JP6022435B2 - 面材・ブレース併用耐力壁 - Google Patents

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この発明は、建築物の外壁等として用いられる面材・ブレース併用耐力壁に関する。
低層建築物の耐力壁では、耐力要素として引張り型耐力ブレースを用いることが多い。例えば、柱・梁接合部はピン接合とし、地震等による水平力に対しては、柱間に配置される外壁パネルにおいて、引張り力のみ負担するブレースで負担する構造形式(パネル併用軸組構造)である。
引張り型耐力ブレースは、比較的軽量な鋼材を用いて安価に生産できる特長を持つ一方、荷重・変形履歴(復元力特性)は、「スリップ型」の特性を示す。スリップ型の欠点としては、次の点が挙げられる。
・大地震の際、ブレースが塑性化して伸びた後、地震による揺れ戻しの力が作用したとき、伸びた分だけブレースが水平力に全く抵抗しない。
・そのため、揺れ戻し時には、建物が逆方向の水平力に対してブレースで抵抗するまで、何の抵抗力も持たないままで水平に動くことになり、ブレースが抵抗し出すときに衝撃を生じる。このことは、住人が建物に対する不安や不満を持つ一要因となり得る。
図28は、スリップ型の挙動履歴を示す代表的な例であり、ピン接合の縦フレーム材101、横フレーム材102の間に引張り力のみを示すブレース103を入れた耐力壁100である。前記縦フレーム材101および横フレーム材102は、例えば、それぞれ柱、梁である。水平荷重Pによる押しの時はブレース103が抵抗するが、引き戻し時にブレース103が何の抵抗もしない。図29に完全スリップ型履歴の耐力壁における、繰り返荷重作用時の変形−荷重グラフを示す。変形δを戻す向きに力を掛けたとき、ブレースが力を負担しないので、滑るように変形(スリップ)する。
これらの問題を解決する為には、「紡錘型」の履歴を持つラーメン架構が一般的には有効である。ただし、ラーメン架構は、柱・梁を剛接合とするために、厚肉の柱を用いる必要があるので、コストや鋼材量の面では不利となる。圧縮ブレースを用いた耐力壁も紡錘型となるが、圧縮ブレースは一般的に断面寸法が大きくなり、コスト面で不利となる。
図30は、紡錘型の挙動履歴を示す代表的な例を示す。同図は、圧縮ブレース103A入りの耐力壁100Aである。この例では、引き戻すときにもブレース103Aが水平力に抵抗する。図31は完全紡錘型履歴の耐力壁の繰り返荷重作用時の変形−荷重グラフである。スリップ型に比べ、引き戻しときにもブレース103Aが抵抗するので、より多くのエネルギーを吸収することができる(グラフで囲まれた面積がエネルギー吸収量を示し、この面積が大きい)。
このように、引張り型耐力ブレースは、スリップ型の挙動となってエネルギー吸収力が少なく、揺れ戻し時に衝撃が生じ、またラーメン架構や圧縮ブレース使用の架構は、鋼材使用量やコスト面で不利となる。そのため、鋼材量が少なくて済み、かつ紡錘型の履歴を示す架構の開発が必要となる。
紡錘型履歴を示し、軽量鉄骨等の安価な材料を用いた耐力壁としては、耐力要素に波形鋼板を用いたメンブレン型耐力壁がある(例えば、特許文献1)。
メンブレン型耐力壁は、一例を示すと、図32のように、壁面を複数(4分割または6分割)に区画し、各区画層に折板104を用いている。地震時に、水平力に対しては折板104がエネルギーを吸収する機構となっている。同耐力壁は、実験により適切な条件下では紡錘型に近い挙動を示すことが確認されている。
特開2010−090650号公報
耐力要素に折板を用いたメンブレン型耐力壁は、鋼材量が少なくて済み、紡錘型の履歴を示すという点で優れるが、次の課題がある。
・耐力壁の全面に折板104を張るため、設備開口用等の孔を得ることができない。孔を開けることで耐力性能低下が予測される。耐力壁に設備開口用の孔を設けないようにするには、建物のプランが制約される。建築物建築計画においては、やむなくその耐力壁位置に開口部(給・排気用貫通口、採光用開口等)を設けなくてはならないこともある。
・切り欠かれた設備開口部分を、施工現場において同様な折板を増し張りする補強方法が先行技術として提案されているが、その施工の手間、品質保持、施工管理上等の現場省略施工の観点から、採用するには難がある。
・仮に折板104に設備開口用の孔を開けて補強したとしても、その部分の剛性評価方法が確立されていない。
そこで、本出願人は、図33に示すように、メンブレン型耐力壁において、設備開口を設ける部分については、折板を用いるのではなく、ブレース105を耐力要素して組み込んだ構成を提案した(例えば、特願2013−038631号)。しかし、次の点で今一つ満足することができない。
すなわち、ブレース105で構成される区画層と折板104で構成される区画層の剛性が異なるため、縦フレーム材に曲げ応力が発生してしまう。具体的には、図34(A)のように地震が来て水平力Pがかかったときに、同図(B)のように耐力壁の各区画層の剛性が同じであると、各区画層の変形が同じとなり、縦フレーム材101に曲げが入らない。しかし、同図(C)のように、折板104を用いた区画層に対してブレース105を用いた区画層の剛性が高くて曲がり難いと、折板104を用いた区画層とブレース105を用いた区画層との間の部分106で縦フレーム材101に曲げ応力が発生してしまう。
この場合、縦フレーム材101に地震時の負荷(曲げ)応力を考慮した構造計算が必要であり、構造計算が煩雑となる。このため、煩雑な構造計算を必要とせずに、鉛直方向の荷重(圧縮、引張り)のみを受けるようにしたい。この為には、折板104を用いた区画層とブレース105を用いた区画層の剛性(単位変形量当たりの力の大きさ)を合わせる必要がある。
