JP4626463B2 - ポリカーボネート樹脂成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂基材上に透明なハードコート塗膜が形成されたポリカーボネート樹脂成形体、特に、表面硬度が改善され、優れた耐擦傷性、耐摩耗性を保有しつつ、かつポリカーボネート樹脂のもつ優れた耐衝撃性、加工性を維持したポリカーボネート樹脂成形体に関するものである。
各種透明プラスチック材料は、その軽量性、透明性、加工性および割れにくさと割れた場合の安全性の観点から、携帯機器、家庭用電気製品、産業用電子機器、自動車用電子機器などの外装部、特にモニターなど情報表示部の保護カバーとして用いられている。特にポリカーボネート樹脂材料は、その優れた透明性、耐衝撃性、耐熱性および加工のしやすさからもっとも広範囲に使用される材料のひとつである。しかしながら、このポリカーボネート樹脂はガラスに比べ表面硬度、耐摩耗性、耐擦傷性に劣り、傷つきやすいという欠点がある。
この欠点を解消するため、従来から種々の表面改質に関する検討がなされてきた。例えば、ポリオルガノシロキサン系、メラミン系等の熱硬化型樹脂や、紫外線硬化型の樹脂を基材表面にコーティングすることが広く実施されている。これらのコーティングが施されたポリカーボネート樹脂成形体においては、耐摩耗性、耐擦傷性においてはある程度の改善がみられるものの、表面硬度に関しては不十分であり、ガラスに比べ鉛筆硬度などの表面硬度が低く、実用上大きな問題がある。
透明プラスチック材料について表面硬度をさらに向上するためのコーティングの技術としては、例えば、ハードコート層に高硬度のフィラーを混入することで、表面硬度を向上させる試みがなされている(特許文献1、特許文献2)。また、類似の方法として、ハードコートの膜厚を大きめにし、発生する応力を緩和するために無機および/または有機架橋粒子を混入または、該粒子の表面に官能基を導入し、ハードコート層の樹脂と部分的に架橋させる、いわゆる有機無機ハイブリッドの手法が検討されている(特許文献3、特許文献4)。さらには、ハードコート層を多層化し、コート全体の厚さを大きくすることで、より高い表面硬度を得ようとする試みがなされている(特許文献5)。
しかしながら、これらの方法の具体例として示されたものは、基材としてポリカーボネート樹脂よりも元々鉛筆硬度が高いポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて鉛筆硬度を4Hから5Hまで達成し、その効果を実証してはいるものの、鉛筆硬度が極端に低い樹脂であるポリカーボネート樹脂を用いた場合では、鉛筆硬度は2H未満となり、十分な効果が見られない。
ポリカーボネート樹脂を基材としながら、高い鉛筆硬度を得るための方法として、ポリカーボネート基材の上に、ポリメチルメタアクリレートを熱溶着させ、その上にハードコート層を設ける提案がなされている(特許文献6)が、耐衝撃特性の極端に低いポリメチルメタアクリレート層を設けることにより、ポリカーボネート樹脂の特徴である耐衝撃性を低下させてしまうという重大な欠点があり、そのため打ち抜き加工などのポリカーボネート樹脂特有の優れた加工方法も適用できなくなるという大きな問題も発生する。他の手法として、ポリカーボネート樹脂基材の上に、中間層としてジシクロペンタニルジアクリレートを主成分とする50μm〜300μmという極端に厚膜の中間層を設け、その上にハードコート処理をする提案がなされている(特許文献7)が、この方法においても、極端に厚い中間層の影響によりポリカーボネート樹脂の特徴である耐衝撃性を低下させてしまうという重大な欠点がある。
特開2002−107503 特開2002−060526 特開2000−112379 特開2000−103887 特開2000−052472 特開平06−238842 特開2001−322197
本発明は、上記の問題を解決し、表面硬度が改善され、優れた耐擦傷性、耐摩耗性を保有しつつ、ポリカーボネート樹脂のもつ優れた耐衝撃性と加工性を維持したポリカーボネート樹脂成形体を提供することを目的としている。
本発明者は、2官能ウレタンアクリレート、多官能オリゴマー、多官能モノマー、単官能モノマーを含有し特定の官能基数をもった紫外線硬化型樹脂よりなる塗膜を、特定の膜厚でポリカーボネート樹脂基材上に2層に形成することにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するにいたった。
すなわち本発明は、ポリカーボネート樹脂基材上に、第1層として、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(a)、多官能オリゴマー、多官能モノマー、および/または単官能モノマーを含有し、(a)の伸び率が30〜200%であり、(a)が樹脂分中5%以上含まれ、平均官能基数が3.4〜4.3である紫外線硬化型樹脂からなる塗膜が形成され、第1層の上に第2層として、多官能オリゴマー、多官能モノマ−、および/または単官能モノマーを含有し、平均官能基数が4.4以上である紫外線硬化型樹脂からなる塗膜が形成されたポリカーボネート樹脂成形体であって、第1層の塗膜の厚さd1(μm)、第2層の塗膜の厚さd2(μm)、第1層を形成する紫外線硬化型樹脂の平均官能基数f1、および第2層を形成する紫外線硬化型樹脂の平均官能基数f2との間に次の関係式が成立することを特徴とするポリカーボネート樹脂成形体を要旨とする。
