JP2005229566A - 弾性表面波装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡単な電極構造で弾性表面波装置の耐マイグレーション性能及び耐電力性を高める。
【解決手段】 圧電基板1と、該圧電基板上に形成されてSAWを励振するAl電極膜からなる交差指電極4a、4b(IDT2)とを備える弾性表面波装置において、Al電極膜の表面から或る深さまで、隣接するAl結晶粒6がその酸化物であるAl237により結合されるように制御しながら、交差指電極を陽極酸化処理する。交差指電極は、隣接するAl結晶粒がその隙間を充填するAl23により結合されて機械的強度が増し、動作時にSAWの振動や電極抵抗の発熱によるAl結晶粒の分離を抑制できる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、情報通信機器や民生機器などの様々な電子機器に、例えば共振子、フィルタとして広く使用される弾性表面波装置に関する。
一般に弾性表面波装置は、圧電基板の表面を伝搬する弾性表面波(SAW)を励振するために、圧電基板表面に形成した少なくとも1対の交差指電極からなるIDT(すだれ状トランスデューサ)を備える。交差指電極には、低電気抵抗率で比重の小さいAlまたはAl合金を電極材料として用いることが一般的である。
ところが、Alはストレスマイグレーションに弱く、大きな電力を投入するとAlが自己拡散し、電極にヒロックやボイドが発生成長する。そのため、SAW素子に大きな電力が印加されると、SAWの振動エネルギと電極抵抗による発熱とから温度が上昇して、電極劣化即ちマイグレーションが発生し、電極を破壊する虞がある。
また、最近の高周波化の要請に対応するためには、IDTの電極指間ピッチを狭くしかつ電極指幅を小さくする必要がある。しかし、そのためにマイグレーションによる電極破壊がより生じ易くなり、電気的短絡、挿入損失の増加、共振子のQ値の低下などSAW素子の特性劣化を起こす虞がある。
そこで従来より、弾性表面波装置におけるマイグレーションの発生を防止するために、様々な工夫及び改善がなされている。例えば、鏡面研磨したサファイアなどの単結晶誘電体からなる基板の表面に、結晶方位的に一定方向に配向したAl膜によりAl(またはAl合金)電極を形成し、その上に圧電薄膜を形成することによって、Al電極の耐ストレスマイグレーション特性を向上させた弾性表面波装置が知られている(例えば、特許文献1、2を参照。)。更に特許文献1の弾性表面波装置は、電極材料のAlに微量のCuなどを添加することによって、耐マイグレーション効果を高めている。
同様に電極を形成するAlの結晶配向に着目したものとして、圧電基板上に形成したAlを主成分とする電極がエピタキシャル成長した配向膜からなり、該Al電極層を構成する結晶の(111)面と圧電基板を構成する結晶の(001)面とを互いに平行にした弾性表面波素子がある(特許文献3を参照。)。更に特許文献3によれば、Alの結晶粒が小さいほど電極の耐電力性は優れていること、及び、圧電性が大きいことからSAW素子に広く使用されているリチウムタンタレート、リチウムニオブレートからなる圧電基板上で、結晶性の良好なエピタキシャル膜を得ることは困難であることが記載されている。
また、Al電極のストレスマイグレーションを防止するために、2層以上の多層膜からなる電極構造が開発されている(例えば、特許文献4、5を参照。)。特許文献4に記載の表面弾性波素子は、少なくとも銅を添加したAl合金膜と銅膜とは内部応力の向きが互いに逆になることから、合計の内部応力がほぼ零または圧縮応力になるようにAl合金膜と銅膜とを交互に積層した電極を圧電基板の上に形成することにより、Alのマイグレーションを防止している。更に特許文献4の表面弾性波素子では、200℃を超えない温度で電極多層膜を形成することにより、電極材料の結晶粒の成長を抑制している。
