このように端部がブラケットで支持された巻取軸を内部に収納するためのケースをシャッター装置に設ける場合には、ケースをブラケットに取り付けることによってブラケットにケースを支持させることなどの種々の構造が考えられるが、ブラケットで支持される巻取軸の中心軸部が巻取軸の正確な中心部になく、その位置が偏心等している場合があることも考慮しなければならない。このような場合でも、シャッターカーテンに所定どおりの開閉移動を行わせることができるようにするために、端部がブラケットで支持され、ケースの内部に収納されている巻取軸の円滑な回転を確保することが求められる。
本発明の目的は、端部がブラケットで支持され、ケースの内部に収納されている巻取軸の円滑な回転を確保できるようになるシャッター装置の巻取軸収納用ケースの取付構造を提供するところにある。
本発明に係るシャッター装置の巻取軸収納用ケースの取付構造は、開閉移動自在なシャッターカーテンの開閉移動のためにこのシャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸の端部が不動部材に結合されたブラケットで支持され、この巻取軸がケースの内部に収納されているとともに、このケースと前記ブラケットとは、不完全に連結された不完全連結関係又は直接連結されていない非直接連結関係となっていることを特徴するものである。
このシャッター装置の巻取軸収納用ケースの取付構造によると、内部に巻取軸を収納しているケースと、巻取軸の端部を支持しているブラケットとは、不完全に連結された不完全連結関係又は直接連結されていない非直接連結関係となっており、したがって、ケースとブラケットは完全に又は直接に連結されていないため、製造上や組み立て上の誤差等のために、巻取軸の中心軸部が巻取軸の正確な中心部になく、その位置が偏心等している場合でも、この偏心等のためにブラケットが巻取軸の回転時に振れ運動することをケースが拘束するのを抑制することができ、これにより、シャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸の円滑な回転を確保できるようになる。
以上において、内部に巻取軸を収納するケースと巻取軸の端部を支持するブラケットとを、不完全に連結された不完全連結関係又は直接連結されていない非直接連結関係とするための構造は、ケースとブラケットとをこのような関係とすることができるものであれば、任意な構造でよい。
その第1番目の例は、ブラケットが、前記不動部材に結合された基部から片持ち状態で巻取軸の側へ延びる板状又は略板状の形状となっている場合に、このブラケットとケースとを、ブラケットが基部を中心に巻取軸の軸方向に振れ運動可能となるように連結することである。
これにより、巻取軸の中心軸部が巻取軸の正確な中心部になく、その位置が偏心等している場合でも、巻取軸の回転のためにブラケットが基部を中心に巻取軸の軸方向に振れ運動することが許容され、シャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸の円滑な回転をケースが拘束して抑え込むのをなくす又は少なくすることができる。
この第1番目の例において、ブラケットとケースとを、ブラケットが前記基部を中心に巻取軸の軸方向に振れ運動可能となるように連結するためには、例えば、ケースとブラケットとを、ブラケットの前記基部又はこの基部の付近のみで連結すればよい。
そして、このためには、例えば、ブラケットに、前記基部から前記不動部材に対して離れる側へ突出した突出部を設け、この突出部においてケースとブラケットとを連結すればよい。
これによると、巻取軸の回転のためにブラケットが基部を中心に巻取軸の軸方向に振れ運動することを許容することと、ブラケットを、ケースを取り付けるための取付部材として活用することを達成できる。
また、このようにブラケットに、前記基部から前記不動部材に対して離れる側へ突出した突出部を設ける場合には、この突出部を、基部における巻取軸の軸方向外側の端部に形成されているブラケットの部分とすることが好ましい。
これによると、巻取軸の全体を、突出部においてブラケットに連結されたケースの内部に収納することができる。
また、内部に巻取軸を収納するケースと巻取軸の端部を支持する前記ブラケットとを、不完全に連結された不完全連結関係又は直接連結されていない非直接連結関係とするための第2番目の例は、これらのケースとブラケットとを、ケースとブラケットとの間に弾性部材を介在させて連結することである。すなわち、ケースとブラケットとを弾性部材を介して間接的に連結することである。
