JP4642241B2 - N(cf3)2アニオンの生成およびその使用 - Google Patents
N(cf3)2アニオンの生成およびその使用 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、N(CF3)2アニオンの新規な生成方法、およびN(CF3)2基を有機分子に導入するためのその使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビス(トリフルオロメチル)イミドアニオンの化学は、一般には、ペルフルオロ(2−アザプロペン)CF3N=CF2を出発物質とする化学変換に基づいている(H.G.AngおよびY.C.Syn、「Advances in Inorganic Chemistry and Radiochemistry」、第16巻(1974)、1頁〜64頁;A.Haas、「Gmelin Handbook of Inorganic Chemistry」、第8版、Springer Verlag:Berlin Heidelberg New York(1981)、第9部、125頁〜153頁;A.Haas、「Gmelin Handbook of Inorganic Chemistry」、第8版、Springer-Verlag:Berlin-Heidelberg New York(1991)、増補第6巻、196頁〜214頁)。この化合物は、スルホラン中、105℃においてCCl3N=CCl2を過剰のNaFでフッ素化することによって78%の収率で調製することができ(E.Klauke、H.Holtschmidt、K.Findeisen、Farbenfabriken Bayer A.-G.、ドイツ特許DE-A1-2101107(1971/72))、あるいはCF3N−(CF2CFCl2)Clの光分解によって調製することができる(収率:65〜70%)(G.Sarwar、R.L.KirchmeierおよびJ.M.Shreeve、「Inorg. Chem.」28 (1989)、2187頁〜2189頁)。ペルフルオロ(2−アザプロペン)は室温で気体(沸点、−33℃)であり、この化合物を使用するためには特別な設備を必要とする。
【0003】
反応性が非常に高いジ[ビス(トリフルオロメチル)イミド]水銀、Hg[N(CF3)2]2がYoungおよび共同研究者により最初に合成された(J.A.Young、S.N.TsoukalasおよびR.D.Dresdner、「J. Am. Chem. Soc.」80 (1958)、 3604頁〜3606頁)。この化合物は、N(CF3)2基を有機分子に導入するために良好な試薬である(H.G.AngおよびY.C.Syn、「Advances in Inorg. Chem. and Radiochemistry」、第16巻(1974)、1頁〜64頁;A.Haas、「Gmelin Handbook of Inorganic Chemistry」、第8版、Springer Verlag:Berlin Heidelberg New York(1981)、第9部、45頁〜46頁)。しかし、この化合物は、あまり安定な物質ではなく、水分に対して極めて敏感である。Hg[N(CF3)2]2の合成は、特別な設備および高価な出発物質を必要とする困難で時間のかかる作業である。
【0004】
セシウムビス(トリフルオロメチル)イミド、Cs + [ - N(CF 3 ) 2 ]はビス(トリフルオロメチル)アミノ化合物を合成するためのもう1つの可能な候補物である。この塩は、乾燥アセトニトリルにおけるフッ化セシウムの懸濁液にペルフルオロ(2−アザプロペン)を吹き込むことによって簡単に調製することができる(A.F.Gontar、E.G.BykovskajaおよびI.L.Knunyants、「Izv. Akad. Nauk SSSR、Otd. Khim.」 Nauk (1975)、2279頁〜2282頁)。
【0005】
【化1】
【0006】
この方法の欠点は、出発物質のペルフルオロ(2−アザプロペン)と既に形成されたセシウム塩との反応によって二量体生成物が形成することである。
【0007】
【化2】
【0008】
この反応は、ほぼ避けられないようであり、生成物の複雑な混合物の形成をもたらす。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、N(CF3)2アニオンを生成させるための新しい方法、およびN(CF 3 ) 2 基を有機分子に導入するためのそのアニオンの使用が求められている。特に、特別な安全設備を必要としない、簡便な方法で取り扱うことができ、かつ同時に望ましくない副生物の生成が避けられる新しい方法が求められている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この課題は、N(CF3)2アニオンの新規な生成方法によって解決される。この方法は、下記の一般式のスルホンアミド:
