以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本実施形態に係る戻しばね付きシャッター装置となっている軽量シャッター装置の全体正面図が示され、この軽量シャッター装置は、シャッターカーテン1で建物の出入口10を開閉するための出入口用シャッター装置である。また、このシャッター装置は、シャッターカーテン1の手動操作によりシャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させ、手動操作によりシャッターカーテン1を上向きに開き移動させる手動式のタイプのものとなっている。
出入口10の左右両側を形成している壁や柱等による建物躯体11には、上下に延びるガイドレール2が取り付けられ、これらの左右のガイドレール2の内部に、シャッターカーテン1の幅方向両端部である左右両端部がスライド自在に挿入され、シャッターカーテン1はガイド部材であるガイドレール2に案内されて上下方向に開閉移動可能となっている。出入口10の上部には、シャッターケース3が配設され、このシャッターケース3の内部に、正逆回転自在となった巻取体4が左右のブラケット5で支持されて水平に架設されている。シャッターカーテン1の上端部はこの巻取体4に連結され、シャッターカーテン1の上下方向の開閉移動は、巻取体4が正逆回転のうちの一方へ回転することによる巻取体4からのシャッターカーテン1の繰り出し、巻取体4が他方へ回転することによって行われる巻取体4へのシャッターカーテン1の巻き取りによりなされ、このシャッターカーテン1の開閉移動は、シャッターケース3の下面3Aに設けられているまぐさのスリットをシャッターカーテン1が挿通してなされる。
シャッターカーテン1は、閉じ側の先端部である下端部に設けられた座板1Aと、この座板1Aの上部に多数連設されたスラット1Bとを含んで構成され、座板1Aがシャッターケース3の下面3Aのまぐさの高さ位置に達しているときに、シャッターカーテン1は全開位置となっており、座板1Aが出入口10の床10Aに達したときに、シャッターカーテン1は全閉位置となる。このため、これらの全開位置から全閉位置までの距離が、シャッターカーテン1の開閉移動距離Hである。
そして、左右のガイドレール2におけるシャッターカーテン1とは反対側の面2Aに関する間隔が、左右のガイドレール間距離Wであり、このガイドレール間距離Wは、上記幅方向の両端部がこれらのガイドレール2の内部にスライド自在に挿入されているシャッターカーテン1の幅寸法W’よりも大きい。図1の軽量シャッター装置では、W及びW’よりもHが大きくなっている。
また、この軽量シャッター装置の座板1Aを除くシャッターカーテン1の全部は、スラット1Bによって形成されている。
シャッターカーテン1を構成している多数のスラット1Bのうち、シャッターカーテン1が全閉位置となったときに腰と同じ高さ程度にある所定のスラット1Bには、左右2個の手掛け部6が設けられ、シャッターカーテン1が全閉位置となっているときに、これら手掛け部6に手を掛けてシャッターカーテン1を持ち上げたり、座板1Aに操作棒の先端を係合してこの操作棒でシャッターカーテン1を上昇させることにより、シャッターカーテン1を、この上昇によって正逆回転のうちの前記他方への回転を行うことになる巻取体4に巻き取らせてシャッターカーテン1を全開位置まで開き移動させることができる。また、全開位置に達しているシャッターカーテン1の座板1Aに操作棒の先端を係止してこの操作棒でシャッターカーテン1を下降させたり、手掛け部6に手を掛けてシャッターカーテン1を押し下げることを行うことにより、シャッターカーテン1の自重を利用して、シャッターカーテン1を、正逆回転のうちの前記一方への回転を行うことになる巻取体4から繰り出させて全閉位置まで閉じ移動させることができる。
図2には巻取体4の構造が示されている。巻取体4は、回転しない非回転軸となっている中心部の中心軸20と、シャッターカーテン1の上端部が連結され、中心軸20を中心に正逆回転自在であって、正逆回転のうちの一方への回転によってシャッターカーテン1を閉じ移動させるためにこのシャッターカーテン1を繰り出し、他方への回転によってシャッターカーテン1を開き移動させるためにこのシャッターカーテン1を巻き取るための回転体21とを含んで構成され、中心軸20は、軸方向両端部が図1で説明した左右のブラケット5で回転不能に支持されている。回転体21は、中心部に中心軸20が貫通した複数個、図示例では、4個の回転構造物22と、中心軸20の軸方向に延びる長さを有し、中心軸20の軸方向に互いに離間して配置されたこれらの回転構造物22同士を連結する連結部材となっているバー状部材23とを含んで構成され、パイプやフラットバー等からなるバー状部材23は巻取体4の円周方向に複数本設けられている。
中心軸20に対してそれぞれが正逆回転自在となっている4個の回転構造物22の全部は同じ形状及び構造となっており、図3は、これらの回転構造物22のうちの1個を示す正断面図である。図4は、図3のS4−S4線断面図、図5は、図3のS5−S5線断面図である。図3で示されているとおり、回転構造物22は、中心軸20の軸方向の一方の端部が略閉鎖された端面部24Aとなっていて、他方の端部24Bが開口しているカップ状部材24と、このカップ状部材24の開口した端部24Bの側に配置されていて、この開口端部24Bを略閉鎖された端部とする端部部材となっているホイール部材25との組み合わせによる組合体となっている。カップ状部材24の内部空間Sに、本実施形態に係る戻しばねであって、一端から他端に向かって内外径方向に渦巻き状に巻回しているぜんまいばね26が収納配置され、ばね特性を有する板材からなるこのぜんまいばね26のそれぞれの巻き部は、中心軸20の軸方向の同一位置又は略同一位置に配置されている。
ぜんまいばね26は、図2で示されているとおり、全部の回転構造物22に設けられているとともに、これらのぜんまいばね26は、材質が同じであって、厚さや幅等の寸法も同じ、全長も同じとなっている板材を同じ方向へ同じ回数分だけ巻回することによって生産したものであるため、この実施形態で用いられている戻しばねは、1種類のばねとなっている。
図3で示されているように、ホイール部材25は、外周面を形成している環状フランジ部25Aと、この環状フランジ部25Aにおける中心軸20の軸方向の一方の端部に設けられた端面部25Bとを有する浅皿形状であり、この端面部25Bに、それぞれの回転構造物22同士を連結するための前記バー状部材23が挿通結合されている。また、ホイール部材25は、開口している中心軸20の軸方向の他方の端部25Cをカップ状部材24とは反対側に向け、端面部25Bをカップ状部材24の側に向けてこのカップ状部材24に結合されている。この結合は、板金プレス成形品であるカップ状部材24の胴部24Cの前記開口端部24B側の端部に形成されている突片24Dを、ホイール部材25の端面部25Bに形成された孔25Dに挿入した後、突片24Dを折り曲げることによってなされている(図4も参照)。
