JP4703315B2 - 機械加工装置の回転数演算装置、機械加工装置のびびり振動評価装置および機械加工装置のびびり振動評価方法 - Google Patents

機械加工装置の回転数演算装置、機械加工装置のびびり振動評価装置および機械加工装置のびびり振動評価方法 Download PDF

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Description

本発明は機械加工装置の切削加工を行う装置およびその装置の評価方法に関するものである。
機械加工において、切削工具として剛性の低い工具を用いる場合等に、切削工具と被削物との間に、いわゆるびびり振動とよばれる音を伴う振動が発生する場合がある。この現象について、図13を参照して説明する。図13は、エンドミル加工を行う場合の模式図である。エンドミル50が振動しながら被削物52を削り取ることにより、被削物52の仕上げ面に起伏(アウターモジュレーション)が転写される。この一刃前の起伏と現在の切削による振動(インナーモジュレーション)との間に位相遅れが生じることにより被削物52の切取り厚さが一定とならず、切取り厚さが変動することによって機械系が加振され、この結果としてびびり振動が発生すると考えられている。このびびり振動は、切削加工で重切削を行う場合や、被切削物が高硬度の場合、剛性の低い工具やワーク用いる場合に発生しやすい。
このようなびびり振動は、切削加工の加工精度を悪化させたり、切削加工工具を破損させるといった問題を引き起こすため、できるだけびびり振動を低減させることが望ましい。一般的には、びびり振動を低減させるために、切削速度の低減や切削幅の低減といった対策が採られているが、これらは切削加工の生産性を低下させるという背反事項がある。また、機械加工工具のシャンク材質の改善によってもびびり振動は低減できるが、その低減効果は大きくなく、汎用的な対策には至っていない。
このようなびびり振動を低減させるための技術として、以下に示す特許文献1および2のような対策が知られている。特許文献1は、機械系の固有振動数より切削加工の回転数を求め、この回転数で切削することでびびり振動を低減させようとしたものである。また、特許文献2は、切削工具または被切削物の回転数を低下させることによりびびり振動を低減させようとするものである。
特開2003−340627号公報 特開平11−129144号公報
上記特許文献1は、切削加工装置の回転数を演算するために機械系の固有振動数を求める必要があるが、上記特許文献1では、機械系の固有振動数を実測または計算によって求めるとしている。しかしながら、固有振動数を求めるために機械加工装置に加振装置を組み込んだり、機械加工装置を外部から加振させる必要があり、固有振動数を求めることは容易ではない。また、特許文献2はびびり振動が収まるような十分に低い回転まで切削の回転数を低下させるため、生産効率が低下するという問題がある。
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、切削加工時の回転数を必要以上に落とすことなく、びびり振動を低減させることを目的とする。また、びびり振動が発生した場合に好ましい対応を行うことができるよう、びびり振動のタイプを特定し、その後の対応を容易にすることを目的とする。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1に係る発明は、切削工具、被削部材または機械加工装置のびびり振動を検出するびびり振動検出手段と、検出されたびびり振動に基づき、びびり振動を低減するための前記切削工具または被削部材の回転数を演算する演算手段と、を備える機械加工装置の回転数演算装置によって構成される。上記の構成によれば、びびり振動検出手段によりびびり振動を検出し、これに基づきびびり振動を低減するための回転数が演算されるため、十分にびびり振動を低減させることのできる回転数を演算することができる。
びびり振動とは、機械加工中に工具、被削部材または機械加工装置に発生する振動をいうが、機械加工前に機械系の共振振動により発生する振動もびびり振動ということができる。びびり振動検出手段は、機械加工装置に発生しているびびり振動の状況を検出するものである。びびり振動検出手段は、びびり振動の振幅を検出しても良いし、びびり振動の周波数を検出しても良いし、びびり振動の位相を検出しても良い。また、びびり振動によって発生する音の大きさを検出しても良い。びびり振動検出手段は、実際に機械加工装置に発生しているびびり振動を検出するものであり、機械加工装置に直接センサを取り付けて検出しても良いし、機械加工装置外部にセンサを配置して検出しても良い。また、びびり振動検出装置は、機械加工装置に加速度センサを取り付けることにより構成することができる。びびり振動の加振力が機械加工装置に及ぼされ、この加速度を加速度センサで検出することでびびり振動が検出できるからである。また、機械加工装置にひずみゲージを取り付け、びびり振動によるひずみを検出することとしても良い。また、びびり振動検出装置は、機械加工装置のびびり振動による変位を直接検出するものでも良い。例えば、びびり振動の様子を所定位置に配置されたギャップセンサを用い、びびり振動によって変化するセンサとの間隔をびびり振動として検出しても良い。また、演算手段によって演算された回転数は、機械加工装置が切削工具または被削物の回転数を制御することができる場合は、切削工具または被削部材の回転数を演算された回転数となるように制御することでびびり振動を低減することができる。また、前記回転数を表示して操作者に切削工具または被削部材の回転数が当該回転数となるように操作を促すようにしても良い。また、演算された回転数を出力して次回の切削加工の参考となるようにしても良い。
また、請求項2に係る発明は、前記びびり振動検出手段は、びびり振動の周波数を検出するものであり、前記演算手段は、検出されたびびり振動の周波数に基づき前記切削工具および被削部材の回転数を演算するものである請求項1に記載の機械加工装置の回転数演算装置によって構成される。この構成によれば、切削工具または被削部材の回転数はびびり振動の周波数に基づき演算されるため、十分にびびり振動を低減させることのできる回転数を演算することができる。びびり振動の周波数は、びびり振動の振幅を検出して、その振幅の変動を周波数として演算しても良いし、振幅を周波数解析して周波数を演算しても良い。また、振幅のピークの時間間隔から周波数を求めても良いし、びびり振動を音で検出するような場合は、当該音の周波数を直接求めても良い。
また、請求項3に係る発明は前記演算手段は、次の式
n=60f/{(k+1)N}(n:切削工具または被削部材の一分間あたりの回転数演算値、f:びびり振動の周波数、N:切削工具の刃数、k:60f/nNの整数部分、n:切削工具または被削部材の一分間あたりの回転数現在値)により基づき前記切削工具および被削部材の回転数を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の機械加工装置の回転数演算装置によって構成される。この構成によれば、切削工具または被削部材の回転数は、上記の式により、びびり振動の原因となる切削面の位相遅れが適切な値となるため、びびり振動が十分に低減される回転数を演算することができる。
また、請求項4に係る発明は、前記びびり振動検出手段の検出結果よりびびり振動のタイプを特定するびびり振動特定手段をさらに備え、前記演算手段は、特定されたびびり振動に基づき基づき前記切削工具および被削部材の回転数を演算することを特徴とする請求項1乃至3に記載の機械加工装置の回転数演算装置によって構成される。この構成によれば、びびり振動のタイプにしたがって切削工具または被削部材の回転数が演算されるため、十分にびびり振動を低減できる回転数を演算することができる。びびり振動のタイプとは、びびり振動が発生する原因で区別することができる。一般的にびびり振動は強制型と自励型が知られており、これらのタイプを特定しても良い。また、自励型のびびり振動にも、摩擦型と再生型のびびり振動が存在しており、これらのタイプを特定しても良い。また、強制型のびびり振動にも、主軸回転によるものや切屑周期によるものもあり、これらのタイプを特定しても良い。また、自励型のびびり振動には、モードカップリングを伴うものと伴わないものがあり、これらを特定することとしても良い。
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至4に記載の回転数演算装置に加え、前記切削工具または被削部材の回転数を制御する回転数制御手段を備える機械加工装置であって、該回転数制御手段は、前記演算手段により演算された回転数となるよう前記切削工具または被削部材を制御することを特徴とする機械加工装置によって構成される。この構成によれば、切削工具または被削部材の回転数が回転数制御手段により制御されるため、良好にびびり振動を低減させることができる。
また、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の機械加工装置において、前記切削工具または被削部材の送り速度を制御する送り速度制御手段をさらに備え、前記回転数制御手段の回転数の変化に応じて前記送り速度制御手段の送り速度を変化させることを特徴とする機械加工装置によって構成される。この構成によれば、回転数の変化に応じて切削工具または被削部材の送り速度が制御されるため、良好に機械加工を行うことができる。送り速度の制御は、例えば、回転数が2倍に変化させられた場合に送り速度を2倍に変化させるというように、回転数と送り速度が比例関係なるように行うことができる。比例関係にすることで、切削加工の加工ピッチを一定とすることができる。