RFSO2N(CF3)2
(式中、RFはFまたはCnF2n+1を意味し、nは1〜4の間の数である)
を、下記の一般式の金属フッ化物:
MFx
(式中、Mは、Na、K、Rb、Cs、Ag、CuまたはHg、xは1または2、ただし、MがNa、K、Rb、CsまたはAgを意味する場合にはx=1、またMがCuまたはHgを意味する場合にはx=2)
と反応させて、下記の一般式のイミノ塩:
M x+ [ - N(CF 3 ) 2 ] x
および下記の一般式の対応するスルホニルフルオリド:
RFSO2F
を生成させること、
または、
下記の式のスルホンジアミド:
(CF3)2N(SO2CF2)mSO2N(CF3)2
(式中、m=0または1)
を、上記の金属フッ化物と反応させて、イミノ塩:
Mx+[-N(CF3)2]x
および対応するスルホニルフルオリド:
F(SO2CF2)mSO2F
を生成させること、
または
下記の一般式のN,N−ビス(トリフルオロメチル)ペルフルオロアシルアミド:
RFCON(CF3)2
を、前記金属フッ化物と反応させて、前記イミノ塩と、下記の一般式の塩:
(R F CF 2 O - ) x M x+
とを生成させること
を特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明による方法は、アセトニトリル、エチレングリコールジメチルエーテルおよびDMFまたはこれらの混合物の群からの有機溶媒中で行われる。好ましくは、この反応は、水を含まないアセトニトリル中で行われる。本発明により、この反応は15〜100℃の間の温度で行うことができる。通常、室温において、良好な結果がもたらされる。
【0012】
好適な金属フッ化物は、Na、K、Rb、Cs、Ag、CuまたはHgのフッ化物であるが、フッ化ルビジウムが最も好ましい。
【0013】
有利には、反応時に副生物として形成されるスルホニルフルオリドは、回収して出発物質に再び変換することができ、そして本発明の方法において再使用することができる。
【0014】
下記の一般式のイミノ塩:
Mx+[-N(CF3)2]x
(式中、Mおよびxは、前記の意味を有する)
は、有機分子におけるハロゲンまたは他の基を置換するための試薬として使用することができる。特に、[ビス(トリフルオロメチル)イミド]ルビジウム:
Rb[N(CF3)2]
は、有機分子内のハロゲンまたは他の基をN(CF3)2基で置換するための試薬として使用することができる。
【0015】
近年、新しいN,N−ビス(トリフルオロメチル)ペルフルオロアルカンスルホンアミドおよびN,N−ビス(トリフルオロメチル)ペルフルオロアルカンスルホンジアミドの合成法が開発された(N.Ignat'ev、S.Datsenko、L.Yagupolskii、A.Dimitrov、W.RadekおよびSt.Rudiger、「J. Fluorine Chemistry」(1995)、74、181頁〜186頁;P.Sartori、N.Ignat'evおよびS.Datsenko、「J. Fluorine Chemistry」(1995)、75、157頁〜161頁;P.Sartori、N.Ignat'evおよびS.Datsenko、「J. Fluorine Chemistry」(1995)、75、115頁〜121頁)。
【0016】
これらの化合物は、例えば、単純な出発物質の使用に基づく1段階の手順で調製することができる。
【0017】
【化3】
【0018】
スルホンアミド(1)、(2)および(3)は、室温で長期間保存できる安定な無色の液体であることが見出された(それぞれ、沸点30〜31℃;沸点56〜57℃;沸点85〜86℃)。これらの化合物の取扱いには特別な用心を必要とせず、または特別な設備も必要としない。(1)、(2)および(3)のようなペルフルオロ化スルホンアミドは非吸湿性の物質である。それどころか、それらは水との混合性を有していない。しかし、アセトニトリル、エチレングルコールジメチルエーテル、DMFなどの有機溶媒にはかなり良く溶解する。これにより、有機合成におけるこれらの化合物の使用に関して便利な状態がもたらされる。
【0019】
今回、本発明者らは、ペルフルオロ化スルホンアミド(1)、(2)および(3)が、下記の一般的な反応に従って金属フッ化物と反応させて、対応するスルホニルフルオリドおよびイミド塩(4)を形成させるのに好適であることを実験により見出した。
