JP4686472B2 - 弾性表面波素子及び通信装置 - Google Patents
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Description
実装部品の中で、送信側周波数帯の信号と受信側周波数帯の信号とを分離する分波器には、従来、誘電体を用いたものが使用されてきた。しかし、誘電体分波器は現状の通信規格の周波数帯では、原理的に小型化できず、また、通過帯域近傍の減衰特性を急峻にできないため、送信側周波数帯と受信側周波数帯とが接近している通信規格では満足な特性が得られなかった。
従来から弾性表面波フィルタは、段間のフィルタとして使用されていたが、分波器として使用するには耐電力性が低かった。
しかし、近年この耐電力性の問題はIDT電極の電極構造や電極材料を工夫することで解決することができたため、誘電体分波器より小型で通過帯域近傍の減衰特性の良い弾性表面波分波器(以下ではSAW−DPXと記す。)が現れ始めている。
上記のような細い電極指が狭いギャップで多数配置されてなるIDT電極を含む弾性表面波フィルタに対して、SAW−DPXでは、1Wという大きな電力の高周波信号が印加され、圧電基板の表面は電界の振動に応答して物理的に激しく振動する。
まず第1の方法は、電極材料のアルミニウムに金属元素を微量添加することである。耐電力性を強化する目的でアルミニウムに添加された元素は、その種類によって2種類の挙動を示す。第1の挙動は、アルミニウムの結晶粒界に析出する、又はアルミニウムの結晶粒界でアルミニウムと金属間化合物を作るというものである。このような元素は、結晶粒界でアルミニウムの未結合手を埋める働きをするため、アルミニウムの結晶粒界におけるマイグレーションを抑える効果がある。このような働きをする元素には、例えばゲルマニウム,銅,パラジウム,シリコン,リチウムがある。
第2の方法は、アルミニウムを単結晶化して結晶粒界そのものをなくすことである(例えば、特許文献4を参照。)。また、単結晶化までできなくとも、マイグレーションが起こり難いアルミニウム結晶の充填率の高い方位に配向性を高めることによっても耐電力性は向上する。これらのことを達成するには、アルミニウムから成る電極と圧電基板との間に下地膜を設けることが有効である。この下地膜には、アルミニウムとの金属間化合物又は中間相が形成されるときの生成熱が正である材料を選択すればよい(例えば、特許文献5を参照。)。
しかしながら、SAW−DPXにおいては通信装置の高出力化が進む中で、さらに耐電力性を向上させることが要求されている。
さらに、本発明の目的は、微細加工性が優れ、また信頼性上の問題がないIDT電極が形成された弾性表面波素子及びそれを用いた通信装置を提供することにある。
前記圧電基板の表面に最も近い前記第1の金属層における配向性が、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第1の金属層における配向性よりも高く、
前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層の厚みが、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層の厚みより小さく、且つ、前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層における配向性が、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層における配向性よりも高く、
前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層がアルミニウムにマグネシウムを添加したアルミニウム合金であり、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層がアルミニウムに銅を添加したアルミニウム合金であることを特徴とする。
配向性が向上することによってマイグレーション耐性が向上するので、その第2の金属層の耐電力性が強化されることから、より耐電力性の高い弾性表面波素子を実現することができる。
また、前記第2の金属層が複数あり、前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層における配向性が、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層における配向性よりも高い弾性表面波素子であるので、圧電基板の表面に最も近いために印加される応力が最も大きい部分となる第1の金属層及び第2の金属層の配向性が高いことによって、それぞれの金属層のマイグレーション耐性が向上する。
さらに、第1の金属層により第2の金属層と基板との密着性が改善され、かつ第2の金属層が圧電基板と直接接しないことにより圧電基板を構成する元素と第2の金属層との化学反応が抑制されるので、経時的な変化の進行が小さいため信頼性にも優れた弾性表面波素子を実現することができる。
