JP4678515B2 - ステータの固定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、モータケース、前記モータケースから軸支されて内部で回転するロータ、前記ロータと同心に前記ロータの外周に配設されるステータを備え、前記ステータを前記モータケースに締付ける締付け手段を備えたモータ駆動装置におけるステータの固定方法に関する。
近来、自動車の駆動源としてエンジン及びモータ駆動装置を備えた、所謂ハイブリッド車が燃費、環境保護等の点から注目を集めている。この種のハイブリッド車にあっては、モータ駆動装置はバッテリーから電力を得て駆動力を発生するモータとして働き、その駆動力を走行機構側に伝えモータ走行を行う他、エンジンから駆動力を得てジェネレータとして働き、バッテリーの充電の用を果たす場合もある。さらに、制動時には車が余分に有する慣性力を電力として回収する、所謂、回生動作もする。さらに、モータ駆動装置がエンジンの始動用に使用される場合もある。
従って、ハイブリッド車に備えられるモータ駆動装置は、そのロータが変速機構側及びエンジン側に駆動連結されて、駆動力の授受が可能とされている。
モータ駆動装置は、ステータと当該ステータ内に収納されるロータとを備えており、これらステータ及びロータは、モータケース側から支持される。ステータの支持は固定支持であり、ロータの支持は、モータケースに設けられる軸支部からの回転支持である。通常、ハイブリッド車にあっては、モータケースは単独で設けられることは少なく、変速機構が内部に収納されるミッションケースの一部がモータケースに兼用される。
モータ駆動装置においてステータ・ロータ間のギャップ及び同心度はモータ駆動装置の性能を決める極めて重要な要件であり、厳密に管理調整される。
この種の調整を行う技術として、特許文献1に開示されている技術がある。この技術は電気自動車用モータのギャップ調整装置に関するものであり、フライホイールハウジング12(これまで説明してきたモータケースに相等する)に、調整ボルト46を立設し、ステータコア42の外周部位を調整することで、ギャップを調節する。この例におけるステータ14は、比較的薄いものである。即ち、ロータの回転軸(ステータと軸心を共有する)方向におけるステータの厚みは比較的小さい。
特開平7−241050号公報
しかしながら、この先行技術に示される調整方法では、モータ駆動装置の構成に必須な部品以外の部品(調整ボルト46)が必要となるとともに、モータケースにボルト孔を設ける必要があり、好ましくない。
さらに、近来、ハイブリッド車におけるモータ駆動装置に要求される性能との関係で、モータ駆動装置のロータの軸方向での厚みを増大させる必要が生じている。このような要請に答えるべく構成された、肉厚のモータ駆動装置の概略構成を、図1に模式的に示した。同図左側がエンジンEが配設されるエンジン室ER側に、同図右側が変速機構Tが配設される変速機構室TR側に対応する。
ステータSは、ステータコアSCと、このステータコアSCに対するステータコイルSWを備えて構成される。ステータコアSCは、図2に示すように概略リング状の鋼板pを多数枚積層して構成されるものであり、鋼板p夫々の周方向の所定位相に設けられた固定部を積層方向に貫通する締結ボルトb1で、モータケースに締付け固定される。さらに、ステータコアSCを成す鋼板pには、周方向の所定位相において、かしめ或いは溶接処理等が施されており、鋼板p間の相対移動がある程度規制される。
このステータコアの、図1における左右方向(ロータの軸方向に相等)の位置はモータケースに設けられる座面によって決まる。一方、その上下方向(ロータの軸径方向に相等)に関しては、モータケース側の収納空間が、比較的余裕を有するものとされることから、前記締結ボルトの締付けにより、その位置が決まる。
さて、以上説明してきた構成において、特許文献1に開示される技術のように、ステータの厚み(ロータの軸方向の厚み)が比較的薄い場合には、ロータの軸心に対するステータの位置(ステータの軸心の位置)を比較的粗く管理しても問題が発生することは無かった。しかしながら、モータへの要求度が高まり、厚みが増すにつれて、従来通りの管理手法を踏襲すると、モータの回転に伴って発生する振動(ロータの回転むらを含む)が増大することが判明した。
この問題が発生する原因は、発明者らの検討により、締結ボルトの締結により発生するステータコアの変形が原因であることが判明した。この変形状況を示したのが、図3(a)(b)である。同図は、積層型のステータコアを縦配置した状態を示しており、(a)は締結ボルトによる締付けを行うことのない状態を示している。(b)は、締結ボルトの締付けを行った状態を示しており、締付けに伴って、ステータコア個々のくせで鋼板間に相対移動を起こし、ステータの軸心が直線性を保てなくなった状態を示している。この状態では、ステータコアの厚み方向中間位置におけるコア軸心位置は、ロータの軸心に対してずれており、調整が必要となる。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロータの軸心に対するステータの位置の調整を、正確且つ迅速に行って、ステータをロータの軸心に対して適切な位置に固定する固定方法を得ることにある。
上記目的を達成するための本発明に係るステータの固定方法は、モータケース、前記モータケースから軸支されて内部で回転するロータ、前記ロータと同心に前記ロータの外周に配設されるステータを備え、前記ステータを前記モータケースに締付け手段を備えたモータ駆動装置におけるステータの固定方法であって、その第1特徴構成は、前記締付け手段により締付けた締付け状態における前記ロータの軸心に対する前記ステータの位置に基づいて、前記締付け手段により締付けていない開放状態における前記ステータの目標調整位置を導出する調整量導出工程と、
前記ステータを前記開放状態として、前記ステータの位置を前記調整量導出工程で導出した目標調整位置に調整する調整工程とを順に実行し、
前記調整工程実行後に、再度、前記ステータを前記締付け手段により締付けて固定する点にある。
上記第1特徴構成によれば、上記調整量導出工程及び上記調整工程を実行して、上記目標調整位置にステータの位置を調整することで、その後に締付け手段により締付け固定した場合に、その締付け状態のステータの位置をロータの軸心に対して適切な位置とすることができる。
