以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下に説明する本発明の一実施形態(以下、第1実施形態という)に係る開閉装置は、建物に設置される防災用シャッター装置である。はじめに、この防災用シャッター装置の全体構造を、開閉体であるシャッターカーテン17が全閉状態であるときの全体正面図である図1によって説明する。
図1に示すように、シャッターカーテン17は、左右方向であるシャッターカーテン幅方向に並設された開閉体本体である上下方向へ開閉移動する左右一対のカーテン本体21,31と、全閉状態のカーテン本体21とカーテン本体31との間に形成される連通部50と、この連通部50を上下動で開閉自在に覆う覆い部材51とを含んで構成されている。
この防災用シャッター装置は、シャッターカーテン17の奥側である室内側とシャッターカーテン17の手前側である室外側とを仕切る壁等の建物躯体6に形成された出入口となっている開口部9をシャッターカーテン17の構成部材であるカーテン本体21,31と覆い部材51の上下方向の開閉移動により開閉するものである。
カーテン本体21,31は、全部又は大部分がガラスクロス又はシリカクロスに耐火塗料等を塗布及び/又は含侵させることにより防火性と防煙性を有する薄厚部材で形成されている主要部21H,31Hと、この主要部21H,31Hの下端、すなわち、主要部21H,31Hの閉じ側の先端に設けられ、カーテン本体21、31の閉じ側の先端部を形成する第1エンド部材である座板24,34とから構成されている。
また、覆い部材51も、全部又は大部分がガラスクロス又はシリカクロスに耐火塗料等を塗布及び/又は含侵させることにより防火性と防煙性を有する薄厚部材で形成されている主要部51Hと、この主要部51Hに下端、すなわち、主要部51Hの閉じ側の先端に設けられ、覆い部材51の閉じ側の先端部を形成する第2エンド部材である座板54とから構成されている。
これらの座板24,34,54の形状、構造等については後述する。
なお、以下に説明するすべての実施形態において、左右一対のカーテン本体は左右対称形の同一構造を有しており、また、覆い部材自体は左右対称な構造を有している。
開口部9の上部の天井裏空間1には、シャッターカーテン17を巻き取り、繰り出す巻取体11が配置されている。この巻取体11は、左右一対のカーテン本体21,31を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取本体である左右一対の水平の巻取軸12,13と、覆い部材51を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取補助体である水平の巻取軸14とを含んで構成されている。
巻取軸12,13の回転中心部には水平の回転中心軸15が貫通しており、この回転中心軸15はこれらの巻取軸12,13に溶接、接着剤等で回転不能に連結されている。そして、巻取軸12,13同士を連結している回転中心軸15の左右の端部は左右一対のブラケット3で回転自在に支持されている。
また、回転中心軸15は、覆い部材51を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取軸14の回転中心部を貫通しており、この巻取軸14はこの回転中心軸15を中心に回転自在となっている。
以上のように、本実施形態では、巻取補助体である巻取軸14は、巻取本体である巻取軸12,13の延長軸上においてこれらの巻取軸12,13と同軸的に配置されている。
なお、これらの巻取軸12,13,14や回転中心軸15、左右のブラケット3等は、平常時においては、シャッターケース2の内部に組み込まれている。
図1に示されているように、左右一対のカーテン本体21,31のうちの一方である左のカーテン本体21の主要部21Hのうちの上部は幅寸法の短い幅狭部21Xとなっており、この幅狭部21Xより下の部分は幅寸法の広い幅広部21Yとなっている。このカーテン本体21と同様に、左右一対のカーテン本体21,31のうちの他方である右のカーテン本体31の主要部31Hのうち、上部は幅寸法の短い幅狭部31Xとなっており、この幅狭部31Xより下の部分は幅寸法の広い幅広部31Yとなっている。また、覆い部材51の主要部51Hのうちの上部は幅寸法の短い幅狭部51Xとなっており、一方、下部も幅寸法の短い幅狭部51Zとなっており、これらの上の幅狭部51Xと下の幅狭部51Zとの間は、幅寸法の長い幅広部51Yとなっている。
なお、図1において、覆い部材51の幅狭部51Zは座板54に隠れているので、この幅狭部51Zの形状等については後で詳述する。
図1に示されているように、カーテン本体21,31の主要部21H,31Hの幅狭部21X,31Xの幅寸法は、巻取軸12,13の軸方向の長さ寸法と同じ又は略同じとなっている。また、覆い部材51の主要部51Hの幅狭部51X,51Zの幅寸法も、巻取軸14の軸方向の長さ寸法と同じ又は略同じとなっている。
カーテン本体21の主要部21Hの幅広部21Yの右端部は、シャッターカーテン幅方向外側に水平に延出する水平延出部21Aとなっている。また、カーテン本体31の主要部31Hの幅広部31Yの左端部は、シャッターカーテン幅方向外側に水平に延出する水平延出部31Aとなっている。さらに、覆い部材51の主要部Hの幅広部51Yの左右の端部は、シャッターカーテン幅方向外側に延出する水平延出部51A,51Bとなっている。
図2は、図1のS2−S2線断面図、すなわち、シャッターカーテン17の水平断面図であり、図3は、左のカーテン本体21と覆い部材51の斜視図である。
図1から図3に示されているように、シャッターカーテン17が全閉状態にあるときには、覆い部材51の主要部51Hは、カーテン本体21,31の主要部21H,31Hの裏側(室内側)に配置されるようになっている。
そして、覆い部材51の主要部51Hの幅広部51Yの水平延出部51Aと、カーテン本体21の主要部21Hの幅広部21Yの水平延出部21Aとは、シャッターカーテン厚さ方向に対向し、覆い部材51の主要部51Hの幅広部51Yの水平延出部51Bと、カーテン本体31の主要部31Hの幅広部31Yの水平延出部31Aとは、シャッターカーテン厚さ方向に対向している。
また、カーテン本体21の水平延出部21Aの裏側(室内側)には、この水平延出部21Aと略同じ寸法、形状(図1参照)を有し、覆い部材51の水平延出部51Aをカーテン本体21の水平延出部21Aの裏側から覆う覆い片22が、金属耐火性を有する金属製線材を縫い糸とした縫着部21Bで縫着されている。また、カーテン本体31の水平延出部31Aの裏側(室内側)には、この水平延出部31Aと略同じ寸法、形状(図1参照)を有し、覆い部材51の水平延出部51Bをカーテン本体31の裏側から覆う覆い片32が、金属耐火性を有する金属製線材を縫い糸とした縫着部31Bで縫着されている。
このため、図1〜図3に示されているように、シャッターカーテン17が全閉状態にあるときには、覆い部材51の水平延出部51Aは、カーテン本体21の水平延出部21Aと覆い片22との間に挟まれるように配置され、同様に、覆い部材51の水平延出部51Bも、カーテン本体31の水平延出部31Aと覆い片32との間に挟まれるように配置される。これにより、シャッターカーテン17の全閉状態における覆い部材51による連通部50の密閉性が確保されている。
カーテン本体21の主要部21Hの上端部、すなわち、巻取軸12側の端部はこの巻取軸12に結合されており、カーテン本体21の主要部21Hの左端部は、建物躯体6に設けられた左のガイドレール7の内部に抜け止め部材23によって抜け止めされながら、スライド自在に挿入されている。また、カーテン本体31の主要部の31Hの上端部、すなわち、巻取軸13側の端部はこの巻取軸13に結合されており、カーテン本体31の主要部31Hの右端部は、建物躯体6に設けられた右のガイドレール7の内部に抜け止め部材33によって抜け止めされながら、スライド自在に挿入されている。
連通部50を覆っている覆い部材51の主要部51Hにおける平均的な身長を有する人の腰の高さ位置には、シャッターカーテン幅方向への長さを有する水平な袋部51Eが形成されており、この袋部51Eの内部には、覆い部材51の主要部51Hの補強材となる水平に延びる1本の金属製の中桟52が挿入されている。
袋部51Eには、中桟52を室外側及び室内側で露出させるための露出部51Fが、覆い部材51の主要部51Hの幅方向中央から等しい又は略等しい距離で左右に2個形成されている。なお、袋部51Eに形成する露出部51Fは、2個に限定されるものではなく、1個でもよく、あるいは、3個以上であってもよく、要するに、少なくとも1個あればよい。
連通部50が覆い部材51により覆われているときには、人が2個の露出部51Fから露出している中桟52に両手を掛けて持ち上げることにより覆い部材51を上方に開放移動させることができる。
なお、前記主要部51Hにおける平均的な身長を有する人の膝の高さ位置にも前記袋部51Eを形成し、この袋部51Eの内部に前記中桟52を挿入してもよい。これによると、車椅子に乗った体の不自由な人や、低い身長の人等でも膝の高さ位置の中桟52に手を掛けて覆い部材51を容易に開放、閉鎖移動させることができる。また、健常者等の立っている人が覆い部材51を持ち上げるときには、まず、腰の高さ位置にある中桟52に手を掛けて覆い部材51を持ち上げた後、途中で膝の高さ位置にあった中桟52に持ち手を移し換えることにより覆い部材51の開放、閉鎖移動が容易に行えるようになる。
また、図示されていないが、覆い部材51の座板54の室外側及び室内側には、この座板54の幅方向中央から等しい又は略等しい距離で手掛け部が左右に2個設けられており、これらの2個の手掛け部に両手を掛けて持ち上げることによっても、覆い部材51を上方に開放移動させることができる。
なお、平常時においては、左のカーテン本体21は巻取軸12に巻き取られており、同様に、右のカーテン本体31は巻取軸13に巻き取られている。そして、覆い部材51も巻取軸14に巻き取られている。
図1に示すように、左右一対のブラケット3のうち一方の(図1では右側)のブラケット3には、モータとブレーキの組み合わせからなる開閉機4が取り付けられており、この開閉機4は、巻取軸12,13や回転中心軸15とチェーン、スプロケット等からなる動力伝動手段5を介して連結されている。
火災発生によって図示しない手動レバーが操作されることにより、又は図示しないセンサが煙あるいは熱等を検出してこの検出信号が開閉機4の制御装置に送られることにより、開閉機4のブレーキが解除され、これにより、全開位置での停止状態を維持していた左右のカーテン本体21,31は座板24,34の重量を含む自重で巻取軸12,13を正回転させながら下降する閉鎖移動を開始する。これと同時に、座板54が後述するように左右のカーテン本体21,31の座板24,34の上側となっているために、全開位置での停止状態を維持していた覆い部材51も座板54の重量を含む自重で巻取軸14を正回転させながら下降する閉鎖移動を開始する。この後、覆い部材51は、カーテン本体21,31とともに同じ移動速度で下方への閉鎖移動を行うことになる。
カーテン本体21,31の座板24,34及び覆い部材51の座板54が相手部材である床8に接触して、カーテン本体21,31と覆い部材51とを含んで構成されるシャッターカーテン17が全閉状態となることにより、シャッターカーテン17で室内空間10に防災区画が形成される。
