JP4536360B2 - 抗血栓剤 - Google Patents

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Description

本発明は、抗血栓作用を有する新規な抗血栓成分に関する。本発明の抗血栓成分は主として黒霊芝に含有する。
血小板は血栓形成において極めて重要な因子である。すなわち、血栓の形成は、血管内の損傷などに起因してアラキドン酸などが活性され血小板の凝集能が高まることにより血栓形成に至るといわれている。血栓が大量に形成されると、その形成部位から先の血流が著しく悪くなり、組織に重大な障害を引き起こし、血栓症が起こる。
例えば、心臓や脳の血管が血栓でつまると、心筋梗塞、脳梗塞を引き起こし、生命に危険をもたらす。
従って、血栓の形成を防止し、血栓に起因する種々の疾患を治療するには血小板凝集を抑制することが有効である。
従来の血栓治療剤としては、アセチルサリチル酸、パナルジンなどが使用されている。最近では、天然物に薬効を望む傾向もあるが、現在に至るまで有効に予防や改善できる天然物は存在しなかった。
黒霊芝は、担子菌類ヒダナシタケ目サルノコシカケ科マンネンタケ属に属し、マンネンタケの一種である。マンネンタケの代表として、赤霊芝(霊芝)が一般的であり、従来技術として、マンネンタケ(霊芝)の抗血栓効果が知られている(特許文献1)。この成分は、熱水に可溶であり、アルコールに不溶な成分であることが記載されている。また、霊芝の水溶性成分のアデノシンやその誘導体に血小板凝集抑制効果があることが知られている(非特許文献1)。
これらの文献は、赤霊芝の成分がほとんどであり、黒霊芝の成分については不明なところも多く、抗血栓効果に関しては報告されていない。
一般にマンネンタケは、赤霊芝、白霊芝、黄霊芝、紫霊芝の他、黒霊芝(黒芝)があげられ、これらは子実体の色が赤、白、黄、紫、黒であることから単純に命名されたものであるが、最近では、黒霊芝を霊芝や紫芝などと区別して研究されている。例えば、非特許文献2によると、黒霊芝には赤芝や紫芝に含有する代表的なトリテルペン成分(ガノデリン酸類)は含有されず、味も全く異なると報告されている。以上のことから、黒霊芝の薬効について更に深く研究する余地があった。
また、赤霊芝とは学名も成分も異なる、黒霊芝中に含有する成分の抗血栓効果については従来全く知られていなかった。また、本願発明の黒霊芝の特定の成分は、特許文献1の成分とは紫外吸収スペクトルや溶媒に対する溶解性も異なり、全く異なる構造の成分である。
特開昭57−112331号公報 Shimizu.A,Chem.Pharm.Bull,Vol.33,3012−3015,1985 日本醸造協会誌,85(6),385−392,1990
本発明は、血栓の形成を予防や改善できるような天然の抗血栓剤を提供することを目的とする。
この様な事情により、本発明者らは鋭意研究検討した結果、主として黒霊芝に含有する特定成分に抗血栓効果が高いことを発見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の事項によって特徴付けられるものである。
1.
下記に示される、(1)〜(6)のすべての条件を満たす成分を含有することを特徴とする、抗血栓剤。
(1)黒霊芝又は黒霊芝の抽出物に含有する成分である。
(2)赤外吸収スペクトルを測定すると(KBr法)、2925、1700、1600、1455、1170、835cm −1 に吸収の極大を示す。
(3)本成分をエタノールに溶解し、紫外吸収スペクトルを測定すると、280〜330nmに吸収の極大を示す。
(4)分子内に芳香環を含有する。
(5)本成分に酢酸エチルを加えたとき、酢酸エチル可溶分の溶液は着色性であり、茶色〜赤褐色を示す。
(6)加水分解すると、ヒドロキシケイヒ酸を遊離する。
2.