以上のことから、本実施形態では、ホイール部材の端面部25Bは、中心軸20の直径方向へ立ち上がった回転構造物22の立上り部となっており、カップ状部材の胴部24Cは、中心軸20の軸方向の幅を有する回転構造物22の筒部となっている。そして、ホイール部材25は、回転構造物22を形成する第1部材となっており、カップ状部材24は、回転構造物22を形成する第2部材となっている。
図3で示されているように、ホイール部材25はカップ状部材24よりも大きい外径を有し、この外径の部分を形成しているホイール部材25の環状フランジ部25Aは、図4で示されているように、中心軸20を中心とする真円状となっておらず、円周方向へ延びるにしたがい中心軸20からの距離が次第に変化する略渦巻き状の異形円となっている。このため、環状フランジ部25Aには、中心軸20の直径方向へ窪んだ段部25Eが形成され、それぞれの回転構造物22における段部25Eにおいて、シャッターカーテン1の上端部がボルト等による結合具でホイール部材25の環状フランジ部25Aの外面に結合されている。このため、それぞれの回転構造物22における環状フランジ部25Aは、シャッターカーテン1を巻き取り、繰り出すための巻取体4における部分となっている。
このような環状フランジ部25Aを有しているホイール部材25は、上述のように開口端部25Cをカップ状部材24とは反対側に向けてカップ状部材24に連結されているため、上記のようにシャッターカーテン1の上端部を環状フランジ部25Aの外面に結合するための結合具が、環状フランジ部25Aの内面側へ突出する部分を有するボルト、ナット等であっても、この結合作業を、開口端部25Cから作業者が手や工具等を差し入れることによって容易に行える。
また、図2で示されているように、前記中心軸20の外周面におけるそれぞれの回転構造物22の配置位置と対応する位置には、巻芯部材27が配置されている。これらの巻芯部材27は、図3で示されているとおり、結合具28,29によって中心軸20に固定されているため、巻芯部材27は、中心軸20と同じく、回転しない非回転部材となっている。図4から分かるように、結合具28は、巻芯部材27に螺入されて先端が中心軸20に押圧固定されたボルトであり、また、図3で示されている結合具29は、巻芯部材27及び中心軸20を貫通するボルトと、巻芯部材27の反対側に突出したこのボルトの先端に螺合されたナットとからなる。
また、図4及び図5から分かるように、巻芯部材27は丸パイプ部材であり、この巻芯部材27には、図3で示されているように、カップ状部材24の配置位置と対応する位置において、軸方向の途中まで延びるスリット27Aが形成され、さらに、巻芯部材27の軸方向両端部には、切り倒し加工による受け片27Bが形成され、巻芯部材27の円周方向に等間隔で複数形成されているこれら受け片27Bにより、巻芯部材27は中心軸20と同軸的に配置され、言い換えると、巻芯部材27は、全周に亘って中心軸20から同じ又は略同じ大きさの隙間を開けて中心軸20上に配置されている。
図3に示されているように、カップ状部材24の前記端面部24Aと、ホイール部材25の前記端面部25Bには、中心軸20及び巻芯部材27が挿通された孔30,31が形成され、これらの孔30,31は僅かな隙間を開けて巻芯部材27が遊合した孔であるため、カップ状部材24の端面部24Aによる端部と、ホイール部材25の端面部25Bによる端部は、略閉鎖された端部となっている。このため、カップ状部材24の前記内部空間Sは、略密閉空間となっており、このように前記ぜんまいばね26が収納された内部空間Sが略密閉空間となっていることにより、ぜんまいばね26に空気中の水分等に起因する錆が発生しにくく、また、ぜんまいばね26は外部力から略遮断され、ぜんまいばね26を外部環境から保護することができる。
なお、ぜんまいばね26が収納されているこの内部空間Sを密閉性が一層向上した略密閉空間又は密閉空間とするために、カップ状部材24、ホイール部材25に取り付けられて巻芯部材27と回転自在に接触するシール部材により、孔30,31を塞いでもよい。
図3で示すように、ホイール部材25と巻芯部材27との間には軸受け35が配置され、この軸受け35により、ホイール部材25とカップ状部材24は巻芯部材27に対して回転自在となっている。軸受け35は、外輪部材35Aと、内輪部材35Bと、これらの外輪部材35Aと内輪部材35Bとの間において円周方向に複数個配設され、それぞれがリテーナ35Cで回転自在に保持されているボール35Dとを有するボール式軸受けであり、外輪部材35Aはリベット等の止着具36(図4参照)でホイール部材25の端面部25Bに止着されており、内輪部材35Bは、前述した結合具28によって巻芯部材27と共に中心軸20に結合されている。
図5で示すように、前記内部空間Sに配置されているぜんまいばね26の一方の端部である内端部26Aは折り曲げられることにより、巻芯部材27の被係止部であるスリット27Aに係止されている。また、ぜんまいばね26の他方の端部である外端部26Bは折り曲げられることにより、カップ状部材24の胴部24Cの被係止片24Eに係止されている。巻取体4の円周方向へ延びる長さを有しているこの被係止片24Eは、胴部24Cに外径方向への膨出部24Fをプレス成形等で形成する際に、一部を膨出させずに切り残すことによって形成されたものである。
このようにぜんまいばね26の内端部26Aは、前記巻取体4の中心に配置された中心軸20と結合されて非回転部材となっている巻芯部材27に連結され、外端部26Bは、中心軸20を中心に回転自在となっている前記回転構造物22の構成部材であるカップ状部材24に結合されている。また、ぜんまいばね26の巻回方向は、ホイール部材25の環状フランジ部25Aに巻き取られているシャッターカーテン1を繰り出す方向に巻取体4の前記回転体21が中心軸20を中心に回転(図5中、右回転)したときに、言い換えると、シャッターカーテン1を繰り出す方向に巻取体4が中心軸20を中心に回転したときに、ぜんまいばね26が巻き締められる方向になっている。そして、ぜんまいばね26の内端部26A及び外端部26Bは、巻取体4の円周方向に折り曲げられて巻芯部材27のスリット27A、カップ状部材24の胴部24Cの被係止片24Eに係止されているが、これらの内端部26A及び外端部26Bの折り曲げ方向は互いに反対側になっているとともに、これらの折り曲げ方向は、上述のようにホイール部材25の環状フランジ部25Aに巻き取られているシャッターカーテン1を繰り出す方向に巻取体4が中心軸20を中心に回転したときに、内端部26A、外端部26Bがスリット27A、被係止部24Eから離脱せず、ぜんまいばね26を巻き締めることができる方向になっている。