また、図示しないスイッチを操作すると、開閉機4のモータが駆動され、これにより、巻取軸12,13の逆回転で左右のカーテン本体21,31が巻取軸12,13に巻き取られ、カーテン本体21,31は上方への開放移動を開始する。これと同時に、座板54が後述するように左右のカーテン本体21,31の座板24,34の上側となっている覆い部材51も、座板54が座板24,34に持ち上げられながら、巻取軸14の逆回転で覆い部材51が巻取軸14に巻き取られて上方への開放移動を開始する。この後、覆い部材51は、カーテン本体21,31とともに同じ移動速度で上方への開放移動を行うことになる。
なお、これらのカーテン本体21,31及び覆い部材51の開閉移動の動作説明は後述する。
以上のように、覆い部材51は、カーテン本体21,31とともに同じ移動速度で上下方向への開閉移動を行うことになるが、この開閉移動は、覆い部材51の主要部51Hの水平延出部51Aがカーテン本体21の主要部21Hの水平延出部21Aと覆い片22とにシャッターカーテン厚さ方向に挟まれながら、また、覆い部材51の主要部51Hの水平延出部51Bがカーテン本体31の主要部31Hの水平延出部31Aと覆い片32とにシャッターカーテン厚さ方向に挟まれながら行われる。
なお、火災によって発生した煙が、シャッターケース2の内部空間やガイドレール7の内部空間を経由して、シャッターカーテン17で仕切られた反対側の空間へ流出するのを防ぐため、左のカーテン本体21の左端部及び右のカーテン本体31の右端部が挿入された左右一対のガイドレール7の内部と、左右のカーテン本体21,31及び覆い部材51が出入りするシャッターケース2のまぐさの部分には、それぞれ、図示しない遮煙部材が組み込まれている。
図1に示されているように、巻取軸12の右端は巻取軸14の左端から離間して配置されており、巻取軸12の右端と巻取軸14の左端との間は回転中心軸15のみとなっている。また、巻取軸13の左端も巻取軸14の右端から離間して配置されており、巻取軸13の左端と巻取軸14の右端との間は回転中心軸15のみとなっている。
そして、覆い部材51の水平延出部51Aと左のカーテン本体21の水平延出部21A及び覆い片22とは、巻取軸12の右端と巻取軸14の左端との間でシャッターカーテン厚さ方向に重なり合っており、右のカーテン本体31の水平延出部31A及び覆い片32と覆い部材51の水平延出部51Bとは、巻取軸13の左端と巻取軸14の右端との間でシャッターカーテン厚さ方向に重なり合っている。
このため、カーテン本体21,31が巻取軸12,13に巻き取られるとともに、覆い部材51が巻取軸14に巻き取られることにより、巻取軸12の右端部付近及び巻取軸14の左端部付近の巻き径が大きくなることはなく、また、巻取軸13の左端部付近及び巻取軸14の右端部付近の巻き径が大きくなることはない。
なお、図1に示されているように、本実施形態において、左右のカーテン本体21、31の上部は幅狭部21X、31Xとなっており、覆い部材51の上部は幅狭部51Xとなっている。
これは、左右のカーテン本体21,31の上端までの幅寸法が主要部21H,31Hの幅広部21Y、31Yと同じになっていて、かつ、覆い部材51の上端までの幅寸法が主要部51Hの幅広部51Yの幅寸法と同じになっており、さらに、左右のカーテン本体21,31の上部のうち、巻取軸12,13から繰り出されない部分、いわゆる、捨て巻き部分の長さが巻取軸12,13の1周以上ある場合には、覆い部材51が戻しコイルばね16の戻しばね力により巻取軸14に巻き取られるときに、覆い部材51のうちの左右のカーテン本体21,31の捨て巻き部分と重なり合う部分が、この捨て巻き部分を一緒に巻き込んでしまうため、覆い部材51が巻取軸14に巻き取られにくくなるからである。
このため、左右のカーテン本体21、31の上部を幅狭部21X、31Xとし、覆い部材51の上部を幅狭部51Xとすることにより、覆い部材51は、戻しコイルばね16の戻しばね力により巻取軸14にスムーズに巻き取られることになる。
また、前述したように、本実施形態において、左右のカーテン本体21、31の上部が幅狭部21X、31Xとなっており、覆い部材51の上部が幅狭部51Xとなっているのは、左右のカーテン本体21,31及び覆い部材51が巻取軸12,13,14にそれぞれ巻き取られたときに、左のカーテン本体21の水平延出部21A及び覆い片22と覆い部材51の水平延出部51Aとが重なり合いながら巻き取られることによるこの重なり部分の巻き径の増大を少しでも抑えるとともに、右のカーテン本体31の水平延出部31A及び覆い片32と覆い部材51の水平延出部51Bとが重なり合いながら巻き取られることによるこの重なり部分の巻き径の増大を少しでも抑えるためでもある。
次に、巻取体11の具体的な構造、作用を説明する。図4は巻取体11の水平断面図であり、また、図5は巻取体11の斜視図であって、巻取体11がシャッターカーテン17を繰り出すために正回転しているときの状態を示すものである。なお、図4及び図5において、カーテン本体21,31、覆い部材51は省略してある。
図4に示されているように、覆い部材51を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取補助体である巻取軸14は軽量化のために内部が中空となっている。
図1に示されているように、巻取軸14の内部における軸方向中央部又は略中央部には中子14Aが配置されており、この中子14Aは図5に示されているように円盤状の形状を有している。また、図4に示されているように、中子14Aの外周部分は巻取軸14の内周部分に溶接、接着剤等で結合されており、中子14Aの回転中心部には回転中心軸15が貫通している。このため、中子14Aは巻取軸14とともに回転中心軸15を中心に回転自在となっている。
軸方向中央部又は略中央部を中子14Aで仕切られた巻取軸14の内部空間のうちの右側の内部空間には、戻し弾性部材である戻しコイルばね16が収納配置されている。この戻しコイルばね16の一端は巻取軸14の中子14Aにビス等の止着具14Bで結合されており、他端は回転中心軸15にビス等の止着具15Aで結合されている。
なお、覆い部材51が巻取軸14に巻き取られているとき、すなわち、覆い部材51が全開位置に達しているときには、戻しコイルばね16に覆い部材51を巻き取る戻し弾性力である戻しばね力が蓄圧されるように、戻しコイルばね16は予め巻き締められた状態となっている。
図5は、シャッターカーテン17を構成する左右のカーテン本体21,31及び覆い部材51を繰り出すために、3個の巻取軸12,13,14がそれぞれ矢印方向に正回転している状態を示すものである。
前述したように、シャッターカーテン17の閉鎖移動は、左右のカーテン本体21,31が座板24,34の重量を含む自重で巻取軸12,13を矢印方向へ正回転させながら下降する閉鎖移動と、この閉鎖移動と同時に行われる、覆い部材51が座板54の重量を含む自重で巻取軸14を矢印方向へ正回転させながら下降する閉鎖移動とによってなされる。
このとき、予め巻き締められていた戻しコイルばね16は、巻取軸14の正回転が進むにしたがって徐々に緩み、予め蓄圧されていた戻しばね力が減少していくかのように見える。しかし、図4に示されているように、巻取軸14の巻き径は、他の2個の巻取軸12,13の巻き径と同じになっているため、覆い部材51及びカーテン本体21,31の繰り出し量は同じとなる。このため、他端が巻取軸12,13の回転中心軸15に結合され、予め巻き締められていた戻しコイルばね16は、巻取軸12,13,14とともに同じ回転速度で正回転することになる。
このため、覆い部材51が全閉位置に達するまでの間、戻しコイルばね16は巻き締められることもなく、また、巻き緩むこともない状態が維持されることになる。
そして、覆い部材51が全閉位置に達した後は、巻取軸12,13,14の回転が停止するので、戻しコイルばね16は巻き締められることもなく、また、巻き緩むこともない状態が維持される。
また、図5には示されていないが、シャッターカーテン17が上方への開放移動を行うときには、左右の巻取軸12,13による図5に示す矢印方向とは逆方向の回転により左右のカーテン本体21,31の巻き取りがなされるとともに、巻取軸14による図5に示す矢印方向とは逆方向の回転により覆い部材51の巻き取りがなされる。
このとき、戻しコイルばね16の他端が巻取軸12,13の回転中心軸15に結合されているため、予め巻き締められていた戻しコイルばね16は、巻取軸12,13とともに同じ回転速度で逆回転することになる。
なお、前述したように、左のカーテン本体21の上下方向の開閉移動は、カーテン本体21の左端部が左のガイドレール7に案内されながら行われ,また、右のカーテン本体31の上下方向の開閉移動は、カーテン本体31の右端部が右のガイドレール7で案内されながら行われる。
次に、左右のカーテン本体21,31の座板24,34及び覆い部材51の座板54の構造等を説明する。
まず、左のカーテン本体21の座板24の構造を図6及び図7により説明する。図6は、左のカーテン本体21の主要部21Hの閉じ側の先端に設けられ、カーテン本体21の閉じ側の先端部を形成する第1エンド部材である座板24と、覆い部材51の主要部51Hの先端の閉じ側に設けられ、覆い部材51の閉じ側の先端部を形成する第2エンド部材である座板54の斜視図である。図7は、左のカーテン本体21の座板24の縦側断面図である。
図6及び図7に示されているように、左のカーテン本体21の座板24は、シャッターカーテン厚さ方向に並設された1個のチャンネル状構成部材であるステンレス製のチャンネル部材25と、バー状構成部材である3個のスチール製のバー部材26,27,28とにより構成されている。
座板24を構成する構成部材となっているチャンネル部材25は、座板24の長さ方向、すなわちシャッターカーテン幅方向を長さ方向としている。また、座板24を構成する構成部材となっているバー部材26,27,28も、座板24の長さ方向、すなわちシャッターカーテン幅方向を長さ方向としている。
座板24の化粧材となっているチャンネル部材25は、2個のフランジ部25A,25Bがシャッターカーテン厚さ方向外側に配置されて、これらのフランジ部25A,25Bを繋ぐウエブ部25Cが下側に配置された上向きの開口状、言い換えると、カーテン本体21の開放移動方向に開口した形状として用いられ、座板24の芯材となっている3個のバー部材26,27,28は、シャッターカーテン厚さ方向に重ね合わせられて2個のフランジ部25Aと25Bとの間に挿入収納されている。
したがって、シャッターカーテン厚さ方向外側に配置されたフランジ部25A,25Bを有するチャンネル部材25は、座板24の外側構成部材となっており、これに対してバー部材26,27,28は、座板24の内側構成部材となっている。
3個のバー部材26,27,28のうちの中央のバー部材27は、カーテン本体21の主要部21Hの閉じ側の先端にこの主要部21Hの折り曲げと縫着とで形成された袋部21Cに収納され、この収納された状態で他のバー部材26,28と共にチャンネル部材25の内側に配置され、この中央のバー部材27は、袋部21Cを貫通したボルト29の軸部29A及びナット30でバー部材26,28及びチャンネル部材25に連結されている。
なお、図6に示されているように、座板24のチャンネル部材25の右端は、3個のバー部材26,27,28の右端よりもシャッターカーテン幅方向外側に延出しており、シャッターカーテン17が全閉状態のときには、後述するように、覆い部材51の3個のバー部材56,57,58の左端部が、座板24のチャンネル部材25のウエブ部25Cの上側となるように配置される。
