JP4643936B2 - 血栓症改善剤 - Google Patents

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本発明は、抗血栓作用を有する新規な薬効成分ならびにこれを有効成分として含有する医薬品、食品に関する。本薬効成分は主として赤霊芝の水抽出物及び黒霊芝の溶媒分画精製物に含有する。
血小板は血栓形成において極めて重要な因子である。すなわち、血栓の形成は、血管内の損傷などに起因して、アラキドン酸などにより血小板の凝集能が高まり血栓形成に至るといわれている。血栓が大量に形成されると、その形成部位から先の血流が著しく悪くなり、組織に重大な障害を引き起こし、血栓症が起こる。
例えば、心臓や脳の血管に血栓が形成されると、心筋梗塞、脳梗塞を引き起こし、生命に危険をもたらす。また、重度の血栓ではなくても、正常状態よりも血栓の量が増加すると、動脈硬化、痴呆、血圧異常、めまい、肩こり、頭痛、腰痛、関節痛、目のかすみ、不眠、動悸、息切れ、血圧異常、不整脈などの症状を引き起こす。また、その他に血流の悪化によって起こりうる、くすみ、くまなどの症状も引き起こす。
従って、血栓の形成を防止し、血栓に起因する種々の疾患を治療するには血小板凝集を抑制することが有効である。
従来の血栓治療剤としては、アセチルサリチル酸、パナルジンなどが使用されている。最近では、天然物に薬効を望む傾向もあるが、現在に至るまで有効に予防や改善できる天然物はほとんど存在しなかった。
マンネンタケの代表としては、赤霊芝が一般的であり、従来技術として、マンネンタケの抗血栓効果が知られている(特許文献1)。この成分は、熱水に可溶であり、アルコールに不溶な成分であることが記載されている。また、霊芝の水溶性成分のアデノシンやその誘導体に血小板凝集抑制効果があることが知られている(非特許文献1)。しかし、赤霊芝と黒霊芝を併用して効果が増強することは一切報告されていなかった。
これらの文献は、赤霊芝の成分がほとんどであるが、黒霊芝の成分についても抗血栓効果に関する報告がある(特許文献2)。
特開昭57−112331号公報 特願2003−400191号公報 Shimizu.A,Chem.Pharm.Bull,Vol.33,3012−3015,1985
本発明は、血栓の形成や血栓による血行悪化を予防や改善できるような天然抽出物や、これを含有した医薬品、食品を提供することを目的とする。
この様な事情により、本発明者らは鋭意研究検討した結果、赤霊芝や黒霊芝を単独で用いるよりも赤霊芝の水抽出物と黒霊芝の溶媒分画精製物を併用することにより、相乗的に抗血栓効果が得られることを発見し、本発明を完成するに至った。
赤霊芝及び黒霊芝は、生薬「霊芝」に用いられる担子菌であり、マンネンタケ科(Ganodermataceae)、マンネンタケ属(Ganoderma)に属し、学名は、赤霊芝(赤芝、学名:Ganoderma lucidum)、黒霊芝(黒芝、学名:G.japonicum、G.sinense、G.atrum)といわれている。また、マンネンタケ属のキノコについては、中国の薬学古書である「本草綱目」や「神農本草経」には、黒霊芝(黒芝)のほか、赤霊芝(赤芝)、紫霊芝(紫芝)、青霊芝(青芝)、黄霊芝(黄芝)及び白霊芝(白芝)が存在すると記載されている。赤霊芝や黒霊芝は広く中国や日本市場などで流通しているものを用いることができるし、自生品や栽培品を用いても良い。
本発明に用いられる赤霊芝及び黒霊芝は、子実体、菌糸体、天産物、栽培物、及び培養物などを問わず使用することができる。また、必要に応じてそのままの状態、破砕物、或いは乾燥物などを適宜選択して抽出操作に付することができる。
抽出する溶媒として、赤霊芝は水抽出が良く、黒霊芝はエタノール又は含水エタノールが好ましい。
本発明の抽出物をさらに精製する方法として、互いに混合しない溶媒で液・液分配抽出により溶媒分画精製する。
液・液分配抽出に用いる溶媒として、溶媒抽出物(固形物)に含水エタノールとヘキサンを加えて抽出し、ヘキサン可溶分を除去した残液に酢酸エチルを加えて抽出することにより本発明の抽出物を精製することができる。また、酸や塩基による分別抽出を行うこともできる。
本発明の抽出物をさらに精製する方法として、マンネンタケ抽出物又は上記の溶媒分画物を吸着剤に吸着させ、溶媒により溶出させることにより、抽出物を精製することができる。
上記抽出物や精製物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、ろ過、活性炭などによる脱色、脱臭、エタノール沈殿などの処理をして用いても良い。更には、抽出や精製した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥などの処理を行い、乾燥物として用いても良い。
本発明の抗血栓剤には、上記抽出物や吸着剤などによる精製物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、希釈剤を用いることができ、希釈剤としては固体、液体、半固体でもよく、たとえば次のものがあげられる。すなわち、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、香料、保存料、溶解補助剤、溶剤などである。具体的には、乳糖、ショ糖、ソルビット、マンニット、澱粉、沈降性炭酸カルシウム、重質酸化マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロース又はその誘導体、アミロペクチン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、界面活性剤、水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、カカオ脂、ラウリン脂、ワセリン、パラフィン、高級アルコールなどである。
