JP4686858B2 - フラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、フラットパネルディスプレイ装置、特にプラズマディスプレイ装置用ガラス基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマディスプレイ装置は一般に、前面ガラス基板表面にITO膜、ネサ膜等からなる透明電極、誘電体ペーストを、背面ガラス基板表面には、Al、Ag、Niからなる電極、リブペーストを塗布してから500〜600℃程度の温度で焼成することにより回路を形成し、その後、前面ガラス基板と背面ガラス基板を対向させ、周囲を500〜600℃程度の温度でフリットシールすることにより作製される。従来、ガラス基板としては、建築用または自動車用として広く用いられているソーダ石灰ガラス(熱膨張係数 約84×10-7/℃)が一般的に用いられてきた。
【0003】
ところが、ソーダ石灰ガラスは歪点が500℃程度と低く、580℃程度の温度で熱処理する際、熱変形や熱収縮により、寸法が著しく変化するため、前面ガラス基板と背面ガラス基板を対向させる際、電極の位置合わせを精度よく実現することが難しく、特に大型高精細のプラズマディスプレイ装置を作製する上で困難を生じていた。
【0004】
また、ソーダ石灰ガラスは、150℃での体積電気抵抗率(log ρ)が8.4Ω・cmと低く、ガラス中のアルカリ成分の移動度が大きい。従って、ガラス中のアルカリ成分がITO膜やネサ膜等の薄膜電極と反応し、電極材料の電気抵抗値を変化させる問題も有している。
【0005】
これらの事情から、現在では、ガラス基板の熱変形、熱収縮及び体積電気抵抗率の問題を解決するために、歪点及び体積電気抵抗率の高いプラズマディスプレイ装置用ガラス基板が広くガラス基板が使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した従来の歪点、体積電気抵抗率の高いプラズマディスプレイ装置用ガラス基板は、製造工程において、ソーダ石灰ガラスに比べ、クラックが発生し割れが生じやすい。そのため、装置の歩留まりが低く、生産性向上を妨げる原因の一つとなっている。従って、生産性向上のため、ガラス基板を割れにくくする必要がある。つまり、耐クラック性の高いガラス基板が望まれている。
【0007】
また、従来のプラズマディスプレイ装置用ガラス基板は、熱膨張係数が80〜90×10-7/℃であるため、570〜600℃の温度で熱処理したあと、急冷すると熱応力に起因する割れが生じる。そのため、熱工程の冷却速度が制限され、工程の所要時間が長くなり、生産性を低下させていた。生産性向上のために、ガラス基板の熱膨張係数を小さくし、熱応力を発生しにくくさせれば良いが、熱膨張係数を小さくしすぎると、絶縁ペースト、リブペースト、フリットシールといった周辺材料との整合性が取れなくなる。
【0008】
熱応力に起因する割れを抑え、しかも、周辺材料と整合性が取れるように、ガラス基板の熱膨張係数を65〜80×10-7/℃にしたガラス組成が特開平11−310433号及び特開平11−314933号で開示されている。ところが、特開平11−310433号は、Al23を10%以上含有しているため、高温粘度が高く、ガラスの成形が困難であった。また、特開平11−314933号では、高温粘度を低下させるために、MgOとCaOを使用しているが、これら成分はガラスを失透させやすくする成分であるため、多量に含有させることはできず、十分に高温粘度を低下させることはできなかった。
【0009】
本発明の目的は、耐熱衝撃性、耐クラック性、及び成形性に優れ、570〜600℃の温度で熱処理しても熱変形や熱収縮が問題とならず、しかも、体積電気抵抗率(log ρ)が10.5Ω・cm以上の特性を有するフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板は、質量百分率で、SiO 68.3〜74%、Al 0〜10%未満、MgO 1〜10%、CaO 0〜3.3%、SrO 1〜15%、BaO 0〜7%、MgO+CaO+SrO+BaO 12〜23%、NaO 0〜8%、KO 2〜12%、NaO+KO 6〜14%、ZrO 0〜7%の組成を有し、かつ基板の30〜380℃における熱膨張係数が65〜75×10−7/℃未満であることを特徴とする。
【0011】
【作用】
本発明のフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板は、熱膨張係数を65〜75×10-7/℃未満に設定しているため、熱応力に起因する割れを抑え、しかも、周辺材料の熱膨張係数との整合性が良好である。
【0012】