これによると、ケースとブラケットは直接連結されず、これらのケースとブラケットはゴムやばね等の弾性部材を介して連結され、この弾性部材の弾性変形によってケースに対するブラケットの運動が許容されるため、巻取軸の回転のためのブラケットの振れ運動は、ケースによって大きく拘束されず、これにより、シャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸の円滑な回転を確保することができる。
なお。この場合における弾性部材は、例えば、ゴムやばね、多孔質部材、軟質樹脂等である。
また、内部に巻取軸を収納するケースと巻取軸の端部を支持するブラケットとを、不完全に連結された不完全連結関係又は直接連結されていない非直接連結関係とするための第3番目の例は、ケースを、ブラケットが結合されている前記不動部材に結合し、この結合箇所と、ブラケットが不動部材に結合されている箇所とを離すことである。
これによると、ケースとブラケットは直接連結されず、ブラケットが結合されている不動部材を介して間接的に結合されているだけであるため、ブラケットが巻取軸の回転のために振れ運動することは、ケースによって大きく拘束されないことになり、これにより、シャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸の円滑な回転を確保することができる。
なお、第1番目の例と第2番目の例は、それぞれ単独で実施することができるとともに、組み合わせても実施することができる。
また、ブラケットにおける前記不動部材に結合された基部とは反対側の先端部と、この先端部と対向するケースの前面部の内面との間には隙間を設けることが好ましい。
これによると、ブラケットが不動部材に結合された基部を中心に巻取軸の軸方向に振れ運動することが、ブラケットの先端部がケースの前面部の内面との間に摩擦力を生ずることなく、自由になされることになり、これにより、巻取軸の一層円滑な回転を確保することができる。
このようにブラケットにおける前記不動部材に結合された基部とは反対側の先端部と、この先端部と対向するケースの前面部の内面との間に隙間を設ける場合には、この隙間をそのまま残してもよく、あるいは、この隙間にゴムやばね、多孔質部材、軟質樹脂等による弾性部材を介在させてもよい。
後者によると、ブラケットが不動部材に結合された基部を中心に巻取軸の軸方向に振れ運動することを弾性部材の弾性作用によって許容しながら、ブラケットの先端部をケースの前面部に弾性部材を介して連結することができ、これにより、それだけ巻取軸等の重量を支持するブラケットの機能が向上する。
さらに、本発明において、巻取軸の端部を支持するブラケットは、巻取軸のそれぞれの端部ごとに用意された2個等の複数個となっているものでもよく、あるいは、巻取軸の軸方向の長さを有していてその両端に巻取軸の両端を支持する部分を有している1個となっているものでもよい。
また、本発明が、巻取軸の個数が1個となっているシャッター装置に適用される場合には、この1個の巻取軸の両端を支持するブラケットに、内部に巻取軸を収納するためのケースが前述した不完全連結関係又は非直接連結関係で連結されるが、本発明を、複数個の巻取軸が軸方向に直列的に配置された連装タイプのシャッター装置に適用する場合には、これらの巻取軸を内部に収納するためのケースを、軸方向の最端部に配置された2個の巻取軸のそれぞれの外側端部を支持するためのブラケットに前述した不完全連結関係又は非直接連結関係で連結すればよい。
また、本発明は、シャッターカーテンが任意な材料で形成されているシャッター装置に適用できる。すなわち、シャッターカーテンは、その全部又は主要部が複数のスラットの連設で形成されたものでもよく、複数のパネルの連設で形成されたものでもよく、リンクで連結された複数のパイプで形成されたものでもよく、布やシート等の薄厚部材で形成されたものでもよく、ネットで形成されたものでもよく、これらのうちの少なくとも2つの複合で形成されたもの等でもよい。
シャッターカーテンの少なくとも一部が布やシート等の薄厚部材で形成されている場合には、この薄厚部材はスラット等と比較すると汚損されやすく、かつ外部力等で破損しやいため、このようなシャッターカーテンが巻き取られる巻取軸の外側をケースで覆うことは有意義なことであり、本発明は、このようなケースを有しているシャッター装置に有効に適用することができる。
