以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態に係る回転体は、回転体本体がシャッター装置のシャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸の本体となっており、図1は、本発明の実施形態に係る回転体が適用されているシャッター装置の全体を示す正面図である。図2は、図1のS2−S2線断面図であり、図3は、シャッター装置の縦断面図である。初めに、このシャッター装置の全体構造及び動作について説明する。
このシャッター装置はエレベータ用の防災シャッター装置であり、このエレベータ用の防災シャッター装置は、図2及び図3で示されているとおり、単なる通路を含むエレベータホール1から見て、エレベータ扉2の手前側において、開閉体である防災用シャッターカーテン20が上下に開閉移動するものとなっており、このシャッターカーテン20がエレベータホール1とエレベータ扉2との間で全閉となることにより、エレベータホール1とエレベータ扉2との間で遮断された防災区画が建物内に形成される。
図2及び図3で示されている建物内の縦穴3で昇降するエレベータの昇降箱4は、エレベータ用の防災シャッター装置が設置されている建物の各階で停止し、図3で示されているとおり、エレベータホール1から見てエレベータ扉2の手前上部には、昇降箱4の現在位置等を表示するインジケータ5が、各階の間の床スラブ6から垂下した建物躯体である下がり壁7の内部に組み込み配置されている。左右2個のエレベータ扉2は、図3で示された上下のガイド部材8,9で案内されて左右に開閉移動自在となっているため、昇降箱4が停止した階のエレベータ扉2は、図示しない駆動装置の駆動力で開閉移動する。
図2で示すように、エレベータ扉2よりエレベータホール1側の左右両側の建物躯体となっている側壁10には、シャッターカーテン20の左右方向である幅方向の両端部がスライド自在に挿入されたガイドレール21が取り付けられ、ガイド部材となって上下に延びているこれらのガイドレール21でシャッターカーテン20の開閉移動が案内される。ガイドレール21の内部において、シャッターカーテン20には抜け止め部材22が取り付けられ、これらの抜け止め部材22で抜け止めされながらシャッターカーテン20は開閉移動する。
図3で示されているように、前記下がり壁7にはシャッターケース11が取り付けられ、図1で示されているように、左右方向に長いこのシャッターケース11の内部には、正逆回転することによってシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出すための本実施形態に係る回転体となっている巻取軸24が水平に収納配置され、シャッターカーテン20の上端が結合されているこの巻取軸24は、シャッターケース11の内部に配置されていて下がり壁7に取り付けられている左右の第1及び第2支持部材25,26によって正逆回転自在に支持されている。図3で示されているように、シャッターケース11の下端部は、シャッターカーテン20が上下に挿通された左右に長いスリット12が形成されたまぐさ13となっており、このまぐさ13のスリット12を通ってシャッターカーテン20は、巻取軸24の繰り出しによる下降である閉じ移動及び巻取軸24の巻き取りによる上昇である開き移動を行う。
なお、図2で示されているそれぞれのガイドレール21におけるシャッターカーテン20の幅方向の端部が挿入された開口部に、シャッターカーテン20と接触する遮煙部材を設け、この遮煙部材により、火災の発生で生じた煙が全閉位置に達しているシャッターカーテンと上記開口部との間の隙間及びガイドレール21の内部を通過してシャッターカーテンの反対側に達するのを防止するようにしてもよい。
また、まぐさ13のスリット12にも上述した遮煙部材と同様な遮煙部材を設け、この遮煙部材により、火災の発生で生じた煙がシャッターケース11の内部を通過してシャッターカーテンの反対側に達することを防止するようにしてもよい。
図1及び図3で示されているように、シャッターケース11の内部には、シャッターカーテン20が全開位置に達しているときに、シャッターカーテン20の下端部又はこの下端部近くに取り付けられた逆L字状の被係止部材28を係止するための係止装置29が配置されている。この係止装置29は、上片部30Aと下片部30Bとを有する二股状となっている係止部材30を有し、この係止部材30は上下に回動自在である。通常時の係止部材30は、係止装置29に組み込まれているストップ手段のストップ機能により、上片部30Aと下片部30Bが水平姿勢となった状態で下向き回動が阻止されており、このときには、下片部30Bの上面に、全開位置に達しているシャッターカーテン20に設けられている逆L字状の被係止部材28の上端の水平突起部28Aが係止されているため、全開位置のシャッターカーテン20は、係止装置29の係止作用によってこの全開位置に維持される。
エレベータ用の防災シャッター装置がそれぞれの階に設置されている建物において火災が発生すると、この火災を検知したセンサからの信号が入力した制御装置により、又は火災の発生を知った人が図示しない操作部材を操作することにより、それぞれの階のエレベータ用の防災シャッター装置における係止装置29の上記ストップ手段のストップ機能が解除されるため、シャッターカーテン20の自重と、上記ストップ機構を作動させるばね等の弾性部材の弾性力とにより、係止部材30が下向きに回動し、この下向き回動で被係止部材28の上端の水平突起部28Aが係止部材30の下片部30Bから離脱するため、シャッターカーテン20は自重で下方へ閉じ移動し、この閉じ移動は、シャッターカーテン20の自重による巻取軸24の正回転によってなされ、シャッターカーテン20は巻取軸24から繰り出されて全閉位置に達する。
シャッターカーテン20は、図1及び図3で示されているとおり、閉じ側先端部材となっている座板31と、この座板31が下端部に取り付けられ、シャッターカーテン20の大部分の面積を形成しているカーテン本体32とを有し、カーテン本体32は、耐火性及び遮煙性を有するシートに耐火性塗料を塗布及び/又は含浸させて形成されている。上記被係止部材28は座板31に取り付けられている。
図1で示されているように、シャッターカーテン20のエレベータ扉2側の面には、シャッターカーテン20を上方へ開き移動させる際に、手を掛けてシャッターカーテン20を持ち上げるための手掛け部材34が設けられている。この手掛け部材34は、火災発生時にエレベータの昇降箱4の中にいた避難者(車椅子等を使用している者やストレッチャーで運ばれる者を含む)が、エレベータ用の防災シャッター装置が設置されている階に停止した昇降箱4から出てきたなどのときに、その防災シャッター装置の全閉位置に達しているシャッターカーテン20を持ち上げてその下を通過できるようにするものである。手掛け部材34は、カーテン本体32に水平に配置されていて、シャッターカーテン20の補強部材となっている棒状部材35の一部によって形成されている。