【0020】
【化4】
上式において、
RF=FまたはCnF2n+1;
n=1〜4
M=Na、K、Rb、Cs、Ag、Cu、Hg、かつ
x=1または2、ただし、MがNa、K、Rb、CsまたはAgを意味する場合にはx=1であり、MがCuまたはHgを意味する場合にはx=2である。
【0021】
特に、本発明者らは、(CF3)2N(SO2CF2)mSO2N(CF3)2が、下記の一般的な反応に従って、金属フッ化物と、好ましくはフッ化アルカリと反応し得ることを見出した。
【0022】
【化5】
上式において、
m=0〜1。
【0023】
フッ化ルビジウムは、タイプ(1)〜(3)のスルホンアミドをイミド塩(4)に完全に変換するのに最も便利な試薬である。
【0024】
反応は、水を含まない好適な有機溶媒中において、15〜100℃の間の温度で、好ましくは室温で行うことができる。溶媒は、アセトニトリル、エチレングリコールジメチルエーテルおよびDMFの群から選ぶことができるが、他の極性溶媒もまた有用である。
【0025】
最も好適な溶媒は、乾燥アセトニトリルである。この場合、反応が数分以内に起こり、ルビジウムビス(トリフルオロメチル)イミドが形成される。これは、室温の溶液において長期間安定な塩であり、単離することなく下記の合成に使用することができる。
【0026】
本発明者らはまた、タイプ(5)のN,N−ビス(トリフルオロメチル)ペルフルオロアシルアミドが、イミド塩(4)の生成ためにさらに好適な出発物質であることを見出した。この化合物(5)は、下記の一般式に従って金属フッ化物と反応する。
【0027】
【化6】
上式において、
RF=FまたはCnF2n+1;
n=1〜4
M=Na、K、Rb、Cs、Ag、Cu、Hg、かつ
x=1または2、ただし、MがNa、K、Rb、CsまたはAgを意味する場合にはx=1であり、MがCuまたはHgを意味する場合にはx=2である。
【0028】
タイプ(5)の化合物は、J.A.Young、T.C.SimonsおよびF.W.Hoffmann、「J.Am.Chem.Soc.」(1956)、78、5637頁〜5639頁に記載されているように、対応するN,N−ジメチルペルフルオロアシルアミドの電気化学的フッ素化により調製することができる。
【0029】
反応(II)に従って副生物として生成するペルフルオロ化スルホニルフルオリドは、室温で気体であるか、あるいは非常に揮発しやすい液体である。室温において、若干量のスルホニルフルオリドがアセトニトリル溶液中に残留する。このことは、イミド塩(4)を使用してN(CF3)2基を有機分子および無機分子に導入することに関して何ら問題とならない。
【0030】
方法(II)から生じるスルホニルフルオリドは、好ましくは、気相から回収され、無水フッ化水素中における電気化学的フッ素化(Simonsプロセス)によるタイプ(1)〜(3)のスルホンアミドの調製を行うための出発物質への下記の変換に再び使用することができる。この反応は、例えば下記の式に従う。
【0031】
【化7】
【0032】
引き続く電気化学的フッ素化(反応I)との組合せで、この方法は、N(CH3)2基をN(CF3)2基およびイミド塩(4)に変換する可能性をもたらす。したがって、反応IVは、安価な市販の物質であるジメチルアミンに基づく。
【0033】
要するに、イミド塩(4)は、N(CF3)2基を有機分子に導入するための便利な試薬である。例えば、そのアルカリ塩、好ましくは、ルビジウム塩は、穏和な条件で臭化ベンジルまたは塩化ベンジルおよびブロモ酢酸エチルと反応して、N(CF3)2基を有する、置換された生成物を生成する(反応(V)〜(VII)を参照のこと)。一般に、これらの塩は、有機分子におけるハロゲンまたは他の基を置換するために好適な試薬であると考えられる。
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】
これらの反応は、タイプ(1)〜(3)のペルフルオロ化スルホンアミドとタイプ(5)のアシルアミドと金属フッ化物とから容易に得ることができるビス(トリフルオロメチル)イミド塩(4)の合成的利用性を明らかにするために示されている。
【0038】
【実施例】
実施例1
ビス(トリフルオロメチル)イミドルビジウム塩およびビス(トリフルオロメチル)イミドカリウム塩のCF3SO2N(CF3)2からの調製
