JP4652122B2 - 投射型映像表示装置、それに用いる光学部材及び光学ユニット - Google Patents

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Description

本発明は、液晶プロジェクタや投射型リアプロジェクションテレビ等の投射型映像表示装置に係り、特に、映像表示素子に対し光入射側や光出射側に設けられ偏光処理や光の位相差補償を行う光学部材の構成に関する。
本発明に関連した従来技術としては、例えば、特開平11−337919号公報(特許文献1)に記載されたものがある。該公報には、投射型映像表示装置において、偏光素子や液晶表示素子の高温化を避けるために、偏光板における偏光素子の保持板や液晶表示素子の基板などのうちの少なくともいずれかをサファイアで形成するとした構成が記載されている。
特開平11−337919号公報
上記従来技術では、サファイアが結晶軸を有するために光の複屈折が起こり易く、映像のコントラストが低下し易い。このため、素子の組込みに当ってはサファイアの該結晶軸方向に合せた位置や角度の調整が必要となる。また、サファイアはコスト高である。
本発明の課題点は、上記従来技術の状況に鑑み、投射型映像表示装置において偏光処理や光の位相差補償を行う光学部材を、(1)組込みが容易でかつ光の複屈折などを引き起こさない構成とすること、(2)効率の良い放熱性が確保され、温度上昇を抑えられるようにすること、(3)高温多湿の環境下においても光学部材の劣化が抑えられ所定の光学性能が確保されるようにすること等である。
本発明の目的は、かかる課題点を解決し、表示映像の高画質性を確保でき信頼性のある投射型映像表示技術を提供することにある。
上記課題点を解決するために、本発明では、投射型映像表示装置及びこれに用いる光学ユニットにおいて、映像表示素子に対し光の入射側、出射側のいずれか一方または両方に配され偏光処理や光の位相差補償を行う光学部材を、酸化マグネシウムなどの立方晶構造の光透過性の基板上に、フッ化マグネシウム層や酸化アルミニウム層など複数の物質の層が積層されて成る保護層を設け、該保護層上に粘着層を設け、偏光素子や視野角補償素子の素子層を、該粘着層により、該保護層を介して上記基板上に固定し、該保護層が、粘着層の加水反応による酸から上記基板を保護する構成とする。保護層としては、第1の物質(例えばフッ化マグネシウム)で構成した第1の層(例えばフッ化マグネシウム層)を、第2の物質(例えば酸化アルミニウム)で構成した第2の層(例えば酸化アルミニウム層)が保護する構成とする。
本発明によれば、投射型映像表示装置において偏光処理や光の位相差補償を行う光学部材を、組込みが容易でかつ光の複屈折などを起こさない構成とすることができる。また、該光学部材の効率的な放熱性が確保され、温度上昇を抑えられる。さらに、高温多湿の環境下においても光学部材の劣化が抑えられ所定の光学性能が確保される。これらにより、表示映像の高画質性を確保でき、信頼性のある投射型映像表示技術の提供が可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態につき、図面を用いて説明する。
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態の説明図である。本第1の実施形態は、光学部材が偏光板の場合である。図1は、本発明による光学部材としての偏光板の断面構成例図、図2は、図1の構成の偏光板の、映像表示素子に対する配置例図、図3は、図2の配置構成を用いた投射型映像表示装置の構成例図である。
図1において、21は、光学部材としての偏光板、21bは、立方晶構造の光透過性の基板としての酸化マグネシウム基板、30は無機材から成る保護層、31、33は、保護層30を形成する無機材である酸化アルミニウムの蒸着膜の層(以下、酸化アルミニウム層という)、32、34は、同じく保護層30を形成する無機材であるフッ化マグネシウムの蒸着膜の層(以下、フッ化マグネシウム層という)、35は、同じく保護層30の一部としての絶縁体膜の層(以下、絶縁体層という)、40は、例えばアクリル酸エステルなどの粘着材から成る粘着層、21aは、入射された光の偏光処理を行うための偏光素子を形成する素子層(以下、偏光素子層という)である。偏光板21は、酸化マグネシウム基板21b上に、酸化アルミニウム層31、フッ化マグネシウム層32、酸化アルミニウム層33、フッ化マグネシウム層34がそれぞれ蒸着により形成され、さらに絶縁体層35を介して粘着層40が設けられ、該粘着層40により偏光素子層21aが、保護層30を介して、酸化マグネシウム基板21b側に固定されて成る。保護層30内において、酸化アルミニウム層31は、主として酸化マグネシウム基板21bを保護するために設けられ、フッ化マグネシウム層32、34はそれぞれ、主として外部からの水分の浸入を防ぐために設けられ、酸化アルミニウム層33は、主としてフッ化マグネシウム層32を保護するために設けられている。また、絶縁体層35は、例えば二酸化ケイ素などで構成され、フッ化マグネシウム層34への粘着層40の影響を抑えるため、及び外部からの水分を防ぐために設けられている。
上記構成においては、上記偏光板21が、例えば、高温多湿の環境下で使用され、粘着層40において加水反応に基づき酸が発生したような場合にも、該酸の、酸化マグネシウム基板21b側への浸入は、上記保護層30特にフッ化マグネシウム層32、34によって阻止され、その結果、該酸化マグネシウム基板21bの酸による侵食や白濁化などが防止される。
なお、上記図1の構成では、保護層30として、2層の酸化アルミニウム層31、33と、2層のフッ化マグネシウム層32、34とを備えて成る構成としているが、1層の酸化アルミニウム層31と、1層のフッ化マグネシウム層32とを備えて成る構成としてもよいし、3層以上の酸化アルミニウム層と3層以上のフッ化マグネシウム層とを備えて成る構成としてもよい。さらに、酸化マグネシウム基板21bなど立方晶構造の光透過性基板の両側の面上に、保護層及び偏光素子層を積層した構成としてもよい。また、酸化アルミニウム層の層数とフッ化マグネシウム層の層数とは互いに異なるようにしてもよい。また、保護層30に用いる無機材は、酸化アルミニウムやフッ化マグネシウムと略同等以上の作用・効果が得られるものであれば、酸化アルミニウムやフッ化マグネシウム以外のものを用いてもよい。例えば、酸化アルミニウムの代替として、フッ化セリウムが挙げられる。さらに、酸化マグネシウム基板21bについても、酸化マグネシウムと略同等以上の熱伝導率を有し、略同等以上の作用・効果が得られる立方晶構造の光透過性基板であれば、酸化マグネシウム基板21bに替えてそれを用いてもよい。以下の説明では、これらの構成も、上記図1に示した構成に含まれるものとして説明する。
