JP5226484B2 - びびり振動抑制方法 - Google Patents
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特許文献1に記載されている方法は、本加工の前に試験加工を行い、切削荷重にもとづきびびり振動を推定して加工条件を決定することで、本加工においてびびり振動を回避しようとするものである。また、特許文献2に記載の方法は、加工中のびびり振動周波数を求めるとともに、そのびびり振動周波数からびびり振動が発生しない主軸の回転速度を算出し、主軸の回転速度を当該回転速度に変更することで、びびり振動を抑制しようとするものである。
式1:Sp1=60×fc/{Z×(k+1)}
式2:Sp2=60×fc/(Z×k)
尚、fcは、第1工程で取得されるびびり振動の周波数であり、Zは、工具の刃数である。また、kは、60×fc/(Z×S)の整数部分であり、Sは、主軸の1分あたりの回転速度である。
また、特に請求項3に記載の発明によれば、回転速度の変更に加えて、切り込み量をも変更しながらびびり振動の抑制を図るため、極めて確実にびびり振動を抑制することができる。
工作機械は、上方に設けた主軸頭1に回転自在な主軸2を設け、その主軸2に取り付けた工具3によって、下方の加工テーブル上にセットされた被加工物4を加工する周知の構成からなる。
5は、主軸頭1の送り動作と、主軸2の回転速度とを制御する数値制御装置、6は、数値制御装置5と情報を送受信可能な演算装置で、演算装置6には、主軸頭1に設けられてびびり振動の振動加速度を計測する加速度センサ7と、メモリ装置8と、工具の刃数等を入力する外部入力装置9とが夫々接続されている。
本発明では、本切削加工を行う前に、予め図2に示すようなフローチャート図にもとづく試験加工を実施する。まず、所定の設定回転速度(加工プログラム等にて設定されている回転速度)で工具3を回転させて試験加工を開始すると、その設定回転速度による加工においてびびり振動が発生しているか否かを判断する(S1)。この判断は、例えば加速度センサ7から得られる振動加速度が所定の閾値を超えた場合が複数回検出されたような際に、びびり振動の発生とするものである。そして、びびり振動の発生が確認されると、加速度センサ7から演算装置6へびびり振動波形を入力し、当該びびり振動波形をフーリエ変換する(S2)とともに、フーリエ変換した波形の最大値Gとその周波数fcとを取得する(S3)。
一方、振動加速度が所定の閾値を下回らない(S8でNOと判断する)ときには、主軸2の回転速度(ここでは、下限Sp1)とS7で取得した最大値Gとを関連づけてメモリ装置8に記憶(S9)し、主軸2の回転速度が上限Sp2に達しているか否かを確認(S10)した後、主軸2の回転速度を所定の単位変更量ΔSだけ増加させる(S11)。その後、単位変更量ΔSだけ増加した回転速度において、振動波形をフーリエ変換(S6)するとともに、フーリエ変換した波形の最大値Gを取得して(S7)、その最大値Gと閾値との比較(S8)を再び行う。そして、回転速度及びその回転速度における波形の最大値Gの記憶(S9)、主軸2の回転速度の単位変更量ΔS増加(S11)、回転速度変更後のフーリエ変換(S6)、その波形の最大値Gの取得(S7)、及び最大値Gと閾値との比較(S8)を、最大値Gが閾値以下となるまで、若しくは、主軸2の回転速度が上限Sp2に達するまで繰り返す。尚、当該繰り返しの中で、最大値Gが所定の閾値以下になると、その時の回転速度を振動抑制回転速度としてメモリ装置8に記憶し、試験加工を終了して、当該振動抑制回転速度にて主軸2を回転させながら本切削加工を行う。
主軸2の回転速度を変更してびびり振動の周波数と振動加速度との値を実測した場合、図3に示すように、周波数及び振動加速度は共に回転速度に対して周期性のある挙動を示すことが確認されている。したがって、現在の主軸2の回転速度が含まれる1周期内で最もびびり振動を抑制できる回転速度を選択することが、効率の良いびびり振動抑制といえる。そこで、S4では、びびり振動が発生した回転速度を含む1周期に対応する回転速度の下限Sp1及び上限Sp2を、下限Sp1については下記数式(1)により、上限Sp2については下記数式(2)により夫々求める。尚、この1周期に対応する回転速度の間隔は一定ではなく、回転速度そのものや種々の加工条件に依存して変化する(例えば、図3においては、回転速度が小さい方が1周期となる間隔も狭くなっている)。
Sp2=60×fc/(Z×k) ・・・(2)