冷却器を備えたガラス・フラスコに入れた、2.185g(21mmol)のRbFを含む10cm3の乾燥CH3CNに、6.127g(21mmol)のCF3SO2N(CF3)2を滴下して加えた。反応混合物を、すべてのRbFが溶解するまで室温で攪拌した(数分)。得られた混合物を19F−NMR分光法で調べた。−37.5ppm(s)のシグナルはRb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩に属する。これは、アセトニトリル溶液におけるRbFおよびペルフルオロ(2−アザプロペン)から知られている手法[6]で調製されたRb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩の同定されたサンプルを反応混合物に加えることによって確認された。
【0039】
同様な手順を、RbFおよびFSO2N(CF3)2から出発するRb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩の調製に使用した。
【0040】
上記の方法で調製されたRb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩のアセトニトリル溶液は、密閉したフラスコにおいて室温で長期間安定であり、さらに精製することなく下記の化学反応に使用することができる(実施例8、9を参照のこと)。
【0041】
ビス(トリフルオロメチル)イミドのナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩は、例えば、それぞれ、NaF、KFおよびCsFとCF3SO2N(CF3)2またはFSO2N(CF3)2とから出発する同じ手順によって調製することができる。
【0042】
2.85g(10mmol)のCF3SO2N(CF3)2を、0.58gのKFを懸濁させた5cm3の乾燥アセトニトリルに加え、反応混合物を室温で1時間攪拌した。溶液を19F−NMR分光法で調べた。−39.7ppm(s)のシグナルはK + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩に属する。
【0043】
Rb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩およびK + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩の発表された値は、CF3COOH(外部標準)に対して−34.2ppm(広い一重線)である(A.F.Gontar、E.G.BykowskajaおよびJ.L.Knunyants、 Izv. Akad. Nauk SSR,Otd. Khim. Nauk (1975), 2279頁〜2282頁)。
【0044】
実施例2
ビス(トリフルオロメチル)イミドルビジウム塩のC4F9SO2N(CF3)2からの調製
ガラス・フラスコに入れた、0.041g(0.39mmol)のRbFを含む1cm3の乾燥CH3CNに、0.170g(0.39mmol)のC4F9SO2N(CF3)2を加えた。反応混合物を、すべてのRbFが溶解するまで室温で攪拌した(数分)。得られた混合物を19F−NMR分光法で調べた。−37.8ppm(s)のシグナルはRb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩に属する。
【0045】
実施例3
ビス(トリフルオロメチル)イミドルビジウム塩の(CF3)NSO2N(CF3)2からの調製
ガラス・フラスコに入れた、0.064g(0.61mmol)のRbFを含む1.5cm3の乾燥CH3CNに、0.120g(0.32mmol)のC4F9SO2N(CF3)2を加えた。反応混合物を、すべてのRbFが溶解するまで室温で攪拌した。得られた混合物を19F−NMR分光法で調べた。−37.2ppm(s)のシグナルはRb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩に属する。
【0046】
同じ手順を、ビス(トリフルオロメチル)イミドのナトリウム塩、カリウム塩およびセシウム塩を調製するために使用することができる。
【0047】
実施例4
ビス(トリフルオロメチル)イミドルビジウム塩のC3F7CON(CF3)2からの調製
ガラス・フラスコ中で1.5cm3の乾燥CH3CN中に懸濁させた0.092g(0.88mmol)のRbFに、0.160g(0.45mmol)のC3F7CON(CF3)2を加えた。反応混合物を、すべてのRbFが溶解するまで室温で攪拌した(約10分)。得られた混合物を19F−NMR分光法で調べた。−37.2ppm(s)のシグナルはRb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩に属し、−29.0ppm、−80.8ppm、−122.3ppmおよび−125.9ppmにおけるシグナルは反応混合物中のCF3CF2CF2CF2O-アニオンの存在を反映する。
