JP2819028B2 - m―フルオロ芳香族化合物の製造方法 - Google Patents

m―フルオロ芳香族化合物の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (発明の目的) 本発明は、芳香族フッ素化合物の改良された製造方法
に関するものである。
(産業上の利用分野) 本発明で得られる芳香族フッ素化合物は、農薬、医
薬、電子材料等の合成中間体として有用な化合物であ
る。
(従来の技術と問題点) 芳香族フッ素化合物を製造するにあたり、相当する塩
素誘導体と、主としてフッ化カリウムに代表されるアル
カリ金属フロリドを反応させるハロゲン交換フッ素化法
は危険が少なく工業的プロセスとしてよく用いられてい
る。〔有機合成化学協会誌,47巻,P258(1989年)〕しか
しながら、このプロセスでは通常、交換される塩素原子
のオルトまたはパラ位に強力な電子吸引性基の存在が必
要で、電子吸引性基のメタ位に位置する塩素原子はフッ
素原子に交換されにくいという制約がある。高温、高圧
の特殊な条件下においてのみ、電子吸引性基のメタ位に
ある塩素原子がフッ素原子に交換される例が報告されて
いる〔特開昭61−44831、63−203636、有機合成化学協
会誌、47巻、P20(1989年)〕。一方、フッ素原子によ
り置換される基はハロゲン原子に限らず、例えばニトロ
基、ハロゲン化スルホニル基を持つ芳香族化合物とアル
カリ金属フッ化物との反応により、芳香族フッ素化合物
を製造する報告例もある。前者では脱離した亜硝酸イオ
ンが引き起こす副反応により、生成した芳香族フッ素化
合物が分解するため、高価な亜硝酸イオンのトラップ剤
を当量以上用い反応しなければならない。そのため、反
応系が複雑となる上、原料のニトロ化合物は爆発の危険
があり、本反応の工業的実施には困難を伴う(特開昭60
−130537、60−158141)。後者の反応例としては芳香族
スルホニルクロリド誘導体とフッ化カリウムをオートク
レーブ中、290℃で40時間反応させ少量の芳香族フッ素
化合物が得られたという報告がある〔Chem.Abstr.,66,9
4741(1967)〕。また、ベンゼンジスルホニルフロリド
誘導体とフッ化カリウムを反応させ、一方のフルオロス
ルホニル基をフッ素原子に変換しフルオロベンゼンスル
ホニルフロリド誘導体を得る方法も開示されている〔J.
Org.Chem.53,4398(1988)〕。この方法によれば若干の
収率向上は見られるものの、o−ベンゼンジスルホニル
フロリドの一例を除いてなお50%程度の収率でありしか
も適用できる化合物がベンゼンジスルホニルフロリド誘
導体に限定されており、他の置換基を持つフッ素化合物
の製造には低収率でしか適用できない。
(発明が解決しようとする問題点) このような現状に鑑み、本発明者らは芳香族フッ素化
合物、特にハロゲン交換法では収率よく製造できないm
−フルオロベンゼン誘導体を効率よく合成する方法を鋭
意検討したところ、フルオロスルホニル基を脱離基とし
てアルカリ金属フロリドでフッ素置換する方法において
触媒を添加するか又は、更に反応蒸留操作を組合せにる
ことにより従来法よりはるかに収率よく芳香族フッ素化
合物を合成できる方法を開発した。
すなわち本発明は、第四級ホスホニウム塩を触媒と
し、一般式 (式中、RはSO2Cl、SO2F、COCl、NO2、CF3、CN、CHO等
の電子吸引性基を示し、Xはハロゲン原子、アルキル
基、または水素原子を示し、nは1〜4の整数を意味す
る。)で示される芳香族スルホニルフロリドとアルカリ
金属フロリドを反応させ、一般式 式中、R、X及びnは前記と同じ意味を示す。)で示
される芳香族フッ素化合物を収率よく製造する方法を提
供するものである。
本発明に於いて触媒は、第四級ホスホニウム塩が用い
られる。第四級ホスホニウム塩としては、例えば、テト
