JP4674938B2 - ジブクレーン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジブクレーンに関し、特に吊荷を吊上げる地切り時や吊荷の設置時に、吊荷が移動しないようにしたジブクレーンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3はジブクレーンの一例を示す側面図であり、1は走行式や定置式(図示の場合は走行式)の支持架台、2は支持架台1の上部に旋回台3を介して旋回自在に載置された旋回フレームであり、上記支持架台1と旋回フレーム2とによりクレーン本体4が構成されている。
【0003】
クレーン本体4における旋回フレーム2の前部には、ジブ5が支持ピン6を中心に起伏自在に取付けられている。また、旋回フレーム2上に設置した起伏ウインチ7により巻取り繰出しされる起伏ロープ8は、旋回フレーム2上に設けられたAフレーム9の頂部のシーブ10a、ジブ5先端のシーブ10b、及び再びシーブ10aを介して旋回フレーム2に固定されており、起伏ウインチ7によって起伏ロープ8を巻取り繰出しすることにより、ジブ5を起伏できるようにしている。
【0004】
また、旋回フレーム2上に設置した巻上ウインチ11により巻取り繰出しされる吊上ロープ12は、Aフレーム9の頂部のシーブ13に掛けられ、更に該シーブ13とジブ5の頂部のシーブ14(吊点)との間、及び該シーブ14とフックブロック15のシーブ16との間に掛け回し、吊上ロープ12の終端は、起伏ウインチ7に連動する図示しない引込みドラムに、巻取り方向が逆になるように巻付けている。巻上ウインチ11を駆動すると、フックブロック15に吊った吊荷17の吊上げ吊下げが行えるようになっている。
【0005】
また、前記起伏ウインチ7により起伏ロープ8を巻取ってジブ5が起立する時には引込みドラムにより吊上ロープ12を繰出し、ジブ5が起立状態から水平に近い状態に寝る時には引込みドラムにより吊上ロープ12を巻取ることにより、吊荷17の高さを変えないで水平引込が行えるようにしている。更に、吊点14とフックブロック15のシーブ16との間に吊上ロープ12を懸け回す回数に対して、吊点14とAフレーム9上端のシーブ13との間に懸け回す回数を例えば2倍とすることにより、吊上ロープ12による負荷がジブ5の起伏の抵抗にならないようにして、ジブ5の起伏を容易にし、吊荷17の水平引き込みがスムーズに行えるようにしている。
【0006】
図3は、ジブクレーンのジブ5が最も起立した状態を示しており、この状態のときには最大荷重(或いは定格荷重)の吊荷17を吊上げることができる。また、図3の状態からジブ5が水平に近い状態に寝てくると、モーメント荷重の増加の関係から、吊上げることができる吊荷17の大きさは減少する。
【0007】
図4は前記旋回フレーム2上に設けられている従来のAフレーム9の一例を示したものであり、従来のAフレーム9は、一般に、剛性強度を有する前部フレーム18と、テンションバーとして作用する断面積が小さい後部フレーム19とから構成されている。図3においても、前部フレーム18は剛性強度を有する構造物となっており、後部フレーム19は断面積の小さいテンションバーとなっている。
【0008】
図3のジブクレーンにおいて、ジブ5が水平に近い状態の時には、Aフレーム9の前部フレーム18には圧縮荷重が作用し、後部フレーム19には引張り荷重が作用する。また、ジブ5が起立した状態になって最大荷重(或いは定格荷重)の吊荷17を吊上げるようになると、前部フレーム18と後部フレーム19の両方が大きな引張り荷重Pを受けるようになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来のジブクレーンは、一般に次のような問題を有していた。図3の実線は、吊荷17を吊っていないときのジブクレーンの状態を示しており、この状態から最大過重の吊荷17を吊上げると、クレーン本体4及びジブ5が、大きな荷重の負荷により仮想線で示すように前傾状態に撓むようになる。即ち、ジブ5の先端が下方に曲り、クレーン本体4の支持架台1が前側に撓み、旋回台3が前方に撓む。更に、最大荷重の吊上げ時には、図4に示すように、Aフレーム9の前部フレーム18と後部フレーム19の両方に非常に大きな引張り荷重Pが作用するが、従来のAフレーム9における後部フレーム19はテンションバーとして用いられるものであって断面積が小さく形成されているために、この後部フレーム19が引張り荷重Pによって延び、このためにAフレーム9全体が仮想線で示すように前側に傾くように変形する。
