JP4709793B2 - 鋼矢板および壁体ならびに鋼矢板の施工方法 - Google Patents
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Description
本発明は、既存の圧延設備で製造でき、加工による溶接熱ひずみの発生を押さえ、経済的で高い剛性・強度の鋼矢板を提供すると共に、それを使用した経済的で高い剛性・強度の壁体ならびに前記鋼矢板の施工方法を提供することを目的とする。
また、第2発明の鋼矢板においては、断面で巾方向一端側に嵌合用継手を有し他端側に嵌合継手を備えていない鋼矢板構成圧延部材であって、前記鋼矢板構成圧延部材はその幅方向両端部の間で複数箇所折り曲げ部が設けられ、幅方向の断面で、一端側に嵌合用継手を有し、その嵌合用継手に接続する下フランジと、その下フランジの他端側から一体に突出するように屈曲連設されたウェブと、そのウェブの他端側から一体に屈曲連設された上フランジとを備えた断面構造の鋼矢板構成圧延部材とされ、前記嵌合用継手を除いて前記ウェブの接触面で線対称となる2枚の鋼矢板構成圧延部材を前記ウェブの部分で背中合わせに接触するように対称、かつ嵌合用継手が幅方向の両端部に位置するように配置され、前記ウェブ相互を、溶接またはボルトあるいはドリルねじのいずれかの連結手段により一体化したことを特徴とする。
また、第3発明の鋼矢板においては、断面で巾方向一端側に嵌合用継手を有し他端側に嵌合継手を備えていない鋼矢板構成圧延部材であって、前記鋼矢板構成圧延部材はその幅方向両端部の間で複数箇所折り曲げ部が設けられ、幅方向の断面で、一端側に嵌合用継手を有し、その嵌合用継手に接続する下フランジと、その下フランジの他端側から一体に突出するように屈曲連設された下ウェブと、その下ウェブの他端側から一体に屈曲連設された中フランジと、その中フランジの他端側から突出するように屈曲連設された上ウェブとを備えた断面構造の鋼矢板構成圧延部材とされ、前記嵌合用継手を除いて前記上ウェブの接触面で線対称となる2枚の鋼矢板構成圧延部材を前記上ウェブの部分で背中合わせに接触するように対称、かつ嵌合用継手が幅方向の両端部に位置するように配置され、前記上ウェブ相互を、溶接またはボルトあるいはドリルねじのいずれかの連結手段により一体化したことを特徴とする鋼矢板。
また、第4発明では、第2又は第3発明の鋼矢板において、上フランジと下フランジとが平行に設けられていることを特徴とする。
また、第5発明では、第1〜第4発明の鋼矢板において、鋼矢板相互の嵌合用継手を嵌合した場合に、嵌合用継手に接続するフランジが直線状に配置可能な嵌合用継手を有することを特徴とする。
また第6発明の壁体においては、第1〜第5発明のいずれかの鋼矢板を用いられていることを特徴とする。
また、第7発明の鋼矢板の施工方法においては、鋼矢板構成圧延部材におけるウェブを互いに背中合わせに重合されて連結された第1発明〜第5発明のいずれかの鋼矢板における前記ウェブを互いに背中合わせに重合された部分を把持して、鋼矢板を地盤に打設することを特徴とする。
(1)嵌合用継手を除いて、2枚の対称な鋼矢板構成圧延部材を連結する際、連結手段として溶接を採用した場合でも、溶接により鋼矢板(または鋼矢板構成圧延部材)の断面を変形させてしまうことがないため、矯正作業の手間がなくなる。
(2)鋼矢板の断面高さ方向で、構造上弱点となる溶接等による異なる部材の連結箇所が無く、部材の全断面が有効に抵抗部材となるため、大きな曲げ/せん断荷重に耐え得る高耐力・高剛性の鋼矢板とすることができる。
(3)既存の製造設備の範囲内で、溶接加工/プレス成形との組み合わせにより、壁体を構築する場合の壁厚方向の鋼矢板の断面高さの高い高剛性断面を有する鋼矢板を容易に製造することができ、また、その元となる鋼矢板構成圧延部材は現存の製造設備で製造が容易である。
