JP4582661B2 - 工作機械の振動抑制装置 - Google Patents

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Description

本発明は、工具又はワークを回転させながら加工を行う工作機械において、加工中に発生する振動を抑制するための振動抑制装置に関するものである。
従来より、たとえば回転可能な主軸にワークを支持させ、ワークに対して工具を送りながら、ワークに加工を施すといった工作機械がある。該工作機械においては、切削加工における切り込み量を必要以上に大きくすると、加工中に所謂「びびり振動」が発生して、加工面の仕上げ精度を悪化させてしまうという問題がある。このとき、特に問題となるのは、工具とワークとの間に生じる自励振動である「再生型びびり振動」である。この再生型びびり振動(以下単に「びびり振動」という。)については、特許文献1、2に記載されているように、加工を行うにあたって、工具やワーク等のびびり振動が生じる系の固有振動数や加工中におけるびびり振動数を求め、固有振動数又はびびり振動数を60倍して工具刃数及び所定の整数で除した値を回転速度とすればよいことが知られている。
特開2003−340627号公報 特表2001−517557号公報
しかし、上記対策は、回転速度を減少させる方向であるため、回転速度の変化量が大きい場合にはびびり振動の抑制に時間が掛かり、加工面にびびり痕が残ってしまうという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、びびり振動が生じた際にはその抑制に係る時間が最小となる最適回転速度を瞬時に求めることができ、びびり振動を短時間で効果的に抑制可能な工作機械の振動抑制装置を提供しようとするものである。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、工具又はワークを回転させるための回転軸を備えた工作機械において、前記回転軸を回転させた際に生じるびびり振動を抑制するための振動抑制装置であって、回転中の回転軸の時間領域での振動を検出する検出手段と、検出手段により検出された時間領域の振動に基づいて、びびり振動数及びそのびびり振動数における周波数領域の振動を算出すると共に、算出した周波数領域の振動が所定の閾値を超えた場合、所定のパラメータに基づき、びびり振動を抑制可能な回転軸の最適回転速度を算出する演算手段と、その演算手段により算出された最適回転速度にて回転軸を回転させる回転速度制御手段と、を備え、演算手段は、所定のパラメータとなる下記の演算式(1)〜(4)に基づいて最適回転速度の演算を行うものであり、その際に、演算式(3)に基づいて算出した位相情報を所定の設定定数と比較し、その比較結果に基づいて下記の変更式(1)(2)の何れかを用いてk1値を求め、得られたk1値から演算式(4)に基づいて最適回転速度を算出することを特徴とするものである。
k’値=60×びびり振動数/(工具刃数×回転軸回転速度) ・・・(1)
k値=k’値の整数部 ・・・(2)
位相情報=k’値−k値 ・・・(3)
位相情報が設定定数以上の場合:k1値=k値+1・・変更式(1)
位相情報が設定定数未満の場合:k1値=k値・・変更式(2)
最適回転速度=60×びびり振動数/(工具刃数×k1値)・・・(4)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、設定定数を0.5としたものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、設定定数を0.75としたものである。
尚、請求項1における「振動」とは、振動加速度、振動による変位、及び振動による音圧等、振動自体は勿論、振動に起因して回転軸に発生し、間接的に振動を検出できる物理的変化を含むものである。
本発明によれば、実際に回転している回転軸に生じるびびり振動に基づいて最適回転速度を算出するため、より正確な最適回転速度を直ちに算出することができると共に、算出した最適回転速度を直ちに回転軸の回転に活かすことができる。特に、演算手段は、回転速度の変化量が最小となるように位相情報と設定定数との比較結果及びk値に基づいてk1値を決定し、そのk1値を用いた演算式(4)によって最適回転速度を算出するので、びびり振動が短時間で抑制可能となる。従って、加工面の仕上げ精度を高品位に保つことができ、工具摩耗の抑制、工具欠損の防止も期待できる。
以下、本発明の一実施形態となる振動抑制装置について、図面をもとに説明する。
図1は、振動抑制装置10のブロック構成を示した説明図である。図2は、振動抑制の対象となる回転軸ハウジング1を側面から示した説明図であり、図3は、回転軸ハウジング1を軸方向から示した説明図である。