このため、シャッターカーテン1が巻取体4から繰り出されて閉じ移動すると、ぜんまいばね26には巻き締めによって戻しばね力が蓄圧されることになる。また、シャッターカーテン1を開き移動させてこのシャッターカーテン1を巻取体4に巻き取らせるときには、この蓄圧された戻しばね力が巻取体4の回転を補助するための補助力として、具体的には、巻取体4の回転体21の回転を補助するための補助力として利用される。これにより、前述した手掛け部6や操作棒を用いた手動操作によってシャッターカーテン1を上方へ開き移動させる際、この開き移動を軽く行うことができる。
図6には、ぜんまいばね26の巻き締め初期の状態が示され、図7には、巻き締め終期の状態が示されている。図6の巻き締め初期では、ぜんまいばね26の外層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触している密巻き部26Cとなっていて、内層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していない粗巻き部26Dとなっており、図7の巻き締め終期では、ぜんまいばね26の外層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していない粗巻き部26Eとなっていて、内層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触している密巻き部26Fとなっている。図6及び図7の密巻き部26C、26Fは、理解の便宜のため、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していない状態で示されている。
ところで、前述のように、中心軸20に結合された巻芯部材27に内端部26Aが係止されてシャッターカーテン1の繰り出しによって巻き締めされるぜんまいばね26は、材料力学上、中心軸20側の一端が固定端となっていて他端が自由端となっている片持ち梁と同じであるとみなすことができる。この片持ち梁の弾性係数をE、断面係数をI、長さをLとし、片持ち梁に曲げモーメント(トルク)Tを作用させたときにこの片持ち梁の自由端にたわみ角度θ(ラジアン)が生じた場合には、材料力学上、T=EIθ/Lなる式が成立する。
そして、ぜんまいばね26の幅寸法をb、厚さ寸法をhとしたとき、ぜんまいばね26の断面係数Iは、I=bh3/12である。また、たわみ角度θはぜんまいばね26の巻回数Nに対応する値であり、巻回数が1回である場合のたわみ角度θは、θ=2πとなる。
このため、ぜんまいばね26の巻回数がNである場合には、上記T=EIθ/Lを、T=πEbh3N/6Lと書き換えることができる。この場合におけるTは、ぜんまいばね26の巻き締めによって生ずるこのぜんまいばね26の戻しばね力による巻回中心回り、すなわち、巻取体4の中心軸20回りのトルクとなる。また、Lは、ぜんまいばね26のうちの巻回数が上記Nとなっている有効長さ、すなわち、巻回されている全長のうちの互いに内外に接触していない部分についての長さとなる。ぜんまいばね26の巻回されている全長のうちの互いに内外に接触している部分には、その接触によって本来のばね力が生じないからである。
ぜんまいばね26の巻き締め初期の状態を示している図6のときには、ぜんまいばね26の巻回されている大部分を占めている外層部は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触している密巻き部26Cとなっているため、このときの上記有効長さLは短い。図6の状態からぜんまいばね26の巻き締めが始まると、上記巻回数Nが増加するとともに、密巻き部26Cから有効長さLとなる分が生じ、この有効長さLが次第に長くなるが、このときには、この有効長さLはまだ短いため、上記の式T=πEbh3N/6Lから分かるように、ぜんまいばね26の戻しばね力によるトルクTは、次第に小さくなる増加率で増加する。
この後、ぜんまいばね26がさらに巻き締められると、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触していた上記密巻き部26Cが次第に消滅するとともに、有効長さLはぜんまいばね26の全長と同じ又は略同じになって、上記巻回数Nだけが増加するため、ぜんまいばね26の戻しばね力によるトルクTの次第に小さくなる増加率は、ぜんまいばね26の巻き締めの進行に伴って一定値又は略一定値まで低下する。すなわち、トルクTは、ぜんまいばね26の巻き締めの進行に伴って直線的又は略直線的に増加するようになる。
この後、さらにぜんまいばね26が巻き締められると、図7の状態に近づくため、ぜんまいばね26の内層部には、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触した密巻き部26Fが生じ始め、この密巻き部26Fは、ぜんまいばね26の巻き締めが進行するに伴って増大するため、前記有効長さLは次第に短くなり、そして、前記巻回数Nは増加するため、ぜんまいばね26の戻しばね力によるトルクTは、上記の式T=πEbh3N/6Lから分かるように、次第に大きくなる増加率で増加し、ぜんまいばね26の巻き締め終期では、図7で示されているように、ぜんまいばね26の巻回されている大部分は、内外径方向に隣接している2つの巻き部が互いに接触した密巻き部26Fとなっている。
図8は、横軸を、ぜんまいばね26を巻き締める巻取体4の回転数とし、縦軸を巻取体4の中心軸20回りのトルクとしたグラフである。この図8には、巻取体4の回転数に対する全部のぜんまいばね26の合計トルクとして表された上記トルクTの変化を示すラインAが示されている。このラインAは、上述の説明から分かるように、図6で示された巻き締め初期を始点として、トルクTが、巻取体4の回転数が増すと、次第に小さくなる増加率で増加する第1領域aと、この領域aに続いてトルクTの増加率が一定値又は略一定値となる第2領域bと、この領域bに続いてトルクTが次第に大きくなる増加率で増加する第3領域cとからなり、この領域cの終点が、図7で示されたぜんまいばね26の巻き締め終期となっている。
また、図8には、ぜんまいばね26の巻き締めに関する巻き締め初期範囲αと中間範囲βとの境界位置と一致しているシャッターカーテン1の全開位置と、中間範囲βと巻き締め終期範囲γとの境界位置と一致しているシャッターカーテン1の全閉位置とが示されている。これらの範囲α、β、γで分かるように、シャッターカーテン1の全開位置は、トルクTが次第に小さくなる増加率で増加する上記第1領域a内にあり、また、シャッターカーテン1の全閉位置は、トルクTの増加率が一定値又は略一定値となっている上記第2領域b内にある。