本発明の血栓症改善剤は、食品、医薬部外品又は医薬品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、経口用として散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤などである。非経口用として注射液にすることが出来る。また、座薬とすることも出来る。
本発明に用いる抽出物の摂取量は、投与形態、使用目的、年齢、体重などによって異なるが、赤霊芝と黒霊芝固形分の合計として、0.1〜5,000mg/日、好ましくは1〜500mg/日の範囲で1日1回から数回経口投与できる。もちろん前記したように、投与方法や投与量は種々の条件で変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要がある場合もある。また、製剤化における薬効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
本発明に用いる赤霊芝と黒霊芝の抽出物の配合比は、固形物の重量比で5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10である。
赤霊芝の水抽出物と黒霊芝の溶媒分画精製物を併用することにより、高い抗血栓効果が得られる。
本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、本発明の処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部を示し、%は重量%を示す。
製造例1 赤霊芝の水抽出物
赤霊芝子実体の乾燥物100gに精製水2Lを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して赤霊芝の水抽出物を6.0g得た。
製造例2 黒霊芝のエタノール抽出物
黒霊芝子実体の乾燥物1.5Kgにエタノール20Lを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、黒霊芝のエタノール抽出物を30g得た。
製造例3 黒霊芝の溶媒分画精製物
製造例2の黒霊芝のエタノール抽出物2.0gをエタノール350mLに溶解し、同容量の精製水とヘキサンを加えて抽出した。水層部分を1/2に濃縮し、同容量の酢酸エチルを加えて抽出した後、濃縮乾固し、酢酸エチル画分0.56gを得た。
血小板凝集抑制作用
文献(嘉久志寿人,四家勉,早崎洋子,松原尚志,内田清久,本間義春,川角浩,竹内良夫,日本薬理学雑誌,Vol.95,335−346,1990、Born,G.V.R.,Nature,Vol.194,927−929,1962)を参考に行った。
エーテル麻酔下でモルモットの心臓より3.8%クエン酸ナトリウム1容に対し血液9容の割合で採血し、室温で1,000rpm、15分遠心後上清を採取し多血小板血漿(Platelet−Rich Plasma:PRP)とした。残りの血液は室温で3,000rpm、15分遠心し乏血小板血漿(Platelet−Poor Plasma:PPP)を得、PRPとPPPを等量混合したもの(A液とする)を試験に用いた。
血小板凝集反応はBornの方法に準じて、血小板凝集計(NBS HEMA TRACER 601、二光バイオサイエンス)を用いて測定した。すなわちA液180マイクロLに試験試料溶液20マイクロLを加え、37℃で1分間撹拌(1,000rpm)予備加熱後血小板凝集惹起物質(ADP)22マイクロLを添加し、血小板の凝集により生じた透光度の変化を経時的に記録した。血小板の凝集率はPRP及びPPPの透光度をそれぞれ0%及び100%とし、凝集剤添加後の最大透光度を最大凝集率とした。血小板凝集阻害率は以下の式で算出した。
血小板凝集阻害率(%)={1−(凝集剤添加後の最大透光度)/(凝集剤添加前の最大透光度)}×100
赤霊芝の水抽出物と黒霊芝の溶媒分画精製物の併用による血小板凝集阻害作用は、以下の式で算出した。
併用効果(倍)=(赤霊芝の水抽出物と黒霊芝の溶媒分画精製物の併用による血小板凝集阻害率)/{(赤霊芝の抽出物による血小板凝集阻害率)+(黒霊芝の溶媒分画精製物による血小板凝集阻害率)}
これらの実験結果を表1及び表2に示した。その結果、本発明に用いた黒霊芝の溶媒分画精製物と赤霊芝の抽出物を併用することにより、単独での効果と比較して、血小板凝集阻害作用の相乗効果を示した。
Figure 0004643936
Figure 0004643936
赤霊芝の水抽出物と黒霊芝の溶媒分画精製物は、併用により高い抗血栓作用を有するため、食品、医薬部外品又は医薬品などに配合することにより、血栓症の予防や改善、血行悪化に起因する、動脈硬化、くすみ、痴呆、血圧異常、めまい、肩こり、頭痛、腰痛、関節痛の予防や改善などに有効である。

Claims (1)

  1. 赤霊芝の水抽出物及び黒霊芝の溶媒分画精製物を含有することを特徴とする血栓症改善剤。ただし、黒霊芝の溶媒分画精製物は、次の方法で製造する。
    黒霊芝のエタノール抽出物のエタノール溶液に、精製水とヘキサンを加えて抽出し、その水層に酢酸エチルを加えて抽出した後、酢酸エチル層を濃縮乾固して得られたものを黒霊芝の溶媒分画精製物とする。
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