以上、左のカーテン本体21の座板24の構造について説明したが、図1に示されているように、右のカーテン本体31の座板34は、シャッターカーテン厚さ方向に並設された1個のチャンネル状構成部材であるステンレス製のチャンネル部材35と、バー状構成部材である3個のスチール製のバー部材36,37,38とにより構成されており、右のカーテン本体31の座板34と左右対称形の同一構造を有している。このため、この座板34の構造の説明は省略する。
次に、覆い部材51の座板54の構造を説明する。図8は、図6において、覆い部材51を矢印方向、すなわち、上方へ開放移動させたときの状態を示す図である。
図8に示されているように、左右のカーテン本体21,31の座板24,34と同様に、覆い部材51の座板54も覆い部材51の厚さ方向に並設された1個のチャンネル状構成部材であるステンレス製のチャンネル部材55と、バー状構成部材である3個のスチール製のバー部材56,57,58とにより構成されている。
覆い部材51の座板54のチャンネル部材55は、左右のカーテン本体21,31のチャンネル部材25,35と同様の構造を有しており、また、覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58も、左のカーテン本体21のバー部材26,27,28及び右のカーテン本体31のバー部材36,37,38と同様の構造を有している。さらに、この座板54自体は左右対称形の構造を有している。
図1及び図8に示されているように、座板24のチャンネル部材25の右端部は、この右端部のウエブ部25Cが座板54のバー部材56,57,58の左端部の下側となるように、シャッターカーテン幅方向外側に延出しており、座板34のチャンネル部材35の左端部は、この左端部の図示しないウエブ部が座板54のバー部材56,57,58の右端部の下側となるように、シャッターカーテン幅方向外側に延出している。
図1に示されているように、座板54のチャンネル部材55のシャッターカーテン幅方向の長さ寸法は、座板54のバー部材56,57,58のシャッターカーテン幅方向の長さ寸法よりも短くなっている。これは、座板54のチャンネル部材55の左端部が、シャッターカーテン幅方向外側に延出している座板24のチャンネル部材25の右端部と接触しないようするためであり、また、座板54のチャンネル部材55の右端部も、シャッターカーテン幅方向外側に延出している座板34のチャンネル部材35の左端部と接触しないようにするためである。
このため、シャッターカーテン17が全開時から全閉時においては、覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の左端部は、左のカーテン本体21の座板24のチャンネル部材25の右端部のウエブ部25Cの上に載置され、覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の右端部も、右のカーテン本体31の座板34のチャンネル部材35の左端部の図示しないウエブ部の上に載置されるようになっている。
次に、覆い部材51の主要部51Hの下部の幅狭部51Zの形状、構造等を幅広部51Yとともに説明する。図1及び図6に示されているように、左のカーテン本体21の座板24のバー部材26,27,28の右端は、覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の左端に対してシャッターカーテン幅方向外側に離間して配置されるようになっている。
これは、シャッターカーテン17の開閉移動時や全閉状態等において、座板24のバー部材26,27,28の左端部と座板54のバー部材56,57,58の右端部同士が衝突等するのを避けるためである。
また、これと同様の理由から、右のカーテン本体31の座板34のバー部材36,37,38の左端も、覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の右端に対してシャッターカーテン幅方向外側に離間して配置されるようになっている。
このため、シャッターカーテン17が全閉状態にあるときには、左のカーテン本体21の座板24のバー部材26,27,28の左端と覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の右端との間には隙間が形成され、また、右のカーテン本体31の座板34のバー部材36,37,38の左端と覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の右端との間にも隙間が形成されることになり、火災発生時等の非常時等には、発生した炎や煙等が、これらの隙間を通過して、火災等が発生していない安全な空間へ流入するおそれがある。
このため、図1及び図8に示すように、覆い部材51の主要部51Hの幅狭部51Zの幅方向両側には、座板24のバー部材26,27,28の右端と座板54のバー部材56,57,58の左端との隙間、及び座板34のバー部材36,37,38の左端と座板54のバー部材56,57,58の右端との隙間を遮蔽するための遮蔽片51Gが配置されている。
覆い部材51自体は左右対称形の構造を有しているので、以下、幅狭部51Zの幅方向左側に配置される遮蔽片51Gの形状、構造等について説明する。
図9は、鉛直方向に垂下させた覆い部材51の主要部51Hの幅広部51Yと幅狭部51Zの一部の斜視図である。図9に示されているように、幅狭部51Zは、覆い部材51の主要部51Hのうちの水平な境界線Kから下の部分となっており、幅広部51Yの下辺はこの境界線Kに沿うものとなっている。
図9に示されているように、遮蔽片51Gは、幅狭部51Zの幅方向両側のうちの一方の側である左側に設けられており、その形状は、左のカーテン本体21の座板24のバー部材26,27,28の左端と覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の右端との間に形成される隙間の形状に対応する縦長の長方形となっている。
遮蔽片51Gは、右辺が幅狭部51Zの左辺に沿うように、また、上辺が幅広部51Yの下辺に沿うように主要部51Hに設けられている。そして、遮蔽片51Gは、上辺が幅広部51Yの下辺に接続されており、この上辺を中心にシャッターカーテン厚さ方向に揺動自在となっている。
図10〜図13は、図9において、座板54のバー部材56,57,58のうちの中央のバー部材57を覆い部材51の主要部51Hの幅狭部51Zの閉じ側の先端に収納するための一連の手順を示す斜視図である。
図10に示すように、まず、バー部材57の奥側(室内側)全体を垂下状態の覆い部材51の主要部51Hの幅狭部51Zに接触、密着させる。このとき、バー部材57のうちの幅狭部51Zと対面する対面部の左辺が遮蔽片51Gの右辺に沿うようにし、かつ、バー部材57のうちの幅狭部51Zと対面する対面部の下辺の高さ位置が遮蔽片51Gの下辺の高さ位置と一致するように配置する。
次に、図10及び図11に示すように、幅狭部51Zの閉じ側の端部を矢印方向である手前方向へ持ち上げ、バー部材57の底面を包むように折り曲げる。
この後、幅狭部51Zの閉じ側の端部をさらに矢印方向へ持ち上げ、図12に示すように、幅狭部51Zの閉じ側の端部がバー部材57の手前側(室外側)全体を覆う状態になったら、折り曲げた幅狭部51Zの閉じ側の端部の一部とこの端部の一部と対面する幅広部51Yの一部とを、矢印方向であるシャッターカーテン厚さ方向内側に押し付ける。
この後、図13に示すように、折り曲げた幅狭部51Zの閉じ側の端部の一部とこの端部の一部と対面する幅広部51Yの一部同士を、金属耐火性を有する金属製線材を縫い糸とした縫着部51Dで縫着する。
なお、遮蔽片51Gは、このとき、図13に示されているように、バー部材57の左端面におけるシャッターカーテン厚さ方向中央部に垂下した状態となる。
幅狭部51Zの閉じ側の先端に収納されたバー部材57は、この後、左右のバー部材56,58とともにチャンネル部材55の図示しない2個のフランジ部に挿入収納される。
なお、幅狭部51Zの閉じ側の先端に幅狭部51Zの折り曲げと縫着とで図13に示す袋部51Cを予め形成しておき、この袋部51Cにバー部材57を後から挿入収納するようにしてもよい。
次に、戻しコイルばね16の戻しばね力による覆い部材51の巻取軸14回りのトルクと、覆い部材51の自重に基づく下方への閉鎖移動力による覆い部材51の巻取軸14回りのトルクとの関係を図14〜図16により説明する。
図14は覆い部材51が全開位置に達しているときの両トルクの関係を示す概念図であり、図15は覆い部材51が全閉位置に達しているときの両トルクの関係を示す概念図であり、図16は覆い部材51が上方へ開放移動しているときの両トルクの関係を示す概念図である。
図14は、覆い部材51の座板54が図示しない天井部材に設けられているまぐさ60の位置まで達している状態、すなわち、覆い部材51が全開位置に達している状態を示すものである。
図14には、戻しコイルばね16の戻しばね力による覆い部材51の巻取軸14回りのトルクT1と、覆い部材51の自重に基づく下方への閉鎖移動力による覆い部材51の巻取軸14回りのトルクT2が示されている。図14に示されているように、このトルクT2は、巻取軸14の中心から覆い部材51の最外層巻き部までの距離L1と、覆い部材51の全体重量のうち、巻取軸14から繰り出されている覆い部材51の自重に基づく下方への閉鎖移動力Wとを乗算した値である。この閉鎖移動力Wは、覆い部材51の座板54の重量w1と、巻取軸14から繰り出されている覆い部材51の主要部51Hの重量w2との合計となっている。
これらの距離L1と閉鎖移動力Wは巻取軸14からの覆い部材51の主要部51Hの繰り出し量と関係する関数となっており、このため、トルクT2は、巻取軸14からの覆い部材51の主要部51Hの繰り出し量に伴って変化する。
本実施形態では、覆い部材51が全開位置に達しているときには、戻しコイルばね16には予め戻しばね力が蓄圧されているが、この蓄圧されている戻しばね力による巻取軸14回りのトルクT1は、覆い部材51の自重の基づく下方への閉鎖移動力Wによる巻取軸14回りのトルクT2よりも小さくなっている。言い換えると、戻しコイルばね16の巻き数や直径等によるばね特性は、このようなトルクT1とトルクT2の大小関係を得られるように設定されている。
図15は、覆い部材51が全閉位置に達しているときのトルクの関係を示す概念図である。
前述したように、左右のカーテン本体21,31が下方への閉鎖移動を開始すると同時に、覆い部材51も下方への閉鎖移動を開始するが、巻取軸12,13は左右のカーテン本体21,31を繰り出す正回転を行うとともに、巻取軸14は覆い部材を繰り出す正回転を行う。ここで、覆い部材51の座板54がカーテン本体21,31の座板24,34の上側となっているため、カーテン本体21,31及び覆い部材51は、同じ移動速度で下方への閉鎖移動を行う。言い換えると、カーテン本体21,31の巻取軸12,13は、覆い部材51の巻取軸14と同じ回転速度で正回転運動を行う。
このとき、巻取軸14の内部の中子14Aに結合されている戻しコイルばね16の一端には、巻取軸14の正回転力が伝達されるとともに、巻取軸12,13の回転中心軸15に結合されている戻しコイルばね16の他端には、巻取軸12,13の正回転力が伝達される。このため、戻しコイルばね16は全体として巻取軸12,13,14と同じ回転速度で正回転運動を行う。
これは、前述したように、図4に示されているように、巻取軸14の巻き径が他の2個の巻取軸12,13の巻き径と同じとなっており、このため、覆い部材51及びカーテン本体21,31の繰り出し量が同じとなるからである。
