このように、従来では、工場から搬入したシャッターカーテンをシャッター装置の設置現場で巻取軸に取り付けて巻き取る作業や、シャッターカーテンを交換する作業は、巻取軸の両端が、建物躯体等の不動部材に結合された左右のブラケットで支持された状態で行われ、これによると、作業者は、シャッター装置の設置場所の所定箇所に配置されている巻取軸に対して、シャッターカーテン巻き取り作業やシャッター交換作業等のシャッターカーテンについての作業を行わなければならないため、作業に多くの手間と時間がかかることになる。
本発明の目的は、巻取軸に対して行うシャッターカーテンについての作業が容易となり、作業効率を向上させることができるようになるシャッター装置の巻取軸支持構造及びその巻取軸支持作業方法並びにそのシャッターカーテン交換作業方法を提供するところにある。
本発明に係るシャッター装置の巻取軸支持構造は、開閉移動自在なシャッターカーテンの開閉移動のためにこのシャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸の両端を支持体で支持するシャッター装置の巻取軸支持構造において、前記支持体は、不動部材に結合された支持本体部材と、前記不動部材に結合されているときの前記支持本体部材に対して取り付け、取り外し可能となっているとともに、前記巻取軸を支持する支持補助部材とを含んで構成されていることを特徴とするものである。
このシャッター装置の巻取軸支持構造では、巻取軸の両端を支持する支持体は、不動部材に結合された支持本体部材と、不動部材に結合されているときの支持本体部材に対して取り付け、取り外し可能となっている支持補助部材とを含んで構成され、この支持補助部材に巻取軸が支持されているため、例えば、シャッターカーテン巻き取り作業やシャッター交換作業等のように、巻取軸に対して行うシャッターカーテンについての作業を、支持本体部材から支持補助部材を取り外すことにより、例えば、周囲が開放されていて大きなスペース等となっている任意な場所で行えるようになる。
このため、巻取軸に対して行うシャッターカーテンについての作業を容易に行えるとともに、作業効率を向上させることができ、また、シャッターカーテンが汚損等されるおそれをなくして又は少なくして作業を行える。
そして、このシャッター装置の巻取軸支持構造を用いて実施できる本発明に係る巻取軸支持作業方法は、シャッターカーテンの開閉移動のためにこのシャッターカーテンを巻き取り、繰り出すための巻取軸の両端に、この巻取軸を支持する支持補助部材を配設する作業ステップと、巻取軸にシャッターカーテンを取り付ける作業ステップと、支持補助部材を、不動部材に結合されている支持本体部材に取り付ける作業ステップとを含んでいることを特徴とするものである。
この巻取軸支持作業方法は、例えば、シャッター装置を設置するための施工現場に搬入される巻取軸に適用できる。
なお、この巻取軸支持作業方法において、巻取軸の両端に、この巻取軸を支持する支持補助部材を配設する作業ステップと、巻取軸にシャッターカーテンを取り付ける作業ステップとのうち、先に、巻取軸の両端に、この巻取軸を支持する支持補助部材を配設する作業ステップを実施し、後で、巻取軸にシャッターカーテンを取り付ける作業ステップを実施してもよく、これとは逆に、先に、巻取軸にシャッターカーテンを取り付ける作業ステップを実施し、後で、巻取軸の両端に、この巻取軸を支持する支持補助部材を配設する作業ステップを実施してもよい。
また、上述したシャッター装置の巻取軸支持構造を用いて実施できる本発明に係るシャッターカーテン交換作業方法は、巻取軸の両端に配設されている支持補助部材を不動部材に結合されている支持本体部材から取り外す作業ステップと、巻取軸に取り付けられていたシャッターカーテンをこの巻取軸から取り除くとともに、新しいシャッターカーテンを巻取軸に取り付ける作業ステップと、この巻取軸の支持補助部材を不動部材に結合されている支持本体部材に取り付ける作業ステップとを含んでいることを特徴とするものである。
このシャッターカーテン交換作業方法は、例えば、これまで使用していたシャッターカーテンが破損したためや耐久性が低下等したために新品のシャッターカーテンに交換する場合や、シャッターカーテンを材質や品質が異なる別種のシャッターカーテンに交換する場合等に適用できる。
また、以上の本発明において、支持本体部材と支持補助部材とを含んで構成され、巻取軸の両端を支持する支持体は、巻取軸のそれぞれの端部ごとに用意された2個等の複数個となっているものでもよく、あるいは、巻取軸の軸方向の長さを有し、巻取軸の両方の端部を支持する1個のものでもよい。