この発明の目的は、エネルギー吸収性能に優れながら、鋼材使用量が少なくて済み、また性能低下や施工上の不利を生じることなく開口部分を設けることができ、かつ異なる種類の耐力要素を用いることにより生じる縦フレーム材の腰折れ状の性状を簡易に防止することができる面材・ブレース併用耐力壁を提供することである。
この発明の面材・ブレース併用耐力壁は、左右の縦フレーム材と、これら左右の縦フレーム材の上端間および下端間にそれぞれ接合された上下端の横フレーム材と、前記左右の縦フレーム材間に接合された中桟となる横フレーム材とを備え、前記中桟となる横フレーム材を境界として上下に並ぶ複数の区画層に区画され、各区画層に耐力要素が設けられた耐力壁であって、
一部の区画層に設けられた前記耐力要素がこの区画層を覆う面材であり、他の一部の区画層に設けられた前記耐力要素が斜材であり、前記斜材設けられた区画層に、この区画層の変形を吸収する変形吸収手段設けられ、前記斜材が設けられた区画層は、前記変形吸収手段が存在することで、前記面材が設けられた区画層と同様の剛性であることを特徴とする。
この構成の面材・ブレース併用耐力壁によると、上下に並ぶ複数の区画層に分け、一部の区画層の耐力要素を面材としたため、その区画層において、紡錘型に近い履歴を示しエネルギー吸収性能に優れた構成となる。他の一部の区画層における耐力要素は斜材としたため、その区画層に、耐力の低下や施工上の不利を伴うことなく、設備用や採光用等の開口部を設けることができる。斜材を用いた区画層は、そのままでは面材を用いた区画層に比べて剛性が高くなるが、この区画層の変形を吸収する変形吸収手段を設けたため、面材を用いた区画層と同様の剛性となるように調整できる。そのため、耐力要素して面材を用いる区画層と斜材を用いる区画層を併用しながら、異なる種類の耐力要素を用いることにより生じる縦フレーム材の腰折れ状の性状を防止することができる。変形を吸収する変形吸収手段を用いるため、この変形吸収手段によって区画層の剛性調整ができ、各フレーム材や斜材の強度を変えて構造設計で区画層の剛性の調整を行う場合と異なり、煩雑な構造計算を行うことなく、簡単に剛性が調整できる。
このように、紡錘型に近い履歴を示しエネルギー吸収性能に優れながら、鋼材使用量が少なくて済み、また性能低下や施工上の不利を生じることな開口部分を設けることができ、かつ異なる種類の耐力要素を用いることにより生じる縦フレーム材の腰折れ状の性状を簡易に防止することができる。
なお、この面材・ブレース併用耐力壁は、壁パネルとして構成されたものであっても、また現場組立されたものであっても良い。壁パネルとして構成されたものである場合、前記縦フレーム材は、それぞれ建築物の柱となるものであっても、またパネル併用軸組み構造の建築物等において、柱とは別に設けられる壁パネル内のフレーム材であっても良い。また、前記変形吸収手段は、変形吸収専用に設けられて自身が変形するデバイスに限らず、前記横フレーム材やブレース等の材質や接合位置の関係によって、これら横フレーム材や斜材の全体または一部が変形吸収機能を持つようにしたものであっても良い。
この発明において、前記変形吸収手段は、この変形吸収手段を有する区画層に2本設けられた互いに傾斜方向が逆の前記斜材の交点、または前記区画層に設けられた前記斜材の中間に位置する構成としても良い。
斜材の交点、中間のいずれに設ける場合も、前記変形吸収手段による区画層の剛性の調整が容易に行える。
この発明において、前記面材が波形鋼板であっても良い。前記耐力要素とする面材は、波型形鋼板に限らず、スキンパネルや耐力合板等であっても良いが、波形鋼板であると、面内せん断力が負荷された場合に、その波形の山部が稜線方向と交差する方向に歪むことにより、前記面内せん断力に対してスリップ性状のない安定したエネルギー吸収が行える。そのため、紡錘型により一層近い履歴を示す。
この発明において、前記区画層は4つであり、前記面材を用いた区画層、および前記斜材を用いた区画層を、それぞれ最低1箇所以上有する構成としても良い。
前記区画層の高さを低くすると、耐力要素となる面材の面積を小さくでき、取扱性が良くなるが、日本建築学会「鋼構造設計規準」において隅肉溶接部で有効に応力伝達する為には、接合部材同士の角度が60度超120度未満である必要があるとされている。この為ブレースの水平面に対する傾斜角度は60度よりも大であることが好ましい。一般的な建築物における1つの階層の高さは2700mm程度であり、パネル幅は1モジュール(建物の基準寸法であり、800〜1100mm内で適宜に設定される)とされるため、耐力壁の一般的な横幅を考慮すると、区画層は4つであることが好ましい。
この発明において、前記斜材用いられた少なくとも一つの区画層における前記斜材は、互いに逆方向に傾斜しかつ一端が互いに近づく2本であり、前記変形吸収手段は、前記2本の斜材の軸心の交点、これら斜材の近づき側の端部を接合する前記横フレーム材に対して上または下に偏心した構成であっても良い。
この場合に、前記2本の斜材の近づき側の端部を、前記横フレーム材に対してこの横フレーム材の長手方向に互いに離れた位置で接合し、この2本の斜材の近づき側の端部を接合しても良い。すなわち、2本の斜材が横フレーム材における接合箇所よりも延長する位置で交差するように、その交点を偏心させる。