したがって、覆い部材51が全開位置に達している状態から全閉位置に達する状態までの間、覆い部材51が全開位置に達しているときに予め戻しばね力が蓄圧されていた戻しコイルばね16は巻き緩められることも、巻き締められることもないため、蓄圧されていた戻しばね力もこの間変化することはない。
このため、図15に示されているように、覆い部材51が全開位置に達しているときのトルクT1は、覆い部材51が全閉位置に達しするまでの間に増減することはない。
一方、図15に示されているように、覆い部材51の自重に基づく下方への閉鎖移動力Wは、覆い部材51の座板54の重量w1と、巻取軸14から繰り出された覆い部材51の主要部51Hの重量w3との合計となっている。
したがって、覆い部材51の自重に基づく下方への閉鎖移動力Wによる巻取軸14回りのトルクT2は、巻取軸14の中心から覆い部材51の最外層巻き部までの距離L2と、覆い部材51の自重に基づく下方への閉鎖移動力Wとを乗算した値となるが、このときのトルクT1はトルクT2よりも小さくなっている。前述したように、戻しコイルばね16の巻き数や直径等によるばね特性は、このようなトルクT1とトルクT2の大小関係を得られるように設定されている。
以上のように、本実施形態では、覆い部材51の全開から全閉の全範囲について、トルクT1はT2よりも小さくなっている。
図16は、全開状態に達していた覆い部材51を上方へ開放移動したときのトルクの関係を示す概念図である。
図16に示されているように、覆い部材51の自重に基づく下方への閉鎖移動力Wは、覆い部材51の座板54の重量w1と、巻取軸14から繰り出されている覆い部材51の主要部51Hの重量w4との合計となっている。
したがって、覆い部材51の自重の基づく下方への閉鎖移動力Wによる巻取軸14回りのトルクT2は、巻取軸14の中心から覆い部材51の最外層巻き部までの距離L3と、覆い部材51の自重に基づく下方への閉鎖移動力Wとを乗算した値となるが、このときのトルクT1はトルクT2よりも小さくなっている。
覆い部材51の自重に基づく下方への閉鎖移動力である覆い部材51の全体重量Wから座板54の重量w1を差し引いた覆い部材51の主要部51Hの重量w4を考えた場合、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸14回りのトルクT1が、覆い部材51の全閉から全開の全範囲について、この覆い部材51の主要部51Hの重量w4に基づく下方への閉鎖移動力による巻取軸14回りのトルクT2´(図16参照)よりも大きくなるように、戻しコイルばね16のばね特性が設定されている。
したがって、覆い部材51が全閉状態又は半閉状態となっているときに、座板54を持ち上げる等することによって覆い部材51の主要部51Hに座板54の重量w1が作用しないようにすると、巻取軸14は、戻しコイルばね16の戻しばね力で覆い部材51を巻き上げる方向へ回転するようになっている。
次に、本実施形態に係る防災用シャッター装置の動作について説明する。
火災発生によって図示しない手動レバーが操作されることにより、又は図示しないセンサが煙あるいは熱等を検出してこの検出信号が開閉機4の制御装置に送られることにより、開閉機4のブレーキが解除され、これにより、全開位置での停止状態を維持していた左右のカーテン本体21,31は座板24,34の重量を含む自重で巻取軸12,13を正回転させながら下降する閉鎖移動を開始する。
これと同時に、覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の左右の端部が左のカーテン本体21の座板24のチャンネル部材25のウエブ部25C及び右のカーテン本体31の座板34のチャンネル部材35の図示しないウエブ部の上側となっているために全開位置での停止状態を維持していた覆い部材51も、座板34の重量を含む自重で巻取軸14を正回転させながら下降する閉鎖移動を開始する。
左右のカーテン本体21,31及び覆い部材51が下方へ閉鎖移動しているときには、前述したように、巻取軸14の内部の中子14Aに結合されている戻しコイルばね16の一端には、覆い部材51を繰り出す巻取軸14の正回転力が伝達され、巻取軸12,13の回転中心軸15に結合されている戻しコイルばね16の他端には、カーテン本体21,31を繰り出す巻取軸12,13の正回転力が伝達されるため、戻しコイルばね16は全体として巻取軸12,13,14と同じ回転速度で正回転運動を行う。
したがって、前述したように、覆い部材51が全開位置に達している状態から全閉位置に達する状態までの間、覆い部材51が全開位置に達しているときに、覆い部材51を巻き取るときの巻取軸14の回転に利用される戻しばね力が予め蓄圧されていた戻しコイルばね16は巻き緩められることも、巻き締められることもなく、戻しコイルばね16には覆い部材51を巻き取る戻しばね力が蓄圧されたままの状態が維持される。
左右のカーテン本体21,31の座板24,34及び覆い部材51の座板54が相手部材である床8に接触して、左右のカーテン本体21,31と覆い部材51とを含んで構成されるシャッターカーテン17が全閉状態となることにより、シャッターカーテン17で室内空間10に防災区画が形成される。
なお、シャッターカーテン17が全閉状態となることにより、巻取軸12,13の正回転が停止状態となるとともに、この巻取軸12,13に連結されている回転中心軸15の正回転も停止状態となる。このため、シャッターカーテン17が全閉状態となっている間は、回転中心軸15は回転不能な非回転部材として機能し、巻取軸14はこの回転中心軸15を中心に回転自在な状態となる。
シャッターカーテン17が全閉状態となった後に、避難者等がシャッターカーテン17で仕切られた室内空間10のうちの一方の空間から他方の空間へ移動しようとする場合には、避難者等は、覆い部材51の袋部51Eに挿入されている中桟52が露出している露出部51F、又は座板54に設けられている図示しない手掛け部などに手を掛けて覆い部材51を持ち上げて、覆い部材51を上方へ開放移動させればよい。
このとき、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸14回りのトルクが、覆い部材51の重量のうちの座板54の重量を差し引いた主要部51Hの重量による巻取軸14回りのトルクよりも大きくなるため、巻取軸14は、蓄圧されていた戻しコイルばね16の戻しばね力で覆い部材51を巻き上げる方向へ回転するようになる。
このため、覆い部材51の開放移動操作は、戻しコイルばね16に蓄圧されていた戻しばね力によって補助されるため、大きな力を必要とせずに軽く行うことができる。
覆い部材51を上方へ開放移動させることにより、覆い部材51の下には連通部50が形成されるので、避難者等はこの連通部50を通過することで一方の空間から他方の空間へ移動することができる。
覆い部材51を持ち上げながら連通部50を通過した避難者等が、前記露出部51F又は前記手掛け部から手を離すと、前述したように、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸14回りのトルクが、覆い部材51の自重による巻取軸14回りのトルクよりも小さくなるため、覆い部材51は自ずと下方へ閉鎖移動を開始し、再び全閉状態へ復帰する。
火災発生等の非常事態が解除されたために、全閉状態となっていたシャッターカーテン17全体を再び上方へ開放移動させる場合や、動作点検等のために一度全閉状態にしたシャッターカーテン17全体を再び上方へ開放移動させる場合等には、図示しないスイッチの操作により開閉機4のモータを駆動させる。これにより、巻取軸12,13がカーテン本体21,31を巻き取る逆回転を開始するので、カーテン本体21,31は、巻取軸12,13に巻き取られて上方への開放移動を開始する。
カーテン本体21,31が上方への開放移動を開始すると、カーテン本体21の座板24のチャンネル部材25のウエブ部25C及びカーテン本体31の座板34のチャンネル部材35の図示しないウエブ部の上側となっている覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58は、これらのウエブ部により持ち上げられる。
巻取軸12,13が逆回転することにより、巻取軸12,13の回転中心軸15に結合されている戻しコイルばね16の他端には、この巻取軸12,13の逆回転力が伝達されるため、戻しコイルばね16も逆回転する。一方、戻しコイルばね16の一端は巻取軸14の中子14Aに結合されているため、戻しコイルばね16の逆回転力はこの一端を介して巻取軸14にも伝達する。
このため、巻取軸14も覆い部材51を巻き取る逆回転を行うことになる。しかもこのとき、覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の左右の端部は、左右のカーテン本体21,31のウエブ部により持ち上げられているので、巻取軸14の逆回転は軽く行われる。
このため、覆い部材51が全閉位置に達している状態において覆い部材51を巻き取るときの巻取軸14の逆回転に利用される戻しばね力が蓄圧されていた戻しコイルばね16は、巻き緩められることも、巻き締められることもなく、巻取軸12,13,14と同じ回転速度で逆回転運動を継続するので、戻しコイルばね16には覆い部材51を巻き取る戻しばね力が蓄圧されたままの状態が維持される。
そして、シャッターカーテン17が全開位置に達したときには、開閉機4のモータの駆動は停止され、これにより、巻取軸12,13,14の逆回転運動は停止する。この後も、戻しコイルばね16には覆い部材51を巻き取る戻しばね力が蓄圧されたままの状態が維持される。
また、覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の左右の端部は、左のカーテン本体21の座板24のチャンネル部材25のウエブ部25C及び右のカーテン本体31の座板34のチャンネル部材35の図示しないウエブ部により上向きに支持され続ける。
以上説明したように、本実施形態では、シャッターカーテン17が全閉状態になることにより室内空間10が仕切られ、避難者等がこのシャッターカーテン17で仕切られた室内空間10のうちの一方の空間から他方の空間へ移動するためには、シャッターカーテン17全体を上方へ開放移動する必要はなく、連通部50を覆っている覆い部材51のみを開放移動し、この開放移動によって覆い部材51の下に形成された連通部50を通過すればよいことになる。
このため、本実施形態によると、避難者等が、シャッターカーテン17で仕切られた空間のうちの一方の空間から他方の空間へ移動するときにおけるシャッターカーテン17による良好な密閉性を確保することができるようになる。
また、本実施形態では、巻取体11は、覆い部材51の全開状態には予め戻しばね力が蓄圧されていてこの蓄圧された戻しばね力が覆い部材51を巻き取るときの巻取軸14の回転に利用される戻しコイルばね16を有している。
このため、本実施形態によると、巻取体11が有する戻しコイルばね16に予め蓄圧されていた戻しばね力が、覆い部材51を巻き取るときの巻取軸14の回転に利用されるので、より小さな操作力で連通部50を覆っている覆い部材51を開放移動させることができるようになる。
また、本実施形態では、覆い部材51を上方へ開放移動したときには、開放移動させた覆い部材51の下に形成される連通部50の下辺となる床8には、障害物が何も存在しない、いわゆるバリアフリーの状態となる。
このため、本実施形態によると、避難者等は連通部50を安全にしかも迅速に通過することができる。
