JP4686197B2 - カルボン酸アミドの製造方法、並びにカルボン酸アミド誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
前記カルボン酸アミド誘導体は、皮膚に対する刺激が低く、また生分解性が良好であること等の理由から、ヘアシャンプー剤、台所用洗剤等の洗浄剤、香粧品、化粧品等に幅広く用いられている。
しかしながら、未反応のジアミンの除去方法として、窒素ブローや減圧トッピング法を単独で用いた場合には、未反応のジアミンと共に、その他の微量不純物の除去が十分に行われないため、カルボン酸アミド及びその誘導体の色調劣化や臭気の発生は改善されないという問題がある。
<1> 下記構造式(1)で表される脂肪酸化合物と、下記構造式(2)で表されるジアミンとを、(ジアミンのモル数)/(脂肪酸化合物のモル数)=1.05〜2.0のモル比で反応させてカルボン酸アミドを合成するカルボン酸アミド合成工程と、
該カルボン酸アミド合成工程において得られた反応物に対して、減圧及び不活性ガスの流通の少なくともいずれかを行うことにより、前記反応物中に残存する未反応のジアミンの濃度が0.5質量%以下となるまで前記未反応のジアミンを留去する第一留去工程と、
該第一留去工程を行った後の前記反応物に対して、水又は水蒸気を添加し、前記反応物中に残存する未反応のジアミンの濃度が0.005質量%未満となるまで、前記水又は水蒸気とともに前記未反応のジアミンを留去する第二留去工程と、
を含むことを特徴とするカルボン酸アミドの製造方法である。
<2> 第一留去工程が、反応物に対して、温度100℃〜220℃、圧力4.0kPa以下で減圧することにより行われる前記<1>に記載のカルボン酸アミドの製造方法である。
<3> 第一留去工程が、反応物に対して、温度100℃〜220℃で、前記反応物に対する体積比で1分間当たり0.05倍〜3倍の不活性ガスを液相中で流通することにより行われる前記<1>から<2>のいずれかに記載のカルボン酸アミドの製造方法である。
<4> 第二留去工程が、反応物に対して体積比で3%〜30%の添加量で水を添加することにより行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載のカルボン酸アミドの製造方法である。
<5> 第二留去工程が、カルボン酸アミド1kgに対して1時間当たり0.01kg〜10kgの添加量で水蒸気を添加することにより行われる前記<1>から<3>のいずれかに記載のカルボン酸アミドの製造方法である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の製造方法によりカルボン酸アミドを製造するカルボン酸アミド製造工程と、
該カルボン酸アミド製造工程により得られた該カルボン酸アミドと、過酸化水素とを反応させることにより、下記構造式(3)で表されるカルボン酸アミド誘導体を製造するカルボン酸アミド誘導体製造工程と、
を含むことを特徴とするカルボン酸アミド誘導体の製造方法。
<7> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の製造方法によりカルボン酸アミドを製造するカルボン酸アミド製造工程と、
該カルボン酸アミド製造工程により得られた該カルボン酸アミドと、下記構造式(4)で表されるモノハロアルキルカルボン酸及びその塩のいずれかとを反応させることにより、下記構造式(5)で表されるカルボン酸アミド誘導体を製造するカルボン酸アミド誘導体製造工程と、
を含むことを特徴とするカルボン酸アミド誘導体の製造方法である。
<8> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の製造方法によりカルボン酸アミドを製造するカルボン酸アミド製造工程と、
該カルボン酸アミド製造工程により得られた該カルボン酸アミドと、下記構造式(6)で表されるハロゲン化アルキル、及び下記構造式(7)で表されるジアルキル硫酸のいずれかとを反応させることにより、下記構造式(8)で表されるカルボン酸アミド誘導体を製造するカルボン酸アミド誘導体製造工程と、
を含むことを特徴とするカルボン酸アミド誘導体の製造方法である。
<9> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の製造方法によりカルボン酸アミドを製造するカルボン酸アミド製造工程と、
該カルボン酸アミド製造工程により得られた該カルボン酸アミドを、有機酸、無機酸、及び酸性アミノ酸から選択される少なくとも1種で中和することにより、下記構造式(9)で表されるカルボン酸アミド誘導体を製造するカルボン酸アミド誘導体製造工程と、
を含むことを特徴とするカルボン酸アミド誘導体の製造方法である。