下記(A)〜(F)の条件にてHPLC分析を行い、図1に示される、保持時間が10〜25分のブロードなピークを有する成分を含有することを特徴とする、請求項1に記載の抗血栓剤。
分析条件
(A)HPLCカラム:ODS(オクタデシル化シリカゲル)
(B)HPLCカラム温度:40℃
(C)展開溶媒
0.2%リン酸/0.2%リン酸を含有するアセトニトリルを用い、0.2%リン酸を含有するアセトニトリルを20%から100%に20分かけて直線的に溶媒を変化させ、100%で25分保持する(45分分析)。
(D)流速:1mL/分
(E)検出:313nm
(F)試料:試料10mgを1mLのエタノールに溶解し、20マイクロL導入
上記のうち、(4)はH、13C−NMR分析により判別可能である。すなわち、溶媒を重メタノール(CDOD)を用いて測定した場合、6〜8ppm(H−NMR)、100〜150ppm(13C−NMR)に芳香族に置換した水素原子のスペクトル吸収が認められる。上記のスペクトル分析値は分析器、手法、ピークの幅広さなどにより、若干数値の誤差がある場合がある。(5)については、本成分約1〜10mgに酢酸エチル1mLを加えることで着色性を判別できる。
また、本発明の抗血栓成分は、定法により加水分解を行うと、ヒドロキシケイヒ酸を遊離する性質がある。例えば、水酸化ナトリウム水溶液などを用いた定法より加水分解でき、HPLCなどで分析することで確認できる。
本発明の抗血栓成分は、以下に示した高速液体クロマトグラフ(HPLC)により確認できる(図1参照)。本分析によれば、保持時間が約10〜25分の幅広のピーク群が本発明の抗血栓成分である(分析条件により、保持時間、パターンは若干変化することがある)。
(A)カラム:オクタデシル化シリカゲル(内径4.5mm×250mm)
(B)カラム温度:40℃
(C)展開溶媒:0.2%リン酸/0.2%リン酸を含有するアセトニトリルを用い、0.2%リン酸を含有するアセトニトリルを20%から100%に20分かけて直線的に溶媒を変化させ、100%で25分保持する(計45分分析)。
(D)流速:1mL/分
(E)検出:313nm
(F)試料:試料10mg/mLのエタノール溶液を20マイクロL導入
本発明に用いられる黒霊芝は、マンネンタケ科(Ganodermataceae)、マンネンタケ属(Ganoderma)に属し、学名は、G.atrum、G.japonicum、G.sinenseなどといわれている。また、マンネンタケ属のキノコについては、中国の薬学古書である「本草綱目」や「神農本草経」には、黒霊芝(黒芝)のほか、赤霊芝(霊芝)、紫霊芝(紫芝)、青霊芝(青芝)、黄霊芝(黄芝)及び白霊芝(白芝)が存在すると記載されている。黒霊芝は広く中国や日本市場などで流通しているものを用いることができるし、自生品や栽培品を用いても良い。
なお、黒霊芝は紫霊芝と外観が似ているために紫霊芝として市場に流通していることもある。この場合、例えば、上記の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析することにより、本発明の抗血栓成分の検出が可能である。
本発明に用いられる黒霊芝などは、子実体、菌糸体、天産物、栽培物、及び培養物などを問わず使用することができる。また、必要に応じてそのままの状態、破砕物、或いは乾燥物などを適宜選択して抽出操作に付することができる。
本発明の抗血栓成分の抽出方法の一例として、好ましくは黒霊芝の子実体を溶媒抽出物することにより得ることができる。
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなど)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、石油エーテルなど)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテルなど)が挙げられる。好ましくは、低級アルコール、ケトン類、アセトニトリル、エステル類などや、これらの含水溶媒が良く、特に好ましくは、安全性の面からエタノール又は含水エタノールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。また、塩基性下で抽出することも好ましい。
本発明の抗血栓成分をさらに精製する方法として、互いに混合しない溶媒で液・液分配抽出により溶媒分画精製することもできる。