さらに、本実施形態では、巻取補助体である巻取軸14が巻取本体である巻取軸12,13の延長軸上においてこれらの巻取軸12,13と同軸的に配置されている。
このため、本実施形態によると、巻取軸12,13,14の収納スペースであるシャッターケース2を大きくとる必要がなくなる。
さらに、本実施形態では、巻取軸14が中空部材となっているので、戻し弾性部材である戻しコイルばね16をこの巻取軸14の内部に収納配置することができる。
このため、本実施形態によると、戻しコイルばねを含めた巻取軸全体の大きさを、戻しコイルばねを配設しない巻取軸と同じにすることができる。
図17〜図19は、前述の第1実施形態における左右のカーテン本体21,31の主要部21H,31Hの閉じ側の先端に設けられ、カーテン本体21,31の閉じ側の先端部を形成する第1エンド部材、及び覆い部材51の主要部51Hの閉じ側の先端に設けられ、覆い部材51の閉じ側の先端部を形成する第2エンド部材の別実施形態(以下、第2実施形態という)を示すものである。以下、第1エンド部材及び第2エンド部材の構造等を図17〜図19により説明する。
図17は、シャッターカーテン17が全閉状態にあるときの第1エンド部材である座板124及び第2エンド部材である座板154の斜視図であり、図18は、図17において、覆い部材51を矢印方向、すなわち上方へ開放移動させたときの状態を示す斜視図である。また、図19は、座板154の構成部材である3個のバー部材156,157,158の縦側断面図である。
まず、座板124について説明する。図17及び図18には一部しか示されていないが、座板124の外側構成部材であるチャンネル部材125のシャッターカーテン幅方向の長さ寸法は、左のカーテン本体21の左端から右のカーテン本体31の右端までに亘る長さとなっている。
このため、チャンネル部材125は、第1開閉体本体部となっている左のカーテン本体21の主要部21Hの閉じ側の先端と第2開閉体本体部となっている右のカーテン本体31の主要部31Hの閉じ側の先端とに跨って設けられている。
第2エンド部材である座板154の全部は、第1エンド部材である座板124の上側に配置されるようになっており、図18に示されているように、座板124のうちの座板154(シャッターカーテン幅方向の左右の端部を除く)の下側となっている部分は、水平又は略水平なフラット部125Dとなっている。このフラット部125Dは、座板124のチャンネル部材125のうちの座板154(シャッターカーテン幅方向の左右の端部を除く)の下側となっている部分におけるフランジ部125A,125Bを切り取ることにより形成されるものである。
チャンネル部材125自体は左右対称形の構造を有しており、チャンネル部材125のうちのフラット部125Dを除いた部分、すなわち、左のチャンネル部材125の2個のフランジ部125A,125Bとウエブ部125C、及び図示しない右のチャンネル部材の2個のフランジ部とウエブ部の形状、構造、寸法等については、前述の第1実施形態の左右の座板24、34のチャンネル部材25、35と全く同じであるので説明は省略する。
図17に示されているように、前述の第1実施形態の3個のバー部材26,27,28のうちの中央のバー部材27が、左のカーテン本体21の主要部21Hの閉じ側の先端に形成された袋部21Cに収納されており、このバー部材27は、他の2個のバー部材26,28とともに左のチャンネル部材125に挿入収納されている。
また、右のカーテン本体31の主要部31Hの閉じ側の先端に形成された図示しない袋部にも、前述の第1実施形態の3個のバー部材26,27,28のうちの中央のバー部材27が収納されており、このバー部材27は、他の2個のバー部材26,28とともに図示しない右のチャンネル部材に挿入収納されている。
次に、第2エンド部材である座板154について説明する。図18及び図19に示されているように、座板154の構成部材は前述の第1実施形態の3個のバー部材56,57,58のみとなっており、これらのバー部材56,57,58は、図19に示されているように、バー部材56,57,58をシャッターカーテン厚さ方向に貫通したボルト159の軸部159Aとナット160で連結されている。
本実施形態では、第2エンド部材である座板154の全部は、第1エンド部材である座板124のチャンネル部材125の上側に配置されるようになっている。
このため、本実施形態によると、前述の第1実施形態と比較して、覆い部材51の座板154が左右のカーテン本体21,31の座板124でシャッターカーテン17の開放移動方向に確実に支持されながら、覆い部材51の上下方向への開閉移動が行われることになる。
また、本実施形態では、座板124のチャンネル部材125のうちの座板154(シャッターカーテン幅方向の左右の端部を除く)の下側となっている部分は、水平又は略水平なフラット部125Dとなっている。
避難者等が覆い部材51を上方へ開放移動したときには、開放移動させた覆い部材51の下に形成される連通部50の下辺はフラット部125Dとなるが、本実施形態によると、フラット部125Dのシャッターカーテンの開閉方向の厚さは薄いものとなっているので、避難者等が覆い部材51の下に形成された連通部50を通過する際には、このフラット部125Dが通過の邪魔になることはない。すなわち、開放移動した覆い部材51の下はバリアフリーに近い状態となる。
さらに、本実施形態では、覆い部材51の座板154の構成部材が、前述の第1実施形態と同じ3個のバー部材56,57,58のみとなっている。
このため、座板154の軽量化が図れ、覆い部材を上方へ開放移動するときに必要な操作力がより小さくて済む。また、座板154の部品点数が少なくなるので、座板154の組立作業の省力化も図ることができる。
図20は、前述の第1実施形態における左右のカーテン本体21,31の主要部21H,31Hの閉じ側の先端に設けられている第1エンド部材のさらなる別実施形態(以下、第3実施形態という)を示すものである。以下、第1エンド部材の構造等を図20により説明する。
図20は、シャッターカーテン17が全閉状態にあるときの第1エンド部材である左のカーテン本体21の座板224及び第2エンド部材である座板54の斜視図である。
本実施形態では、覆い部材51の主要部51Hの閉じ側の先端に設けられている第2エンド部材は、前述の第1実施形態の第2エンド部材である座板54となっているので、この座板54についての説明は省略する。
座板224の外側構成部材であるチャンネル部材225のシャッターカーテン幅方向の長さ寸法は、前述の第2実施形態と同様に、左のカーテン本体21の左端から右のカーテン本体31の右端までに亘る長さとなっており、このため、チャンネル部材225は、第1開閉体本体部である左のカーテン本体21の主要部21Hの閉じ側の先端と、第2開閉体本体部である右のカーテン本体31の主要部31Hの閉じ側の先端とに跨って設けられている。
また、座板54の全部は座板224の上側に配置されるようになっており、図20に示されているように、座板224のうちの座板54(シャッターカーテン幅方向の左右の端部を除く)の下側となっている部分は水平又は略水平なフラット部225Dとなっている。
座板224のチャンネル部材225のフランジ部225A,225Bの上面の高さ位置が座板54のチャンネル部材55の図示しない2個のフランジ部の上面の高さ位置と等しく又は略等しくなるように、フランジ部225A,225Bのシャッターカーテン開閉方向の長さ寸法が設定されており、また、座板224のバー部材226,227,228の上面の高さ位置も座板54のバー部材56,57,58の上面の高さ位置と等しく又は略等しくなるように、バー部材226,227,228のシャッターカーテン開閉方向の長さ寸法が設定されている。
すなわち、2個のフランジ部225A,225B及び3個のバー部材226,227,228のシャッターカーテン開閉方向の長さ寸法は、前述の第1実施形態の2個のフランジ部25A,25B及び3個のバー部材26,27,28の開閉方向の長さ寸法よりも、覆い部材51のチャンネル部材55のウエブ部のシャッターカーテン開閉方向の厚さ寸法分だけ長くなっている。
なお、図示されていないが、右のチャンネル部材の2個のフランジ部及び右の3個のバー部材のシャッターカーテン開閉方向の長さ寸法も、前述の第1実施形態の2個のフランジ部25A,25B及び3個のバー部材26,27,28のシャッターカーテン開閉方向の長さ寸法よりも、覆い部材51のチャンネル部材55のウエブ部のシャッターカーテン開閉方向の厚さ寸法分だけ長くなっている。
以上のように、本実施形態では、第1エンド部材及び第2エンド部材が、前述の第2実施形態の第1エンド部材である座板124を変形させたものと、前述の第1実施形態の第2エンド部材である座板54とを組み合わせたものとなっている。
本実施形態では、前述の第2実施形態と同様に、第2エンド部材である座板54の全部は、第1エンド部材である座板224のチャンネル部材225の上側に配置されるようになっている。
このため、本実施形態においても、覆い部材51の座板54が左右のカーテン本体21,31の座板224でシャッターカーテン17の開放移動方向に確実に支持されながら、覆い部材51の上下方向への開閉移動が行われることになる。
また、本実施形態では、前述の第2実施形態と同様に、チャンネル部材225のうちの座板54(シャッターカーテン幅方向の左右の端部を除く)の下側となっている部分は、水平又は略水平なフラット部225Dとなっている。
避難者等が覆い部材51を上方へ開放移動したときには、開放移動させた覆い部材51の下に形成された連通部50の下辺はフラット部225Dとなるが、本実施形態においても、フラット部225Dのシャッターカーテン開閉方向の厚さ寸法が薄いものとなっているので、前述の第2実施形態と同様に、避難者等が覆い部材51の下に形成された連通部50を通過する際には、このフラット部225Dが通過の邪魔になることはない。すなわち、開放移動した覆い部材51の下はバリアフリーに近い状態となる。
図21及び図22は、本発明の巻取体の別実施形態(以下、第4実施形態という)を示すものである。
図21は、本実施形態に係る防災用シャッター装置の全体正面図であり、前述の図1と同様の図である。また、図22は、本実施形態の巻取体の水平断面図であり、前述の図2と同様の図である。
図21に示されているように、本実施形態に係る防災用シャッター装置は、巻取体及びこの巻取体を駆動させための装置、部材等を除いて、前述の第1実施形態に係る防災用シャッター装置と同じ部材等から構成されている。
すなわち、開閉体であるシャッターカーテン17が、開閉体本体である上下方向へ開閉移動する左右一対のカーテン本体21,31と、全閉状態のカーテン本体21とカーテン本体31との間に形成される連通部50と、この連通部50を上下動で開閉自在に覆う覆い部材51とを含んで構成されていること、第1エンド部材がカーテン本体21,31の主要部21H,31Hの閉じ側の先端に設けられている座板24,34であること、第2エンド部材が覆い部材51の主要部51Hの閉じ側の先端に設けられている座板54であること等は、前述の第1実施形態と同じである。
以下、本実施形態に係る防災用シャッター装置が前述の第1実施形態に係る防災用シャッター装置と異なる点について説明する。
図21に示されているように、本実施形態の巻取体311は、左のカーテン本体21,を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取本体である巻取軸312と、右のカーテン本体31を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取本体である巻取軸313と、覆い部材51を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取補助体である巻取軸14とを含んで構成されている。