【0048】
BrCH2COOC2H5を反応混合物に加え、80℃で1時間加熱した後、置換生成物(CF3)2NCH2−COOC2H5の生成を19F−NMR分光法およびGC分析で確認した。反応混合物を水で希釈することによって、(CF3)2NCH2COOC2H5を純粋な物質として単離した(詳細については実施例8を参照のこと)。
【0049】
実施例5
ビス(トリフルオロメチル)イミド銀塩のCF3SO2N(CF3)2からの調製
冷却器を備えたガラス・フラスコに入れた、0.080g(0.63mmol)のAgFを含む1cm3の乾燥CH3CNに、0.180g(0.63mmol)のCF3SO2N(CF3)2を加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌した。得られた混合物を19F−NMR分光法で調べた。−47.0ppm(s)のシグナルはAg + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩に属する。C6H5CH2Brを反応混合物に加え、80℃で10分間加熱した後、置換された生成物C6H5CH2N(CF3)2の生成を19F−NMR分光法およびGC分析で確認した。反応混合物を水で希釈することによって、C6H5CH2N(CF3)2を純粋な物質として単離した(詳細については実施例9を参照のこと)。
【0050】
実施例6
ビス(トリフルオロメチル)イミド水銀塩のCF3SO2N(CF3)2からの調製
0.17g(0.54mmol)のHgF2、0.32g(1.1mmol)のCF3SO2N(CF3)2および2cm3の乾燥CH3CNの混合物を、ステンレススチール製オートクレーブ内に入れたPTFE FEPシリンダ内において85℃で10時間加熱した。冷却後、透明な液体を沈殿物から分離し、19F−NMR分光法で調べた。−46.3ppm(s)のシグナルはHg[N(CF3)2]2塩に属する。Hg[N(CF3)2]2の発表された値は−48.7ppm(広い一重線)である(R.C.DobbieおよびH.J.Emeleus、J. Chem. Soc. (1996) (1), 367頁〜370頁)。
【0051】
実施例7
ビス(トリフルオロメチル)イミド銅塩のCF3SO2N(CF3)2からの調製
0.11g(1.1mmol)のCuF2、0.98g(3.4mmol)のCF3SO2N(CF3)2および1.5cm3の乾燥CH3CNの混合物を、ステンレススチール製オートクレーブ内に入れたPTFE FEPシリンダ内で80℃において10時間加熱した。冷却後、透明な液体を沈殿物から分離し、アルゴン気流中で80℃に加熱して、揮発性の生成物をすべて除いた。残渣を19F−NMR分光法で調べた。−55.8ppm(s)のシグナル(広い一重線)はCu[N(CF3)2]2塩に属する。Rb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩をこのCH3CN溶液に加えた後、-N(CF3)2アニオンに属する−38.0ppmの1つの平均したシグナル(広い一重線)のみが19F−NMRスペクトルにおいて認められた。
【0052】
N(CF3)2基を有機化合物に導入するためのビス(トリフルオロメチル)イミド塩の適用
実施例8
ビス(トリフルオロメチル)イミドルビジウム塩とブロモ酢酸エチルとの反応
乾燥アセトニトリル中で2.185gのRbFと6.127gのCF3SO2N(CF3)2とから得られたRb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩の溶液(実施例1参照)に、3.13g(18.7mmol)のBrCH2COOC2H5を加えた。混合物を1時間にわたって沸騰させて、水で希釈した。水に不溶な液状物質を集め、水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。蒸留後、2.73gの純粋な(CF3)2NCH2COOC2H5が得られた。
収率:61%
沸点:127〜128℃[6]
19F−NMRスペクトル:δ(CF3)=57.0ppm(s)[6]
1H−NMRスペクトル:δ(CH2)=4.3ppm(s)
【0053】
実施例9
ビス(トリフルオロメチル)イミドルビジウム塩と臭化ベンジルとの反応