また、Al23を10%未満、SrOを1%以上含有しているため、成形温度を低くすることができ、また、体積抵抗率を高くすることができる。現在、フラットパネルディスプレイ装置に使用されている高い歪点、高い体積電気抵抗率を有するガラス基板は、ソーダ石灰ガラスに比べ割れが生じやすいが、MgO、CaO、SrO、BaOの合量を20%以下に抑え、耐クラック性を向上させているため、割れを抑えることができる。
【0013】
本発明のガラス基板において、各成分の割合を上記のように限定した理由を以下に述べる。
【0014】
SiOは、ガラスのネットワークフォーマーであるが、61%より少なくなるとガラスの歪点が低くなり、熱変形や熱収縮が大きくなるため問題となる。一方、74%より多くなると熔融性が悪化するため好ましくない。SiOの好ましい範囲は68.3〜72%である。より好ましくは68.3〜70%である。
【0015】
Al23は、ガラスの歪点を高める成分であるが、10%以上になると、高温粘度が高くなり、ガラスの成形が困難となるため好ましくない。Al23の好ましい範囲は0〜8%である。より好ましくは1〜6%である。
【0016】
MgOは、ガラスの高温粘度を低下させてガラスの成形性や熔融性を高めたり、ガラスの体積電気抵抗率を高める成分であるが、1%より少なくなると前記効果が得られない。一方、10%より多くなるとガラスが失透したり、ガラスの耐クラック性が著しく低下するため好ましくない。MgOの好ましい範囲は2〜9%である。より好ましくは4〜8%である。
【0017】
CaOは、MgOと同様、ガラスの高温粘度を低下させてガラスの成形性や熔融性を高めたり、ガラスの体積電気抵抗率を高める成分であるが、8%より多くなるとガラスが失透したり、ガラスの耐クラック性が著しく低下するため好ましくない。CaOの好ましい範囲は1〜3.3%である。より好ましくは2〜3.3%である。
【0018】
SrOは、ガラスの高温粘度を低下させてガラスの成形性や熔融性を高めたり、体積電気抵抗率を高める成分であるが、1%より少なくなると前記効果が得られない。一方、15%以上になるとガラスの耐クラック性が低下するため好ましくない。SrOの好ましい範囲は2%〜14%である。より好ましくは3%〜11%である。
【0019】
BaOは、SrOと同様、ガラスの高温粘度を低下させてガラスの成形性や熔融性を高めたり、体積電気抵抗率を高める成分であるが、7%より多くなるとガラスの耐クラック性が低下するため好ましくない。BaOの好ましい範囲は0〜5%である。より好ましくは0〜3%である。
【0020】
また、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量が、12%より少なくなるとガラスの熔融性が低下し、23%より多くなるとガラス基板の耐クラック性が著しく低下する。これらの成分の合量は13〜21%であることが好ましい。より好ましくは14〜20%である。
【0021】
Na2Oは、ガラスの熱膨張係数を制御したり、ガラスの熔融性を高める成分であるが、8%より多くなるとガラスの歪点が低下するため好ましくない。好ましい範囲は1〜7%である。より好ましくは2〜6%である。
【0022】
2Oは、Na2Oと同様、ガラスの熱膨張係数を制御したり、ガラスの熔融性を高める成分であるが、2%より少なくなると熔融性が損なわれる。一方、12%より多くなると歪点が低下するため好ましくない。好ましい範囲は、3〜10%である。より好ましくは4〜8%である。
【0023】
Na2O及びK2Oの合量が、6%より少なくなると熔融性が低下し、14%より多くなると歪点が低下するため好ましくない。これらの成分の合量は7〜13%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは8〜12%である。
【0024】
ZrO2は、ガラスの歪点を高める成分であるが、7%より多くなるとガラスの耐クラック性が著しく低下するため好ましくない。好ましい範囲は0〜6%である。さらに好ましくは0〜5%である。
【0025】
また本発明においては、上記成分以外にも種々の成分を添加することができる。例えば紫外線による着色を防止するためにTiO2を5%まで、耐クラック性を向上させるためにP25を4%まで添加することが可能である。更に、As23、Sb23、SO3、Cl等の清澄剤成分を合量で1%まで、Fe23、CoO、NiO、Cr23、CeO3等の着色剤成分を各1%まで添加することが可能である。
【0026】
上記組成を有する本発明のガラス基板は、板ガラスの成形方法として知られているフロート法、ロールアウト法等の方法によって製造できる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0028】
本発明の実施例(試料No.5、12及び21)と比較例(試料No.22〜24)を表1に示す。尚、試料No.24は、ソーダ石灰ガラスである。
【0029】
【表1】