さらに、支持本体部材に対して支持補助部材を取り付け、取り外し可能とする構造は、任意なものでよい。その一例は、ボルト(ボルトとナットの組み合わせを含む)やビス、差し込みピン、結合金具等の結合具を用いて支持補助部材を支持本体部材に対して取り付け、取り外し可能とするものであり、他の例は、支持本体部材と支持補助部材のうちの一方には、係止部や嵌合部等の連結部を設け、他方には、被係止部や被嵌合部等の被連結部を設け、これらの連結部と被連結部との連結、連結解除によって支持本体部材に対して支持補助部材を取り付け、取り外し可能としたものであり、さらに他の例は、支持本体部材と支持補助部材のうちの一方を巻取軸の軸方向に間隔を開けて並設された複数個又は巻取軸の軸方向の間隔を開けて対面する2つの部分を有する1個とし、その間隔に他方を挿抜可能とすることによって支持本体部材に対して支持補助部材を取り付け、取り外し可能としたものであり、さらに他の例は、これらの例のうちの少なくとも2つを組み合わせたもの等である。
また、支持本体部材に対して支持補助部材を結合具で取り付け、取り外し可能とする場合には、支持本体部材には、支持補助部材を載置するための載置部を設けることが好ましい。
これによると、結合具を除去して支持本体部材から支持補助部材を取り外すことができる状態になったときや、結合具を用いて支持本体部材に支持補助部材を取り付ける前において、支持補助部材を載置部に載せることにより、支持本体部材から支持補助部材を取り外す作業や、結合具で支持本体部材に支持補助部材を取り付ける作業を容易に行えるようになる。
このような載置部は、支持本体部材の一部を突出形成するなどによって支持本体部材の一部として設けてもよく、支持本体部材に、この支持本体部材とは別になった載置用の部材を取り付けることにより、支持本体部材に設けてもよい。
さらに、支持補助部材を、巻取軸の軸方向に重ねられた支持補助部材と支持本体部材とに挿入される結合具によって支持本体部材に対して取り付け、取り外し可能とする場合には、この結合具を、巻取軸の側とは反対側から支持補助部材と支持本体部材とに挿入されるものとすることが好ましい。
これによると、結合具の取り除きによって支持本体部材から支持補助部材を取り外す際や、結合具で支持本体部材に支持補助部材を取り付ける際に、巻取軸にシャッターカーテンが巻き取られていて巻取軸の実質的な直径が大きくなっていても、結合具に対して行う回転等の操作作業を、巻取軸やシャッターカーテンに阻害されずに容易に行えるようになる。
なお、この場合における結合具は、巻取軸の軸方向に重ねられた支持補助部材と支持本体部材とに挿入されるものであれば、任意なものでよく、例えば、ボルト(ボルトとナットの組み合わせを含む)やビス、差し込みピン等である。
また、この場合において、支持補助部材と支持本体部材を巻取軸の軸方向に重ねるとは、支持補助部材と支持本体部材のうち、支持補助部材を巻取軸の側としてもよく、支持本体部材を巻取軸の側としてもよい。また、支持補助部材と支持本体部材を直接対面させてもよく、これらの間にスペーサ等の部材を介在させてもよい。
また、本発明は、複数個の巻取軸が軸方向に直列的に配置される連装タイプのシャッター装置であって、この軸方向に隣接する2個の巻取軸の互いに対向する端部を支持する支持体が共通化されるシャッター装置にも適用でき、この支持体を、不動部材に結合された支持本体部材と、不動部材に結合されているときの支持本体部材に対して取り付け、取り外し可能となっているとともに、上記2個の巻取軸の互いに対向する端部を共通して支持する支持補助部材とを含んで構成することにより、シャッターカーテン巻き取り作業やシャッター交換作業等の上記2個の巻取軸について行うシャッターカーテンに関する作業を、支持本体部材から支持補助部材を取り外すことにより、前述と同様に、例えば、周囲が開放されていて大きなスペース等となっている任意な場所で行えるようになる。
なお、この連装タイプのシャッター装置においても、最端部に配置された巻取軸の外側の端部を支持する支持体が、巻取軸の軸方向に重ねられる支持補助部材と支持本体部材とを含んで構成され、支持補助部材を、支持補助部材と支持本体部材に挿入される結合具によって支持本体部材に対して取り付け、取り外し可能とする場合に、この結合具を、巻取軸の側とは反対側から支持補助部材と支持本体部材とに挿入されるものとすることにより、前述と同様の作用効果を得られる。
また、本発明は、シャッターカーテンが任意な材料で形成されているシャッター装置に適用できる。すなわち、シャッターカーテンは、その全部又は主要部が複数のスラットの連設で形成されたものでもよく、複数のパネルの連設で形成されたものでもよく、リンクで連結された複数のパイプで形成されたものでもよく、布やシート等の薄厚部材で形成されたものでもよく、ネットで形成されたものでもよく、これらのうちの少なくとも2つの複合で形成されたもの等でもよい。