即ち、ロータの軸心に対して適切な位置に配置した締付け状態のステータを想定し、そのステータを開放状態としたときの位置を、上記目標調整位置として導出することができ、その目標調整位置に位置調整したステータを締付け手段により締付け固定すれば、上記目標調整位置の導出時に想定した内径面の変形状態が再現されるので、ステータをロータの軸心に対して適切な位置に固定することができる。
本発明に係るステータの固定方法の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記調整量導出工程の実行前に、前記ステータを前記締付け状態として、前記ステータの内径面の位置を測定し、前記測定結果から前記調整量導出工程で用いる前記ロータの軸心に対する前記ステータの位置を求める測定工程を実行する点にある。
上記第2特徴構成によれば、上記測定工程において、モータケース内に収納したステータを締付け手段により締付け状態として、その内径面の位置を実際に測定することで、締付け状態における前記ロータの軸心に対する前記ステータの位置を正確に求めることができる。よって、調整量導出工程においてその正確なステータの位置を用いて目標調整位置を導出し、調整工程においてその目標調整位置にステータの位置を調整すれば、ステータをロータの軸心に対して適切な位置に固定することができる。
本発明に係るステータの固定方法の第3特徴構成は、上記第1乃至第2特徴構成に加えて、前記調整量導出工程において、前記ロータの軸方向における前記ステータの代表位置において前記ステータの内径面の軸心と前記ロータの軸心とが一致するときの前記ステータの位置を、前記目標調整位置として導出する点にある。
上記第3特徴構成によれば、上記のように目標調整位置を導出することにより、その目標調整位置に位置調整された開放状態のステータを、締付け手段により締付け固定したときに、その固定後のステータの内径面の軸心と、ロータの軸心とが、ロータの軸方向に沿ったステータの代表位置において一致させることができる。よって、その固定後のステータの内径面とロータの外径面との隙間をロータの軸方向に沿って極めて均一なものとなるように、ステータをロータの軸心に対して適切な位置に固定することができる。
本発明に係るステータの固定方法の第4特徴構成は、上記第1乃至第2特徴構成に加えて、前記ロータの軸方向における複数箇所での前記ステータの位置の平均値を、前記ステータの軸心の位置として演算する点にある。
上記第4特徴構成によれば、目標調整位置を導出するためのステータの軸心の位置を、ロータの軸方向におけるステータの複数箇所での位置の平均値として演算することで、このステータの位置をロータの軸心に一致させることで、ロータの軸方向に沿って、固定後のステータの内径面と、ロータの外径面との隙間を、より平均化された均一なものとすることができる。
本発明に係るステータの固定方法の第5特徴構成は、上記第1乃至第4特徴構成の何れかに加えて、前記目標調整位置が、前記ステータの座面側において設定されている点にある。
上記第5特徴構成によれば、ステータの荷重がかかるステータの座面側で目標調整位置が設定されているので、調整工程において、ステータの軸心の傾きを抑制した状態で、その座面側でステータの位置を調整することができる。
本発明に係るステータの固定方法の第6特徴構成は、上記第1乃至第5特徴構成の何れかに加えて、前記調整量導出工程において、前記締付け手段による締付けを解除した開放状態における前記ステータの位置に対して、前記締付け状態における前記ステータの位置の移動情報を求め、当該移動情報に基づいて前記ロータの軸心に対する前記ステータの目標調整位置を導出する点にある。
上記第6特徴構成によれば、上記開放状態におけるステータの位置と、上記締付け状態におけるステータの位置とから、ステータを開放状態から締付け状態としたときのステータの位置の移動方向及び移動距離に関する移動情報を求めることができる。そして、調整量導出工程において、このように移動情報を求めれば、ロータの軸心に対する適切な位置を基準に、上記移動情報における移動方向及び移動距離とは逆の方向及び距離分ずれた位置を、開放状態のステータの目標調整位置として導出することができる。よって、調整工程において、開放状態のステータの位置を、上記のように移動情報に基づいて導出した目標調整位置に調整することで、そのステータを締付け状態とすれば、ステータの位置を、ロータの軸心に対して適切な位置として固定することができる。
本発明に係るステータの固定方法の第7特徴構成は、前記ステータの内径面の位置を測定し、前記測定結果から前記ロータの軸心に対する前記ステータの位置を求める測定工程を実行しながら、
前記ステータを前記締付け手段により締付けると共に、前記測定工程で求めた前記ステータの位置に基づいて前記締付け手段による前記ステータに対する締付け量を調整する点にある。
上記第7特徴構成によれば、ステータを締付け手段により締付けていく際に、同時に実行する測定工程で求めたロータの軸心に対する記ステータの位置に基づいてステータの締付け量を調整することで、締付けによるステータの位置をロータの軸心に対して適切な状態とすることができる。また、この締付けによるステータの位置がロータの軸心に対して適切なものとなれば、後の調整工程を省略して、ステータの固定を完了することができる。
本発明に係るステータの固定方法の第8特徴構成は、上記第1乃至第7特徴構成の何れかに加えて、前記ステータが、複数の板状体を前記ロータの軸方向に積層してなる積層型である点にある。
上記第8特徴構成によれば、ステータが上記のような積層型であって、その板状体間の相対移動が発生し、ステータの軸心が直線性を保てなくなりやすい場合においても、ステータをロータの軸心に対して適切な位置に固定することができる。
本発明に係るステータの固定方法の第9特徴構成は、上記第1乃至第8特徴構成の何れかに加えて、前記締付け手段が、前記ステータを、前記ロータの軸周方向の複数箇所で締付けるものである点にある。
上記第9特徴構成によれば、締付け手段が、ステータをロータの軸方向の複数箇所で締付けるものとすることで、その締付け手段での締付けによるステータの内径面の変形を抑制することができる。
