JP7317309B2 - オートファジー性細胞死誘導剤 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 平成30年8月13日発行の藤田メディカルジャーナルにおいて公開
本発明は、薬学的組成物及びオートファジー性細胞死誘導剤に関し、特にオートファジーを誘導する因子としてアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)(センシンレン/穿心蓮/アンドログラフィスパニクラタ)を有する薬学的組成物またはオートファジー性細胞死誘導剤に関する。
アンドログラフィスパニクラタ(andrographis paniculata)(センシンレン)(穿心蓮)は植物の1つであり、キツネノマゴ科の一年生植物であり、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)(andrographolide)を含有している。
一方、オートファジー(Autophagy)とは、自食作用であり、生物が飢えると、細胞が自分自身の一部を消化する作用のことをいう。より詳しくは、オートファジーとは、細胞内で行われる分解作用。自食(じしょく)作用ともいい、不要になったたんぱく質やミトコンドリア、核や小胞体などに目印が付けられると、細胞内にできた膜がそれらを取り囲み、分解酵素を含むリソソームや液胞と融合することで分解している。1988年にこの現象を初確認し、仕組みを解明した東京工業大学の大隅良典(おおすみよしのり)栄誉教授は、2016年度ノーベル医学生理学賞を受賞した。オートファジーの過程がうまく働かないと、がんやアルツハイマー病、パーキンソン病や糖尿病など、さまざまな病気を発症することが知られ、近年、病気の発症を防ぐメカニズムとの関連も注目されている。
他方、アポトーシス(apoptosis)とは、細胞の死の様式の一つであり、個体発生の過程で、特定の細胞が特定の時期に死んで(プログラム細胞死)ある形態を形成するときなどに見られるものである。
上記アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、オートファジーを誘導するとは知られておらず、今回はじめて確かめられた。
特表2009-502955号公報 特表2009/119662号公報 特標2014-527055号公報 特許第5765687号公報 特表2016-501861号公報 特開2017-214302号公報 特開2018-83790号公報 国際公開2009/119662号
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、オートファジー誘導因子として新たな組成物及びオートファジー性細胞死誘導剤を提供することにある。
このため本発明の薬学的組成物は、オートファジー誘導因子としてアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を0.0001重量%乃至99.999重量%、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合した。
また、オートファジー性細胞死誘導剤として、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を有効成分として含有するようにした。アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)をセンシンレン抽出物として含有し、かつ抗ウイルス剤又は飲食品として適用される場合を含んでもよいし、含まなくてもよいし、除いてもよいし、除かなくてもよい。
これにより、この薬学的組成物またはオートファジー性細胞死誘導剤を飲用、添加または塗布等すれば、オートファジーを誘導させて、オートファジー性細胞死を誘導/誘起させることができる。非経口投与に適する形態としては、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与等があり、固形または液体の形態が挙げられ、非経口投与に適する製剤形態としては、注射剤、点滴剤、坐剤、外用剤、点眼剤、点鼻剤等の形態が挙げられる。
(1)アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)の抽出
アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、主にセンシンレン(穿心蓮/アンドログラフィスパニクラタ)から抽出され、センシンレン由来である。センシンレンは、センシンレンとは、キツネノマゴ科の一年生植物であり、インド、スリランカ原生のハーブ。サンビロートと呼ばれることもある。
センシンレンは高さ20cm~1mくらいまでの中型の1年草で、東南アジアから中国にかけて広く分布する。茎の先端に円錐状のセンシンレン花序を付けてたくさんの花を咲かせ、花の直径は約1cmで、白色に赤紫色の斑点がつき、果実は長さ2cmくらいの朔果で、中には10個ほどの橙色の種子が入っている。
センシンレンは、主に葉や茎や根が本発明の薬用として用いられ、場合によってセンシンレンの植物全体が用いられる。湿った日陰の場所で育ち、30~110cmまで成長すし、根、葉、すべての部分において非常に苦く、インドではking of bitter「苦味の王様」といわれており、アーユルヴェーダのハーブとしてはkarmeg(カルメグやカラメガ)として知られており、「地球の胆汁」と呼ばれることもある。
アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)の抽出では、主にセンシンレン(穿心蓮/アンドログラフィスパニクラタ)を煎じてまたは常温で抽出される。この煎じることによる抽出では、センシンレンの葉、根、茎、花、特に葉を細かく切断し、または磨り潰して、若しくはそのまま、30℃~100℃に熱した水、アルコールまたは油に浸され、アンドログラフォリドの成分が煮だされる。
この油は、加熱状態で液体であればよい。また、センシンレンの葉、根、茎、花、特に葉が、細かく切断されて、または磨り潰されて、常温の水、アルコールまたは液体の油に投入され、アンドログラフォリドの成分が析出、溶け出され、精製される。
この水は0℃~30℃の常温のままでもよい。この水に浸すことにより、センシンレン(穿心蓮)が含有するアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)がこの水に溶け出されて、抽出されて、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)が精製される。
アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)が抽出されたセンシンレン(穿心蓮)は、通常水、アルコールまたは油からろ過されて廃棄されるが、水、アルコールまたは油に残されてもよい。この場合、水、アルコールまたは油0.001重量%乃至99.9999重量%%に対し、アンドログラフォリドが0.0001重量%乃至99.999重量%混合されるように、水、アルコールまたは油の量が調整される。
この場合、水、アルコールまたは油の割合を減らすには、蒸発などが実行され、水、アルコールまたは油の割合を増やすには、当該水、アルコールまたは油が添加される。水、アルコールまたは油は、これらの2つ以上が混合されていてもよい。この場合、水がいちばん多くてもよいし、アルコールがいちばん多くてもよいし、油がいちばん多くてもよい。
また、水がいちばん少なくてもよいし、アルコールがいちばん少なくてもよいし、油がいちばん少なくてもよい。多い順番は、水→アルコール→油、水→油→アルコール、アルコール→油→水、アルコール→水→油、油→水→アルコール、油→アルコール→水など、任意である。
この水、アルコールまたは油が多ければ、本件薬学的組成物は、通常は液体となる。水、アルコールまたは油の割合が減れば、本件薬学的組成物は、ゾル状、ゲル状となる。水、アルコールまたは油がほとんどなくなれば、本件薬学的組成物は、粉体となる。
上記水は、軟水、硬水いずれでもよく、0.001重量%乃至99.9999重量%、薬学的組成物などの薬にほぼ均一に混合し、場合によって乳化される。上記アルコールは、エタノールまたはセタノールなどであり、0.001重量%乃至99.9999重量%、薬学的組成物などの薬にほぼ均一に混合し、場合によって乳化される。
上記油は、大豆油、とうもろこし油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油などであり、0.001重量%乃至99.9999重量%、薬学的組成物などの薬にほぼ均一に混合し、場合によって乳化される。
上記抽出工程に用いる抽出溶媒としては、他に、水、親水性有機溶媒、又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。親水性有機溶媒としては、例えば、メタノールやエタノール等の低級アルコール類、アセトン、及び酢酸エチルが挙げられる。抽出方法としては、公知の抽出方法、例えば冷水抽出、温水抽出、熱水抽出、及び蒸気抽出のいずれの方法を用いてもよい。
この抽出操作としては、抽出溶媒中にアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を所定時間浸漬させる。抽出操作においては、抽出効率を高めるべく、必要に応じて攪拌処理、加圧処理、及び超音波処理等の処理をさらに行ってもよい。抽出操作後、例えばろ過や遠心分離等の公知の分離法を用いて固液分離操作を行うことにより、抽出液と原料の残渣とを分離してもよいし、これらが混合したままでもよい。このとき、必要に応じて得られた抽出液(抽出物)の濃縮を行ってもよい。
(2)オートファジー細胞死を誘導するアンドログラフォリド
今日、細胞が死に至る過程は、アポトーシス(タイプI細胞死)、オートファジーを伴う細胞死(タイプII細胞死)、細胞内小器官の膨潤と小胞の出現を伴うがリソゾームの関与がない細胞死ネクローシス(タイプIII細胞死)に分類されている。
センシンレンの主成分であるアンドログラフォリドが細胞死であるタイプIIを伴うことが一部の腫瘍細胞に観察され、抗腫瘍薬としての期待がもたれる。
アポトーシス(タイプI細胞死)は、死が予め遺伝子に組み込まれ、細胞が紫外線や薬剤などのストレスをうけると、細胞内に存在するがん抑制遺伝子p53が活性化され、自ら能動的に死にゆく「プログラム細胞死」であり、形態学的特徴として細胞全体が萎縮・断片化する。
ネクローシス(タイプIII細胞死)は、細胞自体が外的損傷などの要因で受動的に死に至るもので、形態学的には細胞が膨張・破裂するという特徴がある。
オートファジー(タイプII細胞死)は、この概念が発見された当初は、飢餓に陥ったときの栄養源確保と考えられていた。細胞は飢餓やその他のストレスに曝されると、自己の一部をオートファジー(自食作用あるいは自己貪食)によって分解し栄養源にすることでサバイバルを図る。最近の研究で明らかになってきたオートファジーの重要な役割として、細胞の新陳代謝(代謝回転)と細胞にとって不要あるいは有害な物質の除去がある。ヒトなどの動物は食物としてタンパク質を摂取・分解するが、それとは別に自己の体タンパク質を一日に1~2%(成人男性で約200g)も分解しており、しかもそのうちの70~80%は再びタンパク質合成に使われている。
つまり、毎日壊しては造るということを繰り返している。このオートファジーによるこの新陳代謝が停止すると、細胞が弱ったり死んだりして様々な病気・・・発癌、神経変性疾患、2型糖尿病等の生活習慣病、心不全、腎症、感染症、各種の炎症等々・・・になってしまう。オートファジーはこのような日々の新陳代謝に加えて、細胞にとって危険な傷のついたミトコンドリア、凝集しやすいタンパク質の集積を原因とする様々な変性疾患、細胞に侵入した病原体などを積極的に除去することで上記のような疾患や感染症を防いでいる。
このようにオートファジーは、タンパク質の「死」という観点から2004年にカリフォルニア大学アーウィン・ローズ博士等のノーベル賞を受けた「ユビキチンプロテアソーム系と並立するバルクなタンパク質分解系」であり、日常的な蛋白質代謝や飢餓応答時のアミノ酸供給などを行なう生存に必須な細胞機能である。しかしながら、一方では細胞に強いストレス(DNA 傷害等)が加わった際(多くの抗がん剤は栄養の欠乏や飢餓を化学的に模倣するように設計されている)には、オートファジーは無秩序に亢進し細胞死が誘導されることが知られている。
この細胞死の誘導はShimizu, S., Kanaseki, T., Mizushima, N., Mizuta, T., Arakawa-Kobayashi, S., Thompson, CB. & Tsujimoto, Y. : Role of Bcl-2 family proteins in a non-apoptotic programmed cell death dependent on autophagy genes. Nat. Cell Biol., 6: 1221-1228, 2004.に基づく。
オートファジーは「マクロオートファジー」、「ミクロオートファジー」、「シャペロン介在性オートファジー」に大別されている(図1)。このなかではマクロオートファジーがもっとも分解活性が高いと考えられており、酵母から動植物にいたる多くの生物で研究が進んでいる。一方、ミクロオートファジーは主に酵母で、シャペロン介在性オートファジーは主に哺乳動物で研究が進められているが、その分子実体や普遍性は解明途中にある(哺乳類ではミクロオートファジーと後期エンドソーム形成(多胞体)が同一の現象であるとする見方もある)。そのため、単にオートファジーと言う場合はマクロオートファジーを指すことがほとんどであり、これ以降はそのように呼ぶ。また、タイプIIの細胞死はまさにマクロオートファジーの亢進状態によって生ずる。
一般に「オートファジー」と呼ばれるマクロオートファジーは、始めは細胞質に柿の種のような小胞が現れ、それが湾曲しながら成長し(隔離膜)、細胞質内の不要物に対して末端が融合して最終的に二重の膜構造(オートファゴソーム)が形成される。このオートファゴソームが細胞内リソソームと融合し、オートリソソームを形成し、この中で不要物のタンパク質はリソソームからの分解酵素によって、分解・リサイクルを行う過程である(図1)。
A.マクロオートファジー:直径約1 µm のオートファゴソームが形成されながら細胞質の一部を取り囲み、それがリソソームと融合するとオートファゴソームの内膜とともに内容物が分解される。LC3 ファミリータンパク質はこの間のほぼすべての過程の膜に局在するため、オートファジー関連膜の全般的マーカーとして利用できる(オートリソソームになると内膜のLC3 は分解され、外膜のLC3 は膜からは徐々に外れる)。一方、LC3 以外のほとんどのATG 因子は閉鎖前の隔離膜にのみ局在し、リソソームとの融合に必要なシンタキシン17 は閉鎖後のオートファゴソームに局在するので、それぞれの特異的マーカーとして利用できる。
B.ミクロオートファジー:リソソームまたは液胞膜が内側に陥入し、その後ちぎれることで細胞質成分を取り込む方法。酵母ではペルオキシソームや核の一部がこの方法で分解される(ただし、ペルオキシソームのミクロオートファジーの場合は、液胞膜だけでは取り囲めず、新たな膜の新生を伴う)。哺乳類では、後期エンドソームが同様の膜動態によって細胞質成分を分解する「endosomal microautophagy」が知られている。
C.シャペロン介在性オートファジー:アミノ酸5つからなる「KFERQ 様モチーフ」をもつ細胞質タンパク質がHsc70 やその他の共シャペロンによって認識され、リソソーム上のレセプターと考えられているLAMP2A との結合を介して、リソソーム内部に直接透過される経路。
オートファジーの基本的プロセスやこれに関与する遺伝子の発見には、「オートファジーの父」と呼ばれる大隅良典氏(現・東京工業大学特任教授)の功績が極めて大きく、彼は1993年までに14個の関連遺伝子を発見し、その後の世界中の研究者によって今日(2016年8月現在)ではATG5 をはじめとする41種類の蛋白質が同定され、その生理的・病理的役割に関する知見は蓄積されつつある。しかしながら、オートファジーからオートファジー細胞死に誘導される過程については未解決の問題が残されている。