本発明のカルボン酸アミドの製造方法は、脂肪酸化合物とジアミンとを反応させるカルボン酸アミド合成工程と、該カルボン酸アミド合成工程において得られた反応物に対して、前記反応物中に残存する未反応のジアミンの濃度が0.005質量%未満となるように前記未反応のジアミンを留去する留去工程とを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記カルボン酸アミド合成工程は、下記構造式(1)で表される脂肪酸化合物と、下記構造式(2)で表されるジアミンとを縮合反応させる工程である。
前記脂肪酸化合物としては、前記構造式(1)で表される脂肪酸及び脂肪酸エステルのいずれかであれば、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、前記脂肪酸としては、例えば、植物油脂肪酸、動物油脂肪酸、合成脂肪酸、及びこれらの混合物が挙げられ、前記脂肪酸エステルとしては、前記脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、グリセライド、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの中でも、ハンドリング性に優れるという観点から、前記構造式(1)において、R2が、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である脂肪酸又はその低級アルキルエステルが好ましく、R1が炭素数9〜21の直鎖アルキル基であって、かつR2が水素原子又はメチル基であるものがより好ましい。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
前記ジアミンとしては、前記構造式(2)で表されるものであれば、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、及びジプロピルアミノエチルアミンなどが挙げられる。これらの中でも、原料入手が容易である点、並びに、製造されたカルボン酸アミド及びカルボン酸アミド誘導体が、各種製品に配合された場合において該製品に付与する性能が高いという観点から、ジメチルアミノプロピルアミン、及びジエチルアミノエチルアミンが好ましい。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
前記脂肪酸化合物と、前記ジアミンとの反応温度は、80〜220℃が好ましく、100〜200℃がより好ましく、120〜195℃が特に好ましい。
また、反応時間としては、3〜20時間が好ましく、5〜15時間がより好ましい。
また、140〜180℃で反応させながら、ジアミンを滴下して添加しても良い。
また、縮合反応中に副生する水やアルコールを留出しやすくするため、窒素等の不活性ガスを微量流通させながら反応を行うことが好ましい。
前記留去工程は、2以上の工程からなり、少なくとも1つの留去工程が、反応物に対して減圧及び不活性ガスの流通のいずれかを行うことにより、前記反応物中に残存する未反応のジアミンを留去する工程であり、他の少なくとも1つの留去工程が、前記反応物に対して水又は水蒸気を添加し、前記反応物中に残存する前記未反応のジアミンを、前記水又は水蒸気とともに留去する工程であり、これらの工程がそれぞれ1少なくとも1回ずつ行われることが好ましい。
前記第一留去工程は、前記カルボン酸アミド合成工程における前記脂肪酸化合物と前記ジアミンとの反応終了後、反応物中に残存する未反応のジアミン量を低減させるための第一の工程として、前記反応物に対して減圧及び不活性ガスの流通のいずれかを行い、前記ジアミンを留去する工程である。
前記第一留去工程としては、前記減圧及び前記不活性ガスの流通のいずれかを単独で行ってもよく、両方行ってもよい。
減圧により前記反応物中の未反応のジアミンを留去する方法としては、例えば、温度100〜220℃の条件下で、0.01kPa/分〜20kPa/分で減圧していく方法が挙げられる。減圧による最終的な圧力としては、4.0kPa以下が好ましく、2.7kPa以下がより好ましく、1.33kPa以下が特に好ましい。
減圧処理の時間としては、所望の圧力に減圧した後、0.02〜5時間が好ましく、0.5〜2時間がより好ましい。
前記不活性ガスの流通により前記反応物中の未反応のジアミンを留去する方法としては、例えば、液相中又は気相中において、1分間当たり、前記反応物に対する体積比で0.05〜3倍(0.05〜2ccm、又は0.05〜2vvm)の前記不活性ガスを流通させる方法が挙げられる。このとき、流通させる前記不活性ガスは、0.1〜1倍であることが好ましい。
前記不活性ガス量が少ないと、未反応のジアミンを留去するために要する時間が長くかかることがあり、前記不活性ガス量が過剰であると、減圧時に液体成分が蒸発することなく溢れ出すフラッディング現象が生じることによって、未反応のジアミンと共に、生成したカルボン酸アミドが失われることがある。
温度条件としては、100〜220℃が好ましく、130〜200℃がより好ましい。
前記第二留去工程は、前記第一留去工程の終了後、留去されずに反応物中に残存している未反応のジアミンを留去するための工程として、前記反応物に対して水又は水蒸気を添加し、常圧下又は減圧下で処理する工程である。