さらに、本発明は、巻取軸が任意な形状、構造で構成されているシャッター装置に適用できる。すなわち、巻取軸は、1本の又は直列に連結された複数本の中空軸や中実軸で形成されたものでもよく、あるいは、非回転の中心軸と、この中心軸の外周に中心軸の軸方向に離れて配置された複数個のホィール部材と、中心軸に対して回転自在となっているこれらのホィール部材を連結するバー材やパイプ材等による連結部材とを含んで構成されたもの等でもよい。
また、本発明は、巻取軸と平行になった補助軸を有し、この補助軸の上に掛けられて案内されるシャッターカーテンが巻取軸に巻き取られ、繰り出されるようになっているシャッター装置にも適用できる。このようなシャッター装置に本発明を適用する場合には、補助軸は、巻取軸を支持する前記ブラケットに取り付けてもよく、このブラケットとは別の部材に取り付けてもよい。
また、本発明は、任意な用途のシャッター装置に適用できる。すなわち、本発明が適用されるシャッター装置は、窓や出入口等の開口部をシャッターカーテンで開閉する開口部用シャッター装置でもよく、全閉となったシャッターカーテンで防災区画を形成するための防災用シャッター装置でもよく、車庫用シャッター装置でもよく、物置用シャッター装置でもよく、トラック等の車両の荷台やコンテナのためのシャッター装置等でもよい。そして、防災用シャッター装置には、火災等の災害発生時にシャッターカーテンがエレベータとエレベータホールとの間で閉じ移動するエレベータ用防災シャッター装置が含まれる。
また、本発明は、シャッターカーテンの閉じ移動が、シャッターカーテンの自重と、ウエイト部材の重量と、手動操作と、電動モータ等の駆動手段とのうちのいずれか1つ又はこれらのうちの少なくとも2つの複合でなされるシャッター装置に適用できる。また、シャッターカーテンの開き移動も、シャッターカーテンの自重と、ウエイト部材の重量と、手動操作と、電動モータ等の駆動手段とのうちのいずれか1つ又はこれらのうちの少なくとも2つの複合でなされるシャッター装置について、本発明を適用できる。
そして、本発明は、シャッターカーテンの閉じ移動時と開き移動時のうちの一方のときにばね力が蓄圧されるコイルばねや渦巻きばね等によるリターンばねが巻取軸等に配置され、このリターンばねの蓄圧力が、シャッターカーテンの閉じ移動時と開き移動時のうちの他方のときに利用されるようになっているシャッター装置にも適用できる。
さらに、本発明は、巻取軸の巻き取り、繰り出しによるシャッターカーテンの開閉移動方向が上下方向となっているシャッター装置にも、横方向となっているシャッター装置にも、上下方向や水平方向に対する傾き角度を有する傾斜方向となっているシャッター装置にも適用できる。また、シャッターカーテンの開閉移動方向が上下方向となっているシャッター装置については、シャッターカーテンの閉じ方向が下方向であって開き方向が上方向でもよく、シャッターカーテンの閉じ方向が上方向であって開き方向が下方向でもよい。
本発明によると、端部がブラケットで支持され、ケースの内部に収納されている巻取軸の円滑な回転を確保できるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係るシャッター装置は、全閉となったときのシャッターカーテンで防災区画を形成するための防災用シャッター装置であって、しかも、火災発生時にシャッターカーテンがエレベータとエレベータホールとの間で閉じ移動するエレベータ用防災シャッター装置である。以下、このエレベータ用防災シャッター装置を説明する。図1は、そのエレベータ用防災シャッター装置の全体を示す正面図で、図2は図1のS2−S2線断面図、図3は、図1のエレベータ用防災シャッター装置の縦断面図である。
初めにエレベータの全体構造を説明する。図2及び図3に示すように、エレベータの昇降箱1が上下動する建物内の縦穴2とエレベータホール3とを区画する建物躯体となっているコンクリート製の壁4には、下面がエレベータホール3から続く床5となっている開口部6が形成され、エレベータ用出入口であるこの開口部6には、縦穴2側の奥において、エレベータ用扉7が配置されている。壁4の厚さ内から縦穴2側に外れた位置に配置されているこのエレベータ用扉7を開閉移動させるために、図3で示されているように、上部レール8と下部レール9がエレベータ用扉7の上下に設けられている。