また、前記2本の斜材の近づき側の端部を、前記横フレーム材に接合された取合プレートに、前記横フレーム材から上下方向に離れた位置で、かつ互いの交点で接合した構成としても良い。この場合、2本の斜材が横フレーム材に対して互いに手前位置で交差するように偏心する。
これら、延長位置および手前位置のいずれで偏心する場合も、斜材の軸力による横フレーム材の全体の偏心曲げ変形によるエネルギー吸収を行う。
剛性の調整は、交点が前記延長位置となる構成の場合は、2本の斜材の横フレーム材における接合箇所間の距離で調整できる。交点が前記手前位置となる構成の場合は、前記取合プレートの水平方向のプレート幅と、横フレーム材に対する前記交点の偏心距離で前記剛性の調整が行える。
この発明において、前記変形吸収手段が、変形吸収専用に設けられて自身が変形するデバイスであっても良い。
前記変形吸収手段が、それ自身が変形するデバイスであると、このデバイスの大きさ、形状の調整によって、容易に前記区画層の剛性を調整することができる。
この発明の面材・ブレース併用耐力壁は、左右の縦フレーム材と、これら左右の縦フレーム材の上端間および下端間にそれぞれ接合された上下端の横フレーム材と、前記左右の縦フレーム材間に接合された中桟となる横フレーム材とを備え、前記中桟となる横フレーム材を境界として上下に並ぶ複数の区画層に区画され、各区画層に耐力要素が設けられた耐力壁であって、一部の区画層に設けられた前記耐力要素がこの区画層を覆う面材であり、他の一部の区画層に設けられた前記耐力要素が斜材であり、前記斜材設けられた区画層に、この区画層の変形を吸収する変形吸収手段設けられ、前記斜材が設けられた区画層は、前記変形吸収手段が存在することで、前記面材が設けられた区画層と同様の剛性であるため、紡錘型に近い履歴を示しエネルギー吸収性能に優れながら、鋼材使用量が少なくて済み、また性能低下や施工上の不利を生じることなく開口部分を設けることができ、かつ異なる種類の耐力要素を用いることにより生じる縦フレーム材の腰折れ状の性状を簡易に防止することができる。
この発明の一実施形態に係る面材・ブレース併用耐力壁の正面図、水平断面図、および平面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁の面材の拡大断面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁の面材と横フレーム材の関係を示す部分斜視図である。 面材・ブレース併用耐力壁が2枚隣合う部分の拡大水平断面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における面材の部分拡大断面図および部分拡大斜視図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における上端の角部付近を示す拡大正面図、同破断側面図、および平面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における下端の角部付近を示す拡大正面図、および同破断側面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における斜材および面材を使用した区画層および変形吸収手段の各種配置例を示す模式正面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における斜材を用いた区画層の各種構成例を示す正面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における斜材を用いた区画層の一例を示す正面図とその作用を示す図とを組み合わせた説明図である。 同区画層の部分拡大正面図および部分拡大側面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における斜材を用いた区画層の他の例を示す正面図とその作用を示す図とを組み合わせた説明図である。 同区画層の部分拡大正面図および部分拡大側面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における斜材を用いた区画層のさらに他の例を示す正面図とその作用を示す図とを組み合わせた説明図である。 同区画層の斜材とデバイスの関係を示す部分斜視図である。 同区画層の部分拡大正面図および部分拡大側面図である。 図16の部分拡大図、XVIIB- XVIB 矢視図、およびXVIIC- XVIC 矢視図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における斜材を用いた区画層のさらに他の例を示す正面図とその作用を示す図とを組み合わせた説明図である。 同区画層の部分拡大正面図および部分拡大側面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における斜材を用いた区画層のさらに他の例を示す正面図とその作用を示す図とを組み合わせた説明図である。 同区画層の部分拡大正面図および部分拡大破断側面図である。 同区画層の分解斜視図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における斜材を用いた区画層のさらに他の例を示す正面図とその作用を示す図とを組み合わせた説明図である。 同区画層の部分拡大正面図および部分拡大側面図である。 同面材・ブレース併用耐力壁における斜材を用いた区画層のさらに他の例を示す正面図とその作用を示す図とを組み合わせた説明図である。 一般的な鋼材の焼鈍前と焼鈍後の荷重/変形履歴を模式化し焼鈍による効果を記載した図である。 焼鈍の効果を示すための斜材を用いた区画層の説明図である。 従来のブレースを用いた耐力壁の水平力作用前後の説明図である。 同耐力壁の変形履歴の説明図である。 従来の圧縮ブレース構造の耐力壁の水平力作用前後の説明図である。 同耐力壁の変形履歴の説明図である。 従来の耐力要素に面材を用いた耐力壁の正面図である。 提案例に係る耐力壁の正面図である。 同提案例に係る耐力壁の作用説明図である。
