JP4641370B2 - 耐熱性及び耐水性を有するチーズ及びその製造方法 - Google Patents

耐熱性及び耐水性を有するチーズ及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小麦グルテンを含有し、耐熱性及び耐水性を有する風味及び組織の良好なチーズに関する。本発明のチーズは、耐熱性及び耐水性を有するため、製造工程中、加熱処理を伴うハンバーグ等の畜肉加工品やチーズ入りカマボコ等の水産練り製品の製造に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
チーズはタンパク質、脂質、カルシウム、ビタミン、ミネラル等の各種栄養素をバランス良く含んでおり、近年良質のカルシウム源として注目されている。また、チーズは様々な食品とも相性がよく、加工食品にも多く利用されている。例えば、ハンバーグ等の畜肉加工品にチーズを添加したり、カマボコ等の水産練り製品とチーズを組み合わせたりして、利用されることもある。このように、畜肉加工品や水産練り製品等と組み合わせて用いる場合には、製造時に加熱処理されるため、耐熱性と耐水性が求められる。そこで、チーズに耐熱性や耐水性を持たせるために、原料チーズに、キトサンを添加(特開平3−19649号公報)したり、アルブミンを添加(特開昭52−7465号公報)したり、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉を添加(特開平6−153791号公報)することが行われている。これらのチーズは耐熱性や耐水性を有しているため、加熱処理により溶融することはないが、冷めるとチーズが硬くなったり、また、キトサン、アルブミン、又は澱粉等を添加しているため、組織が硬くなったり、風味が低下するといった問題がある。
一方で、特開平2−215345号公報おいて、原料チーズを加熱乳化する際に、リン酸塩やクエン酸塩の代わりに、加水分解グルテンを配合した組織が滑らかで食感及び風味の良好なチーズも開示されているが、このチーズは耐熱性や耐水性を有するものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、耐熱性及び耐水性を有し、風味及び組織の良好なチーズを得るべく鋭意研究を進めたところ、小麦グルテンを含有させることにより、耐熱性及び耐水性を有する風味及び組織の良好なチーズが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は耐熱性及び耐水性を有する風味及び組織の良好なチーズを提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明では、原料チーズに対して、小麦グルテンを1〜4重量%含有するように添加し、加熱乳化してチーズを製造することにより、小麦グルテンがチーズとの間に網目構造を形成するため、チーズの構造が強固となり耐熱性及び耐水性を有するチーズが得られる。
本発明においてチーズとは、チーズフード、チーズ様食品のことを言う。
本発明において耐熱性を有するとは、加熱によりチーズが溶融することなく、もとの形状を維持していること言う。
本発明において耐水性を有するとは、冷水又は熱水中に浸漬したチーズの表面が溶解したり、ひび割れたり、型崩れ等がなく、もとの形状を維持していることを言う。
本発明において、畜肉加工品とは、畜肉を主原料として加工されたハム、ベーコン、ソーセージ、コンビーフ、ミートローフ、ハンバーグ等のことを言う。
本発明において、水産練り製品とは、魚のすり身を主原料として加工したカマボコ、ちくわ、はんぺん、魚肉ソーセージ等のことを言う。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明では、原料チーズに溶融塩、小麦グルテン、必要に応じて安定剤を添加し、常法に従って加熱乳化することにより、耐熱性及び耐水性を有する風味及び組織の良好なチーズを製造することができる。
