JP4644336B2 - アルカリ蓄電池用正極の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ蓄電池用正極の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、アルカリ蓄電池は、ポータブル機器や携帯機器などの電源として、また電気自動車やハイブリッド電気自動車等に至る移動用電源として注目されており、従来にも増して高性能化が要請されている。たとえば、水酸化ニッケルを主体とした活物質からなる正極と、水素吸蔵合金を主材料とした負極とを備えるニッケル水素二次電池は、エネルギー密度が高く信頼性に優れた二次電池として急速に普及している。
【0003】
上記アルカリ蓄電池では、正極として、水酸化ニッケル粒子を主成分とする正極活物質を金属多孔体シートに充填した極板が用いられている。この極板は、金属多孔体シートに正極活物質ペーストを充填したのち、ロールプレス機などでプレスすることによって、厚みを調整している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
アルカリ蓄電池用正極では、活物質が充填される金属多孔体シートの空孔は、略真球状であることが、高寿命化や活物質の充填性向上に有効である。しかしながら、上記従来の正極では、ロールプレス機でプレスする際に、金属多孔体シートの空孔の扁平率が高くなるという問題があった。
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、正極活物質の充填性が良好で、電池の長寿命化が図れるアルカリ蓄電池用正極を製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ蓄電池用正極の製造方法は、長軸が略一方向に配列した複数の扁平な空孔を備える第1の金属多孔体シートに正極活物質ペーストを充填する第1の工程と、第1の工程を経た第1の金属多孔体シートを、上記一方向とロールプレス機のロールの回転軸の方向とが略一致する状態でロールプレス機を用いてプレスすることによって、空孔の縦横比(空孔の縦方向の径を空孔の横方向の径で除した値である。ただし、プレスの際にロールプレス機のロールの回転軸と平行な方向を金属多孔体シートの縦方向とする。)の平均が0.9〜1.1の範囲内である第2の金属多孔体シートを備える正極シートを作製する第2の工程とを含むことを特徴とする。上記製造方法では、正極に含まれる金属多孔体シートの空孔の縦横比が1または1の近傍となる。このため、上記製造方法によって製造された正極を用いたアルカリ蓄電池では、充放電時における反応が略均一に起こり、長寿命となる。また、上記製造方法によって製造された正極は、活物質の充填性が向上する。
【0007】
上記製造方法では、第1の工程の前に、複数の空孔を備える金属多孔体シートをロールプレス機を用いてプレスすることによって第1の金属多孔体シートを作製する予備工程をさらに備えることが好ましい。上記構成では、予備工程のプレス条件や用いる金属多孔体シートを変えることによって、様々な形状の空孔を備える第1の金属多孔体シートを形成できる。したがって、上記構成によれば、第1および第2の工程における条件の制約が少なくなる。
【0008】
上記製造方法では、第2の工程において、第1の金属多孔体シートは、予備工程においてロールプレス機を通過した方向から第1の金属多孔体シートの主面に垂直な軸を回転軸として略90゜回転してロールプレス機を通過させることが好ましい。上記構成によれば、本発明の製造方法の実施が容易になる。なお、本発明において、略90゜回転とは、シートの縦方向と横方向とを入れ替えることを意味する。
【0009】
また、上記予備工程および第2の工程におけるプレス工程は、一度のプレスで行ってもよいし、複数回のプレスで行ってもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
本発明のアルカリ蓄電池用正極の製造方法では、まず、長軸が略一方向に配列した複数の空孔を備える金属多孔体シート(第1の金属多孔体シート)に正極活物質ペーストを充填する(第1の工程)。
【0012】
その後、正極活物質ペーストが充填された第1の金属多孔体シートを、上記一方向(長軸が配列している方向)とロールプレス機のロールの回転軸の方向とが略一致する状態で、ロールプレス機を用いてプレスすることによって、空孔の縦横比(空孔の縦方向の径を空孔の横方向の径で除した値である。ただし、プレスの際にロールプレス機のロールの回転軸と平行な方向を金属多孔体シートの縦方向とする。)の平均が0.9〜1.1の範囲内である第2の金属多孔体シートを備える正極シートを作製する(第2の工程)。
【0013】
その後、正極シートを所定の大きさに切断して正極を作製する。なお、上記工程の間に金属多孔体シートにリード(集電体)を溶接する工程がさらに含まれる。
【0014】
上記第1の工程に用いられる第1の金属多孔体シートは、長軸が略一方向に配列した複数の空孔を含む。そして、その空孔は、金属多孔体シートの主面と略平行な断面における断面形状が略楕円形である。また、その空孔は、縦横比(長軸が配列している方向を縦とする。)の平均が、たとえば、1.3〜1.5程度である。なお、上記縦横比は、第2の工程におけるロールプレスの条件によって好ましい値が異なる。