上記生理的・病理的役割に関する知見は、2)Mizushima, N., Ohsumi, Y. & Yoshimori, T.: Autophagosome formation in mammalian cells. Cell Struct. Funct., 27: 421-429, 2002. 及び3)Levine, B. & Klionsky, DJ.: Development by self-digestion: molecular mechanisms and biological functions of autophagy. Dev. Cell, 6: 463-477, 2004.に基づく。
今回、我々は造血細胞腫瘍細胞から不死化培養細胞株としたヒト組織球性リンパ腫・マクロファージ細胞株(U937)、ヒト前骨髄球性白血病細胞株(HL60)、ヒトIgA産生形質細胞腫株(H929)、慢性骨髄性白血病細胞株(K562)を用い、オートファジー惹起物質としてセンシンレンの主成分であるアンドログラフォリドを培養造血細胞腫瘍細胞に添加し、オートファジー細胞死を引き起こすかどうかを検討した。
オートファジーは数段階のステップにより進行するが、細胞内容物を膜で取り囲むオートファゴソーム形成は重要なチェックポイントとなる。このオートファゴソームはLC3とよばれる蛋白質により実行されるため、LC3はマーカーとしてよく利用される。
この利用は、4)Mizushima, N. et al.: Cell, 140: 313-326, 2010. 及び5)Katayama, H. et al.: Chem. Biol., 18: 1042-1052, 2011. に基づく。
このLC3をターゲットとしたオートファジー検出法として、Muse Autophagy LC3-antibody based Kitが普及しており、蛍光色素と結合した抗LC3抗体(Anti-LC3 Alexa Fluor 555抗体)でLC3を染色し、フローサイトメトリー法にてオートファジー陽性細胞を検出した。分析機器はMuse Cell Analyzer(Merck社製)、オートファジー陽性細胞の確認はRFP-LC3を強制発現させたU20S細胞(ヒト骨肉腫細胞由来)が入っているMuse RFP-LC3 Reporter Autophagy Assay Kitを用いた。
測定法は以下のとおりである。
1. 24穴組織培養用プレートに2×105/mlに調整した検体(各種培養細胞株)を1mlずつ分注し、37℃に調整した5%CO2インキュベーターに孵置する。
センシンレンの主成分であるアンドログラフォリドは終濃度として10μM添加した。
2. 24時間後、培養細胞を1.5mlエッペンチューブにスポイトで移し、遠心分離を行った後に上清を捨て、等張緩衝液(HBSS)を注入し、再浮遊させ、再度遠心を行った後に上清を捨て、200μlのHBSSを注入し細胞浮遊液とする。
3. HBSSに浮遊させた培養細胞浮遊液200μlに0.2μlのAutophagy Reagent Aを添加し混和した後、37℃に調整した5%CO2インキュベーターに4時間孵置する。
オートファジーは細胞構成成分の分解プロセスであるため、オートファジー検出試薬(Autophagy Reagent A)を使用すると細胞内LC3を選択的に透過できる細胞処理とLC3のリソソーム分解が防止され、フローサイトメトリーによる定量が可能となる。
4. 4時間孵置後、2,000rpmにて5分間の遠心を行った後、上清をアスピレーターで吸い取り、HBSSを200μl注入して細胞を再浮遊させた後、再遠心を行った後に上清を捨てる。
5. 続いてアクターゼ(Accutase)溶液を100μl添加し、軽く混和した後、37℃に5分間孵置し、細胞集塊のない単一細胞浮遊液とする。
6. 続いてHBSSを100μl注入した後、軽く混和する。
7. 遠心条件を300g(2,000rpm)として冷却遠心機(4℃)で5分間遠心した後、上清を捨てる。
8. 5μlのAnti-LC3 Alexa Fluor 555抗体および95μlのAutophagy Reagent B液を添加した後、30分間氷中で暗室静置する。
Anti-LC3 Alexa Fluor 555抗体:オートファゴソームに結合したLC3を抗原として、これに結合する蛍光標識された抗LC3抗体である。
Autophagy Reagent B:細胞膜に細胞膜リン脂質二重膜を部分的破壊し、細胞質内に存在するLC3を細胞外に流出させる役割をする。
9. 遠心条件を300g(2,000rpm)として冷却遠心機(4℃)で5分間遠心した後、上清を捨てる。
この洗浄操作により、オートファゴソームに結合したLC3を除く、細胞質内のLC3は細胞から除去される。
10. Assay Bufferを200μl添加し、細胞を浮遊させ、遠心機にて遠心した後、上清を捨てる。
11. Assay Bufferを200μl再添加し、細胞を再浮遊させた直後にMuse Cell Analyzerにて測定する。
上記1~11の測定法は、Mizushima, N., et al. (2004). Methods for monitoring autophagy. Int J Biochem Cell Biol.;36(12):2491-502. 及びFleming, A., et al. (2010). Chemical modulators of autophagy as biological probes and potential therapeutics. Nat Chem Biol.;7(1):9-17. に基づく。
Muse Cell Analyzerによる分析成績
測定成績は、1) 平均オートファジー強度(対照および試験サンプルの両方)、2) オートファジー誘導比(対照と比較した試験試料の蛍光強度)、3) 増加したオートファジーを有する細胞の割合(試験サンプル対コントロール)が表示される。
この図2の成績は、試験サンプルの平均オートファジー強度は198.6で対照の平均オートファジー強度は31.0を示しており、オートファジー誘導比は6.4を示している。
オートファジー性細胞死誘導剤は、例えば健康食品や食品等の飲食品等の添加剤、医薬品、医薬部外品、健康食品として有用である。オートファジー性細胞死誘導剤は液状であってもよいし、ゾル状、ゲル状、固体状、粉状であってもよい。それらの剤形としては、特に限定されないが、例えば散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤等が挙げられる。また、本発明の目的を損なわない範囲において、賦形剤、基剤、乳化剤、安定剤、溶剤、香料、甘味料等の添加剤を配合してもよい。
抽出されるアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、センシンレン由来で天然由来であるため、副作用がほとんどなく、生体に対してより安全に適用することができる。
アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、高いオートファジー性細胞死誘導作用を有する。例えば、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を癌細胞に投与した場合には、癌細胞のオートファジー性細胞死が誘導されて、癌細胞の増殖が抑制される。
また、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、オートファジーの進行に関与する因子であるLC3レベルを増大させる作用を有する。LC3はオートファジーにおけるオートファゴソームの形成に関与するタンパク質であり、オートファゴソームへの移行に際して前駆型であるLC3-Iから活性型であるLC3-IIへと変換(修飾)される。アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を投与することにより、LC3レベルが増大するとともに、LC3-IからLC3-IIへの変換が促進される。
また、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、オートファジーの抑制に関与する因子であるAktレベルを低下させる。オートファジーは、mTORが活性化しているときには誘導が抑制される。そして、mTORはPI3K/Aktを介したリン酸化カスケードにより活性化され る。上記アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を投与することにより、mTORの活性化に関与するAkt レベルが低下する。
よって、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を含有するオートファジー性細胞死誘導剤は、細胞のオートファジー性細胞死を誘導することができる。オートファジーは、発生、分化等の生理機能や、細胞質内に侵入したウイルスの排除等の感染防御機能にも関与する機構である。そのため、オートファジー性細胞死誘導剤は、癌治療(例えば、細胞増殖抑制剤)やウイルス感染防御(抗ウイルス剤)の分野への適用が期待できる。また、オートファジー性細胞死誘導剤は、PI3K/Akt/mTOR経路の阻害剤としての適用も期待できる。
また、オートファジー性細胞死誘導剤に含有されるアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)としては、例えば天然素材由来の精製品、生化学品、及び化学合成品を適用することができる。そして、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を原料として抽出工程及び単離工程を行うことにより得ることができる。
アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)によって、上記オートファジーのほか、アポトーシスも誘導することが確かめられた。アポトーシスは、細胞の死の様式の一つで、個体発生の過程で、特定の細胞が特定の時期に死んで(プログラム細胞死)ある形態を形成するときなどに見られるものである。
本オートファジー性細胞死誘導剤(抗腫瘍剤も含む。以下及び以上同じ)の投与経路は特に限定されず、経口投与または非経口投与のいずれの投与経路により投与してもよい。非経口投与は、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、舌下経路、直腸経路、経皮経路、鼻腔内経路、患部への局所投与、皮膚投与等がある。経口投与に適する製剤形態としては、固形または液体の形態が挙げられ、非経口投与に適する製剤形態としては、注射剤、点滴剤、坐剤、外用剤、点眼剤、点鼻剤等の形態が挙げられる。
本オートファジー性細胞死誘導剤は、その製剤形態により必要に応じて薬学的に許容可能な添加剤が加えられていてもよい。薬学的に許容可能な添加剤の具体例としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、保存剤、安定化剤、等張化剤、着色剤、矯味剤、希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、キャリア、賦形剤及び/または薬学的アジュバント等が挙げられる。
経口用の固形製剤形態の本発明のオートファジー性細胞死誘導剤は、例えば、有効成分であるアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)に賦形剤を加え、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、または矯味剤などの製剤用添加物を加えた後、常法により錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤として調製することができる。経口用の液体製剤形態の本発明のオートファジー性細胞死誘導剤は、有効成分であるアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)に矯味剤、安定化剤、または保存剤など製剤用添加物の1種または2種以上を加え、常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等として調製することができる。
本オートファジー性細胞死誘導剤を液体製剤として処方するために使用される溶媒は、水性または非水性のいずれでもよい。液体製剤は当該分野において周知の方法により調製することができる。例えば、注射剤は、生理食塩水、PBSのような緩衝液、滅菌水等の溶剤に溶解した後、フィルター等で濾過滅菌し、次いで無菌容器(例えば、アンプル等)に充填することにより調製することができる。この注射剤には、必要に応じて、慣用の薬学的キャリアを含めてもよい。本発明で用いることができるキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンを含む生理食塩水等が挙げられる。
本発明のオートファジー性細胞死誘導剤の投与量は、使用目的、疾患の重篤度、患者の年齢、体重、性別、既往歴、または有効成分として用いる物質の種類等を考慮して、当業者が決定することができる。本発明のオートファジー性細胞死誘導剤及び抗腫瘍剤の投与量は、例えば、有効成分量として、成人一人当たり、約0.1μg~約100mg/kg、好ましくは約1μg~約10mgである。本発明のオートファジー性細胞死誘導剤の投与頻度は、例えば、一日数回乃至1回~数ヶ月に1回であればよい。
(3)センシンレンの主成分であるアンドログラフォリドをオートファジー細胞死へ誘導した実験成績(実施例)
図3、図4、図5に示すように、造血器腫瘍細胞を不死化した培養株U937、HL60、K562に終濃度10μl添加した時、24時間後のそれぞれに認められたオートファジー蛍光強度比はK562株に3.4と明らかなオートファジー陽性細胞が著増した。図5の2つの山の左側の高い方の濃度の薄い高い山の部分が、オートファジー蛍光強度比が著増した部分で、同図の同部分の濃い低い山の部分がアンドログラフォリド添加前のものである。他の図3、図4でもオートファジー蛍光強度比が増えた部分がわずかにある。そしてアンドログラフォリド0.0001重量%乃至99.999重量%の広い範囲にわたって、オートファジーの誘導を確認できた。この場合、混合される水、アルコールまたは常温で液体の油脂は、0.001重量%乃至99.9999重量%である。この場合、後述するようにアポトーシスをも誘導することも確認できた。
U937株およびHL60株のオートファジー蛍光強度比は前者が1.1で後者は1.0であり、対照とわずかに変化はみられ、それぞれの細胞株へのオートファジー誘導はわずかに認められた。ヒトIgA産生形質細胞腫株(H929)のオートファジー蛍光強度比は1.2を示したが無添加培養細胞の蛍光強度比が1.3を示し、オートファジー関連細胞死はわずかに認められる。
図3、図4、図5に示すように、オートファジーを検出するためのanti-LC3/Alexa Fluor 555抗体で染色後のAutophagy Induction Ratio (コントロールとの蛍光強度比)を示す。AND:アンドログラフォリド添加量は100μM濃度とした。K562は、24時間後に陽性細胞の増加が認められた。
抗腫瘍薬として汎用される代謝拮抗剤であるシタラビン(Ara-C)や細胞分裂に重要な微小管の働きを止めるビンクリスチン(VCR)をオートファジー細胞死への誘導としたとき、U937株およびH929株のオートファジー蛍光強度比にわずかに変化はみられ、K562株ではAra-Cはコントロールとの蛍光強度比2.3と増強したが、VCRは0.9と蛍光強度比の増強はわずかに認められた。図8の濃度の薄い高い山の部分が、オートファジー蛍光強度比が著増した部分で、同図の同部分の濃い低い山の部分がアンドログラフォリド添加前のものである。他の図6、図7でもオートファジー蛍光強度比が増えた部分がわずかにある。(図6、図7、図8)。
図6に示すように、U937株にAra-CおよびVCRの添加では、コントロールと対比して蛍光強度比の上昇はわずかで、オートファジー細胞死関連死の観察はわずかであった。
図7に示すように、H929株にAra-CおよびVCRの添加では、コントロールと対比して蛍光強度比の上昇はみられず、オートファジー細胞死関連死の観察はわずかであった。