また、請求項7に係る発明は、切削工具、被削部材または機械加工装置のびびり振動を検出するびびり振動検出手段と、検出されたびびり振動に基づき、びびり振動のタイプを特定するびびり振動特定手段と、を備える機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。この構成によれば、びびり振動を検出してびびり振動のタイプを特定するため、精度良くびびり振動のタイプを特定することができる。びびり振動特定手段は、びびり振動のタイプとして知られている強制型、自励型のびびり振動を特定するものでも良いし、強制型のびびり振動の主軸回転によるびびり振動と切屑周期によるびびり振動を特定しても良い。また、自励式のびびり振動の再生型のびびり振動と摩擦型のびびり振動を特定するものでも良い。また、特定されたびびり振動のタイプは、これを用いてびびり振動を低減するための制御に用いられても良いし、当該タイプを機械加工装置の操作者に示して、びびり振動の低減のための操作を促しても良い。また、特定されたタイプを示すことで、操作者が次回の切削加工時の切削条件を特定する際に参考とするようにしても良い。
また、請求項8に係る発明は、前記びびり振動検出手段は、びびり振動の振幅を検出するものであり、前記びびり振動特定手段は、検出されたびびり振動の振幅に基づき、びびり振動の特定を行うことを特徴とする請求項7に記載の機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。この構成によれば、びびり振動の振幅に基づきびびり振動が特定されるため、精度良くびびり振動のタイプを特定することができる。びびり振動の特定は、びびり振動の振幅の大きさで特定しても良いし、振幅の変化量で特定しても良い。
また、請求項9に係る発明は、前記びびり振動特定手段は、びびり振動の振幅の増加傾向を検出し、びびり振動を特定するものである請求項8に記載の機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。びびり振動は強制型と自励型があるが、自励型のびびり振動は、びびり振動が次々に励起されて起こる振動のため、びびり振動の振幅が指数関数的に増大する特徴がある。これに対し、強制型のびびり振動は線形的に振幅が増大する。したがって、びびり振動の振幅の増大傾向より自励型のびびり振動と強制型のびびり振動を精度良く特定することができる。
また、請求項10に係る発明は、前記びびり振動特定手段は、びびり振動の初期の段階のびびり振動の振幅の増加傾向を検出し、びびり振動を特定するものである請求項9に記載の機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。びびり振動は切削加工が開始されてから発生することが多く、切削加工初期の段階の振幅の変化が切削加工初期以降の段階よりも顕著に現れるという特徴がある。したがって、びびり振動の初期の段階の振幅の増加傾向を検出することにより、精度良くびびり振動のタイプを特定することができる。びびり振動の初期の段階は、切削加工の開始から所定期間の間としても良いし、びびり振動の振幅が所定値以上となるまでの期間としても良し、びびり振動の振幅が一定値に収束するまでの期間としても良い。
また、請求項11に係る発明は、切削工具または被削部材の送り速度を制御する送り速度制御手段をさらに備え、前記びびり振動特定手段は、前記送り速度制御手段が前記切削工具または被削部材の送り速度を変化させたときのびびり振動の振幅の変化に基づき、びびり振動の特定を行うことを特徴とする請求項8乃至10に記載の機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。強制型のびびり振動は、切削工具の送り速度を変化させた場合に振幅が変化することが知られている。したがって、切削工具の送り速度を変化させた場合のびびり振動の変化を検出することで、精度良く強制型のびびり振動を特定することができる。また、送り速度を変化させる場合は、切削工具または被削部材の回転数を一定にすることで、精度良く強制型のびびり振動を特定することができる。
また、請求項12に係る発明は、前記びびり振動検出手段は、びびり振動の周波数を検出するものであり、前記びびり振動特定手段は、検出されたびびり振動の周波数に基づき、びびり振動の特定を行うことを特徴とする請求項7乃至11に記載の機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。びびり振動のタイプには、びびり振動の周波数に影響を与えるものがあるため、びびり振動の周波数を検出することにより、精度良くびびり振動のタイプを特定することができる。
また、請求項13に係る発明は、前記切削工具または被削部材の回転数を検出する回転数検出手段をさらに備え、前記びびり振動特定手段は、びびり振動の周波数が前記回転数検出手段により検出された回転数の自然数倍になっているか否かに基づき、びびり振動を特定することを特徴とする請求項12に記載の機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。強制型のびびり振動には、びびり振動の周波数が回転手段の回転数の自然数倍となっているものがある。したがって、びびり振動の周波数と回転手段の回転数を比較することにより、精度良くびびり振動のタイプを特定することができる。
また、請求項14に係る発明は、前記切削工具または被削部材の回転数を変更する回転数変更手段をさらに備え、前記びびり振動特定手段は、前記回転数変更手段により前記回転手段の回転数が変更させられたときのびびり振動の周波数の変化に基づき、びびり振動の特定を行うことを特徴とする請求項7乃至13に記載の機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。再生型のびびり振動は、回転手段の回転数を変更することによりびびり振動が変化するため、その変化をびびり振動の周波数変化で検出することができる。したがって、回転手段の回転数を変更した際のびびり振動の周波数の変化を検出することにより、びびり振動のタイプを精度良く特定することができる。
また、請求項15に係る発明は、びびり振動検出手段は、びびり振動のある一の面における振動軌跡を検出するものであり、びびり振動特定手段は、検出された振動軌跡に基づき、びびり振動を特定することを特徴とする請求項7乃至14に記載の機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。びびり振動は、モードカップリングを伴うびびり振動と伴わないびびり振動がある。モードカップリングを伴うびびり振動の場合は、ある一の面の振動軌跡は楕円(または円)の振動軌跡となり、直線状となるモードカップリングを伴わないびびり振動と判別することができる。上記構成によれば、びびり振動の一の面における振動軌跡を検出することで、精度良くモードカップリングを伴うびびり振動を特定することができる。ある一の面における振動軌跡は、びびり振動を少なくとも異なる2つの方向から検出することで特定することができる。びびり振動によって発生する異なる2つの方向への加速度を検出しても良いし、びびり振動の異なる2つの方向への変位を変位センサ(ギャップセンサ)で検出しても良い。なお、2つの異なる方向への成分を検出して、2つの成分をリサージュ図形に表し、リサージュ図形を評価してびびり振動を特定することも可能である。
また、請求項16に係る発明は、前記びびり振動特定手段によって特定されたびびり振動に基づき、前記切削工具または被削部材の回転数を演算する演算手段をさらに備えることを特徴とする請求項7乃至15に記載の機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。びびり振動を低減させるための切削工具または被削部材の回転数は、びびり振動の周波数に依存する場合がある。したがって、びびり振動の周波数に基づき切削工具または被削部材の回転数を演算することにより、びびり振動を良好に低減させることのできる回転数を演算することができる。演算された回転数は、機械加工装置が切削工具または被削部材の回転数を制御することができる場合は、当該回転数になるように制御を行っても良い。また、演算された回転数を操作者に表示し、操作を促しても良いし、次回の切削加工時の切削工具または被削部材の回転数の参考となるようにしても良い。
また、請求項17に係る発明は、請求項16のびびり振動評価装置に加えて、前記切削部材または被削部材の回転数を制御する回転数制御手段を備える機械加工装置であって、該回転数制御手段は、前記切削部材または被削部材を前記演算手段により演算された回転数となるように制御することを特徴とする機械加工装置によって構成される。この構成によれば、演算された回転数に切削工具または被削部材の回転数が制御されるため、びびり振動を良好に低減することができる。
また、請求項18に係る発明は、切削工具、被削部材または機械加工装置のびびり振動を検出するびびり振動検出手段と、検出されたびびり振動に基づき、びびり振動による前記機械加工装置の不安定度合いを特定するびびり振動不安定度合い特定手段とを備える機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。びびり振動による機械加工装置の不安定度合いはびびり振動の状況に影響を与えるため、びびり振動を検出することにより、びびり振動による機械加工装置の不安定度合いを精度良く特定することができる。びびり振動による機械加工装置の不安定度合いとは、機械加工装置全体の系の不安定度合いを示すものであり、びびり振動が発生する臨界値をどのくらい超えているかを示す指標の1つである。臨界値を大きく超える場合は機械加工装置の系の不安定度合いが高いと判断できる。また、びびり振動検出手段は、びびり振動の振幅やびびり振動の周波数を検出するものである。また、びびり振動に伴って発生する音の大きさを検出するものであっても良い。
