JP4707895B2 - チップ抵抗器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チップ抵抗器に係り、特に多数のチップ部品を収納したバルクカセットから該チップ部品の表裏を選択することなく回路基板に実装する、いわゆるバルク実装に好適なチップ抵抗器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4(a)は従来の厚膜チップ抵抗器の構造例を示す。従来のチップ抵抗器は、アルミナ等の絶縁性基板11の表面両端部に厚膜電極13,13を備え、この電極間に厚膜抵抗体15が配置されている。抵抗体15はガラス絶縁膜および樹脂絶縁膜からなる保護膜17により被覆され保護されている。絶縁性基板11の両端部である表面の電極13と裏面の電極19および側端面の端面電極16にはめっき電極23,23が形成されている。
【0003】
この場合、基板中央部の保護膜17の部分の高さがめっき電極部23の高さよりも高くなる。絶縁性基板11の表面側のめっき電極23と保護膜17のそれぞれの表面間の段差が30−50μm程度発生している場合が多い。
【0004】
ところで、従来のチップ抵抗器は、工場出荷の際にテープに1個ずつ、抵抗体が存在する面を表面として固定するいわゆるテーピングによる荷姿で出荷される場合が多い。そして、回路基板に実装する際には、そのままの状態で、即ち、抵抗体が存在する面(保護膜側)を表面として実装機(マウンタ)により回路基板に固定されていた。この場合には、図4(b)に示すように回路基板25のランド部27に絶縁性基板11の電極23,23の裏面側が密着し、はんだリフロー等による固定が行われる。
【0005】
しかしながら、実装方法にはバルクカセットに多数のチップ部品をランダムな状態で収容し、このチップ部品を一個ずつバルクカセットから取り出して回路基板に実装する、いわゆるバルク実装が存在する。係る実装方式によれば、チップ部品を回路基板に装着するに際して、チップ部品の表裏を選択することなく、チップ部品の面実装が行われる。
【0006】
従って、図4(a)に示す従来のチップ抵抗器をバルク実装機にてバルク実装した場合に、図4(b)に示すように、チップ抵抗器の裏面側が回路基板25に面するように実装される場合には、通常の実装方法と同じであるので、特に問題は生じない。しかしながら、図4(c)に示すように、チップ抵抗器の表面側(保護膜側)が回路基板25に面するように裏向きに実装される場合が発生する。この時、チップ抵抗器が傾いて実装される可能性が強く、最悪の場合、片側のはんだ付けができない、または、図4(d)に示すように、チップ立等の現象が発生するという問題がある。従って、従来のチップ抵抗器は、いわゆるバルク実装には対応できないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した事情に鑑みて為されたもので、実装に際してチップ部品の表裏を選択しない、いわゆるバルク実装に対応が可能なチップ抵抗器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、絶縁性基板と、該絶縁性基板の表面に形成された抵抗体及び少なくとも一対の電極と、前記抵抗体を被覆する保護膜と、前記電極上に形成されためっき電極と、を備えたチップ抵抗器であって、前記絶縁性基板の両端部に絶縁層を形成することにより、前記めっき電極の上面の高さが、前記保護膜の上面の高さよりも高く又は同一となるように構成され、前記絶縁層は、ガラス材料とセラミック材料との混合材料からなる、ことを特徴とするチップ抵抗器を構成した。この構成により、めっき電極の上面の高さを確保できるので、回路基板へ搭載しやすくなるとともに、絶縁層の絶縁性基板への密着性、絶縁層のパターンの保形性及び機械的強度を向上させることができる。
【0009】
前記絶縁層は、前記絶縁性基板と同質のセラミック材料及びガラス材料の混合材料により形成してもよい。この構成により、絶縁性基板と絶縁層の熱膨張係数を近似した値にしやすくなるため、熱膨張係数の違いから発生する応力を緩和し、絶縁層により形成された凹部の機械的強度を向上させることができる。
【0010】