図2は、図1に示した光学部材としての偏光板の配置例図である。
図2において、19は液晶パネル等の映像表示素子、18は、映像表示素子19の光入射側に設ける偏光板(以下、入射側偏光板という)、21は、映像表示素子19の光出射側に設ける偏光板(以下、出射側偏光板という)である。入射側偏光板18及び出射側偏光板21はともに、上記図1に含まれるとされる範囲の構成を有する。すなわち、入射側偏光板18においては、18aは偏光素子層、18bは、立方晶構造の光透過性の基板としての酸化マグネシウム基板、30は、酸化アルミニウム層31(図1)、フッ化マグネシウム層32(同)、酸化アルミニウム層33(同)、フッ化マグネシウム層34(同)及び絶縁体層35(同)から成る保護層、40は、偏光素子層18aを、保護層30を介して酸化マグネシウム基板18b側に固定する粘着層、また、出射側偏光板21においては、21aは偏光素子層、21bは、立方晶構造の光透過性の基板としての酸化マグネシウム基板、30は保護層、40は、偏光素子層21aを、保護層30を介して酸化マグネシウム基板21b側に固定する粘着層である。また、26は、偏光変換されかつ色分離された赤(R)、緑(G)、青(B)いずれかの色光の入射光(以下、入射偏光光という)であり、X−X'は、該入射偏光光26の直線偏光の偏光方向である。本配置例においては、入射側偏光板18、出射側偏光板21とも、偏光素子層18a、21aを、酸化マグネシウム基板18b、21bに対し映像表示素子19側に配する。偏光素子層18aと偏光素子層21aとは互いに、光の透過軸が約90゜ずれるようにしてあり、偏光素子層18aはX−X'方向を透過軸とし、偏光素子層21aはX−X'方向に直角な方向を透過軸としているものとする。また、入射側偏光板18と映像表示素子19と出射側偏光板21とは、相互間に所定の空隙を隔てて配されている。
上記構成において、色光のP偏光光またはS偏光光の入射偏光光26は、入射側偏光板18の酸化マグネシウム基板18b、保護層30及び粘着層40を通過して、偏光素子層18aに入射する。偏光素子層18aは、偏光光のうち該偏光素子層18aの透過軸に平行な偏光方向成分すなわちX−X'方向の成分を通過させる。偏光素子層18aを通過しない偏光光は、該偏光素子層18aを含む入射側偏光板18内で吸収され、熱に変わる。偏光素子層18aを通過した偏光光は、映像表示素子19に照射される。映像表示素子19では該照射された偏光光は映像信号の階調に基づき変調される。該変調された色光の偏光光は、出射側偏光板21の偏光素子層21aに入射される。偏光素子層21aでは、入射した偏光光のうち、該偏光素子層21aの透過軸に平行な偏光方向成分すなわちX−X'方向に直角な方向の成分を通過させる。偏光素子層21aを通過しない偏光光は、該偏光素子層21aを含む入射側偏光板21内で吸収されて熱に変わる。該偏光素子層21aを通過した偏光光はさらに、粘着層40、保護層30及び酸化マグネシウム基板21bを通過して次の光学系側に出射される。
上記酸化マグネシウム基板18b、21bはそれぞれ、立方晶構造を有するため、複屈折もなく、直線偏光の楕円偏光への変化もない。このため、偏光素子層18a、21aでの光の吸収や損失も少なく、明るくコントラストの高い映像が得られる。また、酸化マグネシウム基板18b、21bはそれぞれ、上記のように立方晶構造であるため、偏光素子層18a、21aの透過軸(吸収軸)の方向に対しても方向性はなく、このため、偏光板としての組込時、該偏光素子層18a、21aの透過軸(吸収軸)に対する方向合わせ作業は不要となる。また、該酸化マグネシウム基板18b、21bはそれぞれ、その良好な熱伝導性により、入射側偏光板18、出射側偏光板21内の熱をそれぞれ放熱し温度上昇を抑える。さらに、該酸化マグネシウム基板18b、21bは、立方晶構造であるために、サファイア基板などに比べて製造し易く、低コスト化が可能である。さらにまた、入射側偏光板18、出射側偏光板21はそれぞれ、保護層30を設けた構成であるため、例えば、高温多湿の環境下などで、それぞれの粘着層40に加水反応により酸が発生したような場合にも、該酸の、酸化マグネシウム基板18b、21b側への浸入が保護層30によって阻止され、該酸化マグネシウム基板18b、21bの酸による侵食やそれに基づく白濁化などの光学部材の劣化が防止される。これによって、光学部材としての信頼性向上、長寿命化が図られ、高画質の映像表示が可能となる。
上記図2の構成において、入射側偏光板18、出射側偏光板21のいずれか一方または両方は、基板として、立方晶構造の光透過性基板であって、酸化マグネシウムと略同等以上の熱伝導率を有し、略同等以上の作用・効果が得られる基板であれば、酸化マグネシウム基板以外の基板を用いてもよい。また、入射側偏光板18、出射側偏光板21のいずれか一方は、酸化マグネシウム等の立方晶構造の光透過性の基板を用いない構成であってもよい。
図3は、図2の配置構成を用いた投射型映像表示装置の構成例図である。
図3において、1はランプなどの光源、2はリフレクタ、3は、複数のレンズセルより成り複数の2次光源像を形成する第1のアレイレンズ、4は、同じく複数のレンズセルより成り上記第1のアレイレンズ3の個々のレンズ像を結像する第2のアレイレンズ、5は、偏光ビームスプリッタ(図示なし)と1/2波長位相差板(図示なし)から構成され、上記第2のアレイレンズ4側からの光をP偏光光とS偏光光とに分離した後、該両偏光光のうち一方の偏光方向を回転してP、Sいずれかの偏光光に揃え、該偏光光を出射する偏光変換素子、6は集光レンズ、7、8、9、10は反射ミラー、11、12は、入射された光を赤、緑、青の各色光(以下、R光、G光、B光という)に色分離する色分離手段としてのダイクロイックミラー、13R、13G、13Bはコンデンサレンズ、15、16はリレーレンズ、19R、19G、19Bはそれぞれ、R光、G光、B光用の透過型液晶パネルなどの映像表示素子、18R、18G、18Bはそれぞれ、映像表示素子19R、19G、19Bの入射側偏光板、21R、21G、21Bはそれぞれ、映像表示素子19R、19G、19Bの出射側偏光板、22は、色合成用の色合成手段としてのダイクロイックプリズム、23は、映像光を拡大投射するための投射レンズユニット、100は、映像表示素子19R、19G、19Bを映像信号に基づき駆動する駆動回路、27は冷却用ファン、28は冷却用空気の流路である。上記入射側偏光板18R、18G、18B及び上記出射側偏光板21R、21G、21Bはそれぞれ、上記図1に含まれる範囲の構成を備えているものとする。映像表示素子19R、19G、19Bはそれぞれ、映像信号に基づき駆動回路100により駆動され、入射された偏光光を映像信号の階調に基づき変調して出射する。また、リレ−レンズ15、16は、映像表示素子19Bの、光源1からの光路長が、映像表示素子19R、19Gの場合に比べて長いのを補う作用をする。光源1から投射レンズユニット23までの上記諸構成要素は、投射型映像表示装置における光学ユニットを構成している。