前記水の添加量としては、前記反応物に対する体積比で1〜100%が好ましく、2〜50%がより好ましく、3〜30%が特に好ましい。前記水は、全量を一括で添加してもよく、分割して添加してもよく、また連続的に滴下等の方法により添加しても良い。
水の添加操作と水の留去操作とを繰り返し行うことにより、より多くの未反応ジアミンを除去できると共に、反応物中に微量存在する不純物も除去できる。繰り返しの回数としては、1〜10回が好ましく、1〜5回がより好ましい。
前記水蒸気の添加量としては、カルボン酸アミド1kgに対し、1時間当たり0.01〜10kgが好ましい。
本発明のカルボン酸アミドは、上述した本発明のカルボン酸アミドの製造方法により製造される。
前記カルボン酸アミドは、未反応のジアミン含有量が0.005質量%未満であり、色調劣化が抑制され、臭気が改善され、保存安定性に優れ、毛髪化粧料や洗浄剤等に好適に使用されると共に、後述するカルボン酸アミド誘導体の製造に用いられる。
また、前記カルボン酸アミドは、室温下において固体として保存してもよく、加温して液体として保存してもよい。また、保存安定性をさらに高める観点から、窒素シールをして保存することが好ましい。
本発明のカルボン酸アミド誘導体の製造方法は、本発明のカルボン酸アミドの製造方法により製造された前記カルボン酸アミドを用いて誘導体を製造する方法であり、例えば、(a)前記カルボン酸アミドと過酸化水素とを反応させるアミンオキシドの製造方法、(b)前記カルボン酸アミドとモノハロアルキルカルボン酸又はその塩とを反応させるベタインの製造方法、(c)前記カルボン酸アミドとハロゲン化アルキル又はジアルキル硫酸とを反応させる四級アンモニウム塩の製造方法、及び(d)前記カルボン酸を中和剤で中和するアミン塩の製造方法などが挙げられる。
本発明のカルボン酸アミド誘導体は、前記カルボン酸アミド誘導体の製造方法により製造されたカルボン酸アミド化合物である。
前記アミンオキシドの製造方法としては、本発明のカルボン酸アミドの製造方法により製造された前記カルボン酸アミドと過酸化水素とを反応させる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができる。
前記過酸化水素は、過酸化水素水溶液として添加することが好ましく、前記過酸化水素水溶液中の過酸化水素濃度としては、5〜60%が好ましく、8〜45%がより好ましい。過酸化水素濃度が高すぎると前記過酸化水素の自己分解が生じたり、局部的な反応が生じる一方、前記過酸化水素濃度が低すぎると溶媒に対する前記カルボン酸アミドの濃度が高くなり、反応物の液性が劣化し、生産性が低下することがある。
前記過酸化水素の添加及び攪拌の際の保持温度としては、反応物が攪拌混合できる温度以上で、かつ生成される前記カルボン酸アミド誘導体の分解濃度以下であることが好ましい。このような温度としては、例えば、60〜95℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。また、保持時間としては、例えば、30分〜24時間が好ましく、1〜8時間がより好ましい。
また、反応終了後、反応物中に未反応の前記過酸化水素を多く含む場合には、必要に応じて、例えば、前記カルボン酸アミドをさらに添加する他、公知の方法の中から適宜選択して、更に分解反応を行わせることができる。該分解反応の方法としては、例えば、水酸化ナトリウムを添加する方法が挙げられる。
前記アルコール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、2−プロパノール、プロピレングリコール等が挙げられる。これらの中でも、生成されるアミンオキシドの有効成分濃度を高くすることができる点で、2−プロパノール、エタノールが好適に使用される。
前記溶媒の使用量は、反応物を攪拌混合するのに十分な量であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、反応物中の前記アミンオキシドの有効成分濃度は10〜50質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましいため、該有効成分濃度を満たす量を使用することが好ましい。前記使用量が少なすぎると反応物の混合状態が悪くなり、ゲル化することがある。前記使用量が多すぎると反応物中の前記アミンオキシドの濃度が小さくなり、生産性が低下することがある。
前記ベタインの製造方法としては、本発明のカルボン酸アミドの製造方法により製造された前記カルボン酸アミドと、下記構造式(4)で表されるモノハロアルキルカルボン酸又はその塩とを反応させる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができる。