シャッターカーテンの少なくとも一部が布やシート等の薄厚部材で形成されている場合には、この薄厚部材はスラット等と比較すると汚損等されやすいため、前述したように、巻取軸に対して行うシャッターカーテンについての作業を、例えば、周囲が開放されていて大きなスペース等となっている任意な場所で行えるようになっていると、その作業を容易に行えるため、薄厚部材が汚損等されることなく又は汚損等されるのを少なく抑えてその作業を行えることになる。
さらに、本発明は、巻取軸が任意な形状、構造で構成されているシャッター装置に適用できる。すなわち、巻取軸は、1本の又は直列に連結された複数本の中空軸や中実軸で形成されたものでもよく、あるいは、非回転の中心軸と、この中心軸の外周に中心軸の軸方向に離れて配置された複数個のホィール部材と、中心軸に対して回転自在となっているこれらのホィール部材を連結するバー等の連結部材とを含んで構成されたもの等でもよい。
また、本発明は、巻取軸と平行になった補助軸を有し、この補助軸の上に掛けられて案内されるシャッターカーテンが巻取軸に巻き取られ、繰り出されるようになっているシャッター装置にも適用できる。このようなシャッター装置に本発明を適用する場合には、補助軸は、支持補助部材に取り付けることにより巻取軸と共に支持本体部材に対して取り付け、取り外し可能としてもよく、支持本体部材に取り付けることにより巻取軸と共に支持本体部材に対して取り付け、取り外し不能としてもよい。
また、本発明は、任意な用途のシャッター装置に適用できる。すなわち、本発明が適用されるシャッター装置は、窓や出入口等の開口部をシャッターカーテンで開閉する開口部用シャッター装置でもよく、全閉となったシャッターカーテンで防災区画を形成するための防災用シャッター装置でもよく、車庫用シャッター装置でもよく、物置用シャッター装置でもよく、トラック等の車両の荷台やコンテナのためのシャッター装置等でもよい。そして、防災用シャッター装置には、火災等の災害発生時にシャッターカーテンがエレベータとエレベータホールとの間で閉じ移動するエレベータ用防災シャッター装置が含まれる。
また、本発明は、シャッターカーテンの閉じ移動が、シャッターカーテンの自重と、ウエイト部材の重量と、手動操作と、電動モータ等の駆動手段とのうちのいずれか1つ又はこれらのうちの少なくとも2つの複合でなされるシャッター装置に適用できる。また、シャッターカーテンの開き移動も、シャッターカーテンの自重と、ウエイト部材の重量と、手動操作と、電動モータ等の駆動手段とのうちのいずれか1つ又はこれらのうちの少なくとも2つの複合でなされるシャッター装置について本発明を適用できる。
そして、本発明は、シャッターカーテンの閉じ移動時と開き移動時のうちの一方のときにばね力が蓄圧されるコイルばねや渦巻きばね等によるリターンばねが巻取軸等に配置され、このリターンばねの蓄圧力が、シャッターカーテンの閉じ移動時と開き移動時のうちの他方のときに利用されるようになっているシャッター装置にも適用できる。
さらに、本発明は、巻取軸の巻き取り、繰り出しによるシャッターカーテンの開閉移動方向が上下方向となっているシャッター装置にも、横方向となっているシャッター装置にも、上下方向や水平方向に対する傾き角度を有する傾斜方向となっているシャッター装置にも適用できる。また、シャッターカーテンの開閉移動方向が上下方向となっているシャッター装置については、シャッターカーテンの閉じ方向が下方向であって開き方向が上方向でもよく、シャッターカーテンの閉じ方向が上方向であって開き方向が下方向でもよい。
本発明によると、巻取軸に対して行うシャッターカーテンについての作業が容易となり、作業効率を向上させることができるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係るシャッター装置は、全閉となったときのシャッターカーテンで防災区画を形成するための防災用シャッター装置であって、しかも、火災発生時にシャッターカーテンがエレベータとエレベータホールとの間で閉じ移動するエレベータ用防災シャッター装置である。以下、このエレベータ用防災シャッター装置を説明する。図1は、そのエレベータ用防災シャッター装置の全体を示す正面図で、図2は図1のS2−S2線断面図、図3は、図1のエレベータ用防災シャッター装置の縦断面図である。
