸の直径よりも小さい厚さで形成されたフラット状部とし、このフラット状部を上記切り込み部に遊合状態で挿入することである。
また、切り込み部の具体的な形状、構造も任意であり、例えば、この切り込み部を、前記一方の軸の直径方向に貫通して形成された溝形状としてもよく、あるいは、前記一方の軸の端部に、この一方の軸の直径方向に離間していて軸方向へ延出している一対の延出部を設け、これらの延出部に切り込み部を形成してもよい。
さらに、減速機の入力軸又は巻取軸に前記凹部と前記凸部のうちの一方を直接設けてもよいが、巻取軸と入力軸のうちの一方の軸に前記遊動許容カップリング手段を構成するカップリング部材を取り付け、このカップリング部材に前記凹部と前記凸部のうちの一方を設けてもよい。
これによると、カップリング部材に前記凹部と前記凸部のうちの一方を設けるため、巻取軸と入力軸のうちの上記一方の軸に、他方の軸と連結するための特別の加工等を行う必要がなくなり、上記一方の軸の製造が容易となる。
なお、巻取軸は減速機の入力軸よりも一般的には長い軸となっており、入力軸よりも巻取軸の方が加工等に手間と時間がかかるため、前記凹部と前記凸部のうちの一方が設けられるカップリング部材は、入力軸よりも巻取軸に取り付けることが好ましい。これによると、加工等に手間と時間がかかる巻取軸に前記凹部と前記凸部のうちの一方を設けるための加工等を行う必要がなくなる。
また、巻取軸には、この巻取軸の正逆回転のうちの一方の回転時に戻しばね力が蓄圧され、この蓄圧された戻しばね力が巻取軸の正逆回転のうちの他方の回転のための回転付勢力として利用される戻しばねを配置してもよい。
これによると、巻取軸の上記他方の回転は、戻しばねの蓄圧された戻しばね力で補助されるため、この回転による開閉体の移動を小さい力で行わせることができる。
なお、この戻しばねは、ねじりコイルばねでもよく、渦巻きばね等でもよく、任意な形式のばねでよい。
また、以上のように、巻取軸に戻しばねを配置する場合には、開閉体が全開となっているとき等における戻しばね力が適正値となるようにするため、工場での開閉装置の製造時や出荷時、開閉装置の施工現場での施工時、さらには、施工現場での開閉装置の点検、整備時等において、戻しばねの巻き締め作業を行うことになる。
この巻き締め作業は、巻取軸が回転可能状態となっていたのでは行えないため、上述したカップリング部材を巻取軸に取り付ける場合には、このカップリング部材に、戻しばねの巻き締め作業時に巻取軸が回転するのを止めることができて、戻しばねを巻き締めることができるようにするための回転止め部材を係合させる係合部を設けてもよい。
これによると、カップリング部材は、遊動許容カップリング手段のための部材と、戻しばねの巻き締め作業用のための部材とを兼ねることになり、それだけ部材点数の削減、構造の簡単化を図ることができる。
また、本発明は、正逆回転自在となっている巻取軸の正回転と逆回転の両方を減速機で減速する場合に適用できるとともに、これらの回転のうちのいずれか一方の回転を減速機で減速し、他方の回転を減速しない場合にも適用できる。
後者の場合には、減速機は、巻取軸の正逆回転のうちの一方の回転を減速させるための減速手段と、巻取軸のこの一方の回転を減速手段に伝達し、他方の回転を減速手段に伝達しないクラッチ手段とを有して構成されることになり、そして、前記入力軸は、巻取軸の回転をクラッチ手段に入力するための軸となる。
このように減速手段とクラッチ手段を有している減速機は、減速手段とクラッチ手段が同じハウジングの内部に組み込まれた一体型のものでもよく、減速手段とクラッチ手段がそれぞれ別のハウジングの内部に組み込まれるなどして別体型となっているもの、すなわち、それぞれ別装置として製造された減速装置とクラッチ装置とが接続されたものでもよい。
また、巻取軸の構造、形式も任意である。すなわち、巻取軸は、1本の軸により又は複数の軸を直列的に連結することにより形成されたものでもよく、中心に配置された中心軸と、この中心軸の外周に、開閉体を巻き取り、繰り出すために配置された回転部材とを含んで構成されたものでもよい。また、後者における回転部材は、中心軸が中心に挿入された複数個のホイール部材と、中心軸の軸方向に離間して配置されたこれらのホイール部材同士を連結するバー状等の連結部材とを含んで形成されたものでもよく、あるいは、これらのホイール部材と、これらのホイール部材の外周に嵌合固定されてホイール部材同士を結合するパイプ状の巻取軸本体とを含んで形成されたもの等でもよい。
さらに、巻取軸に対する減速機の配置位置も任意であり、例えば、減速機を巻取軸の一方の端部側に配置してもよく、巻取軸の長さ方向の途中に配置してもよい。そして、減速機を巻取軸の一方の端部側に配置する場合には、巻取軸のどちらの端部側に配置するかは、例えば、その開閉装置が設置される建物の躯体状況や開閉装置の設置状況、開閉装置の使用状態や周囲の環境状態等に応じて任意に決めることができる。また、同じ開閉装置について、減速機を配置する巻取軸の一方の端部側を選択できるようにし、言い換えると、巻取軸のどちらの端部側にも減速機の入力軸を前記遊動許容カップリングで連結できるようにし、これにより、その開閉装置が設置される建物の躯体状況等に応じて適切な減速機の配置位置を選択できるようにすることが好ましい。