本発明の弾性表面波素子は、圧電基板と、該圧電基板上に、チタンもしくはチタン合金又はクロムもしくはクロム合金から成る少なくとも1つの第1の金属層と、アルミニウム合金から成る複数の第2の金属層とが、それぞれ一層ずつ交互に積層されて形成された電極によって構成されたIDT電極とを具備し、
前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層の厚みが、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層の厚みより小さく、且つ、前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層における配向性が、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層における配向性よりも高く、
前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層がアルミニウムにマグネシウムを添加したアルミニウム合金であり、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層がアルミニウムに銅を添加したアルミニウム合金であることを特徴とする。
通常、IDT電極を構成する材料の原子がマイグレーションを起こし、その結果、ヒロックが発生すると、そのヒロックはいずれ隣り合う電極指や隣り合う電極指から成長したヒロックと接触し、電極指がショートしてしまうこととなる。これにより弾性表面波素子は破壊に至る。マイグレーションは結晶粒界で激しく起こるため、結晶粒界の密度が高いとそれだけ破壊が起こる確率が高くなる。
本発明における上述の、又はさらに他の利点、特徴及び効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
2:圧電基板
3:IDT電極
4:接続電極
5:送信側フィルタの入力パッド部
6:送信側フィルタの出力パッド部
7:受信側フィルタの入力パッド部
8:受信側フィルタの出力パッド部
9:接地電極
10:環状電極
11:接地電極パッド部
12:送信側フィルタ領域(Txフィルタ)
13:受信側フィルタ領域(Rxフィルタ)
31a,31b,31c,31b’:第1の金属層
32a,32b,32c,32b’:第2の金属層
弾性表面波素子1には、圧電基板2の主面に送信側フィルタ領域(Txフィルタ)12(破線で囲んで示す。)及び受信側フィルタ領域(Rxフィルタ)13(破線で囲んで示す。)が設けられている。
各フィルタ12,13には、それぞれ複数の、励振電極であるIDT電極3及びIDT電極3間を接続する接続電極4を含む弾性表面波フィルタが形成されている。IDT電極3は、互いに平行するバスバー電極から、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に形成された、長い電極指を複数備え、これらの電極指を互いに歯合させた形状を有している。
図2に、本発明の弾性表面波素子におけるIDT電極3の電極指1本の断面図を示している。
図2において、2は圧電基板であり、タンタル酸リチウム単結晶やニオブ酸リチウム単結晶や四ホウ酸リチウム単結晶等を用いることができる。
32a,32bはアルミニウムもしくはアルミニウム合金又は銅もしくは銅合金又は金もしくは金合金から成る第2の金属層である。
IDT電極3の電極指は、これら第1の金属層31a,31b及び第2の金属層32a,32bを、圧電基板2の主面から上に、金属層31a,32a,31b,32bの順に4層積層して構成されている。
また、後に図8、図9で説明するように、第2の金属層32a,32bが多結晶である場合には、微量に銅やマグネシウムを添加したアルミニウム合金の方が純アルミニウムよりもマイグレーション耐性に優れており、より耐電力性の高いIDT電極を実現することができる。さらにまた、銅合金を用いる場合であれば、銅にアルミニウムを添加すると耐酸化性が改善されるため、より長期信頼性に優れたIDT電極を実現することができる。
ここで、本発明の実施形態では、圧電基板2の表面に最も近い第1の金属層31aは、上層の第1の金属層31bよりも配向性が高くなるように形成している。ここで、「配向性」とは、「金属の任意の断面において、結晶方位が同一の方向を向いている程度」をいう。配向性は、X線回折や電子線回折の回折角の半値幅により定量することができる。
第2の金属層32aの配向性が高いことによって、第2の金属層32aのマイグレーション耐性が向上するので、その第2の金属層32aの耐電力性が強化され、従って、より高い耐電力性を備えたIDT電極を有する弾性表面波素子を実現することができる。
圧電基板2の表面に第1の金属層31a,31b及び第2の金属層32a,32bを形成するための成膜方法としては、スパッタリング法,電子ビーム蒸着法,イオンビームスパッタリング法等を用いることができる。