さらに、図8には、シャッターカーテン1を上向きに開き移動させようとしたときに必要となる巻取体4の中心軸20回りのトルクBも示されている。このトルクBは、巻取体4から繰り出されている図5で示すシャッターカーテン1の部分の自重(座板1Aの重量を含む)Fによる中心軸20回りの自重トルクと、シャッターカーテン1を上方へ開き移動させようとした際に、図1で示したガイドレール2とシャッターカーテン1との摩擦等に基づき生ずる下向きの抵抗力による中心軸20回りの抵抗トルクとの合計値である。シャッターカーテン1の自重Fによる自重トルクは、自重Fと、図5で示す中心軸20の中心部からこの自重Fが作用している位置までの水平距離、言い換えると、中心軸20の中心からのシャッターカーテン1の巻径Rとを積算した値となる。
また、図8には、シャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させようとする巻取体4の中心軸20回りのトルクCも示されている。このトルクCは、巻取体4から繰り出されているシャッターカーテン1の部分の自重Fによる中心軸20回りの自重トルクから、シャッターカーテン1が下向きに閉じ移動しようとしたときにガイドレール2とシャッターカーテン1との摩擦等に基づき生ずる上向きの抵抗力による中心軸20回りの抵抗トルクを差し引いた値となる。
トルクBとトルクCの両方における自重トルクは、上述のように、巻取体4から繰り出されているシャッターカーテン1の部分の自重Fと、中心軸20の中心部からのシャッターカーテン1の巻径Rとの関数となっており、これらの自重Fと巻径Rのいずれも、巻取体4からのシャッターカーテン1の繰り出し量(巻取体4の回転数)と関係している。また、シャッターカーテン1を上向きに開き移動させようとしたときに生ずる上記抵抗トルクと、シャッターカーテン1を下向きに開き移動させようとしたときに生ずる上記抵抗トルクは、図1で示したシャッターカーテン1の上下開閉移動距離Hの全体に亘って一定値又は略一定値となっている。
そして、全開となっていたシャッターカーテン1が、巻取体4が1回転等の所定角度の回転を行って繰り出されたときには、シャッターカーテン1が全開になっているときにおける巻径Rは大きいため、巻取体4のこの所定角度の回転によって下方へ繰り出されるシャッターカーテン1の長さは、シャッターカーテン1が全開となっていないときから始まる巻取体4の所定角度の回転の場合よりも長くなる。このため、シャッターカーテン1を全開から繰り出す巻取体4の所定角度の回転によって上記巻径Rは減少するが、この巻径Rの減少よりも、シャッターカーテン1の下方への繰り出し長さはシャッターカーテン1の自重トルクの増大に貢献することになる。このため、シャッターカーテン1が全開から繰り出されたときには、シャッターカーテン1の自重トルクの増加率は大きい。
なお、シャッターカーテン1の巻径Rは、このシャッターカーテン1を構成している前記スラット1Bの厚さ等の関係により、実際には巻取体4の回転数に対して滑らかに変化しないため、実際のトルクB,Cは図8で示されているようには滑らかなに変化せず、凹凸を生じながら全体として図8のトルクB,Cのように変化する。
本実施形態によると、ぜんまいばね26は、前述したように、蓄圧された戻しばね力によるトルクTが次第に小さくなる増加率で増加する領域aを有するばねとなっており、この領域a内に、巻取体4の一方の回転によるシャッターカーテン1の繰り出しが始まる前の開閉体全開時があり、この開閉体全開時からのシャッターカーテン1の繰り出しに伴ってトルクTが増加するようになっているため、ぜんまいばね26のばね特性は、シャッターカーテン1が全開から下方へ繰り出されるときのシャッターカーテン1の自重トルクの変化、言い換えると、前記抵抗トルクを含むラインB,Cで表された前記トルクの特性と適合しており、このため、シャッターカーテン1をぜんまいばね26の戻しばね力との関係によって円滑に上下に開閉移動させることができる。
シャッターカーテン1の全開からの繰り出しが進行すると、上記巻径Rは減少するため、シャッターカーテン1を下方へ繰り出すために巻取体4が1回転等の前述した所定角度の回転を行ったときのシャッターカーテン1の繰り出し長さは次第に短くなる。このため、シャッターカーテン1の全開からの繰り出しが進行すると、シャッターカーテン1の自重トルクの増加率は一定値又は一定値に近似した値になり、自重トルクの増加率がこのような値になっているときに、本実施形態では、シャッターカーテン1が全閉位置に達するようになっている。
本実施形態のぜんまいばね26は、前記領域aに続いて、トルクTの増加率が一定値又は略一定値となっている前記領域bを有しており、この領域bにおいて、シャッターカーテン1は全閉となるため、シャッターカーテン1の全開からの繰り出しが進行し、シャッターカーテン1が全閉となるまでについても、ぜんまいばね26のばね特性は、シャッターカーテン1の自重トルクの変化、言い換えると、前記抵抗トルクを含むラインB,Cで表された前記トルクの特性と適合している。
図8には、ラインA1、A2が示され、これらのラインA1、A2は、ラインAで示されたぜんまいばね26の理論上の前記トルクTに対して、ぜんまいばね26の現実の材料や巻き込み状態等に基づいて発生するヒステリシスが考慮されたぜんまいばね26のトルクを示しており、ラインA1は、ぜんまいばね26が巻き締められながらシャッターカーテン1が全開位置から全閉位置に達する場合であり、ラインA2は、その反対の場合である。
そして、図8で示されているように、シャッターカーテン1の上下開閉移動距離Hの全体について、ラインA1、A2で示されているトルクよりもラインBで示されたトルクが大きくなっていて、ラインA1、A2で示されているトルクよりもラインCで示されたトルクが小さくなっていることにより、シャッターカーテン1に開き移動操作力や閉じ移動操作力を作用させない状態でシャッターカーテン1を上下開閉移動距離Hの任意な位置に停止させることができ、また、シャッターカーテン1を開き移動させるためには、ラインA1、A2で示されているトルクとラインBで示されたトルクとの差に相当する操作力をシャッターカーテン1に作用させればよくなり、シャッターカーテン1を閉じ移動させるためには、ラインA1、A2で示されているトルクとラインCで示されたトルクとの差に相当する操作力をシャッターカーテン1に作用させればよくなる。
なお、上記操作力は手操作によるものであるが、本実施形態は、この操作力を電動モータ等の駆動装置によるものとした場合にも適用でき、このように上記操作力を電動モータ等の駆動装置によるものとした場合には、この駆動装置の小さな駆動力によってシャッターカーテンを開閉移動させることができる。
図9は、これまでとは異なるばね特性を有するぜんまいばね26を用いた場合の実施形態を示す。この図9において、図8のA,A1,A2,a,b,c,α、β、γと対応するものは、A’,A’1,A’2,a’,b’,c’,α’、β’、γ’として示した。