図8に示すように、K562株にAra-CおよびVCRの添加では、Ara-Cではコントロールと対比して蛍光強度比は2.3と大きく上昇し、オートファジー細胞死関連死を完全に認めた。VCRの蛍光強度比は0.9と低下しており、オートファジー細胞死関連死の影響による。
アンドログラフォリド0.0001重量%乃至99.999重量%の広い範囲にわたって、このようなオートファジーの誘導を確認できた。この場合、混合される水、アルコールまたは常温で液体の油脂は、0.001重量%乃至99.9999重量%である。この場合、アポトーシスをも誘導することも確認できた。
LC3・Aktのウエスタンブロット解析
また、Jurkat細胞を1×105cells/mLに調整し、6ウェルマルチプレートに3mLずつ播種した。播種後、アンドログラフォリドを終濃度が5.0μMとなるように添加し、各ウェルの培養時間(処理時間)を異ならせつつ培養を行った。培養後、各細胞を遠心分離機(3,000rpm、10分、4℃)にてそれぞれ回収した。
回収した細胞をPBS(-)にて洗浄した後、2%Protease inhibiter、2%Pho sphatase inhibitor含有RIPA Buffer(25mM Tri s-HCl(pH7.6),150mM NaCl,1%NP-40,1%sodium deoxycholate,0.1%SDS)を用いて細胞を溶解するとともに、超音波砕機を用いて細胞を破砕した。細胞破砕液に対して遠心分離処理(13,000rpm、5分間、4℃)を行い、上清を回収した。得られた上清のタンパク質濃度を所定濃度に調整した後、10%メルカプトエタノール含有サンプルバッファーを加えて98℃で5分間加熱し、これをサンプル溶液とした。
各サンプル溶液中に含まれるタンパク質を10~15%SDS-PAGEにて分離するとともに、これをPVDE(Polyvinylidene difluoride)膜に転写した。PVDE膜を0.1%Tween20含有トリス緩衝化生理食塩水により溶解した5%脱脂粉乳溶液に浸して1時間のブロッキングを行った後、LC3又はAktの一次抗体を加え、4℃にて一晩振とうした。その後、洗浄処理を行うとともに二次抗体を加え、1時間振とうした。PVDE膜上の抗原-抗体複合体を、ECL Plusキット(GE Healthcare社製)で5分間処理することにより化学発光させるとともに、その化学発光を化学光検出装置(Davinch-Chemi、和光純薬株式会社製)を用いて検出した。
アンドログラフォリドの投与後、特に6~12時間後において、オートファジーの進行に関与する因子であるLC3レベルが増大するとともに、LC3-IからLC3-IIへの修飾が促進されている。また、アンドログラフォリドの投与後、オートファジーの抑制に関与する因子であるAktレベル、具体的には、Akt及びその活性型であるリン酸化Aktのレベルが共に低下している。これらの結果から、アンドログラフォリドは、オートファジー性細胞死を誘導する作用を有し、その作用に基づいて細胞の増殖を抑制しているものと考えられる。
(4)考察
細胞死には、積極的な細胞死と受け身で偶発的な細胞死がある。感染、物理的破壊、化学的損傷、血流の減少などによる偶発的な細胞死はネクローシスと呼ばれ、細胞内に水分が入ることにより膨化し、リソソーム膜や細胞膜が破綻して、細胞内構成要素が分解されると共に、細胞外に流失することにより、その変化が組織全体におよび組織の炎症反応が伴うため、これを助長するための薬物の投与は不可である。
積極的な細胞死には、カスパーゼ依存性のアポトーシスと非依存性のオートファジー性細胞死がある。アポトーシスは、個体維持のプロセスで積極的に引き起こされるプログラムされた細胞死で生理的な細胞死にその典型が見られ、細胞自体から水分が取れ、細胞は小さくなる。細胞内小器官は往々にして細胞内の一ヵ所に集まり、核クロマチンは凝縮し、その辺縁は一般核質とシャープに別れ、パンダ模様を呈することが多い。
オートファジーとは「細胞内の自己成分をリソソームで分解する細胞の機能」を称し、真核生物(細胞核を有する生物)に共通する生命現象で、細胞死を予防する保護的メカニズムとして作用している。これに対し、オートファジー細胞死は、マクロオートファジーの形態を採り、オートファゴゾームが形成されこれが異常に融合された過オートファジー状態となった通常の正常細胞にみられる細胞死ではない。オートファジー性細胞死では、オートファゴソーム/オートリソソームが細胞質を占め、核クロマチンは凝縮した小片として核質に散在性に認められる。
今回、造血腫瘍細胞の株化細胞を用い、アンドログラフォリドによるオートファジー性細胞死を検討したが、K562株等にオートファジー性細胞死を認めたが、他のU937、HL60、H929株ではオートファジー性細胞死への誘導を証明できる成績はわずかであった。このことからアンドログラフォリドによるオートファジー性細胞死を検討したK562株にはAra-Cにおいてもオートファジー性細胞死が観察され、腫瘍細胞に対するオートファジー性細胞死への惹起物質の特異性が観察された。
今日のがん治療において、がんは飢餓状態に陥りやすい細胞なのですが、放射線や抗がん剤を使った治療を行ったとしても、オートファジーが活性化しがん細胞に栄養を与える代謝活動が高まり、正常細胞では役立つオートファジーだが、がん細胞では、がんの進行を促進することになるという考え方もある。
しかしながら、我々は今回検討した造血器腫瘍細胞に同一濃度に添加したアンドログラフォリドによって、すべての細胞株にて著明なアポトーシスの誘導を確認している。したがって、K562株にみたアポトーシスの誘導とオートファジー細胞死を同時に誘導することが確認でき、オートファジー細胞死を誘導することは腫瘍細胞の増殖を促すものではないことを証明できたと考えている。このことはがん治療に新しい知見となるもと考える。これは、アンドログラフォリド0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で同様のアポトーシスの誘導とオートファジーの誘導の効果がみられた。
図9は、各腫瘍細胞株に抗がん剤(Ara-C、VCR)およびセンシンレンの主成分で あるアンドログラフォリドを添加した24時間後のAnnexin Vの陽性率を示す。
この図9は各細胞株に抗がん剤として汎用されるシタラビン(Ara-C)、ビンクリスチン(VCR)の両者に対するアンドログラフォリド(Andro)の抗腫瘍効果を検討した。
それぞれの薬剤終濃度をAra-C は1.0mg/mL、VCR は0.1mg/mL、 Androを50μMの濃度となるように添加し、37℃にて24時間培養後のAnnexin V陽性率をグラフに示した。
検討腫瘍細胞株の種類は左からヒト組織球性リンパ腫・マクロファージ細胞株(U937)、急性前骨髄性白血病細胞株(HL60)、IgA型ヒト形質細胞腫細胞株(H929)とし、それぞれの細胞株の色分けは添加した薬剤の種別を表している。
図9のAndro添加では、すべての細胞株においてAnnexin V陽性率に著明な増加が認められ、腫瘍細胞がアポトーシスを引き起こしていることを示し、抗腫瘍効果があることを意味している。
上記オートファジーは、細胞内におけるタンパク質の分解機構の一つであって、酵母からヒトにいたるまでの真核生物に見られる機構である。オートファジーが誘導されると、オートファゴソームと呼ばれる膜胞が形成される。次いで、オートファゴソームがリソソームと融合することにより、オートファゴソーム内に取り込まれたタンパク質が分解される。
オートファジーは、一般的には細胞が飢餓状態に陥ることによって誘導されるが、発生、分化等の生理機能や、細胞内に侵入したウイルスの排除等の感染防御機能にも関与することが明らかになってきている。そのため、オートファジーの制御は、癌治療やウイルス感染防御の分野に応用できる可能性があるとして、近年、注目されている。例えば、特許文献8には、特定のアミノ酸配列を有するペプチドに、オートファジー性細胞死を誘導する効果があることが開示されている。なお、オートファジー性細胞死とは、プログラム細胞死の1タイプ(タイプ2細胞死)であって、オートファジーを伴う細胞死である。
(5)結論
(a)アンドログラフォリドによって造血器腫瘍細胞株K562株をオートファジー細胞死へと誘導できた。
(b)アンドログラフォリドは腫瘍細胞であるK562株のオートファジーを過剰に亢進し細胞死を引き起こすことが証明できた。
(c)アンドログラフォリドの量は、0.0001重量%乃至99.999重量%の広い範囲にわたって、オートファジーの誘導を確認できた。この場合、混合される水、アルコールまたは常温で液体の油脂は、0.001重量%乃至99.9999重量%である。この場合、アポトーシスをも誘導することも確認できた。
以下に述べる「センシンレン(穿心蓮/アンドログラフィスパニクラタ)」はすべて「アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)」の薬効によるものであり、この薬効はオートファジーを誘導して病巣に改善がみられたものである。
(6)薬“センシンレン”(穿心蓮/アンドログラフィスパニクラタ)
センシンレン(穿心蓮;Andrographis Paniculata)はインド、マレーシア、中国では長江以南の温暖な地域にかけて分布する1年草です。地上部の全草が生薬として用いられる。
センシンレン、アンドログラフォリドの有用性の実証試験として、白血病患者から得られた腫瘍細胞を継代培養できる不死化細胞とした(株化された)細胞を使った生体外(in vitro)試験による最新の実験成績を示す。このほか、センシンレン、アンドログラフォリドに関連した論文を挙げその要旨を記した。(医学博士 勝田逸郎)
アーユルヴェーダは、サンスクリット語の「アーユス(aayus;生命)」と「ヴェーダ(veda;知識、学問、真理)」が合わさった言葉で、「生命の科学」ともいわれる、インド・スリランカにおける伝統医学である。
このセンシンレン、アンドログラフォリドは、生活習慣病や癌(がん)、そして慢性ウイルス感染症に立ち向かうことができる可能性がある。
このセンシンレンというハーブは毒性がまったくと言って良いほど低く、実に安全に服用されています。しかし、ヒトの投与量では考えられない大量投与された実験動物に避妊作用があることが知られているため、現時点で妊娠を望む女性や妊娠中の女性には用いることを差し控えた方が良いと言えるでしょう。
ガン・エイズ原因ウイルス(HIV)に対抗する
ハーブ(センシンレン、アンドログラフォリド) -------------
医療手段の1つとして注目されるハーブ(センシンレン、アンドログラフォリド)
序論------------------------------------------------------------
ハーブ「センシンレン、アンドログラフォリド」について------------
どこにどのように生育しているか----------------------------
何が含まれているか----------------------------------------
センシンレン、アンドログラフォリドの化学的性質------------
ハーブの作用----------------------------------------------
ハーブ治療を解明する--------------------------------------
ハーブ(AP)から抽出されたエキスの生物学的薬理効果----------
センシンレン、アンドログラフォリドの用途と効能------------------
ガン、エイズ原因ウイルス(HIV)、その他のウイルスに
対する免疫の向上--------------------------------------
センシンレン、アンドログラフォリドの2つの重要な作用
ガン治療の研究におけるセンシンレン、アンドログラフォリドについて
ガン細胞に作用するセンシンレン、アンドログラフォリドの効能
センシンレン、アンドログラフォリドが試されたさまざまな実験内容
エイズ研究に光明をもたらすセンシンレン、アンドログラフォリド----
エイズ原因ウイルス(HIV)の正体---------------------------
エイズ原因ウイルス(HIV)に用いられる治療薬とは-----------
センシンレン、アンドログラフォリドがエイズ治療に対して提案するもの
エイズに対するセンシンレン、アンドログラフォリドの効用とは
センシンレン、アンドログラフォリドの疾患に対する効用------------
風邪----------------------------------------------------
抗菌、抗マラリア、フィラリア駆虫------------------------
肝臓、胆嚢の保護----------------------------------------
下痢と腸に対するセンシンレン、アンドログラフォリドの効果
発熱と炎症----------------------------------------------
心血管系------------------------------------------------
受精----------------------------------------------------
神経系統------------------------------------------------
呼吸系統------------------------------------------------
センシンレン、アンドログラフォリドが効く他の病気--------
安全性について --------------------------------------------------
(7)ガン・エイズ原因ウイルス(HIV)に対抗するハーブ(センシンレン、アンドログラフォリド)
センシンレン、アンドログラフォリドがエイズ原因ウイルスに対しても有効な作用を示すことである。ウイルスが侵入した細胞から次の細胞に転移してゆくことを防ぐ力のあることが解明されはじめている。センシンレン、アンドログラフォリドにはエイズ治療に今日実際に使用されているAZTのような作用もある。細胞内シグナル伝達による分析によるこの取り組みの良さは、薬草あるいは植物から採った薬物様々な疾患に対して有望な治療効果があるかどうかを確かめるスクリーニング(ふるい分け)することができる。
細胞内シグナル伝達の分析による研究は、治療効果の見込みを確認するように思われます。ただし、常に天然由来のものが必ずしも安全とは限らないと誰にも警告している。この立場からヒトの身体の中でどのような事が起こりますか、という事が研究室に課せられています。もしハーブあるいは天然薬剤が危険でなく有毒でなかったら、研究室で検査することはヒトへの臨床試験への先駆けとなる。センシンレン、アンドログラフォリドの場合には、研究室における初期の臨床試験の中でセンシンレン、アンドログラフォリドの効果が確認されている。
エイズ(後天性免疫不全症候群:AIDS; Acquired Immuno-Deficiency Syndrome)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV; Human Immunodeficiency Virus)の感染によって引き起こされる疾患である。ヒトの体をさまざまな細菌、カビやウイルスなどの病原体から守る免疫担当細胞であるTリンパ球やマクロファージなどに感染し、普段は感染しない病原体にも感染しやすくなり、さまざまな病気を発症する。
ウイルス感染患者に対してこのハーブを使った。センシンレン、アンドログラフォリドは一般の内科医においても信頼されて使用されうる。さらには、センシンレン、アンドログラフォリドは心臓病そして感染症のような病気を治すために近代医学と併用して使用されうる。
(8)医療手段の1つとして注目されるハーブ(センシンレン、アンドログラフォリド)
エイズやある種のガンや関節炎といった不治の難病に対するハーブの研究がなぜ行われてこなかったのかは今も明らかではない。“患者が医療サービス提供者である医療人と情報を共有すべきであると”いう例えと言える。
一般的なアメリカの医者には、保険会社(PPO)と会員制民間健康維持組織(HMO)から診療サービスの代価を払う側が認めていないハーブによる治療について独学で、あるいは自ら進んで研究しようという動機はなかった。しかしかしながら、診療費支払側の一部には補完代替医療、あるいは包括医療行為としてハーブによる治療が認めるようになってきた。