また、請求項19に係る発明は、前記びびり振動検出手段は、びびり振動の振幅を検出するものであり、前記びびり振動不安定度合い特定手段は、検出されたびびり振動の振幅に基づきびびり振動による前記機械加工装置の不安定度合いを特定することを特徴とする請求項18に記載の機械加工装置のびびり振動評価装置によって構成される。びびり振動による機械加工装置の不安定度合いは、びびり振動が時間とともに大きくなっていく場合に不安定度合いが高いと判断できる。したがって、びびり振動の振幅を検出し、振幅の変化によってびびり振動の不安定度合いを精度良く特定することができる。なお、びびり振動の振幅の増加の割合が時間的経過にしたがって指数関数的に大きくなっていく場合は、びびり振動の不安定度合いが高いと判断することができる。
また、請求項20に係る発明は、切削工具、被削部材または機械加工装置のびびり振動を検出するびびり振動検出手段を備え、前記切削工具のN枚の刃が、M(M:2以上の自然数)個の不等ピッチ角θ,θ+Δθ,・・・,θ+(M−1)Δθ(Δθ:正のピッチ角の増分)をL(L:自然数)個ずつ持つ(N=M×Lとなる)場合、前記切削工具または被削部材の回転数nは、次の式 n=(60fΔθ)/{2π{(1/N)+m}}(n:切削工具または被削部材の一分間あたりの回転数演算値、fc:びびり振動の周波数、m:自然数)により演算されることを特徴とする機械加工装置の回転数演算装置によって構成される。不等ピッチ角の切削工具を用いる場合であって、各ピッチ角の増分Δθを考慮して切削工具または被削部材の回転数を演算する必要がある。上記の構成によれば、びびり振動を低減する切削工具または被削部材の回転数が、ピッチ角の増分を考慮して演算されるため、びびり振動を良好に低減することのできる回転数を演算することができる。なお、上記のN個のピッチ角はいかなる順番で配置されていても上記の式により、回転数nを演算することができる。
また、請求項21に係る発明は、切削工具または被削部材をある回転数nで回転させるステップと、びびり振動の周波数fを検出するステップと、次の式に回転数nと検出されたfcを代入して ε=2π{60f/(nN)−k}
(n:回転手段の一分間あたりの回転数現在値、f:びびり振動の周波数、N:切削工具の刃数、k:60f/nNの整数部分) 位相差εおよびkを得るステップと、得られた位相差εおよびkを次式 60f/{(k+ε/2π)N}≦n≦60f/{{k+(ε/2π)−1}N}または 60f/{(k+ε/2π+1)N}≦n≦60f/{k+(ε/2π)N}に代入して前記回転手段の走査回転数nの範囲を得るステップと、得られた走査回転数範囲内で前記回転手段を作動させて、びびり振動の発生状況を評価するステップと、からなる機械加工装置のびびり振動評価方法によって達成される。びびり振動は切削部材または被削部材の回転数に対して、複数の安定領域を持つものである。これは、ε=2π{60f/(nN)−k}の式で、位相差εの値はkの値を変化させても2πの周期で繰り返すこととなり、kの値を現在値からプラス1あるいはマイナス1させることで、すべての位相差εについて評価できることとなる。したがって、あるkを特定し、そのkからプラス1あるいはマイナス1の範囲で回転数を変化させれば、そのkでのびびり振動の状況を良好に評価することができる。上記のように回転数範囲を求め、その回転数範囲でびびり振動を評価することで、回転数範囲を決めない場合に比べて、少ない回転数範囲でびびり振動を評価することができる。なお、あるkとkをマイナス1したものを用いる場合は、現在の回転数から回転数の高い領域に回転数をスキャンすることになるため、切削加工の能率が向上するという効果がある。また、あるkとkをマイナス1したものを用いようとしても、回転数範囲が機械加工装置の回転数の上限を超えるか、あるいは上限に近い場合は、あるkとkをプラス1したものを用いて回転数範囲を求めることができる。また、回転数を変更してびびり振動の評価を行う場合は、回転数の変化に応じて送り速度を変化させるても良い。このようにした場合、切削加工の加工ピッチを一定とすることができる。
本発明の機械加工装置によれば、びびり振動を検出し、検出されたびびり振動より回転手段の回転数を演算するため、良好にびびり振動を低減することのできる回転数を得ることができる。また、検出されたびびり振動よりびびり振動のタイプを特定するため、精度良くびびり振動のタイプを特定することができる。また、検出されたびびり振動よりびびり振動による機械加工装置の不安定度合いを特定するため、精度良くびびり振動による機械加工装置の不安定度合いを特定することができる。また、検出されたびびり振動周波数とピッチ角より回転数を演算するため、良好にびびり振動を低減する回転数を演算することができる。また本発明の機械加工装置の評価方法によれば、びびり振動周波数によって必要でかつ十分に狭い走査回転数の範囲が決定されるため、びびり振動の状況を効率的かつ良好に評価することができる。
本発明を実施するための実施の形態について以下に詳細に説明する。図1は、本発明が適用された第1の実施形態のマシニングセンタ2の主要構成部を示す図である。機械加工装置の一例としてマシニングセンタ2に本発明を適用した例を示すが、旋盤加工装置やフライス加工装置、NC加工装置、その他の機械加工装置に本発明が適用されても良い。マシニングセンタ2の切削を行う部位には、主軸ハウジング部4が設けられている。主軸ハウジング部4は、主軸ハウジング部4より下方に伸びるチャック6を支持している。チャック6は、主軸ハウジング部4に対して図示しないベアリング機構を介して支持されるものであり、モータ駆動により回転駆動させられるものである。モータ駆動は、回転数を自在に制御するものとされている。
チャック6は、鉛直方向に円筒状に伸びる部材であり、下方にエンドミル8を支持するものである。エンドミル8は、チャック6に対して着脱可能とされるものであり、チャック6の回転により、エンドミル8も同様に回転する。エンドミル8は下端部に切削用の刃が複数形成されており、この刃が回転することで被削部材を切削加工するものである。なお、第一の実施形態のエンドミル8は刃の間隔が等しい等ピッチのエンドミルあるいは一刃のエンドミルである。
また、主軸ハウジング部4には、2つの加速度センサが取り付けられている。X軸加速度センサ10は主軸ハウジング部4に固定されるものであり、ある一の水平面に含まれる1つの軸を加速度検出軸とするものである。図1では、加速度センサ10の検出軸をX軸と定義している。Y軸加速度センサ12は主軸ハウジング部4に固定されるものであり、X軸加速度センサ10の検出軸であるX軸と垂直でかつ、同一水平面に含まれる軸を検出軸のY軸とするものである。X軸加速度センサ10およびY軸加速度センサ12はともに主軸ハウジング部4に固定されるため、主軸ハウジング部4の横方向、すなわちX軸およびY軸方向の振動が加速度信号としてX軸加速度センサ10およびY軸加速度センサ12により検出される。検出された加速度信号を演算することにより、主軸ハウジング部4のX軸およびY軸方向への振動による変位の時間的変化を検出することができる。主軸ハウジング部4はエンドミル8を支持しているため、主軸ハウジング部4の振動を検出することで、エンドミル8の振動状態を検出することになる。エンドミル8の振動状態を検出して、後述するびびり振動の振幅や周波数を検出する。なお、振動センサはびびり振動を検出するものであれば特にセンサの種類は限定されず、ひずみゲージや圧電素子を用いることができる。
チャック6の周面近傍には、回転センサ14が配置されている。回転センサ14は、チャック6の回転を検出することでエンドミル8の回転を検出する。なお、回転センサ14は、直接的または間接的にエンドミル8の回転を検出するものであれば特にセンサの種類は限定されず、磁気式、光学式等を用いることができる。また、主軸に、フィードバック制御に用いられるエンコーダが取り付けられる場合や、回転センサ、位置センサが取り付けてある場合は、その信号を利用して回転数を検出しても良い。
マシニングセンタ2の主軸ハウジング部4には、アーム支持部16およびアーム18を介してX軸ギャップセンサ20が取り付けられている。X軸ギャップセンサ20は、X軸ギャップセンサ20と測定対象物(本実施形態では、エンドミル8)とのギャップ(離間距離)を測定するセンサであり、エンドミル8の側方に予め所定の距離を隔てて配置されるものである。X軸ギャップセンサ20の測定方向はある1の水平面に含まれる1の軸を検出軸とするものである。したがって、X軸ギャップセンサ20はエンドミル8の水平方向への移動を検出することができる。また、X軸ギャップセンサ20を支持するアーム18は、2本の棒状部材からなり、2本の棒状部材はヒンジで接続されており、ヒンジの作用によりX軸ギャップセンサ20をエンドミル8に対して所定の位置に配置することができる。例えば、X軸ギャップセンサ20とエンドミル8の離間距離を変化させたり、X軸ギャップセンサ20のエンドミル8に対する高さ方向位置を変化させたり、さらに、場合によっては、X軸ギャップセンサ20の検出軸を水平面から所定の角度をもったものとすることもできる。また、アーム18はアーム支持部16に固定支持されるものであるが、この両者の間をヒンジ支持構造とすれば、X軸ギャップセンサ20の配置位置の自由度が向上する。