なお、覆い部材51の巻取軸14は前述の第1〜第3実施形態と全く同じものであり、この巻取軸14の内部に配置されている戻し弾性部材である戻しコイルばね16も前述の第1実施形態と全く同じものである。
図22に示されているように、巻取軸312,313の回転中心部及び巻取軸14の回転中心部には回転中心軸315が貫通しており、この回転中心軸15の左右の端部は左右一対のブラケット3にねじ止め、溶接、接着剤等で回転不能に固定支持されている。このように、前述の第1〜第3実施形態と同様に、巻取軸14は巻取軸312,313の延長軸上においてこれらの巻取軸312,313と同軸的に配置されている。
また、巻取軸14は、前述の第1〜第3実施形態と同様に、回転中心軸315を中心に回転自在となっているが、巻取軸312,313は、前述の第1〜第3実施形態とは異なり、回転中心軸315を中心にそれぞれ回転自在となっている。
前述の第1実施形態で説明したように、戻しコイルばね16の一端は巻取軸14の中子14Aに止着具14Bで結合され、他端は非回転部材である回転中心軸315に止着具15Aで結合されているが、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、覆い部材51が全開状態において、戻しコイルばね16には、覆い部材51を巻き取るときの覆い部材51の回転に利用される戻しばね力は予め蓄圧されてはいない。
前述したように、本実施形態では、第1実施形態とは異なり、覆い部材51が全開状態において、戻しコイルばね16には覆い部材51を巻き取るときの覆い部材51の回転に利用される戻しばね力は予め蓄圧されておらず、全開状態となっていた覆い部材51が座板54の重量を含む自重によって巻取軸14を回転させながら下方への閉鎖移動を行うことにより、戻しコイルばね16に戻しばね力が蓄圧されることになる。この蓄圧された戻しばね力は、巻取軸14に、覆い部材51を巻き取らせる回転方向へのトルクとなって付与される。
本実施形態において、覆い部材51が全閉状態となったときに戻しコイルばね16に蓄圧される戻しばね力は、前述の第1実施形態において、覆い部材51が全開状態となっているときに予め戻しコイルばね16に蓄圧されている戻しばね力と等しく又は略等しくなるように設定されている。
そして、本実施形態では、前述の第1〜第3実施形態と同様に、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸14回りのトルクが、覆い部材51の全開から全閉の全範囲について、この覆い部材51の自重に基づく下方への閉鎖移動力による巻取軸14回りのトルクよりも小さくなるように、戻しコイルばね16のばね特性が設定されている。
覆い部材51が全閉状態又は半閉状態となっているときに、座板54を持ち上げる等することによって覆い部材51に座板54の重量が作用しないようにすると、巻取軸14は、戻しコイルばね16の戻しばね力で覆い部材51を巻き上げる方向へ回転するようになっている。
本実施形態において、左の巻取軸312の逆回転は、シャッターケース2の図示しないブラケットに取り付けされた開閉機320のモータの駆動によってなされ、右の巻取軸313の逆回転は、シャッターケース2の図示しないブラケットに取り付けされた開閉機330のモータの駆動によってなされる。
左右の巻取軸312,313を逆回転させるための左右の開閉機320,330、及びそれぞれの開閉機320,330のモータの駆動力を左右の巻取軸312,313へそれぞれ伝達するための左右の動力伝動手段322,332は、前述の第1実施形態における開閉機4及び動力伝動手段5と同様の機構、構造を有するものであるが、図22により以下詳細に説明する。
ブラケット3とは別の図示しないブラケットに取り付けられている左の開閉機320のモータの駆動軸321には駆動スプロケット323が結合されており、一方、回転中心軸315により支持されている巻取軸312には連結軸326を介して被駆動スプロケット324が結合されている。駆動スプロケット323と被駆動スプロケット324とにチェーン325が掛け回されており、このため、被駆動スプロケット324はチェーン325を介して駆動スプロケット323に連結されている。
同様に、ブラケット3とは別の図示しないブラケットに取り付けられている右の開閉機330のモータの駆動軸331には駆動スプロケット333が結合されており、一方、回転中心軸315により支持されている巻取軸313には連結軸336を介して被駆動スプロケット334が結合されている。駆動スプロケット333と被駆動スプロケット334とにチェーン335が掛け回されており、このため、被駆動スプロケット334はチェーン335を介して駆動スプロケット333に連結されている。
なお、図21に示されているように、覆い部材51の主要部51Hの幅狭部51Zの幅方向両側には、前述の第1〜第3実施形態と同様に、座板24のバー部材26,27,28の右端と座板54のバー部材56,57,58の左端との隙間、及び座板34のバー部材26,27,28の左端と座板54のバー部材56,57,58の右端との隙間を遮蔽するための遮蔽片51Gがそれぞれ配置されている。
次に、本実施形態に係る防災用シャッター装置の動作について説明する。
火災発生によって図示しない手動レバーが操作されることにより、又は図示しないセンサが煙あるいは熱等を検出してこの検出信号が左右の開閉機320,330の制御装置に送られることにより、開閉機320,330のブレーキが解除され、これにより、全開位置での停止状態を維持していた左右のカーテン本体21,31は座板24,34の重量を含む自重で巻取軸412,413を正回転させながら下降する閉鎖移動を開始する。
これと同時に、座板54の3個のバー部材56,57,58の左右端部が、左のカーテン本体21の座板24のチャンネル部材25のウエブ部25C、及び右のカーテン本体31の座板34のチャンネル部材35の図示しないウエブ部の上側となっているために、全開位置での停止状態を維持していた覆い部材51も、座板34の重量を含む自重で巻取軸14を正回転させながら下降する閉鎖移動を開始する。
左右のカーテン本体21,31及び覆い部材51が下方へ閉鎖移動しているときには、巻取軸14の内部の中子14Aに結合されている戻しコイルばね16の一端は巻取軸14とともに覆い部材51を繰り出す正回転を行うが、戻しコイルばね16の他端は左右のブラケット3に固定支持されている回転中心軸15に結合されているため、戻しコイルばね16は巻き締められて行き、この戻しコイルばね16には覆い部材51を巻き取るときの巻取軸14の回転に利用される戻しばね力が蓄圧されていく。そして、覆い部材51が全閉位置に達した場合には、戻しコイルばね16に蓄圧される戻しばね力は最大値に達する。
下方への閉鎖移動を行っている左右のカーテン本体21,31の座板24,34及び覆い部材51の座板54が相手部材である床8に接触して、左右のカーテン本体21,31と覆い部材51とを含んで構成されるシャッターカーテン17が全閉状態となることにより、シャッターカーテン17で室内空間10に防災区画が形成される。
シャッターカーテン17が全閉状態となった後に、避難者等がシャッターカーテン17で仕切られた室内空間10のうちの一方の空間から他方の空間へ移動しようとする場合には、避難者等は、覆い部材51の袋部51Eに挿入されている中桟52が露出している露出部51F、又は座板54に設けられている図示しない手掛け部に手を掛けて覆い部材51を持ち上げて、覆い部材51を上方へ開放移動させればよい。
このとき、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸14回りのトルクが、覆い部材51の重量のうちの座板54の重量を差し引いた主要部51Hの重量による巻取軸14回りのトルクよりも大きくなるため、巻取軸14は、蓄圧されていた戻しコイルばね16の戻しばね力で覆い部材51を巻き上げる方向へ回転するようになる。
このため、この覆い部材51の開放移動操作は、戻しコイルばね16に蓄圧されている戻しばね力によって補助されるため、大きな力を必要とせずに軽く行うことができる。
覆い部材51を上方へ開放移動させることにより、覆い部材51の下には連通部50が形成されるので、避難者等はこの連通部50を通過することで一方の空間から他方の空間へ移動することができる。
覆い部材51を持ち上げながら連通部50を通過した避難者等が、前記露出部51F又は前記手掛け部から手を離すと、前述の第1実施形態で述べたように、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸14回りのトルクが、覆い部材51の自重による巻取軸14回りのトルクよりも小さくなるため、覆い部材51は自ずと下方へ閉鎖移動を開始し、再び全閉状態へ復帰する。
全閉状態となっていたシャッターカーテン17を再び上方へ開放移動させる場合には、図示しないスイッチの操作で左右の開閉機320,330のモータを逆回転させることにより、この回転力がチェーン325,335を介して駆動スプロケット323,333から被駆動スプロケット324,334に伝達される。これにより、左右の巻取軸312,313が逆回転し、左右のカーテン本体21,31はこれらの巻取軸312,313に巻き取られながら上方への開放移動を開始する。
カーテン本体21,31が上方への開放移動を開始すると、カーテン本体21の座板24のチャンネル部材25のウエブ部25C、及びカーテン本体31の座板34のチャンネル部材35の図示しないウエブ部の上側となっている覆い部材51の座板54のバー部材56,57,58の左右端部は、左右のウエブ部により持ち上げられる。
このため、巻取軸14は戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸14回りのトルクで覆い部材51を巻き取る逆回転を開始し、覆い部材51は上方への開放移動を開始する。しかも、このとき、覆い部材51の座板のバー部材56,57,58の左右端部は、左右のウエブ部により持ち上げられているので、巻取軸14の逆回転はスムーズに行われる。
巻き締められて戻しばね力が蓄圧されていた戻しコイルばね16は、巻取軸14が逆回転することにより巻き緩められ、徐々に戻しばね力は減少して行く。そして、覆い部材51が全開位置に達すると、戻しばね力は最小値となる。
以上説明したように、本実施形態によると、前述の第1〜第3実施形態と同様に、シャッターカーテン17が全閉状態になることにより室内空間10が仕切られ、避難者等がこのシャッターカーテン17で仕切られた室内空間10のうちの一方の空間から他方の空間へ移動するためには、シャッターカーテン17全体を上方へ開放移動する必要はなく、連通部50を覆っている覆い部材51のみを開放移動し、この開放移動によって覆い部材51の下に形成された連通部50を通過すればよいことになる。
このため、本実施形態によっても、避難者等がシャッターカーテン17で仕切られた空間のうちの一方の空間から他方の空間へ移動するときにおけるシャッターカーテン17による良好な密閉性を確保することができるようになる。
また、本実施形態では、巻取体311は、覆い部材51の下方への閉鎖移動の際に戻しばね力が蓄圧され、この蓄圧された戻しばね力が覆い部材51を巻き取るときの巻取軸14の回転に利用される戻しコイルばね16を有している。