初めにエレベータの全体構造を説明する。図2及び図3に示すように、エレベータの昇降箱1が上下動する建物内の縦穴2とエレベータホール3とを区画する建物躯体となっているコンクリート製の壁4には、下面がエレベータホール3から続く床5となっている開口部6が形成され、エレベータ用出入口であるこの開口部6には、縦穴2側の奥において、エレベータ用扉7が配置されている。壁4の厚さ内から縦穴2側に外れた位置に配置されているこのエレベータ用扉7を開閉移動させるために、図3で示されているように、上部レール8と下部レール9がエレベータ用扉7の上下に設けられている。
上部レール8には、エレベータ用扉7の上部ブラケット7Aに取り付けられた上下のローラ10,11が転動自在に係合し、床5に設けられた下部レール9にはエレベータ用扉7の下面に取り付けられた係合部材12がスライド自在に係合し、上のローラ10で吊り下げられた上吊り式となっているエレベータ用扉7は、これらのローラ10,11と係合部材12の案内作用により図示しない駆動手段の駆動力で開閉移動する。
図1に示すとおり、開口部6の上部内面と左右の側部内面には、上枠部材13と側枠部材14が配設され、開口部6の上部内面を形成する上部内面部材となっている上枠部材13と、側部内面を形成する側部内面部材となっている側枠部材14により、開口部6の内面には三方枠となった開口部用外枠組み15が設けられている。これらの上枠部材13と側枠部材14はステンレス等の金属板製であり、開口部6の化粧材となっている。
図3で示すように、上枠部材13は、エレベータホール3側の立上り部13Aと、この立上り部13Aの下端からエレベータ扉7側へ水平に延びる延出部13Bとからなる。立上り部13Aは、壁4における開口部6よりも上部の下がり壁4Aのエレベータホール3側の表面に設けられた取付部材16に取り付けられ、延出部13Bは、下がり壁4Aの縦穴2側の表面に結合具17とブラケット18を介して結合された保持部材19に結合されている。この保持部材19に前記上部レール8が取り付けられている。
また、上枠部材13の立上り部13Aよりも上の取付部材16は、天井部材20でエレベータホール3と上下に仕切られた天井裏空間21に配置されている。この立上り部13Aには、図1に示すように、エレベータ用インジケータ22が配置されている。
本実施形態に係るエレベータ用防災シャッター装置は、図1に示すように、開閉移動することにより、言い換えると、上下動することにより、エレベータとエレベータホール3との間で開口部6を開放、閉鎖するシャッターカーテン30を備えている。図2に示すように、このシャッターカーテン30の左右両端部、言い換えると、シャッターカーテン30の開閉移動方向と直交するシャッターカーテン幅方向の両端部は、抜け止め部材30Aで抜け止めされながらガイド部材であるガイドレール37にスライド自在に挿入されている。シャッターカーテン30の開閉移動を案内するためのガイド部材となっているこれらの左右一対のガイドレール37は、壁4における開口部6の左右両側に設けられている側壁4Bのエレベータホール3側の表面の化粧材38に配置されている。また、これらのガイドレール37の配置位置は、開口部6の化粧材となっていて上枠部材13と側枠部材14からなる前記三方枠の外枠組み15よりもエレベータホール3側の位置となっている。
図3に示すように、シャッターカーテン30の上端は天井裏空間21に水平に配設されている巻取軸50に結合され、回転自在となっているこの巻取軸50によってシャッターカーテン30は巻き取られ、繰り出される。この巻き取り、繰り出しによってなされるシャッターカーテン30の上下動、すなわち開閉移動は、天井部材20に設けられているまぐさ39のスリットをシャッターカーテン30が挿通することによりなされる。巻取軸50の両端は、図1で示されているとおり、第1及び第2支持体となっている左右の第1及び第2ブラケット51,52で支持され、これらのブラケット51,52は、不動部材である図3で示した取付部材16に取り付けられている。
シャッターカーテン30は、カーテン本体31と、このカーテン本体31の閉じ側の先端部、すなわち、カーテン本体31の下端部に設けられた座板32とを有している。カーテン本体31は、耐火性や遮煙性を有する薄厚部材により形成され、この薄厚部材は、例えば、シリカクロスやガラスクロスに耐火塗料を塗布及び/又は含浸させたものであり、したがって、カーテン本体31はスクリーン式となっている。また、座板32は金属製であり、この座板32も防火性と遮煙性とを有する。