(4)単に、鋼矢板構成圧延部材を組み合わせるだけで、幅広の鋼矢板とすることができるため、壁体を構築する場合、鋼矢板の枚数を少なくすることができ、現場での鋼矢板の打設回数を大幅に減らすことができる。
(5)鋼矢板構成圧延部材におけるウェブを互いに背中合わせに重合されて連結された部分を把持して、鋼矢板を地盤に打設するので、鋼矢板の重心に近い位置を把持することになり、安定した状態で、鋼矢板を地盤に打設することができる施工方法が可能になる。
第1形態の鋼矢板構成圧延部材1a,1bは、図1に一点鎖線で示す、現存の製造設備における最大寸法である幅が900mm、高さが300mmの範囲内において、壁厚方向の寸法および壁体幅方向の寸法が大きくなるように製造する場合の最終加工された状態を示している。
前記の下フランジ3の幅方向他端側から一体に、嵌合用継手2の溝側に鈍角で突出するように傾斜すると共に嵌合用継手2から離反するように傾斜するように下ウェブ24が屈曲形成され、その下ウェブ24に一体に、かつ下フランジ3と平行に中フランジ25が一体に屈曲連設され、その中フランジ25に一体に、かつ前記中フランジ25に直角で嵌合用継手2の溝側に屈曲して突出するように上ウェブ26が設けられ、さらに前記上ウェブ26に一体に嵌合用継手2側に鈍角で屈曲する上フランジ4が、順次一体に連設された断面構造の鋼矢板構成圧延部材1aとされている。
また、このような鋼矢板構成圧延部材1aに対称に組合される他方の鋼矢板構成圧延部材1bは、嵌合用継手2における溝が、表裏対称となるように形成された溝である点以外は、前記の鋼矢板構成圧延部材1aと同様な構成である。
上ウェブ26の幅方向両端部の外側における溶接位置11bと、中フランジ25と下ウェブ24の交差部28aとの距離Laは、溶接のど厚6mm程度の溶接量を想定するとその熱影響範囲外とするためには、100mm程度以上とするのが好ましい。
図示の形態では、最上部の上ウェブ26相互の接触面で線対称な鋼矢板構成圧延部材1a,1b相互を組合せて鋼矢板1が構成されている。
例えば、これまでの最大寸法実績として、圧延にて製造されるハット形鋼矢板が市販されているが、幅Wの寸法が900mm、高さTが300mmとなっており、本発明の鋼矢板もこの範囲内に入っていれば、新たに設備を増設することなく、既設設備を流用することができ経済的となる。
前記の下フランジ3と上フランジ4の2箇所のフランジの間で、複数箇所、図1においては、4箇所折り曲げ部を設けた構造としている。各辺の長さ及び板厚は、高い断面性能が発揮できるよう、現存の圧延設備における幅が900mm、または高さが300mmの範囲でほぼ最大になるよう設計にて設定する。
なお、本発明では、鋼矢板構成圧延部材とは、圧延部材そのもの、圧延部材製作後、これにロール曲げ加工を付加したもの、あるいはプレス加工を施したものを含む。
図4では、溶接による連結方法を示しているが、図5に示すように、上ウェブ26相互をボルト12とナット13を用いて、鋼矢板構成圧延部材1a,1bの両者を連結しても構わない。
また、図示は省略するが、ドリルねじを用いて鋼矢板構成圧延部材1a,1b(14a,14b)を連結しても構わない。いずれの方法で連結する場合でも、施工時に2枚の鋼矢板構成圧延部材1a,1b(14a,14b)が離れしまわないよう、施工時荷重に耐えうるだけの、溶接で連結する場合はのど厚,溶接長さを、ボルトまたはドリルねじで連結する場合は、断面積,本数を設計にて調整する。