また、本発明は、開閉体の開閉移動が巻取軸による巻き取り、繰り出しによって行われる任意な開閉装置に適用でき、この開閉装置は、開閉体がシャッターカーテンとなっているシャッター装置でもよく、ロールブランド装置でもよく、オーニング装置等でもよく、防煙垂れ幕装置等でもよい。
また、開閉装置がシャッター装置である場合には、シャッターカーテンは、全体又は略全体がスラットで形成されたものでもよく、パネルで形成されたものでもよく、シートで形成されたものでもよく、リンクで連結されたパイプで形成されたものでもよく、ネットで形成されたものでもよく、さらには、種類が異なる複数の部材の複合、例えば、スラットとシートのように、これらのうちの複数の複合で形成されたもの等でもよい
また、本発明が適用されるシャッター装置は、出入口や窓等の開口部をシャッターカーテンで開閉するためのものでもよく、防災シャッター装置のように、全閉となったシャッターカーテンで建物や船舶等の構造物内に防災区画等の区域を区画形成するためのものでもよい。また、シャッター装置は、ガレージ用シャッター装置でもよく、トラック等の車両の荷台に設置されるシャッター装置等でもよい。さらに、防災シャッター装置には、エレベータ用シャッター装置も含まれる。
さらに、本発明は、シャッターカーテンの開閉移動が電動モータ等の駆動力によって行われる自動式シャッター装置や、手操作で行われる手動式シャッター装置にも適用でき、さらに本発明は、シャッターカーテンの閉じ移動である下降移動がシャッターカーテンの自重でなされて、開き移動である上昇移動が電動モータ等の駆動手段又は手操作でなされるシャッター装置や、閉じ移動がシャッターカーテンの自重又は手動操作又は電動モータ等の自動駆動装置でなされるとともに、開き移動が、閉じ移動時に蓄圧された戻しばねの戻しばね力を補助力に利用して手操作又は電動モータ等の駆動装置でなされるシャッター装置等にも適用できる。
また、シャッターカーテンの閉じ移動方向が下方向で、開き移動が上方向でもよく、あるいは、閉じ移動方向が上方向で、開き移動が下方向でもよい。
本発明によると、巻取軸が開閉体の重量等のために撓み変形しながら回転しても、この回転を減速機に所定どおり適切に入力させることができるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る減速機付き開閉装置であるシャッター装置の全体を示す正面図である。図2は、図1のS2−S2線断面図であり、図3は、シャッター装置の縦断面図である。このシャッター装置はエレベータ用の防災シャッター装置であり、このエレベータ用の防災シャッター装置は、図2及び図3で示されているとおり、単なる通路を含むエレベータホール1から見て、エレベータ扉2の手前側において、開閉体である防災用シャッターカーテン20が上下に開閉移動するものとなっており、このシャッターカーテン20がエレベータホール1とエレベータ扉2との間で全閉となることにより、エレベータホール1とエレベータ扉2との間で遮断された防災区画が形成される。
図2及び図3で示されている建物内の縦穴3で昇降するエレベータの昇降箱4は、エレベータ用の防災シャッター装置が設置されている建物の各階で停止し、図3で示されているとおり、エレベータホール1から見てエレベータ扉2の手前上部には、昇降箱4の現在位置等を表示するインジケータ5が、各階の間の床スラブ6から垂下した建物躯体である下がり壁7の内部に組み込み配置されている。左右2個のエレベータ扉2は、図3で示された上下のガイド部材8,9で案内されて左右に開閉移動自在となっているため、昇降箱4が停止した階のエレベータ扉2は、図示しない駆動装置の駆動力で開閉移動する。
図2で示すように、エレベータ扉2よりエレベータホール1側の左右両側の建物躯体となっている側壁10には、シャッターカーテン20の左右方向である幅方向の両端部がスライド自在に挿入されたガイドレール21が取り付けられ、ガイド部材となって上下に延びているこれらのガイドレール21でシャッターカーテン20の開閉移動が案内される。ガイドレール21の内部において、シャッターカーテン20には抜け止め部材22が取り付けられ、これらの抜け止め部材22で抜け止めされながらシャッターカーテン20は開閉移動する。
図3で示されているように、前記下がり壁7にはシャッターケース11が取り付けられ、図1で示されているように、左右方向に長いこのシャッターケース11の内部には、正逆回転することによってシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出す巻取軸24が水平に収納配置され、シャッターカーテン20の上端が結合されているこの巻取軸24は、シャッターケース11の内部に配置されていて下がり壁7に取り付けられている左右の第1及び第2支持部材25,26によって正逆回転自在に支持されている。図3で示されているように、シャッターケース11の下端部は、シャッターカーテン20が上下に挿通された左右に長いスリット12が形成されたまぐさ13となっており、このまぐさ13のスリット12を通ってシャッターカーテン20は、巻取軸24の繰り出しによる下降である閉じ移動及び巻取軸24の巻き取りによる上昇である開き移動を行う。