特許文献5に記載の弾性表面波装置は、Taなどを主成分として含む非晶質の第1の金属層と、(111)方向に強い結晶方位を持たせたAl及びAlを主成分とする金属のいずれかからなる第2の金属層とを積層した励振電極を圧電基板上に具備することにより、耐電力性を高くしている。
更に、耐電力性の向上と、動作時におけるSAW素子の内部損失の低減とを同時に実現する弾性表面波素子が提案されている(特許文献6を参照。)。この弾性表面波素子は、圧電基板上にマイグレーション耐性の高い第1層電極とそれよりマイグレーション耐性で劣るが比抵抗の低い第2層電極とを積層した2層構造の電極を有し、電極膜の比抵抗の増大を比較的低く抑制することにより素子の内部損失の増大を抑制している。
また、マイグレーションによる電極劣化を防止するためにAl−Cu合金で形成される電極は、フォトリソグラフィ技術による電極形成工程で現像後のリンスに使用する純水に含まれる溶存酸素によって腐食することに鑑み、これを防止するための弾性表面波装置が提案されている(特許文献7を参照。)。この弾性表面波装置は、Al−Cu合金の第1層とAlの第2層とからなる2層構造の電極を圧電性基板上に有し、純水によるリンス洗浄工程における孔食発生を防止すると同時に、マイグレーション耐性を向上させている。
特開平3−40510号公報 特開平10−135773号公報 特開2002−353768号公報 特開平7−122961号公報 特開2001−94382号公報 特開平6−350377号公報 特開平8−191227号公報
しかしながら、上述した従来の弾性表面波装置は、いずれもその製造プロセスが複雑で多くの工数及び労力を要し、しかも設備コストも増大するという問題がある。
また、圧電基板の表面状態によって、その上に形成するAl電極膜は、結晶粒のサイズが異なる。例えばリチウムタンタレートの圧電基板の場合、その表面にスパッタリング、蒸着などの方法で形成したAl電極膜は、結晶粒のサイズが比較的大きい。図6(A)及び(B)は、それぞれ水晶及びリチウムタンタレートからなる圧電基板上にそれぞれ蒸着法によって成膜したAl膜の表面状態を示している。図6(A)の水晶では、Al膜の表面が比較的滑らかで、そのAl結晶粒のサイズが0.05μm程度であるのに対し、図6(B)のリチウムタンタレートでは、Al膜表面の凹凸が比較的大きく、Al結晶粒のサイズは0.1〜0.2μm程度である。そのため、特にリチウムタンタレートなどの圧電基板上に形成したAl電極膜では、ストレスマイグレーションが発生し易くなるという問題がある。
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な電極構造によりマイグレーションを有効に防止して耐電力性を高め、かつ従来に比して簡単に製造し得る弾性表面波装置及びその製造方法を提供することにある。
本発明によれば、上記目的を達成するために、圧電基板と、該圧電基板上に形成されてSAWを励振するAl電極膜とを備え、該Al電極膜の表面から或る深さまで、Al電極膜の隣接するAl結晶粒がその酸化物により結合された弾性表面波装置が提供される。
このような電極構造によって、Al電極膜はその機械的強度が増すので、動作時に圧電基板表面を伝搬するSAWの振動及び電極抵抗により発生する熱で、該Al電極膜を構成するAl結晶粒が分離してストレスマイグレーションを起こす虞が解消され、従って耐電力性が向上する。更に、Al電極膜表面のAl酸化物によって、隣接する電極指間で異物の付着などによる電気的短絡が防止されるので、特に弾性表面波装置の高周波化に好都合である。
或る実施例では、前記酸化物がAl電極膜の陽極酸化による形成されたものであり、複雑な工程や多くの工数・労力を追加することなく、比較的簡単に製造することができると共に、形成されるAl酸化物によって隣接するAl結晶粒の隙間が充填されるので、Al電極膜の表面が平滑になる。
また、或る実施例では、前記圧電基板にリチウムタンタレートが使用され、その場合に圧電基板表面の粗さからAl電極膜の結晶粒も比較的大きくなるが、Al酸化物により隣接するAl結晶粒の隙間が充填されるので、本発明のマイグレーション防止効果がより顕著に発揮される。
