しかし、上記の従来技術によると、シャッターカーテンを構成している多数のスラットのうちの特定のスラットに手掛け部材を嵌め込むための孔を形成しなければならないなど、シャッターカーテン自体に特別の加工を行わなければならない。また、シャッターカーテンがスラットではなく、スクリーンで形成されているシャッター装置では、このような加工をスクリーンに行うことは実質的に困難である。
本発明の目的は、シャッターカーテンを手動で開き移動させるための手接触部材の配置を、シャッターカーテンに特別の加工を行うことなくできるようになるシャッター装置を提供するところにある。
本発明に係るシャッター装置は、開閉自在なシャッターカーテンと、このシャッターカーテンの閉じ側先端部に設けられたエンド部材と、前記シャッターカーテンを開き移動させるために手で触られる手接触部材とを有するシャッター装置において、前記手接触部材が前記エンド部材に配置されていることを特徴とするものである。
このシャッター装置によると、手接触部材はシャッターカーテンではなくてエンド部材に配置されているため、シャッターカーテンに孔を形成するなどの特別の加工を行う必要がなくなり、このため、シャッターカーテンの製造を容易化できるとともに、全閉となったときのシャッターカーテンによる遮閉性を向上させることができる。
本発明は、シャッターカーテンの開閉移動方向が上下方向となっているシャッター装置はもちろんのこと、左右方向となっているシャッター装置や、上下方向や左右方向に対する傾き角を有する方向となっているシャッター装置等にも適用できる。
また、エンド部材に設ける手接触部材の個数は、1個でもよく、複数個でもよく、エンド部材の長さ寸法、言い換えると、シャッターカーテンの幅寸法の大きさに応じて手接触部材の個数を任意に設定することができ、エンド部材の長さ方向における手接触部材の長さ寸法も、エンド部材の長さ寸法等に応じて任意に設定することができる。
さらに、手接触部材は、エンド部材に固定的に配置してもよく、エンド部材に可動的に配置してもよい。手接触部材をエンド部材に可動的に配置するとは、例えば、エンド部材に対して手接触部材を出没可能等とすることによって引き出し可能に配置することや、エンド部材に手接触部材をヒンジ等で取り付けることによって回動可能又は起倒可能に配置することである。
また、本発明を、シャッターカーテンの閉じ移動方向は下方向であって、前記エンド部材が座板となっているシャッター装置に適用する場合には、前記手接触部材を、シャッターカーテンの開き移動方向への長さ成分を有するものとして座板に配置することが好ましい。
これによると、シャッターカーテンを手動で開き移動させるときに、手接触部材がシャッターカーテンの下端部の座板に配置されていても、手接触部材はシャッターカーテンの開き移動方向である上方向への長さ成分を有しているため、大きく身体を曲げなくても座板を含めたシャッターカーテンを開き移動させるための力、言い換えると、座板を含めたシャッターカーテンを持ち上げるための力を手接触部材に加えることができることになり、これにより、手接触部材によるシャッターカーテンの開き移動操作を容易に行える。
このように手接触部材をシャッターカーテンの開き移動方向への長さ成分を有するものとするためには、例えば、手接触部材部材の長さ方向をシャッターカーテンの開き移動方向と一致させて手接触部材を座板に配置してもよく、長さと幅の両方が大きな手接触部材を、幅方向をシャッターカーテンの開き移動方向と一致させて座板に配置してもよく、手接触部材の形状や構造に応じて座板に対する手接触部材の配置位置関係を任意に設定できる。
以上において、エンド部材に対する手接触部材の配置構造は、手接触部材やエンド部材の形状、構造、さらには、シャッター装置の用途や設置場所等に応じて任意に設定でき、例えば、以下の形態を採用することができる。
その第1番目の例は、手接触部材とエンド部材との間に、シャッターカーテンの開き移動方向への手接触部材の移動を所定距離まで可能とするとともに、シャッターカーテンの閉じ移動方向への戻り付勢力が作用している牽引部材を配置し、この牽引部材を介して手接触部材とエンド部材とを連結することである。
これによると、手接触部材をシャッターカーテンの開き移動方向へ所定距離移動させるまでは、牽引部材に作用している戻り付勢力に対抗する操作力を手接触部材に加えるだけで、手接触部材をシャッターカーテンの開き移動方向へ移動操作することができ、これによって力を入れやすい位置まで達した手接触部材をさらにシャッターカーテンの開き移動方向へ移動操作すると、牽引部材を介してシャッターカーテンは開き移動方向へ牽引されて開き移動を始める。そして、シャッターカーテンを所望距離だけ開き移動させて人等が通過した後、手接触部材から手が離されると、牽引部材には上記戻り付勢力が付与されているため、手接触部材及び牽引部材はエンド部材側へ自ずと戻り移動し、元の位置に復帰する。