7cm3の乾燥アセトニトリル中で0.882g(8.44mmol)のRbFと2.5g(8.77mmol)のCF3SO2N(CF3)2とから得られたRb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩の溶液(実施例1参照)に、1.27g(7.4mmol)のC6H5CH2Brを加えた。混合物を1時間にわたって沸騰させて、水で希釈した。水に不溶な液状物質をジエチルエーテルで(5cm3で3回)抽出し、水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。蒸留後、1.35gの純粋なC6H5CH2N(CF3)2が得られた。
収率:75%
沸点:151〜152℃
19F−NMRスペクトル:δ(CF3)=56.8ppm(t)、JH,F=1.5Hz
1H−NMRスペクトル:δ(CH2)=4.5ppm(q)
【0054】
Rb + [ - N(CF 3 ) 2 ]塩と塩化ベンジルとの反応を、反応混合物を10時間にわたって沸騰させた以外は上記と同じ方法で行った。
Claims (12)
- N(CF3)2アニオンの生成方法であって、
下記の一般式のスルホンアミド:
RFSO2N(CF3)2
(式中、RF=FまたはCnF2n+1、n=1〜4)
を、下記の一般式の金属フッ化物:
MFx
(式中、M=Na、K、Rb、Cs、Ag、Cu、Hg、かつ
x=1または2、ただし、MがNa、K、Rb、CsまたはAgを意味する場合にはx=1であり、MがCuまたはHgを意味する場合にはx=2である)
と反応させて、下記の一般式のイミノ塩:
M x+ [ - N(CF 3 ) 2 ] x
および下記の一般式の対応するスルホニルフルオリド:
RFSO2Fを生成させること、
または、
下記の式のスルホンジアミド:
(CF3)2N(SO2CF2)mSO2N(CF3)2
(式中、m=0、1)
を金属フッ化物
MFx
と反応させて、イミノ塩:
Mx+[-N(CF3)2]x
および対応するスルホニルジフルオリド:
F(SO2CF2)mSO2F
を生成させること、
または
下記の一般式のN,N−ビス(トリフルオロメチル)ペルフルオロアシルアミド:
RFCON(CF3)2
を金属フッ化物
MFx
と反応させて、イミノ塩:
Mx+[-N(CF3)2]x
および下記の一般式の塩:
(R F CF 2 O - ) x M x+
を生成させること
を特徴とする方法。 - 前記反応が、アセトニトリル、エチレングリコールジメチルエーテルおよびDMFまたはこれらの混合物の群からの有機溶媒中で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記反応がアセトニトリル中で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記反応が、水を含まない有機溶媒中で行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- 前記反応が、15〜100℃の間の温度で行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
- 前記反応が室温で行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
- 前記金属フッ化物がフッ化ルビジウムであることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
- 副生物として形成されるスルホニルフルオリドを回収し、再び出発物質に変換して、請求項1から7のいずれかに記載される方法で再使用されることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
- 有機分子におけるハロゲンをN(CF 3 ) 2 基で置換する方法であって、
上記請求項1から8のいずれかに記載の方法で下記の一般式のイミノ塩:
M x+ [ - N(CF 3 ) 2 ] x
(式中、M=Na、Rb、Ag、またはCu、かつ、x=1または2)
を製造し、次いで、該置換反応に該イミノ塩を試薬として用いる
ことを特徴とする方法。 - 前記イミド塩が、Rb + [ - N(CF 3 ) 2 ]である請求項9に記載の方法。
- 前記イミド塩が、Ag + [ - N(CF 3 ) 2 ]である請求項9に記載の方法。
- 前記イミド塩が、Cu 2+ [ - N(CF 3 ) 2 ] 2 である請求項9に記載の方法。
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