本発明の別の側面によれば、圧電基板上に弾性表面波を励振するAl電極膜を形成し、該Al電極膜を、その表面から或る深さまでAl電極膜の隣接するAl結晶粒がその酸化物により結合されるように制御しながら、陽極酸化処理する過程を含む弾性表面波装置の製造方法が提供される。
上述した従来技術に比して比較的簡単な工程で製造でき、しかも従来からの陽極酸化処理設備・機器をそのまま使用できるので、製造コストの上昇を抑制しつつ、耐マイグレーション性能及び耐電力性に優れた弾性表面波装置を製造することができる。
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
図1(A)(B)は、本発明によるSAW共振子の実施例を示している。例えばリチウムタンタレート、リチウムニオベート、水晶などの従来公知の圧電材料で形成された圧電基板1の表面には、中央に2つのIDT2がSAWの伝搬方向に沿って配置され、それらを挟むように両側に各1個の反射器3が配置されている。各IDT2は、それぞれ1対の交差指電極4a、4bからなり、そのバスバーに接続して圧電基板1の長手方向の辺縁近傍に入出力用の接続ランド5a及び接地用の接続ランド5bが形成されている。
交差指電極4a、4b、反射器3及び接続ランド5a、5bは、公知のスパッタ法や蒸着法などでAlの電極膜で形成されている。前記各電極膜は、その表面から或る程度の深さまで後述する陽極酸化処理により酸化されている。図6(B)に関連して上述したように、リチウムタンタレートの圧電基板1上に形成したAl交差指電極4aは、図2(A)に示すようにAl結晶粒6のサイズが比較的大きく、電極表面も比較的大きな凹凸が生じている。これを陽極酸化処理すると、酸化液が電極膜表面からAl結晶粒6の隙間に浸透してこれを酸化し、図2(B)に示すように或る深さまでAl酸化物即ちAl237が形成される。
このAl23によって、前記Al電極膜は隣接するAl結晶粒6同士が互いに結合されると共に、それより下側の酸化されていないAl層8を完全に被覆する。このような電極膜構造によって、交差指電極4a、4bはその機械的強度が増し、動作時にSAWの振動や電極抵抗の発熱によるAl結晶粒6の分離を抑制できるので、ストレスマイグレーションの発生を防止することができる。更に、Al237の形成によって、隣接するAl結晶粒6の隙間が充填されるので、前記交差指電極の表面が平滑になる。
図3は、陽極酸化処理を行うための装置の構成を概略的に示している。圧電体ウエハ9が、そのターミナル10をクリップ11で保持して、酸化液12を入れた電解槽13の中に浸漬される。ウエハ9の表面には、予め多数のSAW共振子の各電極が形成されているが、添付図面は説明を簡単にするために、共振子1個分の電極のみを示している。これらの電極は、ウエハ9表面全体に蒸着法やスパッタ法を用いて形成したAl電極膜を、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることにより形成する。これに加えて、ウエハ9表面には、ターミナル10及びこれを各IDT2及び反射器3と導通するための接続線14を形成する。
クリップ11は直流電源15の陽極(+)に接続され、その陰極(−)は電流計16を介して電解槽13の酸化液12中に浸漬した陰極電極板17に接続される。直流電源15から所定の電圧を印加すると、前記Al電極膜が酸化される。本実施例では、酸化液としては、リン酸二水素アンモニウムなどのリン酸塩やホウ酸塩の水溶液を使用するが、クエン酸塩やアジピン酸塩などのほぼ中性の塩の水溶液を用いることができる。また、直流電源15は、出力する電圧の調整手段を有する。
ここで、陽極酸化処理条件即ち印加電圧と印加時間とを設定する。直流電源15から印加する陽極酸化電圧は、例えば事前の試験結果などから、図4(A)に例示するような電圧印加時間T(秒)と電流値I(μA)との関係を求め、これを参考にして設定する。十分な酸化が得られる印加時間は、例えば図4(B)に示すような電圧Vと酸化膜厚tとの関係を求め、これを参考にして設定する。