この発明の実施形態を図面と共に説明する。図1に示すように、この面材・ブレース併用耐力壁1(以下、単に「耐力壁1」と略称する場合がある)は、矩形に組まれた枠体2を、中桟となる複数の横フレーム材6をそれぞれ境界として、上下に並ぶ複数の区画層a,bに区画し、一部の区画層aに耐力要素として面材7を設け、他の区画層bに耐力要素として斜材8を設けている。斜材8を設けた区画層bには、この区画層bの変形を吸収する変形吸収手段9を設けている。同図の例では、4つの区画層に等分割し、上下端の区画層bに斜材8が設けられ、中間の2つの区画層aに面材7が設けられている。
枠体2は、左右の縦フレーム材3,3と、これら左右の縦フレーム材3,3の上端間および下端間にそれぞれ接合された上下端の横フレーム材4,5と、前記左右の縦フレーム材3,3間に接合された中桟となる横フレーム材6とを備える。横フレーム材6は、3本が等間隔に設けられている。
なお、この面材・ブレース併用耐力壁1は、外壁パネル等の壁パネルとして構成されているが、軸組工法建物の一部となる壁として構成されたものであっても良い。また、縦フレーム材3は、建築物の柱となる部材であっても、またパネル併用軸組み工法建物等において、柱とは別に設けられて柱に沿って設けられる部材であっても良い。前記柱は、壁に内蔵される柱であっても良い。
左右の縦フレーム材3,3には形鋼が用いられ、図示の例では角パイプ(角形鋼管とも言う)が用いられている。上下端の横フレーム材4,5は、縦フレーム材3よりも断面が細い形鋼、例えば図6,図7に示すように角パイプが用いられ、縦フレーム材3の室内側面に揃うように接合される。図1において、中桟となる横フレーム材6は、上下端の横フレーム材4,5と同様な形鋼、例えば角パイプが用いられる。中桟となる横フレーム材6は、この他に、図3,図5(B)の例のように、2本の溝形鋼を背合わせに接合した形鋼を用いても良い。なお、この明細書の各実施形態で用いる形鋼は、いずれも軽量形鋼である。縦フレーム材3と各横フレーム材4,5,6との接合は、例えば横フレーム材4,5,6の端面を縦フレーム材3の端面に突き合わせて溶接する接合形式とされている。
前記耐力要素となる面材7には、波形鋼板からなる波板を用いている。この波板からなる面材7は、一方向に延びる山部7aと谷部7b(図2,図3)とが交互に並ぶ断面波形の鋼板であり、ここでは波山稜線方向が上下方向に延びるように、すなわち波の山部7aおよび谷部7bの延びる方向が上下方向となるように前記区画層aに張られている。この波板からなる面材7は、この例ではデッキプレートが用いられており、波山となる山部7aの頂部および波谷となる谷部7bの底部が平坦部分となる断面矩形または台形である。前記波板からなる面材7の上下端は、図3に示すように、その谷部7bが、各横フレーム材4,5,6に、ビス等の固着具または溶接等で固定されている。なお、各区画層aの前記波板からなる面材7は、それぞれ個別に製造されたものであっても良いし、1枚の波板が切断されたものであっても良い。
前記耐力要素となる面材7が波板であると、面内せん断力が負荷された場合に、その波形の山部が稜線方向と交差する方向に歪むことにより、前記面内せん断力に対してスリップ性状のない安定したエネルギー吸収が行える。そのため、紡錘型により一層近い履歴を示す。
前記波板の他に、図5に示すように平坦な板材を用いても良い。この場合、例えば前記面材7として、スキンパネルや耐力合板を使用しても良い。
図1において、斜材8は、角パイプまたはその他の形鋼からなり、個々の区画層bに互いに逆方向に傾斜しかつ互いに一端が近づくように2本設けられている。図1の例では、上端の区画層bの2本の斜材8は、上端が互いの近づき側端とされて、上端の横フレーム材4に接合され、下端が互いの広がり側端とされて、縦フレーム材3または中桟となる横フレーム材6に接合されている。また、下端の区画層bの2本の斜材8は、下端が互いの近づき側端とされて、下端の横フレーム材5に接合され、上端が互いの広がり側端とされて、縦フレーム材3または中桟となる横フレーム材6に接合されている。斜材8の各フレーム材への接合は、図1の例では前記変形吸収手段9となる部材、または接合部材10を介して行っているが、直接に溶接等で溶接しても良い。2本の斜材8の互いに広がり側の端部は、図1では縦フレーム材3に接合した例を図示しているが、図7に示す例では、横フレーム材5の端部付近に接合している。他の横フレーム材4,6に接合する場合も、図7の例と同様である。図7以降の各図の例では、2本の斜材8の広がり側の端部を横フレーム材4,5,6の端部付近に接合した例を示している。
図4は、2枚の面材・ブレース併用耐力壁1,1の隣接部付近の拡大水平断面を、外装材等を施した外壁パネルとして構成した状態で示す。枠体2の屋外側には合板からなる下地材41および空気層42を介して外装面材43が張られ、枠体2内の前記波板からなる面材7を張った箇所にはこの面材7の両面にグラスウール等の断熱材44,45が充填されている。枠体2の屋内側には内装面材46が張られる。2枚の面材・ブレース併用耐力壁1,1の隣合う縦フレーム材3の屋外側および屋内側には、グラスウールボード等からなる柱部断熱面材47が張られている。