この棒状部材35を具体的に説明すると、カーテン本体32は、上下の重なり部分を有して上下に配置された複数のシート32Aで形成され、これらのシート32Aのうち、最下段のシート32Aには、前記エレベータ扉2と対面する側において、上下寸法が小さくて左右寸法が大きい細幅の袋部用シート37が取り付けられ、シート32Aとこの袋部用シート37との間は袋部となっており、この袋部の内部に、両端が左右のガイドレール21の内部に挿入された棒状部材35が挿入されている。また、袋部用シート37には複数の切れ目36が形成され、これらの切れ目36から露出した棒状部材35の一部が、上記手掛け部材34となっている。このような手掛け部材34は、本実施形態では、カーテン本体32に上下複数段、同じ高さ位置に左右複数個設けられ、図示例では、上下2段、左右2個設けられている。
なお、カーテン本体32におけるエレベータ扉2と対面する側の面に手掛け部材34を設けるための構造は、以上の構造に限定されず、例えば、カーテン本体32を形成する上下のシート32Aの重なり部分を袋部とし、この袋部に棒状部材35を挿入し、この袋部に複数形成した切れ目から露出させた棒状部材35の一部を手掛け部材34としてもよい。そして、このような構造による手掛け部材34と、図1で示した構造による手掛け部材34とをカーテン本体32に併設してもよい。
昇降箱4から出てきた前記避難者が、全閉位置に達しているシャッターカーテン20を持ち上げてその下を通過するときには、先ず、上下2段設けられている手掛け部材34のうちの上段の手掛け部材34に手を掛けてシャッターカーテン20を持ち上げ、次に下段の手掛け部材34に手を掛けてシャッターカーテン20をさらに持ち上げる。
巻取軸24の内部には、後述するように、シャッターカーテン20が閉じ移動する巻取軸24の正回転時に戻しばね力が蓄圧される戻しばねが配置されており、シャッターカーテン20は、この戻しばね力を蓄圧しながら全閉位置に達する。
前述したように、自重で閉じ移動する自重閉鎖式となっているシャッターカーテン20が全閉位置に達した後、このシャッターカーテン20を手掛け部材34で持ち上げると、巻取軸24は、戻しばねの蓄圧された戻しばね力で逆回転してシャッターカーテン20を巻き取ることになる。このため、手掛け部材34によるシャッターカーテン20の持ち上げは戻しばねの戻しばね力で補助されることになり、このため、上記避難者は、小さい力によってシャッターカーテン20を軽く持ち上げてその下を通過することができる。
なお、避難訓練等のためにシャッターカーテン20を全閉とした後、シャッターカーテン20を全開位置に戻すときには、シャッターカーテン20を大きな力で持ち上げて全開位置まで上昇させる。これにより、前述したように係止装置29の下向き回動していた係止部材30の上片部30Aの下面に前記被係止部材28の上端の水平突起部28Aが当接し、この当接によって係止部材30は上向きに回動して水平姿勢に戻るとともに、下片部30Bの上面に被係止部材28の上端水平突起部28Aが係止される。このときには、係止装置29の前記ストップ手段のストップ機能は回復しているため、水平姿勢に戻った係止部材30によってシャッターカーテン20は全開位置で停止し、これにより、全部がシャッターカーテン20の閉じ移動開始前の状態に戻る。
また、本実施形態では、前記手掛け部材34はシャッターカーテン20のエレベータ扉2側の面に設けられていたが、このような手掛け部材又はこれとは形状、構造が異なる手掛け部材を、シャッターカーテン20のエレベータホール1側の面に設けてもよく、また、シャッターカーテン20のエレベータ扉2側の面とエレベータホール1側の面との両方に設けてもよい。
図4は、本実施形態に係る回転体である巻取軸24及びこの巻取軸24に連結されている減速機70の内部構造を示す平断面図である。巻取軸24は、図1で示された左右の第1及び第2支持部材25と26のうち、第1支持部材25側の第1中心軸41と、第2支持部材26側の第2中心軸42と、第1中心軸41が中心に挿通され、この第1中心軸41に対して軸受け43,44で回転自在となっている円板状の第1及び第2ホイール部材45,46と、中心軸である第2中心軸42が中心に挿通され、この第2中心軸42に溶接等で結合されている中子である円板状の第3及び第4ホイール部材47,48と、第1支持部材25側から第2支持部材26側へ軸方向に離れて配置されているこれらの第1〜第4ホイール部材45〜48のうち、第1ホイール部45と第3及び第4ホイール部材47,48の外周面が中空部である内部空間54に溶接等で挿入固定され、第2ホイール部材46は単に内部空間54に挿入されている回転体本体であるパイプ状の巻取軸本体49とを含んで構成されている。なお、第2ホイール部材46も巻取軸本体49に溶接等で固定してもよい。第1中心軸41は軸受け50で第1支持部材25に支持され、第2中心軸42は軸受け51で第2支持部材26に支持されており、巻取軸24によるシャッターカーテン20の巻き取り、繰り出しは、巻取軸本体49の外面において行われる。
また、第1中心軸41には、第1ホイール部材45と第2ホイール部材46との間において、それぞれのホイール部材45〜48と同様に円板状に形成されたばね連結部材52が配置され、このばね連結部材52は第1中心軸41に溶接等で結合されているとともに、巻取軸本体49の内部空間54に、この巻取軸本体49の内周面との間に隙間を空けて挿入できるように、それぞれのホイール部材45〜48よりも小径に形成されている。
第1ホイール部材45とばね連結部材52との間には、第1中心軸41の外周に嵌合されたねじりコイルばねによる戻しばね53が配置され、巻取軸24と同軸的に配置されているこの戻しばね53における第2支持部材26側の一方のフック状端部53Aは、ばね連結部材52に形成された切欠部52Aの周辺部に連結係止され、第1支持部材25側の他方のフック状端部53Bは、第1ホイール部材45に形成された切欠部45Aの周辺部に連結係止されている。
また、軸受け50を介して第1支持部材25で支持されている第1中心軸41は、第1支持部材25に対する回転が回転止め部材60によって止められている。図5には、この回転止め部材60による回転止め構造の分解斜視図が示されている。第1支持部材25から突出している第1中心軸41の端部には、互いに反対側の2箇所41A,41Bの面取り加工により、第1中心軸41の直径よりも厚さが小さくなったフラット状部41Cが形成され、このフラット状部41Cが内部に挿入係合される溝61が回転止め部材60に形成されている。板金の折り曲げ加工品であるこの回転止め部材60は、両端のフランジ部60A,60Bと、これらのフランジ部60A,60Bの間で隆起した隆起部60Cとを有し、この隆起部60Cに溝61が設けられている。
それぞれのフランジ部60A,60Bには、第1支持部材25側へ直角に突出した突片60Dが設けられており、溝61の内部に第1中心軸41のフラット状部41Cを挿入係合しながら、これらの突片60Dを第1支持部材25に形成された細長開口部62に挿入し、上下2本のボルト63を回転止め部材60のフランジ部60A,60Bの孔64に挿入するとともに、第1支持部材25の孔65にも挿入し、これらのボルト63を第1支持部材25に溶接等で固定されたナット66に螺入して締め付けることにより、回転止め部材60は第1支持部材25に取り付けられる。そして、この回転止め部材60の溝61にフラット状部41Cが挿入係合された第1中心軸41は、第1支持部材25及び軸受け50に対する回転が止められることになる。