また、圧電基板2の表面に成膜した第1の金属層31a,31b及び第2の金属層32a,32bを、所定のIDT電極の形状にパターニングする方法としては、金属層の成膜後にフォトリソグラフィを行い、次いでRIEやイオンミリングやウェットエッチングを行う方法を用いればよい。又は、金属層の成膜前に圧電基板2の表面にレジストを形成しフォトリソグラフィを行って所望のパターンを開口した後、金属層を成膜し、その後、レジストを不要部分に成膜された金属層ごと除去するリフトオフプロセスを行ってもよい。
この第1の金属層31a,31bにおける配向性は、例えばX線回折,電子線回折を行って得られた回折角の広がり、例えば回折角の半値幅により評価することができる。
図3にIDT電極3の電極指の断面図を示す。図3に示すように、圧電基板2の表面に最も近い第2の金属層32aの層厚を上層の第2の金属層32bの層厚より小さくしている。この場合には、第2の金属層32 aのほうが、上層の第2の金属層32bより圧電基板2に近いため、第2の金属層32 aに印加される応力がより大きい。その第2の金属層32aの膜厚を薄くしたことにより、膜厚方向の結晶粒径を小さくすることができるため、IDT電極全体として見た場合の耐電力性をさらに向上させることができる。
IDT電極の要部断面図は図2と同様であるが、この構造では、圧電基板2の表面に最も近い第2の金属層32aを、上層の第2の金属層32bより配向性が高くなるように形成している。
このように第2の金属層32aの配向性を高いものとするための成膜条件としては、成膜レート,成膜圧力,成膜時の基板温度等を調整すればよい。例えば第2の金属層の32a,の成膜レートを速くすればよい。
なお、第1の金属層31aには第2の金属層32aより抵抗率が大きい材料を用いているため、IDT電極のうち電流が流れるのは主に第2の金属層32aである。IDT電極の電気抵抗をなるべく小さくするためには、IDT電極において第2の金属層32aの占める割合を大きくする方が望ましい。従って、IDT電極全体の耐電力性の向上は主に圧電基板2に近い第2の金属層32aの耐電力性を向上させることによって達成することができる。
今まで説明したIDT電極では、圧電基板2の表面に最も近い第1の金属層31a又は第2の金属層32aの配向性を向上させていたが、次のような構造を採用することもできる。
このようにすることにより、第1の金属層31aの配向性を向上させた結果、その直上に成膜される第2の金属層32aの配向性を向上させやすくなり、広い範囲の成膜条件で高い配向性を得ることができるようになる。
ところで、特許文献11には、図2に示す例に類似の構造で、第1の金属層31a,31bにチタンを用い、下層の第2の金属層32aにアルミニウムに固溶する元素と粒界に析出する又は金属間化合物を形成する元素とを同時に添加した3元以上のアルミニウム合金を用い、上層の第2の金属層32bには例えばアルミニウムに銅を添加した2元アルミニウム合金を用いた例が示されている。
しかし、このような構成にすると、各層を成膜するために成膜材料を複数種準備する必要がある。
量産に際しても少なくとも2個のターゲットを搭載できるスパッタリング装置があれば充分であるため、量産がより容易で経済的である。
本発明の弾性表面波素子によれば、IDT電極の金属層を配向性が高いものとすることにより抵抗率を小さくすることができる。この抵抗率の減少について、図4を用いて説明する。
図4において、横軸はチタンから成る第1の金属層の層厚[Ti層厚](単位:Å)を、縦軸はアルミニウム合金膜から成る第2の金属層のシート抵抗[Al合金膜のシート抵抗](単位:mΩ/sq.)を表しており、黒丸の点及び特性曲線はAl合金膜のシート抵抗の値の変化を示している。
また、この実験に用いたサンプルのアルミニウム合金膜における配向性についてX線回折を用いて評価したところ、Ti層厚が30Å未満の場合には、アルミニウム合金膜の結晶方位がほぼランダムであるという結果であった。
さらに、本発明の弾性表面波素子におけるIDT電極の構成によれば、第2の金属層32aの配向性を向上させることによりIDT電極の低抵抗化が可能である。低抵抗であることによって抵抗による発熱が小さくなるため、より高い耐電力性を得ることができることが分かる。
すなわち、第1の金属層31a,31bのうち圧電基板2に最も近い第1の金属層31aの層厚が30Å未満であるときには、第1の金属層31aは島状の非連続膜となっており、その直上の第2の金属層32aの配向性を高めることができないものとなる傾向がある。
従って、第1の金属層31a,31bのうち圧電基板2に最も近い第1の金属層31aの層厚は、30〜80Åであることが好ましい。
図5に断面図で示すように、圧電基板2の表面に最も近い第2の金属層32aとその上層の第2の金属層32b’とで材料を変更しても構わない。このような材料の変更の例としては、第2の金属層32aにアルミニウムにマグネシウムを添加した合金を用い、その上層の第2の金属層32b’にアルミニウムに銅を添加した合金を用いるという組合せがある。