なお、図2で示されているそれぞれのガイドレール21におけるシャッターカーテン20の幅方向の端部が挿入された開口部に、シャッターカーテン20と接触する遮煙部材を設け、この遮煙部材により、火災の発生で生じた煙が全閉位置に達しているシャッターカーテンと上記開口部との間の隙間及びガイドレール21の内部を通過してシャッターカーテンの反対側に達するのを防止するようにしてもよい。
また、まぐさ13のスリット12にも上述した遮煙部材と同様な遮煙部材を設け、この遮煙部材により、火災の発生で生じた煙がシャッターケース11の内部を通過してシャッターカーテンの反対側に達することを防止するようにしてもよい。
図1及び図3で示されているように、シャッターケース11の内部には、シャッターカーテン20が全開位置に達しているときに、シャッターカーテン20の下端部又はこの下端部近くに取り付けられた逆L字状の被係止部材28を係止するための係止装置29が配置されている。この係止装置29は、上片部30Aと下片部30Bとを有する二股状となっている係止部材30を有し、この係止部材30は上下に回動自在である。通常時の係止部材30は、係止装置29に組み込まれているストップ手段のストップ機能により、上片部30Aと下片部30Bが水平姿勢となった状態で下向き回動が阻止されており、このときには、下片部30Bの上面に、全開位置に達しているシャッターカーテン20に設けられている逆L字状の被係止部材28の上端水平突起部28Aが係止されているため、全開位置のシャッターカーテン20は、係止装置29の係止作用によってこの全開位置に維持される。
エレベータ用の防災シャッター装置がそれぞれの階に設置されている建物において火災が発生すると、この火災を検知したセンサからの信号が入力した制御装置により、又は火災の発生を知った人が図示しない操作部材を操作することにより、それぞれの階のエレベータ用の防災シャッター装置における係止装置29の上記ストップ手段のストップ機能が解除されるため、シャッターカーテン20の自重と、上記ストップ機構を作動させるばね等の弾性部材の弾性力とにより、係止部材30が下向きに回動し、この下向き回動で被係止部材28の上端水平突起28Aが係止部材30の下片部30Bから離脱するため、シャッターカーテン20は下方へ閉じ移動し、この閉じ移動は、シャッターカーテン20の自重による巻取軸24の正回転によってなされ、シャッターカーテン20は巻取軸24から繰り出されて全閉位置に達する。
シャッターカーテン20は、図1及び図3で示されているとおり、閉じ側先端部材となっている座板31と、この座板31が下端部に取り付けられ、シャッターカーテン20の大部分の面積を形成しているカーテン本体32とを有し、カーテン本体32は、耐火性及び遮煙性を有するシートに耐火性塗料を塗布及び/又は含浸させて形成されている。上記被係止部材28は座板31に取り付けられている。
図1で示されているように、シャッターカーテン20のエレベータ扉2側の面には、シャッターカーテン20を上方へ開き移動させる際に、手を掛けてシャッターカーテン20を持ち上げるための手掛け部材34が設けられている。この手掛け部材34は、エレベータの昇降箱4を利用した火災からの避難者が昇降箱4から降りてきたときに、全閉位置に達しているシャッターカーテン20を持ち上げてその下を通過できるようにするのものである。手掛け部材34は、カーテン本体32に水平に配置されていて、シャッターカーテン20の補強部材となっている棒状部材35の一部によって形成されている。
この棒状部材35を具体的に説明すると、カーテン本体32は、上下の重なり部分を有して上下に配置された複数のシート32Aで形成され、上下2枚のシート32Aの重なり部分は袋部となっており、この袋部の内部に、両端が左右のガイドレール21の内部に挿入された棒状部材35が挿入されている。また、重なり部分には、前記エレベータ扉2と対面する側において、複数の切れ目36が形成され、これらの切れ目36から露出した棒状部材35の一部が、上記手掛け部材34となっている。このような手掛け部材34は、本実施形態では、カーテン本体32に上下複数段、同じ高さ位置に左右複数個設けられ、図示例では、上下2段、左右2個設けられている。
なお、カーテン本体32におけるエレベータ扉2と対面する側の面に手掛け部材34を設けるための構造は、以上の構造に限定されず、例えば、カーテン本体32におけるエレベータ扉2と対面する側の面に、左右に長い細長の袋部用シートをシャッターカーテン20の幅方向に複数取り付け、これらの袋部用シートとカーテン本体32とで棒状部材35を挿入するための袋部を形成し、上記複数の袋部用シート同士の間から露出した棒状部材35の一部を手掛け部材34としてもよい。このようにしてシャッターカーテン20に手掛け部材34を設けることは、カーテン本体2を、上述のように、上下に配置された複数のシート32Aで形成する場合にも、1枚のシートで形成する場合にも、適用することができる。
昇降箱4を利用した前記避難者が、全閉位置に達しているシャッターカーテン20を持ち上げてその下を通過するときには、先ず、上下2段設けられている手掛け部材34のうちの上段の手掛け部材34に手を掛けてシャッターカーテン20を持ち上げ、次に下段の手掛け部材34に手を掛けてシャッターカーテン20をさらに持ち上げる。