このハーブ(センシンレン、アンドログラフォリド)を用いることは、医療の一つのすばらしい手段である。
(9)序論
センシンレン、アンドログラフォリドはキツネノマゴ科の植物で、中国、インド、タイにおいて何世紀にもわたって病気治療に使われてきた有用なハーブである。またこのハーブは、炎症を軽減し、下痢を止め、血圧を下げ、潰瘍の発生率をも抑える効果もあります。さらに、センシンレン、アンドログラフォリドの主要成分(Andrographis Paniculata)には、肝臓を毒性物質から保護し、抗ウイルス効果や抗腫瘍効果がある。
このようなセンシンレン、アンドログラフォリドの作用効果の根源は、細胞分裂を制御するシグナル伝達※と呼ばれる細胞内でおこるプロセスにある。
事実として、センシンレン、アンドログラフォリドにはエイズの原因となっているヒト免疫不全ウイルス(HIV;Human Immunodeficiency Virus:エイズ原因ウイルス)によって引き起こされる制御不可能な細胞増殖を止める効果がある。
センシンレン、アンドログラフォリドの持つ毒性はきわめて小さく、まったくと言ってよいほど安全である。ただ大量の摂取による場合には避妊作用があるので、現時点で妊娠を望む女性の服用は避けた方がよい。
※シグナル伝達(シグナル・トランスダクション)
シグナル伝達とは情報発信細胞が特定のシグナル分子を産生し、これが標的細胞に存在する細胞表面受容体に特異的に結合され、受容体が外部からのシグナルを受けとり、細胞内シグナルに変換して様々な反応が引き起こされる経路のことを意味している。この経路は通常、ホルモンや増殖因子、細胞接着等、細胞外からの刺激を細胞内に伝え、物質代謝、細胞増殖、分化等の変化を起こす一連の反応のことを意味している。
(10) ハーブ(センシンレン、アンドログラフォリド)について どこにどのように生育しているか
センシンレン、アンドログラフォリドは、インド、パキスタン、スリランカ、インドネシアなどの東南アジアの国々で豊富に育成する枝葉のついた高さ0.5~1mの1年生植物です。
センシンレン、アンドログラフォリドは種子から栽培され、常緑樹、松林や落葉樹の森林、また耕作道沿いの森林にも生育しますが、人工栽培もされています。あらゆる土質でも生育しますが、驚いたことにはアルミニウム、銅、錫および亜鉛を含む“サーペンタイン土壌”と呼ばれる土質で育つ唯一の植物がセンシンレン、アンドログラフォリドなのです。センシンレン、アンドログラフォリドはこのような土壌環境でも育つ性質があるので、中国とタイ、東西インド諸島およびモーリシャスなどの広い地域にその生育が認められる。
センシンレンの葉や茎は有効成分を抽出するために使用され、葉には2.39%という高いレベルのアンドログラフォリド(Andrographolide)が含まれているが、種にはこれがほとんど含まれていない。
アンドログラフォリドの含有量の測定は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が使われている。HPLCは非常に小さなビーズで満たされたチューブ形のカラムを使用し、液状の混合試料から特定成分を分離・回収することができ、この技術を利用してセンシンレンの葉と茎から得た抽出液に含まれるアンドログラフォリドが得られるようになっている。このような技術が使われてアンドログラフォリドの量を常に一定に含んだ規格品が生産できている。
(11)センシンレンには何が含まれているか
センシンレンの主成分で最も有効な成分はアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)であって、これは非常に苦味の強い無色の結晶物質であり、下記のような化学式の構造をもっていて、化学名はジテルペン・ラクトン※と呼ばれている化合物である。
Figure 0007317309000001
アンドログラフォリドには化学的構造によって次のようなA、B、Cの3種類があります。
A=デヒドロアンドログラフォリド
B=アンドログラフォリド
C=ネオアンドログラフォリド(19β配糖体のデオキシアンドログラフォリド)
アンドログラフォリドの主成分は、このうちBの構造を持つ。センシンレン、アンドログラフォリド全体から同定された他の成分は、l4-デオキシ-11,12-ジデヒドロアンドログラフライド(アンドログラフォロリドD)、ホモアンドログラフォライド、アンドログラファン、アンドログラフォン、およびアンドログラフォステリンが含まれている。さらに、スティグマステロール(イチジクや大豆から得られるステロール)も分離されている。
※ジテルペン・ラクトン
ジテルペンは、レチノール、レチナール、フィトール等の生物学的に重要な化合物の骨格となって、抗細菌性及び抗炎症性が知られている。ラクトンはエステル基を環内に含む複素環式化合物の総称で果物や花の香気成分、フェロモン、麝香(じゃこう)などに含まれる。ラクトン類はほぼすべての柑橘系の精油に微量に含まれていて、解毒作用、利尿作用、血液をさらさらにする作用や免疫を強壮する作用がある。
この植物にはジテルペン・ラクトンと呼ばれる何種類かの活性成分が含まれているため、さまざまな病気に対して効用が認められる。葉および茎の中のアンドログラフォリドの含有量は季節や生育地域によって変わる。センシンレン、アンドログラフォリドは中国や東南アジアの熱帯・亜熱帯地域で最も生育することが認められている。アンドログラフォリドの含有量が最も多くなるのは、開花前であるため、葉や茎が生育しすぎてしまったものや、花が散る前に収穫したものは成分の点から言えばベストの状態の品質とは言えない。
アンドログラフォリドは葉や茎から得られ(種にはほとんど含まれません)、活性成分の含有量が変わらないようにする配慮が重要なことである。これは有効成分であるアンドログラフォリドを常に一定量とする規格化が重要で、どの製造業者で抽出しても、どのロットでも常に一定した活性成分を得ることである。植物中に含まれるアンドログラフォリドの量を測定する方法は前述したように高速液体ガスクロマトグラフィーの他に、薄層クロマトグラフィーや紫外分光光度法による比色定量法がある。
(12)センシンレン、アンドログラフォリドの化学的性質
センシンレン、アンドログラフォリドは薬剤処方に組み込まれていて、薬品としての効き目および純度が規格化された治療薬となり得る。アンドログラフォリドは採取したての植物を粉砕し、エタノールを使用して活性成分を抽出される。
抽出されたアンドログラフォリドの安定性に関する研究が多々あるが、センシンレン、アンドログラフォリドの効力は、胃酸のような酸性の水溶液中でも保持される。人体のどの器官にアンドログラフォリドが分布しているか気になるところであるが、調べてみると、肝臓、胃、腸に集積する。また、子宮、腎臓、卵巣、肺、直腸、脾臓、心臓、脳にも存在する。
ラジオアイソトープで標識したアンドログラフォリドを使って、その動きや分布を調べた結果は次の状況であることがわかった。投与48時間後においてアンドログラフォリドの分布については、脳で20.9%、脾臓14.9%、心臓11.1%、肺10.9%、直腸8.6%、腎臓7.9%、肝臓5.6%、子宮5.1%、卵巣5.1%、腸3.2%となっている。
アンドログラフォリドはかなり急速に吸収されるとともに体外へ排出されることもわかっている。80%のアンドログラフォリドは8時間以内で腎臓(尿を介して)や消化管から排泄される。48時間以内には90%以上が排泄される。
※ラジオアイソトープ(放射性同位体)
微量のラジオアイソトープで目印を付けた放射性医薬品を体内に投与すると、体内に入った薬品は全身にめぐり、特定の臓器に集まります。集まった臓器からは目印とした放射性同位元素から放射線が放出されるので、この放射線を検査機器で測定することにより、薬品の集まり方や分布を画像とすることができます。
(13)ハーブはどの様に働くのか(シグナル伝達)・ハーブ治療を解明する
センシンレン、アンドログラフォリドに関しては、薬理学的組成、安全性、効能および人体における作用機序が明らかにされた。センシンレン、アンドログラフォリドの有効成分の作用はシグナル伝達技法(Signal Transduction Technology)という画期的な研究で明らかにされた。
人間の体内のすべての細胞は、細胞を取り囲む細胞膜の表面には受容体(レセプター)が存在している。この受容体の機能はホルモン、成長因子、神経伝達体、および細胞機能をコントロールする(がんの場合には妨害する)他の分子と結びつく。ある分子がこの受容体に結合すると、化学的信号が細胞内の標的または細胞内の他の分子に伝達され、信号は次の細胞へと移動し、この信号は最終的には遺伝物質(DNA)が存在する細胞核に到達する。そしてDNAは活性化され、その細胞自体の本来の細胞としての応答をする。例えば、膵臓の場合、この信号はインスリンといった特別なタンパク質を生成させるように働きかける。
受容体やその細胞標的、そして媒介する他の分子はシグナル伝達(シグナル・トランスダクション)の経路となる。シグナル伝達法は、細胞機能に影響を及ぼす信号経路の研究を助けるものといえる。どの経路についてもガンを誘発する毒素やウイルスの影響を受ける可能性がある。ガンの場合、細胞活動のタイミングや成分の変化が乱れると、異常な細胞分裂を誘発する。他の病気においても、これらの信号の乱れによって発症することがある。
シグナル伝達に関わる多くのステップがよく解ってきているが、これまで解明された経路の微調整をするための研究をさらに行わなければならない。細胞内部でどんな欠陥があるかという基本的なレベルを調べることは、初期段階で病気を治療することに大きく関係してくる。すなわち、この研究によって深刻な症状になる前に治療することが可能になる。細胞内のシグナル伝達経路、特に細胞分裂に関与するシグナル伝達経路に天然および合成化合物の影響を決定するためにシグナル伝達技術を使用している。
シグナル伝達技術を使って、細胞レベルの細胞プロセスに植物または他の栄養補助食品が及ぼす影響を調べることは、優れた科学的研究手法といえる。
この手法は、疾病の予防および治療への栄養学的研究を正当化するとともに、さらに新しい栄養補助食品とより有効な栄養補助食品の開発方法を促進することになる。ここで重要なことは、普通の栄養補助食品の開発には、しばしば何年間もの動物実験を行ってからヒトに使われるのが常道と言えますが、この技術を用いることにより、その動物実験を回避することができるところに大きな意義がある。
この技術によって、市場に栄養補助食品を出すための開発時間が短縮されたことや実験動物を使わなくて済むことで、消費者に肩代わりさせていたコストを軽減させた。つまり、消費者にとって法外な費用を支払わなくてもすむ。
シグナル伝達技法によって、センシンレンの抽出物アンドログラフォリドは、細胞周期※1)の干渉を妨げる。細胞周期の干渉はガンの増殖やエイズ原因ウイルスの感染の原因とも結びつく。アンドログラフォリドが白血球※2) (細菌や他の異物の貪食)の産生、インターフェロンの放出、リンパ系の活性など免疫系機能を高める。インターフェロンはウイルスに反応して細胞によって作られるタンパク質(サイトカインと呼ばれる)であり、これは強力な抗ウイルス作用とウイルスの増殖を停止(抗増殖)させる。
リンパ系はご存じのように、免疫システムの重要な一つであり、リンパ液を運ぶ循環システムといえる。リンパ液は細胞の新陳代謝によって生成された副産物を運びだし、体内に侵入した細菌やウイルスをリンパ節に取り込む作用がある。リンパ節に取り込められた細菌やウイルスは白血球(リンパ球)によって破壊される。センシンレン、アンドログラフォリドは優れた免疫システム増強剤であり、ハーブ「エキナシア」や亜鉛、ビタミンCなど免疫賦活剤、バイオ・セラピー社の栄養サプリメントである“アンドロテック”と組み合わせることにより、さらに一層の効果を得る。センシンレン、アンドログラフォリドはまた、ガン治療に役立つ。
アンドログラフォリドの生体中分布はラジオアイソトープによって標識されたアンドログラフォリドを使った動物実験によって調べられた。その結果、この成分は実に体内の広い領域に分布している。特に高い分布を示す臓器は中枢神経系(脳および脊髄)であり、多量の血液が循環しているその他の臓器、例えば、大腸、脾臓、心臓、肺、腎臓にも高い分布が認められた。アンドログラフォリドの半減期は、約2時間程度と比較的に短い半減期(半減期とは、最初の量がその半分の量に減少するまでの時間)である。
※1) 細胞周期(Cell Cycle)
細胞周期とは細胞が増えるとき、細胞分裂が生じ、細胞分裂で生じた細胞(娘細胞)が再び細胞分裂を行う細胞(母細胞)となって新しい娘細胞を生み出す過程のことである。
※2) 白血球
白血球は末梢血中には、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球の5種類が存在し、このうち免疫に直接関わる血球はリンパ球である。
この短い時間の持つ意味はと言えば、化合物が分解され、他の代謝産物に変化して、尿、便、呼気、汗または他の体の排泄物としていろいろな経路から排泄される。アンドログラフォリドの半減期は短く身体の中に長い間とどまらないので、効果を持続するためにはセンシンレン、アンドログラフォリドをたびたび服用する必要がある。
センシンレン、アンドログラフォリドは尿と消化管を介して、体内からかなり早く排泄される。雌ジカに服用させたアンドログラフォリドは8時間以内に80%は身体から取り除かれ、ラットでは48時間以内で90パーセント以上が排泄される。
(14)センシンレンから抽出されたアンドログラフォリド、その他の成分の生物学的作用
センシンレン、アンドログラフォリドは人体の細胞組織や臓器に広く分布する性質があるとともに、免疫賦活作用および調節作用があるため、多くの病気に対する予防と治療にとって理想的な薬剤の働きがある。センシンレンからの抽出物アンドログラフォリドの生物学的作用と治療効能のいくつかを図10に示す。
※リンパ球
リンパ球は役割・機能の面からTリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の3群に大別される。Tリンパ球は骨髄で産生された前駆細胞が胸腺(thymus)での選択を経て分化成熟したもので、胸腺の頭文字をとってTリンパ球と呼ばれる。Tリンパ球は主に感染した細胞を見つけて排除する(細胞性免疫)という、免疫機能において重要な役割を担っている。そのため、T細胞が無くなるとウイルスや細菌に感染しやすい免疫不全の状態になってしまい、ガンに罹りやすくなる。また、B細胞による抗体の産生を助けるヘルパーT細胞(CD4T細胞)や過剰な抗体産生を歯止めさせるサプレッサーT細胞(CD8+T細胞)と2群に大別される。
Bリンパ球も骨髄で前駆細胞が産生されるが、骨髄中にとどまって間葉系細胞のサポートを受けて分化するので、骨髄(bone marrow)由来としてBリンパ球と呼ばれ、体液性免疫に関わり、抗体(免疫グロブリン)を作り出す細胞である。
NK細胞の働きとしては腫瘍細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞に対して相手を選ばず殺傷できる自然免疫の重要な細胞である。
CDはcluster of differentiationの略で、白血球上に存在する細胞表面抗原を国際的に取り決め番号付けされたもので、これに対するモノクローナル抗体を応用したフローサイトメトリー法を用いると血液細胞の機能的亜群や細胞系統・分化成熟段階を分別できる。
(15)センシンレン、アンドログラフォリドの用途と効能
(16)ガン・エイズ原因ウイルス(HIV)・その他のウイルスに対する免疫力の強化
(17)センシンレン、アンドログラフォリドの2つの重要な作用
センシンレン、アンドログラフォリドは免疫応答への強い促進剤と言える。それは、免疫機能を2つの面から増強することがマウスによる研究から示される。
1つは抗原特異的反応として……侵入する細菌に対抗するための抗体が作られる。もう1つは抗原非特異的反応……体内の食細胞マクロファージが侵入した細菌を貪食し、殺菌してしまう。センシンレン、アンドログラフォリドはこれら2系統の免疫反応を促す。
これらの特性によりセンシンレン、アンドログラフォリドは、腫瘍形成因子(発ガン因子)や多くの感染に対して効果的に働いてゆく。
(18)ガン治療の研究におけるセンシンレン、アンドログラフォリドについて
ガン治療は、研究テーマとして高い優先度に置かれてはいるものの、この病気に罹った患者たちの治療選択は、依然として外科的処置(手術)や放射線治療、そして化学療法がほどこされている。