このように第1中心軸41の回転が止められると、第1中心軸41に溶接等で結合されている図4のばね連結部材52の回転も止められることになる。これに対して第1中心軸41上に図4で示した軸受け43,44で配置されている第1及び第2ホイール部材45,46は回転自在となり、第1ホイール部材45に溶接等で結合されている巻取軸本体49も回転自在となり、さらに、巻取軸本体49に溶接等で結合されている第3及び第4ホイール部材47,48及びこれら第3及び第4ホイール部材47,48に溶接等で結合されている第2中心軸42も回転自在となる。この第2中心軸42の回転は、軸受け51を介して第2支持部材26によって支持される。
前述したとおりにシャッターカーテン20が自重によって閉じ移動することは、巻取軸本体49が正回転してシャッターカーテン20を繰り出すことにより行われ、巻取軸本体49が正回転すると、巻取軸本体49に結合されている第1ホイール部材45も正回転するが、ばね連結部材52は第1中心軸41と共に回転しないため、これらの第1ホイール部材45とばね連結部材52とに両端のフック状端部53A,53Bが連結されている前記戻しばね53には、シャッターカーテン20の繰り出しに伴い、巻取軸本体49の正回転による巻き締めによって戻しばね力が蓄圧される。
そして、全閉となったシャッターカーテン20を前記手掛け部材34で持ち上げると、巻取軸本体49は、戻しばね53の蓄圧された戻しばね力で逆回転し、この逆回転により、シャッターカーテン20は持ち上げられた分だけ巻取軸本体49に巻き取られることになり、戻しばね53の戻しばね力によって巻取軸本体49の逆回転が付勢されるため、手掛け部材34によるシャッターカーテン20の持ち上げを軽く行える。
図4で示されているとおり、第2支持部材26には、前記減速機70が取り付けられている。本実施形態では、この取り付けは、ブラケット71に減速機70を取り付け、このブラケット71の前面折曲部71Aと第2支持部材26の前面折曲部26Aとをボルト・ナットによる結合具72で結合することによって行われている。
減速機70は、巻取軸本体49と一体に回転する第2中心軸42の回転が遊動許容カップリング手段100を介して伝達される入力軸80と、この入力軸80の回転が歯車81,82で伝達されるアイドル軸83と、アイドル軸83の回転が歯車84,85で伝達される被動軸86と、被動軸86と一体に回転するロータリーベース部材87とを有し、このロータリーベース部材87には、2個のピン88を間に挟んで互いに向かい合っているとともに、これらのピン88で案内されて内外径方向に移動自在となった一対のブレーキシュー90が配置され、通常時のこれらのブレーキシュー90は、ばね89で内径方向の移動限位置に達している。巻取軸24の第2中心軸42からの回転力によってロータリーベース部材87が回転すると、一対のブレーキシュー90は遠心力によりばね89に抗して外径方向へ移動し、これらのブレーキシュー90がブレーキドラム91に圧接することにより、巻取軸24の第2中心軸42の回転、言い換えると、巻取軸24の巻取軸本体49等の回転が減速される。
このため、本実施形態に係る減速機70は、ブレーキシュー90が遠心力でブレーキドラム91に圧接することによって減速力を生じさせる遠心力式減速機となっている。なお、減速機はこの形式のものに限定されず、摩擦板式等の任意な形式のものでよい。
また、この減速機70は、ロータリーベース部材87とブレーキシュー90とブレーキドラム91の部分によって形成されている減速手段70Aと、シャッターカーテン20が巻取軸24から繰り出されるときの第2中心軸42の正回転を減速手段70Aに伝達し、シャッターカーテン20を巻取軸24が巻き取るときの第2中心軸42の逆回転を減速手段70Aに伝達しないクラッチ手段70Bとを有するものとなっている。逆回転時の第2中心軸42と減速手段70Aとの間を切断するこのクラッチ手段70Bは、入力軸80と、この入力軸80の外周に嵌合された歯車81との間において、円周方向に複数配置されたニードル92を含んで形成されており、入力軸80が挿入されている歯車81の中心孔には、それぞれのニードル92が個別に収納された複数の収納空間が円周方向に形成されており、これらの収納空間は、第2中心軸42の正回転方向へ入力軸80との間隔が次第に小さくなった傾斜空間となっている。
このため、第2中心軸42の正回転が遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80に伝達されると、この回転は、正回転方向と同じ方向へ移動するニードル92を介して歯車81に伝達されることになり、言い換えると、このときにはクラッチ手段70Bの接続が行われ、これにより、第2中心軸42の正回転は減速手段70Aに伝達されてこの減速手段70Aで減速される。一方、第2中心軸42が逆回転し、この回転が遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80に伝達された場合には、ニードル92は正回転方向とは反対方向へ移動するため、第2中心軸42の逆回転は減速手段70Aに伝達されない。言い換えると、このときにはクラッチ手段70Bの切断が行われ、第2中心軸42は、前述した戻しばね53の蓄圧された戻しばね力で自由に逆回転する。
このように、本実施形態に係るクラッチ手段70Bは、ニードル式のクラッチ手段となっている。なお、クラッチ手段はこの形式のものに限定されず、摩擦板式等の任意な形式のものでよい。
そして、本実施形態に係る減速機70は、前記減速手段70Aとクラッチ手段70Bとが同じハウジング93の内部に組み込まれた一体型となっており、第2中心軸42に遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80を連結すると、減速手段70Aがクラッチ手段70Bを介して第2中心軸42に接続されるようになっている。このため、本実施形態では、入力軸80は、第2中心軸42の回転をクラッチ手段70Bに入力させるための軸にもなっている。
また、第2中心軸42の正回転時には、言い換えると、シャッターカーテン20を繰り出す巻取軸本体49の正回転時には、クラッチ手段70Bが接続されて減速手段70Aが作動するため、巻取軸本体49の正回転は減速されることになり、そして、このシャッターカーテン20の繰り出し時には、戻しばね53が蓄圧されるため、この戻しばね53の蓄圧分だけシャッターカーテン20の繰り出し速度は一層低下し、前述したように、火災発生時に全開位置から全閉位置へ達するシャッターカーテン20はこのように制動された速度で下降するため、シャッターカーテン20の下を避難者が安全に通過することができる。そして、シャッターカーテン20が全閉となった後に、エレベータの昇降箱4から出てきた避難者は、前述したように、前記手掛け部材34によってシャッターカーテン20を持ち上げることができ、この持ち上げ時には、巻取軸本体49は戻しばね53の蓄圧された戻しばね力によって逆回転し、この逆回転はクラッチ手段70Bによって減速手段70Aに伝達されないため、シャッターカーテン20の持ち上げは、シャッターカーテン20が巻取軸本体49に巻き取られることにより、小さい手操作力によって迅速に行うことができる。