上部レール8には、エレベータ用扉7の上部ブラケット7Aに取り付けられた上下のローラ10,11が転動自在に係合し、床5に設けられた下部レール9にはエレベータ用扉7の下面に取り付けられた係合部材12がスライド自在に係合し、上のローラ10で吊り下げられた上吊り式となっているエレベータ用扉7は、これらのローラ10,11と係合部材12の案内作用により図示しない駆動手段の駆動力で開閉移動する。
図1に示すとおり、開口部6の上部内面と左右の側部内面には、上枠部材13と側枠部材14が配設され、開口部6の上部内面を形成する上部内面部材となっている上枠部材13と、側部内面を形成する側部内面部材となっている側枠部材14により、開口部6の内面には三方枠となった開口部用外枠組み15が設けられている。これらの上枠部材13と側枠部材14はステンレス等の金属板製であり、開口部6の化粧材となっている。
図3で示すように、上枠部材13は、エレベータホール3側の立上り部13Aと、この立上り部13Aの下端からエレベータ扉7側へ水平に延びる延出部13Bとからなる。立上り部13Aは、壁4における開口部6より上部の下がり壁4Aのエレベータホール3側の表面に設けられた取付部材16に取り付けられ、延出部13Bは、下がり壁4Aの縦穴2側の表面に結合具17とブラケット18を介して結合された保持部材19に結合されている。この保持部材19に前記上部レール8が取り付けられている。
また、上枠部材13の立上り部13Aよりも上の取付部材16は、天井部材20でエレベータホール3と上下に仕切られた天井裏空間21に配置されている。この立上り部13Aには、図1に示すように、エレベータ用インジケータ22が配置されている。
本実施形態に係るエレベータ用防災シャッター装置は、図1に示すように、開閉移動することにより、言い換えると、上下動することにより、エレベータとエレベータホール3との間で開口部6を開放、閉鎖するシャッターカーテン30を備えている。図2に示すように、このシャッターカーテン30の左右両端部、言い換えると、シャッターカーテン30の開閉移動方向と直交するシャッターカーテン幅方向の両端部は、抜け止め部材30Aで抜け止めされながらガイド部材であるガイドレール37にスライド自在に挿入されている。シャッターカーテン30の開閉移動を案内するためのガイド部材となっているこれらの左右一対のガイドレール37は、壁4における開口部6の左右両側に設けられている側壁4Bのエレベータホール3側の表面の化粧材38に配置されている。また、これらのガイドレール37の配置位置は、開口部6の化粧材となっていて上枠部材13と側枠部材14からなる前記三方枠の外枠組み15よりもエレベータホール3側の位置となっている。
図3に示すように、シャッターカーテン30の上端は天井裏空間21に水平に配設されている巻取軸50に結合され、回転自在となっているこの巻取軸50によってシャッターカーテン30は巻き取られ、繰り出される。この巻き取り、繰り出しによってなされるシャッターカーテン30の上下動は、言い換えると、シャッターカーテン30の開閉移動は、天井部材20に設けられているまぐさ39のスリットをシャッターカーテン30が挿通することによりなされる。巻取軸50は、図1で示されているとおり、左右の第1及び第2巻取軸用ブラケット51,52で支持され、これらのブラケット51,52は、不動部材となっている図3で示した取付部材16に取り付けられている。
これらの巻取軸50と左右のブラケット51,52は、後述するケース80の内部に収納されている。
シャッターカーテン30は、カーテン本体31と、このカーテン本体31の閉じ側の先端部、すなわち、カーテン本体31の下端部に設けられた座板32とを有している。カーテン本体31は、耐火性や遮煙性を有する薄厚部材により形成され、この薄厚部材は、例えば、シリカクロスやガラスクロスに耐火塗料を塗布及び/又は含浸させたものであり、したがって、カーテン本体31はスクリーン式となっている。また、座板32は金属製であり、この座板32も防火性と遮煙性とを有する。
図1で示されているとおり、座板32のエレベータホール3側の側面には、被係止部材33がシャッターカーテン30の幅方向中央位置に取り付けられ、この被係止部材33には被係止孔33Aが形成されている。この被係止部材33の真上位置において、図3で示すように、天井裏空間21に突出している前記まぐさ39の上面には、シャッターカーテン30を全開位置に係止するための係止装置34が配置され、この係止装置34は、巻取軸50の巻き取りによってシャッターカーテン30が全開位置に達しているときに、言い換えると、座板32がまぐさ39に当接する位置まで達しているときに、被係止部材33の被係止孔33Aに挿入係止することによってシャッターカーテン30を全開位置に維持させるための係止部材35を備えている。上下に揺動自在となっている通常時の係止部材35は、係止装置34の内部に設けられているストップ機構によって被係止孔33Aに挿入係止した水平姿勢となっており、これにより、シャッターカーテン30は全開位置に維持される。