かかる構成において、上記光源1から出射された光(白色光)(リフレクタ2での反射光も含む)は、上記第1のアレイレンズ3で複数の2次光源像を形成した後、上記第2のアレイレンズ4で該複数の2次光源像を結像し、該結像光が、上記偏光変換素子5内で、偏光ビームスプリッタ(図示なし)でP偏光光とS偏光光とに分離され、1/2波長位相差板(図示なし)により、例えば該P偏光光が偏光方向を回転されてS偏光光とされ、上記偏光ビームスプリッタで分離されたS偏光光と併せ、集光レンズ6に入射される。集光レンズ6で集光された白色光のS偏光光は、反射ミラー7で反射されて光路方向を変更され、ダイクロイックミラー11に約45゜の入射角で入射する。ダイクロイックミラー11では、R光のS偏光光は反射され、G光及びB光のS偏光光は透過される。
上記反射されたR光のS偏光光は反射ミラー10で反射されて光路方向を変更され、コンデンサレンズ13Rを介してR光用の映像表示素子19Rの入射側偏光板18Rに入射する。該R光のS偏光光は、該入射側偏光板18Rにおいて該入射側偏光板18Rの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、R光用の映像表示素子19Rに照射される。該映像表示素子19Rでは、該R光のS偏光光が透過時に映像信号に基づいて変調され、R光のP偏光光の光学像を形成した光(光学像光)として出射される。映像表示素子19Rから出射されたR光のP偏光光(光学像光)は、出射側偏光板21Rに入射し、該出射側偏光板21Rにおいて該出射側偏光板21Rの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、ダイクロイックプリズム22に入射する。ダイクロイックプリズム22では、そのダイクロイック面で反射され、投射レンズユニット23に入る。
一方、ダイクロイックミラー11を透過したG光及びB光のS偏光光は、さらに、ダイクロイックミラー12に約45゜の入射角で入射し、該ダイクロイックミラー12で、G光のS偏光光は反射され、B光のS偏光光は透過される。反射されたG光のS偏光光は、コンデンサレンズ13Gを介してG光用の映像表示素子19Gの入射側偏光板18Gに入射する。
該G光のS偏光光は、該入射側偏光板18Gにおいて該入射側偏光板18Gの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、G光用の映像表示素子19Gに照射される。該映像表示素子19Gでは、該G光のS偏光光が透過時に映像信号に基づいて変調され、G光のP偏光光の光学像を形成した光(光学像光)として出射される。映像表示素子19Gから出射されたG光のP偏光光は、出射側偏光板21Gに入射し、該出射側偏光板21Gにおいて該出射側偏光板21Gの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、ダイクロイックプリズム22に入射する。該G光のP偏光光は、ダイクロイックプリズム22内においてダイクロイック面で反射され、投射レンズユニット23に入る。
また、上記ダイクロイックミラー12を透過したB光のS偏光光は、リレーレンズ15を経て反射ミラー8で反射され、さらにリレーレンズ16を経て反射ミラー9で反射され、コンデンサレンズ13Bを介してB光用の映像表示素子19Bの入射側偏光板18Bに入射する。該B光のS偏光光は、該入射側偏光板18Bにおいても該入射側偏光板18Bの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、B光用の映像表示素子19Bに照射される。該映像表示素子19Bでは、該B光のS偏光光が透過時に映像信号に基づいて変調され、B光のP偏光光の光学像を形成した光(光学像光)として出射される。映像表示素子19Bから出射されたB光のP偏光光は、出射側偏光板21Bに入射し、該出射側偏光板21Bにおいて該出射側偏光板21Bの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、ダイクロイックプリズム22に入射する。ダイクロイックプリズム22内において該B光のP偏光光はダイクロイック面で反射され、投射レンズユニット23に入る。
上記のように、ダイクロイックプリズム22からは、映像信号により変調されたR光のP偏光光と、G光のP偏光光と、B光のP偏光光とが互いに色合成された状態で出射され、白色光のP偏光光として投射レンズユニット23に入り、該投射レンズユニット23によりスクリーンなどに映像光として拡大投射される。
上記構成において、各入射側偏光板18R、18G、18B及び各出射側偏光板21R、21G、21Bでは、それぞれの偏光素子層の透過軸を通過できない光は、該それぞれの偏光素子層を含む偏光板内で吸収されて熱に変り、それぞれの温度を上昇させる。酸化マグネシウム基板は、その放熱特性(熱伝導性)により該熱を外部に放熱し、該偏光素子層と偏光板全体の温度上昇を抑える。冷却用ファン27は、冷却用ダクト(図示なし)等により流路28を形成し、各入射側偏光板18R、18G、18B、各出射側偏光板21R、21G、21B、各映像表示素子19R、19G、19B等への冷却用空気の送風を行う。冷却用空気は、各入射側偏光板18R、18G、18Bと各映像表示素子19R、19G、19Bとの間の空隙部や、各出射側偏光板21R、21G、21Bと各映像表示素子19R、19G、19Bとの間の空隙部などを流動し、これら入射側偏光板18R、18G、18B、出射側偏光板21R、21G、21B、映像表示素子19R、19G、19Bを冷却する。各入射側偏光板18R、18G、18B及び各出射側偏光板21R、21G、21Bでは、各酸化マグネシウム基板から該冷却用空気側に放熱され、上記空気の流動により放熱効果が高められる。
なお、上記図3の構成例では偏光変換素子5からは、偏光変換の結果、S偏光光が出射されるようにしたが、これに限らず、P偏光光が出射されるようにしてもよい。この場合は、R、G、B各色光のP偏光光がそれぞれ、各入射側偏光板18R、18G、18Bを透過し、対応する映像表示素子19R、19G、19Bに照射され、該映像表示素子19R、19G、19Bにおいて、透過時に映像信号に基づいて変調され、R、G、B各色光のS偏光光となって出射され、ダイクロイックプリズム22で色合成される。