この実施形態において、ラインA’で表されているぜんまいばね26の戻しばね力によるトルクT(ラインA’1,A’2で表されている前記ヒステリヒスが考慮されたトルクを含む)のシャッターカーテン1の全開時における値は、ラインB,Cで表された前述のトルクのシャッターカーテン1の全開時における値よりも大きくなっている。このため、シャッターカーテン1が全開位置に達すると、シャッターカーテン1の下端部の座板1Aが、図1で説明したシャッターケース3の下面3AのまぐさにトルクTで当接してこの当接状態を維持することになるとともに、シャッターカーテン1を手操作で全開位置の近くまで開き移動させることにより、座板1Aがまぐさに当接する全開位置までシャッターカーテン1はトルクTで自動的に開き移動することになる。
また、この実施形態でも、図8で説明した前記実施形態と同様に、シャッターカーテン1の全開位置は、ぜんまいばね26のトルクTが次第に小さくなる増加率で増加する領域a’内にあり、また、シャッターカーテン1の全閉位置は、ぜんまいばね26のトルクTの増加率が一定値又は略一定値となっている領域b’内にある。
なお、図8及び図9の実施形態において、シャッターカーテン1が全開位置に達しているときに、シャッターカーテン1に予定外の下向きの外部力が作用してもシャッターカーテンが下向きに閉じ移動しないようにするため、巻取体4に、この巻取体4の回転を阻止する手動式のブレーキ装置を設けたり、前記まぐさ等の配置箇所に、座板等のシャッターカーテン構成部材に係脱自在に係合する係合部材を備えた手動式のストップ装置を設けたりし、シャッターカーテン1を下向きに閉じ移動させる際には、手動操作によってこれらのブレーキ装置やストップ装置を解除できるようにしてもよい。
図3の巻取体4を構成するそれぞれのカップ状部材24の内部空間Sに収納配置されていて、戻しばねとなっているぜんまいばね26は、図8で示されたばね特性を有するものでもよく、図9で示されたばね特性を有するものでもよい。
そして、これらのばね特性を有するぜんまいばね26を図1の上下開閉移動距離Hで使用できるようにするためには、シャッターカーテン1の全開時、全閉時等におけるぜんまいばね26の巻き締め状態が図8、図9のトルク特性を実現できるものとなっていなければならず、これを実現できる作業を、ぜんまいばね26について実施しなければならない。この作業は、以下のように行う。
それぞれの回転構造物22の巻芯部材27を図3で示した前記結合具28,29で中心軸20に結合する前に、これらの回転構造物22と前記バー状部材23とで形成された巻取体4の回転を図示しない拘束具等で止めながら、図3で示す工具40によってそれぞれの巻芯部材27を中心軸20に対して回転させ、これにより、カップ状部材24の内部空間Sに収納されているそれぞれのぜんまいばね26を巻き締める。工具40は、巻芯部材27の軸方向端部に前記受け片27Bを切り倒し加工によって形成した際に生ずる切り欠き部41に係合する突起を備えているものであり、工具40を回転操作すると、突起からの回転力によって巻芯部材27は中心軸20を中心に回転する。このような回転操作によってそれぞれのぜんまいばね26は巻き締められ、これらのぜんまいばね26の巻き締めは、言い換えると、これらのぜんまいばね26に戻しばね力を蓄圧する作業は、図8、図9で示されているシャッターカーテン1の全閉時における全部のぜんまいばね26の戻しばね力による巻取体4の中心軸20回りのトルクと同じ大きさのトルクがこれらのぜんまいばね26によって生ずるまで行う。
この後、それぞれの回転構造物22における巻芯部材27を前記結合具28,29で中心軸20に結合するとともに、前記軸受け35の外輪部材35Aに形成されている孔42、内輪部材35Bに形成されている孔43、巻芯部材27に形成されている孔44、さらに中心軸20に形成されている孔にボルトを挿通し、反対側まで貫通させたこのボルトの端部にナットを螺合する。これにより、これらのボルトとナットによる結合具によって巻芯部材27と回転構造物22は中心軸20に固定される。
なお、内輪部材35Bと巻芯部材27の孔43,44は円周方向に複数形成されており、このため、ぜんまいばね26の戻しばね力が所定値となったときにぜんまいばね26の巻き締め作業を終了させても、その戻しばね力又はその戻しばね力に近い戻しばね力を維持した状態で、上記ボルトとナットによる結合具により、巻芯部材27と回転構造物22を中心軸20に固定することができる。また、上記結合具29のボルトを挿通するための巻芯部材27の孔も円周方向に複数形成されている。
次いで、予め座板1Aを取り外したシャッターカーテン1を、図1で示されているシャッターケース3の下面3Aのまぐさに形成されているスリットに上方から吊り落としながら挿入する作業を行い、まぐさの下方に突出したシャッターカーテン1の幅方向両端部を左右のガイドレール2の内部に挿入した後、座板1Aの取り付けを行い、さらにシャッターカーテン1を全閉位置まで降ろす。この後、シャッターカーテン1の上端部を、前述したように、それぞれの回転構造物22のホイール部材25の環状フランジ部25Aに結合する作業を行う。そして、軸受け35の外輪部材35Aの孔42、内輪部材35Bの孔43、巻芯部材27の孔44、さらに中心軸20の孔に挿通されていた前記ボルトから前記ナットを取り外してこのボルトを引き抜く作業を行い、結合具28,29はそのまま残す。
これにより、ぜんまいばね26に蓄圧されていた戻しばね力は解放可能状態となり、それぞれの回転構造物22とバー状部材23からなる巻取体4の回転体21は中心軸20を中心に回転自在となるため、シャッターカーテン1に小さな押し上げ力を与えることにより、巻取体4の回転体21は、ぜんまいばね26の既に蓄圧されていた戻しばね力を回転付勢力として利用しながらシャッターカーテン1を巻き取って開き移動させる回転を行い、シャッターカーテン1は全開位置に達する。
これにより、シャッターカーテン1の全開時、全閉時等における全部のぜんまいばね26の巻き締め状態は、図8、図9のトルク特性を実現できるものとなる。
以上説明した実施形態によると、ぜんまいばね26は、シャッターカーテン1の巻取体4からの繰り出しによって蓄圧される戻しばね力によるトルクTが次第に小さくなる増加率で増加する領域a,a’を有するばねとなっており、この領域内a,a’に、巻取体4の一方の回転によるシャッターカーテン1の繰り出しが始まる前の全開時があり、この全開時からのシャッターカーテン1の繰り出しに伴ってトルクTが増加するようになっているため、シャッターカーテン1が全開から下方へ繰り出されるときのシャッターカーテン1の自重トルクの変化と適合したばね特性を有するぜんまいばね26を用いて、シャッター装置を構成することができる。