図8は、耐力要素として面材7を設けた区画層aと、斜材8を設けた区画層bとの配置、および変形吸収手段9の配置の各例を示している。いずれも、区画層a,bの数は合計で4つとし、面材7を設けた区画層aと斜材8を設けた区画層bとは2箇所ずつとしている。図8(A)は、図1の実施形態の例である。
図8(B)の例は、斜材8を設けた区画層bを中央側の2箇所とし、これらの区画層aでは、いずれも2本の斜材8は上端側が交点側となり、交点の付近に変形吸収手段9を配置している。
図8(C)の例は、同図(B)の例と同じく、斜材8を設けた区画層bを中央側の2箇所としているが、中央側2箇所の区画層bにおいて、斜材8の傾斜方向が互いに逆であり、上側の区画層bの斜材8と下側の区画層の斜材8とが一直線上に位置してX形を成すように配置されている。変形吸収手段9は、4本の斜材8の交点に配置している。この場合、変形吸収手段9は、各区画層b毎に別々に設けても、一つで2つの区画層bの変形を吸収する構成としても良い。
図8(D)の例は、斜材8を設けた区画層bを上下端に配置し、その区画層bにおいて斜材8は対角線方向に延びる1本ずつとしている。また、変形吸収手段9は、斜材8の長手方向の中央に配置している。
図8(E)の例は、図8(D)の例と同じく、斜材8は対角線方向に延びる1本とし、その中央に変形吸収手段9を設けているが、斜材8を設けた区画層bを、面材・ブレース併用耐力壁1の中央側の2箇所としている。
なお、斜材8の中間に設けられる変形吸収手段9は、例えば、斜材8の長手方向の一部を細く形成し、または熱処理することで変形吸収機能を持たせた箇所とされる。
図8の例ではいずれも、区画層a,bの合計を4つとしたが、区画層a,bの合計は、例えば3つとしても、また5つとしても良い。また、耐力要素として面材7を設けた区画層aの個数と、斜材8を設けた区画層bの個数は互いに異なっていても良い。例えば、全ての区画層の個数が4つであり、斜材8を設けた区画層bを1箇所として、残り3つを面材7を有する区画層aとしても良い。
ただし、一般的な低層の建築物に適用する場合であって、斜材8を区画層bに2本逆傾斜に設ける場合、区画層a,bの合計は4つ以下とすることが好ましい。これは、接合部の隅肉溶接部で有効に応力負担する為に、斜材8の水平面に対する傾斜角度を60°以上とするためである。例えば、面材・ブレース併用耐力壁1の高さが、建築物の1つ階高の高さ(例えば.2700mm程度)、幅が1モジュール(800〜1000mm)である場合、区画層a,bの合計数を5つ以上にすると、斜材8の上記傾斜角度が60°以下となる。
これら各実施形態の構成の面材・ブレース併用耐力壁1によると、上下に並ぶ複数の区画層a,bに分け、一部の区画層aの耐力要素を面材7としたため、その区画層aにおいて、紡錘型に近い履歴を示しエネルギー吸収性能に優れた構成となる。他の一部の区画層bにおける耐力要素は斜材8としたため、その区画層bに、耐力の低下や施工上の不利を伴うことなく、設備用や採光用等の開口部(図示せず)を設けることができる。斜材8を用いた区画層bは、そのままでは面材7を用いた区画層aに比べて剛性が高くなるが、この区画層bの変形を吸収する変形吸収手段9を設けたため、面材7を用いた区画層aと同様の剛性となるように容易に調整できる。そのため、耐力要素して面材7を用いる区画層aと斜材8を用いる区画層bを併用しながら、異なる種類の耐力要素を用いることにより生じる縦フレーム材3の腰折れ状の性状を防止することができる。変形を吸収する変形吸収手段9を用いるため、この変形吸収手段9によって区画層bの剛性調整ができ、各横フレーム材4〜6や斜材8の強度を変えて構造設計で区画層a,bの剛性の調整を行う場合と異なり、煩雑な構造計算を行うことなく、簡単に剛性が調整できる。
このように、紡錘型に近い履歴を示しエネルギー吸収性能に優れながら、鋼材使用量が少なくて済み、また性能低下や施工上の不利を生じることなく開口部分を設けることができ、かつ異なる種類の耐力要素を用いることにより生じる縦フレーム材3の腰折れ状の性状を簡易に防止することができる。
次に、変形吸収手段9について具体的に説明する。変形吸収手段9は、変形吸収専用に設けられて自身が変形するデバイスであっても良く、また前記横フレーム材4〜6や斜材8等の材質や接合位置の関係によって、これら横フレーム材4〜6や斜材8の全体または一部が変形吸収機能を持つようにしたものであっても良い。
図9(A)〜(G)は、変形吸収手段9の構成が互いに異なる区画層bの例をそれぞれ示す。同図において、破線の円で囲った箇所は、変形吸収手段9を配置した箇所を示す。同図の各例は、いずれも互いに傾斜方向が逆となりかつ上側の端部が互いに近づく2本の斜材8を有し、これら2本の斜材8の近づき側端の付近に変形吸収手段9を設けた例である。同図(A)〜(C)、(F)は、変形吸収手段9が、変形吸収専用に設けられて自身が変形するデバイスである例をそれぞれ示し、同図(D),(E)、(G)は、2本の斜材8の交点を横フレーム材4(5,6)に変形吸収機能を持たせた各例をそれぞれ示す。なお、前記横フレーム材が上端の横フレーム材4である場合につき説明するが、下端の横フレーム材5の場合、および中桟となる横フレーム材6の場合も、上端の横フレーム材4の場合と同様である。以下、同図の各例を具体的に説明する。