通常、ガンは増殖を制限するシグナルに細胞が反応しない場合に発症する。細胞が正常に分化する場合、各成熟段階の細胞はその細胞の役割を果たすためにより特別な機能を持つようになる。例えば、インスリンを作る細胞は、インスリンを分泌するために細胞内の仕組みを持つように成熟して行く。
正常な細胞の分化を狂わせてガン化すると、細胞の分化・成熟は止まり、これらは未熟な体細胞と非常によく似た細胞となる。
これがより未熟細胞であればあるほど好ましくない結果が待っていて、ガンはより早く増殖し、転移によって広がって行く。もし、ガン細胞を成熟させ、あるいは分化させることができれば、制御不可能な増殖はない。それゆえに研究者はガン細胞を分化・成熟させる物質を探求する。
(19)ガン細胞に作用するセンシンレン、アンドログラフォリドの効能
マウスを用いた一つの研究において、白血病細胞の分化を引き起こす天然に存在する物質についての研究が行われた。白血病とは、白血球のガンであることは周知のことである。
センシンレン、アンドログラフォリドはこの研究にも用いられた。白血病のガン細胞の分化を引き起こすと物質で、他のハーブが持つものとよく似た物質の成分である「テルペン類」をセンシンレン、アンドログラフォリドもまた含んでいた。これによって証明された研究結果というのは、センシンレン、アンドログラフォリドが白血病細胞の分化誘導活性を有していることだった。
センシンレンの葉や茎からの抽出物アンドログラフォリドは、ガン細胞を成熟あるいは分化を引き起こすことに加えて、さらにガン細胞に対して細胞毒性(細胞死作用)を持っている。このガン細胞死活性は、ヒトの鼻咽腔の表層皮膚にできた類表皮癌(扁平上皮癌)、およびヒトリンパ性白血病細胞に対しても非常に有効である。
※テルペン類
森を散策中にふと感じられる香りは、多くの場合テンペルと呼ばれる物質群によるものである。テルペンはその分子が、実にさまざまな種類の成分を含んでいる物質群である。テルペン類には香料や医薬品の原料などとして古くから用いられてきたものが多数あり、これまで知られていなかったいろいろな働きを持つものがあることもわかってきている。例えば森林浴の効果として、人の心身をリフレッシュする働きが知られているが、これも樹木の葉や幹などから放散されるテルペンの働きによるものである。医学的には高血圧予防、抗炎症作用、血栓を予防する。これにより動脈硬化を防ぎ、脳血栓や心筋梗塞などにも良い効果をもたらす。そして、テルペン類がガンや老化など、さまざまな病気の原因となる活性酸素を消去する。
ガン細胞死活性を持つと見つけられた成分はアンドログラフォリドそのものであった。センシンレン、アンドログラフォリドの有するガン細胞死活性は、アメリカの国立がん研究所によって細胞毒性物質に推奨された有効性のレベルより優れていた。
センシンレン、アンドログラフォリドが有する他の抗ガン効果を示す実験において、同じ培養条件下において3日後のセンシンレン、アンドログラフォリドの存在下にあるガン細胞の増殖は8個以下であるのに対し、センシンレン、アンドログラフォリドなしの場合は120個を数えた。その他、肉腫細胞(sarcoma;肉腫=非上皮性組織に由来する悪性腫瘍)を用いた検討も行った。
肉腫というのは普通、筋肉、結合組織、そして骨などを侵襲する悪性腫瘍である。この腫瘍のサンプルは、顕微鏡下で検査され、センシンレン、アンドログラフォリドが腫瘍の増殖を阻止するものであることが示された。
センシンレン、アンドログラフォリドがヒト乳ガン細胞の増殖において、抗ガン剤タモキシフェンと同じレベルでの抑制効果が証明された。センシンレンの抽出物アンドログラフォリド他はガンに対して用いられているいずれの化学療法薬よりもその毒性がはるかに低いレベルにある。
もちろんセンシンレン、アンドログラフォリドというユニークなハーブの使用によって、どのタイプのガンに有効であるかを決定するためには、さらなる多くの研究を待つ必要があるが、これまでの結果からセンシンレン、アンドログラフォリドのガン治療法に期待できる。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
腫瘍は、体細胞が過剰に増殖する病変で、多くは臓器や組織中に腫物はれもの・瘤こぶとして限局性の結節をつくり、発生母細胞により上皮性と非上皮性、また増殖の性質から良性(腺腫・脂肪腫・線維腫・骨腫など)と悪性(肉腫・癌腫など)に分けられる。癌細胞は、悪性腫瘍の総称である。
良性腫瘍細胞は、上記腫瘍のうち、発育がゆるやかで、周囲を破壊せず、転移を起こさないもので、生命に及ぼす危険は少ない。悪性腫瘍細胞は、周囲を破壊し、転移を起こし、生命に及ぼす危険は大きく、骨および軟骨の腫瘍であり、原発性と続発性を大別し、前者には骨・軟骨由来のもののほか、血管性・造血性・脊索性・脂肪原性・神経原性などがある。
上記ガンは、悪性腫瘍細胞及び癌細胞であるが、良性腫瘍細胞でもよいし、その他の腫瘍細胞でもよい。この腫瘍細胞は人間のものであるが、他の哺乳動物のものでもよいし、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、その他の動物、いずれの動物のものでもよい。
(20)センシンレン、アンドログラフォリドが試されたさまざまな実験内容
センシンレン、アンドログラフォリドを用いた研究において、41名はすでにガンの転移が確認されていたが、アンドログラフォリドとその化合物のみで12名の患者は完治してしまった。他のすべての患者には、センシンレン、アンドログラフォリドと標準治療薬が処方されていましたが、驚くことに47名については腫瘍の再発はなかった。
センシンレンの抽出物アンドログラフォリドの投与によって非ホジキンリンパ腫はもちろん、安全で効果的に前立腺ガンと乳ガンもその増殖を阻止した。研究室で増殖させた乳ガン細胞にセンシンレン、アンドログラフォリドを用いた検討結果から、その効果はセンシンレン、アンドログラフォリドがガン細胞DNA(遺伝物質)の合成を阻止していると考えられる。
また、センシンレンの抽出物アンドログラフォリド他が前立腺ガンに対する増殖抑制効果があり、その抑制効果は抗ガン剤として広く使われているが毒性の強いシスプラチンを用いた結果に匹敵している。センシンレンの抽出物アンドログラフォリド他が前立腺ガンに対する増殖抑制効果があり、その抑制効果は抗ガン剤として広く使われているが毒性の強いシスプラチンを用いた結果に匹敵している。
(21)エイズ研究に光明をもたらすセンシンレン、アンドログラフォリド
(22)エイズ原因ウイルス(HIV)の正体
免疫不全は、さまざまな感染症にかかりやすい根源となり、エイズ(後天性免疫不全症候群)発症の原因ともなる。免疫機能の低下は多様な臨床症状を引き起こす結果となる。なぜエイズ原因ウイルスの感染は既存の治療法や代替療法に抵抗性を示すのかを理解するためには、エイズがどのような病気であるのかをまず知る必要がある。
エイズは、はじめアフリカを起源として出現した。当初アフリカの霊長類にだけ感染していたものが、突然変異を起こして人にも感染する能力をもってしまった。特に今日のように世界旅行が簡単にできる時代となり、不幸にもウイルスはまたたく間に全世界へと広がった。最初のケースは、1981年に北アメリカで報告され病状からエイズ(後天性免疫不全症候群)と命名された。しかしながら、入院記録および冷凍されていた組織サンプルからの研究によって、AIDSは早くも1969年には存在していた。エイズが明らかにされてから、エイズ原因ウイルスにはHIV-1とHIV-2の2種類が確認された。HIV-2は、現在のところアフリカ地域に限定されている。
エイズはヒト免疫不全ウイルス(HIV)の血液、精液、膣分泌液などの体液を介した感染により後天的に発症する重篤な免疫不全症で、リンパ球のCD4陽性細胞(ヘルパーT細胞)が著しく減少する。
エイズ原因ウイルスはすべてのウイルスと同じように、それ自体では生存することも、また増殖することもできないので、必ず他の生きている細胞に感染する必要がある。エイズ原因ウイルスは適した細胞を見つけると、その細胞表面の固有のタンパク質(受容体;レセプター)に吸着する。ヒト細胞の場合には、エイズ原因ウイルスは細胞の表面上の2つの分子の結合によって細胞に侵入する。これらの中で最初に確認された分子はCD4で、他のものは最近になって確認された分子ではCCR5とCXCR4である。
エイズ原因ウイルスは脳と特定の皮膚組織に集まる傾向にある。エイズ原因ウイルスはさらに免疫系の細胞を攻撃し衰弱させる。胸腺(thymus)の頭文字を取ってT細胞と呼ばれる細胞の中で、エイズ原因ウイルスが標的とする細胞はヘルパーT細胞である。これらのヘルパーT細胞は、リンパ節と脾臓にエイズ原因ウイルスに対するより多くの抗体を産生するように指令を出す。一旦、抗体によってウイルスを不活性化すれば、サプレッサーT細胞は抗体のそれ以上の産生を止める化学物質を産出する。しかしながら、エイズ原因ウイルスはヘルパーT細胞に感染する。ヘルパーT細胞の遺伝子機構の一連の作動の一部を欺いて、エイズ原因ウイルスが必要とする化学物質をその細胞内に産生させてしまう。
エイズ原因ウイルスがヘルパーT細胞の“一連の作動機構”を乗っ取ることにより、もはや免疫系の担当部ではなくなり、ウイルス産生の工場となってしまう。T細胞なしでは、免疫系の他の成分は、抗体を産生するためのいかなる指令を受け取ることが不可能となり、エイズ原因ウイルスに対して極めて深刻な事態を引き起こすことになる。
(23)エイズ原因ウイルス(HIV)に用いられる治療薬とは
現在のエイズに対する通常の治療法は、薬によってウイルスを完全に取り除くまではできないため、ウイルス量を最大限に抑えることを目指した薬の組み合わせた治療が行われている。この薬の組み合わせは“カクテル療法”と呼ばれ、プロテアーゼ阻害剤と逆転写酵素阻害剤と呼ばれる合成物からなっている。プロテアーゼは新しいウイルスの複製と組み立てをするためにエイズ原因ウイルス(HIV)に不可欠な酵素である。逆転写酵素は、エイズ原因ウイルス(HIV)がT細胞内でその遺伝物質をコピーするために用いる別の酵素である。
これらの酵素を抑えている間は血液中のエイズ原因ウイルス(HIV)量は減少し、多くのケースにおいて効果的な治療となるが、患者のエイズ関連疾患を抑えるものとはなっていない。また、薬の新しい組合せに対してウイルス株が治療に耐性をもつまでにどれくらいの期間がかかるのか、研究者等にもよくわかっていない。エイズ原因ウイルスに対する薬物療法では、薬に対する耐性ウイルスがわずかながら生き残ってしまうとエイズ原因ウイルス(HIV)感染が再発するのが常なので、新しい薬の組み合わせの研究が際限りなく続けられることになる。
また、プロテアーゼ阻害剤(サキナビル、リトナビル、ビラセプトおよびインディナビル)は、すべての人に対して効果があるわけではないし、よりよく吸収されるものでもない。患者は多量の服用量(1日当たり36錠の錠剤)が必要で、1年間に1万6,000ドル以上もの出費負担がのしかかってくる。プロテアーゼ阻害剤治療には、さらには危険な面もある。たとえば副作用として糖尿病や高血圧症を発症させたり、あるいはより増悪化することが、患者の身にふりかかる。
他の治療法としてAZT(HIV感染を遅らせることができる抗ウイルス作用)があるが、腎結石、骨髄抑制、および脳や肝への毒性など、副作用の高い発生率があるため、使用が制限されている。 したがって、科学者はより良い治療法を今も探し求めている。
プロテアーゼ阻害剤は、大豆・米・トウモロコシ・豆類・野菜のトマトおよびその他の野菜類などの植物中に多量に含有されている。逆転写酵素阻害剤もまた同様に自然界に存在している。ケルセチンは赤りんごや赤タマネギで見つかったビオフラボノイドの一種で、これらはエイズ、ヘルペスやポリオなどに抗ウイルス作用がある。
(24)センシンレン、アンドログラフォリドがエイズ治療に対して提案するもの
HIV感染を止める方法を捜す重要な場所は、ウイルスがそれ自体を複製するために細胞の仕組みを使うというヒト細胞にある。細胞は“細胞周期”と名付けられた一連のステップを繰り返して増殖し複製される。この過程においては、化学的なメッセージが細胞のさまざまな場所への作動開始のスイッチを入れる(turn on)ために伝わって行く。このプロセスのことが「シグナル伝達」と呼ばれれる。エイズ原因ウイルス(HIV)は実際に細胞の正常のメッセンジャーを破壊し、より多くのウイルス粒子を作り出す。
細胞メッセージシステムを研究する方法であるシグナル伝達法を用いて、センシンレン、アンドログラフォリドがウイルスの通信メカニズムを破壊してしまう物質が含まれていることが判明した。このセンシンレンというハーブの成分の1つであるアンドログラフォリドが細胞内の信号伝達系を修正させることによって、ウイルスが他の細胞への感染を防ぐことによってその病気の進行を止める。
細胞のエネルギー源としての分子はリン酸化合物(ATP)である。細胞周期の中でリン酸化合物は代謝によったり新たに作られたりしてエネルギーが作られる。このエネルギーは細胞周期のルールにのっとって多くの細胞内機能のために使われ、そしてこれにより細胞の複製が継続されて行くことが可能になる。
センシンレン、アンドログラフォリドは、このようにしてウイルスの複製に帰着する鍵となる酵素を抑制する。実際に試した実験では、センシンレン、アンドログラフォリドはヒトリンパ球においてHIV複製を抑制し、エイズ原因ウイルス治療薬であるAZT (ジドブジン)との相乗作用でウイルスの抑制を増強する。
シグナル伝達技術を使用して、細胞シグナリングに様々な物質が及ぼす影響を観察し測定することができる。 細胞シグナルを解釈して改変することによって、疾患を理解し、予防し、治療することができる。この技術は、ハーブを含む新治療薬の解明や癌診断のための試験法を案出し、さらに環境発癌物質の作用を解明する際にますます重要な役割を果たす。
エイズ原因ウイルスは、規則性のある細胞周期の特定の段階で進行をストップさせることにより、細胞複製の調整を変化させてしまう。つまり、ウイルスが行うことは、細胞分裂に関するすべての現象をコントロールする最も重要な情報処理酵素を変化させてしまう。この調整に関わる酵素(実際には複数の酵素からなっている)は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれている。エイズ原因ウイルスの主攻撃目標はサイクリン依存性キナーゼのうちのCDK-1に限られている。
細胞周期の全ての細胞段階に移行するに際し、細胞内活性に関する全ての情報はCDK-1に送られる。CDK-1の異常な機能に関連する疾患には、エイズに加えて、ガン・心疾患・ウイルス感染などがある。このウイルスは、CDK-1を結合させることにより、リン酸化と呼ばれる過程で誤動作させてしまう。このリン酸化を防ぐことができる薬剤はエイズの重篤度を軽減させることができる。こうした能力を持つ新しい種類の抗ウイルス化合物はチロシンキナーゼ阻害剤と呼ばれている。この中の一つにアンドログラフォリドは含まれている。
エイズ原因ウイルスに感染したT細胞が高レベルの過剰リン酸化を受けたCDK-1を蓄積することが示される。センシンレンの抽出物アンドログラフォリドは実際のところエイズ原因ウイルスによって改変されたCDK-1を阻害することができた。これらの阻害剤がエイズ原因ウイルスによって生ずるエイズ発症を停止させるかもしれない。これらの合成物は、高エネルギーリン酸塩の生成に関与するウイルス酵素を阻害することができるアミノ酸である。
エイズ原因ウイルス増殖とT細胞死に関わるプロトオンコジーン(前癌遺伝子)c-mosの働きを阻止する。c-mosは細胞のDNAに組み込まれていて、通常では不活性な状態にある。また、c-mosは本来ならば生殖組織細胞にのみに観察され、他の体細胞やCD4陽性細胞の中には発現しない。CD4陽性T細胞がエイズ原因ウイルス(HIV)に感染するとc-mos遺伝子は活性化されて発現される。
これが起こるためには、c-mosキナーゼと呼ばれる酵素が必要とされる。センシンレン抽出物アンドログラフォリドは、この酵素を阻害することができ、従って正常な免疫機能を保たせることができる。
(25)エイズに対するセンシンレン、アンドログラフォリドの効用とは
エイズにおけるセンシンレン、アンドログラフォリドの作用メカニズムとしての仮説は、ハーブ抽出物つまりアンドログラフォリドによってエイズ原因ウイルス感染細胞はアポトーシス(プログラム細胞死)を起こす。