係止装置34の内部には、火災の発生を検知する図示しないセンサからの信号で作動するソレノイドが組み込まれ、このソレノイドの作動によるストップ機構の解除により、シャッターカーテン30は、座板32を含む自重によって係止部材35を下向きに揺動させながら下降し、すなわち、係止装置34によるシャッターカーテン30の係止が解除され、巻取軸50から繰り出されたシャッターカーテン30が前記床5への座板32の到達によって全閉位置に達すると、シャッターカーテン30によって防災区画が形成される。また、上記ストップ機構は図示しない手動操作部材が操作されることによっても解除可能となっており、火災を発見した人がこの手動操作部材を操作することによってもシャッターカーテン30は全閉となる。
図1で示すように、シャッターカーテン30のエレベータ側の面には、以上のように全閉となったシャッターカーテン30を、エレベータを利用して避難してきた人が持ち上げてその下を通過できるようにした手掛け部材40,41が設けられている。手掛け部材40は、カーテン本体31を形成している上下の薄厚部材31A,31Bの重なり部分に形成されている袋部42に挿入された棒状部材であり、袋部42には切れ目があり、この切れ目から露出した手掛け部材40の一部に手を掛けることにより、シャッターカーテン30を持ち上げることができる。また、手掛け部材41は、手掛け部材40よりも下側の座板32に取り付けられ、手掛け部材40による持ち上げである高さまで上昇した座板31を、この手掛け部材41でさらに高い位置まで持ち上げることができるようになっている。
前記巻取軸50の内部には、後述するようにリターンばねが配置され、シャッターカーテン30が自重で上述のように下降して巻取軸50から繰り出される際に、このリターンばねは回転する巻取軸50でばね力が蓄圧される。このため、シャッターカーテン30の自重による下降は、リターンばねが蓄圧される分だけ減速される。上述のようにエレベータを利用して避難してきた人がシャッターカーテン30を持ち上げてその下を通過するために、手掛け部材40,41でシャッターカーテン30を持ち上げて上昇させるときには、すなわち、シャッターカーテン30を巻取軸50で巻き取るときには、リターンばねの蓄圧されたばね力が、シャッターカーテン30を巻き取るための巻取軸50の回転に利用され、このばね力が補助力となるため、シャッターカーテン30を軽く持ち上げることができる。
なお、全閉位置に達している又は全閉位置までの途中位置に達しているシャッターカーテン30の座板32に大きな押し上げ力を加えてシャッターカーテン30を高く上昇させると、この押し上げ力とリターンばねの蓄圧されたばね力とにより、シャッターカーテン30は全開位置に達する。また、前記係止装置34の係止部材35は上下の二股部分を有していて、下向きの揺動姿勢となっていたこの係止部材35の二股部のうちの上部分が、シャッターカーテン30と共に上昇してきた前記被係止部材33の上面で押し上げられ、これにより水平姿勢に復帰した係止部材35の二股部のうちの下部分が被係止部材33の孔33Aに挿入係止する。このときの前記ストッパ機構は、係止部材35が水平姿勢に戻ると同時にもとの状態に復帰しているため、シャッターカーテン30は全開位置に維持され、全部がもとの状態に戻る。
また、シャッターカーテン30が上下に挿通している図3のまぐさ39のスリットには遮煙部材43が設けられ、これにより、シャッターカーテン30が全閉となっているときに、火災で生じた煙がまぐさ39のスリットを通過してシャッターカーテン30の反対側に達するのを防止するようになっている。このような遮煙部材は、本実施形態では、シャッターカーテンの幅方向両端部がスライド自在に挿入されている左右のガイドレール37の内部に設けられていないが、設けてもよい。