図1で示されているとおり、座板32のエレベータホール3側の側面には、被係止部材33がシャッターカーテン30の幅方向中央位置に取り付けられ、この被係止部材33には被係止孔33Aが形成されている。この被係止部材33の真上位置において、図3で示すように、天井裏空間21に突出している前記まぐさ39の上面には、シャッターカーテン30を全開位置に係止するための係止装置34が配置され、この係止装置34は、巻取軸50の巻き取りによってシャッターカーテン30が全開位置に達しているときに、言い換えると、座板32がまぐさ39に当接する位置まで達しているときに、被係止部材33の被係止孔33Aに挿入係止することによってシャッターカーテン30を全開位置に維持させるための係止部材35を備えている。上下に揺動自在となっている通常時の係止部材35は、係止装置34の内部に設けられているストップ機構によって被係止孔33Aに挿入係止した水平姿勢となっており、これにより、シャッターカーテン30は全開位置に維持される。
係止装置34の内部には、火災の発生を検知する図示しないセンサからの信号で作動するソレノイドが組み込まれ、このソレノイドの作動によるストップ機構の解除により、シャッターカーテン30は、座板32を含む自重によって係止部材35を下向きに揺動させながら下降し、すなわち、係止装置34によるシャッターカーテン30の係止が解除され、巻取軸50から繰り出されたシャッターカーテン30が前記床5への座板32の到達によって全閉位置に達すると、シャッターカーテン30によって防災区画が形成される。また、上記ストップ機構は図示しない手動操作部材が操作されることによっても解除可能となっており、火災を発見した人がこの手動操作部材を操作することによってもシャッターカーテン30は全閉となる。
図1で示すように、シャッターカーテン30のエレベータ側の面には、以上のように全閉となったシャッターカーテン30を、エレベータを利用して避難してきた人が持ち上げてその下を通過できるようにした手掛け部材40,41が設けられている。手掛け部材40は、カーテン本体31を形成している上下の薄厚部材31A,31Bの重なり部分に形成されている袋部42に挿入された棒状部材であり、袋部42には切れ目があり、この切れ目から露出した手掛け部材40の一部に手を掛けることにより、シャッターカーテン30を持ち上げることができる。また、手掛け部材41は、手掛け部材40よりも下側の座板32に取り付けられ、手掛け部材40による持ち上げである高さまで上昇した座板31を、この手掛け部材41でさらに高い位置まで持ち上げることができるようになっている。
前記巻取軸50の内部には、後述するようにリターンばねが配置され、シャッターカーテン30が自重で上述のように下降して巻取軸50から繰り出される際に、このリターンばねは回転する巻取軸50でばね力が蓄圧される。このため、シャッターカーテン30の自重による下降は、リターンばねが蓄圧される分だけ減速される。上述のようにエレベータを利用して避難してきた人がシャッターカーテン30を持ち上げてその下を通過するために、手掛け部材40,41でシャッターカーテン30を持ち上げて上昇させるときには、すなわち、シャッターカーテン30を巻取軸50で巻き取るときには、リターンばねの蓄圧されたばね力が、シャッターカーテン30を巻き取るための巻取軸50の回転に利用され、このばね力が補助力となるため、シャッターカーテン30を軽く持ち上げることができる。
なお、全閉位置に達している又は全閉位置までの途中位置に達しているシャッターカーテン30の座板32に大きな押し上げ力を加えてシャッターカーテン30を高く上昇させると、この押し上げ力とリターンばねの蓄圧されたばね力とにより、シャッターカーテン30は全開位置に達する。また、前記係止装置34の係止部材35は上下の二股部分を有していて、下向きの揺動姿勢となっていたこの係止部材35の二股部のうちの上部分が、シャッターカーテン30と共に上昇してきた前記被係止部材33の上面で押し上げられ、これにより水平姿勢に復帰した係止部材35の二股部のうちの下部分が被係止部材33の孔33Aに挿入係止する。このときの前記ストッパ機構は、係止部材35が水平姿勢に戻ると同時にもとの状態に復帰しているため、シャッターカーテン30は全開位置に維持され、全部がもとの状態に戻る。
また、シャッターカーテン30が上下に挿通している図3のまぐさ39のスリットには遮煙部材43が設けられ、これにより、シャッターカーテン30が全閉となっているときに、火災で生じた煙がまぐさ39のスリットを通過してシャッターカーテン30の反対側に達するのを防止するようになっている。このような遮煙部材は、本実施形態では、シャッターカーテンの幅方向両端部がスライド自在に挿入されている左右のガイドレール37の内部に設けられていないが、設けてもよい。