振動抑制装置10は、回転軸ハウジング1にC軸周りで回転可能に備えられた回転軸3に生じるびびり振動を抑制するためのものであって、回転中の回転軸3に生じる時間領域の振動加速度を検出するための振動センサ(検出手段)2a〜2cと、該振動センサ2a〜2cによる検出値をもとにして回転軸3の回転速度を制御する制御装置(演算手段、及び回転速度制御手段)5とを備えてなる。
振動センサ2a〜2cは、図2及び3に示す如く回転軸ハウジング1に取り付けられており、一の振動センサは、他の振動センサに対して直角方向への時間領域の振動加速度(時間軸上の振動加速度を意味する)を検出するようになっている(たとえば、振動センサ2a〜2cにて、それぞれ直交するX軸、Y軸、Z軸方向での時間領域の振動加速度を検出するようにする)。
一方、制御装置5は、振動センサ2a〜2cから検出される時間領域の振動加速度をもとにした解析を行うFFT演算装置6と、該FFT演算装置6にて算出された値に基づいて最適回転速度の算出等を行うパラメータ演算装置7と、回転軸ハウジング1における加工を制御するNC装置8とを備えており、FFT演算装置6における後述の如き解析、及び回転軸3の回転速度のモニタリングを行っている。
以下、制御装置5におけるびびり振動の抑制制御について、図5のフローチャートに基づいて説明する。
まず、FFT演算装置6では、回転中に常時検出される振動センサ2a〜2cにおける時間領域の振動加速度のフーリエ解析を行い(S1)、図4の4に示すような最大加速度とその周波数(びびり振動数)とを算出する(S2)。
次に、パラメータ演算装置7で、上記S2で算出された最大加速度と予め設定された所定の閾値とを比較し(S3)、閾値を超えた場合には、回転軸3に抑制すべきびびり振動が生じているとして、S4で、びびり振動数、工具刃数、回転軸3の回転速度から以下の演算式(1)〜(3)により、k値及び位相情報を算出する。
k’値=60×びびり振動数/(工具刃数×回転軸回転速度) ・・・(1)
k値=k’値の整数部 ・・・(2)
位相情報=k’値−k値 ・・・(3)
ここで、演算式(1)における「工具刃数」は、予めパラメータ演算装置7に設定されているものとする。また、演算式(1)における回転軸回転速度とは、現在(最適回転速度とする前)の回転速度である。
次に、S5において、演算式(3)で得られた位相情報と設定定数とを比較する。ここで、位相情報が設定定数以上であれば、S6で、変更式(1)に基づいてk1値を算出する。一方、位相情報が設定定数未満であれば、S7で、変更式(2)に基づいてk1値を算出する。
k1値=k値+1・・・変更式(1)
k1値=k値・・・変更式(2)
なお、設定定数は、通常は0.5を設定すれば回転速度の変化量が最小となる。但し、回転速度の変化割合が小さい場合は、回転速度を変更する方向によっては安定限界線図でいう切削下限を下回ってしまい、再生びびりを生じる可能性があるので、その下限を設定定数として位相情報と比較すればよい。その場合、設定定数は0.75を選択するのが望ましい。
次に、S8では、びびり振動数、工具刃数、S6,7で得られたk1値から、以下の演算式(4)に基づいて最適回転速度の演算を行う。
最適回転速度=60×びびり振動数/(工具刃数×k1値)・・・(4)
そして、S9で、算出された最適回転速度となるように、NC装置8にて回転軸3の回転速度を変更して、びびり振動の増幅の防止、すなわち抑制を行う。
以上のようにして、制御装置5におけるびびり振動の抑制制御は行われる。
このように、上記形態の振動制御装置10によれば、振動センサ2a〜2c、FFT演算装置6、及びパラメータ演算装置7により回転軸3の回転中に生じるびびり振動をリアルタイムでモニタリングしており、びびり振動の発生が検出されると、上記演算式(1)〜(4)及び変更式(1)(2)により直ちに最適回転速度を算出して、回転軸3の回転速度を該最適回転速度としてびびり振動の増幅を抑制する。すなわち、実際に回転している回転軸3に生じたびびり振動に基づいて最適回転速度を算出するため、より正確な最適回転速度を直ちに算出することができる。特に、パラメータ演算装置7は、位相情報を設定定数と比較し、その比較結果に応じて変更したパラメータで夫々最適回転速度を算出するので、びびり振動が短時間で抑制可能となる。従って、加工面の仕上げ精度を高品位に保つことができ、工具摩耗の抑制、工具欠損の防止も期待できる。
図6は、本発明を採用しない従来の振動抑制装置を採用した場合、図7は、本発明の振動抑制装置を採用した場合の夫々のびびり周波数(びびり振動数)の抑制効果を示すグラフである。図6の場合は、回転速度が6800min−1から6250min−1と大きく変化するため、びびり抑制に時間を要するのに対し、図7の場合では、回転速度が6800min−1から7000min−1に素早く変化して最適回転速度に達し、最大加速度Gが図6のタイミングよりも早く減少してびびり振動を短時間で抑制できていることがわかる。