この第1番目の例において、牽引部材は、手接触部材でシャッターカーテンの開き移動方向へ引っ張られると、それ自身に戻り付勢力が生ずるコイルスプリングやごむ紐等でもよく、また、手接触部材でシャッターカーテンの開き移動方向へ引っ張られても、それ自身には戻り付勢力が生じないワイヤーや紐、さらにはベルト等による紐状部材でもよい。
牽引部材を後者の紐状部材とした場合において、この紐状部材に前記戻り付勢力を作用させるためには、一例として、紐状部材の一端を巻き取り部材に連結して他端を手接触部材に結合し、この紐状部材を巻き取り、繰り出すためにエンド部材に配置した巻き取り部材に、紐状部材が巻き取り部材から繰り出されるときの巻き取り部材の回転で前記戻り付勢力となるばね力が蓄圧されるリターンばねを設ければよい。このリターンばねは、コイルばねでもよく、ぜんまいばねでもよい。
第2番目の例は、手接触部材を、一方の端部がエンド部材に連結された棒状部材とすることである。
この棒状部材の他方の端部にシャッターカーテンの開き移動方向への引っ張り力を加えると、シャッターカーテンは開き移動することになる。
この第2番目の例において、棒状部材を、シャッターカーテンの開き移動方向へ延びた状態でエンド部材に固定的に配置してもよく、また、棒状部材を、前記一方の端部を中心に、シャッターカーテンの開き移動方向に対して起倒可能としてエンド部材に配置してもよい。
棒状部材を後者とした場合には、棒状部材にシャッターカーテンの開き移動方向への引っ張り力を加えてシャッターカーテンを開き移動させた後は、棒状部材を倒すことにより、シャッターカーテンの幅方向に延びているエンド部材に対して棒状部材を平行又は略平行とすることができ、これにより、棒部材をエンド部材に格納した状態とすることができる。
この第2番目の例において、棒状部材の他方の端部は、棒状部材の本体から直角等に屈曲した屈曲部とすることが好ましい。これによると、本体がシャッターカーテンの開き移動方向に延びた状態となっているときに、屈曲部に指等を掛けることによって棒状部材をシャッターカーテンの開き移動方向へ容易に引っ張ることができる。
なお、第2番目の例において、前記一方の端部を中心にシャッターカーテンの開き移動方向に対して起倒可能としてエンド部材に配置される棒状部材は、エンド部材に連結された前記一方の端部から他方の端部に向って直線的に延びるものでもよく、外部材と内部材とを含んで構成され、外部材の内部に内部材が出入り可能となった入れ子式の棒状部材でもよく、前記一方の端部と他方の端部との間に1個又は複数個の折れ部が設けられた折り畳み式の棒状部材等でもよい。
第3番目の例は、エンド部材に、シャッターカーテンの開閉移動を案内するガイド部材に配置されている係止部材に係止してシャッターカーテンの開き移動を阻止するためのロック部材が設けられている場合に採用できるものである。この場合には、このロック部材と手接触部材とを、シャッターカーテンの開き移動方向への手接触部材の移動操作によってロック部材を係止部材に係止しない位置へ移動変位させるための連結手段を介して連結する。
これによると、シャッターカーテンを開き移動させるために手接触部材をこの開き移動方向へ移動操作すると、連結手段を介してロック部材は係止部材に係止しない位置へ移動変位する。このため、ロック部材と係止部材によってなされているシャッタカーテンのロックを解除することと、シャッターカーテンを開き移動させることとの両方が、手接触部材をシャッターカーテンの開き移動方向へ移動操作することによって同時になされることになり、このため、部材の共通化による構造の簡単化を図ることができる。
これらの例における手接触部材の形状は任意であり、例えば、リング状でもよく、フック状でもよく、逆L字状又は略逆L字状でもよく、逆U字状又は略逆U字状等でもよい。
以上説明した本発明は、火災等の発生時にシャッターカーテンで防災区画を形成するための防災用シャッター装置や、出入口等の開口部をシャッターカーテンで開閉するための開口部用シャッター装置に適用でき、また、トラック等の車両の荷台やコンテナに設置されるシャッター装置や、車庫用シャッター装置等にも適用できる。
本発明を防災用シャッター装置に適用する場合、シャッターカーテンで防災区画が形成される空間は、建物の室内空間でもよく、地下街の空間でもよく、船舶等の輸送機器内の空間でもよく、また、エレベータ前の空間でもよい。すなわち、本発明は、エレベータとエレベータホールとの間でシャッターカーテンが閉じ移動するエレベータ用の防災シャッター装置にも適用できる。
また、本発明を開口部用シャッター装置に適用する場合には、その開口部は出入口でもよく、窓等でもよい。