【0015】
上記第1の工程に用いられる第1の金属多孔体シートは、たとえば、複数の空孔を備える金属多孔体シートをロールプレス機を用いてプレスすることによって作製できる(予備工程)。このとき、ロールプレスの条件を変化させることによって、空孔の縦横比を変化させることができる。
【0016】
上記第1の工程において用いられる正極活物質は、アルカリ蓄電池に一般に用いられるものを用いることができる。具体的には、たとえば、コバルトなどを添加した水酸化ニッケル粒子を用いることができる。
【0017】
上記第1の工程に用いられるローラプレス機のローラ径は、たとえば、50mmφ〜1000mmφである。
【0018】
上記第2の工程において、上記第1の金属多孔体シートは、上記予備工程においてプレスされた方向から略90゜回転されてプレスされることが好ましい。すなわち、第1の金属多孔体シートは、予備工程においてロールプレス機を通過した方向から第1の金属多孔体シートの主面に垂直な軸を回転軸として略90゜回転してロールプレス機を通過させることが好ましい。
【0019】
上記第2の工程に用いられるローラプレス機のローラ径は、たとえば、50mmφ〜1000mmφであり、好ましくは、500mmφ〜1000mmφである。予備工程においては、最適な縦横比まで空孔を伸ばす必要があるため、多孔体シートの伸ばし方に応じて予備工程で用いられるローラプレス機のローラ径を変える。第2の工程においては、多孔体シートが切れることを防止するため、比較的ローラ径が大きいローラプレス機を用いる。
【0020】
上記製造方法では、縦横比が0.9〜1.1である空孔を備える金属多孔体シートと、上記金属多孔体シートに充填された正極活物質とを備える正極を製造できる。したがって、上記製造方法によれば、正極活物質の充填性が良好で、電池の長寿命化が図れるアルカリ蓄電池用正極を製造できる。また、上記製造方法によれば、正極活物質の充填性がよい正極を製造できる。さらに、上記製造方法では、予備工程の条件を変化させることによって、第1の金属多孔体シートの形状を変化させることができ、第1の工程において充填される正極活物質の量を容易に制御できる。さらに、上記製造方法では、予備工程および第2の工程の条件を変化させることによって、得られる正極シートの形状を変化させることができ、この正極を用いたアルカリ蓄電池の出力と容量とのバランスを容易に制御できる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
まず、金属多孔体シート10(シート状の発泡ニッケル)を用意した。金属多孔体シート10には、厚み2.0mm、多孔度97%、空孔の縦横比が1.0程度の構造を有するものを用いた。この金属多孔体シート10を図1(a)に示すように、ロールプレス機を用いてプレスを行い、金属多孔体シート20を形成した(予備工程)。プレスの条件は、ロール21の径が100mmφ、プレス圧3920N/cm2(400kgf/cm2)、クリアランス1.0mm、プレス速さ10m/分であった。ロールプレス前後の金属多孔体シート10および20の状態を図2に模式的に示す。このとき、ロールプレス機のロール21の回転軸21aと平行な方向を金属多孔体シート10および20のA方向とすると、金属多孔体シート10は、A方向に垂直なB方向に主に圧延された。このため、金属多孔体シート20の空孔20aは、B方向に伸びた扁平な形状となった。このとき、空孔20aの縦横比(A方向の径をB方向の径で除した値)の平均は、約0.7であった。なお、空孔の縦横比は、空孔の形状が電気抵抗に反映されるため、電気抵抗の縦横比から算出できる。具体的な算出方法については後述する。
【0023】
その後、予備工程を経た金属多孔体シート20に正極活物質スラリを充填し、乾燥して金属多孔体シート30を得た(第1の工程)。正極活物質スラリには、水酸化ニッケルを主成分として用いた。充填量は、シート1枚につき、19.0g〜21.0gとした。正極活物質スラリは、シートの上下面から吐出する方法(水平充填)で、金属多孔体シート20に充填した。
【0024】
その後、図1(b)に示すように、上記金属多孔体シート30を、再びロールプレス機を用いて圧延することによって、正極シート40を得た(第2の工程)。このときのプレスの条件は、プレス径800mmφ、プレス圧2940N/cm2(300kgf/cm2)、クリアランス0.5mm、プレス速さ10m/分とした。第2の工程を図3に模式的に示す。第2の工程の際に、金属多孔体シート30を、予備工程においてロールプレス機を通過した方向から金属多孔体シート30の主面に垂直な軸を回転軸として略90゜回転してロールプレス機を通過させる(図2のB方向が図3の縦方向になる)。すなわち、ロールプレス機のロール31の回転軸31aを縦方向とすると、金属多孔体シート30の空孔30aの縦横比の平均は、略1.4(0.7の逆数とほぼ等しい)であった。ロール31の回転軸31aを金属多孔体シート30および正極シート40の縦方向とすると、正極シート40の空孔(正極活物質が充填されている)40aの縦横比(縦方向の径を横方向の径で除した値)の平均は、約1.0となった。
