JP4695731B2 - 刃先の精密仕上げ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光材料、磁気材料、半導体、IC、液晶素子等を積層した樹脂、紙、金属箔等からなる幅広の薄いフィルムまたはシート(以下、単にシートという)を幅狭の帯状シートに切断する切断刃に関し、特に、切断刃の刃先の精密仕上げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、写真用フィルムや磁気テープ等は、一般に、製品の幅よりも幅広の状態のままで各種の処理や加工を施した後、最終的に製品の幅に切断するようにしている。このような、幅広の薄いシートを幅狭の帯状シートに切断する工具として、特開平1ー246094号公報に記載のものが知られている。
【0003】
これを図9および図10により説明する。図9(A)は切断工具の正面図、図9(B)は側面図、図10(A)は刃先の拡大断面図、図10(B)は、図10(A)の刃により切断されたシートの拡大断面図、図10(C)は改良された刃先の拡大断面図、図10(D)は、図10(C)の刃により切断されたシートの拡大断面図、図10(E)は、改良された刃先の他例を示す拡大断面図である。
【0004】
図9(A)において、複数の環状の下刃1は、図示しない駆動装置により回転される下刃シャフト2に固定され、同じく複数の環状の上刃3は、前記下刃シャフト2に連動して回転する上刃シャフト4に固定されている。下刃1と上刃3は、互いに刃先部分が重なり合うように配置され、それぞれ図9(B)に示す矢印方向に回転され、幅広シートSは、両刃1、3の間に送り込まれて、その長手方向に連続的に切断される。
【0005】
ところで、図10(A)に示すように、下刃1の刃先1aの形状を直角とし、上刃3の刃先3aの形状を鋭利な形状にした場合、幅広シートSは図10(B)に示す形状に切断される。このとき、シートSの基材S1上に積層材料S2が積層されている場合、シートの一方の側端面においては基材S1が積層材料S2よりも外側に突出し、他方の側端面においては積層材料S2が基材S1よりも外側に突出する。積層材料S2が基材S1よりも外側に突出していると、シートSを製品内で搬送したとき積層材料S2の側面が製品内の部品と擦れ合って、製品内に粉状に剥げ落ちてしまい、種々の悪影響を及ぼすという問題を有している。
【0006】
この問題を解決するために、特開平1ー246094号公報においては、図10(C)に示すように、下刃1の刃先1aの形状を直角とし、上刃3の刃先を径外方に向かって次第に下刃1から離れるように面取り部3bを形成することにより、図10(D)に示すように、シートSの基材S1の両側端に積層材料S2より外方に突出する突出部Tを形成するようにしている。なお、図10(E)に示すように、下刃1側に面取り部1bを形成してもよい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シートSの基材S1の両側端に突出部Tが形成されるようにするには、上記下刃1或いは上刃3の面取り部1b、3bを数ミクロンオーダーで研磨する必要がある。しかしながら、このような精密研磨の技術は従来の研磨方法では不可能であり、そこで、従来は多数の幅広シートSを上記切断工具に繰り返し供給して切断し、数ミクロンオーダーの面取り部が形成された段階で正式の切断を行う方法が取られており、多数のシートを無駄にせざるを得なかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであって、刃先を数ミクロンオーダーで研磨することができる刃先の精密仕上げ方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の回転される複数の環状の上刃および下刃の刃先の精密仕上げ方法は、基材(S1)に積層材料(S2)が積層されている幅広の薄いシートを、駆動装置により回転される複数の環状の上刃および下刃により幅狭の帯状シートに切断する工具に用いられる上刃または下刃の面取り方法であって、回転する円形刃の刃先に磁極を近接させ、該磁極と刃先の間に多数の磁性粒を挿入して磁気ブラシを形成し、該磁気ブラシにスラリー状砥粒を担持させ、前記磁極を円形刃の円周方向に振動させ、前記磁極を円形刃の軸方向に振動させ、前記磁極を回転させ、あるいは、前記磁極を円形刃の刃先に対して揺動させて研磨し、刃先に面取り部を形成して刃先の精密仕上げることにより、前記帯状に切断する時、切断面において前記基材(S1)が前記積層材料(S2)より突出することにより前記積層材料(S2)が切断