JP4649696B2 - 非水電解液二次電池用電極の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解液二次電池の、とくにその電極の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、民生用電子機器のポータブル化、コードレス化が進んでいる。従来これら電子機器の駆動用電源としての役割を、ニッケルカドミウム電池あるいは密閉型小型鉛蓄電池が担っていたが、ポータブル化、コードレス化が定着するに従い駆動用電源となる二次電池の高エネルギー密度化、小型軽量化の要望が強くなっている。また近年はノート型パソコンの急速な市場の拡大に代表されるように高率充放電が可能な電池が要望されている。
【0003】
このような状況から、高い充放電電圧を示すリチウム二次電池、例えば特開昭63−59507号公報に示されているものではLiCoO2を正極活物質に用い、リチウムイオンの挿入、脱離を利用した非水電解液二次電池が開示されている。
【0004】
非水電解液二次電池用正極極板の製造方法は、正極活物質、導電剤、結着剤を溶媒中で混練してペースト化し、ペーストを金属集電体に塗布して乾燥させた後、圧延して極板を作成するのが一般的である。負極においては、負極活物質と結着剤を溶媒中で混練してペースト化し、ペーストを金属集電体に塗布して乾燥させた後、圧延して極板を作成するのが一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の構成では、電池を充放電した際に活物質の膨張・収縮によって、活物質合剤と金属集電体の間で密着性が悪くなった。このため活物質合剤と金属集電体との接触抵抗が増大し、充放電サイクル特性を低下させるという欠点を有していた。
【0006】
これらの課題を解決するため例えば特開平7−6752号公報に示されているものでは電極を加圧成形後、熱処理を行うことによって活物質合剤と金属集電体の結着力を強くする方法が開示されている。しかし結着剤としてPTFEやFEPを用いた場合これらの方法では、加圧成形後に熱処理を行うことによって活物質合剤が金属集電体から再び浮き出し、活物質合剤と金属集電体の間で密着性が悪くなった。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、金属集電体と金属集電体に塗布された活物質合剤との結着力に優れ、充放電サイクル寿命特性の良好な非水電解液二次電池を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、LiCoO 2 、LiNiO 2 、LiMnO 2 、LiMn 2 O 4 のいずれかであるリチウム含有複合酸化物を主構成材料とし、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)から選ばれる少なくとも1つである結着剤を含むペーストをアルミニウム箔からなる金属集電体に塗布して電極とし、ついで前記電極を乾燥後350℃で15分間熱処理した後、圧延する電極の製造法であり、電極の熱処理温度を前記結着剤の融点よりも高温で、かつ前記金属集電体が軟化する温度よりも高温とし、前記アルミニウム箔に前記リチウム含有複合酸化物を主構成材料とする活物質合剤を食い込ませるものである。
【0009】
このような構成とすることにより、極板中に存在する結着剤が融点以上の温度で溶融し、活物質合剤と金属集電体との界面に結着剤が均一に分散する。このことによって、活物質合剤と金属集電体との結着力を向上させることができる。
【0010】
また電極を金属集電体が軟化する温度以上に熱処理を行った後に圧延工程を行うことによって、柔らかくなった金属集電体に活物質合剤が物理的に食い込みやすくなり、さらに活物質合剤と金属集電体の結着力を向上させることができる。よって非水電解液二次電池を上記のような構成とすることにより、金属集電体と金属集電体に塗布された活物質合剤との結着力を向上させることが可能となる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面とともに説明する。
【0012】
(実施例1)
図1に本実施例で用いた円筒形電池の縦断面図を示す。図1において1は耐有機電解質性のステンレス鋼板を加工した電池ケース、2は安全弁を設けた封口板、3は絶縁パッキングを示す。4は極板群であり、これは正極板5および負極板6がセパレータ7を介して複数回渦巻状に巻回されている。そして正極板5からは正極リード5aが引き出されていて封口板2に接続され、負極板6からは負極リード6aが引き出されていて電池ケース1の底部に接続されている。8は絶縁リングで、極板群4の上下にそれぞれ設けられている。以下、正極板5、負極板6、電解液等について詳しく説明する。
【0013】
正極板5は正極活物質であるLiCoO2の粉末100重量部に、アセチレンブラック5重量部、フッ素系樹脂のPTFE10重量部を混合し、これをカルボキシメチルセルロースの水溶液に混濁させてペースト状にした。このペーストをアルミニウム箔の両面に塗着、乾燥後350℃で15分間熱処理を行った。このものをロールプレス機によって0.17mmに圧延し、幅35mm、長さ250mmに切り出した。ここで、アルミニウム箔の軟化温度は約100℃である。
【0014】