巻取軸24の内部には、後述するように、シャッターカーテン20が閉じ移動する巻取軸24の正回転時に戻しばね力が蓄圧される戻しばねが配置されており、シャッターカーテン20は、この戻しばね力を蓄圧しながら全閉位置に達する。
前述したように、自重で閉じ移動する自重閉鎖式となっているシャッターカーテン20が全閉位置に達した後、このシャッターカーテン20を手掛け部材34で持ち上げると、巻取軸24は、戻しばねの蓄圧された戻しばね力で逆回転してシャッターカーテン20を巻き取ることになり、このため、手掛け部材34によるシャッターカーテン20の持ち上げは戻しばねの戻しばね力で補助されることになり、このため、上記避難者は、小さい力によってシャッターカーテン20を軽く持ち上げてその下を通過することができる。
なお、避難訓練等のためにシャッターカーテン20を全閉とした後、シャッターカーテン20を全開位置に戻すときには、シャッターカーテン20を大きな力で持ち上げて全開位置まで上昇させる。これにより、前述したように係止装置29の下向き回動していた係止部材30の上片部30Aの下面に前記被係止部材28の上端水平突起28Aが当接し、この当接によって係止部材30は上向きに回動して水平姿勢に戻るとともに、下片部30Bの上面に被係止部材28の上端水平突起28Aが係止される。このときには、係止装置29の前記ストップ手段のストップ機能は回復しているため、水平姿勢に戻った係止部材30によってシャッターカーテン20は全開位置で停止し、これにより、全部がシャッターカーテン20の閉じ移動開始前の状態に戻る。
また、本実施形態では、前記手掛け部材34はシャッターカーテン20のエレベータ扉2側の面に設けられていたが、このような手掛け部材又はこれとは形状、構造が異なる手掛け部材を、シャッターカーテン20のエレベータホール1側の面に設けてもよく、また、シャッターカーテン20のエレベータ扉2側の面とエレベータホール1側の面との両方に設けてもよい。
図4は、巻取軸24及びこの巻取軸24に連結されている減速機70の内部構造を示す平断面図である。巻取軸24は、図1で示された左右の第1及び第2支持部材25と26のうち、第1支持部材25側の第1中心軸41と、第2支持部材26側の第2中心軸42と、第1中心軸41が中心に挿通され、この第1中心軸41に対して軸受け43,44で回転自在となっている第1及び第2ホイール部材45,46と、第2中心軸42が中心に挿通され、この第2中心軸42に溶接等で結合されている第3及び第4ホイール部材47,48と、第1支持部材25側から第2支持部材26側へ軸方向に離れて配置されているこれらの第1〜第4ホイール部材45〜48の外周に溶接等で嵌合固定されたパイプ状の巻取軸本体49とを含んで形成されている。第1中心軸41は軸受け50で第1支持部材25に支持され、第2中心軸は軸受け51で第2支持部材26に支持されており、巻取軸24によるシャッターカーテン20の巻き取り、繰り出しは、巻取軸本体49において行われる。
また、第1中心軸41には、第1ホイール部材45と第2ホイール部材46との間において、それぞれのホイール部材45〜48と同様に円板状に形成されたばね連結部材52が配置され、このばね連結部材52は第1中心軸41に溶接等で結合されているとともに、巻取軸本体49の内部に隙間を明けて挿入できるように、それぞれのホイール部材45〜48よりも小径に形成されている。
第1ホイール部材45とばね連結部材52との間には、第1中心軸41の外周に嵌合されたねじりコイルばねによる戻しばね53が配置され、この戻しばね53における第2支持部材26側の一方のフック状端部53Aは、ばね連結部材52の切欠部52Aに連結係止され、第1支持部材25側の他方のフック状端部53Bは、第1ホイール部材45の切欠部45Aに連結係止されている。
また、軸受け50を介して第1支持部材25で支持されている第1中心軸41は、第1支持部材25に対する回転が回転止め部材60によって止められている。図5には、この回転止め部材60による回転止め構造の分解斜視図が示されている。第1支持部材25から突出している第1中心軸41の端部には、互いに反対側の2箇所41A,41Bの面取り加工により、第1中心軸41の直径よりも厚さが小さくなったフラット状部41Cが形成され、このフラット状部41Cが内部に挿入係合される溝61が回転止め部材60に形成されている。板金の折り曲げ加工品であるこの回転止め部材60は、両端のフランジ部60A,60Bと、これらのフランジ部60A,60Bの間で隆起した隆起部60Cとを有し、この隆起部60Cに溝61が設けられている。
それぞれのフランジ部60A,60Bには、第1支持部材25側へ直角に突出した突片60Dが設けられており、溝61の内部に第1中心軸41のフラット状部41Cを挿入係合しながら、これらの突片60Dを第1支持部材25に形成された細長開口部62に挿入し、上下2本のボルト63を回転止め部材60のフランジ部60A,60Bの孔64に挿入するとともに、第1支持部材25の孔65にも挿入し、これらのボルト63を第1支持部材25に溶接等で固定されたナット66に螺入して締め付けることにより、回転止め部材60は第1支持部材25に取り付けられる。そして、この回転止め部材60の溝61にフラット状部41Cが挿入係合された第1中心軸41は、第1支持部材25及び軸受け50に対する回転が止められることになる。