図6は、巻取軸24の第2中心軸42と、この第2中心軸42に対して同軸的に配置されている減速機70の入力軸80とを連結している遊動許容カップリング手段100の分解斜視図を示し、図7は、これらの第2中心軸42と入力軸80とが遊動許容カップリング手段100で連結されているときを示す平面図である。
巻取軸24の減速機70側の端部には、言い換えると、第2中心軸42の入力軸80側の端部には、遊動許容カップリング手段100を構成する部材であるカップリング部材101が結合されている。このカップリング部材101には、入力軸80側の端面101Aで開口した穴102が形成されているとともに、この穴102と直交して穴102を貫通する切り込み部103が端面101Aから軸方向への切り込み深さをもって形成され、この切り込み部103は、第2中心軸42の直径方向に貫通した溝形状となっている。また、入力軸80の第2中心軸42側の端部近くには、入力軸80の軸方向と直交する方向へ突出する突起104が設けられ、この突起104は、入力軸80を直径方向へ貫通したピンによって形成されているため、突起104は入力軸80の円周方向の互いに反対側の位置に2個設けられている。
カップリング部材101の穴102には入力軸80の端部が挿入され、カップリング部材101の切り込み部103には入力軸80の突起104が挿入される。穴102の直径D1は入力軸80の直径D2よりも大きく、また、切り込み部103の幅寸法W1は突起104の幅寸法(直径)W2よりも大きい。このため、穴102への入力軸80の端部の挿入及び切り込み部103への突起104の挿入は、遊合状態で行われる。
本実施形態では、穴102と切り込み部103とにより、巻取軸24の第2中心軸42における凹部105が形成され、穴102に挿入される入力軸80の端部と突起104とにより、減速機70の入力軸80における凸部106が形成されている。凹部105に凸部106が上述のように遊合状態で挿入され、第2中心軸42が回転すると、凹部105と凸部106との回転方向の当接により、具体的には、切り込み部103と突起104との回転方向の当接により、第2中心軸42の回転が入力軸80に伝達される。
また、第2中心軸42が、この第2中心軸42に対して同軸的に配置されている入力軸80に対して、上記直径D1とD2との差や上記幅寸法W1とW2の差よりも小さい量だけ直径方向等へ遊動しても、第2中心軸42の回転は入力軸80に伝達される。すなわち、前記遊動許容カップリング手段100は、第2中心軸42が入力軸80に対して直径方向等へ遊動するのを許容し、第2中心軸42の回転を入力軸80に伝達できるものとなっている。
巻取軸本体49がシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出すための正逆回転を行うとき、水平となっている巻取軸24には、シャッターカーテン20の重量や巻取軸24自体の重量が作用しているため、また、巻取軸24の回転時に振れ等が生ずることがあるため、巻取軸24は撓み変形しながら回転する。このため、巻取軸24の減速機70側の端部部材となっている第2中心軸42は、巻取軸24がシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出すための回転を行うときに、直径方向等への振れ運動を行いながら回転することになる。
本実施形態では、この第2中心軸42に減速機70の入力軸80が直結されておらず、遊動許容カップリング手段100を介して第2中心軸42と入力軸80とが連結されているため、巻取軸24がシャッターカーテン20を巻き取り、繰り出すための回転を行うときに、第2中心軸42が直径方向等への振れ運動を行いながら回転しても、この回転は遊動許容カップリング手段100を介して入力軸80に伝達されることになり、これにより、減速機70における減速手段70A及びクラッチ手段70Bを所定どおり作動させることができる。
また、減速機70は、巻取軸24を支持している前述した第1及び第2支持部材25,26のうちの第2支持部材26にブラケット71を介して取り付けられているため、この第2支持部材26を、巻取軸24と減速機70の両方のための支持部材として利用でき、それだけシャッター装置全体の構造を簡単化できるとともに、第2支持部材26に減速機70を不動状態で取り付けても、上述のように、巻取軸24がシャッターカーテン20の重量のために撓み変形しながら回転して、第2中心軸42が直径方向等へ振れ運動した場合に、この回転を遊動許容カップリング手段100によって減速機70の入力軸80に所定どおり入力させることができる。
また、第1支持部材25と第2支持部材26との間や、第2支持部材26とブラケット71との間等に、これらの部材25,26,71の取付位置の誤差等に基づく芯ずれ等があっても、第2中心軸42の回転を遊動許容カップリング手段100によって減速機70の入力軸80に所定どおり入力させることができる。
さらに、図4で示されているとおり、第2支持部材26に減速機70を取り付けるためのブラケット71には孔71Bが形成されており、遊動許容カップリング手段100はこの孔71Bに挿入配置されているため、それだけ遊動許容カップリング手段100を含む減速機70の配置位置を巻取軸24の側へ近づけることができ、これにより、これらの巻取軸24や減速機70等からなる前記シャッターケース11の内部に収納される機器類の左右方向長さを短縮できる。
ところで、シャッターカーテン20が全開位置に達しているときにおける図4で示した戻しばね53の初期戻しばね力の大きさは、エレベータ用の防災シャッター装置が設置されるその施工現場に応じた適正値となっていることが求められる。このような適正値となった初期戻しばね力を得ることは、巻取軸24の回転側の部材となっている第2中心軸42や巻取軸本体49の回転を止め、巻取軸24の非回転側の部材となっている第1中心軸41を回転させ、これによって戻しばね53に対する巻き締め作業を行うことにより実現できる。
このような戻しばね53に対する巻き締め作業を行えるようにするため、巻き締め作業時に第2中心軸42が回転するのを止めるための図8の回転止め部材110が用意されており、また、この回転止め部材110を係合させるための係合部120がカップリング部材101に設けられている。これを具体的に説明すると、図6で示されているように、カップリング部材101には、面取り加工によって円周方向に4つの面101Bが形成されており、互いに反対側となっている2つの面101B同士の間隔はLであり、これら2つの面101Bによって上記係合部120が形成され、この係合部120は、カップリング部材101に2個設けられている。