また、図6に断面図で示すように、圧電基板2の表面に最も近い第1の金属層31aとその上層の第1の金属層31b’とで材料を変更しても構わない。このような材料の変更の例としては、第1の金属層31aにチタン又はチタン合金を用い、その上層の第1の金属層31b’にクロム又はクロム合金を用いるという組合せがある。
次に、IDT電極を構成する金属が多結晶である場合の結晶構造を説明する。
ここで、図7は従来の弾性表面波素子におけるIDT電極の結晶構造を説明するための図である。電極指の1本のみを図示している。
金属原子のマイグレーションは、結晶粒界Bにおいて未結合手が多く存在するために、原子が移動するためのエネルギーが小さくてすむために起き易くなることは、前述の通りである。
これに対し、図8に、本発明の弾性表面波素子におけるIDT電極の結晶構造図を示す。
すなわち、第2の金属層32aにおいて、圧電基板2の表面の直上に形成された大きさのまま、第2の金属層32aの上面まで結晶粒Pを柱状に成長させた形状となっている。
このような結晶構造とすることで、マイグレーションの発生し易い結晶粒界Bが存在するものの、柱状の結晶粒Pが並んだ構造のため、IDT電極3の内側から側面へと連続する結晶粒界Bの密度が低くなっている。
また、金属層の電気抵抗の大きな要因として、結晶粒界Bによる電子の散乱が挙げられるが、本発明の弾性表面波素子においては、IDT電極3に関して結晶粒Pが柱状結晶構造となっているため、従来の弾性表面波素子におけるIDT電極と比べて、結晶粒界Bの密度を低減することができ、電気抵抗を小さくすることもできる。これにより、弾性表面波素子の電気抵抗に起因する通過帯域内の挿入損失を低減することができ、また、耐電力寿命を短くする一因となる電気抵抗による発熱が小さくなるため、より高い耐電力性を得ることができる。
なお、このようなIDT電極3における結晶構造は、例えば透過電子顕微鏡による観察によって評価することができる。
図8の例では、IDT電極3の金属層を形成する結晶粒Pが、金属層の下面から上面にわたるまで細長い柱状の形状で形成されるものであった。
しかしこの図9の構造では、さらなる耐電力性の向上を図るために、結晶粒Pの大きさが、金属層の厚み方向よりも、圧電基板の主面と平行な方向に大きいものが多く存在するものとしている。ここで言う「多く存在する」とは、その層に占める、金属層の厚み方向よりも圧電基板の主面と平行な方向に大きな結晶粒の体積の合計が、金属層の厚み方向よりも圧電基板の主面と平行な方向に小さな結晶粒の体積の合計より大きいことを意味する。もし、金属層の厚み方向よりも圧電基板の主面と平行な方向に小さい結晶粒が無い場合には、金属層の厚み方向よりも圧電基板の主面と平行な方向に大きい結晶粒が最も多い状態となる。
なお、図9に示す例では、第1の金属層31a,31b,31cの間に、第2の金属層32b,32cを中間層として2層挿入している。つまり第1の金属層が3層、第2の金属層が3層、合計6層の構成となっている。
図9に示すように、IDT電極における第1及び第2の金属層の総積層数を6層とすると、耐電力性に優れ、しかも電気抵抗も比較的小さく、微細加工も比較的容易な、特性及び信頼性に優れたIDT電極を有する弾性表面波素子とすることができる。
受信回路又は送信回路の一方又は両方を備える通信装置において、本発明の弾性表面波素子を、これらの回路に含まれる分波器のバンドパスフィルタとして用いることができる。
図10に、携帯電話機の高周波回路のブロック回路図を示す。
また、アンテナ34で受信された高周波信号は、本発明の弾性表面波素子を含む分波器35で切り分けられ、ローノイズアンプ36で増幅され、弾性表面波フィルタ37でその不要信号を除去された後、アンプ38で再増幅されミキサ39で低周波信号に変換される。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。
本実施例における成膜条件を具体的に説明すると次のようになる。Ar流量100sccm、成膜圧力0.25Paで、Ti成膜時の入力パワーは800W、Al-Cu成膜時の入力パワーは3kWとした。ただし、成膜条件の最適値については装置やターゲットの使用状態に依存するところが大きいため、この成膜条件は不変的なものではなく、使用する成膜装置および装置内の状態に合わせて、最適な成膜条件を決定する必要がある。本実施例では、第1の金属層31aと第1の金属層31b、また、第2の金属層32aと第2の金属層32bは、それぞれ同じ成膜条件で成膜したが、それぞれの成膜条件は第1の金属層31aおよび第2の金属層32aに対して最適化したため、後述するように第1の金属層31aおよび第2の金属層32aの配向性の方が、第1の金属層31bおよび第2の金属層32bの配向性より高くなった。
