JP4085210B2 - 芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性、低い光弾性定数、高い屈折率および逆分散値を有し、優れた透明性、耐熱性を有する芳香族−脂肪族ポリカーボネートの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは色調の良好な芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを酸結合剤の存在下、界面重合させて得られるポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性にも優れていることから、光学材料として各種レンズ、プリズム、光ディスク基板などに利用されている。
しかしながら、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAだけを用いてなるポリカーボネートでは、光弾性定数が大きく、溶融流動性が比較的悪いために成型品の複屈折が大きくなり、また屈折率は1.58と高いもののアッベ数が30と低いため、広く光記録材料や光学レンズ等の用途に用いられるには十分な性能を有していないという欠点がある。
このようなビスフェノールA−ポリカーボネートの欠点を解決する目的で、本発明者らは、先に芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネート樹脂(特願平8−276260)を提案した。この芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネート樹脂は、優れた耐衝撃性、耐熱性を有し、その上光弾性定数が小さく、アッベ数が高いことから、広く光学材料として用いることが可能である。このような芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートは、通常のホスゲン法では製造することが困難であり、エステル交換法として知られる方法、すなわち芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物、およびジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換反応によって重縮合させる方法が好適に用いられる。
【0003】
エステル交換反応では、ポリカーボネートを製造する際に、通常200℃〜330℃の温度に加熱しながら重縮合を行うために、高温で長時間の熱履歴を受け色調の悪化等、品質的に優れたものを得るのが困難であるという欠点を有する。このため、この方法により得られるポリカーボネートは色調が要求される分野に用いることが困難であった。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、優れた耐衝撃性、耐熱性と高いアッベ数と低い光弾性定数を有し、さらに色調にも優れる芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的としている。
【0005】
【発明の概要】
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位と下記式(2)で表される脂肪族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位と炭酸ジエステルから誘導される構成単位とからなることを特徴としている。
【化4】
(上記式(1)において、Xは
【化5】
であり、ここに、R3およびR4は、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基であり、R3とR4が結合し環を形成していても良い。R1とR2はそれぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはハロゲンであり、R1とR2は同じでも異なっていても良い。また、mおよびnは置換基数を表し0〜4の整数である。)
【化6】
(上式(2)において、R5、R6、R7およびR8は水素原子、または炭素数1〜10の1価のアルキル基である。)
【0006】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、上記芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの色調と脂肪族ジヒドロキシ化合物中に含有されるアルデヒド基を有する化合物(RCHO、R:アルキル基)およびホルメート基(ROCHO、R:アルキル基)の量との間に相関関係があることを見出し、脂肪族ジヒドロキシ化合物中におけるアルデヒド基およびホルメート基の含有量が特定値以下である脂肪族ジヒドロキシ化合物を用いることにより、色調の良好な樹脂が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、上記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、上記式(2)で表される脂肪族ジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを加熱溶融下重縮合せしめて芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートを製造するに際して、アルデヒド基および/またはホルミル基の含有量が100ppm以下である脂肪族ジヒドロキシ化合物を用いることを特徴とする芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法である。
【0008】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に関わる芳香族−脂肪族ポリカーボネートの製造方法を具体的に説明する。
【0009】
本発明に関わるポリカーボネートは、上記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位と上記式(2)で表される脂肪族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位と、炭酸ジエステルから誘導される構成単位からなる。
【0010】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等が用いられる。
【0011】
これらのうちで、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールA、あるいは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンが好ましい。
【0012】
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、3,9−ビス(2−ヒドロキシエチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジエチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジプロピルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどが用いられる。好ましくは、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンが用いられる。