この過程では死細胞は小さく断片化され、その後、免疫系細胞によって貪食される。エイズ原因ウイルス(HIV)は、非感染の免疫細胞に対してアポトーシス誘導シグナルを発生させている。これは、エイズ原因ウイルス感染症によって引き起こされた大規模なT細胞破壊を引き起こす原因について説明できる。それはウイルスの存在量をはるかに超える大量のT細胞が破壊される。
センシンレン、アンドログラフォリドの研究で、センシンレンの抽出物アンドログラフォリドがエイズ原因ウイルスの複製を阻害するAZTの効能を増加させた。センシンレン、アンドログラフォリドとAZTとの組合せの効果は、組み合わせのいずれかの化合物単独の効果よりもはるかに大きいものである。有益性を付け足せば、より低用量AZTの投薬が可能となるかも知れない。
センシンレンの抽出物アンドログラフォリドは、他のウイルス対策として役立つかもしれないと考えており、たとえばエボラウイルスやヘルペス関係のウイルス、肝炎ウイルス、そしてインフルエンザウイルスにもその効果があると考えられる。そして特に白血病細胞については、センシンレン、アンドログラフォリドの効用が高感度である。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
(26)風邪
センシンレン抽出物アンドログラフォリドを用いた風邪の予防について、二重盲検法によった研究が行われた。その内容というのは、センシンレン製剤、アンドログラフォリド製剤(カンジャン;Kan Jang)を1日に200mg/日服用した学生群と服用しなかった学生群を対象として、3か月の期間に風邪に罹ったか否かについての検討が行われた。
1か月の経過では顕著な違いはなかったが、3か月後ではセンシンレン、アンドログラフォリドを含まないブラセボ剤(偽薬)服用群と対比すると風邪の発症率に著しい減少効果が認められた。つまり、センシンレン、アンドログラフォリドを服用した学生群が風邪をひく割合は30%に対し、ブラセボ剤を服用した学生群は62%と高い風邪の発生率であった。これはセンシンレン、アンドログラフォリドを服用した場合、風邪をひく相対危険度は、服用しなかった群に比べ2.1倍も低いという結果となった。この予防効果は、免疫賦活作用があるセンシンレン、アンドログラフォリドによるものである。
この学生たちの調査では投与したセンシンレン、アンドログラフォリド(カンジャン)の量は従来の研究で用いられた投与量よりはるかに少量でした。この研究では、すでに鼻汁、鼻づまり、咽喉痛、耳痛、咳、発熱、頭痛、倦怠感のある風邪を引いている患者を2群に分け、その片方の群には1日に1,200mgが投与された。投薬開始当初は、センシンレン製剤、アンドログラフォリド製剤(カンジャン)を投与された患者群とブラセボ剤を服用した患者群とも同様の症状があり差は見られなかった。
センシンレン製剤、アンドログラフォリド製剤が投与された群では、4日目に疲労、寒さによる震え、喉の痛み、筋肉痛などの症状が消えてしまった。このことから研究者等はアンドログラフォリドを4%濃度に規格したセンシンレン製剤、アンドログラフォリド製剤(カンジャン)を投与すれば、風邪の治療に有効であるといえる。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
(27)抗菌、抗マラリア、フィラリアの駆虫
センシンレン、アンドログラフォリドの抗菌作用は、その成分が細菌に対する抵抗を示す他の薬と異なる点で優れている。抗生物質に細菌がさらされるごとに、その大部分の細菌は殺菌されるが、少数の細菌が生き残る(薬剤耐性菌の出現)。これらの薬剤耐性菌は増殖を続け、最初に使った抗生剤では治療できない感染症を引き起こしてしまう。ときにはこの様な薬剤耐性菌は既存の抗生剤では菌の増殖を止められなくなってしまい、最近の医療現場で問題となっている。
センシンレン、アンドログラフォリドや他のハーブは、抗生物質の代わりに用いるものではないが、抗生物質と一緒に服用すると、センシンレン、アンドログラフォリドや他のハーブが抗生剤の補完性作用を持つことが分かった。自然のハーブ治療は、合成(人工)薬剤と併用して用いるといっそう効果があり、またより安全でもある。
マラリアは、熱帯または亜熱帯の国々において今もなお流行している病気の一つである。マラリア原虫を媒介する蚊は治療薬に対してすでに耐性力がついてしまっており、こうしたことからマラリアを根絶することが今もって難しくなっている。
センシンレンの抽出物アンドログラフォリドには4種類の活性成分(アンドログラフォリド, ネオアンドログラフォリド, デオキシアンドログラフォリド, アンドログラフィシド)が含まれていて、これらの成分がマラリア原虫を媒介する寄生体に対して有効に作用することがわかった。センシンレンの抽出物アンドログラフォリドには、この寄生体の増殖を抑える顕著な効果がある。4種類の成分のうちの、ネオアンドログラフォリドとデオキシアンドログラフォリドの2種類の成分が最も有効に作用する。また、感染後にだけ投与する場合よりも、感染する15~21日前と感染後に投与した方がより有効であることもわかった。
感染後の治療では、抗マラリア薬剤として一般的によく使われるクロロキンよりもその効果は優れていた。その後の研究では、研究者らはセンシンレン、アンドログラフォリドの効用について繰り返し行われたによる実験で、肝臓を保護する鍵となる抗酸化酵素スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD)の再活性化の手掛かりになる可能性が示された(Chander 1995)。
さらにまた、センシンレン抽出物アンドログラフォリドは、体内のリンパ管を閉塞して、はなはだしい腫脹をきたす象皮病と呼ばれる原因となるフィラリア寄生虫(ミクロフィラリア;細長い線虫)を死滅させる作用もある。この研究は犬を使って行われたが、まったく毒性を示すような症状は出なかったため、センシンレン抽出物アンドログラフォリドはヒトに対しても無害であると判断した。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
(28)肝臓、胆嚢の保護
インドのアーユルヴェーダ医療では、肝臓障害の治療に効果があるセンシンレン、アンドログラフォリドを含有する26種類の製剤があります。センシンレンにはアンドログラフォリド, アンドログラフィシド, ネオアンドログラフォリドといった効果を発揮する成分が含まれていることは前述したとおりである。
センシンレンに含まれるこれらの化合物は、ドライクリーニングの溶剤として用いられた四塩化炭素やアルコールまたは他の有毒化学物質をマウスに投与することで肝毒性を示すが、センシンレン、アンドログラフォリドに含まれるこれらの化合物は肝保護的作用として働く。これらの化学物質は脂質の過酸化を引き起こすことにより肝臓を損傷するのである。これは化学物質によって生成されたフリーラジカル(遊離基)が肝細胞囲む細胞膜を破壊する。
センシンレン、アンドログラフォリド化合物を有毒化学物質が投与する3日前に動物に投与しておくと、肝臓に有意な防御効果が認められた。この効果は、センシンレン、アンドログラフォリド成分には酸化を防ぐ成分が含まれていて、この成分がオオアアザミから採集した植物性の抗酸化力のあるシリマリン(silymarin)のような働きをする。
センシンレンのアンドログラフォリドは胆汁流の有意な増加をもたらす。胆汁というのは肝臓でつくられて胆嚢に蓄えられ、そして消化を助ける役目を持っている。動物にアンドログラフォリドを前もって投与した後に、化学薬品のパラセタモール(paracetamol)を投与しても胆汁産生の減少は認められなく、センシンレン投与、アンドログラフォリド投与の方がシリマリンより強力という結果が得られている。
感染性肝炎は肝臓の急性炎症であり、しばしば肝硬変へと移行する場合や昏睡に続き死に至らしめる。センシンレン、アンドログラフォリドを煎じたり、水に溶かして服用した大多数の患者に著しい改善が認められる。
こうした患者の多くの場合、服用してからなんと5日後には食欲が戻り、黄疸(目の結膜や皮膚が黄色になる)は徐々になくなってゆき、24日後に完全に消えている。この時の発熱に対しては、平均して7日後には平熱に戻っている。センシンレン、アンドログラフォリドの有効性の他の指標として肝機能検査※における改善も含んでいる。こうしたことから、研究者はセンシンレン、アンドログラフォリドが感染性肝炎の有用な治療である。
センシンレンに含まれているアンドログラフォリドは、胆嚢機能を増強する有効な成分である。動物にセンシンレン、アンドログラフォリドを7日間連続して投与すると、胆汁の流量、胆汁酸塩、胆汁酸が増加を示した。これらの増加は有益で、胆嚢機能を増強することにつながる。従って、センシンレン、アンドログラフォリドを服用すると、胆石ができにくくなり、脂肪の消化を促進することにつながる。また、センシンレン、アンドログラフォリドは胆汁の量がアセトアミノフェン毒性によって減少することを防ぐ。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
(29)下痢と腸に対するセンシンレン、アンドログラフォリドの効果
センシンレン、アンドログラフォリドには下痢を止める効果があることも動物実験を通じて判明した。世界的にみて、下痢に起因する死亡原因の上位10の1つに入っており、特に発展途上国では子供の死因、とりわけ5歳未満の幼児の死の主因となっています。抗生物質の多用は、細菌が抗生物質に対して耐性を持つようになって来ている。
下痢止め薬(止潟薬)としては実にさまざまな薬があり、例えばカオリン-ペクチン、ビスマス、ロモチール、塩酸ロペラミドなどが使われているが、これらの薬の多くは好ましくない副作用がある。下痢による疾病によって悲劇的な状態にある発展途上国では、安価でしかも簡単に入手できるハーブ療法はその国の人々にとっては有益な薬として役立つ。
センシンレン抽出物アンドログラフォリドは大腸菌(E.coli)に起因した細菌感染による下痢に対して著しい効果がある。センシンレンの成分であるアンドログラフォリドとネオアンドログラフォリドは、最も一般的な下痢止め薬として使われているロペラマイド(Imodium)と同程度の効き目がある。
急性の細菌性下痢症の患者に対して、6日間でアンドログラフォリドの総量を500mgとし、体重1キログラム当たり2.5~3.0mgを1日3回以上に分けた服用による治療を行った。この投薬計画は水分補給と合わせて行った。その結果は、80人の患者中66人は治癒し、その成功率は82.5%であった。7人には少し効果がみられ、残る7人(8.8%)には効果が認められなかった。治療の有効性は糞便試料の検査室における分析によって確認されている。細菌性赤痢の1,611例と下痢症の955症例にセンシンレン、アンドログラフォリドを投与した結果、全体の有効性は91.3%であった。
センシンレン、アンドログラフォリドは抗菌性があるため、細菌性赤痢に対して治療効力があると確信されているが、研究ではこの効果を確証することができなかった。実際のところセンシンレン、アンドログラフォリドは下痢止めに大変有効である。これがどのようにして効果を発揮されたかは完全には現在のところ解明されていない。
大腸の慢性炎症は、センシンレン、アンドログラフォリドを60gとアカヤジオウ(地黄)を30g混ぜて、この煎じたものを服用させると治療される。地黄は貧血、疲労を治療し、傷ついた骨の損傷の治療に使われる中国のハーブ薬草であり、また油脂や軟膏等の形態の粘滑剤で、皮膚の炎症または傷を沈静化する薬物としても使われている。
このように煎じた混合液は浣腸として使われ、100~150mlの量を毎晩続けて14日間使用すると効果がある。総計85人の患者のうち、61人(72%)が臨床的に完治し、22人(26%)は症状が緩和した。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
(30)発熱と炎症
センシンレン、アンドログラフォリドは、発熱、鎮痛、腸疾患に効く民間治療薬としても使われてきた。センシンレン、アンドログラフォリドは解熱効果がある。中国でのラットを使った研究では、アンドログラフォリド, ネオアンドログラフォリド, デヒドロアンドログラフォリドは、細菌の内毒素(細菌から放出された毒性化学物質でエンドトキシンとも呼ばれる)、肺炎球菌、溶血性連鎖球菌、腸チフス、パラチフスや化学物質である2,4-ジニトルフェノールのような異なる発熱誘発剤などに起因する発熱を下げる作用がある。
発熱に対し本当にセンシンレン、アンドログラフォリドが効くのかどうか実際に試みるために検討した。ラットを発熱させ、これらのラットに体重1kg当たり30mg、100mg、300mgの3つのグループに分けてセンシンレン、アンドログラフォリドを投与したところ、直腸温の低下が認められた。センシンレンから抽出したアンドログラフォリドの鎮痛作用はアスピリンに比べると弱いが、解熱作用はアスピリンに匹敵した効果であったことが判明した。
この研究では、体重1kg当たり300mgのセンシンレン、アンドログラフォリドを投与した場合の効果は、同量のアスピリンを投与した場合と同じであり、またセンシンレン抽出物アンドログラフォリドは潰瘍をも防ぐ作用があることもわかった。潰瘍の治療薬としてよく使われるシメチジンは潰瘍の形成を85.43%に減少させる効力があるのに対して、センシンレン、アンドログラフォリドの活性エキスは31%の潰瘍の形成を減少させた。センシンレン、アンドログラフォリドは胃潰瘍治療に伴うコストや副作用を伴わず、総胃酸度や酸性の胃液分泌を著しく抑えた。
こうしたセンシンレン抽出物アンドログラフォリドの作用効果は別の研究でも実証され、体重1kg当たり200mgのアスピリンに匹敵する作用があることが分った。また、まったく毒性がないので安全性の点において大きな利点があることを立証した。様々なセンシンレン、アンドログラフォリドの成分の抗炎症性効果は、多数の研究が化学薬品によって生じた炎症によって明らかにされた。
さらにセンシンレン、アンドログラフォリドは、ヒスタミン、ジメチルベンゼン、はず油(溶血性壊死を起こす)、アドレナリンや急性のニューモシスチスによって引き起こされる炎症が有意に軽減または軽くされた。この治療効果は、デオキシアンドログラフォリド, アンドログラフォリド, ネオアンドログラフォリドおよびデヒドロアンドログラフォリドのいずれの成分においても認められた。その中でも特に、デヒドロアンドログラフォリドが最も有効で、ネオアンドログラフォリドとアンドログラフォリドがそれに次いで効果があった。
炎症を治療するこの作用は、副腎に関係するメカニズムが働いているように思われる。それは動物実験で副腎を除去すると、この作用は認められなくなってしまうからである。さらにデヒドロアンドログラフォリドは脳の下垂体における副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の合成と分泌を増進させる作用があってこれが抗炎症作用につながるという研究があり、デヒドロアンドログラフォリドの効用が確認されている。副腎皮質刺激ホルモンは、体内でつくられる抗炎症作用のあるコルチゾールを作るように副腎に働きかける。
自然産物の抗炎症作用を持つ物質を研究する過程で、センシンレン、アンドログラフォリドは浮腫(edema)を抑制する作用があることわかった。体重1kg当たり200mgのセンシンレン、アンドログラフォリドを投与した場合、3時間後に60%の対象の浮腫を防ぐことができ、400mgに増量させた場合では62.7%の抑制率であった。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
(31)心血管系
1964年に血管形成術が開発され、この技術は閉塞した血管(通常は動脈)内腔を拡張するために使われるようになってきた。この技術は、バルーン(風船)を動脈の中に挿入した後、膨らませて動脈を拡げ脂肪沈着物を除去し、血流を改善させる。
1967年にクリーブランド病院の外科医のグループは、冠動脈狭窄の治療のため、心臓バイパス手術を行った。この手術は、人体や動物から取った新しい静脈または人工血管を使い、狭窄の起こった動脈と交換する手術であった。今日では、この血管成形手術やバイパス手術はごく一般的に行われており、アメリカでは毎年、およそ800,000件が行われている。
しかしながら、これらの治療法もまた決して万能ではない。例えば、血管形成術では、6か月以内で30%の患者で血流低下の再発という問題があり、そのうち50%の患者は再血管形成術が必要とされている。血管形成術を受けた後、再血管形成術が必要になった患者の多くは最終的にバイパス手術を受ける結果になっている。しかしバイパス手術においてでも成功率は50~65%である。