図8で示した回転止め部材110には、係合部120が挿入係合される溝111が設けられており、板金の折り曲げ加工品であるこの回転止め部材110は、両端のフランジ部110A,110Bと、これらのフランジ部110A,110Bの間で隆起した隆起部110Cとを有し、この隆起部110Cに溝111が設け、この溝111の開口幅Hは係合部120の上記Lと対応する寸法となっている。それぞれのフランジ部110A,110Bには、第2支持部材26側へ直角に突出した突片110Dが設け、溝111の内部にカップリング部材101の係合部120を挿入係合しながら、これらの突片110Dを第2支持部材26に形成された細長開口部112に挿入し、上下2本のボルト113を回転止め部材110のフランジ部110A,110Bの孔114に挿入するとともに、第2支持部材26の孔115にも挿入し、これらのボルト113を第2支持部材26に溶接等で固定されたナット116に螺入して締め付けることにより、回転止め部材110は第2支持部材26に取り付けられる。そして、この回転止め部材110の溝111に係合部120が挿入係合されたカップリング部材101は、第2支持部材26に対する回転が止められることになる。
そして、図5で示した第1支持部材25側の回転止め部材60を第1支持部材25から取り外し、巻取軸24の前述した第1中心軸41のフラット状部41Cに図4で示した回転作業用工具130を係合し、この工具130で第1中心軸41を回転させることにより、巻取軸24の回転側の部材となっていた第2中心軸42や巻取軸本体49、第1ホイール部材45の回転が回転止め部材110で止められていて、巻取軸24の非回転側の部材となっていた第1中心軸41やばね連結部材52が回転するため、第1ホイール部材45とばね連結部材52との間に架設されている戻しばね53を、戻しばね力が適正値となるまでの巻き締めることができる。
なお、この戻しばね53の巻き締め作業を行うときには、シャッターカーテン20を全開位置に停止させておくために、図3で示した被係止部材28を係止装置29の係止部材30に係止させておいてもよく、また、係止させておかなくてもよい。そして、戻しばね53を巻き締める作業は、シャッターカーテン20が全閉位置に達しているときにも行える。
また、戻しばね53の巻き締め作業を行うときには、前記シャッターケース11は、図3及び図4で示されているように、ケース本体11Aと、このケース本体11Aの前面開口部を塞ぐ前面部材11Bと、シャッターケース11の左右両端を塞ぐエンドキャップ11C,11D等からなり、これらの部材11A〜11Dはボルト・ナットやビス等の止着具で分解可能に組み立てられているため、ケース本体11Aからの前面部材11B、エンドキャップ11C,11Dの取り外しを行う。この後、図4で示した結合具72を取り外して第2支持部材26から減速機70を分離することにより、上述した戻しばね53の巻き締め作業を、第2支持部材26への回転止め部材110の取り付け作業と、第1支持部材25からの回転止め部材60の取り外し作業と、第1中心軸41のフラット状部41Cへの回転作業用工具130の係合作業とを行うことにより、行うことができる。
なお、図6で示したカップリング部材101の面取り加工で形成される面101Bを4つとせず、互いに反対側となった2つだけとし、これにより、これら2つの面101Bによって上記係合部120の個数を1個としてもよい。
以上において、シャッターケース11の下端部には、図3で説明したように、シャッターカーテン20が開閉移動したときにこのシャッターカーテン20を挿通移動させるスリット12を形成している前記まぐさ13が設けられており、本実施形態では、このまぐさ13のエレベータホール1側の部分は、シャッターケース11の前面部材11Bの下部部分で形成され、まぐさ13のエレベータ扉2側の部分は、まぐさ部材140で形成されている。シャッターケース11のケース本体11Aや前面部材11Bと同じ長さになっていてシャッターカーテン20の幅方向長さを有するこのまぐさ部材140は、前述の下がり壁7に取り付けられたベース部材141に接触配置され、下がり壁7は、本実施形態に係るエレベータ用防災シャッター装置が設置されている建物の躯体となっている。
また、図3で示したとおり、ベース部材141の上には取付部材142が配置され、図4で示されているように、結合具143で下がり壁7に結合されているこの取付部材142は、シャッターカーテン20の幅方向に2個設けられている。これらの取付部材142に、前記ケース本体11Aと、巻取軸24の両端を支持している第1及び第2支持部材25,26とが結合具144で結合され、取付部材142は、これらのケース本体11Aと第1及び第2支持部材25,26を下がり壁7に取り付けるための部材となっている。
次に、本実施形態に係る回転体を構成する中子となっている第3及び第4ホイール部材47,48の形状、構造等を図9〜図15により詳細に説明する。
まず、第3及び第4ホイール部材47,48の形状、構造について説明する。第3及び第4ホイール部材47,48は共に同一の形状、構造を有しており、以下、第3ホイール部材47の形状、構造について説明する。
図9(A)は、図4に示す第3ホイール部材47を第2支持部材26側から見た正面図であり、図9(B)は、図4に示す第3ホイール部材47の側面の拡大図である。
図9(A)及び(B)に示すように、第3ホイール部材47は、中子本体部である円板状又は略円板状のホイール本体部55と、このホイール本体部55の外周面55Aから外側方向に向かって突出する突出部である6個の膨出変形部56とで構成されており、これらの膨出変形部56はホイール本体部55の円周方向に等間隔に形成されている。また、ホイール本体部55の中心部には、貫通孔55Dが形成されており、この貫通孔55Dに第2中心軸42が挿通されるようになっている。ホイール本体部55の直径寸法D3(言い換えると、貫通孔55Dに第2中心軸42が挿通されているときのホイール本体部55における第2中心軸42の軸方向と直交する方向の寸法)は、図11に示す巻取軸本体49の内径寸法D5よりも小さくなっている。
図10は、第3ホイール部材47に突出部を形成するための作業の一部を示す図である。第3ホイール部材47に膨出変形部56を形成するためには、図10(A)に示すように、ホイール本体部55の外周面55A近くの側面部55Eを先細り形状となっているポンチ150で矢印B方向(言い換えると、第3ホイール部材47の巻取軸本体49の内部空間54への挿入方向)に打圧する。すると、図10(B)に示すように、側面部55Eには穴55Bが形成されるとともに、この穴55B付近の外周面55Aには、外側方向に膨出変形した膨出変形部56が形成されることになる。このポンチ150による打圧は、ホイール本体部55の外周面55A近くの側面部55Eにおけるホイール本体部55の円周方向に等間隔な6箇所で行われ、これにより、第3ホイール部材47の表面55Bには6個の膨出変形部56が形成される。これらの膨出変形部56は、同一又は略同一の形状、構造及び突出量を有している。
図9(B)及び図10(B)に示されているように、膨出変形部56のホイール本体部55の外周面55Aからの最大突出寸法である最大膨出寸法はL1となっているが、この最大膨出寸法L1は、第3ホイール部材47の挿入方向である矢印A方向に向かって、言い換えると、ホイール本体部55の表裏面のうちの第2支持部材26側の表面55Bから第1支持部材25側の裏面55Cに向かって次第に小さくなっている。
図11は、図4に示されている巻取軸24の一部拡大図であって、この巻取軸24の巻取軸本体49の内部空間54に挿入、固定されている第3及び第4ホイール部材47,48の拡大図であり、図12は、図11において、巻取軸24を30度又は略30度正回転又は逆回転させたときの状態を示す図である。図13は図11のS13−S13線断面図であり、図14は図9のS14−S14線断面図である。