【0033】
表中の各試料は、次のようにして作製した。
【0034】
まず、表の組成となるようにガラス原料を調合し、白金ポットで1450〜1600℃で4時間熔融した。その後、熔融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形し、徐冷後、板厚が2.8mmになるように両面研磨して、得られた板ガラスを200mm角の大きさに切断加工することで試料ガラスを作製した。
【0035】
このようして得られた各試料について、耐クラック性、密度、熱膨張係数、歪点、成形温度、液相温度、体積電気抵抗率を測定し、表に示した。
【0036】
本発明におけるガラスの耐クラック性の評価は、和田らが提案した方法(M.Wada et al. Proc., the Xth ICG, vol.11, Ceram. Soc., Japan, Kyoto, 1974,p39)を用いた。この方法は、ビッカース硬度計のステージに試料ガラスを置き、試料ガラスの表面に菱形状のダイヤモンド圧子を種々の荷重で15秒間押し付ける。そして、除荷後15秒までに圧痕の四隅から発生するクラック数をカウントし、最大発生しうるクラック数(4ヶ)に対する割合を求め、クラック発生率とした。また、クラック発生率が50%になる時の荷重を「クラック抵抗」とした。クラック抵抗が大きいということは、高い荷重でもクラックが発生しにくい、つまり、耐クラック性に優れているということである。
【0037】
尚、クラック発生率の測定は、同一荷重で20回測定し、その平均値を求めた。また、クラック抵抗は湿度の影響を受けるため、測定は気温25℃、湿度30%の条件で行った。
【0038】
密度については、周知のアルキメデス法で、熱膨張係数については、ディラトメーターで30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した。また、歪点については、ASTM C336−71に基づいて測定した。
【0039】
成形温度については、ガラスの粘度が104dPa・sに相当する温度を白金球引き上げ法により測定した。この成形温度が熔融ガラスを板状のガラス基板に成形する際の目安となり、この温度が低い方が好ましい。
【0040】
液相温度については、以下の要領で行った。まず、各試料をそれぞれ300〜500μmの大きさに粉砕、混合し、これを白金製のボートに入れて900〜1200℃の温度勾配炉に移して48時間保持し、温度勾配炉より白金製のボートを取り出した。その後、白金製のボートからガラスを取り出した。このようにして得られたサンプルを偏光顕微鏡で観察し、結晶の析出点を測定した。
【0041】
体積電気抵抗率については、ASTM C657−78に基づいて150℃における値を測定した。
【0042】
表から明らかなように、実施例である試料No.5、12及び21の各試料は、クラック抵抗が980mN以上で、ソーダ石灰ガラスと同等以上であり、耐クラック性に優れていた。また、熱膨張係数は72.1〜73.8×10−7/℃の範囲で、周辺材料と良好に整合することができ、しかも、熱応力に起因する割れを抑えることができる。さらに、成形温度は1206℃以下、液相温度は1100℃以下と低く、ガラスの成形性にも優れていた。さらに、密度は2.58g/cm以下と低く、歪点は574℃以上、体積電気抵抗率(logρ)は11.3Ω・cm以上であった。
【0043】
これに対して、比較例である試料No.22は、SrOを含有しておらず、試料No.23は、Al23含有量が11%であるため、いずれも成形温度が1250℃と高く、また、体積電気抵抗率(log ρ)も10.4Ω.cm以下と低かった。また、試料No.24は、ソーダ石灰ガラスであるため、歪点が512℃と低く、また、体積電気抵抗率(log ρ)も8.4Ω・cm低かった。
【0044】
【発明の効果】
以上のように本発明のフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板は、耐熱衝撃性、耐クラック性、及び成形性に優れ、しかも、歪点及び体積電気抵抗率も高いため、フラットパネルディスプレイ装置、特にプラズマディスプレイ装置のガラス基板として好適である。

Claims (1)

  1. 質量百分率で、SiO 68.3〜74%、Al 0〜10%未満、MgO 1〜10%、CaO 0〜3.3%、SrO 1〜15%、BaO 0〜7%、MgO+CaO+SrO+BaO 12〜23%、NaO 0〜8%、KO 2〜12%、NaO+KO 6〜14%、ZrO 0〜7%の組成を有し、かつ基板の30〜380℃における熱膨張係数が65〜75×10−7/℃未満であることを特徴とするフラットパネルディスプレイ装置用ガラス基板。
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