80≦f1d1≦180 式(1)
f1d1xf2d2≧3500 式(2)
ただし式(1)式(2)において、d2≧3.0(μm)、3.4≦f1≦4.3、4.4≦f2
上記の通り、本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、2官能ウレタンアクリレート、多官能オリゴマー、多官能モノマー、単官能モノマーを含有し特定の官能基数をもった紫外線硬化型樹脂よりなる塗膜を、特定の膜厚でポリカーボネート樹脂基材上に2層に形成することにより、表面硬度が改善され、優れた耐擦傷性、耐摩耗性を保有しつつ、ポリカーボネート樹脂のもつ優れた耐衝撃性と加工性を維持するという効果を奏し、携帯機器、産業用電子機器などの表示部の保護カバーなどに好適に用いられる。
<2官能ウレタンアクリレートオリゴマー>
本発明で用いられる2官能ウレタンアクリレートは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有するアクリレートモノマーとの反応生成物であり、ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールの製造方法は特に限定されず、公知の製造方法を採用し得る。例えば、ジオールとジカルボン酸もしくはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させても、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させてもよい。ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等。ジオールとしてはエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が用いられる。
ポリカーボネートジオールとしては、1、4−ブタンジオール、1、6−へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチル−1、3−ヘキサンジオール、1、5−ペンタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1、4−シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール等が用いられ、1種でも2種以上を併用しても良い。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドランダム共重合等がある。
ジイソシアネートとしては、直鎖式あるいは環式の脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートが用いられる。直鎖式あるいは環式の脂肪族ジイソシアネートの代表的なものとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしてはトリレンジイソシアネート、キリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
水酸基を有するアクリレートモノマーの例として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートが挙げられる。
本発明で用いられる2官能ウレタンアクリレートオリゴマーは、伸び率が30〜200%の範囲である必要があり、50〜150%であることがより好ましい。本発明において、2官能ウレタンアクリレートオリゴマーを第1層に含有させることにより、第1層の塗膜の硬度を保ったまま適度な柔軟性を与え、ポリカーボネート樹脂成形体の鉛筆硬度と耐衝撃性の両立を可能とする効果を有する。ただ、この2官能ウレタンアクリレートオリゴマーの伸び率が30%未満の場合は、第1層の弾性が不十分となり、ポリカーボネート樹脂成形体の鉛筆硬度を高めることは可能だが、耐衝撃性が低下してしまう。逆にこの伸び率が200%を超えると、耐衝撃性は低下しないが、鉛筆硬度が低下してしまう。
2官能ウレタンアクリレートオリゴマーの伸び率は、使用するポリオールの種類、分子量およびその組み合わせにより主に調整が可能であり、また、組み合わせるジイソシアネートの種類、水酸基を有するアクリレートモノマーの種類によっても若干の調整が可能である。
<多官能オリゴマー>
本発明で用いられる多官能オリゴマーとしては、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートやポリエステルアクリレートなどが使用可能である。
エポキシアクリレートオリゴマーとしては、例えば、低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環とアクリル酸とのエステル化反応により得ることができる。また、ポリエステルアクリレートオリゴマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる、両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基をアクリル酸でエステル化することにより得られる。または、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基をアクリル酸でエステル化することにより得られる。