ラフェニルホスホニウムクロリドまたは、テトラフェニ
ルホスホニウムブロミド、トリフェニルトリルホスホニ
ウムブロミド、トリトリルフェニルホスホニウムブロミ
ド、トリ−p−アニシルフェニルホスホニウムブロミ
ド、トリフェニルメチルホスホニウムヨージド等があげ
られる。上記触媒は、S.Affandi et al.,Synth.Reach.I
norg.Met.Org.Chem.17,307(1987).に記載された方法
により容易に合成することができる。
また触媒は、ベンゼンスルホニルフロリド誘導体〔一
般式(I)〕に対し0.5モル%以上、好ましくは5〜10
モル%用いられる。
本発明の原料として用いるベンゼンジスルホニルフロ
リド類〔一般式(I)〕としては3−ニトロベンゼンス
ルホニルフロリド、2−フルオロ−5−ニトロベンゼン
スルホニルフロリド、2−クロロ−5−ニトロベンゼン
スルホニルフロリド、4−フルオロ−5−ニトロベンゼ
ンスルホニルフロリド、2−フルオロ−4−ニトロベン
ゼンスルホニルフロリド、2,6−ジクロロ−3−ニトロ
ベンゼンスルホニルフロリド、2,6−ジフルオロ−3−
ニトロベンゼンスルホニルフロリド等のニトロベンゼン
スルホニルフロリド類,1,3−ベンゼンジスルホニルフロ
リド、1,3,5−ベンゼントリスルホニルフロリド、1,2−
ベンゼンジスルホニルフロリド、4−フルオロ−1,3−
ベンゼンジスルホニルフロリド、3−フルオロスルホニ
ルベンゾイルフロリド等のベンゼンスルホニルフロリド
類、3−フルオロスルホニル−4−フルオロベンゾイル
フロリド、3−クロロ−4−フルオロスルホニルベンゾ
イルフロリド、2−フルオロ−4−フルオロスルホニル
ベンゾイルフロリド、3,5−ジクロロ−4−フルオロス
ルホニルフロリド等のハロゲノベンゾイルフロリド類、
2−フルオロ−5−フルオロスルホニルベンゾニトリ
ル、4−フルオロ−3−フルオロスルホニルベンゾニト
リル、3−フルオロスルホニル−4−フルオロベンゾニ
トリル等のフルオロスルホニルベンゾニトリル類、3−
トリフルオロメチル−4−フルオロベンゼンスルホニル
フロリド、2−フルオロ−5−トリフルオロメチルベン
ゼンスルホニルフロリド等のトリフルオロメチルベンゼ
ンスルホニルフロリド類、4−メチル−1,3−ベンゼン
ジスルホニルフロリド等のアルキルベンゼンスルホニル
フロリド類等があげられる。
これらは常法により対応する芳香族化合物をクロロ硫
酸、または発煙硫酸を用いクロロスルホン化した後、フ
ッ化カリウムとの反応により容易に合成できるものであ
る。
また、使用するアルカリ金属フロリドとしては、フッ
化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウムまたは
それらの混合物であり、そのアルカリ金属フロリドとし
ては、微粒子状のものなら使用して差し支えない。例え
ば、スプレイドライ、フリーズドライ、粉砕その他工業
的に製造可能な微粒子状のものなら使用して差し支えな
い。その使用量は置換されるハロゲン原子に対して0.5
〜10当量、好ましくは1〜3当量用いる。当反応におい
ては溶媒を使用しても何ら差し支えない。使用する場合
は、例えばジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メ
チルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロト
ルエン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、メチ
ルナフタレン等の芳香族系溶媒が用いられる。反応は室
温以上、好ましくは100〜250℃で円滑に進行する。また
上記反応は、常圧または減圧下で生成する芳香族フツ素
化合物〔一般式(II)〕を反応蒸留し反応系外に取り除