このため、本実施形態によると、巻取体311が有する戻しコイルばね16に蓄圧されていた戻しばね力が、覆い部材51を巻き取るときの巻取軸14の回転に利用されるので、より小さな操作力で連通部50を覆っている覆い部材51を開放移動させることができるようになる。
また、本実施形態では、前述の第1実施形態と同様に、覆い部材51を上方へ開放移動したときには、開放移動させた覆い部材51の下に形成される連通部50の下辺となる床8には、障害物が何も存在しない、いわゆるバリアフリーの状態となる。
このため、本実施形態によっても、避難者等は連通部50を安全にしかも迅速に通過することができる。
また、本実施形態では、覆い部材51の下方への閉鎖移動により戻しコイルばね16には戻しばね力が蓄圧されていくので、前述の第1実施形態のように、覆い部材51の全開状態において、戻しばね力を予め蓄圧させておく必要がないため、それだけシャッター装置の施工作業の省力化を図ることができる。
さらに、本実施形態でも、前述の第1〜第3実施形態と同様に、巻取補助体である巻取軸14が巻取本体である巻取軸312,313の延長軸上においてこれらの巻取軸312,313と同軸的に配置されている。
このため、本実施形態によると、巻取軸12,13,14の収納スペースであるシャッターケース2を大きくとる必要がなくなる。
さらに、本実施形態でも、前述の第1〜第3実施形態と同様に、巻取軸14が中空部材となっているので、戻し弾性部材である戻しコイルばね16をこの巻取軸14の内部に収納配置することができる。
このため、本実施形態によると、戻しコイルばねを含めた巻取軸全体の大きさを、戻しコイルばねを配設しない巻取軸と同じにすることができる。
図23〜図26は、本発明の巻取体のさらなる別実施形態(以下、第5実施形態という)を示すものである。
以下、本実施形態に係る防災用シャッター装置が前述の第1実施形態に係る防災用シャッター装置と異なる点について説明する。
図23は、本実施形態に係る防災用シャッター装置の全体正面図であり、前述の図1と同様の図である。また、図24は、本実施形態に係る巻取体の水平断面図であり、前述の図2と同様の図である。
図23に示されているように、本実施形態に係る防災用シャッター装置では、開閉体であるシャッターカーテン417が、開閉体本体である上下方向へ開閉移動する左右一対のカーテン本体421,431と、全閉状態のカーテン本体421とカーテン本体431との間に形成される連通部450と、この連通部450を上下動で開閉自在に覆う覆い部材451とを含んで構成されている。
巻取体411は、左のカーテン本体421を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取本体である巻取軸412と、右のカーテン本体431を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取本体である巻取軸413と、覆い部材451を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取補助体である巻取軸414とを含んで構成されている。
なお、左右のカーテン本体421,431の座板124及び覆い部材451の座板154は、前述の第2実施形態のもの(図17参照)と同じである。
前述の第1〜第4実施形態と大きく異なる点は、覆い部材451を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取軸414が、左右のカーテン本体421,431を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取本体である巻取軸412,413の延長軸上からずれてこれらの巻取軸412,413と別軸的かつ平行に配置されていることである。
すなわち、図24に示されているように、巻取軸414は左右の巻取軸412,413よりも奥側に、言い換えると、左右の巻取軸412,413と巻取軸414とはシャッターカーテン厚さ方向に位置ずれして配置されている。
さらに、図23に示されているように、巻取軸414の高さ位置は左右の巻取軸412,413の高さ位置よりも高くなっている。言い換えると、左右の巻取軸412,413と巻取軸414とは、シャッターカーテン開閉方向に位置ずれして配置されている。
図23及び図24に示されているように、巻取軸412,413の回転中心部には前述の第1〜第4実施形態と同じ回転中心軸15が貫通しており、この回転中心軸15と巻取軸412,413とは溶接、接着剤等で回転不能に連結されている。そして、回転中心軸15の左右の端部は左右一対のブラケット3で回転自在に支持されている。
また、巻取軸414の回転中心部には回転中心軸415が貫通している。この回転中心軸415の左右の端部は左右一対のブラケット403にねじ止め、溶接、接着剤等で回転不能に固定支持されており、巻取軸414はこの回転中心軸415を中心に回転自在となっている。
前述の第1〜第4実施形態と同様に、軸方向中央部又は略中央部を中子14Aで仕切られた巻取軸414の内部空間のうちの右側の内部空間には、戻し弾性部材である戻しコイルばね16が配置されている。この戻しコイルばね16の一端は巻取軸414の中子14Aにビス等の止着具14Bで結合されており、他端は非回転部材となっている回転中心軸415にビス等の止着具15Aで結合されている。
前述の第4実施形態と同様に、覆い部材451が全開状態において、戻しコイルばね16には、覆い部材451を巻き取るときの覆い部材451の回転に利用される戻しばね力は予め蓄圧されてはいない。
本実施形態では、前述の第4実施形態と同様に、覆い部材451が座板154の重量を含む自重によって巻取軸414を回転させながら下方への閉鎖移動を行うことにより、戻しコイルばね16に戻しばね力が蓄圧されることになる。この蓄圧された戻しばね力は、巻取軸414に、覆い部材451を巻き取らせる回転方向へのトルクとなって付与される。
また、本実施形態においても、覆い部材451が全閉状態となったときに戻しコイルばね16に蓄圧される戻しばね力は、前述の第1実施形態において、覆い部材451が全開状態となっているときに予め戻しコイルばね16に蓄圧されている戻しばね力と等しく又は略等しくなるように設定されている。
そして、本実施形態では、前述の第1〜第4実施形態と同様に、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸414回りのトルクが、覆い部材451の全開から全閉の全範囲について、この覆い部材451の自重に基づく下方への閉鎖移動力による巻取軸414回りのトルクよりも小さくなるように、戻しコイルばね16のばね特性が設定されている。
覆い部材451が全閉状態又は半閉状態となっているときに、座板154を持ち上げる等することによって覆い部材451に座板154の重量が作用しないようにすると、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸414回りのトルクが、覆い部材451の重量のうちの座板154の重量を差し引いた主要部451Hの重量による巻取軸414回りのトルクよりも大きくなるため、巻取軸414は、戻しコイルばね16の戻しばね力で覆い部材451を巻き上げる方向へ回転するようになっている。
図1に示されているように、巻取軸412の軸方向の長さ寸法は、前述の第1実施形態の左のカーテン本体21の主要部21Hの幅広部21Yの幅寸法(図1参照)と同じ又は略同じになっている。また、巻取軸413の軸方向の長さ寸法は、前述の第1実施形態の右のカーテン本体31の主要部31Hの幅広部31Yの幅寸法(図1参照)と同じ又は略同じになっている。さらに、巻取軸414の軸方向の長さ寸法は、前述の第1実施形態の覆い部材51の主要部51Hの幅広部51Yの幅寸法(図1参照)と同じ又は略同じになっている。
そして、図23に示されているように、左のカーテン本体421の主要部421Hの幅寸法は、シャッターカーテン開閉方向の全長に亘って巻取軸412の軸方向の長さ寸法と同じ又は略同じとなっており、右のカーテン本体431の主要部431Hの幅寸法は、シャッターカーテン開閉方向の全長に亘って巻取軸413の軸方向の長さ寸法と同じ又は略同じとなっている。
一方、覆い部材451の主要部451Hの下部は、前述の第1実施形態の覆い部材51の主要部51Hの幅狭部51Zと同じ又は略同じ寸法、形状を有する幅狭部451Zとなっており、覆い部材451のうちの幅狭部451Zを除いた部分、すなわち、幅狭部451Zよりも上方の部分は、幅寸法がシャッターカーテン開閉方向の全長に亘って巻取軸414の軸方向の長さ寸法と同じ又は略同じとなっている幅広部451Yとなっている。
シャッターカーテン417の開閉移動は、左のカーテン本体421の主要部421Hの右端部421Aが、覆い部材451の主要部451Hの幅広部451Yの左端部451Aとシャッターカーテン厚さ方向に対向しながら、また、右のカーテン本体431の主要部431Hの左端部431Aが、覆い部材451の主要部451Hの幅広部451Yの右端部451Bとシャッターカーテン厚さ方向に対向しながら行われる。
そして、図23に示されているように、シャッターカーテン417が全閉状態にあるときには、左のカーテン本体421の主要部421Hの右端部421Aが、覆い部材451の主要部451Hの幅広部451Yの左端部451Aとシャッターカーテン厚さ方向に対向し、また、右のカーテン本体431の主要部431Hの左端部431Aが、覆い部材451の主要部451Hの幅広部451Yの右端部451Bとシャッターカーテン厚さ方向に対向するので、シャッターカーテン417による開口部9の密閉性は確保される。
図25は、左右の巻取軸412,413の正回転により左右のカーテン本体421,431が繰り出され、巻取軸414の正回転により覆い部材451が繰り出されている状態を示す斜視図である。
図25に示されているように、カーテン本体421,431が巻取軸412,413から繰り出される場合には、巻取軸412,413及びこれらの巻取軸412,413の回転中心部を貫通する回転中心軸15は矢印Aの方向へ正回転し、カーテン本体421,431は巻取軸412,413の手前側から奥側へと繰り出される。
一方、覆い部材451が巻取軸414から繰り出される場合には、回転中心軸415を中心に回転自在となっている巻取軸414のみが矢印Bの方向へ正回転し、覆い部材451は巻取軸414の奥側から手前側へと繰り出される。
このように、本実施形態では、左右のカーテン本体421,431を巻き取り、繰り出す回転を行う左右の巻取軸412,413の回転方向は、覆い部材451を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取軸414の回転方向と逆になっており、巻取軸412,413と巻取軸414とは互いに独立した回転を行うものである。
図26は、シャッターカーテン417が全閉状態にあるときの第1エンド部材である座板124及び第2エンド部材である座板154の斜視図である。
図23及び図26に示されているように、本実施形態では、前述の第1〜第4実施形態のように、左のカーテン本体421の右端部421Aには、覆い部材451の左端部451Aをこの右端部421Aの奥側(室内側)から覆う覆い片のようなものは設けられてはおらず、同様に、右のカーテン本体431の左端部431Aには、覆い部材451の右端部451Bをこの左端部431Aの奥側(室内側)から覆う覆い片のようなものは設けられていない。