また、同様に、主軸ハウジング部4よりアーム支持部22およびアーム部24を介してY軸ギャップセンサ26がエンドミル8の側方に配置される。Y軸ギャップセンサ26は、X軸ギャップセンサ20と同一水平面内で、かつX軸ギャップセンサ20の検出軸とY軸ギャップセンサ26の検出軸とが互いに直行するように配置されている。このような配置により、エンドミル8が横方向に振動した場合に、エンドミル8のX軸方向およびY軸方向への振動による変位の時間的変化を検出することができる。エンドミル8の振動状態を検出することで、後述するびびり振動の振幅や周波数を検出することができる。なお、本実施形態では、X軸加速度センサ10のX軸とX軸ギャップセンサ20のX軸は同じ方向の軸としている。同様にY軸加速度センサ12とY軸ギャップセンサ26のY軸も同じ方向である。マシニングセンタ2の主軸ハウジング部4およびエンドミル8の下方には、固定冶具28によってテーブル30上に被削部材32が固定されている。なお、びびり振動の測定は、被削部材32側に対して行っても良く、加速度センサやギャップセンサは被削部材32や被削部材32の保持冶具28、被削部材32を固定するテーブル30側に取り付けて、びびり振動の検出を行っても良い。また、ギャップセンサには、光学式の光変位計や静電容量型の変位計、渦電流式変位計、レーザ変位計などの非接触型変位計を用いることができる。
次に、図2を用いてマシニングセンタ2の制御に関わる構成について説明する。図2において、マシニングセンタ2の演算装置34は、X軸加速度センサ10、Y軸加速度センサ12、回転数センサ14、X軸ギャップセンサ20およびY軸ギャップセンサ26の検出信号を入力信号として各種演算を行うものである。また、図1には図示しないが、エンドミル8の近傍に設けられたマイクロフォン36の信号も入力される。マイクロフォン36は、エンドミル8の振動により発生した音の大きさや周波数を測定するものである。
また、演算装置34は、各種センサからの信号を演算して、演算結果をモータ制御装置38に出力する。モータ制御装置38は、演算結果に応じて、主軸モータ40および送りモータ42を駆動するための信号を生成する。主軸モータ40は、チャック6およびエンドミル8を回転させるものであり、制御によりエンドミル8の回転数を可変とすることができる。また、送りモータ42は、エンドミル8の水平方向位置および鉛直方向位置を移動させるためのものであり、制御により被削部材32に対するエンドミル8の送り速度を可変とすることができる。
また、演算装置34は表示装置44に所定の命令を出力することにより、表示装置44に所望の表示を行うことができる。表示装置44は、マシニングセンタ2の操作者に所定の告知をするための表示を行うものである。また、本実施形態では、マシニングセンタ2の操作者に告知するために表示装置44が用いられているが、これに限らず、音声によって操作者に告知するものでも良い。
次に、上述したマシニングセンタ2を用いて切削加工を行う手順について説明する。本実施形態は、マシニングセンタ2を用いて切削加工を行う際に発生する、いわゆるびびり振動に適切に対応して良好な切削加工を行うためのものである。本実施形態は、切削加工時(あるいは、切削加工前)に発生するびびり振動の各種周波数、振幅または位置を各種センサで実際に検出することにより、びびり振動を少なくしたり、びびり振動の原因を特定したりするものである。ここで、切削加工時に発生するびびり振動について詳しく説明する。
びびり振動とは、マシニングセンタ2のエンドミル8を回転させたときに、マシニングセンタ2の全体あるいは一部に発生する振動である。通常は、切削加工を行うエンドミル8周辺や被削部材32にびびり振動が発生する。びびり振動の原因はいろいろなものが考えられるが、大別すると、強制型のびびり振動と自励型のびびり振動に分けられる。
強制型のびびり振動は、エンドミル8を含む切削時の主軸の周波数に依存して発生したり、切削時の切屑の周期性によって発生する振動である。また、これ以外にも、非切削加工時に機械系の強制変位により発生するびびり振動もある。これらの強制型のびびり振動は、びびり振動が切削時に発生するかどうか、あるいはびびり振動周波数が主軸回転数の自然数倍であるかどうか、等の条件を当てはめて、強制型びびり振動の原因を特定することができる。
一方、自励型のびびり振動は、図13に示すような、切取厚さが変動することに起因する再生型のびびり振動や、モードカップリング型のびびり振動や、切削力の垂下特性によって発生する摩擦型のびびり振動が存在し、それぞれの原因によるびびり振動であったり、複数の原因の複合によってもびびり振動が発生する。これらの自励型のびびり振動についても、本実施形態では、びびり振動を実際に測定することにより、それぞれの発生要因を特定するものである。
次に、図3を用いて、マシニングセンタ2を用いた本実施形態の作用について説明する。図3はマシニングセンタ2を用いて切削加工を行うためのフローチャートである。
フローチャートのステップ100(S100という。以下同じ。)において、今回の切削加工の条件、すなわちエンドミル8の主軸回転数、エンドミル8の送り速度、軸方向切込み量(Z軸方向の切込み深さ)、半径方向の切込み量等の条件が操作者によって入力される。次に、S110において、変数aがゼロにリセットされる。この変数aは、後述するびびり振動を低減させるルーチンの繰り返し回数を示すものである。
次に、S120において、操作者のスイッチ操作により主軸モータ40および送りモータ42の作動が開始される。主軸モータ40の作動によりエンドミル8が回転する。エンドミル8の近傍に設けられた回転センサ14によりエンドミル8の回転数が測定される。
次に、S130において、マシニングセンタ2にびびり振動が発生しているか否かが判断されるが、その判断の仕方について説明する。まず、マシニングセンタ2に設けられたX軸加速度センサ10とY軸加速度センサ12の出力値を参照し、X軸加速度センサ10の加速度値もしくは変位の振幅値が所定値(Gxth)よりも大きく、かつ複数回検出された場合、Y軸加速度センサ12の加速度値もしくは変位の振幅値が所定値(Gyth)よりも大きく、かつ複数回検出された場合、あるいは、X軸およびY軸ともに検出された場合に、マシニングセンタ2にびびり振動が発生していると判断するものである。
また、マシニングセンタ2は、X軸ギャップセンサ20とY軸ギャップセンサ26を備えるため、これらのギャップセンサを用いてびびり振動の発生を判断することもできる。X軸ギャップセンサ20が検出するエンドミル8までの距離が、主軸モータ40の作動前の距離から所定値(Dxth)を超えて変動し、かつ複数回検出された場合、Y軸ギャップセンサ26が検出するエンドミル8までの距離が、主軸モータ40の作動前の距離から所定値(Dyth)を超えて変動し、かつ複数回検出された場合、あるいはX軸およびY軸に両方について検出された場合に、マシニングセンタ2にびびり振動が発生していると判断してもよい。本実施形態では、マシニングセンタ2に加速度センサとギャップセンサをともに備えるため、いずれか一方のセンサによってびびり振動が検出された場合にびびり振動が発生したと判断しても良いし、加速度センサおよびギャップセンサ両方によりびびり振動が発生した場合にびびり振動が発生したと判断するようにしても良い。
S130でマシニングセンタ2にびびり振動が発生していると判断されない場合は、S140に進み、当初入力された条件で切削加工を行う。次にS150に進み、切削加工工程が終了したか否かを判断する。切削加工工程が終了していない場合は再びS130に進む。切削加工工程が終了した場合はエンドに進んで作業を終了する。
S130でマシニングセンタ2にびびり振動が発生していると判断された場合はS300に進み、びびり振動タイプの特定ルーチンに進む。図4はS300より始まるびびり振動タイプ特定ルーチンを説明するためのフローチャートである。
まず、S310では、切削加工開始前からびびり振動が発生していたか否かを判断する。ここで、切削加工前とは、エンドミル8が被削部材32を削り始めた時よりも前の期間をいい、主軸モータ40を作動させた後、エンドミル8が被削部材32を削り始めるまでの期間である。当該期間でもマシニングセンタ2の機械系の特性よりびびり振動が発生する場合がある。このような場合は、S310でイエスと判断され、S320で当該びびり振動は外部振動源による強制型であると判断される。
S310で切削加工開始前からびびり振動が発生していたと判断されない場合は、S330に進み、当該びびり振動が初期段階のびびり振動か否かが判断される。初期段階のびびり振動か否かの判断は、びびり振動が発生していると判断されてから所定期間(Tth)以上経過したか否かで判断することができる。S330でびびり振動が初期段階のびびり振動であると判断された場合はS340に進み、びびり振動の振幅の大きさの変化が指数関数的に増加したか否かが判断される。