図4は、巻取軸50及びその周辺を示す平断面図である。巻取軸50の軸方向の一方の端部の側には、非回転体60が巻取軸50と同軸的又は略同軸的に設けられ、他方の端部の側には、回転体61が巻取軸50と同軸的又は略同軸的に設けられている。中空の筒状部材からなる巻取軸50よりも内径側に配置されている非回転体60は、前述したようにシャッターカーテン30を巻き取り、繰り出すための巻取軸50に対して回転しないものとなっている。また、非回転体60と同じく、巻取軸50よりも内径側に配置されている回転体61は巻取軸50と一体化されており、この巻取軸50と共に回転する。
非回転体60は、巻取軸50の内部に挿入されたボス部材62と、このボス部材62に一方の端部が結合され、他方の端部が巻取軸50の外部に露出している第1軸63とを有し、この第1軸63は、巻取軸50における非回転体60が配設されている側の端部の内部に嵌め込み結合されている軸受け部材64の中心孔に回転自在に挿通されている。巻取軸50の軸方向途中の内部には駆動部材65が配置され、巻取軸50と結合されていてこの巻取軸50と一体に回転するこの駆動部材65と、非回転体60のボス部材62又は第1軸63との間に、コイルばねによる前述したリターンばね66が架け渡し連結されている。また、駆動部材65と非回転体60のボス部材62との間には、中空の筒状部材による連結部材67が架け渡され、この連結部材67の軸方向の一方の端部はボス部材62の小径部62Aに嵌合結合されているとともに、他方の端部は、駆動部材65の小径部65Aに、円周方向に連続的に延びる図示外の凹凸嵌合部等によって軸方向へ抜け止めされて回転自在に嵌合され、これにより、駆動部材65と非回転体60のボス部材62は、リターンばね66を内部に収納した連結部材67で連結されている。
前記回転体61は、巻取軸50の内部に間隔を開けて配置された2個の固定部材68,69と、これらの固定部材68,69の中心部に結合された第2軸70とを有している。固定部材68,69は巻取軸50に結合固定され、第2軸70における固定部材68とは反対側の端部は巻取軸50の外部に露出している。
以上において、非回転体60の軸方向長さは巻取軸50の軸方向長さよりも充分に短い。したがって、非回転体60の軸方向長さは、巻取軸50と重複しない部分が生じている長さとなっている。これらの非回転体60と巻取軸50とが重複しない軸方向長さ部分にリターンばね66が配置されており、この軸方向長さ部分は、第1軸63と第2軸70との間であって、第1軸63と駆動部材65との間である。
非回転体60の第1軸63は、前述した第1ブラケット51に後述するように回転不能に支持され、また、回転体61の第2軸70は、第2ブラケット52に回転自在に支持されている。このため、巻取軸50は、非回転体60と回転体61を介して第1及び第2ブラケット51,52で回転自在に支持されている。
巻取軸50が、前述したように自重で下降するシャッターカーテン30を繰り出すために回転すると、リターンばね66の一端が結合されている非回転体60は回転せず、リターンばね66の他端は駆動部材65を介してこの回転する巻取軸50に結合されているため、リターンばね66にばね力が蓄圧される。そして、この蓄圧されたばね力は、前述したように、シャッターカーテン30を巻き取るための巻取軸50の回転に、言い換えると、シャッターカーテン30を開き移動させるための巻取軸50の回転に利用される。
図5は図4の正面図であり、これらの図4と図5から分かるように、巻取軸50の一方の端部を支持する支持体となっている第1ブラケット51は、不動部材である前記取付部材16に結合された支持本体部材となっているブラケット本体部材71と、巻取軸50の一方の端部に配設され、ブラケット本体部材71に結合具であるビス73で取り付けられる支持補助部材となっているブラケット補助部材72とを含んで構成されている。非回転体60の第1軸63は、ブラケット補助部材72に取り付けられている軸受け部材74を介してブラケット補助部材72に支持されているため、巻取軸50の一方の端部はブラケット補助部材72に支持されている。
巻取軸50の他方の端部を支持する支持体となっている第2ブラケット52も、取付部材16に結合された支持本体部材となっているブラケット本体部材81と、巻取軸50の他方の端部に配設され、ブラケット本体部材81に結合具であるビス83で取り付けられる支持補助部材となっているブラケット補助部材82とを含んで構成され、回転体61の第2軸70は、ブラケット補助部材82に取り付けられている軸受け部材84を介してブラケット補助部材82に支持されているため、巻取軸50の他方の端部はブラケット補助部材82に支持されている。