【0013】
本発明においては、上記脂肪族ジヒドロキシ化合物として、アルデヒド基およびホルメート基の含有量が100ppm以下となるように精製したものを用いることを特徴とする。
【0014】
このようなアルデヒド基およびホルメート基の含有量が特定値以下を与える脂肪族ジヒドロキシ化合物を製造するには、蒸留、昇華、酸化剤洗浄、還元剤洗浄、水添、吸着剤処理、再結晶などの精製方法を効果的に用いることができ、また、これらの精製手段を複数組み合わせると更に効果的である。本発明では、上記脂肪族ジヒドロキシ化合物を非水溶性有機溶媒に加熱溶解後、酸化剤水溶液あるいは還元剤水溶液と加熱攪拌して洗浄し、引き続いてイオン交換水により充分洗浄した後冷却して再結晶する方法、あるいは、上記脂肪族ジヒドロキシ化合物を溶媒に溶解し、公知の水添用金属触媒あるいは水添用金属酸化物触媒の存在下、常圧もしくは加圧下で水素化を行った後冷却して再結晶する方法が特に効果的である。
【0015】
本発明に用いることのできる溶媒としては、脂肪族ジヒドロキシ化合物の溶解度が高温において十分に高く、且つ室温付近での溶解度が十分低いものが好適に用いられる。例えば、酸化剤洗浄と再結晶とを組み合わせる場合には、酸化されにくい非水溶性のアルコール、非水溶性のエステル、非水溶性のケトン、芳香族炭化水素、等が挙げられる。還元剤洗浄と再結晶とを組み合わせる場合には、還元されにくい非水溶性のアルコール、非水溶性のエステル、非水溶性のエーテル、芳香族炭化水素、等が挙げられる。水添と再結晶とを組み合わせる場合には、アルコール、エーテル、等が挙げられる。
【0016】
さらに具体的な化合物を例示すれば、非水溶性のアルコール系溶媒として、n−ブタノール、イソブチルアルコール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、2−ブトキシエタノール、等を挙げることができる。
【0017】
非水溶性のエーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−n−アミルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルブチルエーテル、メチル−n−アミルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチル−n−アミルエーテル、エチルイソアミルエーテル、ジアリルエーテル、エチルアリルエーテル、アニソール、フェネトール、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等を挙げることができる。
【0018】
非水溶性のエステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸n−アミル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、酪酸n−アミル、酪酸イソアミル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸イソアミル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸ブチル、吉草酸n−アミル、吉草酸イソアミル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、イソ吉草酸イソプロピル、イソ吉草酸イソブチル、イソ吉草酸イソアミル、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどを挙げることができる。
【0019】
非水溶性のケトン系溶媒としては、ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、ピナコロン、ジイソプロピルケトン、メシチルオキシド、シクロヘキサノン、等を挙げることができる。
【0020】
芳香族炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、等を挙げることができる。
【0021】
水添に用いられるアルコール系溶媒としては、上記の非水溶性アルコールに含めてメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、エチレングリコール、等を挙げることができる。
【0022】
水添に用いられるエーテル系溶媒としては、上記の非水溶性エーテルに含めてテトラヒドロフラン、ジオキサン、等を挙げることができる。
【0023】
これらのうち、特に好ましい溶媒としてはアルコール類であり、さらに好ましくは炭素数10以下ののアルコールである。また、上記の溶媒を2種以上、混合して用いることもできる。
【0024】
再結晶は公知の方法で実施することができ、原料純度等に応じて2回以上の多数回の再結晶を実施しても良い。再結晶で得られた結晶は、濾過、洗浄後、適当な方法で乾燥し、樹脂原料として用いる。
【0025】
本発明に関わるポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位と、上記式(2)で表される脂肪族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位からなり、ランダム、ブロック、あるいは交互共重合体、もしくは上記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位からなるポリカーボネートと、上記式(2)で表される脂肪族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位からなるポリカーボネートのブレンドなどを含むものであるため、優れた耐熱性、および色相、さらにバランスのとれた屈折率および分散特性を示し、複屈折率が低いという特徴を示す。
【0026】
本発明において、芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位(以下、Iと称する。)と脂肪族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位(以下、IIと称する。)のモル比(I/II)が、90/10〜10/90であることが好ましく、さらに好ましくは80/20〜20/80が好ましい。すなわち、該ポリカーボネート中の芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位のモル比(I/II)が10/90より低いと耐熱性に劣るものとなり、90/10より高いと光弾性定数、吸水率などが高くなり、さらに屈折率とアッベ数のバランスが悪くなり光学材料としては好ましくない。
【0027】
本発明では、炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が用いられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが好ましい。ジフェニルカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.97〜1.2モルの量で用いられることが好ましく、特に好ましくは0.99〜1.10モルの量である。