S340の判断は以下のように行う。X軸加速度センサ10およびY軸センサ12の出力値はびびり振動の振幅の大きさに比例する。ここで想定するびびり振動はX軸およびY軸を含む水平面内の振動となるため、X軸加速度センサ10とY軸加速度センサ12の加速度測定によってびびり振動の振幅を検出することができる。このびびり振動の振幅の増加度合いを演算し、振幅が指数関数的に増加するか否かを判断する。振幅が指数関数的に増加するとは、振幅の増加度合い(傾き)が一定ではなく、増加していくことを意味する。このびびり振動の振幅の変化を図5に示す。図5はびびり振動の振幅の時間的変化を表す図であり、図5の(a)は強制型のびびり振動の振幅変化を表すものであり、図5の(b)は自励型のびびり振動の振幅変化を表すものである。なお、本実施形態のマシニングセンタ2はX軸ギャップセンサ20およびY軸ギャップセンサ26を備えるため、これらのギャップセンサの検出値の大きさでびびり振動の振幅を検出することとしても良い。びびり振動によって変化した距離の変動分の大きさが、びびり振動の振幅に比例することとなる。また、加速度信号においても、周波数が一定であれば、その値は振幅と比例関係にあることから、X軸加速度センサ10およびY軸加速度センサ12の加速度検出値の大きさでびびり振動の振幅の変化を検出することとしても良い。さらに、加速度の検出値を電気的な積分回路を用いて積分することにより、振幅情報に変換してびびり振動の振幅を検出することとしても良い。
図5(b)のようにびびり振動の振幅変化が指数関数的な変化であると判断されない場合はS350に進み、びびり振動の振幅変化が直線的に増加するか否かが判断される。一方、びびり振動の振幅が指数関数的にに増加すると判断される場合は後述のS410に進む。S350において、びびり振動の振幅が図5(a)のように直線的に増加すると判断されない場合は、S360に進み、びびり振動の原因を特定することができないびびり振動と判断する。S360に進むこと以外にも、S350でびびり振動の振幅が図5(a)のように直線的に増加すると判断されない場合に再度S330に戻り、びびり振動の特定ルーチンを繰り返しても良い。また、S350で図5(a)のように直線的に増加すると判断されない場合、後述するS400に進むこととしても良い。
また、S350でびびり振動の振幅が直線的に増加すると判断された場合は、S370に進み、びびり振動の周波数が主軸モータ40の回転数の周波数の自然数倍か否かが判断される。びびり振動の周波数は、X軸加速度センサ10とY軸加速度センサ12で加速度振動の振幅変化を検出することにより求めることができる。また、X軸ギャップセンサ20とY軸ギャップセンサ26のギャップの変化より周波数を求めることもできる。また、本実施形態はマイクロフォン36を備えるため、マイクロフォン36で収集した音の周波数を解析してびびり振動の周波数を求めても良い。
S370でびびり振動の周波数が主軸モータ40の回転数の周波数の自然数倍と判断された場合は、S380に進み、本びびり振動を主軸回転によるびびり振動と判断する。びびり振動が主軸の回転によって強制的に引き起こされたものと判断できるからである。一方、S370でびびり振動の周波数が主軸モータ40の回転数の周波数の自然数倍と判断されない場合はS390で当該びびり振動は、切屑周期による強制型のびびり振動であると判断される。これは、切削加工時に被削部材32より切屑が発生し、この切屑の形状に周期性が表れることが原因で発生するびびり振動であると判断できるからである。
また、S330でびびり振動が初期段階のびびり振動であると判断されない場合、S400に進み、エンドミル8の送り速度を増加した時にびびり振動の振幅が増加するか否かが判断される。これは自励型のびびり振動と強制型のびびり振動を区別するために行う判断である。エンドミル8の送り速度を増加させるには、送りモータ42をモータ制御装置38で制御することにより行う。例えば、エンドミル8の送り速度を10%増加させたときのびびり振動の振幅の大きさを比較する。エンドミル8の送り速度を増加させて振幅が増加すると判断された場合はS370に進む。一方、振幅が増加すると判断されない場合はS410に進む。なお、S400では送り速度を増加させてびびり振動の振幅が増加するか否かを判断したが、これ以外にも、送り速度を減少させてびびり振動の振幅の減少状況を検出しても良い。
S410では、主軸モータ40の回転数が減少させられる。これは主軸モータ40をモータ制御装置38で制御することにより行う。S410では例えば、主軸モータ40の回転数が10%減少させられる。なお、S410では、マシニングセンタ2の安定度を向上させることを優先して主軸モータ40の回転数を減少させたが、主軸モータ40の回転数を増加させた場合も、びびり振動の周波数は変化するため、主軸モータ40の回転数を増加させてステップ410の処理を行っても良い。また、回転数を増減する際には、回転数の増減に比例して送り速度を増減し、一刃あたりの送り量を一定量に保つこともできる。例えば、回転数を2倍にした場合は、送り量も2倍にすれば送り量を一定にすることができる。また、S410では、主軸モータ40の回転数を10%減少することとしたが、n=60f/{N(m−1/2(2j−1))}の式(nは現在の主軸モータ40の一分間あたりの回転数、Nはエンドミル8の刃数、fは検出されたマシニングセンタ2のびびり振動周波数、mは主軸モータの回転数nとびびり振動の周波数fの比60f/(nN)の整数部分,jは任意の自然数である)より主軸モータ40の回転数nを求めて、主軸モータ40の回転数としても良い。上記の式により演算される回転数nは、強制型のびびり振動を引き起こさない回転数nであることが分かっているため、S410で回転数nを用いることにより、後のS420の判断を精度良く行うことができる。S410で主軸モータ40の回転数を変えることにより、再度強制型のびびり振動が発生することがあるが、上記式の回転数を用いることで強制型のびびり振動を起こさず、良好にびびり振動のタイプの特定ができる。また、S410の主軸モータ40の回転数は、後述の図6のS520の(1)式より演算される回転数nを用いても良い。この場合は、再生型のびびり振動が起こっている場合は、良好にびびり振動を抑制できる。
S415では、S410の主軸モータ40の回転数を変化させたことによって、びびり振動が持続しているか否かの判断が行われる。S415で、びびり振動が持続していない、すなわちびびり振動があると判断されない場合は、図3のS140に進み、入力された条件で切削加工を行う。この場合、主軸モータ40の回転数を変化させたことにより、びびり振動がなくなったことを表示装置44に表示しても良い。また、S415でびびり振動があると判断された場合は、S420に進む。
S420では、びびり振動周波数が、主軸モータ40の回転数を変化させたことによって変化したか否かが判断される。自励型の摩擦型のびびり振動は、主軸の回転数を変化させてもびびり振動の周波数が変化しないことが知られており、摩擦型のびびり振動と再生型のびびり振動を判別するためのものである。S420でびびり振動周波数に変化があると判断された場合はS430に進み、変化がないと判断された場合は後述のS460に進む。びびり振動に周波数変化がある場合は再生型のびびり振動であり、周波数変化が無いと判断される場合は摩擦型のびびり振動であると判断できるからである。
S430では、びびり振動が直線的な振動か否かが判断される。びびり振動が直線的な振動であるとは、びびり振動の軌跡を水平面上に描画した場合に、振動の往復軌跡が1つの線あるいは1つの線に近い状態となることをいう。このびびり振動が直線的か否かは、X軸加速度センサ10とY軸加速度センサ12の各加速度出力値を合成してリサージュ図形を描いたときに、リサージュ図形が直線状になるか、膨らみを持った図形となるかで判断できる。この判断は、X軸ギャップセンサ20とY軸ギャップセンサ26の主軸モータ40作動前からのギャップ変化量を用いてリサージュ図形を描いても同様の判断を行うことができる。
S430でびびり振動が直線的な振動であると判断された場合は、S440に進み、モードカップリングを伴わない再生型びびり振動であると判断される。一方、S430でびびり振動が直線的な振動であると判断されない場合は、S450に進み、モードカップリングを伴う再生型びびり振動であると判断される。また、S460でびびり振動が直線的な振動であると判断された場合はS470に進み、S470で摩擦型のびびり振動と判断される。また、S460でびびり振動が直線的と判断されない場合はS480でモードカップリング型のびびり振動であると判断される。
図4のびびり振動タイプ特定ルーチンでびびり振動のタイプが特定された後、図3のS500にあるように、切削加工の継続可否の決定および切削加工条件の決定が行われる。これを図6を用いて説明する。
図6は、S500の切削加工の継続可否の決定と切削加工条件の決定を行うためのフローチャートである。図6のS510では、特定されたびびり振動が再生型のびびり振動であるか否かが判断される。再生型のびびり振動である場合はS520に進み、主軸モータの回転数nが以下の(1)式のように決定される。
n=60f/{(k+1)N} ・・・(1)
ここで、nは現在の主軸モータ40の一分間あたりの回転数、Nはエンドミル8の刃数、fは検出されたマシニングセンタ2のびびり振動周波数、kは被削面上に転写される振動の1刃ピッチ内の数60f/(nN)の整数部分である。なお、nは一分間あたりの主軸モータ40の回転数であり、演算によって求めた値である。
(1)式の導出方法について図7および図8を用いて説明する。図7はモードカップリングを生じない場合の再生型のびびり振動の安定限界線図であり、図7(a)は、主軸モータ40の回転数nに対する切込み深さの安定限界を示す図であり、この曲線で示す切込み深さより大きい切込み深さではびびり振動が発生し、この曲線で示す切込み深さより小さい切込み深さではびびり振動が発生せずに安定して加工を行うことができることを示している。また、図7(b)は、回転数nに対するびびり振動周波数fcを示す図であり、図7(c)は回転数nに対する今回の切削面と1刃前の切削面の起伏の位相遅れ(位相差)を示す図である。