本発明において小麦グルテンとしては、食品の製造に用いることのできるものであれば、いずれのものも用いることができるが、より良好な耐熱性及び耐水性と、良好な風味及び組織を有するチーズを得るためには、良質な強力小麦粉を原料とし、グルテンの熱変性が抑制されるように、低温で短時間乾燥処理を行った粉末状小麦グルテン、例えば、エマソフトEX−500(理研ビタミン社製)を用いることが好ましい。この小麦グルテンは、吸水性が良く、チーズに添加して加熱乳化した際にも、直ちにチーズとの間に強固な網目構造を形成するため、好ましい。
また、小麦グルテンは、原料チーズに対して、1〜4重量%含有するように添加することが好ましく、目的とする耐熱性や耐水性に応じて添加率を適宜調整することもできる。例えば、魚肉すり身でチーズを包餡後、蒸煮する程度の耐熱性を求めるのであれば、添加率は2重量%程度が好ましい。しかしながら、添加率が1重量%未満では蒸煮中にチーズが流れ出したり、とっ沸することがあるため好ましくない。一方で、魚肉すり身で包餡後、高温の油で油ちょうしたり、おでん種として85〜90℃の煮汁中に数時間浸漬されるような場合には、添加率は4重量%程度が好ましい。しかしながら、添加率が4重量%を超えると加熱乳化時に著しく増粘しすぎることがあるため好ましくない。
【0006】
本発明において溶融塩としては、チーズの製造に用いられているものであれば、いずれのものでもよく、例えば、クエン酸塩、モノリン酸塩、ジリン酸塩、ポリリン酸塩等を挙げることができる。また、その添加率は原料チーズに対して、0.1〜5重量%含有するように添加することが好ましく、0.1重量%未満では乳化が良好に行われないことがあるため好ましくなく、5重量%を超えると得られたチーズの組織がもろくなり、風味や食感が低下することがあるため好ましくない。
また、乳化安定性の向上や組織を調整する目的で、必要に応じてキサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、ペクチン、カラギーナン等の安定剤を適宜添加しても良い。
本発明では、上述の原料を乳化機に一括投入し、直接蒸気を吹き込むか、あるいは間接蒸気加熱により、80〜95℃前後まで加熱しながら500〜1500回転/分で約5分間加熱乳化することにより、流動性のある均質な乳化物を得ることができる。これを例えば、直径12mm、長さ180mmのスティック状のフィルムやポリエチレンで内包装されたコンテナ等に充填して冷却することにより、目的とするチーズを得ることができる。また、コンテナに充填して冷却したチーズは、例えば、4.5×4.5×4.5mm〜7×7×7mmのダイス状にカットして用いてもよい。
【0007】
【実施例】
次に、本発明によって小麦グルテンを添加した場合の効果を実施例によって示す。
実施例1
チェダーチーズ(ニュージーランド産)12kg、ゴーダチーズ(オーストラリア産)7kg及びスキムチーズ(デンマーク産)2.5kgを粉砕、混合し、容量40リットルのステファン乳化釜に投入し、リン酸ナトリウム560gとpHを調整するために重曹210gを添加した。次いで、原料チーズに対して、表1に示す割合で小麦グルテン(エマソフトEX−500、理研ビタミン社製)を添加し、直接蒸気を吹き込みながら1500回転/分で撹拌し、約3分間で85〜90℃に到達するように乳化を行い、6種の乳化物を得、これを内包装付きの10kgのコンテナに充填し、5℃冷蔵庫にて冷却し、そのまま一週間保存した。
【0008】
試験例1
実施例1で得られた6種のチーズについて、以下に示す方法で、耐熱性及び耐水性を評価し、さらに風味及び組織について官能評価を行った。
(1)耐熱性は、各チーズを20×20×20mmの立方体とし、100℃で15分間又は121℃で15分間の条件で湿熱加熱し、加熱後のチーズの高さを測定した。
もとのチーズの高さ(20mm)に対する加熱後のチーズの高さの割合(%)で示し、前者の加熱条件で処理を行った場合、この割合が90%以上、後者の加熱条件で処理を行った場合、この割合が80%以上であるとき耐熱性が良好であるとした。