後に剥げ落ちることを防止することを特徴とし、請求項2記載の発明は、請求項1において、前記複数の円形刃を間隔を空けてシャフトに固定したことを特徴とし、請求項3記載の発明は、請求項1または2において、前記複数の円形刃の刃先に対向して複数の磁極を設けることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は、本発明の刃先の精密仕上げ方法の1実施形態を示し、図1(A)は刃組立体の正面図、図1(B)は研磨装置の側面図、図1(C)は図1(B)の平面図、図2は、図1(B)の磁極と円形刃の拡大図、図3(A)は作用を説明するための図、図3(B)は仕上げ後の刃先の拡大図である。
【0011】
図1(A)は、本発明の仕上げ対象である刃組立体10を示し、図9で説明した下刃1に相当する円形刃1の複数がシャフト2に嵌合固定されている。隣接する円形刃1間には、図9の上刃3が侵入する間隙1cが設けられている。そして、シャフト2内には回転軸2aが嵌合固定されている。なお、円形刃1は磁性体からなる超硬合金から製造され、図10(A)に示すように、刃先1aの形状は直角に形成されている。
【0012】
前記刃組立体10は、図1(B)および図1(C)に示す旋盤11に装着される。すなわち、刃組立体10の回転軸2aの一端が回転チャック11aに装着され、他端はハンドル11cの操作により支持チャック11bに支持され、旋盤11の駆動により刃組立体10が回転されるようにされている。
【0013】
旋盤11の基台11dには、磁極ユニット12が配設されている。磁極ユニット12は、永久磁石からなる磁極12aを備え、磁極12aは刃組立体10に近接するように配置されている。また、磁極ユニット12は、ハンドル12b、12c、12dにより刃組立体10に対して平行(x軸)、刃組立体10の軸に直交する方向(y軸)および垂直方向(z軸)に移動可能にされている。
【0014】
旋盤11の基台11dの内部には、刃組立体10の下方に位置して、砥粒受け部材13および砥粒タンク14が配設されている。砥粒タンク14内には、オイルにダイヤモンド、酸化アルミナ、窒化ケイ素などの砥粒を混入したスラリー状砥粒18が充填されている。また、刃組立体10の上方には、供給ノズル15が配設されている。供給ノズル15は回転ジョイント16により回転可能にされ、ノズル先端は、刃組立体10に平行に移動可能にされている。そして、供給ノズル15は供給管17、ポンプ19を介して砥粒タンク14内に接続されている。
【0015】
図2に示すように、磁極12aと円形刃1との間には、多数の磁性粒20を挿入し、磁極12aと円形刃1と間に磁力線に沿って磁気ブラシ21を形成させる。この磁気ブラシ21は、図3に示すように、スラリー状砥粒18を担持するためのもので、円形刃1の刃先1a近傍に磁力で当接され、また隣接する円形刃1、1の間隙1c内に侵入し磁力で当接される。磁性粒20としては、鉄、ステンレスなどの磁性体で粉状、ピン状のものを用いる。なお、磁極12aの先端は、鋸刃状に形成され鋸刃の先端に磁力を集中させるようにしている。
【0016】
次に、本発明における刃先の精密仕上げ方法について説明する。先ず、刃組立体10を旋盤11に装着した後、磁極ユニット12のハンドル12b〜12dを操作し、仕上げの対象となる円形刃1の刃先1aに対して所定の間隔(例えば2mm程度)になるように磁極12aをセットし、磁極12aと円形刃1との間に多数の磁性粒20を挿入し、磁極12aと円形刃1と間に磁気ブラシ21を形成させる。次いで、旋盤11を駆動して刃組立体10を回転させるとともに、ポンプ19を駆動してスラリー状砥粒18を供給ノズル15から円形刃1に吹き付ける。
【0017】
円形刃1に供給されたスラリー状砥粒18は、図3(A)に示すように、磁気ブラシ21に弾力をもって担持され、回転する円形刃1の刃先1aを研磨して、図3(B)に示すように、面取り部1bを数ミクロンオーダーで形成させることができる。なお、面取り部1bの大きさは、加工時間、回転数、磁極12aと刃先1a間の距離で調整される。磁極12aと刃先1a間の距離に関しては、距離が大きくなると磁気ブラシ21の弾性力が減少し、面取り部1bをより小さくすることができ、逆に距離が小さくなると磁気ブラシ21の弾性力が増加し剛性が大きくなるので、面取り部1bをより大きくすることができる。当該円形刃1の仕上げが終了すると、磁極ユニット12を移動させて隣りの円形刃1の仕上げを順次行っていく。
【0018】