なお、本発明の振動抑制装置に係る構成は、上記実施の形態に記載した態様に何ら限定されるものではなく、検出手段、制御装置、及び制御装置における振動抑制の制御等に係る構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
たとえば、演算式(1)〜(4)や変更式(1)(2)に示すような位相情報、k値、設定定数等やこれらの関係は、工作機械の種類に応じて適宜調査し、決定するようにすることで精度をさらに向上させることができる。
また、上記k1値から計算される最適回転速度について、S5からS8の処理に代えて、演算式(4)において、k値とk値+1とから夫々2つの最適回転速度を算出し、その2つの最適回転速度と現在の回転速度との差から回転速度変化量の割合が小さい方の最適回転速度を選択して、NC装置8にて回転軸3の回転速度を変更し、びびり振動の抑制を行うようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、検出手段にて検出される時間領域の振動加速度のフーリエ解析を行った際、周波数領域の振動加速度が最大値を示す波形を使用して、びびり振動の抑制に係る制御を行うようにしているが、周波数領域の振動加速度の値が上位の複数(たとえば、3つ)の波形を用いて最適回転速度を算出するようにして、びびり振動の抑制効果の更なる向上を図ってもよい。
さらにまた、上記実施形態では、検出手段により回転軸の振動加速度を検出し、検出された振動加速度に基づいて最適回転速度を算出するといった構成としているが、検出手段によって振動による変位や音圧を検出し、検出された変位や音圧に基づいて最適回転速度を算出するように構成してもよい。
加えて、上記実施形態では、工具を回転させる所謂マシニングセンタ等の工作機械の回転軸における振動を検出する構成としているが、回転しない側(固定側)であるワーク又はその近傍の振動を検出するようにしても良い。更には、旋盤などワークを回転させる工作機械にも適用可能であり、その場合には回転軸であるワークを保持する主軸側の振動を検出したり、固定側である工具の振動を検出したりすることができる。尚、検出手段の設置位置や設置数等を、工作機械の種類、大きさ等に応じて適宜変更してもよいことは言うまでもない。
振動抑制装置のブロック構成を示した説明図である。 振動抑制の対象となる回転軸ハウジングを側面から示した説明図である。 回転軸ハウジングを軸方向から示した説明図である。 時間領域の振動加速度のフーリエ解析結果の一例を示した説明図である。 びびり振動の抑制制御に係るフローチャートである。 従来のびびり振動の抑制効果を示すグラフである。 本発明のびびり振動の抑制効果を示すグラフである。
符号の説明
1・・回転軸ハウジング、2a、2b、2c・・振動センサ、3・・回転軸、5・・制御装置、6・・FFT演算装置、7・・パラメータ演算装置、8・・NC装置、10・・振動抑制装置。

Claims (3)

  1. 工具又はワークを回転させるための回転軸を備えた工作機械において、前記回転軸を回転させた際に生じるびびり振動を抑制するための振動抑制装置であって、
    回転中の前記回転軸の時間領域での振動を検出する検出手段と、検出手段により検出された時間領域の振動に基づいて、びびり振動数及びそのびびり振動数における周波数領域の振動を算出すると共に、算出した前記周波数領域の振動が所定の閾値を超えた場合、所定のパラメータに基づき、びびり振動を抑制可能な前記回転軸の最適回転速度を算出する演算手段と、その演算手段により算出された最適回転速度にて前記回転軸を回転させる回転速度制御手段と、を備え、
    前記演算手段は、前記所定のパラメータとなる下記の演算式(1)〜(4)に基づいて最適回転速度の演算を行うものであり、その際に、演算式(3)に基づいて算出した位相情報を所定の設定定数と比較し、その比較結果に基づいて下記の変更式(1)(2)の何れかを用いてk1値を求め、得られたk1値から演算式(4)に基づいて最適回転速度を算出することを特徴とする工作機械の振動抑制装置。
    k’値=60×びびり振動数/(工具刃数×回転軸回転速度) ・・・(1)
    k値=k’値の整数部 ・・・(2)
    位相情報=k’値−k値 ・・・(3)
    位相情報が設定定数以上の場合:k1値=k値+1・・変更式(1)
    位相情報が設定定数未満の場合:k1値=k値・・変更式(2)
    最適回転速度=60×びびり振動数/(工具刃数×k1値)・・・(4)
  2. 設定定数が0.5である請求項1に記載の工作機械の振動抑制装置。
  3. 設定定数が0.75である請求項1に記載の工作機械の振動抑制装置。
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