また、上記図1、図2の構成例では、1個の映像表示素子の入射側に、偏光素子層を酸化マグネシウム基板の片面に設けた入射側偏光板1個を配し、出射側に、偏光素子層を酸化マグネシウム基板の片面に設けた出射側偏光板1個を配する構成としたが、これに限らず、例えば、映像表示素子の出射側に、偏光素子層を1個の酸化マグネシウム基板の両側に設けた出射側偏光板1個を配する構成としてもよいし、または、偏光素子層を酸化マグネシウム基板の片面に設けた出射側偏光板2個を該映像表示素子の出射側に配する構成としてもよい。
上記図1〜図3を用いて述べた第1の実施形態によれば、偏光板において、酸化マグネシウム基板は立方晶構造を有するため、複屈折や、直線偏光の楕円偏光への変化もない。このため、偏光素子層での光の吸収や損失も少なく、明るくコントラストの高い映像表示を可能にする。また、酸化マグネシウム基板は、立方晶構造であるため、偏光素子層18a、21aの透過軸(吸収軸)の方向に対しても方向性はなく、このために、偏光板としての組込時、偏光素子層の透過軸(吸収軸)に対する方向合わせ作業が不要となる。また、酸化マグネシウム基板自体の製造もし易いため、製造コストの低減化も可能となる。また、該酸化マグネシウム基板は、熱伝導性が良好なため、偏光素子層内や偏光板内に発生した熱を有効に放熱し、偏光板の温度上昇を抑えられる。さらに、偏光板は、保護層30を備えた構成であるため、例えば、高温多湿の環境下においても、酸などによる酸化マグネシウム基板の侵食や白濁化などの光学部材の劣化を防止することができ、信頼性向上や長寿命化を図ることができる。これによって、光学ユニットや投射型映像表示装置においても、信頼性向上、長寿命化、高画質の映像表示、コスト低減などが可能となる。
図4〜図6は、本発明の第2の実施形態の説明図である。本第2の実施形態は、光学部材が、偏光板及び光の位相差を補償する視野角補償板である場合の例である。図4は、本発明による光学部材としての視野角補償板の断面構成例図、図5は、図4に示す構成の視野角補償板及び上記図1、図2に示した構成の偏光板の、映像表示素子に対する配置例図、図6は、図5の配置構成を用いた投射型映像表示装置の構成例図である。
図4において、50は、本発明の光学部材としての視野角補償板、50bは、立方晶構造の光透過性の基板としての酸化マグネシウム基板、30は無機材から成る保護層、31、33は、保護層30を形成する酸化アルミニウムの蒸着膜層(酸化アルミニウム層)、32、34は、同じく保護層30を形成するフッ化マグネシウムの蒸着膜層(フッ化マグネシウム層)、35は、同じく保護層30の一部としての絶縁体層、40は、例えばアクリル酸エステルなどの粘着材から成る粘着層、50aは、入射された光の位相差を補償する視野角補償処理を行う視野角補償素子を形成する素子層(以下、視野角補償素子層という)である。視野角補償板50は、酸化マグネシウム基板50b上に、酸化アルミニウム層31、フッ化マグネシウム層32、酸化アルミニウム層33、フッ化マグネシウム層34がそれぞれ蒸着により形成され、さらに絶縁体層35を介して粘着層40が設けられ、該粘着層40により視野角補償素子層50aが、保護層30を介して、酸化マグネシウム基板50b側に固定されて成る。保護層30内において、酸化アルミニウム層31は、酸化マグネシウム基板50bを保護するために設けられ、フッ化マグネシウム層32、34はそれぞれ、外部からの水分の浸入を防ぐために設けられ、酸化アルミニウム層33は、フッ化マグネシウム層32を保護するために設けられている。また、絶縁体層35は、例えば二酸化ケイ素などで構成され、フッ化マグネシウム層34への粘着層40の影響を抑えるため、及び外部からの水分を防ぐために設けられている。
上記構成においては、上記視野角補償板50が、例えば、高温多湿の環境内で使用され、粘着層40に加水反応により酸が発生したような場合にも、該酸の、酸化マグネシウム基板50b側への浸入は、上記保護層30特にフッ化マグネシウム層32、34によって阻止され、その結果、該酸化マグネシウム基板50bの酸による侵食や白濁化などが防止される。
なお、上記図4の構成では、保護層30として、2層の酸化アルミニウム層31、33と、2層のフッ化マグネシウム層32、34とを備えて成る構成としているが、1層の酸化アルミニウム層31と、1層のフッ化マグネシウム層32とを備えて成る構成としてもよいし、3層以上の酸化アルミニウム層と、3層以上のフッ化マグネシウム層とを備える構成としてもよい。さらに、酸化マグネシウム基板50bなど立方晶構造の光透過性基板の両側に、保護層及び視野角補償層を設ける構成としてもよい。また、酸化アルミニウム層の層数とフッ化マグネシウム層の層数とは互いに異なるようにしてもよい。また、保護層30に用いる無機材は、酸化アルミニウムやフッ化マグネシウムと同等以上の作用・効果が得られるものであれば、酸化アルミニウムやフッ化マグネシウム以外のものを用いてもよい。例えば、酸化アルミニウムの代替として、フッ化セリウムが挙げられる。さらに、酸化マグネシウム基板50bについても、酸化マグネシウムと略同等以上の熱伝導率を有し、略同等以上の作用・効果が得られる立方晶構造の光透過性基板であれば、酸化マグネシウム基板50bに替えてそれを用いてもよい。以下の説明では、これら諸構成も、上記図4に示した範囲の構成として説明する。
図5は、上記図4に示した構成の視野角補償板及び上記図1、図2に示した構成の偏光板の、映像表示素子に対する配置例図である。
図5において、19は液晶パネル等の映像表示素子、18は、映像表示素子19の光入射側に設ける入射側偏光板、21は、映像表示素子19の光出射側に設ける出射側偏光板、50は視野角補償板である。入射側偏光板18及び出射側偏光板21及び視野角補償板50はともに、上記図4に含まれるとされた範囲の構成を有する。すなわち、入射側偏光板18においては、18aは偏光素子層、18bは、立方晶構造の光透過性の基板としての酸化マグネシウム基板、30は、酸化アルミニウム層31(図1)、フッ化マグネシウム層32(同)、酸化アルミニウム層33(同)、フッ化マグネシウム層34(同)及び絶縁体層35(同)から成る保護層、40は、偏光素子層18aを、保護層30を介して酸化マグネシウム基板18b側に固定する粘着層、また、出射側偏光板21においては、21aは偏光素子層、21bは、立方晶構造の光透過性の基板としての酸化マグネシウム基板、30は保護層、40は、偏光素子層21aを、保護層30を介して酸化マグネシウム基板21b側に固定する粘着層、さらに、視野角補償板50においては、50aは視野角補償素子層、50bは、立方晶構造の光透過性の基板としての酸化マグネシウム基板、30は、酸化アルミニウム層31(図4)、フッ化マグネシウム層32(同)、酸化アルミニウム層33(同)、フッ化マグネシウム層34(同)及び絶縁体層35(同)から成る保護層、40は、視野角補償素子層50aを、保護層30を介して酸化マグネシウム基板50b側に固定する粘着層である。26は、偏光変換されかつ色分離された色光であるR光、G光、B光いずれかの入射偏光光、X−X'は、該入射偏光光26の直線偏光の偏光方向である。入射側偏光板18、出射側偏光板21、視野角補償板50はそれぞれ、偏光素子層18a、21a及び視野角補償素子層50aを、酸化マグネシウム基板18b、21b、50bに対し映像表示素子19側に配し、視野角補償板50は、映像表示素子19の出射側において、出射側偏光板21と映像表示素子19との間に配する。偏光素子層18aはX−X'方向を透過軸とし、偏光素子層21aはX−X'方向に対し直角な方向を透過軸としているものとする。また、入射側偏光板18と映像表示素子19との間、該映像表示素子19と視野角補償板50との間及び該視野角補償板50と出射側偏光板21との間にはそれぞれ、相互間を隔てる空隙が設けられている。