前記モノハロアルキルカルボン酸又はその塩としては、例えば、モノクロロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロロプロピオン酸、モノブロモプロピオン酸、モノクロロ酪酸、モノブロモ酪酸、並びにそれらのナトリウム塩及びカリウム塩などが挙げられ、これらの中でもモノクロロ酢酸、及びモノクロロ酢酸ナトリウムが特に好ましい。
前記モノハロアルキルカルボン酸又はその塩の添加及び攪拌の際のpHとしては、8〜10が好ましく、保持温度としては、50〜100℃が好ましい。また、保持時間としては、例えば、30分〜24時間が好ましく、1〜8時間がより好ましい。
前記アルコール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、2−プロパノール、プロピレングリコール等が挙げられる。これらの中でも、生成されるベタインの有効成分濃度を高くすることができる点で、2−プロパノール、エタノールが好適に使用される。
前記溶媒の使用量は、反応物を攪拌混合するのに十分な量であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、反応物中の前記ベタインの有効成分濃度は10〜40質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましいため、該有効成分濃度を満たす量を使用することが好ましい。前記使用量が少なすぎると反応物の混合状態が悪くなり、ゲル化することがある。前記使用量が多すぎると反応物中の前記ベタインの濃度が小さくなり、生産性が低下することがある。
前記四級アンモニウムの製造方法としては、本発明のカルボン酸アミドの製造方法により製造された前記カルボン酸アミドと、下記構造式(6)で表されるハロゲン化アルキル、及び下記構造式(7)で表されるジアルキル硫酸(以下、「四級化剤」と称する)のいずれかとを反応させる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができる。
前記ハロゲン化アルキルとしては、例えば、塩化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル等の低級アルキルハライドなどが挙げられる。
前記ジアルキル硫酸としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。
また、反応時間としては、例えば、30分〜24時間が好ましく、1〜8時間がより好ましい。
また、反応終了後、残存する未反応の四級化剤を除去するために、窒素等の不活性ガスを流通させたり、減圧したりすることが好ましい。
前記溶媒の使用量は、反応物を攪拌混合するのに十分な量であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、反応物中の前記四級アンモニウム塩の有効成分濃度は10〜80質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましいため、該有効成分濃度を満たす量を使用することが好ましい。前記使用量が少なすぎると反応物の混合状態が悪くなり、ゲル化することがある。前記使用量が多すぎると反応物中の前記四級アンモニウム塩の濃度が小さくなり、生産性が低下することがある。
前記アミン塩の製造方法としては、本発明のカルボン酸アミドの製造方法により製造された前記カルボン酸アミドを、有機酸、無機酸、及び酸性アミノ酸から選択される少なくとも1種(以下、「中和剤」と称する)で中和する方法であれば、特に制限は無く、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができる。
前記カルボン酸アミドの反応率を高めるためには、攪拌状態を保つことが好ましい。
前記反応温度としては、カルボン酸アミドの融点以上であることが好ましく、40〜90℃がより好ましい。
前記反応時間としては、例えば、1分〜5時間が好ましく、5分〜1時間がより好ましい。
また、反応終了後、反応物中に未反応の前記中和剤を多く含む場合には、必要に応じて、例えば、前記カルボン酸アミドをさらに添加する他、公知の方法の中から適宜選択することができる。
前記アルコール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、2−プロパノール、プロピレングリコール等が挙げられる。これらの中でも、生成されるアミン塩の有効成分濃度を高くすることができる点で、2−プロパノール、エタノールが好適に使用される。
前記溶媒の使用量は、反応物を攪拌混合するのに十分な量であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、反応物中の前記アミン塩の有効成分濃度は10〜40質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましいため、該有効成分濃度を満たす量を使用することが好ましい。前記使用量が少なすぎると反応物の混合状態が悪くなり、ゲル化することがある。前記使用量が多すぎると反応物中の前記アミン塩の濃度が小さくなり、生産性が低下することがある。