本発明の多官能オリゴマーとしては、ウレタンアクリレートオリゴマーを用いるのが最も好ましい。ハードコートとして必要な硬度とともに、より優れた耐摩耗性や耐擦傷性を得ることができるからである。ウレタンアクリレートオリゴマーは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有するアクリレートモノマーとの反応生成物であり、ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
ウレタンアクリレートオリゴマーの中でも、特に6官能以上のものを使用することは非常に好ましい。これは、6官能以上のウレタンアクリレートを使用することで、硬度や耐摩耗性といったハードコート塗膜として性能を実現しながら、高架橋度を達成し、かつ高架橋時に発生してしまう硬化収縮が他の多官能オリゴマーと比較的し少ないからである。
上記ポリエステルポリオールの製造方法は特に限定されず、公知の製造方法を採用し得る。例えば、ジオールとジカルボン酸もしくはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させても、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させてもよい。ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等。ジオールとしてはエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等が用いられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドランダム共重合で、数平均分子量が600未満のものが望ましい。600以上では、硬化物の柔軟すぎてハードコート性能が得られない可能性があるからである。
ポリカーボネートジオールとしては、1、4−ブタンジオール、1、6−へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチル−1、3−ヘキサンジオール、1、5−ペンタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1、4−シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール等が用いられ、1種でも2種以上を併用しても良い。
ジイソシアネートとしては、直鎖式あるいは環式の脂肪族ジイソシアネートが用いられる。芳香族ジイソシアネートももちろん使用可能であり、より容易に硬さや耐擦傷性といった優れたハードコート性を得ることができる半面、ハードコートの骨格を形成する主成分で多官能オリゴマーにこれら芳香族系の成分を用いた場合、耐光性が低下し、光への暴露により黄変しやすいため、実用面において透明ハードコートとしての機能を損なうからである。直鎖式あるいは環式の脂肪族ジイソシアネートの代表的なものとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
水酸基を有するアクリレートモノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートが挙げられる。
<多官能モノマー>
本発明に使用できる多官能アクリレートモノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートをあげることができる。
これら多官能モノマーのうち、環状構造を有する2官能アクリレートを使用することが好ましい。硬度や耐摩耗性、耐擦傷性などの優れたハードコート性能を維持したまま、優れた基材への密着性を得ることができるからである。この環状構造を有する2官能アクリレートとしては、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化シクロヘサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートをあげることができる。
<単官能モノマー>
単官能モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、アクリロイルモルフォリン、Nビニルピロリドン、Nビニルホルムアミド、イソボロニルアクリレートなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂基材上に第1層として塗布される紫外線硬化型樹脂は、2官能のウレタンアクリレートオリゴマーを樹脂分中5%以上含み、その他多官能オリゴマー、多官能モノマ−、および/または単官能モノマーとを含有し、平均官能基数が3.4〜4.3である必要がある。2官能のウレタンアクリレートオリゴマーの含有量が5%未満では、耐衝撃性、加工性が低下してしまう。また、平均官能基数が3.4未満では、十分な鉛筆硬度を得ることができず、平均官能基数が4.3を超えると、耐衝撃性、加工性が低下してしまう。
