JP4632275B2 - Si集合住宅 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スケルトンとインフィルを分離してスケルトンを改造することなく1住戸の居住面積を変えることができるSI集合住宅に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、将来にわたっての良質な住宅の供給を目的としてSI住宅(スケルトン・インフィル分離住宅)の研究開発が盛んになってきている。SI住宅とは、住宅の骨格となるスケルトンとその内部構造であるインフィルを分離し、インフィルをスケルトンとは独立して建造、改築等が可能な住宅である。なお、以下、集合住宅を対象とするSI住宅を「SI集合住宅」と呼ぶ。
【0003】
集合住宅では、スケルトン(構造躯体)は、例えば、図3に示すとおり、鉄筋コンクリート造による柱52、梁53、耐震壁54及びスラブ55によって区画された空間である。この空間は通常単一の住戸(1住戸)として扱われる。また、インフィル(内装)は、スケルトンの内部構造であり、内装の他、配管等を含むのが一般的である。なお、57は排水立て管である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図3に例示した従来の集合住宅では、スケルトン(構造躯体)を大きく変更しない限り、1住戸の居住面積を変えるのは実質上困難である問題点があった。
【0005】
そこで、図4に例示するように、スケルトンの柱52と柱52の間隔(間口)を大きくし、柱52、梁53、あるいは耐震壁54、並びにスラブ55によって区画される空間を予め広くしたSI集合住宅が考えられている。この場合、戸境壁56により、必要とされる面積に応じて区画する。
【0006】
ところが、このように柱52の間口を大きくすると、区画を様々に変化させた場合に、給水管、ガス管、排水管、電気幹線などの共用立て管の設置が困難となる。例えば、図4の例で、上下階における排水立て管57の位置は変えられないため、排水立て管57に隣接しない居住空間(例えば右端の3つの中間の住宅)の場合、隣接する住宅の前面の共用廊下を通して排水立て管57まで排水管等を設置する必要がある。そのため、隣接する住宅の出入りに邪魔になる問題点があった。特に、排水管に勾配を設ける場合には、その突起高さが一層大きくなってしまう。
【0007】
この問題を解決するために、図5に例示するように、スラブ55の両端から上に梁を立ち上げた逆梁53を用いた集合住宅も知られている。この場合、逆梁53を使用して床を二重床とし、床下空間を利用して給水管、ガス管など供給管の配管と、排水管の配管を行い、天井部分を利用して排気ダクト59を配設する。
また、この構造では、排気ダクト59が構造物である梁53を貫通しないため、住戸の区画や間取りに合わせて自由な位置に配設できる利点をもっている。
【0008】
しかし、逆梁53によって形成される二重床は、例えば約900mm前後の梁成(梁の全高)となるため、配管等に必要以上の余分な床下空間が形成されてしまう。そのため、十分な天井高さを確保するために通常よりも階高を高くする必要があり、建物の階数が少なくなり、一戸当たりの建設費用が高くなる等の問題点があった。
またSI集合住宅を実現するためには、共用立て管を柱梁等のフレーム外に配設することとなるので、結果として共用立て管から各住戸へ分岐された分岐管が逆梁53を貫通することとなるので好ましくない。
【0009】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、スケルトンとインフィルを分離してスケルトンを改造することなく1住戸の居住面積を変えることができ、各住戸にほとんど影響することなく共用配管の設置が可能であり、無駄な床下空間又は天井裏空間が少なく、階高を高くすることなく十分な天井高さを確保することができるSI集合住宅を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、少なくとも耐震壁(3)及びスラブ(4)によって居住空間を形成するSI集合住宅であって、隣接する耐震壁の間に複数の居住空間が構成可能であり、かつ各居住空間の前面を通して延び、該前面の床面から突出しない設備配管用の凹空間(15,15’)を備え
共用廊下側の梁(2)の上端からほぼ水平に設けられた共用廊下用の片持ちスラブ(5)と、梁の高さ方向中間部から水平に設けられたスラブ(4)と、前記梁から間隔を隔てて廊下側のスラブ上に設けられた立ち上がり部(7)とを備え、該立ち上がり部は、各居住空間の前面を通して延び、これにより梁(2)と立ち上がり部(7)との間に前記設備配管用の凹空間(15)が構成される、を特徴とするSI集合住宅が提供される。
【0011】
本発明のこの構成によれば、各居住空間の前面を通して延びる設備配管用の凹空間(15,15’)を備え、この凹空間が前面の床面から突出していないので、この凹空間を設備配管用に利用することにより、各住戸にほとんど影響することなく共用配管の設置が可能である。