図4は、前記ケース80及びこのケース80の内部に収納されている巻取軸50と左右の前記巻取軸用ブラケット51,52を示す平断面図である。巻取軸50の軸方向の一方の端部の側には、非回転体60が巻取軸50と同軸的又は略同軸的に設けられ、他方の端部の側には、回転体61が巻取軸50と同軸的又は略同軸的に設けられている。中空の筒状部材からなる巻取軸50よりも内径側に配置されている非回転体60は、前述したようにシャッターカーテン30を巻き取り、繰り出すための巻取軸50に対して回転しないものとなっている。また、非回転体60と同じく、巻取軸50よりも内径側に配置されている回転体61は巻取軸50と一体化されており、この巻取軸50と共に回転する。
非回転体60は、巻取軸50の内部に挿入されたボス部材62と、このボス部材62に一方の端部が結合され、他方の端部が巻取軸50の外部に露出している第1軸63とを有し、この第1軸63は、巻取軸50における非回転体60が配設されている側の端部の内部に嵌め込み結合されている軸受け部材64の中心孔に回転自在に挿通されている。巻取軸50の軸方向途中の内部には駆動部材65が配置され、巻取軸50と結合されていてこの巻取軸50と一体に回転するこの駆動部材65と、非回転体60のボス部材62又は第1軸63との間に、コイルばねによる前述したリターンばね66が架け渡し連結されている。また、駆動部材65と非回転体60のボス部材62との間には、中空の筒状部材による連結部材67が架け渡され、この連結部材67の軸方向の一方の端部はボス部材62の小径部62Aに嵌合結合されているとともに、他方の端部は、駆動部材65の小径部65Aに、円周方向に連続的に延びる図示外の凹凸嵌合部等によって軸方向へ抜け止めされて回転自在に嵌合され、これにより、駆動部材65と非回転体60のボス部材62は、リターンばね66を内部に収納した連結部材67で連結されている。
前記回転体61は、巻取軸50の内部に間隔を開けて配置された2個の固定部材68,69と、これらの固定部材68,69の中心部に結合された第2軸70とを有している。固定部材68,69は巻取軸50に結合固定され、第2軸70における固定部材68とは反対側の端部は巻取軸50の外部に露出している。
以上において、非回転体60の軸方向長さは巻取軸50の軸方向長さよりも充分に短い。したがって、非回転体60の軸方向長さは、巻取軸50と重複しない部分が生じている長さとなっている。これらの非回転体60と巻取軸50とが重複しない軸方向長さ部分にリターンばね66が配置されており、この軸方向長さ部分は、第1軸63と第2軸70との間であって、第1軸63と駆動部材65との間である。
非回転体60の第1軸63は、前記第1ブラケット51に形成されている孔に挿通され、この第1ブラケット51には、非回転体60の第1軸63を支持する軸受け部材71が取り付けられている。また、回転体61の第2軸70は、前記第2ブラケット52に形成されている孔に挿通され、この第2ブラケット52には、第2軸70を回転自在に支持する軸受け部材72が取り付けられている。
本実施形態では、第1軸63と第2軸70が、巻取軸50の両端に設けられた巻取軸50のための中心軸部となっており、したがって、これらの中心軸部は軸受け部材71,72を介して左右のブラケット51,52で支持されている。
第1ブラケット51には、第1軸63を第1ブラケット51に対して回り止めするための回り止め部材73が設けられている。この回り止め部材73には、図6で示されているとおり、ブラケット51の孔から突出した第1軸63の端部に形成されている面取り部63Aが挿入係合する係合溝73Aが形成されており、この係合溝73Aに面取り部63Aを挿入係合して回り止め部材73をビス等の結合具76でブラケット51に取り付けることにより、第1軸63及びこの第1軸63を構成部材としている非回転体60は、ブラケット51に対して回り止めされる。
これにより、第1軸63及びこの第1軸63を構成部材としている非回転体60は第1及び第2ブラケット51,52に対して回転せず、これに対し、第2軸70及びこの第2軸70を構成部材としている前記回転体61は第1及び第2ブラケット51,52に対して回転自在となっていて、巻取軸50も第1及び第2ブラケット51,52に対して回転自在となっているため、巻取軸50がシャッターカーテン30を繰り出すために回転すると、非回転体60に一端が結合されていて、他端が巻取軸50と一体に回転する駆動部材65に結合されているリターンばね66には、ばね力が蓄圧され、この蓄圧されたばね力は、前述したように、シャッターカーテン30を巻き取るための巻取軸50の回転に、言い換えると、シャッターカーテン30を開き移動させるための巻取軸50の回転に利用される。