ポリカーボネート樹脂基材上に第2層として塗布される紫外線硬化型樹脂は、多官能オリゴマー、多官能モノマ−、および/または単官能モノマーを含有し、平均官能基数が4.4以上である必要があり、塗膜の厚みは3.0μm以上である必要がある。平均官能基数が4.4未満、塗膜の厚みが3.0μm未満では、十分な鉛筆硬度や耐摩耗性、耐擦傷性が得られない。
さらには、第1層の厚さd1(μm)、第2層の厚さd2(μm)、第1層の平均官能基数f1、および第2層の平均官能基数f2との間に次の関係式で成立する必要がある。
80≦f1d1≦180 式(1)
f1d1xf2d2≧3500 式(2)
ただし式(1)式(2)において、d2≧3.0(μm)、3.4≦f1≦4.3、4.4≦f2

ここで、f1d1が80未満となる場合は、十分な鉛筆硬度を得ることができず、またf1d1が180より大きくなった場合は耐衝撃性、加工性が低下してしまう。また、f1d1Xf2d2が3500より小さくなる場合、十分な鉛筆硬度や耐摩耗性が得られない。
本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、上記樹脂成分をポリカーボネート樹脂基材上に塗布し、紫外線を照射することにより塗膜を形成することにより得られるが、この際樹脂成分に光重合開始剤、有機溶剤の希釈液などが添加される。
光重合開始剤は、光重合性化合物が紫外線によって硬化する際の重合開始剤としての機能を有しており、公知のものを単独でもしくは組み合わせで使用することができ、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン又はベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン類、ベンジル等のアルファ−ジカルボニル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、アセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパノン−1等のアセトフェノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン等のアントラキノン類、2、4−ジメチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のフォスヒンオキサイド類、1−フェニル−1、2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアルファ−アシルオキシム類、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン類等を使用することができる。
また、外観の優れた塗膜を得るために、フッ素系や変性シリコーン系などの表面調整剤が塗料中に添加される。フッ素系や変性シリコーン系の表面調整剤としてはポリエーテル系、アルキル系、ポリエステル系のものが使用可能だが、特にポリエーテル系が好ましい。またアクリル系共重合物も表面調整剤として市販されている。これらの表面調整剤は組み合わせて使用することも可能である。
また、帯電防止性能の付与や、塗膜の硬化収縮による内部応力の緩和、表面に特定の凹凸形状を付与、紫外線や赤外線などの特定の波長の吸収や反射、意匠性の付与などの理由により、本発明の紫外線硬化樹脂に対し、必要に応じ、無機およびまたは有機フィラーを混入することができる。
樹脂成分は、必要に応じて有機溶剤によって希釈、溶解して塗料液としたうえで基材に塗布される。有機溶剤は市販のものを使用することができ、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、メチルエチルケトン、2−ぺンタノン、イソホロンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、メトキシブタノールなどのグリコール系溶剤を単独又は混合して使用できる。塗料液は、その粘度、樹脂分濃度などを状況、目的、塗布方法に応じて適宜選択することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、樹脂成分の混合〜希釈〜ポリカーボネート樹脂基材への塗布〜乾燥〜硬化の工程にて得ることが出来る。樹脂基材への塗布は、ロールーコーター、フローコーター、スプレーコーター、カーテンフローコーター、ディップコーター、スリットダイコーターなど公知の方法を用い、ポリカーボネート樹脂基材の片面または両面に塗布することができる。両面の塗布方法としては同時または逐次の手法を用いることができる。
上記のようにしてポリカーボネート樹脂基材へ第1層として塗料溶液を塗布した後、基材および雰囲気の温度を上げ、充分に希釈溶剤を蒸発させしかる後に紫外線を照射し塗膜を硬化させる。続いて、第2層としての塗料溶液を塗布した後、基材および雰囲気の温度を上げ、充分に希釈溶剤を蒸発させしかる後に紫外線を照射し塗膜を硬化させる。このとき、第1層の硬化のための紫外線照射は、第1層が完全に硬化するまでは照射せず、一般に言われる半硬化の状態にしておき、第2層の紫外線照射の際に、第2層を透過して第1層に届く紫外線により完全に硬化するような条件にすることが望ましい。ここで硬化の度合いは、広く一般に知られているように赤外線吸光分析により反応基の残存量を測定することで定量化することもできるし、より簡便な方法としては、第1層の硬化は、第2層を塗布した際に、膨潤、剥離、浮き、白濁などの外観上の不具合が出ない程度の弱い硬化条件としておき、第2層の硬化の際の照射条件を、必要十分な条件とする手法があげられる。