負極板6は、コークスを加熱処理して得た炭素粉末100重量部に、スチレン系結着剤10重量部を混合し、これをカルボキシメチルセルロースの水溶液に懸濁させてペースト状にした。そしてこのペーストを厚さ0.015mmの銅箔の表面に塗着、110℃で乾燥後厚さ0.2mmに圧延し、幅37mm、長さ280mmの大きさに切り出した。
【0015】
正極板、負極板にそれぞれリード5a、6aを取り付け、セパレータを介して渦巻状に巻回して、直径13.8mm、高さ50mmの電池ケースに挿入した。
【0016】
電解液には、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの等容積混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム1mol/lの割合で溶解したものを用い、その所定量を電池ケース内に注入した後、ケース開口部を密封口し電池とした。
【0017】
(比較例1)
熱処理の温度をPTFEの融点以下である150℃で15分間行ったこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
【0018】
(比較例2)
熱処理工程を圧延工程よりも後に行ったこと以外は、実施例1と同様な方法により電池を作成した。
【0019】
(実施例2)
正極活物質であるLiCoO2の粉末100重量部に、アセチレンブラック5重量部、フッ素系樹脂のFEP10重量部を混合し、これをカルボキシメチルセルロースの水溶液に混濁させてペースト状にした。このペーストをアルミニウム箔の両面に塗着、乾燥後300℃で15分間熱処理を行った。このものをロールプレス機によって0.17mmに圧延し、幅35mm、長さ250mmに切り出した。この電極を用いて実施例1と同様の電池を作成した。
【0020】
(比較例3)
熱処理の温度をFEPの融点以下である150℃で15分間行ったこと以外は、実施例2と同様な方法により電池を作成した。
【0021】
(比較例4)
熱処理工程を圧延工程よりも後に行ったこと以外は、実施例2と同様な方法により電池を作成した。
【0022】
(参考例1)
正極板は、LiCoO2の粉末100重量部に、アセチレンブラック5重量部、スチレン系結着剤10重量部を混合し、これをカルボキシメチルセルロースの水溶液に混濁させてペースト状にした。このペーストをアルミニウム箔の両面に塗着、110℃で乾燥後ロールプレス機によって0.17mmに圧延し、幅35mm、長さ250mmに切り出した。
【0023】
負極板は、コークスを加熱処理して得た炭素粉末100重量部に、フッ素系樹脂のPTFE10重量部を混合し、これをカルボキシメチルセルロースの水溶液に懸濁させてペースト状にした。そしてこのペーストを厚さ0.015mmの銅箔の表面に塗着、乾燥後350℃で15分間熱処理を行った。このものを厚さ0.2mmに圧延し、幅37mm、長さ280mmの大きさに切り出した。
【0024】
(比較例5)
熱処理の温度をPTFEの融点以下である150℃で15分間行ったこと以外は、参考例1と同様な方法により電池を作成した。
【0025】
(比較例6)
熱処理工程を圧延工程よりも後に行ったこと以外は、参考例1と同様な方法により電池を作成した。
【0026】
(参考例2)
コークスを加熱処理して得た炭素粉末100重量部に、フッ素系樹脂のFEP10重量部を混合し、これをカルボキシメチルセルロースの水溶液に懸濁させてペースト状にした。そしてこのペーストを厚さ0.015mmの銅箔の表面に塗着、乾燥後300℃で15分間熱処理を行った。このものを厚さ0.2mmに圧延し、幅37mm、長さ280mmの大きさに切り出した。この電極を用いて参考例1と同様の電池を作成した。
【0027】
(比較例7)
熱処理の温度をFEPの融点以下である150℃で15分間行ったこと以外は、参考例2と同様な方法により電池を作成した。
【0028】
(比較例8)
熱処理工程を圧延工程よりも後に行ったこと以外は、参考例2と同様な方法により電池を作成した。
【0029】
以上のように構成された各電池について次のようなテープ剥離試験と充放電サイクル寿命試験を行った。
【0030】
テープ剥離試験は極板を適当な大きさに切断し、5mm間隔で水平方向および垂直方向にそれぞれカッターナイフで傷を付け、その後セロテープで剥離し、剥離後の残った活物質合剤の重量を測定して活物質合剤と集電体の結着力を評価した。
【0031】
充放電サイクル試験は充電を環境温度20℃で充電電圧4.2V、制限電流500mA、充電時間2時間の定電流・定電圧充電とし、放電を20℃で放電電流1000mA、放電終始電圧3.0Vの定電流放電として充放電サイクルを100回繰り返し、1回目の充放電容量と100回目の充放電容量を比較し、1回目の容量に対する100回目の容量の比で放電容量維持率を計算した。
【0032】
これらの評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1において、正極の結着剤としてPTFEを用いた本実施例1は比較例1、比較例2に比べ、テープ剥離試験でアルミニウム集電体に残った活物質合剤が多かった。このことにより本発明の非水電解液二次電池用極板の製造方法により得られた極板は、金属集電体と活物質合剤の結着力が強いことがわかる。また本実施例1において電池のインピーダンス(1kHzの交流で測定した抵抗値)は、充放電サイクルを行った後でも大きな変化が見られなかった。これに対し比較例1、比較例2は充放電サイクル後のインピーダンスが著しく増加していた。