さらに、本発明は、任意な部材、材料で形成されたシャッターカーテンを有するシャッター装置に適用できるものであり、例えば、シャッターカーテンの全部又は主要部がスクリーンで形成されていてよく、複数のスラットの連設で形成されていてよく、分離不能又は分離可能な複数のパネルの連設で形成されていてもよく、ネットで形成されていてもよく、リンクで連結された複数のパイプで形成されていてもよく、これらのうちの少なくとも2つの複合等で形成されていてよい。
また、開き移動したシャッターカーテンを格納するための格納方式は、巻取軸で巻き取るものでもよく、オーバーヘッドドアのように、閉じ移動したときの状態のそのままで又は湾曲させた状態でシャッターカーテンを送り込んで格納するものでもよく、さらには、シャッターカーテンが分離可能な複数のパネルで形成されている場合には、それぞれ分離したパネルを互いに重ね合わせて格納するものでもよく、それぞれのパネルをパネル連結部で折り畳んで格納するものでもよい。
また、シャッターカーテンの閉じ移動がなされる方式は、自重式でもよく、手動式でもよく、自重と手動との併用式でもよく、電動モータ等を用いた自動式でもよい。
さらに、本発明では、シャッターカーテンを開き移動させるために前記手接触部材を用いるが、シャッターカーテンの開き移動は、この手接触部材に加える手動操作力だけによってなされてもよく、この手動操作と、シャッターカーテンが閉じ移動する際に蓄圧されるばね等の蓄圧力とによってなされてもよい。また、シャッターカーテンの通常の開き移動は、電動モータ等の自動駆動装置や、手接触部材とは別の手動操作部材によってなされるが、非常時に人等が通過できる分だけシャッターカーテンを開き移動させるときに、手接触部材を用いてもよい。
また、本発明において、エンド部材に配置される手接触部材は、シャッターカーテンに対して片側に設けてもよく、両側に設けてもよい。もちろん、開き移動させたシャッターカーテンに対する通過方向が決められているシャッター装置においては、手接触部材を通過方向手前側だけに設けてもよい。
本発明によると、シャッターカーテンを手動で開き移動させる際に用いる手接触部材は、シャッターカーテンの閉じ側先端部のエンド部材に配置したため、この手接触部材の配置を、シャッターカーテンに特別の加工を行うことなくできるようになるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係るシャッター装置は、防災区画を形成するためのシャッターカーテンがエレベータとエレベータホールとの間で上下に開閉移動するようになっているエレベータ用防災シャッター装置である。以下、このエレベータ用防災シャッター装置を説明する。図1は、そのエレベータ用防災シャッター装置の全体を示す正面図で、図2は図1のS2−S2線断面図、図3は、図1のエレベータ用防災シャッター装置の縦断面図である。
初めにエレベータの全体構造を説明する。図2及び図3に示すように、エレベータの昇降箱1が上下動する建物内の縦穴2とエレベータホール3とを区画する建物躯体となっているコンクリート製の壁4には、下面がエレベータホール3から続く床5となっている開口部6が形成され、エレベータ用出入口であるこの開口部6には、縦穴2側の奥において、エレベータ用扉7が配置されている。壁4の厚さ内から縦穴2側に外れた位置に配置されているこのエレベータ用扉7を開閉移動させるために、図3で示されているように、上部レール8と下部レール9がエレベータ用扉7の上下に設けられている。
上部レール8には、エレベータ用扉7の上部ブラケット7Aに取り付けられた上下のローラ10,11が転動自在に係合し、床5に設けられた下部レール9にはエレベータ用扉7の下面に取り付けられた係合部材12がスライド自在に係合し、上のローラ10で吊り下げられた上吊り式となっているエレベータ用扉7は、これらのローラ10,11と係合部材12の案内作用により図示しない駆動手段の駆動力で開閉移動する。
図1に示すとおり、開口部6の上部内面と左右の側部内面には、上枠部材13と側枠部材14が配設され、開口部6の上部内面を形成する上部内面部材となっている上枠部材13と、側部内面を形成する側部内面部材となっている側枠部材14により、開口部6の内面には三方枠となった開口部用外枠組み15が設けられている。これらの上枠部材13と側枠部材14は、ステンレス等の金属板製であり、開口部6の化粧材となっている。
図3で示すように、上枠部材13は、エレベータホール3側の立上り部13Aと、この立上り部13Aの下端からエレベータ扉7側へ水平に延びる延出部13Bとからなる。立上り部13Aは、壁4における開口部6の上部の下がり壁4Aのエレベータホール3側の表面に設けられた取付部材18に取り付けられ、延出部13Bは、下がり壁4Aの縦穴2側の表面に結合具19とブラケット20を介して結合された保持部材21に結合されている。この保持部材21に前記上部レール8が取り付けられている。