図3及び図4から分かるように、第1及び第2ブラケット51,52の全体形状は、不動部材である前記取付部材16に溶接やボルト等で結合された基部51A,52Aから巻取軸50の側へ延びる板状又は略板状であり、基部51A,52Aだけが取付部材16に結合されているため、これらのブラケット51,52は取付部材16に片持ち状態で取り付けられている。また、図4で示されているように、ブラケット51,52には、基部51A,52Aから取付部材16に対して離れる側である巻取軸50の側へ突出した突出部51B,52Bが形成され、これらの突出部51B,52Bは、基部51A,52Aにおける巻取軸50の軸方向外側の端部に形成されているブラケット51,52の部分となっている。そして、巻取軸50の第1軸部63と第2軸部70を軸受け部材71,72を介して支持しているブラケット51,52の本体部51C,52Cよりも巻取軸50の軸方向外側の位置となっていて、本体部51C,52Cと平行になっているこれらの突出部51B,52Bは、ブラケット52について示している図5のとおり、本体部51C,52Cと同じ上下寸法を有している。
また、巻取軸50と左右のブラケット51,52を内部に収納している前述したケース80は、図4と図5で示されているように、巻取軸50に対して取付部材16とは反対側となっている前面部80Aと、巻取軸50の軸方向両側の左右の側面部80B,80Cと、上面部80Dと、下面部80Eとを有する箱形状であり、取付部材16の側の背面は開口されている。また、下面部80Eには、巻取軸50よりも長い細長の開口部81が形成され、この開口部81を通ってシャッターカーテン30がケース80の内外を出入することにより、シャッターカーテン30は巻取軸50に巻き取られ、繰り出される。
図4で示されているように、ケース80の左右の側面部80B,80Cの内面同士の間隔は、左右のブラケット51,52の突出部51B,52Bの外側面同士の間隔と同じ又はこれよりも少し大きく、側面部80B,80Cの内面が突出部51B,52Bの外面に当てがわれ、これらの側面部80B,80Cと突出部51B,52Bにビス等の結合具82が挿入されて締め付けられることにより、ケース80は左右のブラケット51,52に取り付けられる。図5で分かるように、結合具82は、それぞれの突出部51B,52Bごとに上下に複数個設けられる。
これにより、巻取軸50及びこの巻取軸50に巻き取られているときのシャッターカーテン30の外側を覆うケース80は、巻取軸50の両端を支持する左右のブラケット51,52に取り付けられるが、この取り付けは、ブラケット51,52の基部51A,52Aの近傍の突出部51B,52Bのみで行われている。このため、全体形状が板状又は略板状となっているブラケット51,52は、基部51B,52Bを中心に巻取軸50の軸方向に振れ運動可能な状態となっている。
そして、本実施形態では、ブラケット51,52へのケース80の取り付けは、これらのブラケット51,52とケース80との連結がブラケット51,52の基部51B,52Bの近傍だけでなされていて、ブラケット51,52の本体部51C、52Cではなされていない不完全連結となって行われている。
また、図5で示されているとおり、ケース80の上面部80Dの下面とブラケット51,52の上端部との間、及びケース80の下面部80Eの上面とブラケット51,52の下端部との間には隙間が設けられているとともに、図4で示されているように、ブラケット51,52の基部51A,52Aとは反対側の先端部51F,52Fと、ケース80の前面部80Aの内面との間にも隙間Sが設けられている。このため、基部51B,52Bを中心とするブラケット51,52の巻取軸50の軸方向への振れ運動は、先端部51F,52Fがケース80の前面部80Aの内面に接触せずに行われるようになっている。
以上において、巻取軸50の両端の中心軸部となっている第1軸63や第2軸70が巻取軸50の正確な中心部に配置されていなくて偏心していることや、これらの軸63と70との間に位置ずれが生じていることがある。このような誤差が生ずる理由は、第1軸63が挿通される前記軸受け部材64の孔の位置や、第2軸70が挿入固定される前記固定部材68,69の孔の位置が、巻取軸50の正確な中心位置からずれている場合があることや、軸受け部材64や固定部材68,69を巻取軸50の内部に圧入する際に、これらの軸受け部材64や固定部材68,69の圧入位置が巻取軸50の中心からずれる場合がある等である。