くことにより副反応を押え円滑に進行する。
(発明の効果) 芳香族スルホニルフロリドとアルカリ金属フロリドと
の反応を、第四級ホスホニウム塩を触媒として用いるか
または更に反応蒸留しながら実施することにより、ハロ
ゲン交換フッ素化法では収率よく得られなかったメタ位
がフルオロ置換した、一般式(II)で表される芳香族フ
ッ素化合物を、従来よりはるかに低い温度で収率よく製
造することができるように成った。
(実施例) 以下実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1 コンデンサー、メカニカルスターラー、温度計を備え
た100mlフラスコに、スプレー乾燥フッ化カリウム(リ
ーデル社製)6.5g(0.11モル)、テトラフェニルホスホ
ニウムブロミド(北興化学製)2.1g(0.005モル)、無
水スルホラン8.5mlを入れ、トルエンで共沸脱水を行っ
た後、コンデンサーを分留ヘッドに取り替え、2−フル
オロ−5−ニトロベンゼンスルホニルフロリド11.15g
(0.05モル)を加え、300mmHgの減圧下、210℃で反応蒸
留を行ないながら5時間撹拌した。留出物は160℃/300m
mHgの沸点をもち、3,4−ジフルオロニトロベンゼンと2,
5−ジフルオロベンゼンスルホニルフロリドの混合物
(3.88g)であった。
この混合物をガスクロマトグラフィーで分析すると、
3,4−ジフルオロニトロベンゼンと2,5−ジフルオロベン
ゼンスルホニルフロリドの比率は7対1であった(収率
49%)。
3,4−ジフルオロニトロベンゼン,GC−MS:159(M+) 2,5−ジフルオロベンゼンスルホニルフロリド,GC−MS:1
96(M+) 比較例1 コンデンサー、メカニカルスターラー、温度計を備え
た100mlフラスコに、スプレー乾燥フッ化カリウム(リ
ーデル社製)6.5g(0.11モル)、無水スルホラン8.5ml
を入れ、トルエンで共沸脱水を行った後、2−フルオロ
−5−ニトロベンゼンスルホニルフロリド11.15g(0.05
モル)を加え、窒素雰囲気下220℃で3時間撹拌した。
冷却後反応混合物をジクロロメタン100mlで希釈して、
無機塩を濾別した。濾液を濃縮して得た残渣を減圧蒸留
して3,4−ジフルオロニトロベンゼンと2,5−ジフルオロ
ベンゼンスルホニルフロリドの混合物(1.0g)を得た。
この混合物をガスクロマトグラフィーで分析すると、3,
4−ジフルオロニトロベンゼンと2,5−ジフルオロベンゼ
ンスルホニルフロリドの比率は7対1であった(収率13
%)。また沸点は、87℃/20mmHgであった。
実施例2 2−フルオロ−5−ニトロベンゼンスルホニルフロリ
ドの代わりに、1,3−ベンゼンジスルホニルフロリドを
用いて実施例1と同様に反応を行った。
コンデンサー、メカニカルスターラー、温度計を備え
た100mlフラスコに、スプレー乾燥フッ化カリウム(リ
ーデル社製)6.5g(0.11モル)、テトラフェニルホスホ
ニウムブロミド(北興化学製)2.1g(0.005モル)、無
水スルホラン8.5mlを入れ、トルエンで共沸脱水を行っ
た後、コンデンサーを分留ヘッドに取り替え、1,3−ベ
ンゼンスルホニルフロリド12.1g(0.05モル)を加え、2
70mmHgの減圧下、210℃で反応蒸留を行ないながら5時
間撹拌した。留出物は170℃/270mmHgの沸点をもつ3−
フルオロベンゼンスルホニルフロリドが収量6.56g(収
率74%)で得られた。
比較例2,3,4.および実施例3 特に明記しない限り実施例2と同様にして比較例2,3,
4.および実施例3を行なった。比較結果を表にして以下
に示す。
実施例4 コンデンサー、メカニカルスターラー、温度計を備え
た100mlフラスコに、スプレー乾燥フッ化カリウム(リ
ーデル社製)6.5g(0.11モル)、テトラフェニルホスホ
ニウムブロミド(北興化学製)2.1g(0.005モル)、無