また、上枠部材13の立上り部13Aよりも上の取付部材18は、天井部材16でエレベータホール3と上下に仕切られた天井裏空間17に配置されている。この立上り部13Aには、図1に示すように、エレベータ用インジケータ19が配置されている。
本実施形態に係るエレベータ用防災シャッター装置は、図1に示すように、開閉移動することにより、言い換えると、上下動することにより、開口部6を開放、閉鎖するシャッターカーテン30を備えている。図2に示すように、このシャッターカーテン30の左右両端部、言い換えると、シャッターカーテン30の開閉移動方向と直交するカーテン幅方向の両端部は、抜け止め部材30Aで抜け止めされながらガイド部材であるガイドレール31にスライド自在に挿入されている。これらの左右一対のガイドレール31は、壁4における開口部6の左右両側に設けられている側壁4Bのエレベータホール3側の表面の化粧材32に配置されている。これらのガイドレール31の配置位置は、開口部6の化粧材となっていて上枠部材13と側枠部材14からなる前記三方枠の外枠組み15よりもエレベータホール3側の位置となっている。
図3に示すように、シャッターカーテン30を開閉移動させるための開閉移動手段33は、天井部材16よりも上の空間、すなわち天井裏空間17に配置されている。開閉移動手段33は、シャッターカーテン30の上端部が結合された水平な巻取軸34と、この巻取軸34にスプロケット、チェーン等による連結手段35を介して連結された開閉機36と、この開閉機36の回転軸36Aに設けられているブレーキを起動及び解除させるためのブレーキ駆動装置37とを有する。ブレーキ駆動装置37には手動操作部が設けられ、この手動操作部を手動操作することによりブレーキの起動及び解除がなされる。また、ブレーキ駆動装置37には、エレベータが設置されている建物又は地下街等の構築物の適所に設置されている火災センサが接続されており、この火災センサが煙又は炎又は熱を検出してその信号がブレーキ駆動装置37に入力することにより、ブレーキが解除されるようになっている。
以上のブレーキ駆動装置37は開閉機36に取り付けられ、また、巻取軸34と開閉機36は、前記取付部材18に結合されたブラケット38に取り付けられている。また、図3に示すとおり、シャッターカーテン30は、上述のように構成された開閉移動手段33の巻取軸34から、天井部材16に配置されている図示しないまぐさのスリットを通って下方へ垂下されている。
シャッターカーテン30、及びこのシャッターカーテン30の閉じ側先端部である下端部に設けられたエンド部材となっている座板50がガイドレール31に沿って下降していて、上記ブレーキが解除されているために開閉機36の回転軸36A及び巻取軸34を回転させることができる状態になっているときに、開閉機36の回転軸36Aをハンドル等の手動工具又はモータ等からなる電動工具で正回転させ、この正回転が連結手段35を介して巻取軸34に伝達されることにより、シャッターカーテン30を巻取軸34に巻き取らせて開き移動させることができ、これにより、シャッターカーテン30を巻取軸34に格納させて開口部6を開放させることができる。
また、シャッターカーテン30の上昇で座板50が天井部材16の前記まぐさの高さ位置まで達していて、上記ブレーキが起動されているときに、言い換えると、シャッターカーテン30が開口部6を開放しているときに、前記火災センサからの煙又は炎又は熱の検出信号がブレーキ駆動装置37に入力され、これによりブレーキが解除されると、座板50を含むシャッターカーテン30の自重によってシャッターカーテン30は巻取軸34を逆回転させながら下降し、座板50が前記床5に接触することにより、巻取軸34から繰り出されて閉じ移動したシャッターカーテン30によって開口部6が閉鎖されるようになっている。
これにより、火災の発生時に開口部6は、建物内のエレベータと前記エレベータホール3との間の箇所においてシャッターカーテン30で閉鎖され、全閉となったこのシャッターカーテン30で防災区画が形成される。一方、開閉機36の回転軸36Aを前述したハンドル等で正回転させてシャッターカーテン30を開き移動させる作業は、エレベータ用防災シャッター装置の保守点検時等において行われる。
以上において、シャッターカーテン30の上下動を案内するためのガイドレール31は、エレベータへの出入口である開口部6よりもエレベータホール3側に配置されているため、シャッターカーテン30は、開口部6よりもエレベータホール3側において開閉移動するようになっている。また、シャッターカーテン30を開閉移動させるための開閉移動手段33は、天井裏空間17において、前記壁4の下がり壁4Aに近接されて配置されている。