<カルボン酸アミドの製造>
−カルボン酸アミド合成工程−
撹拌器、温度計、及び還流冷却器を備えた1リットル四ツ口フラスコに、脂肪酸としてステアリン酸350g(アシッドケム社製、Palmac90−18、分子量282)を仕込み、80℃に加熱してステアリン酸を融解した。窒素置換(13kPaに減圧後、常圧・窒素戻し)を2回行った後、150℃に昇温し、ジアミンとしてジメチルアミノプロピルアミン(以下、「DMAPA」と略記する)120g(BASF社製、分子量102、ステアリン酸に対するモル比:0.95)を1時間かけて滴下した。次いで、150〜160℃で1時間保持した後、1時間かけて185℃に昇温し、DMAPA44gを1時間かけて滴下し、滴下終了後、185〜190℃で保持することにより反応物を調製した。反応により副生した水は系外に留去し、DMAPAは還流するように冷却器の還流温度を調整した。
前記反応物の酸価が1.5mg−KOH/gになったことを確認した後、前記反応物を170〜190℃に保持したまま4.0kPaに減圧し、1時間放置することにより未反応のDMAPAを留去した。
ガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と略記)を用い、下記の方法によりDMAPA濃度を測定した結果、0.02%であった。
測定装置はHP5890(HEWLETT PACKARD社製)を用い、カラムはUltra 1(Agilent Technologies社製、φ2μm×25m×t0.11μm)を用いた。カラム温度は、60℃を開始温度とし、300℃になるまで10℃/分で昇温し、その後、300℃で40分間保持した。試料の注入温度は320℃、検出器温度は320℃とし、キャリアーガスとしてヘリウムを用い、スピリット比は1:50とした。検出器はFIDを用い、注入量は1μLとした。なお、試料はシリル化して測定した。
前記反応物を120℃まで冷却後、精製水44gを加え、60〜100℃に保持して撹拌しながら4.0kPaに減圧し、水とともに残存する未反応のDMAPA及び微量の不純物を留去した。再度、精製水44gを加え、撹拌しながら、4.0kPaに減圧し、15分間放置することにより、水を留去した。
第一留去工程と同様の方法でDMAPA濃度を測定した結果、DMAPAのピークは検出されなかった(0.005%未満)。
上記の方法により得られたステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを99%含有する前記反応物の臭気、及び色調を以下の方法により評価した。結果を表1に示す。
(1)臭気の評価
前記反応物をエタノールで50質量%の濃度に希釈して薬包紙に塗抹し、エタノールを蒸発させて評価用サンプルを調製した。前記サンプルを用いてパネラーによる官能評価を行い、下記の基準に基づき、臭気を評価した。また、前記反応物を50℃で1ヶ月保存したものの臭気を、同様にして評価した。
〔評価基準〕
◎:無臭
○:ごく僅かに臭気(アミン臭等)がある。
△:はっきりとした臭気(アミン臭等)がある。
×:強い臭気(アミン臭等)がある。
色差分析計(日本電色工業(株)製「OME−200」)を用いて、製造直後の前記反応物の色調、及び50℃で1ヶ月保存した後の色調をそれぞれ測定して、色調劣化の有無を調べた。
結果をG/H、又はAPHAで示す。なお、G/Hの値、又はAPHAの値が大きくなっていることが、色調が劣化していることを表す。
<カルボン酸アミドの製造>
−カルボン酸アミド合成工程−
撹拌器、温度計、及び還流冷却器を備えた1リットル四ツ口フラスコに、脂肪酸としてベヘン酸350g(コグニス社製、EDENOR C22 85RGS、分子量340)を仕込み、90℃に加熱してベヘン酸を融解した。窒素置換(13kPaに減圧後、常圧・窒素戻し)を2回行った後、DMAPA100gを仕込み、140〜150℃に昇温して1時間反応させた。次いで、170℃に昇温し、DMAPA37gを1時間かけて滴下した後、185℃に昇温して反応物を得た。添加したDMAPAの全量のモル比は、ベヘン酸に対して1.3であった。反応により副生した水は系外に留去し、DMAPAは還流するように冷却器の還流温度を調整した。
前記反応物の酸価が2.0mg−KOH/gになったことを確認した後、前記反応物を180〜190℃に保持したまま、キャピラリー管を用いて窒素を25L/時間で3時間流通させることにより未反応のDMAPAを留去した。
GCを用い、実施例1と同様にしてDMAPA濃度を測定した結果、0.5%であった。
前記反応物を150℃まで冷却後、120〜150℃に保持しながら、精製水を45g/時間の流量で3時間滴下し、留出する水とともに残存する未反応のDMAPA及び微量の不純物を留去した。
GCを用い、実施例1と同様にしてDMAPA濃度を測定した結果、DMAPAのピークは検出されなかった(0.005%未満)。
その後、さらに窒素ガスを流通させることにより、残存する微量の水を留去した。