前述したように、第2中心軸42は、第3及び第4ホイール部材47,48の中心部に形成されている貫通孔55Dに挿通されるものであるが、第3及び第4ホイール部材47,48が巻取軸本体49の内部空間54に挿入される前には、図11及び図13に示されているように、第3ホイール部材47と第2中心軸42とは隅肉溶接による溶接部57で結合されるものであり、また、図11及び図14に示されているように、第4ホイール部材48と第2中心軸42とは隅肉溶接による溶接部57で結合されるものである。
第3及び第4ホイール部材47,48が巻取軸本体49の内部空間54に挿入された後、第3ホイール部材47のホイール本体部55の外周面55Aの一部及び表裏面55B,55Cの外周部の一部は巻取軸本体49に溶接で結合されるが、この結合は前述した隅肉溶接によるものではなく、図12及び図13に示すように、巻取軸本体49の円周方向に等間隔に6個形成された貫通孔49Bから、第3ホイール部材47のホイール本体部55の外周面55Aと巻取軸本体49の内周面49Aとの間に形成される隙間空間54Aへ溶化材を充填することによる充填溶接によるものである。図13に示されているように、第3ホイール部材47と巻取軸本体49とは、この充填溶接による6箇所の溶接部58で結合されており、第3ホイール部材47のうち、6個の膨出変形部56及びその周辺部は巻取軸本体49とは結合していない。
一方、第4ホイール部材48のホイール本体部55の外周面55A及びホイール本体部55の表面55Bの外周部と、巻取軸本体49の内周面49Aとは、図11及び図14に示されているように、隅肉溶接による溶接部59で結合されている。なお、図14に示されているように、第4ホイール部材48のホイール本体部55の外周面55Aと巻取軸本体49の内周面49Aとの間には隙間空間54Aが形成されているので、この隙間空間54Aに溶加材が侵入するため、第4ホイール部材47と巻取軸本体49とはより確実に結合されるものとなっている。
なお、図13及び図14に示されているように、第2中心軸42を第3及び第4ホイール部材47,48の貫通孔55Dに挿通し、第2中心軸42と第3及び第4ホイール部材47,48とを溶接で結合するときには、第3ホイール部材47に形成されている6個の膨出変形部56と、第4ホイール部材48に形成されている6個の膨出変形部56とは円周方向にずれないように配置されている。
次に、第3及び第4ホイール部材47,48を巻取軸本体49の内部空間54へ挿入、固定する手順について説明する。図15は、第2中心軸42が挿通された第3及び第4ホイール部材47,48を巻取軸本体49の内部空間54へ挿入する前の状態を示す図であり、図16は、第3及び第4ホイール部材47,48を巻取軸本体49の内部空間54へ挿入した後の状態であって、溶接で巻取軸本体49と結合する前の状態を示す図である。
第3及び第4ホイール部材47,48の巻取軸本体49の内部空間54への挿入は、第3ホイール部材47のホイール本体部55の外周面55Aが巻取軸本体49に形成された貫通孔49Bと対向する位置まで、第3及び第4ホイール部材47,48を図15に示す矢印A方向に打ち叩き込むことによって行われる。
図15に示されているように、第3及び第4ホイール部材47,48の巻取軸本体49の内部空間54への挿入作業は、第3及び第4ホイール部材47,48にそれぞれ形成された6個の膨出変形部56が巻取軸本体49に形成された6個の貫通孔49Bと前記内部空間54で対向することがないように、第3及び第4ホイール部材47,48を回転させて向きを調整した後に行われる。これにより、第3及び第4ホイール部材47,48を巻取軸本体49の内部空間54に挿入している間は、第3及び第4ホイール部材47,48にそれぞれ形成された6個の膨出変形部56は巻取軸本体49の内周面49Aに常に圧接された状態となる。
前述の図9及び図10に示されているように、第3及び第4ホイール部材47,48の6個の膨出変形部56のホイール本体部55の外周面55Aからの最大突出寸法はL1となっており、一方、ホイール本体部55の直径寸法はD3となっているので、第3及び第4ホイール部材47,48の最大直径寸法D4は、L1×2+D3となる。本実施形態では、この第3及び第4ホイール部材47,48の最大直径寸法D4は、巻取軸本体49の内径寸法D5(正確には、内径寸法の最大公差)よりも大きくなっている。言い換えると、第3及び第4ホイール部材47,48のホイール本体部55の直径寸法D3は、巻取軸本体49の内径寸法D5よりも小さく、第3及び第4ホイール部材47,48の6個の膨出変形部56のホイール本体部55の外周面55Aからの最大突出寸法L1は、第3及び第4ホイール部材47,48が巻取軸本体49の内部空間54へ挿入されたときに6個の膨出変形部56が巻取軸本体49の内周面49Aに圧接される大きさを有している。
このため、第3及び第4ホイール部材47,48は、それぞれのホイール部材に形成された6個の膨出変形部56が巻取軸本体49の内周面49Aに圧接されながら、巻取軸本体49の内部空間54に挿入されることになる。
図16に示されているように、第3及び第4ホイール部材47,48を第3ホイール部材47のホイール本体部55の外周面55Aが巻取軸本体49に形成された貫通孔49Bと対向するまで挿入したときには、第3及び第4ホイール部材47,48は、それぞれの6個の膨出変形部56の巻取軸本体49の内周面49Aへの圧接により巻取軸本体49の内周面49Aに固定された状態となっている。
この後、第3及び第4ホイール部材47,48を巻取軸本体49に完全に固定するために、第3ホイール部材47と巻取軸本体49とを前述した充填溶接により結合し、第4ホイール部材48と巻取軸本体49とを前述した隅肉溶接により結合する。
以上説明した本実施形態では、第3及び第4ホイール部材47,48のホイール本体部55の直径寸法D3は、巻取軸本体49の内径寸法D5よりも小さくなっており、第3及び第4ホイール部材47,48のホイール本体部55の外周面55Aには、この外周面55Aから外側方向に向かって突出する6個の膨出変形部56がそれぞれ形成されている。そして、第3及び第4ホイール部材47,48が巻取軸本体49の内部空間54へ挿入されることにより、それぞれのホイール部材の6個の膨出変形部56が巻取軸本体49の内周面49Aに圧接するようになっている。
このため、本実施形態によると、巻取軸本体49の内径寸法D5の公差が大きくなっても、第3及び第4ホイール部材47,48は、6個の膨出変形部56が巻取軸本体49の内周面49Aに圧接されながら、巻取軸本体49の内周面49Aに固定されることになり、中子の中心軸の芯出しが容易に行えるようになる。これにより、第3及び第4ホイール部材47,48に挿通された第2中心軸42は偏芯(芯ずれ)せず、巻取軸24は円滑な回転を行うことができる。
また、本実施形態では、膨出変形部56のホイール本体部55の外周面55Aからの突出寸法は、第3及び第4ホイール部材47,48の巻取軸本体49の内部空間54への挿入方向に向かって次第に小さくなっているので、第3及び第4ホイール部材47,48を巻取軸本体49の内部空間54へ挿入し易くすることができる。