図2に示すとおり、シャッターカーテン30のカーテン幅方向両端部が挿入されているガイドレール31の内部には、煙遮断部材40が収納配置され、これと同様な煙遮断部材は、シャッターカーテン30が上下に挿通する前記まぐさのスリットにも収納配置されている。これにより、シャッターカーテン30が閉じ移動して開口部6を閉鎖しているときに、ガイドレール31の内部及びまぐさのスリットを通って煙、炎がシャッターカーテン30に対して反対側へ達するのを防止されるようになっている。
以上において、シャッターカーテン30は、スクリーンで形成されており、このスクリーンは、シリカクロスやガラスクロスに耐火塗料を塗布及び/又は含浸させたものとなっており、防火性と遮煙性とを有する。
シャッターカーテン30の閉じ側先端部のエンド部材となっている前記座板50には、図1で示されているように、火災発生時に、エレベータの昇降箱1から降りた避難者が、シャッターカーテン30が全閉となっていても手で触ることにより、このシャッターカーテン30を手動で開き移動させてその下を通過できるようにするための手接触部材としてのリング部材60を備えた手動装置66が配置されている。座板50は、図4で示されているとおり、シャッターカーテン30の幅方向への長さを有しているとともに、シャッターカーテン30の厚さ方向への幅を有しているため、座板50には、シャッターカーテン30の厚さ方向へ互いに反対向きに突出した2つの突出部50A,50Bが設けられている。リング部材60等からなる手動装置66は、これらの突出部50A,50Bのうち、エレベータホール3とは反対側の突出部50A、すなわち、エレベータ側の突出部50Aに配置されている。
リング部材60は、突出部50Aに固定設置された箱部材61の上に載せられた状態で突出部50Aに配置されている。図5は、箱部材61の内部構造を示す断面図である。箱部材61の内部には、箱部材61に左右側面に設けられた2個の中心軸62を中心に回転自在となった巻き取り部材63がシャッターカーテン30の幅方向と平行に収納配置され、この巻き取り部材63には、リング部材60に加えられる上方への引っ張り力で座板50及びシャッターカーテン30をシャッターカーテン30の開き移動方向へ牽引するための牽引部材となっている紐状部材64の一端が結合され、巻き取り部材63に巻き取られている紐状部材64の他端は、箱部材61の上面の孔61Aから突出してリング部材60に連結されている。
このため、リング部材60をシャッターカーテン30の開き移動方向へ引っ張ると、紐状部材64は巻き取り部材63を回転させながら繰り出される。図6には繰り出された紐状部材64が示されている。この繰り出し可能となる最大量は紐状部材64の長さに相当する所定距離分であり、この所定距離、言い換えると、リング部材60が達する最大高さ位置は、指をリング部材60に挿入してこのリング部材60を引っ張り操作する人が、腰や膝を大きく曲げるなどして無理な姿勢をとらなくても、その最大高さ位置よりも上は楽に座板50を含めたシャッターカーテン30の重量を持ち上げてシャッターカーテン30を開き移動させることができることになる高さ位置である。
図5で示されているように、巻き取り部材63には、紐状部材64を繰り出すときに回転した巻き取り部材63によってばね力が蓄圧されるリターンばね65が巻回配置されている。このリターンばね65は、本実施形態ではコイルスプリングであり、リターンばね65の一端は巻き取り部材63に結合され、他端は箱部材61に結合されている。このため、紐状部材64の繰り出しに伴って巻き取り部材63が回転すると、リターンばね65には、巻き取り部材63を逆方向へ回転させようとするばね力が蓄圧されることになり、この蓄圧力が、紐状部材64及びリング部材60をシャッターカーテン30の閉じ移動方向である下方へ戻そうとする戻り付勢力となる。
この紐状部材64の略全体が図5に示すように巻き取り部材63に巻き取られているときでも、リターンばね64は蓄圧されたばね力を有しているため、このばね力が巻き取り部材63を介して紐状部材64に戻り付勢力となって作用しているため、リング部材60は、図5で示されているとおり、箱部材61の上面に起立した状態で載っている。このため、箱部材61を介して座板50に配置されているリング部材60は、シャッターカーテン30の開き移動方向である上方への長さ成分を有するものとなっている。