上記の方法により得られたベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミドを99%含有する前記反応物の臭気及び色調を、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
<カルボン酸アミドの製造>
−カルボン酸アミド合成工程−
撹拌器、温度計、及び還流冷却器を備えた1リットル四ツ口フラスコに、脂肪酸エステルとしてラウリン酸メチルエステル300g(ライオンケミカル社製、パステルM12、分子量214)を仕込み、60℃にて窒素置換(13kPaに減圧後、常圧・窒素戻し)を2回行った後、180℃に昇温し、DMAPA186g(ラウリン酸メチルエステルに対するモル比:1.3)を3時間かけて滴下した。DMAPAの滴下中から滴下終了後5時間まで180〜190℃に保持して反応物を調製した。反応により副生したメタノールは冷却器に80℃の温水を流すことにより系外に留去し、DMAPAは還流させた。
前記反応物中の未反応メチルエステル濃度をGCを用いて常法により測定し、0.5質量%になったことを確認した後、前記反応物を180〜190℃に保持したまま、4.0kPaに減圧し、1時間放置することにより未反応のDMAPAを留去した。
GCを用い、実施例1と同様にしてDMAPA濃度を測定した結果、0.02%であった。
前記反応物を130℃まで冷却後、120〜130℃に保持しながら、前記反応物に対し、精製水を120℃に加熱して生成させた水蒸気を、ポンプを用いて40g/時間の流量で吹き込み、留出するメタノールとともに残存する未反応のDMAPAを留去した。この工程を2時間行った。
GCを用い、実施例1と同様にしてDMAPA濃度を測定した結果、DMAPAのピークは検出されなかった(0.005%未満)。
その後、さらに80〜120℃に保持しながら4.0kPaに減圧し、残存する微量の水を留去した。
上記の方法により得られたラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを99.6%含有する前記反応物の臭気及び色調を、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
ステアリン酸とDMAPAを用いて、実施例1と同様にしてカルボン酸アミド合成工程を行った。ステアリン酸とDMAPAとの反応終了後、反応物を180〜190℃の条件下で4.0kPaに減圧し、2時間トッピングを行い、未反応のDMAPAを留去した。GCを用い、実施例1と同様にしてDMAPA濃度を測定した結果、0.02%であった。
また、得られたステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドの臭気及び色調を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
ベヘン酸とDMAPAを用い、実施例2と同様にして、カルボン酸アミド合成工程を行った。ベヘン酸とDMAPAとの反応終了後、反応物を180〜190℃に保持しながら、キャピラリー管から窒素を15L/時間で5時間流通させて未反応のDMAPAを留去した。GCを用い、実施例1と同様にしてDMAPA濃度を測定した結果、0.03%であった。
また、得られたベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミドの臭気及び色調を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
ラウリン酸メチルエステルとDMAPAを用い、実施例3と同様にしてカルボン酸アミド合成工程を行った。ラウリン酸メチルエステルとDMAPAとの反応終了後、反応物を150℃に冷却し、120〜150℃に保持しながら、精製水を40g/時間の流量で3時間滴下し、留出する水とともに未反応のDMAPAを留去した。GCを用い、常法によりDMAPA濃度を測定した結果、0.02%であった。その後、80〜120℃で4.0kPaに減圧し、残存する微量の水を留去した。
また、得られたラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミドの臭気及び色調を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
処理方法B:不活性ガス流通
処理方法C:水添加
処理方法D:水蒸気添加
<カルボン酸アミド誘導体(アミン塩)の製造>
実施例1と同様にして合成したステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド250g(アミン価から算出した分子量:368)を1リットル四つ口フラスコに仕込み、70〜90℃で撹拌した。ここに濃塩酸(関東化学製)34.0g(カルボン酸アミドに対するモル比:0.6)を徐々に添加して、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを中和した。70〜90℃に保ちながら減圧下で水分を留去し、室温下で冷却・固化させて、フレーク状のステアリン酸アミドプロピルアミン塩を得た。