これは、覆い部材451の巻き取り、繰り出しがカーテン本体421,431の繰り出しとは独立してなされるので、覆い部材451の左右の端部451A,451Bがカーテン本体421,431の左右端部421A,431Aと覆い片とに挟まれていると、覆い部材451の巻き取り、繰り出しがスムーズに行われないおそれがあるためである。
また、図23及び図26に示されているように、覆い部材451の主要部451Hの幅狭部451Zの幅方向両側には、前述の第1〜第4実施形態と同様に、座板124の左のバー部材26,27,28の右端と覆い部材451のバー部材56,57,58の左端との間に形成される隙間、及び座板124の右のバー部材26,27,28の左端と覆い部材451のバー部材56,57,58の右端との間に形成される隙間を遮蔽するための遮蔽片451Gが配置されている。
次に、本実施形態に係る防災用シャッター装置の動作について説明する。
火災発生によって図示しない手動レバーが操作されることにより、又は図示しないセンサが煙あるいは熱等を検出してこの検出信号が開閉機4の制御装置に送られることにより、開閉機4のブレーキが解除され、これにより、全開位置での停止状態を維持していた左右のカーテン本体421,431は座板124の重量を含む自重で巻取軸412,413を正回転させながら下降する閉鎖移動を開始する。
これと同時に、覆い部材451の座板154の全部が座板124のチャンネル部材125のフラット部125Dの上側となっているために、全開位置での停止状態を維持していた覆い部材451も、座板154の重量を含む自重で巻取軸414を正回転させながら下降する閉鎖移動を開始する。この後、覆い部材451は、左右のカーテン本体421,431と同じ移動速度で閉鎖移動を行う。
このとき、他端が左右のブラケット403に回転不能に固定支持されている回転中心軸415に結合されている戻しコイルばね16の一端は、正回転している巻取軸414の内部の中子14Aに結合されているため、戻しコイルばね16は巻き締められて行き、この戻しコイルばね16には覆い部材451を巻き取るときの巻取軸414の回転に利用される戻しばね力が蓄圧されていく。そして、覆い部材451が全閉位置に達した場合には、戻しコイルばね16に蓄圧される戻しばね力は最大値に達する。
下方への閉鎖移動を行っている左右のカーテン本体421,431の座板124及び覆い部材451の座板154が相手部材である床8に接触して、左右のカーテン本体421,431と覆い部材451とを含んで構成されるシャッターカーテン417が全閉状態となることにより、シャッターカーテン417で室内空間10に防災区画が形成される。
シャッターカーテン417が全閉状態となった後に、避難者等がシャッターカーテン417で仕切られた室内空間10のうちの一方の空間から他方の空間へ移動しようとする場合には、避難者等は、覆い部材451の袋部51Eに挿入されている中桟52が露出している露出部51F、又は座板154に設けられている図示しない手掛け部に手を掛けて覆い部材451を持ち上げて、覆い部材451を上方へ開放移動させればよい。
このとき、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸414回りのトルクが、覆い部材451の重量のうちの座板154の重量を差し引いた主要部451Hの重量による巻取軸414回りのトルクよりも大きくなるため、巻取軸414は、蓄圧されていた戻しコイルばね16の戻しばね力で覆い部材451を巻き上げる方向へ回転するようになる。
このため、この覆い部材451の開放移動操作は、戻しコイルばね16に蓄圧されている戻しばね力によって補助されるため、大きな力を必要とせずに軽く行うことができる。
覆い部材451を上方へ開放移動させることにより、覆い部材451の下には連通部450が形成されるので、避難者等はこの連通部450を通過することで一方の空間から他方の空間へ移動することができる。
覆い部材451を持ち上げながら連通部450を通過した避難者等が、前記露出部51F又は前記手掛け部から手を離すと、前述の第1の実施形態で述べたように、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸414回りのトルクが、覆い部材451の自重による巻取軸414回りのトルクよりも小さくなるため、覆い部材451は自ずと下方へ閉鎖移動を開始し、再び全閉状態へ復帰する。
全閉状態となっていたシャッターカーテン417を再び上方へ開放移動させる場合には、図示しないスイッチの操作で開閉機4のモータを逆回転させることにより、この回転力が動力伝動手段5を介して巻取軸412,413に伝達される。これにより、左右の巻取軸412,413が逆回転し、左右のカーテン本体421,431はこれらの巻取軸412,413に巻き取られながら上方への開放移動を開始する。
カーテン本体421,431が上方への開放移動を開始すると、座板124のチャンネル部材125のフラット部125Dの上側となっている覆い部材451の座板154のバー部材156,157,158は、フラット部125Dにより持ち上げられる。
これにより、戻しコイルばね16の戻しばね力による巻取軸414回りのトルクが、覆い部材451の重量のうちの座板154の重量を差し引いた覆い部材451の主要部451Hの重量による巻取軸414回りのトルクよりも大きくなるため、巻取軸414は、蓄圧されていた戻しコイルばね16の戻しばね力で覆い部材451を巻き上げる方向へ回転し、覆い部材451は上方への開放移動を開始する。
この後、覆い部材451の座板154のバー部材156,157,158は、左右のカーテン本体421,431が全開位置に達するまで、座板124のフラット部125Dにより持ち上げられる。
巻き締められて戻しばね力が蓄圧されていた戻しコイルばね16は、巻取軸414が逆回転することにより巻き緩められ、徐々に戻しばね力は減少して行く。覆い部材451が全開位置に達すると、戻しばね力は最小値となる。
以上説明したように、本実施形態によると、前述の第1〜第4実施形態と同様に、シャッターカーテン417が全閉状態になることにより室内空間10が仕切られ、避難者等がこのシャッターカーテン417で仕切られた室内空間10のうちの一方の空間から他方の空間へ移動するためには、シャッターカーテン417全体を上方へ開放移動する必要はなく、連通部450を覆っている覆い部材451のみを開放移動し、この開放移動によって覆い部材451の下に形成された連通部450を通過すればよいことになる。
このため、本実施形態によっても、避難者等が、シャッターカーテン417で仕切られた空間のうちの一方の空間から他方の空間へ移動するときにおけるシャッターカーテン417による良好な密閉性を確保することができるようになる。
また、本実施形態では、覆い部材451の巻取軸414は、左右のカーテン本体421,431の巻取軸412,413の延長軸上からずれてこれらの巻取軸412,413と別軸的に配置され、覆い部材451の巻き取り、繰り出しは、カーテン本体421,431の巻き取り、繰り出しとは独立して行われる。
このため、本実施形態によると、巻取軸414のみを取り付け、取り外しすることが容易にできるので、巻取軸414のメンテナンス性の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、前述の第4実施形態と同様に、巻取体411を構成する巻取軸414が、覆い部材451の下方への閉鎖移動の際に戻しばね力が蓄圧され、この蓄圧された戻しばね力が覆い部材451を巻き取るときの巻取軸414の回転に利用される戻しコイルばね16を有している。
このため、本実施形態によると、巻取体411が有する戻しコイルばね16に蓄圧されていた戻しばね力が、覆い部材451を巻き取るときの巻取軸414の回転に利用されるので、より小さな操作力で連通部450を覆っている覆い部材451を開放移動させることができるようになる。
また、本実施形態では、前述の第4実施形態と同様に、覆い部材451の下方への閉鎖移動により戻しコイルばね16には戻しばね力が蓄圧されていくので、前述の第1実施形態のように、覆い部材451の全開状態において、戻しコイルばね16に戻しばね力を予め蓄圧させておく必要がないため、それだけシャッター装置の施工作業の省力化を図ることができる。
また、本実施形態では、前述の第2及び第3実施形態と同様に、座板124のチャンネル部材125のうちの座板154(シャッターカーテン幅方向の左右の端部を除く)の下側となっている部分は、水平又は略水平なフラット部125Dとなっている。
避難者等が覆い部材451を上方へ開放移動したときには、開放移動させた覆い部材451の下に形成される連通部450の下辺はフラット部125Dとなるが、本実施形態によると、フラット部125Dのシャッターカーテンの開閉方向の厚さは薄いものとなっているので、前述の第2及び第3実施形態と同様に、避難者等が覆い部材451の下に形成された連通部450を通過する際には、このフラット部125Dが通過の邪魔になることはない。すなわち、開放移動した覆い部材451の下はバリアフリーに近い状態となる。
さらに、本実施形態でも、前述の第1〜第4実施形態と同様に、巻取軸414が中空部材となっているので、戻し弾性部材である戻しコイルばね16がこの巻取軸414の内部に収納配置されている。
このため、本実施形態によると、戻しコイルばねを含めた巻取軸全体の大きさを、戻しコイルばねを配設しない巻取軸と同じにすることができる。
以上の第1〜第5実施形態では、第2エンド部材である覆い部材の座板の少なくとも一部が、第1エンド部材である左右一対のカーテン本体の座板の上側に配置されるようになっている。
このため、以上の第1〜第5実施形態によると、覆い部材に対して全開位置での停止状態を維持させるための停止装置を設ける必要がなくなり、それだけ、コストの削減を図ることができる。
なお、以上の第1〜第5実施形態においては、開閉機のブレーキによりカーテン本体の全開位置での停止状態が維持されるものであるが、カーテン本体の全開位置での停止状態を維持するために、全開位置に達しているカーテン本体に係止する係止部材が設けられている係止装置をカーテン本体が出入りするシャッターケースのまぐさの部分に配置してもよい。この係止装置にはカーテン本体への係止部材の係止を解除するための解除機構が設けられていて、この解除機構の作動により、係止部材によるカーテン本体の係止が解除される。そして、カーテン本体は閉鎖移動を開始する。
また、以上の第1〜第5実施形態においては、カーテン本体の下方への閉鎖移動は、座板の重量を含むカーテン本体の自重で下降することによるものであったが、開閉機のモータの駆動による巻取軸の正回転によりカーテン本体が繰り出されるようにしてもよい。
以上の第1〜第5実施形態において、カーテン本体を巻き取り、繰り出す回転を行う巻取体である巻取軸にも、蓄圧された戻し弾性力である戻しばね力がカーテン本体を巻き取るときの前記巻取軸の回転に利用される戻し弾性部材である戻しコイルばねを設けてもよい。
これによると、カーテン本体を巻き取るとき等に利用される開閉機を電動式のものから手動式のものにした場合においても、カーテン本体の開放動作を戻しコイルばねに蓄圧された戻しばね力により補助されながら軽く行うことができるようになり、このため、手動式の開閉機の操作性を良くすることができる。
また、開閉機が電動式のものであり、かつ、その出力が小さなものである場合には、カーテン本体の開放動作は、戻しコイルばねに蓄圧された戻しばね力により補助されながらより確実に行われることになる。
また、カーテン本体が閉鎖動作を行っているときに、カーテン本体が障害物や床面に当接した場合には、戻しコイルばねに蓄圧された戻しばね力により、これらの障害物や床面に対してカーテン本体の大きな重量がかからなくて済むようになる。