【0010】
上記したクレーン本体4及びジブ5の撓みは、ジブ5を起立状態にして最大荷重の吊荷17を吊上げた時が最も大きく、ジブ5の角度が水平に近付いた場合には、吊上げることができる吊荷17の荷重が小さくなること、およびジブ5の水平面よりの起伏角θの関係からジブ5の先端の前方移動距離は減少する。
【0011】
上記したように、ジブクレーンでは、最大荷重の吊荷17を吊上げた時に、クレーン本体4及びジブ5が前傾状態に撓むことにより、図3に示すように、ジブ5先端の吊点14の位置が前方移動距離+Xだけ前方へ移動するようになり、このために吊荷17の位置が予想される位置から前方移動距離+Xだけ前方へ移動してしまうことになる。
【0012】
このため、図3のジブクレーンにおいて、フックブロック15を吊荷17の重心位置に合わせて、地上に設置した最大荷重の吊荷17を吊上げる地切り時には、前記したようにクレーン本体4が仮想線の状態に前傾し、吊荷17が前方移動距離+Xだけ前方に振り出されることになり、このために吊上げた吊荷17が前後に振れるという問題が生じる。
【0013】
また、図3のジブクレーンによって仮想線のように最大荷重の吊荷17を吊上げた状態から、所定位置に据付けるために吊荷17を所定の位置に合わせて吊下げると、吊荷17が設置位置に接した瞬間に吊荷17の荷重が軽減されることにより、前傾していたクレーン本体4が実線で示すように起き上がることになり、このために吊荷17が前方移動距離+Xの分だけ後方に引きずり込まれるようになる。
【0014】
このように、吊荷17の地切り時及び吊荷17の設置時に吊荷17が移動するために、吊荷17が近傍の構造物などに衝突するといった問題を生じる可能性がある。また、鋼製ブロック等の吊荷17を吊上げて移動し、溶接対象物に位置決めして設置するような場合にも、鋼製ブロックが溶接対象物に設置される瞬間に移動してしまうために、正確な位置決めが難しく、位置決め作業に長時間を要するといった問題が生じていた。
【0015】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、吊荷を吊上げる地切り時や吊荷の設置時に、吊荷が移動することがないようにしたジブクレーンを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、クレーン本体の旋回フレームにジブが支持ピンにより起伏自在に取付られ、クレーン本体の旋回フレーム上に備えたAフレームの上端から前記ジブの先端に掛けられた吊上ロープにより吊荷の吊上げ吊下げを行うようにしているジブクレーンであって、前記Aフレームが、上端に吊上ロープ用のシーブを備え下端が旋回フレームに枢着された後部フレームと、該後部フレームのシーブの下部に上端が枢着され下端が旋回フレームに枢着された前部フレームとから構成されており、前記ジブが、Aフレームの頂部のシープとジブの長手方向中間部に備えたシーブとの間に掛け回した起伏ロープによって起伏するよう支持されており、最大荷重の吊上げ時にAフレームの前部フレームに作用する引張り力がPf、後部フレームに作用する引張り力がPb、前部フレームの断面積がAf、後部フレームの断面積がAb、であるとき、
【数1】
(Pf/Af)>(Pb/Ab)
を満足するように、前部フレームの断面積Afと後部フレームの断面積Abとを設定し、最大荷重の吊上げ時に前部フレームが延びてAフレームの上端が後方へ移動するようにしたことを特徴とするジブクレーン、に係るものである。
【0017】
上記手段において、最大荷重の吊上げ時にクレーン本体が前傾することによりジブ先端が水平方向前方へ移動する前方移動距離と、最大荷重の吊上げ時に前部フレームが延びてAフレームの上端が後方へ移動しジブ先端が水平方向後方へ移動する後方移動距離と、が略同一になるようにすることは好ましい。
【0018】
上記手段は、以下のように作用する。
【0019】
最大荷重の吊上げ時に、クレーン本体が前傾することによるジブ先端の前方移動距離と、Aフレームが後方に変形することによるジブ先端の後方移動距離とが相殺されるようにしたことにより、ジブクレーンにより吊荷を吊上げる地切り時や、吊荷の設置等を行う際に、吊荷が不意に動くという問題を防止できる。
【0020】