以下、本願に係るステータの固定方法の実施の形態として、測定調整装置1を使用してステータ位置が測定・調整された後にステータが固定されるモータ駆動装置M周りの構造、測定調整装置1の構造、当該装置1を使用してのステータSの固定作業を順に説明する。
モータ駆動装置周りの構造
図1は、ミッションケースMC(モータケースの一例)内に収納され、組付け状態にあるモータ駆動装置M周りの断面構造を示す図面であり、図2は、モータ駆動装置Mを構成するステータSの支持及びロータRの支持構造を明らかにすべく、分解して示した図面である。図1において、左側がエンジンEが配設されるエンジン室ER側の部位であり、右側が変速機構Tが配設される変速機構室TR側の部位である。先にも示したように、モータ駆動装置MのロータRは、エンジンE及び変速機構Tと駆動連結可能に構成されており、それぞれに対して駆動力の授受が可能となっている。
図1、2からも判明するように、モータ駆動装置MはステータSとロータRとを備えて構成されている。この組付け状態で、ロータRの回転軸はステータSの軸と一致しており、ロータRの軸心位置は、ミッションケースMCにより支持される一対の軸支ベアリングBRGにより決まる。以下、これら一対の軸支ベアリングBRGを基準に決まるロータRの回転軸の中心を軸心と呼び、当該回転軸に沿った方向を、単に軸方向(図1のD1で示す方向)と呼び、その直交方向を軸径方向(図1のD2で示す方向)と呼び、その周りの方向を軸周方向(図1のD3で示す方向)と呼ぶ。
ステータSは、ステータコアSCと、このステータコアSCに対するステータコイルSWから構成され、ステータコアSCは、図2に示す様に概略リング状の鋼板pを多数枚積層して構成される。積層方向は、軸方向D1と一致している。各鋼板pは、周方向の所定位相において、かしめ或いは溶接処理により鋼板p相互間の相対移動が規制される構成が採用されている。さらに、各鋼板pには、周方向均等に3箇所、径方向に突出する突出部p1が設けられており、各突出部p1にステータコアSCをミッションケースMCに締結固定するためのボルト挿通孔p2が設けられている。積層構造のステータコアSCは締付け手段としての締結ボルトb1でミッションケースMCに設けられる座面MC1に締結固定される。
各鋼板pの内径側には、内径側に櫛歯状に突出するティースtが設けられている。ステータコイルSWは、このティースt間の空隙部を介して巻かれる。ティースtの内径側端面t1は周方向に延びる端面とされている。
また、このステータコイルSWは、ワニスが含浸されて、絶縁状態で固定されている。更に、鋼板p間も、ワニスが含浸されて、水等の浸入を防止した状態で固定されている。また、このようにワニスが含浸されていることで、熱伝導率が向上され、放熱性が向上されている。
ステータSのミッションケースMC内の位置決めに関して説明すると、軸方向D1における位置決めは、ステータコアSCの、図1において右側に示す端面(主には突出部p1の端面)がミッションケースMCに設けられた座面MC1に当接することにより決まる。ミッションケースMC内に形成されたステータ収納空間は、軸径方向D2(図1において上下方向)において、所定の余裕を見込むものとされており、ステータSがミッションケースMCに、締結ボルトb1を使用して締結されない限りにおいて所定のがたを有するものとなる。従って、締結ボルトb1の締結後、ミッションケースMCに対する軸径方向D2におけるステータSの軸心位置が定まることとなる。
ミッションケースMCに対するステータSの軸周方向D3の位相は、先に説明した突出部p1に対するミッションケースMCに設けられる座面MC1の軸周方向D3の位相位置に基づいて決まるものであり、ミッションケースMCへのステータSの挿入操作及び締結ボルトb1による締結操作により決まる。
ロータRは、ロータ軸RAの周りにロータ本体RBを備えて構成されており、このロータ軸RAは、エンジン室ER側に設けられる軸支ベアリングBRG1及び変速機構室TR側に設けられる軸支ベアリングBRG2の両方から軸支される。
図1、2からも判明するように、モータ駆動装置室MRは、エンジン室ERと変速機構室TRとの間の独立の区画室として形成されている。図示する例の場合、モータ駆動装置室MRと変速機構室TRとの間には、ミッションケースMCと一体の仕切り壁Wが設けられており、この壁Wに前記ロータRを支持するための一方の軸支ベアリングBRG2が備えられている。
一方、モータ駆動装置室MRとエンジン室ERとの間には、ミッションケースMCに取り付け固定される仕切りカバーCを設けている。この仕切りカバーCは、図1において左側からミッションケースMCの端面開口MCOを覆うことで、モータ駆動装置室MRを区画する。図1、2からも判明するように、この仕切りカバーCは、端面開口MCOに複数設けられたノックピンnpによって、軸径方向D2及び軸周方向D3の位置が決まる。この仕切りカバーCには、前記ロータRを支持するための他方の軸支ベアリングBRG1が備えられている。
以上説明した構成から判明するように、モータ駆動装置MのロータRは、仕切り壁Wに設けられる軸支ベアリングBRG2及び仕切りカバーCに設けられる軸支ベアリングBRG1により回転可能に支持される。本願にあっては、前者のロータの軸支部RASをケース側軸支部RAS2(第二軸支部の一例)と呼び、後者のロータの軸支部RASをカバー側軸支部RAS1(第一軸支部の一例)と呼ぶ。
ステータ位置の測定調整装置
図4〜8に、この測定調整装置1の構成を示した。
図4は、測定調整装置1の構成を示すための要部断面図であり、ミッションケースMC内にステータSを挿入した状態で、ステータSの位置を測定及び調整可能に測定調整装置1を配設した状況を示している。
図5は図4に対応する平面図であり、図6は図4のA−A断面を、図7は測定調整装置1のみを示した図面である。さらに、図8は、その分解図である。
この測定調整装置1は、ミッションケースMC内にステータSを収容し、ステータSがロータRの軸方向D1に支持され、ステータS内にロータRが挿入されていないロータ未挿入状態にあるステータSの位置(ステータSの軸径方向D2の位置)の測定を行うように構成されている。更に、この測定調整装置1は、その測定結果に基づいて、ステータSの位置(ミッションケースMCに支持された状態にあるロータRの軸心Rsに対するステータSの軸心Ssの位置)を調整可能に構成されている。また、この測定調整装置1は、ケース側軸支部RAS2とカバー側軸支部RAS1との両方から、その軸(図4に示すZ)が決定されるように構成されている。