次に、作用について説明する。図1で示したエレベータ用防災シャッター装置が設置されている建物等の内部で火災が発生すると、各階に設置されているエレベータ用防災シャッター装置のシャッターカーテン30が閉じ移動して全閉となる。エレベータの昇降箱1に載っていた人がその昇降箱1が停止した階で降り、そして、その階のエレベータホール3に出る場合には、その人は、その階のエレベータ用防災シャッター装置の全閉となっているシャッターカーテン30を開けるために、リング部材60に指を挿入してリング部材60を引き上げる操作を行う。これにより、紐状部材64が巻き取り部材63から繰り出され、リング部材60が紐状部材64の長さで決まる前記所定距離分だけ移動した後、さらにリング部材60を引き上げる操作を行うと、牽引部材である紐状部材64の牽引力によって座板50及びシャッターカーテン30は上方への開き移動を開始する。
これにより、図6で示されているように、座板50がそれまで着床していた床5から離れることになり、この後、リング部材60に指を挿入していた手とは反対側の手で座板50の下面を受け止め、この手で座板50及びシャッターカーテン30をさらに上方へ持ち上げることにより、前記人は座板50の下を通過してエレベータホール3へ脱出できる。この脱出により座板50の下面から手を離すと、座板50及びシャッターカーテン30はそれ自身の重量で落下し、座板50は床5に着床してシャッターカーテン30は全閉状態に戻る。また、リング部材60及び紐状部材64には、紐状部材64の巻き取り部材63からの繰り出し時にリターンばね65に蓄圧されたばね力による戻り付勢力が作用しているため、これらのリング部材60及び紐状部材64は、図4で示した元の状態に復帰する。
以上説明した本実施形態によると、シャッターカーテン30を手動で開き移動操作するための手接触部材となっているリング部材60と、このリング部材60に戻り付勢力を付与するための部材、機構が収納されている箱部材61は、シャッターカーテン30ではなく、座板50に配置されているため、これらのリング部材60及び箱部材61を配置するための特別の加工をシャッターカーテン30に行う必要がなくなる。このため、シャッターカーテン30の製造の容易化や、全閉となったときにおけるシャッターカーテン30による高度の遮閉性を確保できるようになる。
また、指が掛けられる前のリング部材60は、前述したように箱部材61の上で起立した状態になっていてシャッターカーテン30の開き移動方向への長さを有しているため、リング部材60がシャッターカーテン30の下端部の座板50に配置されていても、大きく身体を下向きに大きく曲げることなく、指をリング部材60に挿入することを容易に行える。そして、本実施形態では、リング部材60は箱部材61の上に載っているため、この箱部材61の高さ分だけリング部材60の座板50からの高さ位置は高くなっており、このため、指をリング部材60に挿入するための行為を一層楽に行える。
また、指でリング部材60を箱部材61から引き上げる操作を行うと、リング部材60と座板50との間には巻き取り部材63に巻き取られた紐状部材64が配置されているため、巻き取り部材63から繰り出される紐状部材64の長さに相当する所定距離分だけ、リング部材60の高さ位置を高くすることができる。この高さ位置は、前述したとおり、指をリング部材60に挿入してこのリング部材60を引っ張り操作する人が、腰を大きく曲げるなどして無理な姿勢をとらなくても、その高さ位置よりも上は楽に座板50を含めたシャッターカーテン30の重量を持ち上げてシャッターカーテン30を開き移動させることができることになる高さ位置であるため、これ以後、リング部材60に挿入した指によってリング部材60をさらに引き上げる操作を行うことにより、座板50を含めたシャッターカーテン30を容易に上昇させることができる。
なお、リング部材60を箱部材61から紐状部材64の長さに相当する所定距離分だけ引き上げる操作を行うときには、巻き取り部材63の回転でリターンばね56にばね力が蓄圧され、このばね力による引き下げ力がリング部材50と紐状部材64に作用するが、この引き下げ力はそれ程大きくないため、リング部材60の上記高さ位置までの引き上げ操作を容易に行える。
さらに、本実施形態によると、リング部材60から指を抜くと、リターンばね65に蓄圧されたばね力による戻り付勢力により、紐状部材64は下降して巻き取り部材63に巻き取られ、リング部材60も箱部材61の上に載った起立状態に戻り、全部が元の状態に復帰する。このため、次にシャッターカーテン30を開き移動させてエレベータホール3側へ脱出する人が前記手動装置66を使用できる状態となり、また、巻き取り部材63から繰り出された紐状部材64に、座板50の近くにある物体等が絡み付くなどの事態の発生を防止できる。
図7は、シャッターカーテン30の厚さ方向へ互いに反対向きに突出した2つの突出部70A,70Bを有している座板70について、これらの両方の突出部70A,70Bに、リング部材60と箱部材61等からなる前述の手動装置66を配置した実施形態を示している。この実施形態によると、エレベータ側からエレベータホール3側へ脱出する人も、エレベータホール3側からエレベータ側へ脱出する人も、装置66のリング部材60によってシャッターカーテン30を開き移動させることができる。