【0025】
その後、上記正極シートを所定の大きさに切断し、正極を得た。
【0026】
次に、上記方法と同様の方法で金属多孔体の空孔の縦横比が異なる様々な正極を作製した。空孔の縦横比は、正極シート作製時の引張テンションを変更することによって調整した。そして、空孔の縦横比が異なる正極を用いてニッケル水素二次電池を作製した。負極には、水素吸蔵合金電極を用いた。セパレータには、ポリプロピレン製不織布を用いた。電解液には、KOH、NaOH、LiOHの混合溶液を用いた。そして、常法に従って、定格容量が6.5Ahの電池を作製した。このようにして得られた電池について、サイクル試験を行って出力の変化を測定した。サイクル試験は、35℃で2C充電を行ったのち、35℃で2C放電を行う充放電サイクルを1サイクルとした。測定結果を図4に示す。
【0027】
図4の縦軸は、空孔の縦横比が1の正極を用いたニッケル水素二次電池の出力を100としたときの相対値である。
【0028】
図4から明らかなように、空孔の縦横比が1である正極を用いた電池と比較して、空孔の縦横比が0.8、1.34または1.48である正極を用いた電池は充放電サイクルの経過によって出力が大きく低下した。このように、空孔の縦横比が1に近い正極を用いることによって、寿命が向上することがわかった。
【0029】
以下、金属多孔体シートの空孔の縦横比を算出する方法について説明する。まず、金属多孔体シート20から、縦方向(A方向)×横方向(B方向)が15cm×1cmの縦方向サンプルと1cm×15cmの横方向サンプルとを切り出した。次に、それぞれのサンプルについて、電気抵抗を測定した。電気抵抗の測定では、まず、図5に示すように、各サンプルの両端に電極端子SAおよびSDを形成し、両端から2.5cmの位置に電極端子SBおよびSCを形成した。SBおよびSCの間隔は10cmである。そして、電極端子SAと電極端子SDとの間に1Aの電流を流したときの電極端子SBおよびSC間の電圧を測定し、電気抵抗を計算した。そして、縦方向サンプルの電気抵抗と横方向サンプルの電気抵抗との比を計算し、これを空孔の縦横比とした。このようにして、空孔の縦横比を計算した。なお、他の金属多孔体シートについても同様の方法で空孔の縦横比を計算した。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用することができる。
【0031】
たとえば、本発明の製造方法は、上記実施の形態および実施例で説明した電池を製造する場合に限定されない。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のアルカリ蓄電池の製造方法によれば、正極活物質の充填性が良好で、電池の長寿命化が図れるアルカリ蓄電池用正極を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法について製造工程を模式的に示す斜視図である。
【図2】 本発明の製造方法について製造工程の一例を示す模式図である。
【図3】 本発明の製造方法について製造工程の他の一例を示す模式図である。
【図4】 本発明および従来の製造方法を用いて製造されたニッケル水素二次電池について充放電サイクルによる出力の変化を示すグラフである。
【図5】 本発明の製造方法において、空孔の縦横比を測定する方法を示す図である。
【符号の説明】
10、20、30 金属多孔体シート
20a、30a、40a 空孔
21、31 ローラ
21a、31a 回転軸
40 正極シート

Claims (3)

  1. 長軸が略一方向に配列した複数の扁平な空孔を備える第1の金属多孔体シートに正極活物質ペーストを充填する第1の工程と、
    前記第1の工程を経た前記第1の金属多孔体シートを、前記一方向とロールプレス機のロールの回転軸の方向とが略一致する状態でロールプレス機を用いてプレスすることによって、第2の金属多孔体シートを備える正極シートを作製する第2の工程とを含み、
    前記第2の金属多孔体シートは、空孔の縦横比(空孔の縦方向の径を空孔の横方向の径で除した値である。ただし、プレスの際にロールプレス機のロールの回転軸と平行な方向を金属多孔体シートの縦方向とする。)の平均が0.9〜1.1の範囲内であることを特徴とするアルカリ蓄電池用正極の製造方法。
  2. 前記第1の工程の前に、複数の空孔を備える金属多孔体シートをロールプレス機を用いてプレスすることによって前記第1の金属多孔体シートを作製する予備工程をさらに備える請求項1に記載のアルカリ蓄電池用正極の製造方法。
  3. 前記第2の工程において、前記第1の金属多孔体シートは、前記予備工程においてロールプレス機を通過した方向から前記第1の金属多孔体シートの主面に垂直な軸を回転軸として略90゜回転してロールプレス機を通過させる請求項2に記載のアルカリ蓄電池用正極の製造方法。
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