このように設定した印加電圧及び印加時間で直流電源15から電流を流すと、IDT2及び反射器3のAl電極膜が陽極酸化され、その表面から或る深さまでAl23が形成される。Al23が形成される前記電極膜表面からの厚さは、例えばネットワークアナライザを使用し、印加電流及び電圧をモニタして印加電力及び印加時間を調整することによって制御する。
最後にウエハ9を所定の切断線に沿ってダイシングすると、本実施例のSAW共振子が得られる。このSAW共振子を所定のパッケージに実装して封止すると、所望のSAW共振器が完成する。
本実施例に従って、リチウムタンタレートの圧電基板1上にAl電極膜のIDT2及び反射器3を形成した発振周波数315MHzのSAW共振子を製造し、耐電力試験を行った。その結果を電力印加時間に関する周波数変動量(ΔF)として図5に示す。同図中、符号18は、本発明の陽極酸化処理を前記Al電極膜に行った場合の試験結果を示している。比較例として、符号19は、電極膜をAl合金で形成しかつ陽極酸化処理を行わなかった場合を、符号20は、電極膜をAlで形成しかつ陽極酸化処理を行わなかった場合をそれぞれ示している。この試験結果から、本発明を適用することにより高い耐電力性が得られ、マイグレーションを有効に防止できることが分かる。
以上、本発明の好適実施例について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において上記各実施例に様々な変更・変形を加えて実施することができる。例えば、上記実施例では、リチウムタンタレートの圧電基板及びその上に2つのIDT及び反射器を有するSAW共振子について説明したが、リチウムタンタレート以外の圧電材料からなる圧電基板、及び、IDTの数が異なるものや反射器を備えていないものなど、上記実施例以外の様々な構成を有するSAW装置のAl電極についても、同様に適用することができる。
(A)図は本発明を適用したSAW共振子の実施例を示す平面図、(B)図はその側面図。 (A)及び(B)図はそれぞれ交差指電極の陽極酸化処理の前後におけるAl結晶粒の状態を模式的に示す説明図。 本実施例に使用する陽極酸化装置の構成図。 (A)及び(B)図はそれぞれ陽極酸化の時間及び電圧条件を設定するための参考データを示す線図。 本実施例のSAW共振子に対する耐電力試験の結果を示す線図。 (A)及び(B)図はそれぞれ水晶及びリチウムタンタレートからなる圧電基板に成膜したAl電極の表面状態を示す顕微鏡写真。
符号の説明
1…圧電基板、2…IDT、3…反射器、4a,4b…交差指電極、5a,5b…接続ランド、6…結晶粒、7…Al23、8…Al層、9…ウエハ、10…ターミナル、11…クリップ、12…酸化液、13…電解槽、14…接続線、15…直流電源、16…電流計、17…陰極電極板、18,19,20…符号。

Claims (4)

  1. 圧電基板と、前記圧電基板上に形成されて弾性表面波を励振するAl電極膜とを備え、前記Al電極膜の表面から或る深さまで、前記Al電極膜の隣接するAl結晶粒がその酸化物により結合されていることを特徴とする弾性表面波装置。
  2. 前記酸化物が前記Al電極膜の陽極酸化による形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波装置。
  3. 前記圧電基板がリチウムタンタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性表面波装置。
  4. 圧電基板上に弾性表面波を励振するAl電極膜を形成し、前記Al電極膜を、その表面から或る深さまで前記Al電極膜の隣接するAl結晶粒がその酸化物により結合されるように制御しながら、陽極酸化処理する過程を含むことを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
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