該絶縁性基板の表面の電極と、前記絶縁性基板の裏面の裏面電極と、前記絶縁性基板の側面の端面電極が形成され、前記めっき電極は、前記電極、前記裏面電極及び前記端面電極上に形成されていてもよい。この構成により、表裏の区別無く回路基板に搭載可能となる。
【0011】
前記混合材料は、セラミック材料の配合比が約50wt%以上であることが望ましい。この構成により、絶縁層のパターンの保形性を確保できる。又、前記混合材料は、前記絶縁性基板と同等の熱膨張係数を有することが望ましい。この構成により、熱膨張係数の違いから発生する応力を緩和し、絶縁層により形成された凹部の機械的強度を向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るチップ抵抗器の実施形態について図1乃至図3を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態におけるチップ抵抗器の全体構成を示す図である。
【0013】
このチップ抵抗器のアルミナ等の絶縁性基板11には、その表面の両端部にそれぞれ凸状絶縁物層31(絶縁層)が形成されている。この凸状絶縁物層31は厚さ20−50μmで形成されている。かかる凸状絶縁物層31は、後述の如く電極13を嵩上げするための嵩上げ部を構成する。
【0014】
凸状絶縁物層31は、セラミック材料とガラス材料の混合材料であり、絶縁性基板11表面の端部にスクリーン印刷し、600℃から1300℃で焼き付けたものである。ガラス材料はアルミナ等の絶縁性基板11に近い又はこれより小さい熱膨張係数を有する材料が好ましい。セラミック材料は、アルミナ、ジルコニア等を用いることができる。好ましくは、絶縁性基板11と同質の材料、即ち、アルミナを絶縁性基板11を用いた場合には、セラミック材料としてアルミナを用いることが望ましいが、同質の材料を用いなくてもよい。混合材料にはガラス材料が含まれているため、混合材料と絶縁性基板11との密着性が確保できる。また、セラミック材料が含まれているために、印刷された凸状絶縁物層のパターン形状が焼成工程で崩れることを防止し、保形性を確保することができる。かかる保形性の確保にはセラミック材料が50wt%以上含まれていることが望ましい。また、ガラス材料とセラミック材料の混合割合により凸状絶縁物層31の熱膨張係数が調整可能であり、かかる熱膨張係数は、絶縁性基板11の熱膨張係数と近似させたものとすることが望ましい。かかる混合割合は、ガラス材料が50から40wt%に対して、セラミック材料は50から60wt%とすることが望ましい。
【0015】
凸状絶縁物層31,31上には電極13,13が配置され、電極13,13間に抵抗体15が配置されている。抵抗体15は酸化ルテニウム等の厚膜ペーストのスクリーン印刷によるパターン形成後に焼成することにより形成され、厚さ10−15μm程度に形成することが好ましい。従って、抵抗体15は一対の凸状絶縁物層31,31間の凹部に配置され、電極13,13に接続されている。
【0016】
抵抗体15はガラス絶縁膜17aおよび樹脂絶縁膜17bからなる2層の保護膜17により被覆され保護されている。ガラス絶縁膜17aおよび樹脂絶縁膜17bからなる保護膜17は一対の凸状絶縁物層31,31間の凹部に配置されている。ガラス絶縁膜17aは厚さ15−20μm程度に形成することが好ましく、樹脂絶縁膜17bは厚さ20μm程度に形成することが好ましい。
【0017】
絶縁性基板11の側端面にはニッケルクロム(Ni−Cr)のスパッタリング等により形成された端面電極21が形成されている。基板表面側の電極13および裏面側の電極21、さらに基板側端面の端面電極21にはめっきにより形成されためっき電極23が被着されている。めっき電極23はニッケルめっき層23aおよびはんだまたはスズめっき層23bにより構成されている。ニッケルめっき層23aは厚さ3−10μm程度に形成することが好ましく、はんだまたはスズめっき層23bは厚さ5−15μm程度に形成することが好ましい。
【0018】
従って、めっき電極23,23の基板表面側は凸状絶縁物層31,31により嵩上げされ、その間の凹部に保護膜17が配置された構造が得られる。即ち、基板表面側において、めっき電極23の表面の高さが前記保護膜17の表面の高さよりも高くなっている。図2はこのチップ抵抗器を回路基板に実装した状態を示し、(a)はチップ抵抗器の表面(保護膜側)が上側に向いて実装され、(b)はチップ抵抗器の表面(保護膜側)が回路基板25のランド27に向いて(裏向きに)実装された状態をそれぞれ示している。