尚、fcは、S3で求められるびびり振動の周波数であり、Zは、工具の刃数である。また、kは、60×fc/(Z×S)の整数部分であり、Sは、主軸2の1分あたりの回転速度である。
このようにして機械構造系のコンプライアンスピークが1つの場合には、下限Sp1及び上限Sp2を求めることができ、求めた下限Sp1及び上限Sp2を用いてS5以降を実行すればよい。
図4は、ピークが2つある場合の回転速度に対するびびり振動の周波数及び振動加速度の実測値の一例を示した図であり、周波数が4900Hzのびびり振動と周波数が5300Hz付近のびびり振動とが混在し、2つの周期が重なり合っていることがわかる。この2つの周期に差はあるものの、回転速度の局所的な範囲で見る場合、その差は小さく問題にならない程度であり、どちらか一方の周波数を用い、上記数式(1)及び(2)により下限Sp1及び上限Sp2を求めれば良い。すなわち、例えば回転速度7050min−1における周波数4900Hzから下限Sp1=7000min−1、上限Sp2=8167min−1を求めたとしても、これは周波数5300Hzの周期とも略一致しており、周波数4900Hzから求めた下限Sp1及び上限Sp2を用いることで、十分に効果的な振動抑制を期待することができる。そして、このように求めた下限Sp1及び上限Sp2を用いてS5以降を実行すればよい。尚、図4では、5600Hzの周波数も観測されているが、この時の振動加速度は十分に小さく、びびり振動が発生している状態ではないため、考慮する必要はない。
また、コンプライアンスピークが1つの場合は勿論、複数ある場合にも振動抑制回転速度を求め、びびり振動を効果的に抑制することができ、加工面精度の高い安定した加工を行うことができる。
さらに、回転速度の変更のみでは対応できない場合、切り込み量をも変更しながらびびり振動の抑制を図るため、極めて確実にびびり振動を抑制することができる。
加えて、試験加工を行った上で本切削加工を行うため、びびり振動が十分に抑制された状態で本切削加工を行うことができ、びびり振動が十分に抑制できていない状態のまま加工し終えた製品等の無駄が生じない。
回転速度Sp3=60×fc/(Z×ks) ・・・(3)
また、必ずしも等分割したり単位変更量ΔSを用いたりするのではなく、任意の間隔で段階的に回転速度を変更させても良いことは言うまでもない。
さらにまた、上記実施形態では、主軸の回転速度を下限から上限までの間で変更中に、一度でも振動波形の最大値Gが閾値を下回ると、そのときの回転速度を振動抑制回転速度として記憶するように構成しているが、たとえ振動波形の最大値Gが閾値を下回ったとしても全段階において振動波形の最大値Gの取得を行い、その中から振動波形の最大値Gが最小となる回転速度を選択するように構成してもよい。
加えて、上記実施形態では、びびり振動は機械構造の固有振動数付近で発生するとしているが、被加工物の固有振動数付近で発生する場合もあり、その場合においても本方法が有効である。
Claims (3)
- 主軸に装着した工具を回転させて加工を行う工作機械において、加工時に発生したびびり振動を抑制するびびり振動抑制方法であって、
前記びびり振動の周波数及び加速度を取得する第1工程と、
取得した前記びびり振動の周波数及び加速度と、前記工具の刃数と、前記主軸の回転速度とから、前記主軸の回転速度を変更させる際の下限及び上限を求める第2工程と、
前記主軸の回転速度を下限から上限の間で段階的に変更するとともに、各段階において前記びびり振動の加速度を取得し、取得した前記びびり振動の加速度を取得した段階における回転速度に対応づけて記憶する第3工程と、
全段階における前記びびり振動の加速度の取得後、前記加速度が最も小さくなる前記回転速度にて前記主軸を回転させる第4工程と
を実行することを特徴とするびびり振動抑制方法。 - 前記第2工程において、前記下限Sp1を下記式(1)により、前記上限Sp2を下記式(2)により夫々求めることを特徴とする請求項1に記載のびびり振動抑制方法。
式1:Sp1=60×fc/{Z×(k+1)}
式2:Sp2=60×fc/(Z×k)
尚、fcは、第1工程で取得されるびびり振動の周波数であり、Zは、工具の刃数である。また、kは、60×fc/(Z×S)の整数部分であり、Sは、主軸の1分あたりの回転速度である。 - 前記第4工程の実行後、前記工具の切り込み量を減少させる第5工程を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載のびびり振動抑制方法。
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