図9(A)〜(C)の例は、図10〜図17に示すように、いずれも変形吸収手段9がデバイス9A,9B,9Cであって、このデバイス9A,9B,9Cは、区画層bの横フレーム材4(5,6)と斜材8の端部との間に設けられていて、横フレーム材4(5,6)に対して垂直な複数の鋼製の縦板12を有する。このうち、図9(A)の例は、図10,図11に拡大して示すように、上下に離れてそれぞれ斜材8の端部および横フレーム材4(5,6)に接合される水平鋼板13,14と、これら上下の水平鋼板13,14間に接合されて互いに横フレーム材4(5,6)の長手方向に並ぶ複数の前記垂直な鋼製の縦板12とでなる。水平鋼板13,14と垂直な縦板12とは、溶接により接合されている。垂直な縦板12は、等間隔で3枚並べられている。2本の斜材8は角パイプからなり、それぞれ上端面を下側の水平鋼板14の下面に溶接により接合している。上側の水平鋼板13の上面は、横フレーム材4(5,6)の下面に溶接により接合されている。
この構成の場合、エネルギー吸収は、デバイス9Aにおける縦板12のせん断変形により主に行い、またこのデバイス9Aが接合された横フレーム材4(5,6)の曲げ変形によっても行われる。区画層bの全体の剛性調整は、デバイス9Aにおける縦板12の厚さ、長さh、および奥行きにより行う。
図9(B),(C)の例は、それぞれ図12,図13、または図14〜図17に拡大して示すように、いずれも、変形吸収手段9となるデバイス9B,9Cが、角パイプを輪切りにした形状を有し、その管壁となる一対の対向する板部が前記縦板12となる。図9(B)、図12,図13の例では、前記角パイプの輪切り状のデバイス本体9Baの下面に鋼板からなる水平な接合用板16が溶接され、この接合用板16の下面に斜材8の上端面が溶接により接合されている。
この構成の場合、エネルギー吸収は、デバイス9Bにおける縦板12のせん断変形により主に行い、またこのデバイス9Bが接合された横フレーム材4(5,6)の曲げ変形によっても行われる。区画層bの全体の剛性調整は、デバイス9Bにおける角パイプの板厚、断面サイズ、および輪切り厚さにより行う。
図9(C)、図14〜図17の例では、前記角パイプの輪切り状のデバイス本体9Caの下面の中央に、鋼板からなる垂直な接合用板17が前記縦板12と平行な方向で溶接されている。一対の斜材8は、その上端がデバイス本体9Caの下面と前記垂直な接合用板17の側面とに沿うように切断加工されて、これらデバイス本体9Caの下面と接合用板17の側面とに溶接により接合される。
この構成の場合も、エネルギー吸収は、デバイス9Cにおける縦板12のせん断変形により主に行い、またこのデバイス9Cが接合された横フレーム材4(5,6)の曲げ変形によっても行われる。区画層bの全体の剛性調整は、デバイス9Cにおける角パイプの板厚、断面サイズ、および輪切り厚さにより行う。この構成の場合、角パイプを輪切りにした形状の部材を前記デバイス9Cに用いるため、このデバイス9Cの製造が簡単に行える。
このように前記図9(A),図10,図11の例、図9(B),図12,図13の例、または図9(C),図14〜図17の例のように、エネルギー吸収を行うデバイス9A,9B,9Cを設けることにより、次の各利点が得られる。
・耐力壁1の区画層bごとの剛性調製を容易に行うことができる。
・水平力エネルギーの吸収を行うことができる。
・耐力壁1内の波形鋼板等からなる面材7による区画層aと斜材8の区画層bの剛性を同じにすることにより、部分的な剛性低下を防ぐことができる。
・耐力壁1の両端部の縦フレーム材3が腰折れの性状とならず、耐力壁1の両端の縦フレーム材3に曲げモーメントが伝達されることを防ぐことができる。
これら図9(A)〜(C)の例において、斜材を設けた区画層bが耐力壁1の最上層または最下層に配置される場合は、斜材が接合された耐力壁1の上端または下端に位置する横フレーム材4,5と、この耐力壁1を設置する建物躯体の梁30(図10)との間に、前記横フレーム材4,5が変形する寸法以上の隙間dを設けることが必要である。
横フレーム材4,5が変形したときに建物躯体の梁30と干渉すると、前記横フレーム材4,5の変形が妨げられ、結果的に剛性が上がってしまうが、前記横フレーム材4,5が変形する寸法以上の隙間を設けることで、変形が妨げられることが防止され、区画層4bの適切な剛性が保持される。
図9(D)〜(G)の各例においても、上記と同様に隙間dを設ける。
図9(D),(E)の例は、いずれも、前記変形吸収手段9は、2本の斜材8の軸心の交点Cを、これら斜材8の近づき側の端部を接合する前記横フレーム材4(5,6)に対して上下に偏心させた構成である。このうち、図9(D)の例は、図18,図19に拡大して示すように、2本の斜材8の互いの近づき側の端部を、横フレーム材4(5,6)に対してこの横フレーム材4(5,6)の長手方向に互いに離れた位置Eで接合している。2本の斜材8は、この例では、上端面を横フレーム材4(5,6)の下面に溶接により接合している。
この構成の場合、水平力に対し、斜材8の軸力(圧縮力、引張り力)による横フレーム材4(5,6)の全体の偏心曲げ変形によりエネルギー吸収を行う。剛性調整は、偏心距離B(ここで言う偏心距離Bは、2本の斜材8,8の横フレーム材4(5,6)に対する接合点の位置E,E間の距離)、および横フレーム材4(5,6)の断面の変更で行う。
図9(E)の例は、図20〜図22に拡大して示すように、2本の斜材8の近づき側の端部を、横フレーム材4(5,6)に接合された取合プレート19に、前記横フレーム材4(5,6)から上下方向に離れた位置で、かつ互いの交点Cで接合している。具体的には、横フレーム材4(5,6)の前後厚さの中心位置で上下に貫通させた取合プレート19を溶接等で接合し、取合プレート19に設けた一つのボルト孔20の位置で、2本の斜材8の上端を取合プレート19の表裏両面にそれぞれ重ね、これら2本の斜材8に設けられたボルト孔22と取合プレート19のボルト孔20とに渡って挿通したボルトおよびナット(いずれも図示せず)により、2本の斜材8と取合プレート19とを接合している。