なお、前記の鋼矢板1(14)の打設施工時の施工時荷重は、壁体設計上、鋼矢板に見込まれる設計荷重に比べて、格段に小さいものであるので、上下方向の溶接は、前記の施工時荷重をクリアできればよいため、鋼矢板の長手方向の全長に渡る溶接は必要なく、鋼矢板長手方向に断続した部分溶接でよいものである。
圧延可能範囲としては、従来のハット形鋼矢板を参考として、幅W(900mm)×高さT(300mm)の範囲内での限界に近い寸法同士で比較としている。
比較のために、当該圧延可能範囲で製造可能となるZ形鋼矢板の場合、及び市販のハット形鋼矢板(10H、25H)も図示している。
甲虫形の本発明の鋼矢板1、及びZ形鋼矢板の断面の設定に際しては、従来のハット形鋼矢板25Hと同程度の条件とするために、継手幅分を含む上下のフランジ幅を150mm、上下フランジ板厚を13mm、その他のウェブの板厚を9mmとしている。
本発明のH形の鋼矢板14においては、板厚を11mmで均一とし、上フランジ幅を300mmと一定としている。その結果、本発明の図6に示すような甲虫形の鋼矢板1においては、既存の圧延製造設備を用いて、従来のハット形鋼矢板では断面高さ300mmしか実現できなかったが、断面高さ500〜900mm程度を確保することができ、従来のハット形鋼矢板のみならず、断面2次モーメントが50000cm4/mとなる高い断面性能の領域では、Z形鋼矢板の組合せ鋼矢板よりもより、重量(kg/m2)あたりの剛性が高い、より経済的な鋼矢板を実現できることがわかる。
また、本発明のH形形状の鋼矢板14の場合には、図12の検討の範囲内で、断面高さ600mmまで確保でき、従来のハット形鋼矢板よりも経済的な鋼矢板を実現できることがわかる。
なお、図12では、本発明の甲虫形の鋼矢板1の仮定寸法として、高さ、幅、及び下フランジ3の下ウェブ24に対する傾斜角θ(度)(図6参照)を25度、50度、60度、75度と変化させた場合(上フランジ4の上ウェブ26に直角な横線に対する傾斜角θ1は(90−θ)度である)を記載し、従来のZ形あるいはH形では矢板の高さ寸法と矢板の幅寸法とを変化させた場合を記載した。
また、本発明の甲虫形の鋼矢板1と比較するZ形鋼矢板による組合せ鋼矢板の仮定条件として、上下のフランジ幅(嵌合用継手を含む)を150mmで一定、上下のフランジ板厚が13mmで一定、ウェブの板厚9mmで一定と仮定して比較している。
1a 本発明の鋼矢板を構成する片方の鋼矢板構成圧延部材
1b 1aと組み合わせるもう一方の鋼矢板構成圧延部材
2 嵌合用継手部
2a ハット形鋼矢板と同じ嵌合用継手
2b ハット形鋼矢板と同じ嵌合用継手
2c 嵌合用継手部
2d 嵌合用継手部
3 下フランジ(嵌合用継手部を有するフランジ)
4 上フランジ(嵌合用継手部がないフランジ)
5 連結箇所となる平坦部
5a 連結箇所となる一方の鋼矢板の平坦部
5b 連結箇所となる他方の鋼矢板の平坦部
6 圧延可能範囲
9 嵌合用継手部がないフランジの曲げ加工
10 嵌合用継手部がないフランジの曲げ加工の状態
11a 溶接箇所
11b 溶接箇所
12 ボルト
13 ナット
14 多角形状の折り曲げ箇所を2箇所にした場合のH形状の鋼矢板
14a 多角形状の折り曲げ箇所を2箇所にした場合の2枚のうち一方の鋼矢板構成圧延部材
14b 多角形状の折り曲げ箇所を2箇所にした場合の2枚のうち他方の鋼矢板構成圧延部材
15 U形鋼矢板とH形鋼とを組み合わせて一体化した従来のY型形状の鋼矢板
16 左右非対称継手を有する従来のハット形状鋼矢板
17 H形鋼
19 U形鋼矢板とH形鋼とを組み合わせて一体化した従来のA型形状の鋼矢板
20 従来のZ形鋼矢板
21 従来のZ形鋼矢板の嵌合後の状態
22 従来のZ形鋼矢板の嵌合部
23 既存の鋼矢板用圧延設備
24 下ウェブ
25 中フランジ
26 上ウェブ
27 ウェブ
28 フランジとウェブの交差部
28a 中フランジと下ウェブの交差部