心臓発作の救急治療に使われる血栓溶解薬は、血管形成術と同様に有効で、かつ血管形成術後1か月以内で起こることがある再発作、脳卒中を防ぐ効用もある。体内における血液凝固プロセスは現在でも完全に明らかにされてはいない。血液凝固には治癒のための不可欠な凝固と、異常な凝固と不要な凝固を引き起こすプロセスに微妙なバランスがある。出血や血管の発生を研究は、前述したシグナル・トランスダクション・テクノロジーが役に立つ。センシンレン抽出物アンドログラフォリドは、血液の凝固が開始するまでの時間を延長させることが実証されており、それにより異常な血液凝固の亢進を抑える作用もある。
またセンシンレン、アンドログラフォリドは血管形成術後にみられる血管の再狭窄を防ぐ役割を果たす。血管形成術を実施したウサギを使った研究では、血管形成術前3日間と手術後4週間にわたってセンシンレン、アンドログラフォリドを投与することによって、血管の狭窄を著しく防ぐことが明らかにされた。
センシンレン、アンドログラフォリドをウサギに投与しなかった場合、検討した100%に動脈狭窄が認められたのに対して、投与したウサギの場合ではそれが70%に数値が落ちた。血管の内壁障害や食物の高コレステロールによって引き起こされる狭窄は、センシンレン、アンドログラフォリドの服用によって少なくなる。センシンレン、アンドログラフォリドは、冠動脈血管形成術後に再発する狭窄を予防するのに非常に有効といえる。
急性心筋梗塞(心臓発作)に起因して心筋を破壊された患者の80~90%において、症状が開始直後に患者の心臓に血液凝固塊が認められる。心臓の筋肉に血液が送られなくなると、酸素が欠乏して組織が壊死してしまう。医師および研究者は、心臓のポンプ機能を維持するために、心筋梗塞の大きさ(組織損傷の面積)、言い換えれば組織の破壊をできる限り小さくすることが最良の治療法と考えている。凝固した血液(血餅)を溶かして狭窄した動脈の血流を良くしてくれる薬剤が絶えず求められている。センシンレン、アンドログラフォリドはこの治療計画の目的に適する可能性を持っている。
犬を使った研究で心筋梗塞が発生した1時間後にセンシンレン、アンドログラフォリドを投与した時、心筋に生ずる障害が減少した。こういった心筋障害は、心筋への血液供給が復活した後に起こる。これは酸素の急激な流入による細胞組織を破壊する活性酸素(free radical oxygen)や異常に多量のカルシウムが供給されることによる。同じ大学におけるその後の研究では、心電図検査によって研究者等が調べたところセンシンレン、アンドログラフォリドを事前に投与しておくと、心電図における異常な変化を予防することができた。
また、センシンレン、アンドログラフォリドは血液凝固の口火を切る血小板の凝集を防ぐ作用があって、梗塞の原因となる血餅(血栓)は認められなかった。センシンレン、アンドログラフォリドのさらなる効果は、血液の凝固物を溶解させる身体が持ち合わせた自然なプロセスである線維素溶解系を活性化した。
心疾患を予防するもう一つの方法は高血圧を矯正する。センシンレン、アンドログラフォリドは血圧を下げる降圧剤としての作用がある。センシンレン抽出物アンドログラフォリドを高血圧ラットに静脈内投与された研究がある。脳で分泌されるホルモンであるノルアドレナリンは血管を収縮させて、心拍数、血圧、血糖値の増加させる働きがある。このノルアドレナリンによって上昇した血圧はセンシンレン、アンドログラフォリドによって抑制されたことがわかった。
このセンシンレン、アンドログラフォリドの降圧作用は、血管壁の平滑筋を弛緩させたものと考えられる。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
(32)生殖能
センシンレン、アンドログラフォリドは大量の服用した場合には、明らかに抗授精効果と同様に妊娠を中絶する作用を有している。センシンレン、アンドログラフォリドはインドでは、下痢、発熱やその他の消化器疾患といった一般的な病気に短期の治療に使われるだけハーブとして勧められている。
これはセンシンレン、アンドログラフォリドの中に、避妊作用がある成分が含まれているためと言える。生殖能に対する実際の影響を調べるために、オスのラットを使った研究では、体重1kg当たり105mg乾燥したセンシンレン、アンドログラフォリドの葉の粉末を毎日60日間投与すると、精子細胞の分化と成熟段階における精子形成の停止が観察された。
薬草には精子生成を阻害する抗精子形成作用があるか、あるいは男性ホルモンのアンドロゲンの作用を阻害する抗アンドロゲン作用を持つ成分が含まれているためにこのような受精ができなくなると結論づけられる。多くのハーブエキスが生殖機能に影響を与えるため、妊娠中は使用しないことである。
同じく、メスのマウスを使って抗受精作用について研究した。体重1kg当たり2グラムの天日乾燥したセンシンレン、アンドログラフォリドの粉末を毎日6週間投与されたメスのマウスは、これまで多くの子どもを作ったことがあるにもかかわらず、センシンレン、アンドログラフォリドを投与されないオスと5回の交尾をしても妊娠に至らなかった。
一方、センシンレン、アンドログラフォリドを投与されないメスは、同じそのオスと交尾すると正常に子供を生んだ。この研究者等は、センシンレン、アンドログラフォリドには排卵を阻害する作用があると考えている。このハーブが容易に入手できるバングラディシュでは、避妊薬として使えるのではないかという科学者の動機づけとなって実験が行われた。
培養ヒト胎盤組織で行われた研究において、センシンレン由来のアンドログラフォリド・コハク酸ナトリウムがヒトプロゲストロンの生成を阻害することがわかった。このホルモンは妊娠が成功するのになくてはならないものである(女性の妊娠を維持させる役目を果たす黄体ホルモン)。投与されたアンドログラフォリド・コハク酸ナトリウムは、ヒト胎盤組織に特異性があるので、目的としたこの組織のみに作用するわけで、大量に服用しても他の正常なヒト組織には有害作用はなかった。このことから、センシンレン、アンドログラフォリドの誘導体には有望な避妊薬として効果があるといえる。
メスのマウスにデハイドロアンドログラフォリドを投与した別の研究で、妊娠に影響を与える投与量は体重1kg当たり250mgであることがわかってきた。このアンドログラフォリドの純成分量は、前述した薬草のセンシンレン、アンドログラフォリド投与量とは一致していませんが、オスのマウスでは体重1kg当たり105mgであり、メスの場合は2g(2,000mg)である。この量は人間に換算すればとてつもない量と言える。したがって、不妊を引き起こすセンシンレン、アンドログラフォリド中の活性化合物がアンドログラフォリド系化合物の一つであるとは考えにくいといえる。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
(33)神経系統
ほとんどの化合物は、血液脳関門を通過しないが、アンドログラフォリドは通過して脳内、特に脊髄に入り込む。
センシンレン、アンドログラフォリド関連製品に鎮静作用がある。たとえば麻酔薬としてバルビタールを投与されたマウスは、より短時間に鎮静効果が現れ、麻酔はより長く持続している。そしてまたアンドログラフォリドを麻酔剤と一緒に投与された場合では、より少量の麻酔剤で麻酔効果が得られる。センシンレン、アンドログラフォリドの成分が、脳内のバルビタール受容体に作用させている可能性がある。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
(34)呼吸器系
センシンレン、アンドログラフォリドは扁桃腺炎、呼吸器感染症および結核の治療に使われてきた。センシンレン、アンドログラフォリドを用いて129例の急性扁桃炎患者の治療を行ったところ、患者の65%の治療成功率であった。49人の肺炎患者の治療をセンシンレン、アンドログラフォリドで行ったところ、患者の35例に改善傾向が認められ、9人は完全に治った。
これとは別の研究では、センシンレン、アンドログラフォリドを用いて肺炎患者111人を治療し、慢性気管支炎と肺感染症を併発している20人の患者の治療を行ったところ、その全体的な有効性は91%であった。発熱を伴う患者の72%は3日以内におさまり、これらの患者の40%は1週間以内に感染部位がより小さくなることが認められた。
結核は抗生物質のリファンピシンを使って治療することが一般的である。しかし、この抗生物質のみを使った治療では22.5%の患者には治療効果がみられず死に至る結果となる。これに対し、センシンレン(アンドログラフォリド)の2.5%含有する溶液を体重1kg当たり50~80mgの割合で毎日2か月間注射した研究では、治癒率が改善されるという結果がでた。結核性髄膜炎の治療では、70人の患者のうち30%の患者が治癒し、死亡率はわずか8.6%であった。センシンレン、アンドログラフォリドと抗生物質リファンピシンを併用すると死亡率を2.6倍低下させることがわかった。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
(35)センシンレン、アンドログラフォリドが効く他の病気
レプトスピラ症(ワイル病)は、病原性レプトスピラ(らせん状の細菌;Leptospira interrogens)によって感染する疾患で、高熱、出血性病変、中枢神経機能障害、黄疸を誘発する。この感染症の研究では、デヒドロアンドログラフォリド、アンドログラフォリドまたは、ネオアンドログラフォリドの錠剤を服用した患者の約80%に効果があった。
A型肝炎の男女合わせた患者20例を40gの粗化合物に相当するセンシンレン、アンドログラフォリド(カルメグ;Kalmegh)を煎じて24日間服用したところ、患者20人すべての目の結膜および尿の黄色調が消えて正常な色に回復した。そして、服用した患者の90%は食欲が回復し、83%が一般的な“うつ状態”から解放された。全体として、生化学的検査および症状の変化に基づいて、患者の80%が治癒し、残りの20%が改善された。肝炎患者112例のうち83%が治療に成功した。
急性腎孟腎炎は局所的細菌感染による腎臓の炎症である。この疾患に対するセンシンレン、アンドログラフォリドの有効性を評価した研究では、腎孟腎炎治療に用いられる標準的な薬であるニトロフラントイン(尿路感染治療薬で大腸菌などに効力があるとされる)と比較したところ、センシンレン、アンドログラフォリドの効力はこの薬と同レベルで有効と分かったが、副作用はより少なかったことが認められた。
絨毛上皮腫は胎盤絨毛の上皮細胞に由来した悪性度の高い腫瘍であり、血腫によって囲まれている。この腫瘍は血行性転移が起こりやすく、発症の初期段階で転移しやすく、肺、肝臓、脳、膣やその他の骨盤内臓器に頻繁に転移する。
悪性胞状奇胎は、胎盤を形成する初期の細胞から生じる腫瘍である。センシンレン、アンドログラフォリドはこの病状に対しても特異な効力を発揮することがわかった。ある研究によれば、センシンレン、アンドログラフォリドあるいはアンドログラフォリド誘導体を服用した患者60人のうち、41人は腫瘍の転移を止められなかったが、12人の患者についてはセンシンレン、アンドログラフォリドとその有効成分誘導体の服用のみで回復に至った。
そして驚くべきことには、この患者のうち4人の女性は、通常はこの病気にかかると妊娠はきわめて困難であるとされているにもかかわらず、回復して妊娠ができるまでになった。センシンレン、アンドログラフォリドと併用して他の薬で治療された患者47人については研究観察期間中に腫瘍の再発は認められなかった。
肛門腫瘍を有する患者の症例研究では、センシンレン、アンドログラフォリドの煎じ薬を飲んで満足な結果が得られたが、その煎じ薬の処方は以下の通りです。まず水1,000mlとセンシンレン、アンドログラフォリドを100gの割合で煎じ、後に残ったものを濾過して除き、その溶液500mlに酢10mlを混ぜたものを煎じ薬とする。この煎じ薬の温度を40℃未満に下げてから、腰湯として毎日2回15分間入って肛門腫瘍部を暖めて治療する。
センシンレン、アンドログラフォリドを含むその他の薬草をいろいろと組み合わせたものを服用して治療した病気で、効果が認められたものには次のものがある。日本脳炎、子宮膣部びらん、骨盤内感染症、化膿性中耳炎、幼児の皮膚壊疽、膣炎、ハンセン病、ヘルペス、水痘(水疱瘡;みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、神経皮膚炎、湿疹、熱傷などの治療剤である。また、蛇の毒(コブラの毒)をマウスに投与した時、センシンレン、アンドログラフォリドは毒によって誘発される呼吸障害が現れるまでの時間を遅らせ、延命効果があることも証明された。
このように多方面にわたる疾病でその効果が期待できる能力をセンシンレン、アンドログラフォリドは持っていると言える。
なお、上述の「センシンレン」は、センシンレンから抽出したアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)で同様の効果を奏するものであり、この「センシンレン」を「アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)」と置き替えても同様の薬効/効能/効果を奏する。
このアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲で、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲で、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合しても、同様の薬効/効能/効果が得られる。
0.0001重量%乃至99.999重量%の範囲のうち、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)の割合が少なくなれば、上記薬効/効能/効果は徐々に弱くなるが、それでも薬効/効能/効果は達成され、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)の割合が多くなれば、上記薬効/効能/効果は徐々に強くなり、効能もより強く早く達成される。
0.001重量%乃至99.9999重量%の範囲のち、水、アルコールまたは常温で液体の油脂の割合が少なくなれば、粉状に順次近づくが、やはり上記効能は達成され、水、アルコールまたは常温で液体の油脂の割合が多くなれば、ゾル状、ゲル状となって、さらに液状になり、やはり上記薬効/効能/効果は達成される。
アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)(センシンレン)によって上述及び下記の各病巣の細胞は、オートファジーのほか、アポトーシス(プログラム細胞死)も誘導される。この過程では死細胞は小さく断片化され、その後、免疫系細胞によって貪食される。
上記効能は、オートファジーを誘導する因子、及び、アポトーシスを誘導する因子として働き、上述のガン、エイズ、風邪、抗菌、抗マラリア、フィラリアの駆虫、肝臓障害、肝臓、胆嚢、大腸菌に起因した細菌感染による下痢、細菌の内毒素、下痢と腸、肺炎球菌、溶血性連鎖球菌、腸チフス、パラチフスや化学物質である2,4-ジニトルフェノールのような異なる発熱誘発剤などに起因する発熱、発熱、鎮痛、腸疾患、発熱と炎症、急性心筋梗塞(心臓発作) 、脳卒中、心血管系、避妊、生殖能、麻酔、神経系統,扁桃腺炎、呼吸器感染症、結核、レプトスピラ症(ワイル病)、A型肝炎、腎孟腎炎、悪性胞状奇胎、肛門腫瘍、結膜、日本脳炎、子宮膣部びらん、骨盤内感染症、化膿性中耳炎、幼児の皮膚壊疽、膣炎、ハンセン病、ヘルペス、水痘(水疱瘡;みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、神経皮膚炎、湿疹、熱傷、呼吸器系に対して効果が認められる。
上記薬学的組成物またはオートファジー性細胞死誘導剤の各成分の合計は100重量%を超えることはない。もし、各成分の合計が、合計すると100重量%を超える場合または100重量%に満たない場合には、合計すると100重量%となるように、水は、アルコールまたは油が増減されるか、または各成分が比例換算されて等比増減される。したがって、上記重量%は混合する上記各成分の各混合比率を表す。
(36)他の実施の形態・実施例