上記構成において、所定の色光のP偏光光またはS偏光光の入射偏光光26は、入射側偏光板18の酸化マグネシウム基板18b、保護層30及び粘着層40を通過して、偏光素子層18aに入射する。偏光素子層18aは、偏光光のうち該偏光素子層18aの透過軸に平行な偏光方向成分すなわちX−X'方向の成分を通過させる。偏光素子層18aを通過しない偏光光は、該偏光素子層18aを含む入射側偏光板18内で吸収されて熱に変わる。偏光素子層18aを通過した偏光光は、映像表示素子19に照射され、該映像表示素子19では該照射された偏光光は映像信号の階調に応じて変調される。該変調された色光の偏光光は、視野角補償板50の視野角補償素子層50aに入射する。該視野角補償素子層50aでは光の位相差を補償する視野角補償処理が行われる。視野角補償素子層50aを通過した偏光光は、粘着層40、保護層30及び酸化マグネシウム基板50bを通過して、次の出射側偏光板21の偏光素子層21aに入射する。偏光素子層21aでも、入射した偏光光のうち該偏光素子層21aの透過軸に平行な偏光方向成分すなわちX−X'方向に直角な方向の成分を通過させる。偏光素子層21aを通過しない偏光光は、該偏光素子層21aを含む入射側偏光板21内で吸収され熱に変わる。該偏光素子層21aを通過した偏光光はさらに、粘着層40、保護層30及び酸化マグネシウム基板21bを通過して次段の光学系側に出射される。
上記において、酸化マグネシウム基板18b、50b、21bはそれぞれ、立方晶構造を有するため、複屈折もなく、直線偏光の楕円偏光への変化もない。このため、偏光素子層18a、21aや視野角補償素子層50aでの光の吸収や損失も少なく、明るくコントラストの高い映像が得られる。また、酸化マグネシウム基板18b、50b、21bはそれぞれ、上記のように立方晶構造であるため、偏光素子層18a、21aの透過軸(吸収軸)の方向に対しても方向性はなく、このため、偏光板としての組込時、該偏光素子層18a、21aの透過軸(吸収軸)に対する方向合わせ作業は不要となるし、また、視野角補償板50においても、酸化マグネシウム基板50bは、視野角補償素子層50aに対しての方向合わせ作業が不要となる。また、該酸化マグネシウム基板18b、50b、21bはそれぞれ、その良好な熱伝導性により、入射側偏光板18、視野角補償板50、出射側偏光板21それぞれの内部の熱を放熱し、それぞれの温度上昇を抑える。また、該酸化マグネシウム基板18b、21b、50bは、立方晶構造であるために、サファイア基板などに比べ、製造し易く、低コスト化が可能である。さらに、入射側偏光板18、出射側偏光板21及び視野角補償板50はそれぞれ、保護層30を設けてあるため、例えば、高温多湿の環境下などで、それぞれの粘着層40に加水反応により酸が発生したような場合にも、該酸の、酸化マグネシウム基板18b、21b、50b側への浸入を阻止することができ、該酸化マグネシウム基板18b、21b、50bの酸による侵食や白濁化などの光学部材の劣化が防止される。これによって、光学部材としての信頼性向上、長寿命化が図られ、高画質の映像表示が可能となる。
上記図5の構成において、入射側偏光板18、出射側偏光板21、視野角補償板50のうちの一部のものまたは全部のものは、基板として、立方晶構造の光透過性基板であって、酸化マグネシウムと略同等以上の熱伝導率を有し、略同等以上の作用・効果が得られる基板であれば、酸化マグネシウム基板以外の基板を用いてもよい。また、入射側偏光板18、出射側偏光板21のいずれか一方は、酸化マグネシウム等の立方晶構造の光透過性基板を用いない構成であってもよい。
図6は、図5の配置構成を用いた投射型映像表示装置の構成例図である。
図6において、50R、50G、50Bはそれぞれ、R光、G光、B光用の視野角補償板である。他の符号は、上記図3に示す第1の実施形態の場合と同様である。視野角補償板50R、50G、50Bはそれぞれ、上記図4に含まれる範囲の構成を備えているものとする。本図6の構成でも、光源1から投射レンズユニット23までの上記諸要素は、投射型映像表示装置における光学ユニットを構成している。
かかる構成において、R光用の映像表示素子19Rの入射側偏光板18Rに入射したR光のS偏光光は、該入射側偏光板18Rにおいて該入射側偏光板18Rの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、R光用の映像表示素子19Rに照射される。該映像表示素子19Rでは、該R光のS偏光光が透過時に映像信号に基づいて変調され、R光のP偏光光の光学像を形成した光(光学像光)となって出射される。映像表示素子19Rから出射されたR光のP偏光光(光学像光)は、視野角補償板50Rに入射され、該視野角補償板50R中で光の位相差を補償され、さらに出射側偏光板21Rに入射し、該出射側偏光板21Rにおいて該出射側偏光板21Rの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、ダイクロイックプリズム22に入射する。
また、G光用の映像表示素子19Gの入射側偏光板18Gに入射したG光のS偏光光は、該入射側偏光板18Gにおいて該入射側偏光板18Gの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、G光用の映像表示素子19Gに照射される。該映像表示素子19Gでは、該G光のS偏光光が透過時に映像信号に基づいて変調され、G光のP偏光光の光学像を形成した光(光学像光)となって出射される。映像表示素子19Gから出射されたG光のP偏光光(光学像光)は、視野角補償板50Gに入射され、該視野角補償板50G中で光の位相差を補償され、さらに出射側偏光板21Gに入射し、該出射側偏光板21Gにおいて該出射側偏光板21Gの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、ダイクロイックプリズム22に入射する。