液・液分配抽出に用いる溶媒としては、上記の溶媒を用いることが可能である。例えば、(水又は含水アルコール)・炭化水素系、(水又は含水アルコール)・エーテル系、(水又は含水アルコール)・エステル系、水・ブタノール系などを採用できる。上記にとらわれず、互いに混合しない溶媒系であれば採用できる。好ましくは、溶媒抽出物(固形物)に含水低級アルコールと炭化水素溶媒を加えて抽出し、炭化水素溶媒可溶分を除去した残液にエステル溶媒を加えて抽出することにより本発明の抗血栓成分を精製することができる。また、酸や塩基による分別抽出を行うこともできる。
本発明の抗血栓成分をさらに精製する方法として、マンネンタケ抽出物又は上記の溶媒分画物を吸着剤に吸着させ、溶媒により溶出させることにより、抗血栓成分を精製することができる。
吸着剤としては、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着樹脂、イオン交換樹脂、オクタデシル化シリカゲル(ODS)、シリカゲル、セルロース、デキストラン、修飾デキストランなどの吸着剤が挙げられる。中でも、スチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着樹脂やODSが好ましい。
吸着方法としては、吸着剤をカラムに充填し、これに抽出物の溶液を通す方法や、抽出物の溶液に吸着剤をそのまま混合する方法などがあるが、特に限定されない。
吸着剤の溶出溶媒としては、各吸着剤の特性により選択できるが、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなど)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、石油エーテルなど)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテルなど)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコールなどの溶媒が良く、特に好ましくは、水やエタノールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。更に、上記溶出溶媒に酸やアルカリを添加してpH調整して用いても良い。
上記抽出物や精製物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、ろ過、活性炭などによる脱色、脱臭、エタノール沈殿などの処理をして用いても良い。更には、抽出や精製した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥などの処理を行い、乾燥物として用いても良い。
特に好ましい例を挙げると、上記の液・液分配抽出(上記の好ましいとされる溶媒系で抽出)を行なった後、上記の合成吸着樹脂(スチレン−ジビニルベンゼン系、上記の好ましいとされる溶媒で溶出)で精製して本発明の抗血栓成分を精製することができる。
ただし、本発明の抗血栓成分は、使用目的に応じ、抽出物のままでも良いし、液・液分配抽出や吸着剤による精製を単独又は組み合わせることができる。
本発明の抗血栓剤には、上記抽出物や吸着剤などによる精製物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、希釈剤を用いることができ、希釈剤としては固体、液体、半固体でもよく、たとえば次のものがあげられる。すなわち、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、香料、保存料、溶解補助剤、溶剤などである。具体的には、乳糖、ショ糖、ソルビット、マンニット、澱粉、沈降性炭酸カルシウム、重質酸化マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロース又はその誘導体、アミロペクチン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、界面活性剤、水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、カカオ脂、ラウリン脂、ワセリン、パラフィン、高級アルコールなどである。
本発明の抗血栓剤は、医薬部外品、医薬品などに用いることができ、その剤形としては、例えば、経口用として散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤などである。非経口用として注射液にすることが出来る。また、座薬とすることも出来る。
本発明に用いる抗血栓成分の摂取量は、投与形態、使用目的、年齢、体重などによって異なるが、0.1〜5,000mg/日、好ましくは1〜500mg/日の範囲で1日1回から数回経口投与できる。もちろん前記したように、投与方法や投与量は種々の条件で変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要がある場合もある。また、製剤化における抗血栓成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
