JP2002212095A - α−グルコシダーゼ阻害物質 - Google Patents
α−グルコシダーゼ阻害物質Info
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Abstract
血糖上昇を抑制し、しかも食品として安全に摂取可能な
α−グルコシダーゼ阻害物質を提供する。 【解決手段】 海藻のエゾイシゲおよびヒバマタの双方
もしくはどちらか一方、あるいはこれら海藻の水および
有機溶剤抽出物の双方もしくはどちらかに含まれる重合
度25〜200のフロロタンニン類がラットに対する糖
負荷試験でも有意に血中グルコース濃度の上昇抑制を確
認し、食品として毒性のないことを確認した。以上によ
り、上記課題を解決した。
Description
康食品、特定保健用食品などに使用することができるエ
ゾイシゲおよびヒバマタ、もしくはそれらの水あるいは
有機溶剤の抽出物を有効成分としてなるα−グルコシダ
ーゼ阻害物質に関するものである。
皮上に局在する二糖類分解酵素であるα−グルコシダー
ゼを特異的に阻害し、糖質の分解・吸収を遅延すること
により食後の血糖値の急上昇及びそれに続くインスリン
値の上昇を抑制することが明らかにされている。したが
って、α−グルコシダーゼ阻害物質は過血糖症状に由来
する糖尿病や肥満などの疾患の改善に有用である。ま
た、α−グルコシダーゼ阻害物質を添加した食品はこれ
ら疾病の症状を改善することから関連する代謝異常の患
者に有用であり、さらに日常の食生活に取り入れること
によって糖尿病や肥満の予防食として健常者にも適して
いる。
阻害物質であるアカルボースやボグリボースはインスリ
ン非依存型糖尿病の有効な治療薬として臨床に用いられ
ているが、医師の厳密な処方が必要であり、また、腹部
膨張、放屁の増加、軟便、下痢などの副作用も有り食品
や食品素材として利用するのは困難である。したがっ
て、食品や食品素材として利用可能な安全性が高く、容
易に摂取できるα−グルコシダーゼ阻害物質が求められ
る。
質としては、例えば、特開平10−292000号公報
には、動物性または植物性蛋白質の加水分解物由来のペ
プチドおよびその混合物が開示されている。さらに、特
開平12−072682号公報にはクローブ由来のα−
グルコシダーゼ阻害物質が開示され、特開平12−23
9164号公報にはハイビスカス酸類を有効成分とした
α−グルコシダーゼ阻害剤が開示されている。
開平10−292000号公報に記載のα−グルコシダ
ーゼ阻害物質およびその混合物は、ペプチドおよびその
混合物が胃内および小腸で容易に分解される可能性があ
るが、実際の生体内においてはα−グルコシダーゼ阻害
活性を示すか否かが検討されていない。また、特開平1
2−072682号公報に記載のα−グルコシダーゼ阻
害物質はクローブ由来のオイゲニインおよびその誘導体
であり、試験管内でのα−グルコシダーゼ阻害活性は認
められるものの生体内での血糖上昇抑制効果が示されて
おらず、その生理的有効性は不明確である。前記と同様
に特開平12−239164号公報に記載のハイビスカ
ス酸類を有効成分としたα−グルコシダーゼ阻害剤につ
いても生理効果が示されていない。
性を示し、かつ安全性が高く容易に摂取が可能で実際に
生体内で血糖上昇抑制作用を有するα−グルコシダーゼ
阻害物質を提供することを目的とするものである。
課題を解決するために鋭意検討した結果、ヒバマタ科の
ヒバマタ及びエゾイシゲ抽出物が強いα−グルコシダー
ゼ阻害活性を示すこと、その阻害物質がフロログルシノ