ぜんまいばね26は、シャッターカーテンの繰り出しの進行に伴って前記トルクTの増加率が一定値又は略一定値となる領域b,b’を有するばねとなっており、この領域b,b’内にシャッターカーテン1の全閉時があるため、シャッターカーテン1の全開から全閉までの全範囲に亘るシャッターカーテン1の自重トルクの変化と適合したばね特性を有するぜんまいばね26を用いて、シャッター装置を構成することができる。
また、以上説明した実施形態において、図3で説明したように、巻取体4を形成する部材となっているそれぞれの回転構造物22において、ホイール部材25の端面部25Bは、中心軸20の直径方向へ立ち上がった立上り部となっており、また、カップ状部材24の胴部24Cは、中心軸20の軸方向への幅を有する筒部となっており、それぞれの回転構造物22は、このような立上り部25Bと筒部24Cとを有する形状、構造となっている。そして、ぜんまいばね26の折り曲げられた外端部26Bは、図5で説明したように、筒部24Cに形成されている被係止部24Eに係止されており、前述したように、この外端部26Bの折り曲げ方向と、巻芯部材27にスリット27Aに係止されているぜんまいばね26の内端部26Aの折り曲げ方向は、互いに巻取体4の円周方向の反対側となっている。これにより、ホイール部材25の環状フランジ部25Aに巻き取られているシャッターカーテン1を繰り出す方向に巻取体4が中心軸20を中心に回転したときに、ぜんまいばね26を、内端部26Aと外端部26Bがスリット27A、被係止部24Eから外れることなく、巻き締めることができる。
ところで、それぞれの回転構造物22のなかに、立上り部25Bに対する筒部24Cの位置が互いに中心軸20の軸方向の反対側となっている2種類の回転構造物を設けた場合には、これらの回転構造物のうちの一つとして、図3で示された回転構造物22をそのまま用いることができても、他の回転構造物として、図3で示された回転構造物22を、中心軸20の軸方向の向きを反転させてそのまま用いることはできない。なぜなら、中心軸20の軸方向の向きを反転させた回転構造物22については、ぜんまいばね26の外端部26Bを係止するための被係止部24Eの向きが図5の向きとは反対側となってしまい、外端部26Bを被係止部24Eに係止することはできず、ぜんまいばね26を巻き締めることができないからである。
このため、これまで説明した実施形態では、図2で示されているように、それぞれの回転構造物22を、筒部24Cが立上り部25Bに対して中心軸20の軸方向の同じ側となるように配置している。これにより、全部の回転構造物22の形状、構造を同じにでき、これらの回転構造物22を共通化できることにより、巻取体4全体の製造コストの低減や、これらの回転構造物22を中心軸20に配置する際の作業の容易化を達成することができる。
また、本実施形態によると、それぞれの回転構造物22に設けるぜんまいばね26は、巻回方向が同じになっているぜんまいばねでよく、したがって、全部のぜんまいばね26を共通化することもできる。
また、これまで説明した実施形態では、ぜんまいばね26の内端部26Aは中心軸20に係止されておらず、この内端部26Aは、それぞれの回転構造物22ごとに用意された巻芯部材27に係止されているため、1個のぜんまいばね26について、回転構造物22とぜんまいばね26と巻芯部材27とからなるぜんまいばねユニットを形成することができ、複数個のぜんまいばねユニットを中心軸20に配置するだけでそれぞれのぜんまいばね26が中心軸20に配置されたことになり、また、それぞれのぜんまいばねユニットを前述したバー状部材23で連結することにより、前述した回転体21を形成することができ、これらの作業を容易に行える。
さらに、これまで説明した実施形態では、それぞれの回転構造物22は一つの部材によって形成されておらず、立上り部25Bを備える第1部材となっているホイール部材25と、筒部24Cを備える第2部材となっているカップ状部材24とを結合することによって形成されているため、被係止部24Eを有する回転構造物22をプレス加工等によって容易に製造することができる。
また、これまで説明した実施形態における戻しばねはぜんまいばね26であり、ぜんまいばね26は、中心軸20の軸方向の同じ位置又は略同じ位置で一方の端部から他方の端部へ渦巻き状に巻回している渦巻きばねであるため、中心軸20の軸方向の幅寸法は小さく、このため、巻取体4の全体の軸長を短くすることができる。また、ぜんまいばね26は、厚さが小さい板材を渦巻き状に巻回したものであるため、ぜんまいばね26を直径方向の寸法が小さい前記空間Sに収納配置することができ、これにより、巻取体4の全体の直径寸法も小さくできる。
以上説明した実施形態は、ぜんまいばね26が巻取体4の軸方向に複数個配置されたものであったが、図1で示した左右のガイドレール間距離Wが小さい軽量シャッター装置については、ぜんまいばね26の個数を1個、すなわち、ぜんまいばね26が内部に収納配置される前記カップ状部材24とホイール部材25で構成される前記回転構造物22の個数を1個としてもよい。この場合における巻取体4の回転体21は、この回転構造物22のホイール部材25と、このホイール部材25から中心軸20の軸方向に離れて配置され、中心軸20の外周に軸受けで回転自在に配置された別のホイール部材とをバー部材等による連結部材で連結することによって形成されることになる。
上記軽量シャッター装置のシャッターカーテン1が、図1で示した座板1Aと、この座板1Aの上部に連設された多数のスラット1Bとで形成され、また、図1で示したシャッターカーテン1の開閉移動距離Hが図10で示された最大の4mとなっていて、シャッターカーテン1が全閉位置に達しているときに巻取体4から繰り出されて吊り下げ状態となっているスラット1Bの個数をnとした場合に、金属製の座板1Aについての上記W方向の単位長さ(m)当たりの重量f1(単位はN、以下同じ。また、重力加速度は、9.8m/s2とする。)は、f1=1.69×10であって、金属製の1個のスラット1BについてのW方向の単位長さ(m)当たりの重量f2は、f2=4.68であるため、図5で示した巻取体4から繰り出されているシャッターカーテン1の部分についての上記W方向の単位長さ(m)当たりの自重fは、
f=f1+f2×n=1.69×10+4.68×n
となり、nが69であれば、f=3.40×102となる。
そして、図1で示されている左右のガイドレール間距離Wとシャッターカーテンの幅寸法W’との差は0.02mであるため、すなわち、ガイドレール2に対してシャッターカーテン1が円滑にスライドできるように、W’はWよりも0.02m小さく設定されているため、Wが1mである軽量シャッター装置のシャッターカーテンのW’は0.98mとなっている。このため、Wが1mとなっている軽量シャッター装置についての図5で示したシャッターカーテンの自重Fは、
F=3.40×102×0.98=3.33×102
となる。
また、シャッターカーテンが全閉位置に達しているときの図5で示したRが0.15mである場合、全閉となっているシャッターカーテンの自重Fによる巻取体4の中心軸20を中心としたトルクT’(N・m)は、