本発明の新規な成分は、抗血栓作用が非常に高かった。
本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、本発明の処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部をし、%は重量%を示す。
製造例1 黒霊芝の溶媒分画精製物
黒霊芝子実体の乾燥物1Kgにエタノール15Lを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、黒霊芝のエタノール抽出物を20g得た。このエタノール抽出物2.0gをエタノール350mLに溶解し、同容量の精製水とヘキサンを加えて抽出した。水層部分を1/2に濃縮し、同容量の酢酸エチルを加えて抽出した後、濃縮乾固し、ヘキサン画分0.84g、酢酸エチル画分0.56g、水画分0.60g得た。このうち、酢酸エチル画分を黒霊芝の溶媒分画精製物とする。
製造例2 黒霊芝のカラム精製物
黒霊芝子実体の乾燥物1Kgにエタノール15Lを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、黒霊芝のエタノール抽出物を20g得た。このエタノール抽出物10.0gを50%エタノールに溶解し、スチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着樹脂500mLを充填したカラムに通液した。次いで、精製水、10、20、50、80、90、100%エタノール各1Lで溶出させた後、それぞれを濃縮乾固した。黒霊芝の抗血栓成分は、80%以上のエタノール画分に多く含まれており、80%以上のエタノール画分をまとめ、黒霊芝のカラム精製物を約2g得た。
比較製造例1 霊芝(赤芝)の熱水抽出物
霊芝(赤芝)子実体の乾燥物100gに2Lの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮後、凍結乾燥して、霊芝(赤芝)の熱水抽出物を6.0g得た。
比較製造例2 霊芝(赤芝)の溶媒分画精製物
製造例1の黒霊芝を霊芝(赤芝)に変えて同様に行い、酢酸エチル画分(溶媒分画精製物)を0.64g得た。
HPLC分析
製造例1の中間製造物である黒霊芝のエタノール抽出物を用い、下記の分析条件で本発明抗血栓成分のHPLCクロマトグラムを示した(図1参照)。図5において、保持時間が10〜25分のピーク群が本発明の抗血栓成分である。
(A)カラム:ODS(内径4.5mm×250mm、デベロジル・野村化学製)
(B)カラム温度:40℃
(C)展開溶媒
0.2%リン酸/0.2%リン酸を含有するアセトニトリルを用い、0.2%リン酸を含有するアセトニトリルを20%から100%に20分かけて直線的に溶媒を変化させ、100%で25分保持する(45分分析)。
(D)流速:1mL/分
(E)検出:313nm
(F)試料:エタノール抽出物10mgを1mLのエタノールに溶解し、20マイクロL導入
赤外吸収スペクトル分析
製造例1の黒霊芝の溶媒分画物をKBr法で赤外吸収スペクトルを測定した(図2)。その結果、約3294、2926、1698、1604、1456、1169、823cm−1に吸収の極大を示した。
紫外吸収スペクトル分析
製造例1の黒霊芝の溶媒分画物5mgを100mLのエタノールに溶解し、紫外吸収スペクトルを測定した(図3)。その結果、295、313nmに吸収の極大を示した。
NMR分析
製造例1の黒霊芝の溶媒分画物を用い、定法によりH、13C−NMR分析した結果、6.6〜7.6ppm(H−NMR)、100〜150ppm(13C−NMR)にスペクトル吸収を認め、芳香環の存在が確認された(図4、5参照)。なお、溶媒は重メタノール(CDOD)を用いた。
溶液の色
製造例1の黒霊芝の溶媒分画物10mgに5mLの酢酸エチルを加えた。酢酸エチル可溶分を濾過した後、溶液の色を目視にて確認した。その結果、溶液の色は、赤褐色を示した。
可視吸収スペクトル分析
製造例1の黒霊芝の溶媒分画物2mgを2mLのエタノールに溶解し、可視吸収スペクトルを測定した(図6)。その結果、吸収の極大を示さない物質であった。
血小板凝集抑制作用
文献(嘉久志寿人,四家勉,早崎洋子,松原尚志,内田清久,本間義春,川角浩,竹内良夫,日本薬理学雑誌,Vol.95,335−346,1990、Born,G.V.R.,Nature,Vol.194,927−929,1962)を参考に行った。