また、スラブ(4)が梁(2)の高さ方向中間部から水平に設けられるので、スラブの上下に梁より上下に突出しない空間(床下空間と天井空間)を形成でき、この空間を設備配管に利用することにより、梁(2)に貫通孔等を設けることなく、かつ無駄な床下空間又は天井裏空間なしに設備配管を設置することができる。従って、階高を高くすることなく十分な天井高さを確保することができる。
【0014】
また、居住空間Lの立ち上がり部(7)とバルコニー側の梁(2)の上端に連接された床(10)と、居住空間と共用廊下を仕切る区画壁(8)とバルコニー側の上階の梁(2)の下端に連接された天井(11)とを備え、これにより、床下に床空間(12)を形成し、天井裏に天井空間(13)を形成する。
この構成により、床下に床空間(12)を形成し、天井裏に天井空間(13)を形成して、この空間を設備配管に利用することができる。
【0015】
前記下階天井面から上階床面までの厚さは梁(2)の梁成(梁の全高)にほぼ一致するのがよい。この構成により、無駄な床下空間又は天井裏空間を低減し、梁(2)に貫通孔等を設けることなく設備配管を設置することができる。
【0016】
また、前記立ち上がり部(7)と共用廊下側の梁(2)の上端に連接された床板(14)により仕切られた配管空間(15)と、バルコニー側の梁(2)の下端に連接された天板(14’)により仕切られた配管空間(15’)とを備え、配管空間(15,15’)の少なくとも一方が、柱(1)に沿って形成されたメーターボックス(16)に連接するのがよい。
この構成により、スケルトンを構成する構造部材(例えば鉄筋コンクリート)に貫通孔等を設けることなく、メーターボックス(16)から配管空間(15,15’)を介して床空間(12)と天井空間(13)に設備配管を設置することができ、かつ居住空間や共用廊下に露出した配管を無くすことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明のSI集合住宅のある階の断面図であり、図2は、その平面図である。以下、図1及び図2に基づいて説明する。
本実施例の建物は鉄筋コンクリート造であり、1は柱、2は梁、3は耐震壁、4はスラブ、5は共用廊下を形成する片持ちスラブ、6はバルコニーを形成する片持ちスラブである。なお、本実施例では、建物に免震構造を取入れ、間口13.5m、奥行き11.0mの架構体を形成している。
【0018】
片持ちスラブ5,6は、一般的な集合住宅と同様に梁2の上端に設けられる。
しかし、スラブ4は、一般的な集合住宅と相違し、本発明のSI集合住宅では梁2の高さ方向中間部に設けてある。さらに廊下側のスラブ4上には、立ち上がり部7が形成される。
そして、居住空間Lは、柱1、梁2、耐震壁3、スラブ4、立ち上がり部7の上に設けられる区画壁8、および、バルコニー側の梁2の上に設けられる区画壁9により区画形成される。なお、区画壁8、9には、必要に応じてドアあるいは窓が形成される。
【0019】
さらに、居住空間Lは、立ち上がり部7とバルコニー側の梁2の上端に連接される状態で床10が形成され、区画壁8とバルコニー側の上階の梁2の下端に連接される状態で天井11が形成されている。
これにより、床10の床下には、給水管、ガス管、排水管などを配管する床空間12が、天井11の天井裏には、電気配線などを行うための天井空間13が形成される。なお、排気ダクトについては、天井11の下面に沿って配管され、梁貫通することがないので、自由な位置に排気ダクトを設けることができる。
【0020】
なお、本実施例では、階高は3350mmであり、梁成(梁の全高)を900mmとし、スラブ厚を500mm、スラブ上面から床面まで300mm、スラブ下面から天井面まで100mmとすることで、下階天井面から上階床面までの厚さが梁成に一致するように構成されている。また、立ち上がり部7と共用廊下側の梁2の上端に連接される状態で床板14が設けられ、床板14の下部には、設備配管空間15が形成されている。
【0021】
この設備配管空間15は、図2に示すとおり、居住空間Lの共用廊下側前面であって、居住空間Lの両端にある柱1と柱1の間に連続した空間として形成され、その居住空間Lの両端の柱1に沿って形成されたメーターボックス16に連接している。メーターボックス16内には、排水立て管17の他、図示しない共用給水立て管、共用ガス管、電気幹線や、水道メーター、ガスメーターなどメーター類が設けられ、場合によっては、湯沸器や空調用室外機、あるいは燃料電池などを収納できるようになっている。すなわち、たとえば、共用給水立て管から分岐された給水管は、設備配管空間15を経由して、立ち上がり部7を貫通し、床空間12を通じて居住空間L内の各所に給水できるようになっている。
これにより、居住空間Lを複数に区画して複数住戸を形成したとしてもそれぞれに設備配管をすることができる。
【0022】
次に、図2に基づいて排水管の敷設方法について説明する。
図2では、居住空間Lを3分割し、3つの住戸A、B、Cを形成している。そして、設備配管空間15には、排水ヘッダー18A、18B、18Cが設けられ、排水管19によってそれぞれが排水立て管17に接続されている。