このように第1中心軸41の回転が止められると、第1中心軸41に溶接等で結合されている図4のばね連結部材52の回転も止められることになる。これに対して第1中心軸41上に軸受け43,44で配置されている第1及び第2ホイール部材45,46は回転自在となり、これらのホイール部材45,46に溶接等で結合されている巻取軸本体49も回転自在となり、さらに、巻取軸本体49に溶接等で結合されている第4及び第5ホイール部材47,48及びこれらのホイール部材47,48に溶接等で結合されている第2中心軸42も回転自在となる。この第2中心軸42の回転は、軸受け部材51を介して第2支持部材26によって支持される。
前述したとおりにシャッターカーテン20が自重によって閉じ移動することは、以上のように回転自在となっている巻取軸本体49が正回転してシャッターカーテン20を繰り出すことにより行われ、巻取軸本体49が正回転すると、巻取軸本体49に結合されている第1ホイール部材45も正回転するが、第1中心軸41に結合されているばね連結部材52は回転しないため、これらの第1ホイール部材45とばね連結部材52とに両端のフック状端部53A,53Bが連結されている前記戻しばね53には、シャッターカーテン20の繰り出しに伴い、巻取軸本体49の正回転によって戻しばね力が蓄圧される。
そして、全閉となったシャッターカーテン20を前記手掛け部材34で持ち上げると、巻取軸本体49は、戻しばね53の蓄圧された戻しばね力で逆回転し、この逆回転により、シャッターカーテン20は持ち上げられた分だけ巻取軸本体49に巻き取られることになり、戻しばね53の戻しばね力によって巻取軸本体49の逆回転が付勢されるため、手掛け部材34によるシャッターカーテン20の持ち上げを軽く行える。
図4で示されているとおり、第2支持部材26には、前記減速機70が取り付けられている。本実施形態では、この取り付けは、ブラケット71に減速機70を取り付け、このブラケット71の前面折曲部71Aと第2支持部材26の前面折曲部26Aとをボルト・ナットによる結合具72で結合することによって行われている。
減速機70は、巻取軸24の第2中心軸42の回転が遊動許容カップリング手段100を介して伝達される入力軸80と、この入力軸80の回転が歯車81,82で伝達されるアイドル軸83と、アイドル軸83の回転が歯車84,85で伝達される被動軸86と、被動軸86と一体に回転するロータリーベース部材87とを有し、このロータリーベース部材87に、それぞれピン88を中心に内外径方向へ回動自在に対向配置され、互いにばね89で内径方向へ常時回動付勢されている一対のブレーキシュー90が配置されている。巻取軸24の第2中心軸42からの回転力によってロータリーベース部材87が回転すると、一対のブレーキシュー90はばね89に抗してそれぞれのピン88を中心に遠心力で外径方向へ回動し、これらのブレーキシュー90がブレーキドラム91に圧接することにより、巻取軸24の第2中心軸42の回転、言い換えると、巻取軸24の巻取軸本体49の回転が減速される。
このため、本実施形態に係る減速機70は、ブレーキシュー90が遠心力でブレーキドラム91に圧接することによって減速力を生じさせる遠心力式減速機となっている。なお、減速機はこの形式のものに限定されず、摩擦板式等の任意な形式のものでよい。
また、この減速機70は、ロータリーベース部材87とブレーキシュー90とブレーキドラム91の部分によって形成されている減速手段70Aと、シャッターカーテン20が巻取軸24から繰り出されるときの第2中心軸42の正回転を減速手段70Aに伝達し、シャッターカーテン20を巻取軸24が巻き取るときの第2中心軸42の逆回転を減速手段70Aに伝達しないクラッチ手段70Bとを有するものとなっている。逆回転時の第2中心軸42と減速手段70Aとの間を切断するこのクラッチ手段70Bは、入力軸80と、この入力軸80の外周に嵌合された歯車81との間において、円周方向に配置された複数のニードル92を含んで形成されており、入力軸80が挿入されている歯車81の中心孔には、それぞれのニードル92が個別に収納された複数の収納空間が円周方向に形成されており、これらの収納空間は、第2中心軸42の正回転方向へ入力軸80との間隔が次第に小さくなった傾斜空間となっている。
このため、第2中心軸42の正回転が遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80に伝達されると、この回転は、正回転方向と同じ方向へ移動するニードル92を介して歯車81に伝達されることになり、言い換えると、このときにはクラッチ手段70Bの接続が行われ、これにより、第2中心軸42の正回転は減速手段70Aに伝達されてこの減速手段70Aで減速される。一方、第2中心軸42が逆回転し、この回転が遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80に伝達された場合には、ニードル92は正回転方向とは反対方向へ移動するため、第2中心軸42の逆回転は減速手段70Aに伝達されない。言い換えると、このときにはクラッチ手段70Bの切断が行われ、第2中心軸42は、前述した戻しばね53の蓄圧された戻しばね力で自由に逆回転する。