【0028】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は30,000〜200,000であることが好ましく、さらに好ましくは50,000〜120,000である。
【0029】
本発明に関わるポリカーボネートの製造方法では、触媒として、塩基性化合物が用いられる。このような塩基性化合物としては、特にアルカリ金属および/またはアルカリ土類化合物、含窒素化合物等があげられる。
【0030】
このような化合物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類化合物等の有機酸、無機塩類、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0031】
このようなアルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
【0032】
また、アルカリ土類金属化合物としては、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0033】
また、含窒素化合物としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、アルアリール基などを有するアンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基性塩等が用いられる。
【0034】
これらの触媒は、芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物との合計1モルに対して、10-9〜10-3モルの量で、好ましくは10-7〜10-5モルの量で用いられる。
【0035】
本発明に関わるエステル交換反応は、公知の溶融重縮合法により行うことができる。すなわち、前記の原料、および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段工程で実施される。
【0036】
具体的には、第一段目の反応を120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で0〜5時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めて芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には1mmHg以下の減圧下、200〜300℃の温度で重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行っても良い。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、槽型であっても押出機型であってもよい。
【0037】
本発明の重合終了時の生成物であるポリカーボネートには、熱安定性、および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させることが好ましく、公知の酸性物質の添加によるアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属等のエステル交換触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、p−トルエンスルホン酸のごとき芳香族スルホン酸、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、ステアリン酸クロライド、酪酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライドのごとき有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸のごときアルキル硫酸、塩化ベンジルのごとき有機ハロゲン化物等、ホウ酸、リン酸等の無機酸等が好適に用いられる。
【0038】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1〜1mmHgの圧力、200〜300℃の温度で脱気除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新性の優れた撹拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0039】
さらに本発明において、上記熱安定化剤、加水分解安定化剤の他に、酸化防止剤、顔料、染料、強化剤や充填剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良材、帯電防止剤などを添加することができる。
【0040】
これらの添加剤は、従来から公知の方法で各成分をポリカーボネート樹脂に混合することができる。例えば、各成分をターンブルミキサーやヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合後、押し出し機、バンバリーミキサー、ロールなどで溶融混練する方法が適宜選択される。
【0041】
【発明の効果】
本発明ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートの優れた耐衝撃性、耐熱性等の特性を維持しながら、屈折率、分散のバランスおよび光弾性定数などが改善されたものなので、各種レンズ、プリズム、光ディスク基板などのプラスチック光学材料用として好適に利用できる。
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではない。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何らの制限を受けるものではない。
【0044】
アルデヒド基およびホルメート基の定量は、所定量の脂肪族ジヒドロキシ化合物と所定量の内標準のトリオキサンを重ジメチルスルホキシドに溶解し、500MHzNMR測定装置で1H−NMRを測定し内標準とのピーク積分比から算出する方法によった。アルデヒド基の化学シフトは9.47〜9.49ppm、ホルメート基の化学シフトは8.23〜8.25ppmである。
【0045】
実施例1
市販の3,3’−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(以下、スピログリコールという)800gをイソブチルアルコール10Lに温度90℃で完全に溶解させた後、室温まで冷却しスピログリコールを再結晶した。結晶を濾別し、結晶とほぼ同体積のイソブチルアルコールでリンスした後、真空乾燥機で60℃で乾燥させスピログリコール結晶700gを得た。この精製スピログリコール中のアルデヒド基は1ppm以下、ホルメート基は90ppmであった。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン22.8g(0.10モル)、上記精製スピログリコール30.4g(0.10モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、炭酸水素ナトリウム6.0×10−7モルを撹拌機および留出装置つきの300cc四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下180℃に加熱し、30分間撹拌した。その後、減圧度を150mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行いエステル交換反応を行った。さらに、フェノールを留去しながら260℃まで昇温し、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み常圧に戻し、生成ポリカーボネートを取り出した。このポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0046】