水スルホラン8.5mlを入れ、トルエンで共沸脱水を行っ
た後、コンデンサーを分留ヘッドに取り替え、3−フル
オロスルホニル−4−フルオロベンゾイルフロリド11.2
g(0.05モル)を加え、270mmHgの減圧下、210℃で反応
蒸留を行ないながら4時間撹拌した。留出物は140℃/27
0mmHgの沸点をもつ3,4−ジフルオロベンゾイルフロリド
(3.21g)を得た。転化率92%,選択率49%であった。G
C−MS:160(M+)〔高分解能マススペクトル:計算値(1
60.0136)、分析値(160.0135)であった。〕この3,4−
ジフルオロベンゾイルフロリドを加水分解して、3,4−
ジフルオロ安息香酸にし、化合物の同定を行なった。融
点は120℃であった。
〔文献値:119.2〜120.1℃;J.Org.Chem.,17,1429(195
2)〕 実施例5 2−フルオロ−5−ニトロベンゼンスルホニルフロリ
ドに代えて、3−フルオロスルホニルベンゾイルフロリ
ド10.3g(0.05モル)を加えた以外は、実施例1と同様
に行った。反応は300mmHgの減圧下、210℃で反応蒸留を
行ないながら6時間撹拌した。留出物は120℃/300mmHg
の沸点をもつ3−フルオロベンゾイルフロリド(1.56
g)であり、転化率31%,選択率71%であった。
実施例6 水分離器、撹拌機、温度計を備えた50mlフラスコにス
プレー乾燥したフッ化カリウム11.6g(0.2モル)、テト
ラフェニルホスホニウムブロミド2.08g(0.005モル)お
よび無水スルホラン25g、およびトルエン40mlを入れ、
トルエンを加熱留去し共沸脱水した。さらに真空ポンプ
で反応容器内を減圧し、30mmHgで150℃まで昇温し、ト
ルエンを留去した。反応容器内を100℃まで冷却した
後、窒素ガスで置換し、3,4−ジクロロ−5−フルオロ
スルホニルベンゾイルクロリド15.4g(0.05モル)を加
え、190℃で5時間加熱撹拌した。反応液をガスクロマ
トグラフィーで分析したところ、3−クロロ−4,5−ジ
フルオロベンゾイルフロリドが53%生成していた。
〔GC−MC m/e 242(M+)〕
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07C 51/363 C07C 51/363 63/70 63/70 201/12 201/12 205/07 205/07 253/30 253/30 255/50 255/50 303/22 303/22 309/86 309/86 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07B 39/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第四級ホスホニウム塩を触媒とし、 一般式 (式中、RはSO2Cl、SO2F、COCl、NO2、CF3、CN、CHO等
    の電子吸引性基を示し、Xはハロゲン原子、アルキル
    基、または水素原子を示し、nは1〜4の整数を意味す
    る。)で示される芳香族スルホニルフロリドとアルカリ
    金属フロリドを反応させることを特徴とする、 一般式 (式中、R、X及びnは前記と同じ意味を示す。)で示
    される芳香族フッ素化合物の製造方法。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項記載の芳香族フッ素
    化合物を製造する方法に於いて、反応中常圧または減圧
    下で一般式(II)で示される芳香族フッ素化合物を、反
    応系外へ蒸留し取り出しながら行うことを特徴とする芳
    香族フッ素化合物の製造方法。
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