このように、本実施形態に係るクラッチ手段70Bは、ニードル式のクラッチ手段となっている。なお、クラッチ手段はこの形式のものに限定されず、摩擦板式等の任意な形式のものでよい。
そして、本実施形態に係る減速機70は、前記減速手段70Aとクラッチ手段70Bとが同じハウジング93の内部に組み込まれた一体型となっており、第2中心軸42に遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80を連結すると、減速手段70Aがクラッチ手段70Bを介して第2中心軸42に接続されるようになっている。このため、本実施形態では、入力軸80は、第2中心軸42の回転をクラッチ手段70Bに入力させるための軸にもなっている。
また、第2中心軸42の正回転時には、言い換えると、シャッターカーテン20を繰り出す巻取軸24の正回転時には、クラッチ手段70Bが接続されて減速手段70Aが作動するため、巻取軸24の正回転は減速されることになり、そして、このシャッターカーテン20の繰り出し時には、戻しばね53が蓄圧されるため、この戻しばね53の蓄圧分だけシャッターカーテン20の繰り出し速度は一層低下し、前述したように、火災発生時に全開位置から全閉位置へ達するシャッターカーテン20はこのように制動された速度で下降するため、シャッターカーテン20の下を避難者が安全に通過することができる。そして、シャッターカーテン20が全閉となった後に、エレベータの昇降箱4から降りてきた避難者は、前述したように、前記手掛け部材34によってシャッターカーテン20を持ち上げることができ、この持ち上げ時には、巻取軸24は戻しばね53の蓄圧された戻しばね力によって逆回転し、この逆回転はクラッチ手段70Bによって減速手段70Aに伝達されないため、シャッターカーテン20の持ち上げは、シャッターカーテン20が逆回転の巻取軸24に巻き取られることにより、小さい手操作力によって迅速に行うことができる。
図6は、巻取軸24の第2中心軸42と、この第2中心軸42に対して同軸的に配置されている減速機70の入力軸80とを連結している遊動許容カップリング手段100の分解斜視図を示し、図7は、これらの第2中心軸42と入力軸80とが遊動許容カップリング手段100で連結されているときを示す平面図である。
巻取軸24の減速機70側の端部には、言い換えると、第2中心軸42の入力軸80側の端部には、遊動許容カップリング手段100を構成する部材であるカップリング部材101が結合されている。このカップリング部材101には、入力軸80側の端面101Aで開口した穴102が形成されているとともに、この穴102と直交して穴102を貫通する切り込み部103が端面101Aから軸方向への切り込み深さをもって形成され、この切り込み部103は、第2中心軸42の直径方向に貫通した溝形状となっている。また、入力軸80の第2中心軸42側の端部近くには、入力軸80の軸方向と直交する方向へ突出する突起104が設けられ、この突起104は、入力軸80を直径方向へ貫通したピンによって形成されているため、突起104は入力軸80の円周方向の互いに反対側の位置に設けられている。
カップリング部材101の穴102には入力軸80の端部が挿入され、カップリング部材101の切り込み部103には入力軸80の突起104が挿入される。穴102の直径D1は入力軸80の直径D2よりも大きく、また、切り込み部103の幅寸法W1は突起104の幅寸法(直径)W2よりも大きい。このため、穴102への入力軸80の端部の挿入及び切り込み部103への突起104の挿入は、遊合状態で行われる。
本実施形態では、穴102と切り込み部103とにより、巻取軸24の第2中心軸42における凹部105が形成され、穴102に挿入される入力軸80の端部と突起104とにより、減速機70の入力軸80における凸部106が形成されている。凹部105に凸部106が上述のように遊合状態で挿入され、第2中心軸42が回転すると、凹部105と凸部106との回転方向の当接により、具体的には、切り込み部103と突起104との回転方向の当接により、第2中心軸42の回転が入力軸80に伝達される。
また、第2中心軸42が、この第2中心軸42に対して同軸的に配置されている入力軸80に対して、上記直径D1とD2との差や上記幅寸法W1とW2の差よりも小さい量だけ直径方向等へ遊動しても、第2中心軸42の回転は入力軸80に伝達される。すなわち、前記遊動許容カップリング手段100は、第2中心軸42が入力軸80に対して直径方向等へ遊動するのを許容し、第2中心軸42の回転を入力軸80に伝達できるものとなっている。
巻取軸24がシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出すための回転を行うとき、水平となっている巻取軸24には、シャッターカーテン20の重量や巻取軸24自体の重量が作用しているため、また、巻取軸24の回転時に振れ等が生ずることがあるため、巻取軸24は撓み変形しながら回転する。このため、巻取軸24の減速機70側の端部部材となっている第2中心軸42は、巻取軸24がシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出すための回転を行うときに、直径方向等への振れ運動を行いながら回転することになる。