エーテル麻酔下でモルモットの心臓より3.8%クエン酸ナトリウム1容に対し血液9容の割合で採血し、室温で1,000rpm、15分遠心後上清を採取し多血小板血漿(Platelet−Rich Plasma:PRP)とした。残りの血液は室温で3,000rpm、15分遠心し乏血小板血漿(Platelet−PoorPlasma:PPP)を得、PRPとPPPをなど量混合したもの(A液とする)を試験に用いた。
血小板凝集反応はBornの方法に準じて、血小板凝集計(NBS HEMA TRACER 601、二光バイオサイエンス)を用いて測定した。すなわちA液180マイクロLに試験試料溶液20マイクロLを加え、37℃で1分間撹拌(1,000rpm)予備加熱後血小板凝集惹起物質(ADP)22マイクロLを添加し、血小板の凝集により生じた透光度の変化を経時的に記録した。血小板の凝集率はPRP及びPPPの透光度をそれぞれ0%及び100%とし、凝集剤添加後の最大透光度を最大凝集率とした。血小板凝集阻害率は以下の式で算出した。
血小板凝集阻害率(%)={1−(凝集剤添加後の最大透光度)/(凝集剤添加前の最大透光度)}×100
これらの実験結果を表1に示した。その結果、本発明の抗血栓成分は霊芝(赤芝)の熱水抽出物と比較して優れた血小板凝集阻害作用を示した。特に、黒霊芝の溶媒分画精製物は、赤霊芝の溶媒分画精製物と比較して顕著な作用を示した。以上により、黒霊芝の抗血栓成分は、非常に高い血小板凝集阻害作用を示した。
Figure 0004536360
本発明の抗血栓成分は、処方例として下記の製剤化を行うことができる。また、これらの製剤は、血栓症の予防や改善に有効である。
処方例1 錠剤
処方 配合量
1.黒霊芝のカラム精製物(製造例2) 4部
2.乾燥コーンスターチ 25
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20
4.微結晶セルロース 41
5.ポリビニルピロリドン 7
6.タルク 3
[製法]成分1〜4を混合し、次いで成分5の水溶液を結合剤として加えて顆粒成形する。成形した顆粒に成分6を加えて打錠する。1錠0.52gとする。
処方例2 飲料
処方 配合量
1.黒霊芝の溶媒分画物(製造例1) 0.1部
2.エタノール 2
3.ステビア 0.05
4.リンゴ酸 5
5.香料 0.1
6.精製水 92.75
[製法]成分1及び2を混合する。次いで、成分3、4、5及び6を加えて混合する。
本発明の新規な抗血栓成分は、高い抗血栓作用を有するため、血栓症の予防や改善に有効である。
黒霊芝の抗血栓成分のHPLCチャートを示す。 横軸:保持時間(分)、縦軸:強度 黒霊芝の抗血栓成分の赤外吸収スペクトルを示す。 横軸:波数(cm−1)、縦軸:透過率 黒霊芝の抗血栓成分の紫外吸収スペクトルを示す。 横軸:波長(nm)、縦軸:吸光度 黒霊芝の抗血栓成分H−NMRスペクトルを示す。 横軸:波数(ppm)、縦軸:強度 黒霊芝の抗血栓成分13C−NMRスペクトルを示す。 横軸:波数(ppm)、縦軸:強度 黒霊芝の抗血栓成分の可視吸収スペクトルを示す。 横軸:波長(nm)、縦軸:吸光度

Claims (2)

  1. 下記に示される、(1)〜(6)のすべての条件を満たす成分を含有することを特徴とする、抗血栓剤。
    (1)黒霊芝又は黒霊芝の抽出物に含有する成分である。
    (2)赤外吸収スペクトルを測定すると(KBr法)、2925、1700、1600、1455、1170、835cm −1 に吸収の極大を示す。
    (3)本成分をエタノールに溶解し、紫外吸収スペクトルを測定すると、280〜330nmに吸収の極大を示す。
    (4)分子内に芳香環を含有する。
    (5)本成分に酢酸エチルを加えたとき、酢酸エチル可溶分の溶液は着色性であり、茶色〜赤褐色を示す。
    (6)加水分解すると、ヒドロキシケイヒ酸を遊離する。
  2. 下記(A)〜(F)の条件にてHPLC分析を行い、図1に示される、保持時間が10〜25分のブロードなピークを有する成分を含有することを特徴とする、請求項1に記載の抗血栓剤。
    分析条件
    (A)HPLCカラム:ODS(オクタデシル化シリカゲル)
    (B)HPLCカラム温度:40℃
    (C)展開溶媒
    0.2%リン酸/0.2%リン酸を含有するアセトニトリルを用い、0.2%リン酸を含有するアセトニトリルを20%から100%に20分かけて直線的に溶媒を変化させ、100%で25分保持する(45分分析)。
    (D)流速:1mL/分
    (E)検出:313nm
    (F)試料:試料10mgを1mLのエタノールに溶解し、20マイクロL導入
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