本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で一部省略可能である。例えば、上記水は、アルコールまたは油に置き替えてもよいし、上記水にアルコールまたは油を混合してもよい。
この場合、水0.001重量%乃至99.9999重量%、望ましくは10重量%乃至80重量%、に対して、アルコール0.001重量%乃至99.9999重量%、望ましくは10重量%乃至80重量%、または、油0.001重量%乃至99.9999重量%、望ましくは10重量%乃至80重量%、混合される。
上記アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)には、アンドログラフォリドのほか、センシンレンの葉の、デオキシアンドログラフォリド 、ネオアンドログラフォリド 、ホモアンドログラフォリド、バニコリドを含んでもよいし、含まなくてもよい。さらにアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)には、アンドログラフォステリン、β-シトステロール-D-グルコシドなどを含んでもよいし、含まなくてもよい。
上記アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)には、アンドログラフォリドのほか、センシンレンの根の、モノ-O-メチルワイチン(5-ヒドロキシ-7,8,2,3-テトラメトキシフラボン)、アンドログラフィン(5-ヒドロキンシン-7,8,2- トリメトキシフラボン)、パニコリン(5,2-ジヒドロキシン-7,8-ジメトキシフラボン)、アピゲニン-7,4-ジメチルエーテル、α-シトステロール、KHPOなどを含んでもよいし、含まなくてもよい。
上記アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)には、アンドログラフォリドのほか、センシンレンの全草の、14-デオキシ-11-オキソアンドログラフォリド、14-デオキシ-11,12-ジデヒドロアンドログラフォリドを含んでもよいし、含まなくてもよいし、ステロイドサポニン、糖類、縮合タンニンなどのフェノール系物質を含んでもよいし、含まなくてもよい。
上記アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)としては、14-デオキシ-アンドログラフォリド、14-デオキシー11、12-デヒドロゲンアンドログラフォリド、ネオアンドログラフォリドなど種々のものがある。
上記薬学的組成物としては、練り薬学的組成物、粉体薬学的組成物、液体薬学的組成物、固体薬学的組成物、クリーム状薬学的組成物、ゾル状薬学的組成物、ゲル状薬学的組成物、ジェル状薬学的組成物、ペースト状薬学的組成物、フォーム状薬学的組成物など、種々のものがある。
アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)の化学式は上述のとおりであり、特開平10-120510明細書などにも示される。アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を含有する植物としては、センシンレン(穿心蓮)のほか、アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を含有するものならば、なんでもよい。
抗炎症剤は、炎症を抑える医薬品・薬剤の総称である。炎症そのものは異物の侵入や組織の障害といった生体組織にとって好ましくない刺激が発生した時に免疫系が引き起こす局所的な防御反応であるが、生体にとっての非自己の排除を助ける一方で自己である生体そのものにも一定の損傷や苦痛を引き起こす性質も持つ。
医療に際して、生体の引き起こした炎症が過剰に人体を傷つけているアレルギー疾患や、外部から炎症を引き起こす生理活性物質が注入されることによって起こるスズメバチ刺傷、ドクガ刺傷などの治療に際してはこの炎症のデメリットを抑制する必要があり、そうした目的で用いられる医薬品が抗炎症薬・薬剤である。主にステロイド系抗炎症薬と非ステロイド系抗炎症薬の2種類に分類される。
ステロイド系の抗炎症薬は副腎皮質ホルモンの糖質コルチコイド、合成糖質コルチコイドのことである。 ステロイドは非常に優れた抗炎症作用を持つ。非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs:Non Steroidal Antilnflammatory Drugs)には抗炎症作用のほか、鎮痛作用、解熱作用を併せ持つものが多い。
非ステロイド系抗炎症薬はさらに酸性抗炎症薬と塩基性抗炎症薬に分けることができる。酸性抗炎症薬は一般に広く使用されておりアスピリン、イブプロフェン、インドメタシンなどがこれに分類される。酸性抗炎症薬はアラキドン酸からプロスタグランジンを合成する酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することによってケミカルメディエーターの一種であるロイコトリエンやプロスタグランジンの合成を阻害し、炎症が起きるのを抑える。
このような抗炎症剤としては、後述するユーカリ葉油、アラントインのほか、アスピリン、イブプロフェン、インドメタシンなどがある。
上記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサン、低級アルコール、高級アルコールなどがある。上記油は、綿実、米ぬか、菜種、やし、パーム、大豆、とうもろこし、ごま、ヘキサン等の植物種子や果実などの植物性由来でもよいが、動物性のものもふくまれてもよい。
上記液体の油脂は、オリーブ油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、ヒマシ油、ハッカ油、アーモンド油、大豆油、椿油、ゴマ油、ベニ花油、ココナツ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、米油、米ぬか油、落花生油、綿実油などの液体の油脂でもよい。オリーブ、ホホバ、ヤシ、パーム、ヒマシ、ハッカ、アーモンド、大豆、椿、ゴマ、ベニ花、ココナツ、ヒマワリ、トウモロコシ、米、米ぬか、落花生、綿実は、通常油脂からろ過されて廃棄されてもよいし、油脂、水またはアルコールに残されてもよい。
(37)他の発明の効果
[1]オートファジー誘導因子としてアンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を0.0001重量%乃至99.999重量%、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合したことを特徴とするオートファジーを誘導する薬学的組成物。これにより、オートファジーを誘導させて、オートファジー性細胞死を誘導/誘起させることができる。
[2]上記アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)によるオートファジー誘導因子の標的細胞は、動物の腫瘍細胞であることを特徴とする請求項1記載の薬学的組成物。これにより、腫瘍細胞の治癒に貢献できる。
[3]上記腫瘍細胞は癌細胞であることを特徴とする請求項2記載の薬学的組成物。これにより、癌細胞の治癒に貢献できる。
[4]上記腫瘍細胞が良性腫瘍細胞であることを特徴とする請求項2記載の薬学的組成物。これにより、良性腫瘍細胞の治癒に貢献できる。
[5]上記アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、エイズウイルスの働きを阻害することを特徴とする薬学的組成物。これにより、エイズによる病変の治癒に貢献できる。
[6]エイズウイルスの増殖とT細胞死に関わるプロトオンコジーン(前癌遺伝子)c-mosの働きを阻害する請求項5記載の薬学的組成物。これにより、エイズによる病変の発現に抵抗できる。
[7]上記アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)は、マラリア原虫を媒介する寄生体の増殖を抑える、またはフィラリア寄生虫を死滅させる薬学的組成物。これにより、マラリアまたはフィラリアの病変を治癒できる。
[8]アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を有効成分として含有するオートファジー性細胞死誘導剤。これにより、オートファジーを誘導させて、オートファジー性細胞死を誘導/誘起させることができる。
[9]アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)をセンシンレン抽出物として含有し、かつ抗ウイルス剤または飲食品として適用される場合も含む請求項8記載のオートファジー性細胞死誘導剤。これにより、抗ウイルス剤または飲食品を容易に飲食できる。
[10]上記アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)はセンシンレン由来であることを特徴とする請求項1、6または8に記載のオートファジー性細胞死誘導剤。これにより、センシンレンを有効に活用できる。
アンドログラフォリドがオートファジーを誘導する惹起物質として有効であることは、腫瘍、感染症、心血管疾患、肝疾患、消化器疾患、呼吸器疾患、神経変性疾患など、さまざまな疾患の治療に関わると期待される。
(A)腫瘍に対して
今日の腫瘍についての概念は、腫瘍にオートファジーが誘導されると血管新生が進められて癌細胞に栄養を供給し、炎症反応を制御して腫瘍が増殖するという考え方が多く、がん治療法として多くがアポトーシス死を誘導してオートファジーを抑制する薬物が考えられている。
今回、我々は造血器腫瘍細胞(K562株に)にアンドログラフォリドを添加することにより、これまで抗腫瘍薬として使われてきたシスプラスチンやVCRと同等、あるいはそれ以上の抗腫瘍効果を得ることができた。これはアンドログラフォリドを添加することにより、アポトーシスの誘導による細胞死とオートファジー細胞死を同時に誘導することが確認できたことによる。我々の実験においても他の抗腫瘍薬の作用は、アポトーシスを誘導するものであった。これまでに両者の細胞死を同時に誘導する惹起物質の報告は見られない。アンドログラフォリドによるアポトーシスの誘導とオートファジー細胞死を同時に誘導することは、がん治療に新しい知見となるものと考える。
(B)感染症
細菌やウイルスなどの病原体からの免疫防御にも、オートファジーの誘導は、大きな役割を担い、特に病原体の捕捉、分解、抗原提示といった一連の免疫反応が増幅される。
(C)心血管疾患
心筋細胞においてアンドログラフォリドによるオートファジーの誘導は、細胞内の機能維持や修復、虚血などのストレス応答に対して役割を担い、心血管疾患の予防に繋がると考えられる。
(D)肝疾患、消化器疾患、呼吸器疾患、神経変性疾患
正常な細胞に対するアンドログラフォリドによるオートファジーの誘導は、活性酸素、細胞内小器官(オルガネラ)の異常、DNA損傷といった腫瘍化につながるような悪影響から細胞を守るように働く。
また、障害された臓器や細胞に対しては、日々の新陳代謝に加えて、細胞によって危険な傷のついたミトコンドリア、変性疾患の原因となる凝集しやすいタンパク質、細胞に侵入した病原体などを積極的に除去することにより、さまざまな疾患や感染から正常化を図る。
(E)下痢
細菌やウイルス感染によるものは、(B)における自然免疫と獲得性免疫の誘導によるものと、肝臓・胆嚢・小腸・大腸に対して(D)に示した作用に合わせ、アンドログラフォリド特有の薬効による。
(F)解熱・鎮痛
感染症に由来するものでは、(B)と同じによるものと、アンドログラフォリドは炎症サイトカインであるIL-6,TNFの細胞からの分泌を抑制する作用を有していること。また、核内転写因子であるNFKBを阻害することにより抗炎症作用が薬効と示されるものである。
(G)寄生虫に対する駆虫作用
駆虫作用に対しては、これまで知られている好酸球の作用を増強するか、あるいはアンドログラフォリド特有の薬効による。
アンドログラフォリド(ジテルペンラクトン)を0.0001重量%乃至99.999重量%、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%、これらをほぼ均一に混合した。これにより、アンドログラフォリドによって、オートファジーを誘導させて、オートファジー性細胞死を誘導/誘起させることができ、病変を治癒できる。この病変には、腫瘍、エイズ、抗菌、抗マラリア、フィラリアの駆虫、肝臓障害、肝臓、胆嚢、大腸菌に起因した細菌感染による下痢、細菌の内毒素、下痢と腸、肺炎球菌、溶血性連鎖球菌、腸チフス、パラチフスや化学物質である2,4-ジニトルフェノールのような異なる発熱誘発剤などに起因する発熱、発熱、鎮痛、腸疾患、発熱と炎症、急性心筋梗塞(心臓発作) 、脳卒中、心血管系、避妊、生殖能、麻酔、神経系統,扁桃腺炎、呼吸器感染症、結核、レプトスピラ症(ワイル病)、A型肝炎、腎孟腎炎、悪性胞状奇胎、肛門腫瘍、結膜、日本脳炎、子宮膣部びらん、骨盤内感染症、化膿性中耳炎、幼児の皮膚壊疽、膣炎、ハンセン病、ヘルペス、水痘(水疱瘡;みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、神経皮膚炎、湿疹、熱傷、呼吸器系に対して効果が認められる。
造血器腫瘍細胞を不死化した培養株U937、HL60、K562に終濃度10μl添加した時、24時間後のそれぞれに認められたオートファジー蛍光強度比はK562株に3.4と明らかなオートファジー陽性細胞が著増した。図5の2つの山の左側の高い方の濃度の薄い高い山の部分が、オートファジー蛍光強度比が著増した部分で、同図の同部分の濃い低い山の部分がアンドログラフォリド添加前のものである。
抗腫瘍薬として汎用される代謝拮抗剤であるシタラビン(Ara-C)や細胞分裂に重要な微小管の働きを止めるビンクリスチン(VCR)をオートファジー細胞死への誘導としたとき、図8の濃度の薄い高い山の部分が、オートファジー蛍光強度比が著増した部分で、同図の同部分の濃い低い山の部分がアンドログラフォリド添加前のものである。
図9は各細胞株に抗がん剤として汎用されるシタラビン(Ara-C)、ビンクリスチン(VCR)の両者に対するアンドログラフォリド(Andro)の抗腫瘍効果を検討した。図9のAndro添加では、すべての細胞株においてAnnexin V陽性率に著明な増加が認められ、腫瘍細胞がアポトーシスを引き起こしていることを示し、抗腫瘍効果があることを意味している。
オートファジーの内容を示す。 オートファジーの分析を示す。 オートファジー及びアポトーシスの実験結果を示す(U937株)。 オートファジー及びアポトーシスの実験結果を示す(HL60株)。 オートファジー及びアポトーシスの実験結果を示す(K562株)。 オートファジー及びアポトーシスの実験結果を示す(U937株)。 オートファジー及びアポトーシスの実験結果を示す(H929株)。 オートファジー及びアポトーシスの実験結果を示す(H562株)。 オートファジー及びアポトーシスの実験結果を示し、抗腫瘍効果を示す。 アンドログラフォリドの生物学的作用と治療効能を示す。

Claims (5)

  1. アンドログラフォリドを含有し、IgA型ヒト形質細胞腫細胞の細胞死を誘導するためのオートファジー性細胞死誘導剤。
  2. 上記オートファジー性細胞死誘導剤は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与または皮膚投与、若しくは舌下経路、直腸経路、経皮経路または鼻腔内経路によって投与される請求項記載のオートファジー性細胞死誘導剤。
  3. 上記オートファジー性細胞死誘導剤は、アンドログラフォリド0.0001重量%乃至99.999重量%、水、アルコールまたは常温で液体の油脂を0.001重量%乃至99.9999重量%、これらを総合計で100重量%を超えない範囲で、ほぼ均一に混合される請求項記載のオートファジー性細胞死誘導剤。
  4. アンドログラフォリドを含有し、成人一人当たり0.1μg~100mg/kgで、一日3回~3ヶ月に1回投与される請求項記載のオートファジー性細胞死誘導剤。
  5. 上記オートファジー性細胞死誘導剤はアポトーシスの細胞死も誘導する請求項1記載のオートファジー性細胞死誘導剤。


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