図4は、本発明の変形例を示し、図4(A)は図1(B)の一部拡大図、図4(B)は図4(A)の側面図である。本例においては、円形刃1の軸に直交する方向にレール22を配設し、磁極ユニット12をレール22上に摺動自在に装着し、磁極ユニット12に振動発振子23を連結させるようにしている。これにより磁極12aを円形刃1の円周方向に振動させることができる。
【0019】
図5は、本発明の変形例を示し、図5(A)は図1(B)の一部拡大図、図5(B)は図5(A)の側面図である。本例においては、円形刃1の軸方向にレール22を配設し、磁極ユニット12をレール22上に摺動自在に装着し、磁極ユニット12に振動発振子23を連結させるようにしている。これにより磁極12aを円形刃1の軸方向に振動させることができる。
【0020】
図6〜図8は、本発明の変形例を示し図1(B)の一部拡大図である。図6の例においては、磁極ユニット12をモータ24に連結し、磁極12aを回転させるようにしている。図7の例においては、磁極12aを円形刃1の刃先に対して±θ°の角度をもって揺動させるようにしている。図8の例においては、複数の円形刃1の刃先1aに対向して複数の磁極12aを設けている。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、複数の下刃1の仕上げについて説明しているが、下刃単独でも、また、前述した上刃3の仕上げにも適用することができ、さらに、円形刃のみならず刃の精密仕上げ全てに適用可能である。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、回転する円形刃の刃先に磁極を近接させ、該磁極と刃先の間に多数の磁性粒を挿入して磁気ブラシを形成し、該磁気ブラシにスラリー状砥粒を担持させることにより刃先に面取り部を形成するので、刃先を数ミクロンオーダーで研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における刃先の精密仕上げ方法の1実施形態を示し、図1(A)は刃組立体の正面図、図1(B)は研磨装置の側面図、図1(C)は図1(B)の平面図である。
【図2】図1(B)の磁極と円形刃の拡大図である。
【図3】図3(A)は本発明の作用を説明するための図、図3(B)は仕上げ後の刃先の拡大図である。
【図4】本発明の変形例を示し、図4(A)は図1(B)の一部拡大図、図4(B)は図4(A)の側面図である。
【図5】本発明の変形例を示し、図5(A)は図1(B)の一部拡大図、図5(B)は図5(A)の側面図である。
【図6】本発明の変形例を示し図1(B)の一部拡大図である。
【図7】本発明の変形例を示し図1(B)の一部拡大図である。
【図8】本発明の変形例を示し図1(B)の一部拡大図である。
【図9】従来のシートの切断工具を示し、図9(A)は正面図、図9(B)は側面図である。
【図10】本発明の課題を説明するための図であり、図10(A)は刃先の拡大断面図、図10(B)は、図10(A)の刃により切断されたシートの拡大断面図、図10(C)は改良された刃先の拡大断面図、図10(D)は、図10(C)の刃により切断されたシートの拡大断面図、図10(E)は、改良された刃先の他例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1…円形刃
1a…刃先
1b…面取り部
12a…磁極
18…スラリー状砥粒
20…磁性粒
21…磁気ブラシ
Claims (3)
- 基材(S1)に積層材料(S2)が積層されている幅広の薄いシートを、駆動装置により回転する複数の環状の上刃および下刃により幅狭の帯状シートに切断する工具に用いられる該上刃または下刃の面取り方法であって、
上記回転する円形刃の刃先に磁極を近接させ、該磁極と刃先の間に多数の磁性粒を挿入して磁気ブラシを形成し、該磁気ブラシにスラリー状砥粒を担持させて、前記磁極を円形刃の円周方向に振動させ、前記磁極を円形刃の軸方向に振動させ、前記磁極を回転させ、あるいは、前記磁極を円形刃の刃先に対して揺動させて研磨し、上記刃先に面取り部を形成して刃先の精密仕上げることにより、前記帯状に切断する時、切断面において前記基材(S1)が前記積層材料(S2)より突出することにより前記積層材料(S2)が切断後に剥げ落ちることを防止することを特徴とする複数の環状の上刃および下刃の刃先の精密仕上げ方法。 - 前記複数の円形刃を間隔を空けてシャフトに固定したことを特徴とする前記請求項1記載の刃先の精密仕上げ方法。
- 前記複数の円形刃の刃先に対向して複数の磁極を設けることを特徴とする前記請求項1または前記請求項2記載の刃先の精密仕上げ方法。
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