ールの重合物であるフロロタンニン類であることを初め
て明らかにした。これらの化合物を有効成分として含有
させれば、その顕著なα−グルコシダーゼ阻害作用によ
り、血糖上昇を抑制して糖尿病や肥満の予防・改善に有
効であることなどを見出し、これら知見に基づき本発明
を完成するに至った。
escens C.Agardh)及びエゾイシゲ(P
elvetia babingtonii de To
ni)は食用の褐藻類であり、葉部及び茎部、又は全て
の部位を用いてもよい。
化したもの、もしくはそのものを水あるいは有機溶剤等
の溶媒で抽出したものが該当する。抽出に用いる有機溶
媒としてはメタノール、エタノール等のアルコール、酢
酸エチル、アセトン等が該当するが、中でも強いα−グ
ルコシダーゼ阻害活性が得られる10〜90重量%アル
コール水溶液が好ましい。該アルコールとしては、メタ
ノール、エタノールが好ましい。抽出法としては浸漬に
よる抽出、加熱抽出、連続抽出、超臨界抽出等のいずれ
の方法を用いてもよい。前記の溶媒を用いて抽出物を得
るには、公知の方法に従えばよく、例えばヒバマタ及び
エゾイシゲを原料とし、これを適当に破砕した後、それ
らの粉砕物を前記した溶媒で公知の方法を用いて抽出す
る。具体的には、原料の1〜100倍(重量比)、好ま
しくは3〜30倍(重量比)の溶媒で、室温で1〜7日
間放置、もしくは40〜60℃で2〜16時間加熱還流
しながら抽出する。
まま本発明に用いてもよいが、好ましくは抽出に使用し
た水、有機溶媒を留去するのがよい。更に、より強いα
−グルコシダーゼ阻害活性を有する有効成分を得るため
には該抽出物を水、メタノール、エタノール、プロパノ
ール、クロロホルム、酢酸エチル、アセトンなどの溶媒
を用いた溶媒分画操作によって有効成分を濃縮し、更に
シリカゲルカラムクロマトグラフィー、セルロースカラ
ムクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、
高速液体クロマトグラフィーなどの方法で、分離精製す
ることができる。
位とし、
つ重合度25〜200のフロロタンニン類が単離され、
これらの単離化合物をα−グルコシダーゼ阻害物質とし
て用いることも可能である。
だし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではな
い。
製および構造解析
(乾燥物12.95kg)細切し、メタノール:水=
7:3(容量比)の抽出液を5倍量(重量比)加え、室
温で7日間抽出した。抽出液(1次抽出液)を除いた残
渣に新たにメタノール水=7:3(容量比)の混液を加
えて、室温で7日間抽出して、2次抽出液を得た。それ
ぞれの抽出液を別々に濃縮して、それぞれ1次抽出物
(338g)と2次抽出物(298g)を得た。両抽出
物をそれぞれ酢酸エチルと水で溶剤分画を行い、1次抽
出物酢酸エチル可溶部、1次抽出物水可溶部、2次抽出
物酢酸エチル可溶部及び2次抽出物水可溶部を得た。こ
のうち1次抽出物酢酸エチル可溶部及び2次抽出物酢酸
エチル可溶部にα−グルコシダーゼ阻害活性が確認され
た。両抽出物ともにα−グルコシダーゼ阻害活性が認め
られ、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(以下、TL
C)で同様な成分が含まれるのを確認した。ここではさ
らに2次抽出物酢酸エチル可溶部のみ(23.62g)
を分画した。当該可溶部濃縮物にクロロホルムを加え、
溶解性により分画してクロロホルム不溶画分(20.1
0g)を得た。