実施例2
市販のスピログリコール87.5gをイソブチルアルコール1Lに添加し、温度75℃に保った。これに75℃に加熱した5%過酸化水素水溶液、硼酸0.556gを激しく撹拌しながら滴下し、滴下終了から1時間激しく撹拌しながら75℃に保ち洗浄を行った。撹拌を停止し水層を抜き取り、この後、イオン交換水375gを添加し15分激しく撹拌し、撹拌停止後水層を抜き取る操作を3回行った。有機層を取り出し熱時濾過(濾紙メッシュ1μm)後、一晩静置放冷し再結晶を行った。得られた結晶を濾別後、結晶とほぼ同体積のイソブチルアルコールで結晶を洗浄し、60℃で真空乾燥させてスピログリコール結晶70gを得た。得られた精製スピログリコール中のアルデヒド基は1ppm以下、ホルメート基は30ppmであった。この精製スピログリコールを用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ビスフェノールA−スピログリコール共重合ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0047】
実施例3
市販のスピログリコール87.5gをイソブチルアルコール1Lに添加し、温度75℃に保った。これに75℃に加熱した450ppmハイドロサルファイトナトリウム水溶液を激しく撹拌しながら滴下し、滴下終了から1時間激しく撹拌しながら75℃に保ち洗浄を行った。撹拌停止後水層を抜き取り、この後、イオン交換水375gを添加し15分激しく撹拌し、撹拌停止後水層を抜き取る操作を3回行った。有機層を取り出し熱時濾過(濾紙メッシュ1μm)後、一晩静置放冷し再結晶を行った。得られた結晶を濾別後、結晶とほぼ同体積のイソブチルアルコールで結晶を洗浄し、60℃で真空乾燥させてスピログリコール結晶68gを得た。得られた精製スピログリコール中のアルデヒド基は1ppm以下、ホルメート基は47ppmであった。この精製スピログリコールを用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ビスフェノールA−スピログリコール共重合ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0048】
実施例4
市販のスピログリコール80g、イソブチルアルコール1000g、5%プラチナ担持活性炭0.4gを2.1Lオートクレーブに仕込み、水素置換後、水素加圧20kgfとした後激しく撹拌しながら加熱し、内部温度80℃で1時間保持した。触媒を熱時濾過(濾紙メッシュ1μm)で除去後、濾液を一晩静置放冷し再結晶を行った。得られた結晶を濾別後、結晶とほぼ同体積のイソブチルアルコールで洗浄し、真空乾燥機で60℃で乾燥させ結晶72gを得た。得られたスピログリコール中のアルデヒド基は1ppm以下、ホルメート基は45ppmであった。この精製スピログリコールを用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ビスフェノールA−スピログリコール共重合ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの物性を表1に示す。
【0049】
比較例1
実施例1において、市販のスピログリコールを精製を行わずに用いた他は実施例1と同様の操作を行った。このスピログリコールのアルデヒド基は25ppm以下、ホルメート基は125ppmであった。得られたポリカーボネートは色調が非常に悪いものであった。
【0050】
比較例2
市販のスピログリコール100gとイオン交換水2000mLを混合し、スラリー状態のまま75℃に保持しながら1時間激しく加熱撹拌した。スラリーを濾過し、ケーキをほぼ同体積のイオン交換水で洗浄した後、真空乾燥機で60℃で乾燥させ微結晶96gを得た。得られたスピログリコール中のアルデヒド基は22ppm以下、ホルメート基は113ppmであった。この精製スピログリコールを用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ビスフェノールA−スピログリコール共重合ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの物性を表1に示すが、淡黄色に着色していた。
【0051】
比較例3
市販のスピログリコール160gとメタノール2000mLを混合し、スラリー状態のまま25℃に保持しながら1時間激しく加熱撹拌した。スラリーを濾過し、ケーキをほぼ同体積のメタノールで洗浄した後、真空乾燥機で60℃で乾燥させ微結晶124gを得た。得られたスピログリコール中のアルデヒド基は12ppm以下、ホルメート基は102ppmであった。この精製スピログリコールを用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ビスフェノールA−スピログリコール共重合ポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの物性を表1に示すが、淡黄色に着色していた。
【0052】
なお、表1中の物性は、下記の方法により測定したものである。
【0053】
(1)分子量:GPC(Shodex GPC system 11)を用い、ポリスチレン換算分子量(重量平均分子量:Mw)として測定した。展開溶媒にはクロロホルムを用いた。
(2)樹脂YI:得られた樹脂を、40mmφ、3mm厚のディスクにプレス成形し、色差計(東京電色 TC−1800MK2)によりYI値(黄色度)を測定した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
Claims (2)
- 下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と下記式(2)で表される脂肪族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを加熱溶融下重縮合させる芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法において、脂肪族ジヒドロキシ化合物中におけるアルデヒド基およびホルメート基の含有量が100ppm以下である脂肪族ジヒドロキシ化合物を用いることを特徴とする芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。
- 脂肪族ジヒドロキシ化合物が、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンである請求項1記載の芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。
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