このような誤差を有している巻取軸50の第1軸63、第2軸70を軸受け部材71,72を介して左右のブラケット51,52で支持し、かつ、ケース80がこれらのブラケット51,52に、ブラケット51,52の基部51A,52A又は基部51A,52Aの近傍と、ブラケット51、52の先端部51F,52F等とにおいて連結され、これによってケース80とブラケット51,52とが完全に連結された完全連結関係になっている場合には、ケース80は左右のブラケット51と52間に架設された部材となっていて箱形状ともなっているため、基部51B,52Bを中心とするブラケット51,52の巻取軸50の軸方向への振れ運動はケース80で拘束されて抑え込まれることになる。このため、この場合には、第1軸63や第2軸70が前述した偏心等の誤差を有している巻取軸50は円滑に回転することができないおそれがあり、巻取軸50によるシャッターカーテン30の円滑な巻き取り、繰り出しに支障が生ずるおそれがある。
しかし、本実施形態では、ブラケット51,52へのケース80の取り付けは、ブラケット51,52の基部51A,52Aの近傍の突出部51B、52Bのみにケース80を結合具82で結合して行われ、ブラケット51,52とケース80との連結関係は、基部51B,52Bを中心とするブラケット51,52の巻取軸50の軸方向への振れ運動を許容する不完全連結関係となっているため、たとえ、第1軸63や第2軸70が巻取軸50の正確な中心位置から偏心等の誤差を有していても、ブラケット51,52はケース80で殆ど拘束されないことになり、ブラケット51,52は、不動部材である取付部材16と結合された基部51A,52Aを中心に巻取軸50の軸方向に振れ運動しながら巻取軸50を回転させることになるため、巻取軸50によるシャッターカーテン30の円滑な巻き取り、繰り出しを確保することができる。
また、ブラケット51,52の基部51A,52Aとは反対側の先端部51F,52Fは、ケース80の前面部80Aの内面から離れており、これらの間には隙間Sが設けられているため、基部51B,52Bを中心とするブラケット51,52の巻取軸50の軸方向への振れ運動は、先端部51F,52Fとケース80の前面部80Aの内面との間で摩擦力が発生しないで行われることになり、このため、巻取軸50の一層円滑な回転を確保することができる。
さらに、本実施形態のケース80は、巻取軸50を支持するためのブラケット51,52に取り付けられているため、ブラケット51,52をケース取付用部材としても兼用化することができ、それだけケース80の取付構造を簡単化することができる。
また、本実施形態では、ケース80が結合具82で結合されるブラケット51,52の部分は、基部51A,52Aにおける巻取軸50の軸方向外側の端部に形成されている部分であるため、ケース80の内部に巻取軸50の全体を収納することができる。
図7の実施形態では、結合具82で結合されるブラケット51,52の突出部51B、52Bとケース80の左右の側面部80B,80Cとの間に、弾性部材である厚板状のゴム83を介在させた実施形態を示す。すなわち、この実施形態では、ケース80とブラケット51,52は、ゴム83を介して間接的に連結されている。
この実施形態によると、ゴム83は弾性変形自在であるため、ケース80によるブラケット51,52の拘束は前記実施形態よりも緩和されることになり、このため、巻取軸50の一層向上した円滑な回転を確保することができる。
図8の実施形態では、巻取軸50の両端は、取付部材16に基部151A,152Aが結合された巻取軸用ブラケット151,152に支持され、ケース80の左右の側面部80B,80Cの基部が、取付部材16に溶接やボルト等で結合されたケース用ブラケット91,92にビス等の結合具103で取り付けられている。そして、この実施形態では、ケース用ブラケット91,92によるケース80についての取付部材16での結合箇所と、巻取軸50の両端を支持するための巻取軸用ブラケット151,152についての取付部材16での結合箇所とは、巻取軸50の軸方向に離れており、したがって、ケース80と巻取軸用ブラケット151,152は、取付部材16等を介して間接的に連結されている。
この実施形態によると、ケース80と巻取軸用ブラケット151,152は分離状態となっているため、第1軸63や第2軸70が巻取軸50の正確な中心位置から偏心等の誤差を有している場合には、巻取軸用ブラケット151,152は、基部151A,152Aを中心に巻取軸50の軸方向にこれまでの実施形態よりも自由に振れ運動することができ、これにより、シャッターカーテン30を巻き取り、繰り出すための巻取軸50の一層円滑な回転が保障される。