JP4637979B2 - 芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性、低い光弾性定数、高い屈折率および逆分散値を有し、優れた透明性、耐熱性を有する芳香族−脂肪族ポリカーボネートの製造方法に関するものである。このポリカーボネート樹脂は各種レンズ、プリズム、光ディスク基板などのプラスチック光学材料に好適に利用できるものである。
【0002】
【従来の技術】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BPAと記す)等の芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを酸結合剤の存在下、界面重合させて得られるポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性にも優れていることから、光学材料として各種レンズ、プリズム、光ディスク基板などに利用されている。
しかしながら、芳香族ジヒドロキシ化合物としてBPAだけを用いてなるポリカーボネートでは、光弾性定数が大きく、溶融流動性が比較的悪いために成型品の複屈折が大きくなり、また屈折率は1.58と高いもののアッベ数が30と低いため、広く光記録材料や光学レンズ等の用途に用いられるには十分な性能を有していないという欠点がある。
このようなBPA−ポリカーボネートの欠点を解決する目的で、BPAとトリシクロ(5.2.1.02,6 )デカンジメタノール(以下、TCDDMと記す)の共重合ポリカーボネートが提案されている(特開昭64−66234号公報)。しかしながら、この共重合ポリカーボネートの製造方法は、BPAのビスクロロホルメートとTCDDMあるいTCDDM及びBPAとを重縮合する、TCDDMのビスクロロホルメートとBPAあるいはBPA及びTCDDMとを重縮合する、またはBPAのビスクロロホルメートとTCDDMのビスクロロホルメートとの混合物とBPA及び/又はTCDDMとを重縮合する方法が述べられているにすぎない。このような、脂肪族ジヒドロキシ化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物の共重合体の製造において、ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメートを製造し、その後ジヒドロキシ化合物と重縮合させるという2段階の反応では、製造工程も複雑になり、その結果として製造コストも高くなる欠点があった。芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートはエステル交換法として知られる方法、すなわち芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物、およびジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換反応によって重縮合させる方法が好適に用いられる。しかしながらこの方法ではポリカーボネートを製造する際に、通常200 ℃〜300 ℃の温度に加熱しながら重縮合を行なうために、高温で長時間の熱履歴を受け色調の悪化等、品質的に優れたものを得るのが困難であるという欠点を有する。このためこの方法により得られるポリカーボネートは光学材料などの分野に用いることが困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、優れた耐衝撃性、耐熱性と高いアッベ数と低い光弾性定数を有する色調に優れた芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂をエステル交換法により製造する方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは光学材料として使用されうる芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂をエステル交換法により製造する方法を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、BPAとTCDDMの共重合体を溶融エステル交換法により製造する際、アルデヒド基の含有量がKOH換算でTCDDM1gに対して0.5mg以下であるTCDDMをもちいることにより上記目的が達成されることを見出した。すなわち本発明は下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物および下記式(2)で表されるトリシクロ(5.2.1.02,6 )デカンジメタノールと炭酸ジエステルとを加熱溶融下重縮合させる芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法において、アルデヒド基の含有量がKOH換算でTCDDM1gに対して0.5mg以下であるTCDDMを用いることを特徴とする芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法を提供するものである。
【化4】
(上記式(1)において、Xは単結合もしくは、
【化5】
であり、ここに、R3 およびR4 はそれぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基であり、R3 とR4 が結合し環を形成していてもよい。R1 およびR2 はそれぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはハロゲンであり、R1 とR2 は同じでも異なっていてもよい。また、mおよびnは置換基数を表し0〜4の整数である。)
【化6】
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関わる芳香族−脂肪族ポリカーボネートの製造方法を具体的に説明する。
【0006】
上記式(2)で表されるTCDDM中には不純物として含まれる化合物由来のカルボニル基の含有量が、KOH換算でTCDDM1g中に0.5mg以下、好ましくは0.3mgさらに好ましくは0.1mg以下であるものが用いられる。このようなTCDDMを用いることによって、色調の優れたポリカーボネートを得ることができる。ここでTCDDMに不純物として含まれるカルボニル基の含有量は、カルボニル基と2,4−ジニトロフェニルヒドラジンが反応した反応物の430nmの吸収スペクトルを測定することにより定量する。検出限界は0.005mg/gである。さらに詳しい本測定方法を以下に記す。すなわち、TCDDM40mgを、メタノール5mlに溶解した後、1mlを試験管に採取する。この試験管に、2回再結晶後の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン飽和メタノール溶液1mlおよび濃塩酸2滴を添加し、密栓をした後、100℃、5分間加熱し、次に自然放冷して室温にした。さらに、メタノール5mlおよび10wt%KOH水溶液4mlを添加して測定溶液とした。尚、ここでメタノールは、全てカルボニル化合物の含有量が、検出限界以下のものを使用した。 ブランクとして、上記測定溶液と同様の操作を行ったメタノールを使用し、自記分光測定装置で差スペクトルを測定し、ベンズアルデヒドを基準物質とした検量線により、濃度を算出した。