また、排水ヘッダー18A、18B、18Cからは、住戸A、B、C内に形成される洗面所、浴室、キッチン、など水回り機器からの複数の排水管20が接続されている。排水ヘッダーを用いる排水方式では、排水管20を1/100勾配で配管が可能であり、居住空間Lのどの位置に水回りがあったとしても排水が可能となる。
なお、トイレの排水については、排水ヘッダーを介さずにトイレから直接排水立て管に接続するのが好ましい。また、排水ヘッダーと排水立て管をつなぐ排水管19にトイレの排水管を接続する場合は、排水ヘッダー方向への逆流を防止する逆流防止弁を設けるのが好ましい。
【0023】
なお、上述した実施例は、本発明の一実施例にすぎず、本発明が意図する技術の範囲内で様々に実施可能である。例えば、給水管をメーターボックスから設備配管空間を経て床空間で配管する方法を示したが、給水管をメーターボックス内で天井部分まで立上げ、設備配管空間15’を介して区画壁8を貫通させて天井空間を利用して配管してもよい。また、実施例では、立ち上がり部7の上に区画壁8を形成するようにしたが、スラブ面から直接区画壁8を形成するようにしてもよい。床板14、天板14は、着脱自在とすることで設備配管空間の点検口になりえる。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、居住空間の共用廊下側前面であって、その居住空間Lの両端に形成されたメーターボックスに連接される状態で設備配管空間を形成し、居住空間に形成される住戸の少なくとも排水管を排水ヘッダーを介して設備配管空間によってメーターボックスにある排水立て管に接続するようにしたので、居住空間を複数に分割して住戸を自由に形成できる。また、スラブを梁の中間部に設けるようにし、床空間と天井空間を形成するようにしたので、逆梁の場合のような空間的無駄がない。
【0025】
従って、本発明のSI集合住宅は、スケルトンとインフィルを分離してスケルトンを改造することなく1住戸の居住面積を変えることができ、各住戸にほとんど影響することなく共用配管の設置が可能であり、無駄な床下空間又は天井裏空間が少なく、階高を高くすることなく十分な天井高さを確保することができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のSI分離集合住宅の所定階の断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】鉄筋コンクリート造による従来の集合住宅を示す平面図である。
【図4】従来のSI住宅の一例を示す平面図である。
【図5】逆梁を用いた従来のSI住宅の断面図である。
【符号の説明】
1 柱、2 梁、3 耐震壁、4 スラブ、
5 片持ちスラブ(廊下側)、6 片持ちスラブ(バルコニー側)、
7 立ち上がり部、8,9 区画壁、
10 床、11 天井、12 床空間、13 天井空間、
14 床板、14’ 天板、15,15’ 設備配管空間、
16 メーターボックス、17 排水立て管、
18A、18B、18C 排水ヘッダー、
19 排水管、20 排水管
52 柱、53 梁、54 耐震壁、
55 スラブ、56 戸境壁、57 排水立て管

Claims (4)

  1. 少なくとも耐震壁(3)及びスラブ(4)によって居住空間を形成するSI集合住宅であって、隣接する耐震壁の間に複数の居住空間が構成可能であり、かつ各居住空間の前面を通して延び、該前面の床面から突出しない設備配管用の凹空間(15,15’)を備え
    共用廊下側の梁(2)の上端からほぼ水平に設けられた共用廊下用の片持ちスラブ(5)と、梁の高さ方向中間部から水平に設けられたスラブ(4)と、前記梁から間隔を隔てて廊下側のスラブ上に設けられた立ち上がり部(7)とを備え、該立ち上がり部は、各居住空間の前面を通して延び、これにより梁(2)と立ち上がり部(7)との間に前記設備配管用の凹空間(15)が構成される、を特徴とするSI集合住宅。
  2. 居住空間Lの立ち上がり部(7)とバルコニー側の梁(2)の上端に連接された床(10)と、居住空間と共用廊下を仕切る区画壁(8)とバルコニー側の上階の梁(2)の下端に連接された天井(11)とを備え、これにより、床下に床空間(12)を形成し、天井裏に天井空間(13)を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載のSI集合住宅。
  3. 下階天井面から上階床面までの厚さが梁の梁成にほぼ一致する、ことを特徴とする請求項2に記載のSI集合住宅。
  4. 前記立ち上がり部(7)と共用廊下側の梁(2)の上端に連接された床板(14)により仕切られた配管空間(15)と、バルコニー側の梁(2)の下端に連接された天板(14’)により仕切られた配管空間(15’)とを備え、配管空間(15,15’)の少なくとも一方が、柱(1)に沿って形成されたメーターボックス(16)に連接している、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のSI集合住宅。
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