図4、図6、図7、図8から判明するように、測定調整装置1は、図4において上下一対となる端面プレート2を軸周方向D3において4箇所設けられているセンサーバー3で固定連結した構成を有している。これら上下一対の端面プレート2の間には、ステータ位置調整機構4が、各センサーバー3間に均等に4本掛け渡されている。ステータ位置調整機構4は、軸方向D1に配設されるカム軸5に偏心カム6を備えたものである。
前記上下の端面プレート2のうち、下側に位置する端面プレート2dは、概略、リング状を成すリング状端面プレート2dとして構成されており、その一方の端面の外周近傍部位に、4本のセンサーバー3が固定連結されている。このセンサーバー3の夫々は、リング状端面プレート2dに一対のピン7を使用して厳密に位置決めされている。前記センサーバー3が固定連結される端面とは反対側の端面で、その中央に、ガイド軸8が固定されている。
このガイド軸8は、図4に示す様に、リング状端面プレート2dとの連結部8aを上端側に備えるとともに、その外周部位に、先に説明したケース側軸支部RAS2を構成する軸支ベアリングBRG2に嵌込する嵌込部8bを備えている。一方、下端側の中央に第1センター軸9aが挿入される第1センター軸進入孔8cを備えている。この第1センター軸9aは、ミッションケースMCへのステータSの固定作業時に使用する作業装置10に設けられる案内部材であり、図4に示す軸Zに対して直交面上で決まる原点で、軸方向D1である軸Zに沿った方向に移動可能に備えられている。固定作業において、第1センター軸9aおよび後述する第2センター軸9bが、作業において仮想的な基準となるロータRの回転軸Zrの位置に配設される。
リング状端面プレート2dには、軸周方向D3において4箇所均等に、カム軸5を回転可能に支持する支持ベアリング11を備えた接続支持部が備えられている。この支持ベアリング11として、カム軸5からの軸方向D1の荷重受けるべくスラストを受けることができるベアリングが採用されている。
前記上下の端面プレート2のうち、上側に位置する端面プレート2uは、図5に示す平面視で、概略、方形を成す方形プレート12と概略リング状を成す連結プレート13とから構成されている。方形プレート12と連結プレート13とはボルト連結されることで、一体となる構成が採用されている。
連結プレート13の外周近傍部位に、先に説明した4本のセンサーバー3の他端が固定連結されている。この連結部位においても、センサーバー3の夫々は、一対のピン7を使用して厳密に位置決めされている。前記センサーバー3が固定連結される端面とは反対側の端面に、前記方形プレート12が位置される。図4に示す様に、方形プレート12には搬送用ハンドル14が固定される。
搬送用ハンドル14は、センサーバー3とは反対側の端面で、方形プレート12にボルト連結されており、その内径部位に第2センター軸9bが挿入されるセンター軸貫通孔14aを備えている。この第2センター軸9bは、測定調整装置1の搬送用に使用されるとともに、第1センター軸9aとともに、固定作業の基準位置決め用に使用される。
連結プレート13には、軸周方向D3において4箇所均等に、カム軸5を回転可能に支持する接続支持部15が備えられている。この接続支持部15は、前記カム軸5を軸方向D1において良好に心出しするように一対のラジアルベアリング16を備えた構成とされ、さらに、カム軸5の回転を適宜止めるためのスタッドボルト17も備えられている。
方形プレート12の長手方向端近傍には、ミッションケースMCの端部開口MCOに設けられたノックピンnpを利用して、この方形プレート12を位置決めするためのピン係合部材18が、それぞれ連結されている。ピン係合部材18は、図5からも判明するように、一対のボルト19にて方形プレート12の長手方向端夫々に固定されており、各ピン係合部材18に、ノックピンnpが進入するための位置決め孔18aを備えている。そして、図4に示されるように、ピン係合部材18は、位置決め孔18aにノックピンnpが進入した状態で、ミッションケースMCの端部開口MCOを構成する端面に載置される。
測定調整装置1においては、前記ガイド軸8をケース側軸支部RAS2に備えられる軸支ベアリングBRG2内に進入させるとともに、方形プレート12の長手方向端に設けられたピン係合部材18の位置決め孔18aにノックピンnpを進入させることで、装置1を、ミッションケースMCに対して、軸方向D1、軸径方向D2及び軸周方向D3において位置決めすることができる。
即ち、装置1は、上記ケース側軸支部RAS2により軸径方向D2において位置決めされ、上記ノックピンnp及び位置決め孔18aにより軸方向D1及び軸周方向D3において位置決めされる。
また、軸周方向D3において、上記ノックピンnp及び位置決め孔18aの締結ボルトb1に対する相対位置により、上記ノックピンnp及び位置決め孔18によりミッションケースMCに位置決めされる測定調整装置1と、上記締結ボルトb1によりミッションケースMCに締結固定されたステータSとの相対位置が決定される。そして、この軸周方向D3における相対位置は、図6に示すように、装置1に支持された変位センサ20のセンサ先端20aと、ステータSに設けられているティースtの内径側端面t1とが、夫々の中心を略一致させる状態で対向配置されるように、設定されている。よって、この変位センサ20により、センサ先端20aと内径側端面t1とのギャップを正確に測定することができる。
尚、装置1をミッションケースMCに位置決めするための位置決め手段としては、上記ノックピンnp及び位置決め孔18aの代わりに、ボルト及びボルト穴等の別の手段を採用しても構わない。
ステータ位置の測定及び調整
以上、ステータ位置の測定調整装置1に関して、その位置決め構成を説明したが、以下、ステータSの位置の測定及びその位置の調整に関して説明する。
図4、図6、図7、図8に示す様に、変位センサ20が、支持体としてのセンサーバー3により、ステータSを構成するステータコアSCの内径面のロータRの軸心に対する位置を測定可能に支持されており、具体的には、軸周方向D3の4箇所に均等に備えられるセンサーバー3に、夫々、5個の変位センサ20が備えられている。