紫外線照射には、一般の有電極型や無電極型の高圧水銀灯やメタルハライドランプが使用可能である。また、100keV程度の低電圧の電子線照射装置も当然ながら使用可能である。電子線を硬化手段とする場合は、先に例示したような重合開始剤は不要となる。
硬化もしくは半硬化した第1層の表面エネルギーが低く、たとえば30mN/m程度以下になると、第2層の塗布の際に濡れ性が悪く、外観不良や密着不足になる可能性があるので、第1層の塗料溶液に使用する先に述べた表面調整剤の量の調整や種類およびその組み合わせにより、表面エネルギーをできるだけ低下させない工夫をすることが望ましい。
第2層の塗布外観や密着性の向上のための手法としては、一般的な方法として、第1層の紫外線硬化型樹脂を硬化または半硬化させた後で、得られた塗膜上に物理化学的な処理を施すことである。つまりコロナ放電、プラズマ放電などにより、塗膜のごく表面のみに極性基を発生させて表面エネルギー値を増大させる方法である。コロナ放電やプラズマ放電の装置としては市販のものでよい。
このようにして得られたポリカーボネート樹脂成形体は、例えば携帯機器、家庭用電気製品、産業用電子機器、自動車用電子機器などの外装部、特にモニターなど情報表示部の保護カバーなど、優れた表面硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、およびポリカーボネート樹脂本来の耐衝撃性、加工性が要求される分野で用いられる。具体的な要求特性としては、鉛筆硬度(JIS K5600)で2H以上、好ましくは3H以上、耐擦傷性としては、スチールウールによる100回の往復摩耗によって容易に傷がつかないこと、耐摩耗性として、テーバー摩耗試験(ASTM D1044)で、100回転の摩耗によるヘーズの増加が10%未満であることなどである。
市販されている原材料から以下のものを準備した。
<2官能ウレタンアクリレートオリゴマー>
(I)伸び率90%(商品名:Ebecryl EB8402 ダイセルユーシービー株式会社製)
(II)伸び率20%(商品名:NKエステル UA−4100 新中村化学工業株式会社製)
(III)伸び率220%(商品名:NKエステル U−200AX 新中村化学工業株式会社製)
<多官能オリゴマー>
(I)脂肪族系6官能ウレタンアクリレート(商品名:EB1290、ダイセルユーシービー社製)
(II)2官能のビスフェノールAエポキシアクリレート(商品名EB3700 ダイセルユーシービー社製)
(III)脂肪族系15官能ウレタンアクリレート(商品名:U−15HA 新中村化学工業社製)
<多官能モノマー>
(I)4官能のペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:PETA-K ダイセルユーシービー社製)
(II)2官能のエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(商品名:A−BPE−4 新中村化学工業社製)
<単官能モノマー>
Nビニルホルムアミド(商品名:ビームセット770 荒川化学社製)
<表面調整剤>
アクリル系共重合物(商品名:BYK356、ビックケミー社製)
ポリエーテル変性ジメチルシロキサン(商品名:BYK307、ビックケミー社製)
表1、表2に示す通りに多官能オリゴマーなどを配合し、樹脂分の濃度が溶液中20重量%となるようにイソプロピルアルコールと酢酸ブチルの50:50混合希釈溶剤で希釈することにより塗料を調整した。この際、予めイソプロピルアルコールに溶解させた光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティケミカルズ社製)を樹脂分に対し5重量%となるように希釈溶剤の一部として添加した。さらに、第1層の塗料に、樹脂分に対し0.1重量%のアクリル系共重合体の表面調整剤を添加し、第2層の塗料には、樹脂分に対し0.01重量%のポリエーテル変性ジメチルシロキサンの表面調整剤を添加した。このように調整された塗料は充分に攪拌混合した後、密閉容器に保存した。
厚さ1.5mmのポリカーボネートシート(筒中プラスチック工業株式会社製「ポリカエース」)を準備し、数種類の金属製バーコーターを用いて、表1、表2に示した乾燥膜厚になるように第1層の塗料を塗布した。つぎに、このポリカーボネートシートを60℃の熱風循環型オーブンに入れ乾燥した。10分間乾燥した後、80W/cmメタルハライドランプ(ウシオ電機株式会社製)を用い、距離25cmとし速度10m/分のコンベアにて、塗布乾燥したポリカーボネートシートに紫外線を照射し、第1層の塗料を硬化させた。さらに第2層の塗料を、第1層と同様に、数種類の金属製バーコーターを用いて、表1、表2に示した乾燥膜厚になるように第1層の上から塗布した。さらに、このポリカーボネートシートを60℃の熱風循環型オーブンに入れ乾燥した。10分間乾燥した後、160W/cm高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製)を用い、距離15cmとし速度2.0m/分のコンベアにて、乾燥したポリカーボネートシートに紫外線を照射することにより2層のハードコート塗膜が形成されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。この成形体について次の評価を行い、その結果を表1、表2に示す。