各斜材8は、図22のように、2本のリップ溝形鋼等の細長鋼材8a,8bを背合わせに溶接した構成とし、互いに片方の線状鋼材8bを取合プレート19の近傍で切除して先端付近を相欠き形状としている。これにより、2本の斜材8の壁出入り方向の位置を互いに同じ位置としながら、中央の1枚の取合プレート19の表裏に接合可能としている。また、リップ溝形鋼からなる非切除側の線状鋼材8aの先端に、対向するリップ間に渡るボルト孔22付きの板23を接合し、前記ボルト・ナットのボルト頭およびナット裏面を当接させている。他方の長尺鋼材8bの端部には補強板24を接合している。また、斜材8の他端は、取合いプレート25を介して横フレーム材6(4,5)に接合している。
この構成の場合、図18、図19の例と同様に、水平力に対し、斜材8の軸力(圧縮力、引張り力)による横フレーム材4(5,6)の全体の偏心曲げ変形によりエネルギー吸収を行う。剛性調整は、取合プレート19のプレート幅、この取合プレート19と斜材8とのボルト取り合い位置、および/または横フレーム材4(5,6)の断面の変更で行う。
これら図9(D),(E)の偏心により変形吸収手段9を構成した場合も、次の各利点が得られる。
・耐力壁1の区画層aごとの剛性調製を容易に行うことができる。
・水平力エネルギーの吸収を行うことができる。
・耐力壁1内の波形鋼板等からなる面材7による区画層aと斜材8の区画層bの剛性を同じにすることにより、部分的な剛性低下を防ぐことができる。
・耐力壁1の両端部の縦フレーム材3が腰折れの性状とならず、耐力壁1の両端の縦フレーム材3に曲げモーメントが伝達されることを防ぐことができる。
図9(F)の例は、図23、図24に拡大して示すように、変形吸収手段9となるデバイス9Dが、2本の斜材8,8の互いに近づき側の端部を接合した接合部材27を前記横フレーム材4(5,6)と接合する束材26により構成される。具体的には、このデバイス9Dは、束材26とこの束材26の下面に溶接した接合部材27とでなり、前記束材26は角パイプを縦に配置した構成とされている。接合部材27は、束材26と同様な角パイプを横に配置して構成される。2本の斜材8,8は、その上端面を前記接合部材27の下面に突き合わせて溶接により前記接合部材27に接合されている。
この構成の場合、水平力に対し、エネルギー吸収はデバイス9Dの束材26の曲げモーメントM1による曲げ変形により主に行われ、また横フレーム材4(5,6)の曲げモーメントM2による曲げ変形によっても行われる。斜材8を設けた区画層bの全体の曲げ剛性は、デバイス9Dの束材26の長さ、断面、の変更、および/または横フレーム材4(5,6)の断面の変更により行う。
このように、前記図9(F)、図23,図24の例のようなエネルギー吸収を行うデバイス9Dを設けた場合も、次の各利点が得られる。
・耐力壁1の区画層bごとの剛性調製を容易に行うことができる。
・水平力エネルギーの吸収を行うことができる。
・耐力壁1内の波形鋼板等からなる面材7による区画層aと斜材8の区画層bの剛性を同じにすることにより、部分的な剛性低下を防ぐことができる。
・耐力壁1の両端部の縦フレーム材3が腰折れの性状とならず、耐力壁1の両端の縦フレーム材3に曲げモーメントが伝達されることを防ぐことができる。
この例の場合も、斜材8を設けた区画層bが耐力壁1の最上層または最下層に配置される場合は、デバイス9A〜9Cが接合された耐力壁1の上端または下端に位置する横フレーム材4,5と、この耐力壁1を設置する建物躯体の梁30(図23)との間に、前記横フレーム材4,5が変形する寸法以上の隙間dを設けることが必要である。
横フレーム材4,5が変形したときに建物躯体の梁30と干渉すると、前記横フレーム材4,5の変形が妨げられ、結果的に剛性が上がってしまうが、前記横フレーム材4,5が変形する寸法以上の隙間を設けることで、変形が妨げられることが防止され、区画層4bの適切な剛性が保持される。
図9(G)は、2本の斜材8の互いの近づき側の端部を接合する横フレーム材4(5,6)に焼鈍材を用いることで、前記変形吸収手段9とした例を示す。具体的には、図25に示すように、前記横フレーム材4(5,6)に焼鈍した角パイプを用いている。また、図9(D)の例と同様に、2本の斜材8の互いの近づき側の端部を、横フレーム材4(5,6)に対してこの横フレーム材4(5,6)の長手方向に互いに離れた位置Eで接合している。2本の斜材8は、上端面を横フレーム材4(5,6)の下面に溶接により接合している。
なお、焼鈍とは、加熱した後に徐冷するという処理であり、成分の拡散促進、内部応力の除去等のために行う熱処理法の一つである。
この例では、横フレーム材4(5,6)に焼鈍材を用いることによりエネルギー吸収量を増大させている。斜材8の軸力による横フレーム材4(5,6)の全体の偏心曲げによりエネルギー吸収を行う。区画層bの剛性の調整は、剛性調整は、図9(D)の例と同様に、偏心距離B(ここで言う偏心距離Bは、2本の斜材8,8の横フレーム材4(5,6)に対する接合点のE,E間の距離)、および/または横フレーム材4(5,6)の断面の変更で行う。