変位センサ20としては、電磁誘導による導電体内の渦電流の変化により当該導電体に対する渦電流型の変位センサを採用している。これら5個の変位センサ20は、図4に示されるステータコアSCの軸方向D1の幅に対して、その両端近傍を含む5箇所においてほぼ均等に、センサ先端20aとティースtの先端面である内径側端面t1とのギャップを測定するように適宜配設されている。これにより、ロータRの軸心に対するステータSの軸径方向D1の位置を知ることができる。この変位センサは測定手段をなす。
従って、各センサーバー3に配設される5個の変位センサ20により、ステータSの軸方向D1に沿った各部の位置の状態を知ることができる。
また、この変位センサ20は、上記渦電流型の変位センサのように、磁性体又は導電体に選択的に感応する非接触型の変位センサであることから、変位センサ20とステータコアSCとの間に介在する磁性体及び導電体以外からなる物質、特にステータコアSCの径方向表面に付着するワニスの影響を排除して、ステータコアSCの内径側端面t1の位置を正確に測定できる。
一方、先にも示したように、センサーバー3は軸周方向D3に4箇所均等に設けられているため、ステータSの軸周方向D3に沿った各部の位置も知ることができ、軸周方向D3において4箇所の変位センサ20の出力から、ステータSの円心位置を知ることができる。そして、軸方向D1の各位置におけるステータSの円心位置の平均値として、ステータSの軸心(図3(b)に示す平均軸心Ss)の位置を得ることができる。
即ち、本願に係る測定調整装置1では、センサーバー3により接続される一対の端面プレート2、及びこれら端面プレート2に付属の部材及び変位センサ20により測定手段が構成される。また、ロータの軸支部RASに対して、これを基準として変位センサ20を位置決めして支持する機構、具体的には、一対の端面プレート2、センサーバー3、ガイド軸8、及びピン係合部材18等により支持体が構成される。
結果、測定調整装置1にあっては、測定調整装置1の軸Zを、仮想的なロータRの軸Zr位置と一致させることができるため、上記のように、変位センサ20からの出力を得て、ロータRの軸心に対するステータSの位置(ステータコアSCの位置)を厳密に求めることができる。
図4、図6、図7、図8に示す様に、軸周方向D3の4箇所に均等に備えられるカム軸5には、夫々、偏心カム6が備えられている。ここで、偏心カム6は、図6に示す様に、カム軸5の軸心5zに対して偏心したカム面6sを備えたものである。従って、カム軸5の回転に伴って、そのカム面6sは、カム軸の軸心5zに近接した位置から離間した位置まで取ることができる。図4、図6からも判明するように、このカム面6sは、その離間した位置近傍で、ステータコアSCの内周面に当接するように配設されることで、ステータコアSCの内周面(ティースtの内径側端面t1)を押圧し、ステータSを軸径方向D2に移動させることが可能とされている。
以上が、軸径方向D2に関する調整に関する説明であるが、測定調整装置1にあっては、カム6の配設位置にも独特の工夫が成されている。
図4、図7に示す様に、カム6の配設位置は、軸方向D1において、ステータコアSCの下端部に対応する位置とされている。この位置は、ステータコアSCがミッションケースMCに挿入された状態で、その座面MC1に当接する位置である。本例では、具体的には、カム6の下端面(底面)が、ステータコアSC(ステータS)の下端面を支持するミッションケースMCの座面MC1と略同一面上に位置するように、カム6を配置している。
後述するように、測定調整装置1を使用したステータ位置の調整は、ミッションケースMCの開口MCOが上側に開口した縦姿勢で行う。この状況では、ステータSの荷重は、座面MC1近傍にあるステータコアを構成する鋼板pにかかっており、この部位にある鋼板pの位置を調整することが最も好ましい。発明者らの検討では、調整において、縦姿勢が維持された状態で、ステータコアSCの鉛直方向(軸方向D1)上側部位をカム6で押動させた場合、ステータS自体が全体的に軸方向D1に対して傾くだけで、座面MC1に当接している鋼板pは移動し難く、偏心カム6による調整後、元の状態に戻り調整不良となる場合も発生した。
従って、測定調整装置1にあっては、上述のようにステータコアSCの下端近傍にカム位置を設定することで、軸周方向D3に均等配置された偏心カム6を利用して、軸周方向D3の各部において軸径方向D2のステータSの位置を適切に調整することができる。
本願に係る測定調整装置1では、センサーバー3により接続される一対の端面プレート2、及びこれら端面プレート2に付属の部材及びステ-タ位置調整機構4により調整手段が構成される。さらに、ステ-タ位置調整機構4は調整手段である調整具を成し、カム軸5はその回転軸を成す。
ステータ位置の調整
以下、測定調整装置1を使用して、ステータSの位置を測定するとともに、測定結果に基づいて調整を行い、ステータSをミッションケースMCに固定する一連の作業に関して説明する。
この一連の操作は、作業装置10上にミッションケースMCを縦姿勢で配置する縦配置工程、ミッションケースMC内にステータSを挿入する挿入工程、ミッションケースMC内にステータSを仮止めする仮止め工程、ステータS内に測定調整装置1を配設する配設工程、ステータ位置を測定する測定工程、測定結果に基づいてステータSの調整量を導出する調整量導出工程、仮止めを解除する解除工程、締結力が無い状態でステータ位置を調整する調整工程、及びステータSをミッションケースMCに締付け固定する固定工程を経る。
以下、順に説明する。
1 縦配置工程
作業装置10上に、ミッションケースMCを縦姿勢で配設する工程である。即ち、図9に示されているように、ミッションケースMCの端部開口MCOが上側に、ミッションケースMCに設けられるケース側軸支部RAS2が下側に来るように、ミッションケースMCを配設する。作業装置10に設けられる第1、第2センター軸9a,9bの軸Zと、ミッションケースMCにおいて決まっている仮想的なロータRの軸Zrは、当然一致させる。ここでは、この作業装置10が姿勢保持具を構成する。