図8の実施形態に係るリング部材80は、紐状部材64が結合されていて箱部材61の上面に接触する下面80Aが、箱部材61の上面と同じ平坦面として形成されたものとなっている。この実施形態によると、リング部材80は、紐状部材64に作用する戻り付勢力によって一層確実に箱部材61の上に起立状態で載ることになる。
図9は、シャッターカーテン30を手動で開き移動させるための手接触部材が棒状部材90となっている実施形態を示す。金属又は合成樹脂等からなるこの棒状部材90は、本体部90Aと、この本体部90Aの一方の端部から座板50の立上り部50C側へ屈曲した基部90Bと、本体部90Aの他方の端部から本体部90A及び基部90Bに対して直角をなす方向へ屈曲した指掛け部90Cとからなる。基部90Bは座板50の立上り部50Cに回動自在に挿入され、これにより、棒状部材90は座板50に起倒可能に配置されている。
通常時の棒状部材90は、それ自身の重量によって図9の実線で示されているとおり、基部90Bを中心とする回動で倒れており、本体部90Aは座板50と平行になっている。シャッターカーテン30を開き移動させるときには、座板50から立ち上がった状態となっている指掛け部90Cを摘むことにより棒状部材90を上向きに回動させ、次いで、水平又は略水平となった指掛け部90Cに指を掛けて棒状部材90に引き上げ力を作用させる。これにより、座板50及びシャッターカーテン30は開き移動することになり、これ以後は、前記実施形態と同様に、指掛け部90Cに指を掛けた手とは反対側の手で座板50の下面を受け止め、この手で座板50及びシャッターカーテン30をさらに上方へ持ち上げることにより、人は座板50の下を通過してエレベータホール3へ脱出できる。
そして、指掛け部90Cから指を離すと、棒状部材90はそれ自身の重量で基部90Bを中心に回動し、棒状部材90は座板50と平行になった図9の実線の状態に戻る。なお、棒状部材90がこの実線の状態に一層確実に戻るように、例えば、基部90Bの部分に戻しばね等の弾性戻し部材を設けてもよい。
この実施形態によっても棒状部材90は、シャッターカーテン30ではなくて座板50に配置されているため、シャッターカーテン30に棒状部材90を配置するための特別の加工を行う必要がない。
また、棒状部材90が座板50と平行になっている倒れ状態となっているときでも、棒状部材90には、シャッターカーテン30の開き移動方向へ長さを有している指掛け部90Cが設けられているため、シャッターカーテン30を開き移動させるために棒状部材90を直立状態まで起こすことを容易に行える。そして、棒状部材90が直立状態となったときにおける指掛け部90Cの高さ位置は、前記実施形態において紐状部材64の全部が巻き取り部材63から繰り出されたときにおけるリング部材60と同じ程度の高さ位置になっているため、腰を大きく曲げるなどして無理な姿勢をとらなくても、指を掛けた指掛け部90Cに、棒状部材90を介して座板50及びシャッターカーテン30を開き移動させるための操作力を容易に加えることができる。
また、指掛け部90Cから指を離すと、棒状部材90は図9の実線で示された元の状態に戻り、座板50に格納された状態とすることができる。
図10〜図12の実施形態では、座板100の左右両端部には、言い換えると、シャッターカーテン30の開閉移動を案内する左右のガイドレール31の内部にスライド自在に挿入されている座板100の長さ方向両端部には、座板100が床5に着床してシャッターカーテン30が全閉となっているときに、ガイドレール31の内部に設けられている係止部材101に係止してシャッターカーテン30をロックするための、すなわち、シャッターカーテン30の開き移動を阻止するためのロック部材102が設けられている。これらのロック部材102は、図10のS11−S11線断面図である図11に示されているように、座板100の2つの突出部100Aと100Bの間から上向きに立ち上がった立上り部100Cに配置されている。
図10で示されているように、ロック部材102は立上り部100Cに軸103を中心に回動自在に取り付けられ、軸103よりも下側に配置された引っ張りばね104により、ロック部材102は、軸103よりも上部が常に係止部材101側へ回動付勢されるようになっている。これにより、ロック部材102が係止部材101よりも下の位置に達しているときには、シャッターカーテン30の開き移動が係止部材101とロック部材102で阻止され、この結果、全閉となっているシャッターカーテン30が、例えば、火災発生時における風圧等を受けても、床5に着床している座板100の浮き上がりが防止されるようになっている。このため、全閉となっているときのシャッターカーテン30による高度の遮閉性が、係止部材101やロック部材102等で構成されたロック装置で確保されるようになっている。