得られたステアリン酸アミドプロピルアミン塩の臭気及び色調を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。前記色調の評価は、ステアリン酸アミドプロピルアミン塩が50質量%となるようにエタノールに溶解したサンプルを使用した。
<カルボン酸アミド誘導体(四級アンモニウム塩)の製造>
実施例2と同様にして合成したベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミド200g(アミン価から算出した分子量:426)を、オクタデシルアルコール(関東化学製)167gと、ヘキサデシルアルコール(関東化学製)167gと、炭酸水素ナトリウム(旭硝子製)1.0gと共に1リットルガラスオートクレーブに仕込み、85℃に加温して溶解させた後、窒素置換(0.2MPaに減圧後、常圧・窒素戻し)を2回行った。
85℃にて、塩化メチル(住友精化製)を25.0g(カルボン酸アミドに対するモル比:1.05)を仕込み、85〜100℃で2時間熟成した。未反応のジアミンの濃度が1%未満であることを確認した後、脱圧し、室温下で冷却・固化させて、フレーク状のベヘン酸アミドプロピルアンモニウム塩を得た。
得られたベヘン酸アミドプロピルアンモニウム塩の臭気及び色調を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。前記色調の評価は、ベヘン酸アミドプロピルアンモニウム塩が50質量%となるようにエタノールに溶解したサンプルを使用した。
<カルボン酸アミド誘導体(ベタイン)の製造>
実施例3と同様にして合成したラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド150g(アミン価から算出した分子量:286)と、イオン交換水398gと、モノクロロ酢酸ナトリウム(関東化学製、分子量117)66g(カルボン酸アミドに対するモル比:1.08)と、水酸化ナトリウム水溶液(関東化学製、30%に希釈)4.0gとを、撹拌器、温度計、及び還流冷却器を備えた1リットル四ツ口フラスコに仕込んだ後、85℃に加温した。85〜90℃に保持しながら5時間熟成を行った後、40℃に冷却し、有効成分約30%のラウリン酸アミドプロピルベタインを得た。
得られたラウリン酸アミドプロピルベタインの臭気及び色調を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
<カルボン酸アミド誘導体(アミンオキシド)の製造>
撹拌器、温度計、及び還流冷却器を備えた1リットル四ツ口フラスコに、実施例3と同様にして合成したラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド200g(アミン価から算出した分子量:286)と、精製水200gとを仕込み、撹拌しながら、8.3%の過酸化水素(三菱ガス化学製、45%品を希釈して使用)56g(カルボン酸アミドに対するモル比:1.05)を75℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、85℃にて5時間熟成し、有効成分濃度約30%のラウリン酸アミドプロピルアミンオキシドを含む反応物を得た。
得られたラウリン酸アミドプロピルアミンオキシドの臭気及び色調を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
比較例1と同様にして合成したステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを用いて、実施例4と同様にしてステアリン酸アミドプロピルアミン塩を調製した。
得られたステアリン酸アミドプロピルアミン塩の臭気及び色調を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。前記色調の評価は、ステアリン酸アミドプロピルアミン塩が50質量%となるようにエタノールに溶解したサンプルを使用した。
比較例2と同様にして合成したベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミドを用いて、実施例5と同様にしてベヘン酸アミドプロピルアンモニウム塩を調製した。
得られたベヘン酸アミドプロピルアンモニウム塩の臭気を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。前記色調の評価は、ベヘン酸アミドプロピルアンモニウム塩が50質量%となるようにエタノールに溶解したサンプルを使用した。
比較例3と同様にして合成したラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを用いて、実施例6と同様にしてラウリン酸ジメチルアミノプロピルベタインを調製した。