図6は、第2支持体である第2ブラケット52の分解時を示す斜視図である。ブラケット本体部材81には、取付部材16の側とは反対側に向って開口した凹部81Aが形成され、巻取軸50が第2ブラケット52で支持されているときには、この凹部81Aに図4及び図5で示されている軸受け部材84が挿入されている。ブラケット本体部材81とブラケット補助部材82は巻取軸50の軸方向に重ねられ、巻取軸50の側とは反対側からビス83がブラケット補助部材82の孔82Aとブラケット本体部材81のねじ孔81Bに挿入され、ビス83が締め付けられることにより、ブラケット本体部材81にブラケット補助部材82が取り付けられている。
また、図7は、第1支持体である第1ブラケット51の分解時を示す斜視図である。この第1ブラケット51についても、ブラケット本体部材71には、取付部材16の側とは反対側に向って開口した凹部71Aが形成され、巻取軸50が第1ブラケット51で支持されているときには、この凹部71Aに図4及び図5で示されている軸受け部材74が挿入されている。ブラケット本体部材71とブラケット補助部材72は巻取軸50の軸方向に重ねられ、巻取軸50の側とは反対側からビス73がブラケット補助部材72の孔72Aとブラケット本体部材71のねじ孔71Bに挿入され、ビス73が締め付けられることにより、ブラケット本体部材71にブラケット補助部材72が取り付けられている。
また、この第1ブラケット51では、非回転体60の第1軸63の外端部63Aは、ブラケット補助部材72に形成されている孔から突出し、この外端部63Aには面取り部75が形成されている。ブラケット補助部材72には、この面取り部75が挿入係合する係合溝76Aが形成されている回り止め部材76が取り付け、取り外し可能に配置され、回り止め部材76がビス77でブラケット補助部材72に取り付けられることにより、第1軸63を構成部材としている非回転体60は、ブラケット補助部材72とブラケット本体部材71を構成部材としている第1ブラケット51に対して回転不能となる。
以上の説明から明らかなように、第1及び第2ブラケット51,52のブラケット補助部材72,82は、ビス73,83により、取付部材16に結合されているブラケット本体部材71,81に対して取り付け、取り外し可能となっており、このため、巻取軸50も、取付部材16に結合されているブラケット本体部材71,81に対して取り付け、取り外し可能となっている。
また、シャッターカーテン30の前述した座板32は、カーテン本体31に対して取り付け、取り外し可能となっている。
このため、本実施形態では、図1〜図3で示したエレベータ用防災シャッター装置の設置施工作業は、次のように行われる。工場において、又はエレベータ用防災シャッター装置を設置現場の床において、非回転体60と回転体61が組み付けられている巻取軸50の両端に第1及び第2ブラケット51,52のブラケット補助部材72,82を配設するとともに、シャッターカーテン30のカーテン本体31の上端を巻取軸30に結合し、カーテン本体31の全体を巻取軸30に巻き取っておく。このようにカーテン本体31の全体を巻き取った巻取軸50を、ブラケット補助部材72,82と共に、エレベータ用防災シャッター装置の設置施工現場の図3で示した天井裏空間21に運び込み、予め取付部材61の所定個所にボルトや溶接等で結合しておいた第1及び第2ブラケットのブラケット本体部材71,81に、ブラケット補助部材72,82をビス73,84で取り付ける。これにより、巻取軸50の両端は第1及び第2ブラケット51,52で支持される。
なお、非回転体60と回転体61が組み付けられている巻取軸50の両端にブラケット補助部材72,82を配設する作業は、天井裏空間21で行ってもよい。
次いで、巻取軸50を回転させることにより、カーテン本体31の幅方向両端部を、図1及び図2で示されている左右のガイドレール37の内部にカーテン本体31の下端から挿入し、図1の床5から所定高さ位置に達したカーテン本体31の下端に、左右のガイドレール37の間隔と同じ又はこれよりも少し短い長さとなっている座板32を取り付ける。
この作業を行うとき、図7で示されている回り止め部材76をブラケット補助部材72から取り外しておくことにより、非回転体60の第1軸61は第1ブラケット51に対して回転可能となるため、カーテン本体31の幅方向両端部を左右のガイドレール37の内部に挿入してカーテン本体31を下降させる作業を巻取軸50を回転させながら行っても、図4で示されているリターンばね66が蓄圧されることがなく、このため、この作業をリターンばね66のばね力の影響を受けることなく容易に行える。