【0007】
市販のTCDDM中には、通常不純物として主に合成時の反応中間体であるモノアルデヒドなどに由来するカルボニル基がKOH換算で0.7〜3.0mg/g存在する。このカルボニル基の含有量がKOH換算で0.5mg/g以下であるTCDDMを得る精製方法としては例えばTCDDMをアルコールなどの有機溶媒に溶解し、触媒存在下接触水素化した後、蒸留する方法がある。
【0008】
接触水素化に用いられる触媒としては公知の触媒を用いることができる。例えば、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、のような金属水素化物、塩化ロジウム、塩化ロジウムカルボニル二量体、硝酸ロジウム、三塩化ロジウムなどのロジウム化合物、ニッケル、ニッケル珪藻土、ラネーニッケルなどのニッケル化合物、酸化白金、5%白金−Cuなどの白金化合物、パラジウム黒、酸化パラジウム、5%パラジウム−Cu、Pd−BaSO4 などのパラジウム化合物、銅−酸化クロム、ルテニウム−活性炭、コバルト、鉄、タングステン、イリジウムなどが好適に用いられる。
以上挙げた中でも、特にパラジウム化合物が好適に用いられる。
【0009】
接触水素化に用いられる溶媒としては水、飽和脂肪族、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類及びそれらの混合溶媒が適当である。具体的な例としてn-ヘキサン、n-オクタン、n-ドデカン、n-テトラデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、アルキルナフタレン類からなる流動パラフィン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ブチルベンゼン、ドデシルベンゼン、メタノール、エタノール、n-ブタノール、n-オクタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメルチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、酢酸エチル、酢酸ブチルなど、及びそれらの混合物をあげることができる。
【0010】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、4,4‘−(9−フルオレニリデン)ジフェノール等が好適に用いられる。
【0011】
これらのうちで、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BPAと記す)、あるいは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下、BPZと記す)が好ましい。
【0012】
また、上記式(1)で表されるの芳香族ジヒドロキシ化合物は、2種類以上を併用して用いる事もできる。特にBPAとBPZを併用して用いることは、光学特性の改善並びに耐衝撃性および耐熱性の向上という観点から好ましい。
【0013】
また、上記式(2)で表される脂肪族ジヒドロキシ化合物にくわえ、2種類以上の脂肪族ジヒドロキシ化合物、例えば、β,β,β' ,β' −テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエタノール(スピログリコール)、2,6−デカリンジメタノールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを併用して用いる事もできる。
【0014】
本発明においては、このような式(1)で表される化合物から誘導される構成単位(I)と、式(2)で表される化合物から誘導される構成単位(II)のモル比(I)/(II)が、90/10〜10/90であることが好ましく、さらに好ましくは80/20〜20/80が好ましい。該モル比(I)/(II)が10/90より低いと耐熱性に劣るものとなり、90/10より高いと光弾性定数、吸水率などが高くなり、さらに屈折率とアッベ数のバランスが悪くなり光学材料としては好ましくない。
【0015】
本発明では、炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が用いられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが好ましい。また、着色原因ともなるジフェニルカーボネート中の塩素含有量は、20ppm 以下であることが好ましい。より好ましくは、10ppm 以下である。ジフェニルカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.97〜1.20モルの量で用いられることが好ましく、特に好ましくは0.99〜1.10モルの量である。
【0016】
本発明に用いられるポリカーボネートの重量平均分子量は30,000〜200,000であることが好ましく、さらに好ましくは50,000〜120,000である。
【0017】
本発明に関わるポリカーボネートの製造方法では、触媒として、塩基性化合物やエステル交換触媒が用いられ、具体的には、アルカリ金属化合物、アルカリ土類化合物や含窒素化合物等があげられる。
【0018】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機酸、無機塩類、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0019】
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
【0020】
また、アルカリ土類金属化合物としては、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0021】
また、含窒素化合物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、アルアリール基などを有するアンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基性塩等が用いられる。
【0022】