ここで、LTCC基板は圧電基板2の主面に形成した環状電極10に対応する基体側環状電極及び弾性表面波素子1の入出力パッドと接続されるパッド電極を有しており、予めこれら基体側環状電極及びパッド電極には半田を印刷しておいた。これに弾性表面波素子1を実装するにおいては、これら半田パターンに一致するように弾性表面波素子1を配置して超音波を印加することにより仮固定し、その後、加熱することにより半田を溶融することによって環状電極10と基体側環状電極とを、及び入出力パッドとパッド電極とを接続した。これにより、弾性表面波素子1のIDT電極3及び入出力パッドは、LTCC基板の基体側環状電極とこれに接続された環状電極10とによって完全に気密封止された。なお、弾性表面波素子1の実装工程は窒素雰囲気下で行った。
このようにして作製した本発明の実施例と比較例とについて、電気特性を評価したところ、どちらもほぼ同様の特性が得られたが、本発明の実施例の方が、若干挿入損失が小さかった。また、耐電力試験を行ったところ、本発明の実施例の方が同じ雰囲気温度で同じ周波数の同じ電力を印加したときの寿命が平均して比較例の4倍程度となって、本発明の実施例では大幅に改善されていることが確認できた。
このようにして作製した本発明の実施例と比較例とについて、電気特性を評価したところ、どちらもほぼ同様の特性が得られたが、本発明の実施例の方が、挿入損失が若干小さかった。また、耐電力試験を行ったところ、本発明の実施例の方が同じ雰囲気温度(50℃)で同じ周波数(通過帯域の中心周波数)の同じ電力(2W)を印加したときの寿命(IDT電極が破壊に至るまでの時間)が比較例に対して、平均して10倍程度向上し、本発明の実施例では大幅に耐電力性が改善されていることが確認できた。
Claims (9)
- 圧電基板と、
該圧電基板上に、チタンもしくはチタン合金又はクロムもしくはクロム合金から成る複数の第1の金属層と、アルミニウム合金から成る複数の第2の金属層とが、それぞれ一層ずつ交互に積層されて形成された電極によって構成されたIDT電極とを具備し、
前記圧電基板の表面に最も近い前記第1の金属層における配向性が、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第1の金属層における配向性よりも高く、
前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層の厚みが、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層の厚みより小さく、且つ、前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層における配向性が、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層における配向性よりも高く、
前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層がアルミニウムにマグネシウムを添加したアルミニウム合金であり、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層がアルミニウムに銅を添加したアルミニウム合金である弾性表面波素子。 - 前記第1の金属層がチタンもしくはチタン合金である請求項1記載の弾性表面波素子。
- 前記第1の金属層の前記圧電基板の表面に最も近い層の層厚が30〜80Åである請求項2記載の弾性表面波素子。
- 前記第2の金属層は、圧電基板の表面に遠い面から、圧電基板の表面に近い面にわたって、結晶粒が連続して形成されている請求項1記載の弾性表面波素子。
- 圧電基板と、
該圧電基板上に、チタンもしくはチタン合金又はクロムもしくはクロム合金から成る少なくとも1つの第1の金属層と、アルミニウム合金から成る複数の第2の金属層とが、それぞれ一層ずつ交互に積層されて形成された電極によって構成されたIDT電極とを具備し、
前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層の厚みが、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層の厚みより小さく、且つ、前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層における配向性が、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層における配向性よりも高く、
前記圧電基板の表面に最も近い前記第2の金属層がアルミニウムにマグネシウムを添加したアルミニウム合金であり、それより前記圧電基板の表面から離れた前記第2の金属層がアルミニウムに銅を添加したアルミニウム合金である弾性表面波素子。 - 前記第1の金属層がチタンもしくはチタン合金である請求項5記載の弾性表面波素子。
- 前記第1の金属層の前記圧電基板の表面に最も近い層の層厚が30〜80Åである請求項6記載の弾性表面波素子。
- 請求項1記載の弾性表面波素子を分波器として用いた通信装置。
- 請求項5記載の弾性表面波素子を分波器として用いた通信装置。
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