本実施形態では、この第2中心軸42に減速機70の入力軸80が直結されておらず、遊動許容カップリング手段100を介して第2中心軸42と入力軸80とが連結されているため、巻取軸24がシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出すための回転を行うときに、第2中心軸42が直径方向等への振れ運動を行いながら回転しても、この回転は遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80に伝達されることになり、これにより、減速機70における減速手段70A及びクラッチ手段70Bを所定どおり作動させることができる。
また、減速機70は、巻取軸24を支持している前述した第1及び第2支持部材25,26のうちの第2支持部材26にブラケット71を介して取り付けられているため、この第2支持部材26を、巻取軸24と減速機70の両方のための支持部材として利用でき、それだけシャッター装置全体の構造を簡単化できるとともに、第2支持部材26に減速機70を不動状態で取り付けても、上述のように、巻取軸24がシャッターカーテン20の重量のために撓み変形しながら回転して、第2中心軸42が直径方向等へ振れ運動した場合に、この回転を減速機70の入力軸80に所定どおり入力させることができる。
さらに、図4で示されているとおり、第2支持部材26に減速機70を取り付けるためのブラケット71には孔71Bが形成されており、遊動許容カップリング手段100はこの孔71Bに挿入配置されているため、それだけ遊動許容カップリング手段100を含む減速機70の配置位置を巻取軸24の側へ近づけることができ、これにより、これらの巻取軸24や減速機70等からなる前記シャッターケース11の内部に収納される機器類の左右方向長さを短縮できる。
ところで、シャッターカーテン20が全開位置に達しているときにおける図4で示した戻しばね53の初期戻しばね力の大きさは、エレベータ用の防災シャッター装置が設置されるその施工現場に応じた適正値となっていることが求められる。このような適正値となった初期戻しばね力を得るためには、巻取軸24の回転側の部材となっている第2中心軸42や巻取軸本体49の回転を止め、巻取軸24の非回転側の部材となっている第1中心軸41を回転させ、これによって戻しばね53に対する巻き締め作業を行うことにより実現できる。
このような戻しばね53に対する巻き締め作業を行えるようにするため、巻き締め作業時に第2中心軸42が回転するのを止めるための図8の回転止め部材110が用意されており、また、この回転止め部材110を係合させるための係合部120がカップリング部材101に設けられている。これを具体的に説明すると、図6で示されているように、カップリング部材101には、面取り加工によって円周方向に4つの面101Bが形成されており、互いに反対側となっている2つの面101B同士の間隔はLであり、これら2つの面101Bによって上記係合部120が形成され、この係合部120は、カップリング部材101に2個設けられている。
図8で示した回転止め部材110には、係合部120が挿入係合される溝111が設けられており、板金の折り曲げ加工品であるこの回転止め部材110は、両端のフランジ部110A,110Bと、これらのフランジ部110A,110Bの間で隆起した隆起部110Cとを有し、この隆起部110Cに溝111が設け、この溝111の開口幅Hは係合部120の上記Lと対応する寸法となっている。それぞれのフランジ部110A,110Bには、第2支持部材26側へ直角に突出した突片110Dが設け、溝111の内部にカップリング部材101の係合部120を挿入係合しながら、これらの突片110Dを第2支持部材26に形成された細長開口部112に挿入し、上下2本のボルト113を回転止め部材110のフランジ部110A,110Bの孔114に挿入するとともに、第2支持部材26の孔115にも挿入し、これらのボルト113を第2支持部材26に溶接等で固定されたナット116に螺入して締め付けることにより、回転止め部材110は第2支持部材26に取り付けられる。そして、この回転止め部材110の溝111に係合部120が挿入係合されたカップリング部材101は、第2支持部材26に対する回転が止められることになる。
そして、図5で示した第1支持部材25側の回転止め部材60を第1支持部材25から取り外し、巻取軸24の前述した第1中心軸41のフラット状部41Cに図4の回転作業用工具130を係合し、この工具130で第1中心軸41を回転させることにより、巻取軸24の回転側の部材となっていた第2中心軸42や巻取軸本体49、第1ホイール部材45の回転が回転止め部材110で止められていて、巻取軸24の非回転側の部材となっていた第1中心軸41やばね連結部材52が回転するため、第1ホイール部材45とばね連結部材52との間に架設されている戻しばね53を、戻しばね力が適正値となるまでの巻き締めることができる。