このとき、ミッションケースMCには、ケース側軸支部RAS2を構成する軸支ベアリングBRG2が勝ち込まれており、さらに端面開口MCOの所定部位にノックピンnpが打ち込まれた状態とされる。これら2種の部材BRG2,npを利用して測定調整装置1引いてはステータSの位置が決められる。
2 挿入工程
図9に示す様に、ステータSを、縦姿勢にあるミッションケースMC内に挿入する。この挿入操作は、ステータSをミッションケースMC内に落とし込む状態で行われることとなり、ステータSは、ミッションケースMCに設けられている座面MC1から支持される。挿入完了状態で、ステータSは、その上下方向位置(軸方向D1位置)は確定し、ミッションケースMCとステータSとの間における相対位相(軸周方向D3位置)関係もほぼ定まる。一方、これまでも説明したように、水平方向(軸径方向D2位置)に関しては、僅かのがたが許される状態となる。尚、この挿入工程で挿入したときのステータSの状態を図3(a)に示す。
3 仮止め工程
図9に示す様に、締結ボルトb1を使用して、ステータSをミッションケースMCに締付ける締め付け状態として仮止めする。この時の締結力は、ステータSをミッションケースMCに固定する場合の締結力とほぼ同一の締結力とする。このような締結操作を行うことで、ステータコアSCは、個々のくせに従って、図3(b)に示したように、変形する場合もある。
4 配設工程
図10に示す様に、測定調整装置1を、ステータSが締付け状態にあるミッションケースMC内に配設する。この配設は、第2センター軸9bを使用して、測定調整装置1を搬送部14aで吊り下げながら、第1センター軸9aをガイド軸8に挿入した状態で行う。
この下降操作時、下側に位置されるガイド軸8の嵌込部8bは、ケース側軸支部RAS2を構成する軸支ベアリングBRG2により案内され、心出しされる。一方、上側に位置される方形プレート12の両端部位に設けられたピン係合部材18が、ノックピンnpにより位置決めされる。
この構造では、当該軸支ベアリングBRG2が心出しの用を果たすとともに、ノックピンnpも心出しの用を果たす。さらに、装置1全体が端面開口MCOにより下側から支持される。
5 測定工程
図11に示す様に、測定調整装置1をミッションケースMC内に配設した状態で、変位センサ20を使用して、ステータコアSCに設けられているティースtの内径側端面t1の位置を各変位センサ20の出力として測定する。
変位センサ20の出力に基づいてステータSの位置を求めるように構成されたコンピュータ(図示せず)により、変位センサ20の出力を、上下方向で異なった位置にある変位センサ20毎に集め、異なった上下方向位置(軸方向D1位置)でのステータSの円心位置を、締付け状態におけるステータSの内径面の変形状態として求める。結果、図3(b)に示すように、座面MC1側から、ステータSの代表位置、上端近傍部位に渡って、それら各高さにおける円心位置が、個々に、軸方向D1とは直交する平面上の座標として求まる。ここでは、この演算処理を行うコンピュータがステータ位置導出手段を構成する。尚、上記ステータSの代表位置とは、軸方向D1の各位置におけるステータSの円心位置の平均値として求められたステータSの軸心の位置を示す。
尚、この測定工程において、ロータRとステータSの軸心位置が一致している場合には、後述する調整工程を行わずに、測定調整装置1をミッションケースMCから取り外し、ロータRを組み付けて、モータ駆動装置Mを完成させることができる。
6 解除工程
図12に示す様に、締付け状態にあるステータSの締結ボルトb1による締付け状態を解除し、締結力が働かない開放状態とする。
7 調整量導出工程
ステータSの位置の調整は、図3(d)に示すように、ステータSの締付け状態において、ステータSの各高さにおける円心位置の平均値である平均軸心Ssが、仮想的に設定されるロータRの軸心Rsに対して所定の範囲内に収まる様に行う。そこで、上記コンピュータにより求まった各上下方向位置における円心位置の平均値を演算し、ステータSの平均軸心Ssを求める。そして、平均軸心Ssを目標範囲内に収めるのに適正な座面に当接する最下部の円心位置(図3(d)に示すSb)を目標調整位置として求める。ステータSの最下部の円心位置SbがミッションケースMCの座面MC1に当接する位置は、ステータSが締付け状態か開放状態かにより変化しないので、上記のような最下部の円心位置Sbを、ステータSの非締結状態における目標調整位置とする。この最下部の円心位置SbとロータRの軸心Rsとの関係を図3(c)に示した。尚、この目標調整位置は、ロータRの軸方向に沿ったステータSの代表位置においてステータSの内径面の平均軸心SsとロータRの軸心Rsとが一致するときのステータの位置として求められることになる。
尚、上記ステータSの目標調整位置とされる最下部の円心位置Sbは、ロータRの軸心Rsに対する締付け状態のステータSの軸心Ssの偏心情報に基づいて導出することができる。
即ち、上述した測定工程において、ロータRの軸心Rsに対して、図3(b)に示すように締付け状態とされたステータSの軸心Ssの偏心方向及び偏心距離aを上記偏心情報として求める。そして、上述した解除工程で開放状態とされ調整前のステータSの軸心Ssoを基準に、上記偏心情報として求めた偏心方向とは逆方向に、上記偏心状態として求めた偏心距離a分ずれた位置を、上記ステータSの目標調整位置とされる最下部の円心位置Sbとして導出する。よって、このように導出した円心位置Sbを最下部の位置としたステータSについては、締付け状態とすれば、その軸心Ssが、ロータRの軸心Rsと一致するものとなる。
また、上記ステータSの目標調整位置とされる最下部の円心位置Sbは、上記のような偏心情報以外に、上記開放状態におけるステータSの軸心Ssoに対する締付け状態におけるステータSの軸心Ssの移動情報に基づいて導出することもできる。
即ち、上述した測定工程において、図3(b)に示すように締付け状態におけるステータSの軸心Ssを測定した後に、上述した解除工程で開放状態とされて調整前のステータSの軸心Ssoを測定する。その開放状態におけるステータSの軸心Ssoに対して、図3(b)に示すように締付け状態におけるステータSの軸心Ssの移動方向及び移動距離bを移動情報として求める。そして、ロータRの軸心Rsを基準に、上記移動情報として求めた移動方向とは逆方向に、上記移動状態として求めた移動距離b分ずれた位置を、上記ステータSの目標調整位置とされる最下部の円心位置Sbとして導出する。よって、このように導出した円心位置Sbを最下部の位置としたステータSについては、締付け状態とすれば、その軸心Ssが、ロータRの軸心Rsと一致するものとなる。尚、上記開放状態におけるステータSの軸心Ssの測定を、上記締付け状態におけるステータSの軸心Ssの測定よりも後に行うので、締付け状態におけるステータSの軸心Ssが既にロータRの軸心Rsと一致している場合には、その開放状態におけるステータSの軸心Rsの測定を省略し、作業時間を短縮することができる。