図26は一般的な鋼材の焼鈍前(市中品)と焼鈍後の荷重/変形履歴を模型化し、焼鈍による効果を記載した図である。焼鈍で同図に示すように一次設計用の耐力を下げ、かつ鋼材の靱性を向上させることより、エネルギー吸収量を増大させつつ、周辺部材の断面増大を抑えることができる。同図のように降伏点は下がるが、靱性は向上するので、エネルギー吸収量(グラフの曲線で囲まれた面積)は増加する。
焼鈍は、焼入れと焼きなましを行う処理であり、次の特徴がある。
・比較的板厚が薄い軽量形鋼は、鉄鋼製品として圧延加工されたままの一次製品ではなく、冷間圧延することで製品化している。
・これは、冷間成形により加工された軽量形鋼はその寸法精度に高い要求があるためである。
・この冷間圧延の過程では内部応力等によりひずみ硬化が起こった為、硬く(強度が強く)ねばり強さが劣る状態となっている。一般的に規格値(JIS規格等)では、降伏点等の下限値のみで定めているため、市中材の冷間鋼材は降伏点等の強度が規格値よりも上回っているものが多い。
・焼鈍は、鋼に所定の熱を加えて鋼を硬くした上で徐々に冷し、鋼を構成する結晶を調質することで内部応力除去や、そのねばり強さを向上させる効果が得られる熱処理加工である。
・焼鈍前の機械的性質は、規格値(降伏点、破断強度)を大きく上回っている。
・一方、所定の温度による焼鈍加工を行うことで、降伏点が規格値に近づき、ねばり強さが向上する。
この実施形態の場合、次の各利点が得られる。
・耐力壁1の区画層bごとの剛性調製を容易に行うことができる。
・水平力エネルギーの吸収を行うことができる。
・耐力壁1内の波形鋼板等からなる面材7による区画層aと斜材8の区画層bの剛性を同じにすることにより、部分的な剛性低下を防ぐことができる。
・耐力壁1の両端部の縦フレーム材3が腰折れの性状とならず、耐力壁1の両端の縦フレーム材3に曲げモーメントが伝達されることを防ぐことができる。
・焼鈍材を用いることにより、更なるエネルギー吸収が見込める。
なお、前記各デバイス9A〜9Dを設ける場合に、これらデバイス9A〜9Dを焼鈍しても良く、また横フレーム材4(5,6)の焼鈍と前記デバイス9A〜9Dの設置等の、焼鈍以外の変形吸収手段9とを併用しても良い。
1…面材・ブレース併用耐力壁
2…枠体
3…縦フレーム材
4,5…横フレーム材
6…横フレーム材(中桟)
7…面材(耐力要素)
7a…山部
7b…谷部
8…斜材(耐力要素)
9…変形吸収手段
9A〜9D…デバイス
9Ba,9Ca…デバイス本体
10…接合部材
12…縦板
13,14…水平鋼板
16…接合用板
17…接合用板
19…取合いプレート
20,22…ボルト孔
30…梁
a,b…区画層
d…隙間
C…交点

Claims (8)

  1. 左右の縦フレーム材と、これら左右の縦フレーム材の上端間および下端間にそれぞれ接合された上下端の横フレーム材と、前記左右の縦フレーム材間に接合された中桟となる横フレーム材とを備え、前記中桟となる横フレーム材を境界として上下に並ぶ複数の区画層に区画され、各区画層に耐力要素が設けられた耐力壁であって、
    一部の区画層に設けられた前記耐力要素がこの区画層を覆う面材であり、他の一部の区画層に設けられた前記耐力要素が斜材であり、前記斜材設けられた区画層に、この区画層の変形を吸収する変形吸収手段設けられ、前記斜材が設けられた区画層は、前記変形吸収手段が存在することで、前記面材が設けられた区画層と同様の剛性であることを特徴とする面材・ブレース併用耐力壁。
  2. 請求項1に記載の面材・ブレース併用耐力壁において、前記変形吸収手段は、この変形吸収手段を有する区画層に2本設けられた互いに傾斜方向が逆の前記斜材の交点、または前記区画層に設けられた前記斜材の中間に位置する面材・ブレース併用耐力壁。
  3. 請求項1または請求項2に記載の面材・ブレース併用耐力壁において、前記面材が波形鋼板である面材・ブレース併用耐力壁。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の面材・ブレース併用耐力壁において、前記区画層は4つであり、前記面材を用いた区画層、および前記斜材を用いた区画層を、それぞれ最低1箇所以上有する面材・ブレース併用耐力壁。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の面材・ブレース併用耐力壁において、前記斜材用いられた少なくとも一つの区画層における前記斜材は、互いに逆方向に傾斜しかつ一端が互いに近づく2本であり、前記変形吸収手段は、前記2本の斜材の軸心の交点、これら斜材の近づき側の端部を接合する前記横フレーム材に対して上または下に偏心した構成である面材・ブレース併用耐力壁。
  6. 請求項5に記載の面材・ブレース併用耐力壁において、前記2本の斜材の近づき側の端部を、前記横フレーム材に対してこの横フレーム材の長手方向に互いに離れた位置で接合し、この2本の斜材の近づき側の端部を接合した前記横フレーム材自体が前記変形吸収手段となる面材・ブレース併用耐力壁。
  7. 請求項5に記載の面材・ブレース併用耐力壁において、前記2本の斜材の近づき側の端部を、前記横フレーム材に接合された取合プレートに、前記横フレーム材から上下方向に離れた位置で、かつ互いの交点で接合した面材・ブレース併用耐力壁。
  8. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の面材・ブレース併用耐力壁において、前記変形吸収手段が、変形吸収専用に設けられて自身が変形するデバイスである面材・ブレース併用耐力壁。
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