図7において、びびり振動の安定限界とびびり振動周波数fcと位相遅れの関係について考察する。例えば、図7(a)のn=6000付近では機械系はびびり振動の少ない安定状態であり、この場合の位相遅れは図7(c)よりπ(rad)または2πであることが分かる。また、図7(a)で機械系が安定するような他のnについて見ても、位相遅れがπまたは2πで安定することが分かる。位相遅れがπで安定するのは、びびり振動数が機械系の共振周波数から大きくずれて各軸方向のコンプライアンスが小さくなり、大きな加振力が入力されてもほとんど振動変位が発生しないためである。また、位相遅れが2πでびびり振動が減少するのは、現在の切削面と一刃前の切削面の位相が一致し、機械系を振動させる加振力が少なくなるためである。
次に、モードカップリングを生じる場合の再生型のびびり振動安定限界線図を図8に示す。図8(a)は主軸モータ40の回転数nに対する切込み深さの安定限界を示す図であり、図8(b)は回転数nに対するびびり振動の周波数を示す図であり、図8(c)回転数nに対する今回の切削面と1刃前の切削面の起伏の位相遅れ(位相差)を示す図である。
図8(a)においてn=4500付近では機械系はびびり振動の少ない安定状態であり、この場合の位相遅れは図8(c)より2πである、また、図8(a)で機械系が安定するような他のnについて見ても位相遅れが2πで安定することが分かる。
したがって、再生型のびびり振動の場合は、モードカップリングを伴う場合であっても伴わない場合であっても位相遅れが2πであれば安定限界切込み量が大きくびびり振動が発生しにくいことがわかる。びびり振動の位相遅れεは、次の(2)式で与えられる。
ε=2π{60f/(nN)−k} ・・・(2)
ここで、上述のように、モードカップリングを伴うびびり振動であってもモードカップリングを伴わないびびり振動であっても、びびり振動を低減させる位相遅れεは2πであることが分かっているため、(2)式のεに2πを代入することにより(1)式を導出することができる。
したがって、主軸モータ40の回転数を(1)式を満たすようなものにすることにより、再生型びびり振動を抑制していくことができるため、S520で主軸回転数nを(1)式を用いて決定する。次にS530に進み、aの値をインクリメントする。aは図3のフローチャートでびびり振動を抑制する制御の繰り返し回数を示すものである。その後、S540で今回の切削加工が継続可能であると判断される。びびり振動が再生型のびびり振動であることが判断され、びびり振動を抑制する主軸モータ40の回転数nが求められたため、切削加工を継続しても問題が無いからである。
S510において、びびり振動が再生型のびびり振動であると判断されない場合、S550に進み、びびり振動が主軸回転による強制型であるか否かが判断される。S550でイエスの場合はS560に進み、主軸モータ40の回転数が低下させられる。回転数は例えば10%低下させられる。主軸回転による強制型のびびり振動は主軸モータ40の回転数を機械系の共振周波数からずらすことによりびびり振動を抑制することができる。S560では、機械系の安定性を向上させるために主軸モータ40の回転数を低下させているが、場合によっては主軸モータ40の回転数を増加させることによってもびびり振動を抑制することができる。その後、S570でaの値がインクリメントされ、S580において今回の切削加工は継続可能であるとされる。主軸回転による強制型のびびり振動は、主軸モータ40の回転数を変化させることでびびり振動を抑制させられることが知られており、切削加工を継続しても問題は無いからである。
S550で、びびり振動が主軸回転による強制型であると判断されない場合、S590に進み、びびり振動が切屑周期による強制型であるか否かが判断される。びびり振動が切屑周期による強制型であると判断された場合はS560に進む。一方、S590で切屑周期による強制型であると判断されない場合は、S600で切削加工の継続が不可とされる。これは、びびり振動のタイプが特定されないため、これ以降切削加工を行うことは好ましくないからである。
次に、図3のS160において、切削加工が継続可能であるか否かが判断される。図6のフローチャートで決定された態様で判断され、切削加工が継続可能である場合はS170に進み、決定された条件で切削加工が継続される。主軸モータ40の回転数が図6のフローチャートで求められた回転数に変更されるのである。その後、S180に進み、表示装置44を用いて操作者に対して所定の表示が行われる。この表示は操作者に有益な情報を表示するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、「現在のびびり振動は、モードカップリングを伴う再生型です。回転数を制御してびびり振動を抑制中です。」と表示することができる。
次にS190に進み、びびり振動を抑制する制御の繰り返し回数が10回を超えているか否かを判断する。びびり振動抑制制御の回数が規定回数、例えば10回を超えている場合はS200に進み、切削加工を中止する。びびり振動抑制制御を10回行ってもびびり振動が存在する場合は、これ以上切削加工を継続するのは好ましくないからである。その後S210で操作者に対して所定のメッセージが表示される。このメッセージは操作者に有益な情報を表示するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、「びびり振動を抑制する制御を行いましたが、所定回数(所定期間)内にびびり振動が無くなりませんので、切削加工を中止しました。びびり振動のタイプは再生型と推定されます。現在の回転数付近では安定領域が見つかりませんでした。他の対策として、例えば刃数の減少、切込み量の減少、剛性の向上等が考えられます。」と表示することができる。表示を行った後、制御を終了する。
また、S190でびびり振動抑制制御の繰り返し回数が規定回数、例えば10回を超えていると判断されない場合はS210に進み、切削加工が終了したか否かが判断される。切削加工が終了したと判断される場合は制御を終了する。S210で切削加工が終了していると判断されない場合は、S130に戻り、再度、びびり振動があるか否か判断される。
図3のS160で、切削加工が継続可能と判断されない場合はS230で切削加工が中止され、S240で操作者に対して所定のメッセージが表示される。このメッセージは操作者に有益な情報を表示するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、「びびり振動のタイプを特定することができませんので、切削加工を中止しました」、または「びびり振動のタイプは摩擦型と推定されます。一般的な対策として、刃先が鋭利な工具への交換、動コンプライアンスの低減(すなわち剛性の向上)、切削に関与する切れ刃幅の減少、切削油剤の供給等が考えられます」と表示することができる。表示を行った後、制御を終了する。
上述したように、第一の実施形態においては、びびり振動の周波数を実際に検出し、びびり振動の周波数に応じて主軸モータ40の回転数を制御するため、発生したびびり振動に対して好ましい対応を行うことができる。
また、第一の実施形態においては、X軸加速度センサ10およびY軸加速度センサ12を用い、実際に検出することでびびり振動のタイプを特定することができる。また、上記の加速度センサに代えて(もしくは併用して)、X軸ギャップセンサ20およびY軸ギャップセンサ26を用いてびびり振動を検出することもできる。
また、第一の実施形態においては、びびり振動を実際に検出して、びびり振動の初期段階の振幅の増加傾向が指数関数的に増加する場合に、びびり振動を自励型のびびり振動であると特定することができる。また、びびり振動の初期段階の振幅の増加傾向が線形的に増加する場合は、びびり振動を強制型のびびり振動であると特定することができる。
また、第一の実施形態においては、びびり振動の周波数を実際に検出して、びびり振動が初期段階に線形的に増加する場合であって、びびり振動の周波数が主軸モータ40の回転数の自然数倍であるときに、びびり振動を主軸回転によるものであると特定することができる。また、びびり振動周波数が主軸モータ40の回転数の自然数倍でないとき、びびり振動を切屑周期による強制型であると特定することができる。
また、第一の実施形態においては、びびり振動の周波数を実際に検出し、主軸モータ40の回転数を減少させたときのびびり振動周波数に変化がある場合、びびり振動が再生型のびびり振動であると特定することができる。また、上記の場合にびびり振動周波数に変化が無い場合、びびり振動が摩擦型のびびり振動であると特定することができる。
また、第一の実施形態においては、びびり振動の軌跡を検出することで、軌跡が直線的である場合、モードカップリングを伴わないびびり振動であると特定することができる。上記の場合でびびり振動が直線的で無い場合、モードカップリングを伴うびびり振動であると特定することができる。
また、第一の実施形態においては、びびり振動のタイプを特定して、特定されたびびり振動に応じて主軸モータ40の回転数を制御するため、びびり振動が発生した場合でも、発生したびびり振動のタイプに応じて好ましい対応を行うことができる。なお、第一の実施形態では、特定されたタイプに応じて主軸モータ40の回転数を自動制御するものを示したが、これに限らず、特定されたびびり振動のタイプに応じて最適な主軸モータ40の回転数を表示装置44に示して操作者に回転数の変更を促しても良いし、回転数を表示して次回の切削加工の参考にすることとしても良い。また、回転数を増減する際には、それに比例して送り速度を増減し、一刃あたりの送り量を一定に保っても良い。