8 調整工程
図12に示す様に、以上のようにして求まった適正な最下部の円心位置Sbに、ステータSの下部の位置を調整すべく、適正にカム軸5を回転操作することにより、ステータSを移動調整する。このステータSの移動調整は、カム軸5を回転操作して偏心カム6のカム面6sによりステータコアSCの内周面における軸周方向D3の一部を径方向外側へ押圧することで行う。この際、偏心カム6はステータコアSCの下端部に対応する位置に配置されているので、ステータSの最下部の円心位置が好適に移動され、調整される。
このようにすることで、ステータSは、締結ボルトb1の締付け状態において、その代表位置の平均軸心Ssが許容範囲内に来る位置とされる。
9 固定工程
上記の調整工程を経た後、図13に示す様に、締結ボルトb1を使用して再度ステータSをミッションケースMCに締結固定する。以上の測定工程、調整工程を経ることで、締結状態で変形を伴うことがある積層型のステータコアSCを使用するモータ駆動装置Mにあっても、非常に高い精度で心出しを行うことができる。最終的に、代表位置mにおいて、ロータRとステータSの軸心が一致している状態を図3(d)に示した。
10 軸支工程
そして、このようにロータRの軸心RsとステータSの軸心Ssとが一致すれば、測定調整装置1をミッションケースMCから取り外し、ロータRを組み付けて、モータ駆動装置Mが完成する。
また、上記測定工程を行ってロータRの軸心RsとステータSの軸心Ssとが一致していることが確認できれば、測定調整装置1をミッションケースMCから取り外し、ロータRを組み付けて、モータ駆動装置Mを完成させることができる。
(別実施形態)
(1)上記の実施の形態では、ケース側軸支部に備えられる軸支ベアリングと、端部開口に備えられるノックピンの両方を用いて、測定調整装置の心出しを行ったが、上記実施の形態のように縦姿勢で、測定調整装置を鉛直方向に支持して作業を行い、測定調整装置の軸心をロータの軸心に合わせようとする場合、軸径方向の位置は、実質的に、上下方向のいずれか一方で決めることが可能となるため、ケース側軸支部に備えられる軸支ベアリングと、端部開口に備えられるノックピンのいずれか一方を基準として使用するものとしてもよい。
(2)さらに、ケース側軸支部とカバー側軸支部とを設ける構成にあっても、上記実施の形態に示す様に、モータ駆動装置室と変速機構室との間にケース側軸支部を、エンジン室とモータ駆動装置室との間にカバー側軸支部を設ける他、モータ駆動装置室と変速機構室との間にカバー側軸支部を設け、エンジン室とモータ駆動装置室との間にケース側軸支部を設ける構成としてもよい。
これまで説明してきた例では、一方の軸支部がケース側に、他方の軸支部がカバー側に設けられることとしたが、モータ駆動装置室を区画する一対の仕切りカバーを設け、両方の仕切りカバーがそれぞれ軸支ベアリングを保持するものとして一対の軸支部を設ける構成としてもよい。そこで、本願にあっては、特定の仕切りカバーに保持された軸支ベアリングを有して構成される軸支部を第一軸支部と呼び、この第一軸支部に対してロータ本体を挟んで反対側に位置される軸支部を第二軸支部と呼ぶ。
(3)上記の実施の形態においては、軸周方向D3に配置された4箇所のステータ内径面部位を測定及び調整の対象としたが、この測定及び調整箇所の数は、これに限定されず、軸周方向に少なくとも3箇所を測定及び調整箇所とすれば、測定及び調整が可能となる。但し、測定及び調整箇所の数が多いほど正確なステータSの軸心位置の測定及び調整が可能となる。また、4箇所とすれば、直交座標上における軸心位置の座標を直接的に測定し調整することが可能となる利点がある。
また、上記実施の形態にあっては、測定箇所の数と調整箇所の数とを同一としたが、異なった数としてもいっこうに構わない。
さらに、軸周方向D3における位相に関して、測定の対象とするステータ内径面部位の位相と、調整の対象とするステータ内径面部位の位相とが一致していても構わない。この場合は、ステータコアの調整を良好に行うための理由から、現在の偏心カムの軸方向の位置(座面に当接する鋼板を軸径方向に調整することができる位置)を守ったままで、その上方向部位に変位センサを取り付けて、測定を行うことが、測定・調整上、好ましい。この構成を採用する場合は、調整量の導出が容易となる。
また、上記の実施の形態においては、ステータSの内径面の軸方向D1に均等な間隔で配置された5箇所を変位センサ0による測定箇所としたが、この測定箇所の数はこれに限定されず、軸方向D1における、ステータSの両端側に位置する少なくとも2箇所を測定箇所とすれば、軸方向D1に沿ったステータSの概略の配置状態を測定することができる。但し、測定箇所の数が多いほど詳細なステータSの配置状態の測定が可能となる。
(4)上記実施の形態では、磁性体又は導電体に選択的に感応する非接触型の変位センサとして、渦電流型の変位センサを採用したが、かかる変位センサとしては、磁気誘導による磁性体近傍の磁場の変化により当該磁性体に対する距離を検出する磁気型の変位センサ等の別の型式の変位センサを採用しても構わない。
さらに、ステ-タコアの内周面の位置を検出できれば、任意のセンサを採用することができる。
(5)上記の実施の形態にあっては、偏心カムを使用して、ステータ内径面の位置を調整したが、ロータの軸心に中心を有し、拡径・縮径操作可能な調整部位を備えた調整機構を構成してもよい。
(6)上記実施の形態では、ステータコアの内径面の位置、即ちティースの先端面である内径側端面の位置を測定するように変位センサを配置したが、別に、ステータコアの外径面等の別の径方向表面の位置を測定するように変位センサを配置して、その変位センサの出力に基づいてステータコアの位置を求めるように構成しても構わない。