また、アルカリ金属化合物として、周期律表第14族の元素のアート錯体のアルカリ金属塩あるいは周期律表第14族の元素のオキソ酸のアルカリ塩を用いることができる。ここで周期律表第14族の元素とは珪素、ゲルマニウム、錫のことをいう。具体的には周期律表第14族の元素のアート錯体のアルカリ金属塩としてNNaGe(OMe)5、NaGe(OEt)3などのゲルマニウム化合物、NaSn(OMe)3、NaSn(Ome)2(OEt)、などの錫化合物があげられる。また周期律表第14族の元素のオキソ酸のアルカリ塩としてオルトケイ酸モノナトリウム、モノ錫酸ジナトリウム塩、ゲルマニウム酸モノナトリウム塩などがあげられる。
【0023】
上記の触媒は、芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物との合計1モルに対して、10-9〜10-3モルの量で、好ましくは10-7〜10-5モルの量で用いられる。
【0024】
本発明に関わるエステル交換反応は、公知の溶融重縮合法により行うことができる。すなわち、前記の原料、および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段工程で実施される。
【0025】
具体的には、第一段目の反応を120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で0〜5時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めて芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には1mmHg以下の減圧下、200〜300℃の温度で重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行っても良い。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、槽型であっても押出機型であってもパドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新性の優れた撹拌翼を備えた横型装置であってもよい。
【0026】
本発明の重合終了時の生成物であるポリカーボネートには、熱安定性、および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させることが好ましく、公知の酸性物質の添加によるアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物等のエステル交換触媒の失活を行う方法が好適に実施される。
【0027】
これらの物質としては、具体的には、p−トルエンスルホン酸のごとき芳香族スルホン酸、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、ステアリン酸クロライド、酪酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライドのごとき有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸のごときアルキル硫酸、塩化ベンジルのごとき有機ハロゲン化物等、ホウ酸、リン酸等の無機酸等が好適に用いられる。
【0028】
さらにオクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩あるいはテトラブチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラメチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩等も好適に用いられる。
【0029】
溶融状態の反応前に各種公知の安定剤を加えることが望ましい。該安定剤としては例えば、硫黄含有酸性化合物あるいは該酸性化合物から形成される誘導体、フェノール系安定剤、チオエーテル系安定剤、鱗系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、エポキシ系安定剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等をあげることができる。これらの安定剤は単独または組み合わせて用いることができる。
【0030】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1〜1mmHgの圧力、200〜300℃の温度で脱気除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新性の優れた撹拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0031】
さらに本発明において、上記熱安定化剤、加水分解安定化剤の他に、酸化防止剤、顔料、染料、強化剤や充填剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良材、帯電防止剤などを添加することができる。
【0032】
これらの添加剤は、従来から公知の方法で各成分をポリカーボネート樹脂に混合することができる。例えば、各成分をターンブルミキサーやヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合後、押し出し機、バンバリーミキサー、ロールなどで溶融混練する方法が適宜選択される。
【0033】
【実施例】
以下、精製例、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何らの制限を受けるものではない。
【0034】
精製例1(TCDDM−A)
市販のTCDDM(ヘキストセラニーズ社製)は、KOH換算で0.7〜2.5mg/g程度のカルボニル基が検出される。TCDDMを0.32mmHgの減圧下温度190℃で減圧蒸留した。留出温度は151℃であった。蒸留後のTCDDMよりKOH換算で0.7mg/gのカルボニル基が検出された。
精製例2(TCDDM−B)
TCDDM200gを1000mlエタノールに60℃にて完全溶解する。攪拌機付き2L加圧反応容器に5wt%Pd/C触媒10gをいれて窒素置換を三回行なった後、TCDDMエタノール溶液を耐圧反応容器に入れる。さらに窒素置換三回後水素置換を二回行なう。水素分圧5kg/cm2 の状態で攪拌しながら5℃/minで180℃まで昇温する。その温度で3時間反応させる。50℃まで放冷し窒素置換三回した後反応混合物を取り出した。反応混合物から5Cのろ紙で吸引濾過により触媒を除去した後ロータリーエバポレーターによりエタノ−ルを除去した。さらに得られたTCDDMを減圧蒸留し精製されたTCDDM−Bを得た。含有アルデヒドは検出限界以下であった。