同様に、B光用の映像表示素子19Bの入射側偏光板18Bに入射したB光のS偏光光は、該入射側偏光板18Bにおいて該入射側偏光板18Bの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、B光用の映像表示素子19Bに照射される。該映像表示素子19Bでは、該B光のS偏光光が透過時に映像信号に基づいて変調され、B光のP偏光光の光学像を形成した光(光学像光)となって出射される。映像表示素子19Bから出射されたB光のP偏光光(光学像光)は、視野角補償板50Bに入射し、該視野角補償板50B中で光の位相差を補償され、さらに出射側偏光板21Bに入射し、該出射側偏光板21Bにおいて該出射側偏光板21Bの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、ダイクロイックプリズム22に入射する。
図6において、他の部分の作用は上記図3に示す第1の実施形態の場合と同様である。なお、図6の構成例でも、偏光変換素子5からは、偏光変換の結果、S偏光光が出射されるようにしたが、これに限らず、P偏光光が出射されるようにしてもよい。この場合は、R、G、B各色光のP偏光光がそれぞれ、各入射側偏光板18R、18G、18Bを透過し、対応する映像表示素子19R、19G、19Bに照射され、該映像表示素子19R、19G、19Bにおいて、透過時に映像信号に基づいて変調され、R、G、B各色光のS偏光光となって出射され、ダイクロイックプリズム22で色合成される。
また、上記図4、図5の構成例でも、1個の映像表示素子の入射側に、偏光素子層を酸化マグネシウム基板の片面に設けた入射側偏光板1個を配し、出射側に、偏光素子層を酸化マグネシウム基板の片面に設けた出射側偏光板1個を配する構成としたが、これに限らず、例えば、映像表示素子の出射側に、偏光素子層を1個の酸化マグネシウム基板の両側に設けた出射側偏光板1個を配する構成としてもよいし、または、偏光素子層を酸化マグネシウム基板の片面に設けた出射側偏光板2個を該液晶パネルの出射側に配する構成としてもよい。
上記図4〜図6を用いて述べた第2の実施形態によれば、酸化マグネシウム基板は立方晶構造を有するため、複屈折や、直線偏光の楕円偏光への変化もないため、光の吸収や損失も少なく、明るくコントラストの高い映像表示を可能にする。また、偏光板や視野角補償板の組込時、酸化マグネシウム基板の、偏光素子層の透過軸(吸収軸)や視野角補償素子層に対しての方向合わせの調整が不要となり、組込みの作業性を高められる。また、酸化マグネシウム基板自体は製造し易いため、製造コストの低減化も可能となる。また、該酸化マグネシウム基板は、熱伝導性が良好なため、偏光板や光学部材に発生した熱を有効に放熱され、温度上昇が抑えられる。さらに、偏光板は、保護層30を備えた構成であるため、高温多湿の環境下などにおいても、酸などによる酸化マグネシウム基板の侵食や白濁化などの材質劣化を防止することができ、信頼性向上や長寿命化を図ることができる。これによって、光学ユニットや投射型映像表示装置においても、信頼性向上、長寿命化、高画質の映像表示、コスト低減などが可能となる。
図7〜図9は、本発明の第3の実施形態の説明図である。本第3の実施形態は、光学部材として、1枚の基板の一方の面側には偏光素子層を設け、他方の面側には視野角補償素子層を設けた構成とし、1つの部材内で偏光処理と視野角補償処理とを行うようにした場合の例である。図7は、本発明による光学部材の断面構成例図、図8は、図7に示す構成の光学部材と上記図1に示した構成の偏光板の、映像表示素子に対する配置例図、図9は、図8の配置構成を用いた投射型映像表示装置の構成例図である。
図7において、70は、本発明の光学部材、70bは、立方晶構造の光透過性の基板としての酸化マグネシウム基板、30は無機材から成る保護層、31、33は、保護層30を形成する酸化アルミニウムの蒸着膜層(酸化アルミニウム層)、32、34は、同じく保護層30を形成するフッ化マグネシウムの蒸着膜層(フッ化マグネシウム層)、35は、同じく保護層30の一部としての絶縁体層、40は、例えばアクリル酸エステルなどの粘着材から成る粘着層、70aは偏光素子層、70cは視野角補償素子層である。酸化マグネシウム基板70bの両平面上にそれぞれ、酸化アルミニウム層31、フッ化マグネシウム層32、酸化アルミニウム層33、フッ化マグネシウム層34がそれぞれ蒸着により形成され、さらに絶縁体層35を介して粘着層40が設けられ、一方の面側では、該粘着層40により偏光素子層70aが固定され、他方の面側では、該粘着層40により視野角補償素子層70cが固定されている。酸化マグネシウム基板70bの両平面上の保護層30のそれぞれにおいて、酸化アルミニウム層31は、酸化マグネシウム基板70bを保護するために設けられ、フッ化マグネシウム層32、34はそれぞれ、外部からの水分の浸入を防ぐために設けられ、酸化アルミニウム層33は、フッ化マグネシウム層32を保護するために設けられている。また、絶縁体層35は、例えば二酸化ケイ素などで構成され、フッ化マグネシウム層34への粘着層40の影響を抑えるため及び外部からの水分を防ぐために設けられている。
上記構成においては、上記光学部材70が、例えば、高温多湿の環境内で使用され、粘着層40での加水反応によって酸が発生した場合にも、該酸の、酸化マグネシウム基板70b側への浸入は、該酸化マグネシウム基板70bの両平面上の上記保護層30特にフッ化マグネシウム層32、34によって阻止され、その結果、該酸化マグネシウム基板70bの酸による侵食や白濁化などが防止される。
なお、上記図7の構成では、酸化マグネシウム基板70b上の各保護層30として、2層の酸化アルミニウム層31、33と、2層のフッ化マグネシウム層32、34とを備えて成る構成としているが、1層の酸化アルミニウム層31と、1層のフッ化マグネシウム層32とを備えて成る構成としてもよいし、3層以上の酸化アルミニウム層と、3層以上のフッ化マグネシウム層とを備えて成る構成としてもよい。また、酸化アルミニウム層の層数とフッ化マグネシウム層の層数とは互いに異なるようにしてもよい。また、保護層30に用いる無機材は、酸化アルミニウムやフッ化マグネシウムと同等以上の作用・効果が得られるものであれば、酸化アルミニウムやフッ化マグネシウム以外のものを用いてもよい。例えば、酸化アルミニウムの代替として、フッ化セリウムが挙げられる。さらに、酸化マグネシウム基板70bについても、酸化マグネシウムと同等以上の熱伝導率を有し、同等以上の作用・効果が得られる立方晶構造の光透過性基板であれば、酸化マグネシウム基板70bに替えてそれを用いてもよい。以下の説明では、これらの構成も、上記図7に示した範囲の構成として説明する。