29 H形鋼とU形鋼矢板との溶接部
31 H形鋼フランジ端部
H1 断面高さ
W 圧延可能範囲の最大幅
T 圧延可能範囲の最大高さ
β 交差角度
L 交差部からH形鋼フランジ端部までの距離
La 交差部から溶接部までの距離
θ 下フランジ−下ウェブ間角度
Claims (7)
- 断面で巾方向一端側に嵌合用継手を有し他端側に嵌合継手を備えていない鋼矢板構成圧延部材であって、前記鋼矢板構成圧延部材はその幅方向両端部の間で複数箇所折り曲げ部が設けられ、かつ前記嵌合用継手を除いて幅方向の両端部にフランジを有すると共に幅方向中間部にウェブを備えた鋼矢板構成圧延部材が用いられ、前記嵌合用継手を除いて前記ウェブの接触面で線対称となる2枚の鋼矢板構成圧延部材をウェブの部分で背中合わせに接触するように対称に、かつ嵌合用継手が幅方向の両端部に位置するように配置され、前記ウェブ相互を、溶接またはボルトあるいはドリルねじのいずれかの連結手段により一体化したことを特徴とする鋼矢板。
- 断面で巾方向一端側に嵌合用継手を有し他端側に嵌合継手を備えていない鋼矢板構成圧延部材であって、前記鋼矢板構成圧延部材はその幅方向両端部の間で複数箇所折り曲げ部が設けられ、幅方向の断面で、一端側に嵌合用継手を有し、その嵌合用継手に接続する下フランジと、その下フランジの他端側から一体に突出するように屈曲連設されたウェブと、そのウェブの他端側から一体に屈曲連設された上フランジとを備えた断面構造の鋼矢板構成圧延部材とされ、前記嵌合用継手を除いて前記ウェブの接触面で線対称となる2枚の鋼矢板構成圧延部材を前記ウェブの部分で背中合わせに接触するように対称、かつ嵌合用継手が幅方向の両端部に位置するように配置され、前記ウェブ相互を、溶接またはボルトあるいはドリルねじのいずれかの連結手段により一体化したことを特徴とする鋼矢板。
- 断面で巾方向一端側に嵌合用継手を有し他端側に嵌合継手を備えていない鋼矢板構成圧延部材であって、前記鋼矢板構成圧延部材はその幅方向両端部の間で複数箇所折り曲げ部が設けられ、幅方向の断面で、一端側に嵌合用継手を有し、その嵌合用継手に接続する下フランジと、その下フランジの他端側から一体に突出するように屈曲連設された下ウェブと、その下ウェブの他端側から一体に屈曲連設された中フランジと、その中フランジの他端側から突出するように屈曲連設設された上ウェブとを備えた断面構造の鋼矢板構成圧延部材とされ、前記嵌合用継手を除いて前記上ウェブの接触面で線対称となる2枚の鋼矢板構成圧延部材を前記上ウェブの部分で背中合わせに接触するように対称、かつ嵌合用継手が幅方向の両端部に位置するように配置され、前記上ウェブ相互を、溶接またはボルトあるいはドリルねじのいずれかの連結手段により一体化したことを特徴とする鋼矢板。
- 請求項2又は3に記載の鋼矢板において、上フランジと下フランジとが平行に設けられていることを特徴とする鋼矢板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼矢板において、鋼矢板相互の嵌合用継手を嵌合した場合に、嵌合用継手に接続するフランジが直線状に配置可能な嵌合用継手を有することを特徴とする鋼矢板。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の鋼矢板を用いられていることを特徴とする壁体。
- 鋼矢板構成圧延部材におけるウェブを互いに背中合わせに重合されて連結された請求項1〜5のいずれかの鋼矢板における前記ウェブを互いに背中合わせに重合された部分を把持して、鋼矢板を地盤に打設することを特徴とする鋼矢板の施工方法。
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