なお、全開となっていたシャッターカーテン30が火災の発生で閉じ移動したときには、係止部材101の傾斜面101Aに上から当接するロック部材102が軸103を中心に係止部材101から逃げる方向へ回動することにより、ロック部材102は係止部材101を通過し、この通過後、引っ張りばね104でロック部材102は図10の回動位置へ戻る。
軸103よりも上部においてロック部材102にはワイヤー等による紐状部材105の一方の端部が連結され、この紐状部材105は、立上り部100Cに取り付けられているガイド筒106の内部に案内挿通されてシャッターカーテン30の幅方向内側へ延設され、そして、ガイドローラ107で上向きに反転されている。この反転された紐状部材105の他方の端部には、この実施形態における手接触部材となっている把持部材108が連結されている。
この把持部材108は、それぞれがシャッターカーテン30の開き移動方向への長さを有し、それぞれの紐状部材105の他方の端部が連結された左右2個の垂直部108Aと、これらの垂直部108Aの上端間に架設された水平部108Bとからなる略逆U字形状の部材である。それぞれの垂直部108Aは、立上り部100Cに取り付けられたガイド部材109に案内されて上下方向であるシャッターカーテン30の開閉移動方向にスライド自在となっており、下方のスライド限位置は、ガイド部材109に設けられている図示しないストッパーで規定されている。
水平部108Bは、図11で示されているとおり、垂直部108Aやガイド部材109よりも大きいシャッターカーテン30の厚さ方向への突出量を有し、このため、この水平部108Bを把持することにより、把持部材108をシャッターカーテン30の開き移動方向である上方へ引き上げるための操作を行えるようになっている。
図10に示すように、全閉となっているシャッターカーテン30を開き移動させるときには、水平部108Bの把持によって把持部材108を上方へ引き上げる。これにより、図12で示されているとおり、紐状部材105を介してロック部材102が係止部材101に係止しない位置まで軸103を中心に回動し、さらに、ロック部材102が立上り部100Cに設けられているストップ部材110に当接するまで把持部材108を引き上げる操作を行い、この後も把持部材108の引き上げ操作を行うことにより、座板100及びシャッターカーテン30は開き移動を開始する。この後、前記実施形態と同様に、水平部108Bを把持した手とは反対側の手で座板100の下面を受け止め、この手で座板100及びシャッターカーテン30をさらに上方へ持ち上げることにより、人は座板100の下を通過してエレベータホール3へ脱出できる。
また、水平部108Bから手を離すと、引っ張りばね104により、ロック部材102や把持部材108は図10で示されている元の位置に戻る
この実施形態でも、シャッターカーテン30を手動で開き移動させるための手接触部材となっている把持部材108は、シャッターカーテン30ではなくて座板100に配置されているため、シャッターカーテン30に把持部材108を配置するための特別の加工を行う必要がない。
また、把持部材108はシャッターカーテン30の開き移動方向への長さ成分を有しており、座板100を含めたシャッターカーテン30を引き上げるための操作力を加える水平部108Bは、この把持部材108の上端部にあるため、把持部材108がシャッターカーテン30の下端部の座板100に配置されていても、大きく身体を曲げることなく、座板100を含めたシャッターカーテン30を開き移動させるための力、言い換えると、座板100を含めたシャッターカーテン30を持ち上げるための力を把持部材108に加えることができることになり、シャッターカーテン30の手動による開き移動操作を容易に行える。
特に、この実施形態によると、座板100に、ガイドレール31に配置された係止部材101に係止してシャッターカーテン30の開き移動を阻止するためのロック部材102が設けられていても、このロック部材102と把持部材108は、連結手段111となっている紐状部材105で連結されているため、シャッターカーテン30を開き移動させるための把持部材108の引き上げ操作を行うことにより、ロック部材102を係止部材101に係止しない位置へ回動変位させることができる。これにより、係止部材101とロック部材102とによってシャッターカーテン30を全閉位置でロックしていることを解除することと、シャッターカーテン30を手動で開き移動させることとを同時に行え、また、把持部材108はロック解除装置を構成するものにもなっているため、部材の共通化と、ロック解除装置の構造の簡単化を実現できる。