T’=3.33×102×0.15=5.00×10
となる。
一方、ぜんまいばねの戻しばね力による巻取体の中心軸回りのトルクTは、前述したようにT=πEbh3N/6Lである。ここでぜんまいばねの弾性係数E(N/m2)は、E=2.06×1011であり、また、ぜんまいばねの全長が4mであって、この全長が、図8及び図9で示されているシャッターカーテンの全閉時において、前述した有効長さLとなっており、シャッターカーテンの全閉時のぜんまいばねの巻回数Nが10回である場合には、T(N・m)は、
T=3.14×2.06×bh3×1012/6×4=2.70×bh3×1011
となる。そして、一般的なぜんまいばねの板厚hは0.8mmであるため、h(m)を、h=8×10−4としたとき、Tは、
T=1.38×b×102
となる。
以上のように算出されるTとT’とを等しくするためには、言い換えると、全閉位置に達しているシャッターカーテンに、シャッターカーテン1とガイドレール2との間で生じる摩擦力と同じ程度の小さな持ち上げ力を作用させることによってシャッターカーテンを軽く開き移動させることができるようにするためには、T=T’により、ぜんまいばねの幅寸法b(m)を、b=0.36とすればよいことになる。
シャッターカーテンの幅寸法W’が上述した0.98mとなっている軽量シャッター装置の巻取体4の中心軸20に、この中心軸20の長さ方向の幅寸法が0.36mのぜんまいばねを配置することは充分可能である。
また、この0.36mという値は、上記0.98mに対して充分に余裕のある値であるため、中心軸20の長さ方向の幅寸法が0.36mよりも大きくなっているぜんまいばねを用いることにより、シャッターカーテンを構成している座板やスラットを、前記f1,f2の値が前述した値よりも大きくなっている材料を使用して形成することができ、また、シャッターカーテンの全閉時における図5のRの値を前述した値よりも大きくすることもでき、すなわち、巻取体4の直径を大きくすることもでき、軽量シャッター装置の戻しばねとして充分にぜんまいばねを用いることができる。
もちろん、座板やスラットを、前記f1,f2の値が前述した値よりも小さくなっている材料を使用して形成した場合には、上記トルクT’は、前述した値よりも小さくなるため、戻しばねとしてぜんまいばねを用いることができる。
また、左右のガイドレール間距離Wが0.8mとなっている軽量シャッター装置のシャッターカーテンのW’は0.78mとなり、このシャッターカーテンの自重F、及びこの自重Fに基づく巻取体の中心軸を中心とした上記トルクT’も、前述した値よりも小さくため、W’が0.78mとなっている軽量シャッター装置、言い換えると、Wが図10において最小の0.8mとなっている軽量シャッター装置についても、戻しばねとしてぜんまいばねを用いることができる。
そして、左右のガイドレール間距離Wが0.8mとなっている軽量シャッター装置では、巻取体の中心軸の長さは、左右のガイドレール間距離Wが1mとなっている軽量シャッター装置よりも短くなるが、幅寸法bが0.36mとなっているぜんまいばねをこの中心軸の上に配置することは充分可能である。
さらに、以上の説明は、シャッターカーテンの開閉移動距離Hが、図10において、軽量シャッター装置で最大の4mとなっている場合であり、Hが4mよりも小さい3.2mとなっている軽量シャッター装置では、前述したf及びFの値は前述した値よりも小さくなるため、このような軽量シャッター装置にも、もちろん、戻しばねとしてぜんまいばねを用いることができる。
このため、本実施形態によると、戻しばねとしてねじりコイルばねを用いた場合には実現することはできない又は実現困難となる範囲となっている0.8m≦W≦1mの範囲における3.2m≦H≦4mの範囲、すなわち、図10の破線によるハッチングで示された範囲Xを、戻しばねをぜんまいばねとすることにより、充分実現できることになる。
また、ぜんまいばねの個数を、図2で説明したように複数個とすることにより、前述したT=πEbh3N/6Lにおけるぜんまいばねの幅寸法bを、その個数分だけ実質的に大きくしたことと同じになるため、図10の実線によるハッチングで示された範囲Yをも、ぜんまいばねによってカバーできることになる。
このため、戻しばねをぜんまいばねとすることにより、図10で示されているXとYの両方の範囲について、戻しばね力による補助力をシャッターカーテンに作用させてこのシャッターカーテンを開き移動させることができるようになる。
また、戻しばねが前述したねじりコイルばねとなっている従来の軽量シャッター装置に、戻しばねとしてねじりコイルばねの代わりにぜんまいばねを用いようとした場合、このぜんまいばねを収納することになる従来の軽量シャッター装置における巻取体の内部空間部の直径は、最小のもので0.126m、最大のもので0.156mであり、この内部空間部の中心に挿通される中心軸の直径は、最小のもので0.048m、最大のもので0.064mである。このため、上記内部空間部の直径が最小であって中心軸の直径が最大となっている組み合わせの軽量シャッター装置が、ぜんまいばねを収納するために利用することができる最も小さなぜんまいばね収納空間を有するものとなるが、このぜんまいばね収納空間は、中心軸の中心部からの半径が0.063mとなっている空間であって、中心軸の中心部からの半径が0.032mとなっている部分を除いたものとなり、このようなぜんまいばね収納空間に前述した条件のぜんまいばねを充分収納することができる。
すなわち、前述した条件とは、ぜんまいばねの板厚h(m)がh=8×10−4であって、ぜんまいばねの巻回数Nが10回である場合である。この場合において、ぜんまいばねにおける半径方向に隣接しているそれぞれの巻回部が互いに接触しているとすると、この接触したぜんまいばねの半径方向の厚さ寸法h’(m)は、h’=8×10−4×10=8×10−3=0.008となるが、このようなぜんまいばねを収納する上記ぜんまいばね収納空間の半径方向の寸法h’’(m)は、h’’=0.063−0.032=0.031となり、この0.031mという値は、上記0.008mよりも充分大きいため、ぜんまいばねにおける半径方向に隣接しているそれぞれの巻回部を互いに接触せずに離間させ、これによってぜんまいばねの全長を前述した有効長さになった状態にさせてこのぜんまいばねを上記ぜんまいばね収納空間に充分収納配置することができる。
言い換えると、戻しばねとしてねじりコイルばねの代わりにぜんまいばねを用いる本実施形態を実施しようとした場合には、上述した従来の軽量シャッター装置に用いられている巻取体の基本寸法及び基本構造をそのまま利用することができ、ぜんまいばね向けのための若干の改修を行うだけでよいことになる。