なお、この戻しばね53の巻き締め作業を行うときには、図3で示した被係止部材28を係止装置29の係止部材29に係止させておくことにより、シャッターカーテン20を全開位置に停止させておく。また、戻しばね53の巻き締め作業を行うときには、前記シャッターケース11は、図3及び図4で示されているように、ケース本体11Aと、このケース本体11Aの前面開口部を塞ぐ前面部材11Bと、シャッターケース11の左右両端を塞ぐエンドキャップ11C,11D等からなり、これらの部材11A〜11Dはボルト・ナットやビス等の止着具で分解可能に組み立てられているため、ケース本体11Aからの前面部材11B、エンドキャップ11C,11Dの取り外しを行い、この後、図4を示した結合具72を取り外して第2支持部材26から減速機70を分離することにより、上述した戻しばね53の巻き締め作業を、第2支持部材26への回転止め部材110の取り付け作業と、第1支持部材25からの回転止め部材60の取り外し作業と、第1中心軸41のフラット状部41Cへの回転作業用工具130の係合作業とを行うことにより、行うことができる。
また、図6で示したカップリング部材101の面取り加工で形成される面101Bを4つとせず、互いに反対側となった2つだけとし、これにより、これら2つの面101Bによって上記係合部120の個数を1個としてもよい。
図9及び図10は、巻取軸24の第2中心軸42と減速機70の入力軸80とを連結する遊動許容カップリング手段100の第2実施形態を示す。この実施形態でも、巻取軸24の第2中心軸42の端部には、カップリング部材140が取り付けられている。このカップリング部材140は板金のコ字状の折り曲げ品であり、カップリング部材140は、第2中心軸42の端面に溶接等で結合された基部140Aと、この基部140Aの両端部から軸方向に延出している一対の延出部140B、140Cとからなり、これらの延出部140B,140Cに、軸方向への切り込み深さをもって切り込み部141が形成されている。一方、減速機70の入力軸80の端部近くには、図6及び図7の実施形態と同様に、入力軸80に貫通固定されたピンによる突起104が設けられている。
入力軸80の端部は、カップリング部材140の一対の延出部140B,140Cの間の空間に遊合状態で挿入され、突起104は、これらの延出部140B,140Cの切り込み部141に遊合状態で挿入される。このため、この実施形態では、一対の延出部140B,140Cの間の空間と切り込み部141とにより、巻取軸24の第2中心軸42における凹部105が形成され、入力軸80の端部と突起104とにより、減速機70の入力軸80における凸部106が形成され、この凸部106が凹部105に遊合状態で挿入されている。
この実施形態でも、巻取軸24が回転したときに図6及び図7の実施形態と同様の作用効果を得られ、第2中心軸42の回転を入力軸80に伝達することができる。また、一対の延出部140B,140Cの間隔及び/又は延出部140B,140Cの幅寸法を図6で示したLと同じに設定することにより、図8で示した回転止め部材110を用いて戻しばね53の巻き締め作業を行える。
特に、この実施形態によると、カップリング部材140は板金の打ち抜き、折り曲げ加工によって製造できるため、図6及び図7の実施形態よりもカップリング部材の製造コストを低減できることになる。
図11は、遊動許容カップリング手段100の第3実施形態を示す。この実施形態では、巻取軸24の第2中心軸42の端部に、入力軸80側の端面42Aから軸方向の切り込み深さをもって切り込み部150が形成され、この切り込み部150は第2中心軸42の直径方向へ貫通した溝状となっている。また、第2中心軸42に対して同軸的に配置されている減速機70の入力軸80には、第2中心軸42側の端部において、面取り加工によって2つの面80Aが互いに反対側に形成され、このため、この端部にはフラット状部151が設けられている。
このフラット状部151は切り込み部150に挿入され、フラット状部151の厚さ寸法H2は切り込み部150の開口幅H1よりも小さいため、この挿入を遊合状態で行える。
この実施形態では、切り込み部150が第2中心軸42における凹部105となっていて、フラット状部151が入力軸80における凸部106となっており、この凸部106が凹部105に遊合状態で挿入される。
この実施形態でも、巻取軸24が回転したときに図6及び図7の実施形態と同様の作用効果を得られ、第2中心軸42の回転を入力軸80に伝達することができる。
特に、この実施形態によると、切り込み部150にフラット状部151を挿入する作業は、第2中心軸42の軸方向へ入力軸80を移動させて行う必要がなく、溝状となっている切り込み部150が開口している直径方向からでも挿入できるため、防災シャッター装置が設置される現場において、例えば、減速機70のすぐ近くに壁等の障害物があっても、この障害物に影響されることなく、切り込み部150にフラット状部151を容易に挿入することができる。
また、この実施形態によると、第2中心軸42と入力軸80を加工するだけで、遊動許容カップリング手段100のための凹部105と凸部106を設けることができる。
なお、図8で示した回転止め部材110を用いて戻しばね53の巻き締め作業を行えるようにするためには、幅寸法等が図6のLと同じになったブロック状等の係合部材を第2中心軸42に取り付ければよい。