を用いてセルロースカラムクロマトグラフィー(メルク
社製)を行った。溶出溶剤は酢酸エチル、酢酸エチル:
アセトン=1:1(容量比)、アセトン、メタノール及
び水で順次溶出した。溶出した画分の中で水溶出画分
(1.37g)に強いα−グルコシダーゼ阻害活性が見
られた。さらにこの水溶出画分を酢酸エチルと水に対す
る分配で分画し、水分配画分(1.28g)に強い阻害
活性が見られた。
供した。展開溶媒はn−ブタノール:酢酸:水=4:
1:2(容量比)を用いて、検出は2,4−ジメトキシ
ベンズアルデヒド(DMBA)試薬を用いた。本画分を
展開した結果、原点からRf値0.3までに複数のスポ
ットとテーリングがみられたが、すべてDMBA試薬に
対して同様の呈色を示した。よって本画分は1,3−ジ
ヒドロキシベンゼン構造を有する化合物の同族体の混合
物と結論した。
MRスペクトルを測定した。測定溶媒として重メタノー
ル及び内部標準としてテトラメチルシランを用いて、J
EOL JNM−FX90Q(日本電子株式会社)によ
り測定した。1H NMRスペクトルでは、5.91〜
6.31ppmに複数のシグナルが重なっているブロー
ドなシグナルのみが観察された。これは両側のオルト位
に酸素置換基がある芳香族プロトンと帰属した。13C
NMRスペクトルでは、152.2〜158.2pp
m、126.1〜126.2ppm及び95.9〜9
6.8ppmにそれぞれ複数のシグナルが重なりあって
いるシグナルが観察された。これら3つのシグナルのグ
ループの積分強度比は約3:1:2であった。これら3
つのシグナルのグループのシグナルはそれぞれ酸素置換
基の根元の芳香族カーボン、1,2,3−三酸素置換ベ
ンゼン構造の2位芳香族カーボン及び1,3−二酸素置
換ベンゼン構造の2位芳香族カーボンと帰属した。これ
らの3つのグループのシグナルはフロロタンニンに特有
なシグナルである。1,3−ヒドロキシベンゼン構造に
特異的に呈色するDMBA試薬に陽性なことからも本発
明がフロロタンニンであることが支持される。フロロタ
ンニンの部分構造は以下のように決定した。これまでに
知られているフロロタンニンの部分構造として、1,
2,3,4,5−五酸素置換ベンゼン構造や2つのベン
ゼン環の直接結合がある。1,2,3,4,5−五酸素
置換ベンゼン構造の1位、3位及び5位の13C NM
Rスペクトルでのケミカルシフトの計算値は139.5
〜146.0ppmである。2つのベンゼン環の直接結
合したときの13C NMRスペクトルでのケミカルシ
フトの計算値は139.5〜146.0ppmである。
本発明のフロロタンニンの13C NMRスペクトルで
はそれらに対応するシグナルが観察されなかったため、
1,2,3,4,5−五酸素置換ベンゼン構造や2つの
ベンゼン環の直接結合はないと結論した。よって、本発
明のフロロタンニンは、
位とし、
つ重合体であると決定した。
ゲル浸透高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で
測定した。
え、60℃で6時間保ち、フェノール性ヒドロキシル基
のアセチル化を行った。このアセチル化物をゲル浸透H
PLCに供した。HPLCの条件は以下のとおりであ
る。カラム:TSK−GELG5000H6(東ソー株
式会社)、カラムサイズ:直径7.5mm×長さ30c
m、クロマトグラフ:島津LC−10ATVP、検出
器:島津SPD−10AVP、検出:UV(254n
m)、移動相:テトラヒドロフラン、サンプル濃度及び
注入量:0.2mg/ml、0.02ml、流速:1.