なお、本実施形態では、第3ホイール部材47のホイール本体部55の外周面55Aの一部は、充填溶接により巻取軸本体49へ結合されているが、第3ホイール部材47と巻取軸本体49とは溶接等で結合しなくてもよい。この場合には、巻取軸本体49に形成する6個の貫通孔49Bは不要となる。
図17及び図18は、別実施形態に係る中子であるホイール部材147を示す図である。なお、以下に説明する実施形態において、前述の図9〜図16の実施形態と同じ形状、構造等を有する部材等については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
図17(A)は、ホイール部材147を巻取軸本体49の内部空間54に挿入配置した場合におけるこのホイール部材147を外側である第2支持部材26側から見た正面図であり、言い換えると、ホイール部材147の表裏面のうちの表面155Bを示す図であり、図17(B)は、ホイール部材147の側面図である。また、図18は、ホイール部材147の表面155Bの斜視図である。
図17(A)に示すように、本実施形態に係るホイール部材147は、図9〜図16の実施形態と同様に、中子本体部である円板状又は略円板状のホイール本体部155と、このホイール本体部155の外周面155Aに設けられ、この外周面155Aから外側方向に向かって突出し、ホイール部材147が巻取軸本体49の内部空間54に挿入されることにより巻取軸本体49の内周面49Aに圧接する6個の突出部156とで構成されている。本実施形態では、これら6個の突出部156は、中子用部材の打ち抜き加工によりホイール本体部155と共に一体成形されるものである。
図17(A)に示すように、6個の突出部156は、同一又は略同一の形状、構造及び突出量を有し、ホイール本体部155の円周方向に等間隔に設けられている。それぞれの突出部156のホイール本体部155の直径方向の断面形状は、ホイール本体部155の外周面155Aから外側方向へ延びる頂角を有する二等辺三角形又は略二等辺三角形となっている。そして、図17(B)及び図18に示されているように、6個の突出部156の前記外周面155Aからの突出寸法は、ホイール部材147の巻取軸本体49の内部空間54への挿入方向(図17(B)の矢印A方向)に向かって、言い換えると、ホイール本体部155の表面155Bから裏面155Cに向かって次第に小さくなっている。
なお、図17(B)に示されているホイール本体部155の直径寸法D6は、前述の図16に示す巻取軸本体49の内径寸法D5よりも小さくなっている。一方、6個の突出部156の最大突出寸法L2は、ホイール部材147が巻取軸本体49の内部空間54へ挿入されることにより巻取軸本体49の内周面49Aに圧接する大きさを有している。このため、図17(B)に示すように、2個の突出部156の最大突出寸法L2を含むホイール部材147の最大直径寸法D4はL2×2+D6となっている。
本実施形態によると、1回の打ち抜き加工で6個の突出部156を有する中子であるホイール部材147を製造することができるので、それだけホイール部材147の製造工程の簡略化を図ることができる。
また、本実施形態においても、6個の突出部156のホイール本体部155の外周面155Aからの突出寸法が、ホイール部材147の巻取軸本体49の内部空間54への挿入方向に向かって次第に小さくなっているので、ホイール部材147を巻取軸本体49の内部空間54へ挿入し易くなっている。
図19及び図20は、さらなる別実施形態に係る中子であるホイール部材247を示す図である。図19(A)は、図17(A)と同様のホイール部材247の表面255Bの正面図であり、図19(B)も、図17(B)と同様のホイール部材247の側面図である。また、図20も、図18と同様のホイール部材247の表面255Bの斜視図である。
図19(A)に示すように、本実施形態に係るホイール部材247は、図9〜図16の実施形態、並びに図17及び図18の実施形態と同様に、中子本体部である円板状又は略円板状のホイール本体部255と、このホイール本体部255の外周面255Aに設けられ、この外周面255Aから外側方向に向かって突出し、ホイール部材247が巻取軸本体49の内部空間54に挿入されることにより巻取軸本体49の内周面49Aに圧接する6個の突出部256とで構成されている。本実施形態では、図17及び図18の実施形態と同様に、6個の突出部256が中子用部材の打ち抜き加工によりホイール本体部255と共に一体成形されるものである。
図19(A)に示すように、6個の突出部256は、同一又は略同一の形状、構造及び突出量を有し、ホイール本体部255の円周方向に等間隔に設けられている。それぞれの突出部256のホイール本体部255の直径方向の断面形状は、ホイール本体部255の外周面255Aよりも外側に位置する上底の長さ寸法が、前記外周面255Aに位置する下底の長さ寸法よりも小さい台形又は略台形となっている。言い換えると、それぞれの突出部256のホイール本体部255の直径方向の断面形状は、前述の図17及び図18の実施形態におけるそれぞれの突出部156の頂角部分を水平方向に切り欠いた形状となっている。
また、図19(B)及び図20に示されているように、6個の突出部156の前記外周面255Aからの突出寸法は、ホイール部材247の巻取軸本体49の内部空間54への挿入方向(図19(B)の矢印A方向)に向かって、言い換えると、ホイール本体部255の表面255Bから裏面255Cに向かって次第に小さくなっている。
さらに、本実施形態では、図20に示されているように、6個の突出部256の下底の長さ寸法は前記挿入方向に向かって不変であるが、6個の突出部256の上底の長さ寸法は前記挿入方向に向かって次第に大きくなっている。
このため、図20に示されているように、突出部256は、前記挿入方向に向かってホイール本体部255の中心側へ傾斜し、かつ、前記挿入方向に向かって幅広となっている傾斜面256Aを有するものとなっている。
なお、図19(B)に示されているホイール本体部255の直径寸法D7は、前述の図16に示す巻取軸本体49の内径寸法D5よりも小さくなっている。一方、6個の突出部256の最大突出寸法L3は、ホイール部材247が巻取軸本体49の内部空間54へ挿入されることにより巻取軸本体49の内周面49Aに圧接する大きさを有している。このため、図19(B)に示すように、2個の突出部256の最大突出寸法L3を含むホイール部材247の最大直径寸法D4はL3×2+D7となっている。
本実施形態によると、前述の図17及び図18の実施形態と同様に、1回の打ち抜き加工で6個の突出部256を有する中子であるホイール部材247を製造することができるので、それだけホイール部材247の製造工程の簡略化を図ることができる。
また、本実施形態においても、6個の突出部256のホイール本体部255の外周面255Aからの突出寸法が、ホイール部材247の巻取軸本体49の内部空間54への挿入方向に向かって次第に小さくなっているので、ホイール部材247を巻取軸本体49の内部空間54へ挿入し易くなっている。