また、第一の実施形態においては、びびり振動のタイプが自励型の再生型のびびり振動と特定された場合、1刃前の切削面の起伏に対する位相遅れが2πとなるような回転数が主軸モータ40の回転数に設定されるため、再生型のびびり振動を良好に抑制することができる。また、第一の実施形態では、再生型のびびり振動の場合は、位相差を2πとして主軸モータ40の回転数を演算したが、びびり振動の軌跡を検出してモードカップリングを伴わないびびり振動であると判断できる場合は、位相差は2πの他にπとしても良い。図7より、位相差がπでもびびり振動が抑制されることが知られており、このように位相差を選択することで、決定される主軸モータ40の回転数の選択の幅を広げることができる。
また、第一の実施形態においては、びびり振動のタイプが強制型のびびり振動と特定された場合、主軸モータ40の回転数を低下させることでびびり振動を良好に抑制することができる。または、主軸モータ40の回転数の自然数倍がびびり振動の周波数と最も離れる回転数を利用することで、びびり振動を良好に抑制することができる。
また、第一の実施形態においては、びびり振動のタイプを特定して主軸モータ40の回転数を制御してびびり振動の抑制を試みても、所定回数(所定期間)内にびびり振動が抑制されない場合、びびり振動の抑制が困難であるとして切削加工を中止させることができる。なお、第一実施形態では、上記の場合に切削加工を自動的に中止することとしたが、びびり振動の抑制が困難であることを表示装置44に表示して、操作者に切削加工を中止する旨を促すこととしても良い。
また、第一の実施形態においては、びびり振動の振幅の増加傾向を求め、びびり振動が自励型であるか強制型であるかの判断を行ったが、びびり振動の振幅の増加傾向を用いて機械系の不安定度合いを推定することもできる。びびり振動の振幅の増加傾向が大きい場合は機械系の不安定度合いが高いと判断することができる。この不安定度合いの情報を表示装置44を用いて操作者に表示することもできる。また、機械系の不安定度合いはマイクロフォン36で測定した音の大きさより推定することとしても良い。
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。第一の実施形態はびびり振動を実際に検出し、びびり振動のタイプに応じて主軸モータ40の回転数を制御したり、切削加工を停止させるものであった。第二の実施形態は、試行的に切削加工を行ってびびり振動を発生させてびびり振動の周波数を検出し、このびびり振動周波数を用いて主軸モータの走査回転数範囲を特定し、びびり振動の評価を行うものである。びびり振動には、主軸モータの回転速度やエンドミルなどの切削器具の送り速度が深く関係する。第二の実施形態では、主軸モータの走査周波数をある範囲に特定してびびり振動を評価することで、切削加工時の主軸モータの回転数と送り速度を決定するものである。
図9は第二の実施形態の作動の順序を示すものである。なお、第二の実施形態の全体構成図は第一の実施形態の図1および図2と同じであるため、同じ図番を用いて説明する。S700において、主軸モータ40をある回転数nで作動させる。この場合にマシニングセンタ2にびびり振動が発生する。S710に進み、マシニングセンタ2に発生しているびびり振動の周波数を検出する。びびり振動の周波数の検出は、第一の実施形態と同様にX軸加速度センサ10とY軸加速度センサ12を用いて検出する。
次に、S720において、(2)式に主軸モータ40の回転数nと検出されたびびり振動周波数fcを代入し、位相差(位相遅れ)εとkを特定する。ここでεは0≦ε≦2πとなるものとし、kはk>0とする。εは上記範囲であれば任意の値を用いることができる。
次にS730に進み、特定されたεとkを用いて主軸モータ40の回転数nの走査範囲を(3)式のように決定する。
60f/(k+ε/2π)N≦n≦60f/{k+(ε/2π)−1}N ・・・(3)
または
60f/{(k+ε/2π+1)N}≦n≦60f/{k+(ε/2π)N}
・・・(4)
この走査範囲は、図7(a)において、あるkとεに相当する主軸モータ40の回転数からk−1あるいはk+1とεに相当する主軸モータ40の回転数に該当する。このような範囲の走査範囲で主軸モータ40を作動させる際は、主軸モータ40の回転数が変化しても一刃あたりの送り量が一定になるように、主軸の送り速度を変化させることが望ましい。送り速度以外の加工条件、例えば、切削工具、被削材、切込み及びクーラントの供給状態は一定とすることが望ましい。
次に、S740に進み、主軸モータ40の回転数を(3)式あるいは(4)式のように変化させてびびり振動を発生させ、主軸モータ40の回転数とびびり振動の発生状況の評価を行う。この評価により、切削加工を行う際の望ましい主軸モータ40の回転速度nと送り速度を決定する。S740で決定された回転速度nと送り速度を用いて、後に実際の切削加工が行われる。
したがって、第二の実施形態では、実際の切削加工前の試行段階で主軸モータ40の回転数nとびびり振動との評価を行うことができるため、適切な主軸モータ40の回転数を決定することができる。また本実施形態では、主軸モータ40の回転数の走査範囲を(3)式のように設定しているため、闇雲に主軸モータ40の回転数の全範囲を走査する場合に比べ、効率良くびびり振動の評価を行うことができる。
また、第二の実施形態においては、X軸加速度センサ10およびY軸加速度センサ12や、X軸ギャップセンサ20およびY軸ギャップセンサ26を用いてびびり振動の大きさを定量化し、びびり振動の不安定度合いを定量化することもできる。びびり振動の不安定度合いは、マイクロフォン36でびびり振動の発生音の大きさを定量化することによっても実現できる。
次に第三の実施形態について説明する。第三の実施形態も第二の実施形態と同様に、図1および図2の図番を用いて説明する。第二の実施形態では主軸モータ40の走査範囲を求め、求められた走査範囲について主軸モータ40を作動させ、びびり振動の発生状況の評価を行った。第三の実施形態は、第二の実施形態で評価を行った主軸モータ40の走査範囲以外の回転数について、びびり振動の起きない安定領域を推定することを目的とする。びびり振動が起きないような安定な状態となる主軸モータ40の回転数nは、(1)式にびびり振動周波数fを代入することにより求めることができる。第二の実施形態で特定したkの値以外のk(k>0)については、(1)式より主軸モータ40の回転数nを求めることができる。例えば、第二の実施形態で特定したkの値から1を引いたkの値を(1)に代入した場合、びびり振動が起きないような安定な状態となる主軸モータ40の回転数nは高回転側になるが、この回転数が主軸モータ40の定格回転数以内もしくは良好な加工を行うことができる切削速度範囲内であれば、当該回転数においてもびびり振動の少ない切削加工が可能であると事前に推測できる。このように、kの値が異なってもεの値が同じであれば同様の切削安定性を持つことが知られていることを利用し、再度第二の実施形態のように切削加工の試行を行うことなく、最適な主軸モータ40の回転数や送り速度を決定することができる。
次に、第四の実施形態について説明する。上述した第一乃至第三の実施形態は、切削加工の回転工具に等ピッチの回転工具あるいは一刃の切削工具を用いたものについて説明した。第四の実施形態は、不等ピッチの回転工具を用いて切削加工を行った場合のびびり振動を抑制する方法である。なお、第四の実施形態でもマシニングセンタ2の全体構成は第一の実施形態と同じのため、図1および図2と同じ図番を用いて説明する。
第四の実施形態を説明するにあたり、まず、不等ピッチエンドミルを用いることによる再生型びびり振動の抑制原理について説明する。図10は2枚刃の不等ピッチエンドミルを用いて切削した場合の切削部の模式図である。また、図11は、不等ピッチエンドミルのピッチ角を示す図である。図11の(a)にあるように、不等ピッチエンドミルの2枚刃の間のピッチ角をそれぞれθおよびθとする。また、θに対するθのピッチ角の増分をΔθとする。なお、θ+θ=2π、θ≠θとする。また、図10のように、1枚目の刃に対する2枚目の刃の位相遅れをφとし、2枚目の刃に対する1枚目の刃の位相遅れをφとする。このφとφの差Δφが(5)式を満たすとき、再生型のびびり振動が抑制されることが知られている。
Δφ=φ−φ={60f(θ−θ)}/n
=(60fΔθ)/n=2π{(1/2)+m} ・・・(5)
ここで、nは主軸モータの回転数、mは自然数である。なお、(5)式の導出に関しては、φ=(60fθ)/n、φ=(60fθ)/nの関係を用いている。
実際に機械系の特性と切削抵抗を仮定してびびり振動の安定限界を解析した結果を図12に示す。図12に示すように、(5)式の条件を満たすΔφにおいて、びびり振動の安定限界が増大していることが分かる。図12のΔφ=π、3π、5π、7π、9πでびびり振動が安定している。したがって、(5)式にθ+θ=2πの関係を代入して式(6)を得る。
n={120f(π−θ)}/{2π{(1/2)+m}} ・・・(6)
(6)式より、θとびびり振動周波数fが既知であれば、びびり振動を抑制する主軸モータの回転数nを求めることができる。以上の見地より、第四の実施形態の作動を説明するためのフローチャートを図13に示す。
図13のS800において、切削条件等の入力を行い、S805に進み、aを0とする。次に、S810で不等ピッチ角θを入力し、S820に進み、主軸モータ40および送りモータ42の作動が開始される。S830では、マシニングセンタ2にびびり振動が発生しているか否かが判断される。びびり振動が発生していると判断されない場合はS840に進み、入力された条件で切削加工を行い、S850で切削加工工程が終了したと判断された場合は切削加工を終了する。