【0035】
正極の結着剤としてFEPを用いた場合もほぼ同様の結果となった。本実施例2はテープ剥離試験でアルミニウム集電体に残った活物質合剤が比較例3、比較例4に比べ多かった。また本実施例2は充放電サイクル後も電池のインピーダンスが大きくなっていなかった。これに対し比較例3、比較例4は充放電サイクル後のインピーダンスが著しく増加していた。
【0036】
表1において、負極の結着剤としてPTFEを用いた参考例1は比較例5、比較例6に比べ、テープ剥離試験で銅箔に残った活物質合剤が多かった。このことにより参考例の非水電解液二次電池用極板の製造方法により得られた極板は、金属集電体と活物質合剤の結着力が強いことがわかる。また参考例1において電池のインピーダンスは、充放電サイクルを行った後でも大きな変化が見られなかった。これに対し比較例5、比較例6は充放電サイクル後のインピーダンスが著しく増加していた。
【0037】
負極の結着剤としてFEPを用いた場合もほぼ同様の結果となった。参考例2はテープ剥離試験で銅箔に残った活物質合剤が比較例7、比較例8に比べ多かった。また参考例2は充放電サイクル後も電池のインピーダンスが大きくなっていなかった。これに対し比較例7、比較例8は充放電サイクル後のインピーダンスが著しく増加していた。
【0038】
以上の結果から非水電解液二次電池用電極を製造する方法において、電極を熱処理するときの温度が結着剤の融点よりも高温で、かつ電極の金属集電体が軟化する温度よりも高温で熱処理し、さらにこの熱処理工程を圧延工程よりも前に行うことにより、金属集電体と活物質合剤の結着力を強くできることがわかる。
【0039】
また、本実施例および参考例において金属集電体は、アルミニウム箔と銅箔を用いて評価を行ったが、ステンレス箔を用いても同様の効果が得られた。
【0040】
さらに、本実施例においてリチウムと可逆的に反応する正極材料として、LiCoO2を用いたが、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4等の含リチウム複合酸化物を用いても同様の効果が得られた。
【0041】
さらに、上記各参考例において、リチウムと可逆的に反応する負極材料として、コークスを用いたが、黒鉛系,非晶質系等の炭素材料を用いても同様の効果が得られた。
【0042】
さらに、上記各実施例および参考例において、円筒形電池を用いて評価を行ったが、角形など電池形状が異なっても同様の効果が得られた。
【0043】
さらに、上記各実施例および参考例においては電解質として六フッ化リン酸リチウムを用いたが、他のリチウム塩、例えば過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム等でも同様の効果が得られた。
【0044】
さらに、上記各実施例および参考例において、電解質の塩濃度を1mol/lとしたが、塩濃度を0.5〜2.0mol/lのものを用いても同様の効果が得られた。
【0045】
さらに、上記各実施例および参考例において、電解液として炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合溶媒を用いたが、他の非水溶媒例えば、プロピレンカーボネートなどの環状エステル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル、プロピオン酸メチルなどの鎖状エステルなどの非水溶媒や、これら多元系混合溶媒を用いても同様の効果が得られた。
【0046】
【発明の効果】
以上のように本発明は、非水電解液二次電池用電極において、電極を熱処理するときの温度が結着剤の融点よりも高温で、かつ電極の金属集電体が軟化する温度よりも高温で熱処理し、さらにこの熱処理工程を圧延工程よりも前に行うことにより、金属集電体と活物質合剤の結着力を強くすることができ、優れた充放電サイクル特性を有する電池を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例における円筒形電池の構成を示す断面構成図
【符号の説明】
1 電池ケース
2 封口板
3 絶縁パッキング
4 極板群
5 正極板
5a 正極リード
6 負極板
6a 負極リード
7 セパレータ
8 絶縁リング
Claims (1)
- LiCoO 2 、LiNiO 2 、LiMnO 2 、LiMn 2 O 4 のいずれかであるリチウム含有複合酸化物を主構成材料とし、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)から選ばれる少なくとも1つである結着剤を含むペーストをアルミニウム箔からなる金属集電体に塗布して電極とし、ついで前記電極を熱処理した後、圧延する電極の製造法であり、電極の熱処理温度を前記結着剤の融点よりも高温で、かつ前記金属集電体が軟化する温度よりも高温である300〜350℃とし、熱処理時間を15分間として、前記アルミニウム箔に前記リチウム含有複合酸化物を主構成材料とする活物質合剤を食い込ませることを特徴とする非水電解液二次電池用電極の製造方法。
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