また、巻取軸50に取り付けて使用されていたシャッターカーテン30のカーテン本体31が汚損等されたために交換する場合には、カーテン本体31の下端から座板31を取り外した後、巻取軸30を回転させてカーテン本体31の全体を巻取軸50に巻き取る。次いで、ビス73,83の取り除きによってブラケット補助部材72,82をブラケット本体部材71,82から取り外し、カーテン本体31の全体を巻き取った巻取軸50を、ブラケット補助部材72,82と共に、天井裏空間21から運び出して図1の床5に降ろす。そして、この床5において巻取軸50からこれまで使用されていたカーテン本体31を取り除くとともに、新しいカーテン本体31の上端を巻取軸50に結合し、この新しいカーテン本体31の全体を巻取軸50に巻き取る。
この後、巻取軸50を、ブラケット補助部材72,82と共に、図3で示した天井裏空間21に運び込み、取付部材61の所定個所にボルトや溶接等で結合されている第1及び第2ブラケット51,52のブラケット本体部材71,81に、ブラケット補助部材72,82をビス73,83で取り付ける。そして、前述と同様に、巻取軸50を回転させることにより、カーテン本体31の幅方向両端部を、左右のガイドレール37の内部にカーテン本体31の下端から挿入し、カーテン本体31の下端に座板32を取り付ける。これにより、シャッターカーテン30のカーテン本体31の交換作業が終了する。
なお、ブラケット補助部材72,82が、巻取軸50に組み付けられている非回転体60の第1軸63と回転体61の第2軸70とに対して取り付け、取り外し可能となっている場合には、巻取軸50を天井裏空間21から運び出す際には、ブラケット補助部材72,82を天井裏空間21に残しておいてもよい。
以上のように、本実施形態によると、巻取軸50の両端を支持する左右のブラケット51,52は、取付部材16に結合されたブラケット本体部材71,81と、取付部材16に結合されているブラケット本体部材71,81に対して取り付け、取り外し可能となっているブラケット補助部材72,82とを含んで構成され、巻取軸50はブラケット補助部材72,83に支持されているため、巻取軸50へのカーテン本体31の巻き取り作業やカーテン本体31の交換作業は、ブラケット補助部材72,82をブラケット本体部材71,81から取り外すことにより、ブラケット本体部材71,81が配置されている狭い空間である天井裏空間21ではなく、周囲が開放されている床5等において容易に行えるようになり、このため、作業効率を向上させることができる。
また、本実施形態に係るシャッターカーテン30のカーテン本体31は、汚損等されやすい薄厚部材であるシリカクロスやガラスクロスで形成されているが、このようなカーテン本体31であっても汚損等されることなく又は汚損等されるのを抑制して、巻取軸50へのカーテン本体31の巻き取り作業やカーテン本体31の交換作業を有効に行える。
また、本実施形態によると、ブラケット補助部材72,82をブラケット本体部材71,82に対して取り付け、取り外すためのビス73、83は、巻取軸50の軸方向に重ねられたブラケット補助部材72,82とブラケット本体部材71,82に、巻取軸50の側とは反対側から挿入されるものとなっているため、巻取軸30にカーテン本体31の全体が巻き取られていてこの巻取軸30の実質的な直径が大きくなっていても、ブラケット補助部材72,82をブラケット本体部材71,82に対して取り付け、取り外すために、これらのビス73,83を工具で回転等する操作作業を、巻取軸30の実質的な直径に影響されることなく容易に行える。
図8及び図9は、ブラケット本体部材71,81に、ブラケット補助部材72,82を載せることができる載置部を設けた実施形態を示す。ブラケット本体部材71,81の下端部には載置部材78,88が取り付けられ、これらの載置部材78,88により、ブラケット本体部材71,81には、ブラケット補助部材72,82を載せることができる載置部が設けられている。
この実施形態によると、ビス73,83を除去し、これにより、ブラケット本体部材71,81からブラケット補助部材72,82を取り外すことができる状態になったときや、ビス73,83を用いてブラケット本体部材71,81にブラケット補助部材72,82を取り付ける前において、ブラケット補助部材72,82を載置部に載せることにより、ブラケット本体部材71,81からブラケット補助部材72,82を取り外す作業や、ビス73,83でブラケット本体部材71,81にブラケット補助部材72,82を取り付ける作業を、巻取軸50等の重量を載置部で支持させながら行うことができるため、これらの作業を容易に行えるようになる。