一方、S830で、びびり振動が発生していると判断された場合はS860に進み、主軸モータ40の回転数nが(6)式のように決定され、主軸モータ40の回転数がnに制御される。その後、S870に進み、びびり振動があるか否かが判断される。S870でびびり振動があると判断されない場合はS910に進み、切削加工が終了した場合は処理を終了する。S910で切削加工が終了していない場合は、S830に進む。
一方、S870でびびり振動があると判断された場合は、S880に進み、aの値がインクリメントされる。その後、S890で、aの値が10より大きいか否かが判断される。aの値が10よりも大きいと判断される場合は、S860で演算した主軸モータ40の回転数を10回変更しても、びびり振動が抑制していないため、S900で切削加工を中止する。一方、S890でaの値が10よりも大きいと判断されない場合は、S860で再度、主軸モータ40の回転数が演算され、変更される。
上述したように、第四の実施形態では、S860で主軸モータ40の回転数を(6)式に設定するため、びびり振動を良好に抑制することができる。S860の(6)式はピッチ角θを考慮して主軸モータ40の回転数を演算するため、この回転数を用いることにより、良好にびびり振動を抑制することができる。
なお、第四の実施形態では、S830でびびり振動があるか否かを判断し、びびり振動がある場合にS860で(6)式を用いて主軸モータ40の回転数を演算した。(6)式は再生型のびびり振動を抑制する主軸モータ40の回転数を演算する式であるため、再生型のびびり振動を良好に抑制することができる。一般的に不等ピッチのエンドミルを用いる場合は、再生型のびびり振動を抑制する場合が多い。したがって、第四の実施形態では、びびり振動のタイプを特定することなく(6)式より主軸モータ40の回転数を演算するため、びびり振動のタイプを特定する際の演算負荷を増加させることなく、良好にびびり振動を抑制することができる。なお、第四実施形態では、びびり振動のタイプを特定せずに主軸モータ40の回転数を演算したが、この方法以外にも、第一の実施形態のように、びびり振動のタイプを特定して、びびり振動のタイプに応じて主軸モータ40の回転数を特定するようにしても良い。例えば、図6のS520の(1)式を(6)式に置き換えて、再生型のびびり振動の場合に主軸モータ40の回転数を(6)式を用いて演算し、他のタイプのびびり振動の場合は、S560で主軸モータ40の回転数を低下させることにより、良好にびびり振動を抑制することができる。
なお、第四の実施形態では、2枚刃の不等ピッチのエンドミルの場合について主軸モータ40の回転数nを(6)式を用いて演算した。エンドミルの刃数を一般化した式の導出方法について述べる。不等ピッチエンドミルが3枚刃の場合であって、3つのピッチ角の増分Δθがいずれも等しい場合は、(5)式と同様に、以下の(7)式および(8)式を得る。
Δφ=φ−φ=(60fΔθ)/n ・・・(7)
Δφ=φ−φ=(60fΔθ)/n ・・・(8)
ここで、Δφ1は2枚目の刃に対する1枚目の刃の位相遅れ、Δφ2は3枚目の刃に対する2枚目の刃の位相遅れである。3枚刃の場合は、Δφ1=Δφ2=2π/3の場合に再生型のびびり振動の成分がキャンセルされる。したがって、
Δφ=Δφ=(60fΔθ)/n=2π/3+2mπ
=2π{(1/3)+m} ・・・(9)
となる。ここで、mは自然数である。よって、φ=(60fθ)/n、φ=(60fθ)/n、φ=(60fθ)/nの関係を用いて、
n=(60fΔθ)/{2π{(1/3)+m}} ・・・(10)
を得ることができる。したがって、図11の(b)に示すように、エンドミルがN枚刃の場合であって、j番目(jは1以上かつ、N−1以下の整数)のピッチ角に対するj+1番目のピッチ角がいずれもΔθの場合は、(10)式より、
n=(60fΔθ){2π{(1/N)+m}} ・・・(11)
を一般式として導くことができる。なお、(11)式は、j番目のピッチ角に対するj+1番目のピッチ角がいずれもΔθの場合の一般式であるが、各ピッチ角の順序が異なっても(11)式は成立する。例えば、4枚刃の場合であって、75°、85°、95°、105°の順番の不等ピッチエンドミルの安定回転数nは、75°、95°、85°、105°の順番の不等ピッチエンドミルの安定回転数nと等価である。したがって、(11)式より、N枚刃の不等ピッチエンドミルの安定回転数を演算することができる。
また、図11の(c)にあるような4枚刃を考えてみると、(c)のような場合は、2×2枚刃とみなすことができ、安定となる位相差の周期をπとすることができる。したがって、これを一般化すると、N=L×M枚刃(Lは自然数、Mは2以上の自然数)の不等ピッチエンドミルの場合の安定化回転数nは、N枚刃の不等ピッチエンドミルとみなして、(11)式を用いることにより安定回転数nを求めることができる。
本発明に係る第一実施形態のマシニングセンタの全体構成図である。 本発明に係る第一実施形態のマシニングセンタの制御の構成を説明する概略図である。 本発明に係る第一実施形態の切削加工の作用を説明するためのフローチャートである。 本発明に係る第一実施形態におけるびびり振動のタイプを特定するためのフローチャートである。 びびり振動の振幅の変化を説明するグラフである。 本発明に係る第一実施形態の切削加工継続可否及び切削条件を決定するためのフローチャートである。 モードカップリングを伴わないびびり振動の回転数に対する安定限界を示すグラフである。 モードカップリングを伴うびびり振動の回転数に対する安定限界を示すグラフである。 本発明に係る第二の実施形態のびびり振動を評価するためのフローチャートである。 不等ピッチの切削工具を用いた際のびびり振動の発生原理を説明するための図である。 不等ピッチの切削工具のピッチ角を説明するための図である。 不等ピッチの切削工具を用いた際のびびり振動の回転数およびピッチ角に対する安定限界を示すグラフである。 本発明に係る第四の実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。 びびり振動の発生原理を説明するための図である。
符号の説明
2 マシニングセンタ
8 エンドミル
10 X軸加速度センサ
12 Y軸加速度センサ
14 回転センサ
20 X軸ギャップセンサ
26 Y軸ギャップセンサ
32 被削部材
34 演算装置
40 主軸モータ
42 送りモータ
44 表示装置

Claims (4)

  1. 切削工具、被削部材または機械加工装置のびびり振動を検出するびびり振動検出手段と、
    検出されたびびり振動に基づき、びびり振動を特定するびびり振動特定手段と、
    前記切削工具または被削部材の回転数を検出する回転数検出手段と、
    前記切削工具または被削部材の回転数を変更する回転数変更手段と、
    を備える機械加工装置のびびり振動評価装置であって、
    前記びびり振動検出手段は、びびり振動の周波数を検出するものであり、
    前記びびり振動特定手段は、前記回転数変更手段により前記切削工具または被削部材の回転数が変更させられたときのびびり振動の周波数の変化に基づき、再生型のびびり振動の特定を行うことを特徴とする機械加工装置のびびり振動評価装置。
  2. 切削工具、被削部材または機械加工装置のびびり振動を検出するびびり振動検出手段と、
    検出されたびびり振動に基づき、びびり振動を特定するびびり振動特定手段と、
    を備える機械加工装置のびびり振動評価装置であって、
    前記びびり振動検出手段は、びびり振動のある一の面における振動軌跡を検出するものであり、
    前記びびり振動特定手段は、検出された振動軌跡に基づき、モードカップリングを伴うびびり振動を特定することを特徴とする機械加工装置のびびり振動評価装置。
  3. 切削工具、被削部材または機械加工装置のびびり振動を検出するびびり振動検出手段を備え、
    前記切削工具のN枚の刃が、M(M:2以上の自然数)個の不等ピッチ角θ,θ+Δθ,・・・,θ+(M−1)Δθ(Δθ:正のピッチ角の増分)をL(L:自然数)個ずつ持つ(N=M×Lとなる)場合、
    前記切削工具または被削部材の回転数nは、次の式
    n=(60fΔθ)/{2π{(1/N)+m}}
    (n:切削工具または被削部材の一分間あたりの回転数演算値、fc:びびり振動の周波数、m:自然数)
    により演算されることを特徴とする機械加工装置の回転数演算装置。
  4. 切削工具または被削部材をある回転数nで回転させるステップと、
    びびり振動の周波数fを検出するステップと、
    次の式に回転数nと検出されたfcを代入して
    ε=2π{60f/(nN)−k}
    (n:回転手段の一分間あたりの回転数現在値、f:びびり振動の周波数、N:切削工具の刃数、k:60f/nNの整数部分)
    位相差εおよびkを得るステップと、
    得られた位相差εおよびkを次式
    60f/{(k+ε/2π)N}≦n≦60f/{{k+(ε/2π)−1}N}または
    60f/{(k+ε/2π+1)N}≦n≦60f/{k+(ε/2π)N}
    に代入して前記回転手段の走査回転数nの範囲を得るステップと、
    得られた走査回転数範囲内で前記回転手段を作動させて、びびり振動の発生状況を評価するステップと、
    からなる機械加工装置のびびり振動評価方法。
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