従って、吊荷を正確な位置に位置決めする作業が容易となり、よって鋼製ブロックの位置決め、溶接などの作業性を大幅に向上させることができる。また、吊荷の地切り時や設置時等に吊荷が不意に動くことを防止できるので、作業の安全性も向上できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づき説明する。図1、図2は本発明の一実施形態に係るジブクレーンの一例を示したものであり、図中、図3、図4と同一のものについては同一の符号を付して説明を省略し、本発明の特徴部分についてのみ詳細に説明する。
【0022】
図1、図2に示すように、旋回フレーム2上に備えるAフレーム20を次のように構成する。即ち、Aフレーム20は、上端に吊上ロープ12用のシーブ13を備え、下端が旋回フレーム2にピン21にて枢着された後部フレーム22と、該後部フレーム22の上端に近い位置に上端がピン23にて枢着され、下端が旋回フレーム2にピン24にて枢着された前部フレーム25とを有している。このとき、後部フレーム22は断面積Abが大きく剛性強度を備えた構成としてあり、また、前部フレーム25は断面積Afが小さい構成となっている。
【0023】
一方、図1のジブクレーンでは、後部フレーム22の上端におけるシーブ13の下側位置にシーブ10aを設け、また、ジブ5の長手方向中間部の支持ピン寄りの位置にシーブ10bを設け、起伏ウインチ7から巻き出した起伏ロープ8を、前記シーブ10a,10b間に掛け回してその端部を旋回フレーム2に固定し、起伏ウインチ7を作動することによりジブ5を起伏できるようにしている。また、巻上ウインチ11の吊上ロープ12は、後部フレーム22上端のシーブ13、ジブ5上端のシーブ14(吊点)、フックブロック15のシーブ16間に掛け回されて、吊荷17の吊上げ下げを行うようにしている。
【0024】
図1において、最大荷重の吊荷17を吊上げる状態(Iの状態)の時には、図2のようにAフレーム20に大きな引張り荷重Pが作用するが、このとき前部フレーム25には引張り応力のみを受ける。一方、後部フレーム22には、その上端のシーブ13より下側の位置に前部フレーム25の上端がピン23にて枢着されているので、後部フレーム22には引張り応力と同時に曲げモーメントによる応力が作用する。
【0025】
上記において、前部フレーム25に作用する引張り力をPf、後部フレーム22に作用する引張り力をPb、前部フレーム25の断面積をAf、後部フレーム22の断面積をAbとすると、前部フレーム25の応力σfは、σf=(Pf/Af)であり、後部フレーム22の応力σbは、σb=(Pb/Ab)である。
【0026】
このとき、
【数3】
(Pf/Af)>(Pb/Ab)・・・(1)
を満足するように、前部フレーム25の断面積Afと、後部フレーム22の断面積Abとを決定する。
【0027】
即ち、図2のように、後部フレーム22の断面積Abを大きく設定し、前部フレーム25の断面積Afを小さく設定する。
【0028】
このように、式(1)を満足するように、前部フレーム25の断面積Afと、後部フレーム22の断面積Abとを設定すると、最大荷重の吊上げ時に、前部フレーム25が延び、これによってAフレーム20はその上端が後方へ移動するように変形する。
【0029】
Aフレーム20の上端が後方へ移動するように変形すると、シーブ10a,10b間に掛け回されている起伏ロープ8によってジブ5が後方に引っ張られ、これにより、ジブ5先端の吊点14は、図1に破線で示すように水平方向後方へ向かって後方移動距離−Xだけ移動することになる。
【0030】
以下に、上記形態の作用を説明する。
【0031】
例えば最大荷重200トン(定格荷重であってもよい)の吊荷17を吊上げる図3に示したジブクレーンにおいて、最大荷重の吊荷17を吊上げた時に、クレーン本体4が前傾すること及びジブ5が変形することによって、ジブ5先端が水平方向前方へ移動する前方移動距離+Xを予め求めておく。
【0032】
一方、図1に示した例えば最大荷重200トンのジブクレーンにおいて、最大荷重の吊荷17を吊上げ時に、Aフレーム20の上端が後方へ移動するように変形することによってジブ5の上端が後方へ移動するように、式(1)
【数4】
(Pf/Af)>(Pb/Ab)・・・(1)
を満足する、前部フレーム25の断面積Afと、後部フレーム22の断面積Abとを設定する。即ち、後部フレーム22の断面積Abを大きく設定し、前部フレーム25の断面積Afを小さく設定する。これにより、式(1)の左辺の応力σfが右辺の応力σbより大きくなるようにする。これによって、最大荷重の吊荷17を吊上げたときに、Aフレーム20は必ず後方に向かって変形されるようになり、Aフレーム20の変形を一方向に方向付けすることができる。
【0033】