図8は、上記図7に示した構成の光学部材及び上記図1に示した構成の偏光板の、映像表示素子に対する配置例図である。
図8において、19は映像表示素子、18は、映像表示素子19の光入射側に設ける入射側偏光板、70は、映像表示素子19の光出射側に設け、偏光素子層と視野角補償素子とを1枚の酸化マグネシウム基板70b上に保護層30を介して備えた光学部材である。入射側偏光板18は、上記図1に含まれるとされた範囲の構成を有し、光学部材70は、上記図7に含まれるとされた範囲の構成を有する。26は、偏光変換されかつ色分離された色光であるR光、G光、B光いずれかの入射偏光光、X−X'は、該入射偏光光26の直線偏光の偏光方向である。入射側偏光板18、光学部材70はそれぞれ、偏光素子層18a、70aを、酸化マグネシウム基板18b、70bに対し映像表示素子19側に配してある。偏光素子層18aはX−X'方向を透過軸とし、偏光素子層70aはX−X'方向に対し直角な方向を透過軸としているものとする。また、入射側偏光板18と映像表示素子19との間、該映像表示素子19と光学部材70との間にはそれぞれ、相互間を隔てる空隙が設けられている。
上記構成において、所定の色光のP偏光光またはS偏光光の入射偏光光26は、入射側偏光板18の酸化マグネシウム基板18b、保護層30及び粘着層40を通過して、偏光素子層18aに入射する。偏光素子層18aは、偏光光のうち該偏光素子層18aの透過軸に平行な偏光方向成分すなわちX−X'方向の成分を通過させる。偏光素子層18aを通過しない偏光光は、該偏光素子層18aを含む入射側偏光板18内で吸収されて熱に変わる。偏光素子層18aを通過した偏光光は、映像表示素子19に照射され、該映像表示素子19では該照射された偏光光は映像信号の階調に応じて変調される。該変調された色光の偏光光は、光学部材70の偏光素子層70aに入射する。偏光素子層70aでも、入射した偏光光のうち該偏光素子層70aの透過軸に平行な偏光方向成分すなわちX−X'方向に直角な方向の成分を通過させる。偏光素子層70aを通過しない偏光光は、該偏光素子層70aを含む光学部材70内で吸収されて熱に変わる。該偏光素子層70aを通過した偏光光はさらに、粘着層40、保護層30及び酸化マグネシウム基板70bを通過してさらに、該酸化マグネシウム基板70bの他方の面側に配された保護層30及び粘着層40を経て、視野角補償素子層70cに入射する。偏光光は、該視野角補償素子層70cでは光の位相差を補償する視野角補償処理が行われ、次段の光学系に出射される。
上記において、酸化マグネシウム基板18b、70bはそれぞれ、立方晶構造を有するため、複屈折もなく、直線偏光の楕円偏光への変化もない。このため、偏光素子層18aや光学部材70での光の吸収や損失も少なく、明るくコントラストの高い映像が得られる。また、酸化マグネシウム基板18b、70bはそれぞれ、上記のように立方晶構造であるため、偏光素子層18a、70aの透過軸(吸収軸)の方向に対しても方向性はなく、このため、組込時、該偏光素子層18a、70aの透過軸(吸収軸)に対する方向合わせ作業は不要となるし、また、酸化マグネシウム基板70bは、視野角補償素子層70cに対しての方向合わせ作業も不要となる。また、該酸化マグネシウム基板18b、70bは、その良好な熱伝導性に基づく放熱により、入射側偏光板18や光学部材70の温度上昇を抑える。また、該酸化マグネシウム基板18b、70bは、サファイア基板などに比べて製造し易く、低コスト化が可能である。さらに、入射側偏光板18、光学部材70はそれぞれ、保護層30を設けてあるため、例えば、高温多湿の環境下においても、酸化マグネシウム基板18b、70b側への酸などの浸入が阻止される。この結果、該酸化マグネシウム基板18b、70bの酸などによる侵食や白濁化などの光学部材の劣化が防止される。これによって、光学部材としての信頼性向上、長寿命化が図られ、高画質の映像表示が可能となる。
上記図8の構成において、入射側偏光板18、光学部材70のいずれか一方または両方は、基板として、立方晶構造の光透過性基板であって、酸化マグネシウムと略同等以上の熱伝導率を有し、略同等以上の作用・効果が得られる基板であれば、酸化マグネシウム基板以外の基板を用いてもよい。さらに、入射側偏光板18、光学部材70のいずれか一方は、酸化マグネシウム等の立方晶構造の光透過性基板を用いない構成であってもよい。
図9は、図8の配置構成を用いた投射型映像表示装置の構成例図である。
図9において、70R、70G、70Bはそれぞれ、R光、G光、B光用の光学部材であって、それぞれが上記図7に示した構成を有している。他の符号は、上記図3における構成や図6における構成の場合と同様である。光学部材70R、70G、70Bはそれぞれ、上記図7に含まれる範囲の構成を備えているものとする。本図9の構成でも、光源1から投射レンズユニット23までの諸構成要素は、投射型映像表示装置における光学ユニットを構成している。
かかる構成において、R光用の映像表示素子19Rの入射側偏光板18Rに入射したR光のS偏光光は、該入射側偏光板18Rにおいて該入射側偏光板18Rの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、R光用の映像表示素子19Rに照射される。該映像表示素子19Rでは、該R光のS偏光光が透過時に映像信号に基づいて変調され、R光のP偏光光の光学像を形成した光(光学像光)となって出射される。映像表示素子19Rから出射されたR光のP偏光光(光学像光)は、光学部材70Rに入射し、該光学部材70Rで光の位相差を補償されるとともに偏光方向を揃えられた後、ダイクロイックプリズム22側に出射される。
また、G光用の映像表示素子19Gの入射側偏光板18Gに入射したG光のS偏光光は、該入射側偏光板18Gにおいて該入射側偏光板18Gの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、G光用の映像表示素子19Gに照射される。該映像表示素子19Gでは、該G光のS偏光光が透過時に映像信号に基づいて変調され、G光のP偏光光の光学像を形成した光(光学像光)となって出射される。映像表示素子19Gから出射されたG光のP偏光光(光学像光)は、光学部材70Gに入射し、該光学部材70Gで光の位相差を補償されるとともに偏光方向を揃えられた後、ダイクロイックプリズム22側に出射される。
同様に、B光用の映像表示素子19Bの入射側偏光板18Bに入射したB光のS偏光光は、該入射側偏光板18Bにおいて該入射側偏光板18Bの透過軸方向のものが透過されることで偏光方向を揃えられ、B光用の映像表示素子19Bに照射される。該映像表示素子19Bでは、該B光のS偏光光が透過時に映像信号に基づいて変調され、B光のP偏光光の光学像を形成した光(光学像光)となって出射される。映像表示素子19Bから出射されたB光のP偏光光(光学像光)は、光学部材70Bに入射し、該光学部材70Bで光の位相差を補償されるとともに偏光方向を揃えられた後、ダイクロイックプリズム22側に出射される。