(7)上記実施の形態では、ミッションケースMC内にステータSを仮止めする仮止め工程の後に、ステータS内に測定調整装置1を配設する配設工程を行ったが、適宜その順序を逆にしても構わない。
(8)上記の実施の形態においては、カム6の配設位置を、ステータコアSCの下端部に対応する位置、すなわちステータコアSCの座面MC1に当接する位置の近傍の位置としたが、カム6の配設位置はこれに限定されない。すなわち、カム6の配設位置は、ステータSの位置を適切に調整することが可能な位置であればよく、ステータSの鉛直方向における中間より下側の部位を移動させるようにカム6を配設することも好適な実施形態の一つである。
(9)上記実施の形態では、測定工程を実行して、締結ボルトにより締付けた締付け状態のステータの内径面としてのティースtの内径側端面の位置を測定し、調整量導出工程において、締付け状態におけるティースの内径側端面の変形状態に基づいて開放状態におけるステータの目標調整位置を導出するように構成したが、別に、締付け状態におけるステータSの内径面の変形状態が予め認識可能である場合には、上記測定工程を省略しても構わない。
(10)上記実施の形態では、開放状態のステータの位置を調整する調整工程を実行した後に、ステータを締付け固定するように構成したが、ステータの内径面の位置を測定する測定工程を実行しながら、ステータを締結ボルトにより締付けると共に、その測定工程で求めたステータの内径面の変形状態に基づいてその締結ボルトによるステータに対する締付け量を調整して、ステータの内径面の変形状態をロータの軸心に対して適切な状態とすることもできる。
本発明に係るステータの固定方法は、例えばハイブリッド車に備えられるモータ駆動装置において、バッテリステータの位置決め調整を正確且つ迅速に行って、ステータをロータの軸心に対して適切な位置に固定する固定方法として有効に利用可能である。
モータ駆動装置室の断面構造を示す図 モータ駆動装置を構成する各パーツの組付け構成を示す図 締結に伴うステータコアの変形状態を示す説明図 使用状態にある測定調整装置の縦断面図 使用状態にある測定調整装置の平面図 図4におけるA−A断面の断面図 測定調整装置の斜視図 測定調整装置の分解図 ミッションケースにステータを固定する工程の説明図 ミッションケースにステータを固定する工程の説明図 ミッションケースにステータを固定する工程の説明図 ミッションケースにステータを固定する工程の説明図 ミッションケースにステータを固定する工程の説明図
符号の説明
1 測定調整装置
2 端面プレート
3 センサーバー(支持体)
4 ステータ位置調整機構
5 カム軸
6 偏心カム
7 ピン
8 ガイド軸
9 センター軸
10 作業装置
12 方形プレート
13 連結プレート
14 搬送用ハンドル
18 ピン係合部材
20 変位センサ
BRG 軸支ベアリング
E エンジン
M モータ駆動装置
MC ミッションケース(モータケース)
np ノックピン
p 鋼板
R ロータ
RAS 軸支部
S ステータ
SC ステータコア
SW ステータコイル
T 変速機構
t ティース

Claims (9)

  1. モータケース、前記モータケースから軸支されて内部で回転するロータ、前記ロータと同心に前記ロータの外周に配設されるステータを備え、前記ステータを前記モータケースに締付ける締付け手段を備えたモータ駆動装置におけるステータの固定方法であって、
    前記締付け手段により締付けた締付け状態における前記ロータの軸心に対する前記ステータの位置に基づいて、前記締付け手段により締付けていない開放状態における前記ステータの目標調整位置を導出する調整量導出工程と、
    前記ステータを前記開放状態として、前記ステータの位置を前記調整量導出工程で導出した目標調整位置に調整する調整工程とを順に実行し、
    前記調整工程実行後に、再度、前記ステータを前記締付け手段により締付けて固定するステータの固定方法。
  2. 前記調整量導出工程の実行前に、前記ステータを前記締付け状態として、前記ステータの内径面の位置を測定し、前記測定結果から前記調整量導出工程で用いる前記ロータの軸心に対する前記ステータの位置を求める測定工程を実行する請求項1に記載のステータの固定方法。
  3. 前記調整量導出工程において、前記ロータの軸方向における前記ステータの代表位置において前記ステータの内径面の軸心と前記ロータの軸心とが一致するときの前記ステータの位置を、前記目標調整位置として導出する請求項1又は2に記載のステータの固定方法。
  4. 前記ロータの軸方向における複数箇所での前記ステータの位置の平均値を、前記目標調整位置を導出するための前記ステータの軸心の位置として演算する請求項1又は2に記載のステータの固定方法。
  5. 前記目標調整位置が、前記ステータの座面側において設定されている請求項1〜4の何れか一項に記載のステータの固定方法。
  6. 前記調整量導出工程において、前記締付け手段による締付けを解除した開放状態における前記ステータの位置に対して、前記締付け状態における前記ステータの位置の移動情報を求め、当該移動情報に基づいて前記ロータの軸心に対する前記ステータの目標調整位置を導出する請求項1〜5の何れか一項に記載のステータの固定方法。
  7. モータケース、前記モータケースから軸支されて内部で回転するロータ、前記ロータと同心に前記ロータの外周に配設されるステータを備え、前記ステータを前記モータケースに締付ける締付け手段を備えたモータ駆動装置におけるステータの固定方法であって、
    前記ステータの内径面の位置を測定し、前記測定結果から前記ロータの軸心に対する前記ステータの位置を求める測定工程を実行しながら、
    前記ステータを前記締付け手段により締付けると共に、前記測定工程で求めた前記ステータの位置に基づいて前記締付け手段による前記ステータに対する締付け量を調整するステータの固定方法。
  8. 前記ステータが、複数の板状体を前記ロータの軸方向に積層してなる積層型である請求項1〜7の何れか一項に記載のステータの固定方法。
  9. 前記締付け手段が、前記ステータを、前記ロータの軸周方向の複数箇所で締付けるものである請求項1〜8の何れか一項に記載のステータの固定方法。
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