そして、最大荷重の吊荷17の吊上げによってクレーン本体4が前傾することによりジブ5先端が水平方向前方へ移動する前方移動距離+Xと、Aフレーム20が後方に変形してジブ5先端が水平方向後方へ移動する後方移動距離−Xの大きさの絶対値が略同一になるようにする。これにより、ジブ5先端の移動はキャンセルされて、移動距離は最小となる。
【0034】
上記したように、最大荷重の吊上げ時に、クレーン本体4が前傾することによるジブ5先端の前方移動距離+Xと、Aフレーム20が後方に変形することによるジブ5先端の後方移動距離−Xとが相殺されるようにしたことにより、ジブクレーンにより吊荷17を吊上げる地切り時や、吊荷17の設置等を行う際に、吊荷17が不意に大きく動くという問題を確実に防止することができる。
【0035】
従って、吊荷17を正確な位置に位置決めする作業が容易となり、よって鋼製ブロックの位置決め、溶接などの作業性を大幅に向上させることができる。また、吊荷17の地切り時や設置時等に吊荷17が不意に動くことが防止されるので、作業の安全性も向上できる。
【0036】
尚、本発明は上記形態例にのみ限定されるものではなく、種々の形式のジブクレーンに適用できること、Aフレーム及びジブの形状、寸法などは図示例にのみ限定されることなく種々変更し得ること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ること、等は勿論である。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、最大荷重の吊上げ時に、クレーン本体が前傾することによるジブ先端の前方移動距離と、Aフレームが後方に変形することによるジブ先端の後方移動距離とが相殺されるようにしたことにより、ジブクレーンにより吊荷を吊上げる地切り時や、吊荷の設置等を行う際に、吊荷が不意に動くという問題を防止できる効果がある。
【0038】
従って、吊荷を正確な位置に位置決めする作業が容易となり、よって鋼製ブロックの位置決め、溶接などの作業性を大幅に向上させることができる効果がある。また、吊荷の地切り時や設置時等に吊荷が不意に動くことを防止できるので、作業の安全性も向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のジブクレーンの形態の一例を示す側面図である。
【図2】図1に示したAフレームの側面図である。
【図3】従来のジブクレーンの一例を示す側面図である。
【図4】従来のAフレームの側面図である。
【符号の説明】
2 旋回フレーム
4 クレーン本体
5 ジブ
6 支持ピン
12 吊上ロープ
17 吊荷
20 Aフレーム
22 後部フレーム
25 前部フレーム
+X 前方移動距離
−X 後方移動距離
Af 前部フレームの断面積
Ab 後部フレームの断面積
Pf 前部フレームに作用する引張り力
Pb 後部フレームに作用する引張り力
Claims (2)
- クレーン本体の旋回フレームにジブが支持ピンにより起伏自在に取付られ、クレーン本体の旋回フレーム上に備えたAフレームの上端から前記ジブの先端に掛けられた吊上ロープにより吊荷の吊上げ吊下げを行うようにしているジブクレーンであって、前記Aフレームが、上端に吊上ロープ用のシーブを備え下端が旋回フレームに枢着された後部フレームと、該後部フレームのシーブの下部に上端が枢着され下端が旋回フレームに枢着された前部フレームとから構成されており、前記ジブが、Aフレームの頂部のシープとジブの長手方向中間部に備えたシーブとの間に掛け回した起伏ロープによって起伏するよう支持されており、最大荷重の吊上げ時にAフレームの前部フレームに作用する引張り力がPf、後部フレームに作用する引張り力がPb、前部フレームの断面積がAf、後部フレームの断面積がAb、であるとき、
【数1】
(Pf/Af)>(Pb/Ab)
を満足するように、前部フレームの断面積Afと後部フレームの断面積Abとを設定し、最大荷重の吊上げ時に前部フレームが延びてAフレームの上端が後方へ移動するようにしたことを特徴とするジブクレーン。 - 最大荷重の吊上げ時にクレーン本体が前傾することによりジブ先端が水平方向前方へ移動する前方移動距離と、最大荷重の吊上げ時に前部フレームが延びてAフレームの上端が後方へ移動しジブ先端が水平方向後方へ移動する後方移動距離と、が略同一になるようにしたことを特徴とする請求項1記載のジブクレーン。
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