図9において、他の部分の作用は上記図3における構成や図6における構成の場合と同様である。なお、図9の構成例でも、偏光変換素子5からは、偏光変換の結果、S偏光光が出射されるようにしたが、これに限らず、P偏光光が出射されるようにしてもよい。
上記図7〜図9を用いて述べた第3の実施形態によれば、酸化マグネシウム基板は立方晶構造を有するため、複屈折や、直線偏光の楕円偏光への変化もないため、光の吸収や損失も少なく、明るくコントラストの高い映像表示を可能にする。また、偏光板18や光学部材70との組込時、酸化マグネシウム基板の、偏光素子層の透過軸(吸収軸)や視野角補償素子層に対しての方向合わせの調整が不要となり、組込みの作業性を高められる。酸化マグネシウム基板自体は製造し易いため、製造コストの低減化も可能となる。また、該酸化マグネシウム基板は、熱伝導性が良好なため、偏光板や光学部材に発生した熱を有効に放熱され、温度上昇が抑えられる。さらに、偏光板は、保護層30を備えた構成であるため、例えば、高温多湿の環境下などにおいても、酸などによる酸化マグネシウム基板の侵食や白濁化などの光学部材の劣化を防止することができ、信頼性向上や長寿命化を図ることができる。これによって、光学ユニットや投射型映像表示装置においても、信頼性向上、長寿命化、高画質の映像表示、コスト低減などが可能となる。特に、本第3の実施形態では、光学部材として、1枚の基板上に偏光素子層と視野角補償素子層とを形成してあるため、小型・コンパクトな構成で偏光処理と視野角補償処理とを行うことができる。
なお、上記各実施形態では、視野角補償板または視野角補償素子層を有する光学部材は、映像表示素子の光出射側に配する構成としたが、これに限らず、映像表示素子の光入射側に配するようにしてもよいし、光入射側と光出射側の両方に配するようにしてもよい。また、上記各実施形態では、投射型映像表示装置として、映像表示素子を3個用いるものにつき説明したが、本発明はこれには限定されず、例えば映像表示素子を1個用いる構成のものであってもよい。
第1の実施形態における偏光板の構成例図である。 第1の実施形態における偏光板の配置例図である。 第1の実施形態における投射型映像表示装置の構成例図である。 第2の実施形態における偏光板の構成例図である。 第2の実施形態における偏光板及び視野角補償板の配置例図である。 第2の実施形態における投射型映像表示装置の構成例図である。 第3の実施形態における光学部材の構成例図である。 第3の実施形態における偏光板及び光学部材の配置例図である。 第3の実施形態における投射型映像表示装置の構成例図である。
符号の説明
1…光源、
2…リフレクタ、
3…第1のアレイレンズ、
4…第2のアレイレンズ、
5…偏光変換素子、
6…集光レンズ、
7、8、9、10…反射ミラー、
11、12…ダイクロイックミラー、
13R、13G、13B…コンデンサレンズ、
15、16…リレーレンズ、
18a、21a、70a…偏光素子層、
18b、21b、50b、70b…酸化マグネシウム基板、
19、19R、19G、19B…映像表示素子、
18、18R、18G、18B…入射側偏光板、
21…偏光板(または出射側偏光板)、
21R、21G、21B…出射側偏光板、
22…ダイクロイックプリズム、
23…投射レンズユニット、
26…入射偏光光、
27…冷却用ファン、
28…冷却用空気の流路、
30…保護層、
31、33…酸化アルミニウム層、
32、34…フッ化マグネシウム層、
35…絶縁体層、
40…粘着層、
50、50R、50G、50B…視野角補償板、
50a、70c…視野角補償素子層、
70、70R、70G、70B…光学部材、
100…駆動回路。

Claims (9)

  1. 投射型映像表示装置において映像表示素子に対し光の入射側、出射側のいずれか一方または両方に配される光学部材であって、
    立方晶構造の光透過性の基板上に、所定の偏光方向の光を通す偏光素子または光の位相差を補償する視野角補償素子の少なくとも一方を形成する素子層と、
    粘着材から成り、上記素子層を上記基板に固定する粘着層と、
    無機材から成り、上記粘着層と上記基板との間に形成され、該粘着層の加水反応による酸から上記基板を保護する保護層とを備え
    上記保護層は、第1の物質で構成された第1の層と、第2の物質で構成され該第1の層を保護する第2の層とを備えて成る
    ことを特徴とする光学部材。
  2. 上記保護層は、上記第1の層がフッ化マグネシウムの層であり、上記第2の層が酸化アルミニウムの層である請求項1に記載の光学部材。
  3. 上記保護層は、上記粘着層側に上記粘着層の影響を抑える第3の物質で構成された第3の層を有する構成である請求項1または請求項2に記載の光学部材。
  4. 上記保護層は、上記第3の層の上記第3の物質が二酸化ケイ素である請求項に記載の光学部材。
  5. 上記光透過性の基板は、酸化マグネシウムで構成される請求項1に記載の光学部材
  6. 上記光透過性の基板の一方の面側には上記偏光素子が配され、他方の面側には上記視野角補償素子が配されている請求項1に記載の光学部材
  7. 光源側からの光を映像表示素子に照射し映像信号に基づき変調して光学像を形成する投射型映像表示装置用の光学ユニットであって、
    上記光源側からの光から赤、緑、青の各色光を分離する色分離手段と、
    請求項1から6のいずれかに記載の光学部材と、
    上記映像表示素子で形成された赤、緑、青の各色光の光学像を色合成する色合成手段と、
    上記色合成された光学像を拡大投射する投射レンズユニットと、
    を備えたことを特徴とする光学ユニット
  8. 光源側からの光を映像表示素子に照射し映像信号に基づき変調して光学像を形成する投射型映像表示装置であって、
    上記光源側の光から赤、緑、青の各色光を分離する色分離手段と、
    請求項1から6のいずれかに記載の光学部材と、
    上記映像表示素子を映像信号に基づき駆動する駆動回路と、
    上記映像表示素子で形成された赤、緑、青の各色光の光学像を色合成する色合成手段と、
    上記色合成された光学像を拡大投射する投射レンズユニットと、
    を備えたことを特徴とする投射型映像表示装置。
  9. 上記色分離手段には、上記光源側からの光の偏光方向を揃えた所定の偏光光が入射され、上記光学部材には、色分離された偏光光が入射される請求項8に記載の投射型映像表示装置。
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