(2)耐水性は、各チーズを20×20×20mmの立方体とし、95〜100℃の熱水中に15分間又は2時間、10℃の水に7日間の条件で浸漬し、その後のチーズの形状を目視にて観察し、5点:角の崩れもなくもとの形状のままである、4点:やや角に丸みが見られるが形状はほぼそのままである、3点:形状が崩れひび割れが見られる、2点:形状が崩れ見た目にも溶け出している、1点:形状が崩壊し小片になっている、の5段階で評価した。さらに、浸漬液の透明度を透視度計で透視し、底部に置いた5号活字がはじめて識別できたときの浸漬液の高さを測定した。5号活字がはじめて識別された時の浸漬液の高さが100mm以上であるとき、耐水性が良好であるとした。
(3)官能評価は、20人の熟練パネラーに食してもらい風味及び組織(滑らかさや口溶け)について、5点:大変好ましい、4点:好ましい、3点:どちらとも言えない、2点:好ましくない、1点:全く好ましくない、で評価し、その平均点(小数点以下第2位を四捨五入)で示した。
これらの結果を表1〜3に示す。
【0009】
【表1】
Figure 0004641370
【0010】
【表2】
Figure 0004641370
【0011】
【表3】
Figure 0004641370
【0012】
表1〜3より明らかなように、小麦グルテンの添加率が1重量%未満では、風味及び食感は良好なものの、耐熱性及び耐水性は発現されなかった。また、小麦グルテンの添加率が1重量%以上4.0重量%以下では、良好な耐熱性及び耐水性が発現され、風味も良く、組織も滑らかで口溶けも良かった。さらに、小麦グルテンの添加率が5重量%では、耐熱性及び保形性を発現したものの、風味及び組織が好ましくなかった。
【0013】
実施例2
実施例1で得られたチーズを4.5×4.5×4.5mmの大きさの立方体にカットした。常法に従い、ハンバーグ生地を調製した。ハンバーグ生地70gにチーズ15gを加え、混合し小判型に成形して、フライパンで焼成した。チーズは焼成時に溶け出すことがなかった。また、焼成後、ハンバーグを切断したところ、チーズは溶融することなく形状を維持していた。
同様にして、成形し、焼成したハンバーグを冷却後、冷蔵庫で3日間保存した。このハンバーグを電子レンジ(500W)で2分間加熱し、切断したところ、チーズは溶融することなく形状を維持しており、離水も生じていなかった。
【0014】
実施例3
実施例1で得られたチーズを一辺が10mmで長さが180mmの角柱状に成形した。常法に従い、魚肉のすり身を調製した。すり身を5mmの厚さに展延し、60mmに切断したチーズをのせてすり身でチーズを包み、95〜100℃で20分間蒸煮し、チーズ入りカマボコとした。蒸煮中、チーズは溶融することなく形状を維持していた。
同様にして、成形し、蒸煮したチーズ入りカマボコを冷蔵庫で10日間保存した。保存中もチーズは形状を維持しており、離水も生じていなかった。
【0015】
実施例4
実施例1で得られたチーズを20×20×20mmの大きさの立方体にカットした。常法に従い、おでんを調製した。チーズをゆで卵、大根、厚揚げ等の他の具材とともに、煮汁で2時間煮込んだ。チーズは、溶融することなく形状を維持しており、煮汁が充分にしみ込んでおり、好ましい外観を呈していた。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性及び耐水性を有し、風味及び組織の良好なチーズを得ることができる。本発明のチーズは、耐熱性及び耐水性が良好であるため、製造工程中に加熱処理を伴うハンバーグ等の畜肉加工品やチーズ入りカマボコ等の水産練り製品用のチーズとして利用することができる。

Claims (3)

  1. 原料チーズに対して、溶融塩0.1〜5重量%及び小麦グルテン1〜4重量%を添加し、加熱乳化することを特徴とする耐熱性及び耐水性を有するチーズの製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法によって得られたチーズを含むことを特徴とする畜肉加工品。
  3. 請求項1記載の製造方法によって得られたチーズを含むことを特徴とする水産練り製品。
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