精製例3(TCDDM−C)
TCDDM200gを1000mlエタノールに60℃にて完全溶解する。攪拌機付き2L加圧反応容器にルテニウム−活性炭触媒15gをいれて窒素置換を三回行なった後、TCDDMエタノール溶液を耐圧反応容器に入れる。さらに窒素置換三回後水素置換を二回行なう。水素分圧5kg/cm2 の状態で攪拌しながら5℃/minで180℃まで昇温する。その温度で3時間反応させる。50℃まで放冷し窒素置換三回した後反応混合物を取り出した。反応混合物から5Cのろ紙で吸引濾過により触媒を除去した後ロータリーエバポレーターによりエタノ−ルを除去した。さらに得られたTCDDMを減圧蒸留し精製されたTCDDM−Cを得た。蒸留後のTCDDMよりKOH換算で0.21mg/gのカルボニル基が検出された。
【0035】
実施例1
BPA22.8g(0.10モル) 、TCDDM−B22.8g(0.10モル) 、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、炭酸水素ナトリウム6.0x10-7モルを撹拌機および留出装置つきの30ml四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間撹拌した。その後、減圧度を150mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行いエステル交換反応を行った。さらに、フェノールを留去しながら240℃まで昇温し、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み常圧に戻し、生成ポリカーボネートを取り出した。このポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0036】
実施例2
BPA34.2g(0.15モル) 、TCDDM−B11.4g(0.05モル)を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、BPA−TCDDM共重合ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0037】
実施例3
BPA13.7g(0.06モル)、TCDDM−C31.9g(0.14モル)を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、BPA−TCDDM共重合ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0038】
実施例4
BPA11.4g(0.05モル) 、BPZ13.4g(0.05モル) 、TCDDM−B22.8g(0.10モル) を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、BPA−TCDDM共重合ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0039】
比較例1
BPA11.4g(0.05モル) 、BPZ13.4g(0.05モル) 、TCDDM−A22.8g(0.10モル) を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、BPA−TCDDM共重合ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0040】
なお、表1中の物性は、下記の方法により測定したものである。
(1)分子量:GPC(Shodex GPC system 11)を用い、スチレン換算分子量(重量平均分子量:Mw)として測定した。展開溶媒にはクロロホルムを用いた。
(2)Tg:示差走査熱量分析計にて測定した。
(3)屈折率:JIS K 7105に従いアッベ屈折計にて測定した。
(4)アッベ数:アッベ屈折計にて測定し、計算して求めた。
(5)落球衝撃値:50mmφ×3.0mmの試験片に鋼球を7cmの距離より落下させ、試験片が破壊する鋼球重量で表示した。
(6)YI値:得られた樹脂を3mm厚のディスクにプレス成形し色差計( 東京電色TC-1800MKZ) によりYI値( 黄色度) を測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
本発明ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートの優れた耐衝撃性、耐熱性、光学特性等を維持しながら、色調が改善されたもので、各種レンズ、プリズム、光ディスク基板などのプラスチック光学材料用として好適に利用できる。
Claims (6)
- 下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と下記式(2)で表されるトリシクロ(5.2.1.02,6)デカンジメタノールと炭酸ジエステルとからエステル交換反応によって芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートを製造するにあたり、トリシクロ(5.2.1.02,6)デカンジメタノール中のアルデヒド基の含有量がKOH換算でトリシクロ(5.2.1.02,6)デカンジメタノール1gに対して、0.5mg以下であることを特徴とする芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物が、ビスフェノールAである請求項1記載の芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。
- 芳香族ジヒドロキシ化合物が、ビスフェノールAおよびビスフェノールZである請求項1記載の芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。
- 炭酸ジエステルがジフェニルカーボネートである請求項1記載の芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。
- アルデヒド基の含有量がKOH換算でトリシクロ(5.2.1.02,6 )デカンジメタノール1gに対して、0.5mg以下であるトリシクロ(5.2.1.02,6)デカンジメタノールが、触媒存在下、接触水素化した後、蒸留することにより得られたものである請求項1記載の芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。
- 触媒がパラジウム化合物である請求項5記載の芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。
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