得られたラウリン酸ジメチルアミノプロピルベタインの臭気を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
比較例3と同様にして合成したラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを用いて、実施例7と同様にしてラウリン酸アミドアミノプロピルアミンオキシドを調製した。
得られたラウリン酸アミドアミノプロピルアミンオキシドの臭気を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
また、本発明のカルボン酸アミド誘導体の製造方法により製造された前記カルボン酸アミド誘導体は、色調劣化が抑制され、臭気が改善され、保存安定性に優れているため、衣料用洗剤、台所用洗剤、ヘアシャンプー剤、ボディシャンプー剤、及び洗顔剤等の洗浄剤、ヘアリンス剤、ヘアコンディショナー剤、及びヘアトリートメント剤等の毛髪処理剤、並びに繊維処理剤などに好適に使用することができる。
Claims (9)
- 下記構造式(1)で表される脂肪酸化合物と、下記構造式(2)で表されるジアミンとを、(ジアミンのモル数)/(脂肪酸化合物のモル数)=1.05〜2.0のモル比で反応させてカルボン酸アミドを合成するカルボン酸アミド合成工程と、
該カルボン酸アミド合成工程において得られた反応物に対して、減圧及び不活性ガスの流通の少なくともいずれかを行うことにより、前記反応物中に残存する未反応のジアミンの濃度が0.5質量%以下となるまで前記未反応のジアミンを留去する第一留去工程と、
該第一留去工程を行った後の前記反応物に対して、水又は水蒸気を添加し、前記反応物中に残存する未反応のジアミンの濃度が0.005質量%未満となるまで、前記水又は水蒸気とともに前記未反応のジアミンを留去する第二留去工程と、
を含むことを特徴とするカルボン酸アミドの製造方法。
- 第一留去工程が、反応物に対して、温度100℃〜220℃、圧力4.0kPa以下で減圧することにより行われる請求項1に記載のカルボン酸アミドの製造方法。
- 第一留去工程が、反応物に対して、温度100℃〜220℃で、前記反応物に対する体積比で1分間当たり0.05倍〜3倍の不活性ガスを液相中で流通することにより行われる請求項1から2のいずれかに記載のカルボン酸アミドの製造方法。
- 第二留去工程が、反応物に対して体積比で3%〜30%の添加量で水を添加することにより行われる請求項1から3のいずれかに記載のカルボン酸アミドの製造方法。
- 第二留去工程が、カルボン酸アミド1kgに対して1時間当たり0.01kg〜10kgの添加量で水蒸気を添加することにより行われる請求項1から3のいずれかに記載のカルボン酸アミドの製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の製造方法によりカルボン酸アミドを製造するカルボン酸アミド製造工程と、
該カルボン酸アミド製造工程により得られた該カルボン酸アミドと、過酸化水素とを反応させることにより、下記構造式(3)で表されるカルボン酸アミド誘導体を製造するカルボン酸アミド誘導体製造工程と、
を含むことを特徴とするカルボン酸アミド誘導体の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の製造方法によりカルボン酸アミドを製造するカルボン酸アミド製造工程と、
該カルボン酸アミド製造工程により得られた該カルボン酸アミドと、下記構造式(4)で表されるモノハロアルキルカルボン酸及びその塩のいずれかとを反応させることにより、下記構造式(5)で表されるカルボン酸アミド誘導体を製造するカルボン酸アミド誘導体製造工程と、
を含むことを特徴とするカルボン酸アミド誘導体の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の製造方法によりカルボン酸アミドを製造するカルボン酸アミド製造工程と、
該カルボン酸アミド製造工程により得られた該カルボン酸アミドと、下記構造式(6)で表されるハロゲン化アルキル、及び下記構造式(7)で表されるジアルキル硫酸のいずれかとを反応させることにより、下記構造式(8)で表されるカルボン酸アミド誘導体を製造するカルボン酸アミド誘導体製造工程と、
を含むことを特徴とするカルボン酸アミド誘導体の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の製造方法によりカルボン酸アミドを製造するカルボン酸アミド製造工程と、
該カルボン酸アミド製造工程により得られた該カルボン酸アミドを、有機酸、無機酸、及び酸性アミノ酸から選択される少なくとも1種で中和することにより、下記構造式(9)で表されるカルボン酸アミド誘導体を製造するカルボン酸アミド誘導体製造工程と、
を含むことを特徴とするカルボン酸アミド誘導体の製造方法。
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