また、上述のようにぜんまいばね収納空間は、中心軸の中心部からの半径が0.063mあればよいため、図4等で示されたバー状部材23の直径を0.01mとし、ホイール部材25及びカップ状部材24の材料となっている板材の厚さをそれぞれ0.001mとした場合、シャッターカーテンを巻き取り、繰り出す巻取体の半径は、0.063mに、バー状部材23の直径と、ホイール部材25及びカップ状部材24の材料となっているそれぞれ板材の厚さとを加えた値である0.075m(直径では0.15m)あればよい。このため、上記巻取体の直径は、少なくとも0.15mまで小さくすることができる。
さらに、巻取体の構造を、図2等で示す本実施形態に係る構造と同じにした場合には、ぜんまいばねを内部に収納するカップ状部材24の軸方向の両側に、巻芯部材27の両端部が突出する空間を確保すればよいため、ぜんまいばねの幅寸法bを、少なくともシャッターカーテンのW’の半分まで大きくすることができる。このため、左右のガイドレール間距離Wが1mとなっている前述の軽量シャッター装置では、前述の0.36mとなっていたぜんまいばねの幅寸法bを0.49mまで大きくすることができる。このように、b=0.49mとすると、ぜんまいばねの戻しばね力による巻取体の中心軸回りのトルクTは、T=πEbh3N/6Lの式から分かるように、b=0.36mのときの1.36倍となるため、シャッターカーテン1の開閉移動距離Hも概略で1.36倍程度大きくすることができ、前述したH=4mをH=5.4m程度まで拡大できる。
そして、ぜんまいばねの幅寸法bをシャッターカーテンのW’の半分まで大きくすることは、W’が任意の値になっているときでも可能(W’が大きい値である場合には、bは、巻取体の軸方向に複数個配置されたぜんまいばねの合計の幅寸法になる。)であるため、H=4mをH=5.4m程度まで拡大することは、W’が任意の値になっているときでも可能である。
なお、以上の説明において、金属製の1個のスラット1BについてのW方向の単位長さ(m)当たりの重量f2(N)が、前述したようにf2=4.68であることは、スラットの板厚t(m)がt=6×10−4のときである。軽量シャッター装置におけるこのtは、t<4×10−4m、8×10−4m<tのものも例外的にあるが、一般的には、4×10−4m≦t≦8×10−4mである。
この範囲のなかでtが最大となっているt=8×10−4mのとき、f2=6.24となるため、H=4mのときの前述したfは、f=4.32×102となり、W=1mで、R=0.15mのときの前述したT’(N・m)は、T’=6.35×10となる。
このようにT’=6.35×10であるときには、H=4mとするために必要となるぜんまいばねの幅寸法b(m)は、b=0.46となる。
すなわち、スラットを、板厚が軽量シャッター装置では最大となっている金属材料を用いて形成しても、ぜんまいばねの幅寸法bは0.46mでよく、このため、戻しばねとしてぜんまいばねを充分採用することができる。
ちなみに、スラットを、板厚tが軽量シャッター装置では最大となっているt=8×10−4mの金属材料を用いて形成し、かつ、ぜんまいばねの幅寸法bを、上述したように、シャッターカーテンのW’の半分とした場合には、前述したH=4mをH=4.26m程度まで拡大できる。
なお、以上は、金属製の座板1AについてのW方向の単位長さ(m)当たりの重量f1(N)が、前述したようにf1=1.69×10であることは、座板の板厚が1×10−3mのときである。この座板の板厚は、1×10−3mに限らず、例えば、その2倍である2×10−3mとすることもできるが、前述したfにおけるf1が占める割合は、前述したように、スラットの板厚t(m)がt=6×10−4、f1(N)がf1=1.69×10、スラットの個数nが69である場合には、5%程度と少ないため、座板の板厚を2×10−3mとしても、上述した拡大できるHの値はそれ程大きく変化しない。そして、Hの値が拡大すると、fにおけるf1が占める割合は一層低下することになるため、上述したHの値に対する差は一層小さくなる。
また、以上の説明は、ぜんまいばねの板厚h(m)がh=8×10−4の場合であったが、軽量シャッター装置では、8×10−4m≦h≦1.2×10−3mの範囲のぜんまいばねを用いることができる。この範囲のなかでh=8×10−4mは最小であり、hが大きくなると、ぜんまいばねの戻しばね力による巻取体の中心軸回りのトルクTは、T=πEbh3N/6Lの式から分かるように、大きくなる。
h=1.2×10−3mとしたときであって、スラットの板厚t(m)をt=6×10−4とし、ぜんまいばねの幅寸法bを前述した0.36mとしたときには、前述したH=4mをH=13.5m程度まで拡大できる。また、bをシャッターカーテンのW’の半分まで大きくしたときには、H=4mをH=18.4m程度まで拡大できる。
また、h=1.2×10−3mとしたときであって、スラットの板厚t(m)を、上述した4×10−4m≦t≦8×10−4mのうちの最小となっているt=4×10−4mとし、ぜんまいばねの幅寸法bを前述した0.36mとしたときには、前述したH=4mをH=14.1m程度まで拡大できる。また、ぜんまいばねの幅寸法bをシャッターカーテンのW’の半分まで大きくしたときには、H=4mをH=19.2m程度まで拡大できる。
さらに、h=1.2×10−3mとしたときであって、スラットの板厚t(m)を、上述した4×10−4m≦t≦8×10−4mのうちの最大となっているt=8×10−4mとし、ぜんまいばねの幅寸法bを前述した0.36mとしたときには、前述したH=4mをH=7.1m程度まで拡大できる。また、ぜんまいばねの幅寸法bをシャッターカーテンのW’の半分まで大きくしたときには、H=4mをH=9.7m程度まで拡大できる。
このように、戻しばねをぜんまいばねとすることにより、軽量シャッター装置に用いられるスラットの金属材料の最大板厚と最小板厚や、ぜんまいばねの最大板厚と最小板厚を考慮しても、図10で示したXとYの両方の範囲をカバーできるとともに、4mを超えるシャッターカーテンの開閉移動距離Hをもカバーできるようになる。
なお、以上の説明は、全長が4mとなっているぜんまいばねの巻回数を、シャッターカーテンの全閉時において10回とした場合であったが、Hが4mを越えるシャッター装置については、前述したRを大きくすることにより、4m<Hについても、全長が4mとなっているぜんまいばねの巻回数が10回となったときにシャッターカーテンを全閉とすることができる。また、このようにRが大きくなると、前述したT’の値が大きくなるが、このT’の値の増大に対しては、前述したbの値、さらにはhの値を大きくすることによって対処することができ、Rの値とbの値、さらにはhの値の調整により、図10で示したXとYの両方の範囲はもちろんのこと、4m<Hについてもカバーですることが可能となり、さらにこの場合において、hの値の調整により、前述したように、bの値を前記W’の半分以内とすることも可能となる。