【0019】
上述した構造を持ったチップ抵抗器は、チップ抵抗器の保護膜17の表面より突出した電極23が形成されているため、図2(b)に示すようにチップ抵抗器が裏向きに実装されてもチップ抵抗器の傾きを抑えることができ、これにより確実に回路基板に実装される。このため、バルク実装機によるバルクカセットからの表裏面の選択性のない面実装を行い、チップ抵抗器の表面側(保護膜側)が回路基板25に面するように(裏向きに)実装されても、問題無くはんだ付けによる固定が可能である。
【0020】
特に、前記凸状絶縁物層31を、高温で焼成されたセラミック材料とガラス材料の混合物層とすることにより、機械的強度が高く、且つ基板や電極との接合性に優れた嵩上げ部を形成できる。即ち、ガラス材料成分は基板11および電極13との密着性の向上に有効であり、セラミック材料成分は凸状絶縁物層31の保形性の確保に有効である。特に、これらの材料は絶縁性セラミックス基板11との熱膨張係数が略同一か近いため、高温の熱処理時の応力を緩和し、強度が高く密着性に優れた嵩上げ部とすることができる。
【0021】
次に、本発明のチップ抵抗器の製造方法について、図3を参照しながら説明する。
まず、(a)に示すように、アルミナ等の絶縁性基板11を準備する。図示の例では1個のチップ領域を示すが、実際には多数のチップ抵抗器を一括して製造する多数個取りの基板が用いられる。
【0022】
次に、(b)に示すように、絶縁性基板11の両端部に、ガラス材料とセラミック材料との混合材料からなる1対のパターンをスクリーン印刷により形成して、焼成することで、厚さ20−50μm程度の凸状絶縁物層31を形成する。この凸状絶縁物層31は600から1300℃程度の高温で焼成して形成されている。これにより機械的強度が高く、且つ基板や電極との接合性に優れた嵩上げ部を形成できる。この凸状絶縁物層31は、その上に形成される電極13、23を嵩上げするための嵩上げ部を構成している。
【0023】
次に、(c)に示すように、凸状絶縁物層31上に電極13を形成する。この電極13はAg又はAg−Pdペーストパターンをスクリーン印刷により形成し、例えば850℃程度の温度で焼成することで形成する。この電極13は一対の凸状絶縁物層間に形成された凹部に回り込ませる様に形成する。裏面電極19も同様にAg又はAg−Pdペーストパターンをスクリーン印刷により配置し、焼成することで形成する。表面側の電極13と裏面側の電極19とは、どちらを先に形成してもよい。
【0024】
次に、(d)に示すように、電極13,13間に抵抗体15を抵抗体ペーストのスクリーン印刷および焼成にて形成する。抵抗体としては酸化ルテニウム等を用いることが好ましく、例えば850℃程度の温度で焼成する。抵抗体15は一対の凸状絶縁物層31,31間の凹部に形成し、その端部で電極13,13と接続する。尚、電極13と抵抗体15の形成の順序は、抵抗体15を先に形成し、その後に電極13を形成するようにしてもよい。
【0025】
次に、(e)に示すように、スクリーン印刷にて抵抗体パターン15上へ第1保護層パターンを形成して焼成する。第1保護層17aはガラス絶縁層であり、600℃程度の温度で焼成することが好ましい。抵抗体15には必要に応じてレーザートミリングを行い、抵抗値を調整する。次に、スクリーン印刷にてガラス絶縁層17a上へ樹脂ペーストの第2保護層パターンを形成して加温硬化し、第2保護層17bを形成する。第2保護層17bはエポキシ系樹脂であり、200℃程度の温度で加温硬化することが好ましい。第1保護層17aおよび第2保護層17bは一対の凸状絶縁物層31,31間に形成された凹部に配置する。
【0026】
以上の処理は多数個取りの基板の一括処理であるが、次に短冊状に分割する加工を行う。加工はダイシング、またはブレークのどちらでも良い。多数個取り基板を短冊状に分割後に、図3(f)に示すように、露出した基板側端面に端面電極21,21を形成する。端面電極21,21は例えばスパッタリングにより被着したNi・Crの薄膜層である。そして、チップ単体に分割する加工を行う。加工はダイシング、ブレークどちらでも良い。次に、(g)に示すように、電解メッキを行い、電極13,19,21上にめっき電極23,23を形成する。電極くわれ防止およびはんだ付けの信頼性向上のために、電解めっきによってNiめっき層23aとSn−Pbめっき層(Snめっき層でもよい)23bとからなるめっき電極23を形成している。