0ml/分、温度:室温。分子量は標準ポリスチレンキ
ット(東ソー株式会社)を用い、その保持時間から決定
した。
に供したところ、保持時間11.5分を極大とする1
0.5〜12.0分までの幅広のピークが得られた。保
持時間から分子量14000を極大として分子量520
0〜40000に相当することが明らかとなった。アセ
チル化物の値から遊離フロロタンニンの分子量を計算す
ると、本発明のフロロタンニンの分子量分布は8300
を極大とする3100〜24000と結論した。したが
って、前記精製法で得られるフロロタンニンは、
位とし、
つ重合度25〜200の重合物と同定された。
活性試験
シダーゼ溶液を用いて、α−グルコシダーゼ阻害試験を
行った。ラット小腸アセトン粉末(シグマ社製)10g
に対して0.1Mマレイン酸緩衝液(pH6.0)10
0mlを加えて超音波処理をしたあとに、3000rp
m、30分間遠心分離を行った。得られた上清を粗α−
グルコシダーゼ溶液とした。スクロースを基質としてス
クラーゼ活性を測定するときは原液をそのまま利用し、
マルトースを基質としてマルターゼ活性を測定するとき
は緩衝液で4倍(容量比)に希釈したものを用いた。ス
クロース及びマルトース基質溶液は500mMとなるよ
うに0.1Mマレイン酸緩衝液(pH6.0)に溶解し
た。基質溶液0.1ml、被験溶液又は0.1Mマレイ
ン酸緩衝液(pH6.0)0.1ml及び緩衝液0.1
Mマレイン酸緩衝液(pH6.0)0.7mlを加えて
混合し、粗酵素溶液0.1mlを添加することで酵素反
応を開始した。酵素反応を37℃、60分間行ない、
2.0Mマレイン酸−トリス−水酸化ナトリウム緩衝液
(pH7.4)を加えて酵素反応を停止した。酵素反応
液0.02mlを試験管にとり、グルコース定量発色液
(グルコースオキシダーゼ−ペルオキシダーゼ法、グル
コースB−テストワコー、和光純薬工業株式会社)3.
0mlを加えて37℃、30分間発色させ、505nm
の吸光度を測定して次式によりα−グルコシダーゼ阻害
率を求めた。
ンのラット小腸マルターゼ及びスクラーゼに対する阻害
活性を検討した結果、マルターゼ活性及びスクラーゼ活
性に対する50%阻害濃度(IC50)はそれぞれ0.
48及び1.65mg/mlだった。
画分)のラット糖負荷試験における血糖値変化に対する
影響を検討した。24時間絶食した8週齢のWista
r系ラットを対照群及びフロロタンニン投与群(以下投
与群)それぞれ12匹ずつ用いた。ラットをエーテル軽
麻酔をかけ、頚静脈からヘパリン入り採血管に約0.5
ml採血した。採血後に対照群にはスクロース水溶液を
500mg/体重kgを、投与群にはスクロース水溶液
500mg/体重kg及びフロロタンニン水溶液300
mg/体重kgをそれぞれゾンデを用いて経口投与し
た。投与後、10、30、60及び120分後に約0.
5ml採血を行った。採血した血は遠心分離によって血
漿画分に分画して、供試するまで−80℃で保存した。
血漿中グルコース量はグルコースオキシダーゼ法による
測定キット(グルコースB−テストワコー、和光純薬工
業株式会社)で測定した。血漿中グルコースの経時変化
を表1に示す。その結果、本発明品は投与後10分で対
照群と比較して有意に血漿中のグルコース量の上昇を抑
制させることが明らかとなった。したがって、本発明の
フロロタンニンは血糖上昇抑制作用を有し、糖尿病・肥
満の発症防止及び改善に有効である。
びヒバマタの双方もしくはどちらか一方、あるいはこれ
ら海藻の水および有機溶剤抽出物の双方もしくはどちら
かを使用することにより、これらに含まれる有効成分
(フロログルシノールの重合物であるフロロタンニン)
が有するα−グルコシダーゼ阻害活性により、血糖上昇
抑制作用を示すことから糖尿病及び肥満の発症防止や改
善が可能となる。
Claims (3)
- 【請求項1】エゾイシゲおよびヒバマタの双方もしくは
どちらか一方を有効成分として含有することを特徴とす
るα−グルコシダーゼ阻害物質。 - 【請求項2】エゾイシゲおよびヒバマタの双方もしくは
どちらか一方の水および有機溶剤の双方もしくはどちら
か一方の抽出物を有効成分とすることを特徴とするα−
グルコシダーゼ阻害物質。 - 【請求項3】有効成分中に、フロログルシノールの重合
物で、重合度が25〜200であるフロロタンニン類を
含有することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記
載のα−グルコシダーゼ阻害物質。
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JP2001045778A JP3543175B2 (ja) | 2001-01-16 | 2001-01-16 | α−グルコシダーゼ阻害物質 |
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