さらに、本実施形態では、6個の突出部256は、前記挿入方向に向かってホイール本体部255の中心側へ傾斜し、かつ、前記挿入方向に向かって幅広となっている傾斜面256Aを有しているので、前述の図17及び図18の実施形態と比較して、ホイール部材247を巻取軸本体49の内部空間54へ挿入したときに突出部256のうちの巻取軸本体49の内周面49Aに圧接する部分が多くなる。このため、本実施形態によると、ホイール部材247が巻取軸本体49の内周面49Aにより確実に固定されることになる。
図21及び図22は、またさらなる別実施形態に係る中子であるホイール部材347を示す図である。図21(A)は、図17(A)と同様のホイール部材347の表面355Bの正面図であり、図21(B)も、図17(B)と同様のホイール部材347の側面図である。また、図21も、図18と同様のホイール部材247の表面355Bの斜視図である。
図21(A)に示すように、本実施形態に係るホイール部材347は、前述の3つの実施形態と同様に、中子本体部である円板状又は略円板状のホイール本体部355と、このホイール本体部355の外周面355Aに設けられ、この外周面355Aから外側方向に向かって突出し、ホイール部材347が巻取軸本体49の内部空間54に挿入されることにより巻取軸本体49の内周面49Aに圧接する6個の突出部356とで構成されている。本実施形態では、前述の3つの実施形態とは異なり、6個の突出部356は、中子本体部であるホイール本体部355の外周面355Aの近傍に取り付けられていて、前記外周面355Aから外側方向に向かって突出するピース部材356となっている。具体的には、ホイール本体部355には、このホイール本体部355の外周面355Aから内側に向かってピース部材356が嵌入可能な図示しない凹部が形成されており、この凹部に前記外周面355Aから外側方向に向かって突出するピース部材356を嵌入した後、溶着や接着等でピース部材356をホイール本体部355に結合させることで突出部356が形成されるものである。
図21(A)に示すように、6個の突出部356は、同一又は略同一の形状、構造及び突出量を有し、ホイール本体部355の円周方向に等間隔に設けられている。それぞれの突出部356のホイール本体部255の直径方向の断面形状は略正方形となっている。
また、図21(B)及び図22に示されているように、6個の突出部356の前記外周面325Aからの突出寸法は、ホイール部材347の巻取軸本体49の内部空間54への挿入方向(図21(B)の矢印A方向)に向かって、言い換えると、ホイール本体部355の表面355Bから裏面355Cに向かって次第に小さくなっている。
さらに、本実施形態では、図22に示されているように、6個の突出部356の下辺の長さ寸法は前記挿入方向に向かって不変であるが、6個の突出部356の上辺の長さ寸法は前記挿入方向に向かって次第に小さくなっている。
このため、図22に示されているように、突出部356は、前記挿入方向に向かってホイール本体部355の中心側へ傾斜し、かつ、前記挿入方向に向かって幅狭となっている傾斜面356Aを有するものとなっている。
なお、図21(B)に示されているように、ホイール本体部355の最大直径寸法は、前述の図19及び図20の実施形態のホイール本体部255の最大直径寸法と同じD4となっており、また、6個の突出部356の最大突出寸法も、前述の図19及び図20の実施形態の6個の突出部256の最大突出寸法と同じL3となっている。
本実施形態によると、中子本体部であるホイール本体部355が剛性の低い材質で形成されていたとしても、突出部356となるピース部材356を剛性の高い材質のもので形成することにより、突出部356が潰れ変形することなくホイール部材347を巻取軸本体49の内周面49Aにより確実に固定することが可能となる。
また、本実施形態では、突出部356がホイール本体部355とは別部材であるピース部材で形成されているので、ピース部材356をホイール本体部355に取り付ける位置を変更することにより、突出部356のホイール本体部355の外周面355Aからの最大突出寸法L3を容易に変更することができる。
また、本実施形態においても、6個の突出部356のホイール本体部355の外周面355Aからの突出寸法が、ホイール部材347の巻取軸本体49の内部空間54への挿入方向に向かって次第に小さくなっているので、ホイール部材347を巻取軸本体49の内部空間54へ挿入し易くなっている。
さらに、本実施形態では、前述の図19及び図20の実施形態とは異なり、図22に示されているように、6個の突出部356は、前記挿入方向に向かってホイール本体部355の中心側へ傾斜し、かつ、前記挿入方向に向かって幅狭となっている傾斜面356Aを有しているので、ホイール部材347を巻取軸本体49の内部空間54へ挿入したときに突出部356のうちの巻取軸本体49の内周面49Aに圧接する部分が次第に多くなる。このため、本実施形態によると、前述の図19及び図20の実施形態と比較して、ホイール部材247が巻取軸本体49の内周面49Aにさらにより確実に固定されることになる。
なお、以上説明した各実施形態において、巻取軸本体49の内径寸法D5の最大許容寸法(プラス公差)をD5+αとすると、第3及び第4ホイール部材47,48、ホイール部材147,247,347の6個の突出部56,156,256,356が、巻取軸本体49の内周面49Aにより確実に圧接するようにするためには、突出部56,156,256,356の最大突出寸法を含めた第3及び第4ホイール部材47,48、ホイール部材147,247,347の最大直径寸法D4が、前記最大許容寸法D5+αより大きくなっていることが好ましい。
また、以上説明した各実施形態において、巻取軸本体49の内径寸法D5の最小許容寸法(マイナス公差)をD5−αとすると、第3及び第4ホイール部材47,48、ホイール部材147,247,347のホイール本体部55,155,255,355の直径寸法D3,D6,D7,D7は、前記最小許容寸法D5−αより小さくなっていることが好ましい。言い換えると、巻取軸本体49の内径寸法D5の最小許容寸法D5−αは、第3及び第4ホイール部材47,48、ホイール部材147,247,347のホイール本体部55,155,255,355の直径寸法D3,D6,D7,D7より大きくなっていることが好ましい。
これは、ホイール本体部55,155,255,355の直径寸法D3,D6,D7,D7が前記最小許容寸法D5−αより小さくなっていることにより、第3及び第4ホイール部材47,48、ホイール部材147,247,347が巻取軸本体49の内部空間54に挿入されたときには、巻取軸本体49の内周面49Aと、ホイール本体部55,155,255,355の外周面55A,155A,255A,355Aのうちの6個の突出部56,156,256,356を除いた部分と間に隙間が形成され、前記外周面55A,155A,255A,355Aに設けられた突出部56,156,256,356が前記内周面49Aに圧接可能となるからである。
なお、以上において、第1支持部材25側に配置されている第1ホイール部材45は、第3及び第4ホイール部材47,48と同様に、中子本体部である円板状又は略円板状のホイール本体部と、このホイール本体部の外周面に設けられ、この外周面から外側方向に向かって突出し、この第1ホイール部材45が巻取軸本体49の内部空間54に挿入されることにより巻取軸本体49の内周面49Aに圧接する6個の突出部とで構成されるようにしてもよい。