【0027】
上述した製造工程によれば、絶縁性基板11の両端部の電極23の表面が凸状絶縁物層31により嵩上げされ、中央の保護膜17の表面部分に実装時の回路基板面に対して隙間(スタンドオフ)が生じる。係るチップ抵抗器の製造方法によれば、凸状絶縁物層31の工程を付加する以外は通常のチップ抵抗器の製造方法をそのまま採用することができる。従って、製造コストの上昇を抑制しつつ、実装面の表裏の選択性のないバルク実装に対応したチップ抵抗器を製造できる。
【0028】
なお、上記実施形態においては、絶縁性基板の表面および裏面に電極を設け、チップ抵抗器が表向きにも裏向きにも実装可能な例について説明したが、基板表面のみに電極を設け、裏向きにのみ実装するいわゆるフィレットレス実装にも適用が可能である。
【0029】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、チップ抵抗器の保護膜の表面よりも嵩上げされた電極が形成されていることにより、チップ抵抗器が裏向きに実装された場合でも確実に回路基板への面実装が可能となる。これにより、実装面の表裏の選択性のないバルク実装に好適なチップ抵抗器を提供することができる。
さらに、嵩上げ部の凸状絶縁物層を、高温で焼成されたセラミック材料とガラス材料の混合物層で形成することにより、品質の安定性が高く、信頼性に優れたチップ抵抗器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態におけるチップ抵抗器の全体構成を示す断面図である。
【図2】上記チップ抵抗器の実装状態を示す図であり、(a)はチップ抵抗器の保護膜側が上側に向いて実装され、(b)は保護膜側が回路基板に向いて(裏向き)に実装された状態をそれぞれ示している。
【図3】上記チップ抵抗器の製造工程を示す図である。
【図4】従来のチップ抵抗器について、(a)は全体構成を示す断面図であり、(b)は保護膜側が表面側に向いて実装され、(c)は保護膜側が回路基板に向いて裏向きに実装され、(d)はいわゆるチップ立ちを起こした状態をそれぞれ示した図である。
【符号の説明】
11 絶縁性基板
13,19,21 電極
15 抵抗体
17a,17b,17 保護膜
23a,23b,23 めっき電極
31 凸状絶縁物層
Claims (5)
- 絶縁性基板と、
該絶縁性基板の表面に形成された抵抗体及び少なくとも一対の電極と、
前記抵抗体を被覆する保護膜と、
前記電極上に形成されためっき電極と、を備えたチップ抵抗器であって、
前記絶縁性基板の両端部に絶縁層を形成することにより、前記めっき電極の上面の高さが、前記保護膜の上面の高さよりも高く又は同一となるように構成され、
前記絶縁層は、ガラス材料とセラミック材料との混合材料からなる、
ことを特徴とするチップ抵抗器。 - 絶縁性基板と、
該絶縁性基板の表面に形成された抵抗体及び少なくとも一対の電極と、
前記抵抗体を被覆する保護膜と、
前記電極上に形成されためっき電極と、を備えたチップ抵抗器であって、
前記絶縁性基板の両端部に絶縁層を形成することにより、前記めっき電極の上面の高さが、前記保護膜の上面の高さよりも高く又は同一となるように構成され、
前記絶縁層は、前記絶縁性基板と同質のセラミック材料及びガラス材料の混合材料からなる、
ことを特徴とするチップ抵抗器。 - 前記絶縁性基板の裏面には裏面電極が形成され、前記絶縁性基板の側面には端面電極が形成され、前記めっき電極は、前記電極、前記裏面電極及び前記端面電極上に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のチップ抵抗器。
- 前記混合材料は、セラミック材料の配合比が約50wt%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチップ抵抗器。
- 前記混合材料は、前記絶縁性基板と同等の熱膨張係数を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のチップ抵抗器。
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