<鉛筆硬度>
ASTM D3363に準じて、各種硬度の鉛筆(商品名:ユニ 三菱鉛筆社製)を用い硬度を測定した。
<耐摩耗性>
ASTM D1044に準じて、テーバー式摩耗試験(CS10F摩耗輪、荷重500g、100回転)を行い、発生したヘーズにより次のように評価した。
○:ヘーズの増分が10%未満(実用上優れる)
△:ヘーズの増分が10%〜15%(実用上十分だが、用途が制限される)
×:ヘーズの増分が15%超(実用上劣る)
<耐擦傷性>
スチールウール#000を用い、直径30mmの保持具に取り付け、過重500gにて100往復した後、試料表面の傷の有無を目視により観察し、以下の通り評価した。
○:まったく傷がつかない(実用上優れる)
△:数本の傷が発生した(実用上十分だが、用途が制限される)
×:全体に傷が発生した(実用上劣る)
<耐衝撃性>
雰囲気温度25℃および0℃において、水平に設置した5cmX5cmサイズの試験片に対し、150cmの高さから5kgの錘を落下させ、試験片の割れや錘の貫通の有無を観察し、以下の通り評価した。錘の形状は、衝突部分が半径1/2インチの三次曲面となっている。
○: 25℃、0℃何れにおいても割れおよび貫通しない(ポリカーボネート同等で、耐衝撃性に優れている)
△: 25℃では割れおよび貫通しないが、0℃では割れまたは貫通が発生する(低温での耐衝撃性が低下し、用途が制限される)
×: 25℃、0℃何れにおいても割れまたは貫通が発生する(耐衝撃性が低下しており、実用上問題となる)
Figure 0004626463
Figure 0004626463
本発明の技術範囲内である実施例1〜6においては、何れも表面硬度、耐擦傷性、耐摩耗性に優れ、衝撃強度の低下もないポリカーボネート樹脂成形体を得ることができた。
これに対し、第1層における2官能ウレタンアクリレートオリゴマーの樹脂分中の含有率が本発明の技術範囲より少ない比較例1においては、耐衝撃性の低下がみられた。この2官能ウレタンアクリレートオリゴマーの伸び率が本発明の技術範囲を外れて小さい比較例2においても、耐衝撃性が低下し、逆に伸び率が大きい比較例3においては、鉛筆硬度が不十分であった。第1層の紫外線硬化型樹脂の平均官能基数が本発明の技術範囲を外れる比較例4あるいは比較例5においては、耐衝撃性が低下してしまう、あるいは、鉛筆硬度が不十分となった。
また、第1層の膜厚が薄く、第1層の平均官能基数f1と第1層の膜厚d1(μm)との積f1d1が本発明の技術範囲を外れて小さい比較例6においては、鉛筆硬度が不十分であり、逆に第1層の膜厚が厚く、f1d1が本発明の技術範囲を外れて大きい比較例7においては、耐衝撃性が大きく低下してしまった。
第2層の平均官能基数f2と膜厚d2との積f2d2と、f1d1との積f1d1Xf2d2が技術範囲を外れる比較例8においては、鉛筆硬度、耐摩耗性、耐擦傷性が不十分であった。第2層の紫外線硬化型樹脂の平均官能基数が技術範囲を外れる比較例9においては、耐摩耗性、耐擦傷性が不十分であり、第2層の膜厚が技術範囲を外れる比較例10においては鉛筆硬度、耐摩耗性が不十分であった。

Claims (3)

  1. ポリカーボネート樹脂基材上に、第1層として、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(a)、多官能オリゴマー、多官能モノマー、および/または単官能モノマーを含有し、(a)の伸び率が30〜200%であり、(a)が樹脂分中5%以上含まれ、平均官能基数が3.4〜4.3である紫外線硬化型樹脂からなる塗膜が形成され、第1層の上に第2層として、多官能オリゴマー、多官能モノマー、および/または単官能モノマーを含有し、平均官能基数が4.4以上である紫外線硬化型樹脂からなる塗膜が形成されたポリカーボネート樹脂成形体であって、第1層の塗膜の厚さd1(μm)、第2層の塗膜の厚さd2(μm)、第1層を形成する紫外線硬化型樹脂の平均官能基数f1、および第2層を形成する紫外線硬化型樹脂の平均官能基数f2との間に次の関係式が成立することを特徴とするポリカーボネート樹脂成形体。
    80≦f1d1≦180 式(1)
    f1d1xf2d2≧3500 式(2)
    ただし式(1)式(2)において、d2≧3.0(μm)、3.4≦f1≦4.3、4.4≦f2
  2. 多官能オリゴマーが、6官能以上のウレタンアクリレートである請求項1に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
  3. 多官能モノマーが、環状構造を有する2官能アクリレートである請求項1または請求項2に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
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