JP4623725B2 - Ndフィルタの製造方法、ndフィルタ、光量絞り装置、該光量絞り装置を有するカメラ - Google Patents
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Description
光量絞りは銀塩フィルムあるいはCCD等への固体撮像素子へ入射する光量を制御するため、撮影光学系の光路中に設けられており、被写界が明るい場合に光量をより小さく絞り込まれるように構成されている。
従って、快晴時や高輝度の被写界を撮影すると絞りは小絞りとなり、絞りのハンチング現象や光の回折の影響も受け易く、像性能の劣化を生じる。
これに対する対策として、絞り羽根にフィルム状のNDフィルタを取り付けて被写界の明るさが同一でも絞りの開口が大きくなる様な工夫がされている。
この点を更に説明すると、図21において、20は最大濃度部、21は濃度勾配部、22は濃度傾斜開始位置、23は濃度傾斜終了位置である。
このようなグラデーション濃度勾配を持つNDフィルタ膜の場合、濃度勾配部21において、濃度が最小値となる濃度傾斜終了位置23と成膜が施されていない部分との境界を判断する事が非常に難しく、そのため濃度傾斜開始位置22から濃度傾斜終了位置23までの距離を把握すること、あるいは作製した膜の濃度分布を短時間で高精度に測定または評価すること、等が著しく困難であるという問題を有している。
すなわち、本発明のNDフィルタの製造方法は、基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、前記マスクを用いずに最表層の膜を一定膜厚に成膜すると共に、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜する成膜工程を有することを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタの製造方法は、基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、前記マスクを用いずに最表層の膜を前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配を持つ膜に、成膜すると共に、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜する成膜工程を有することを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタの製造方法は、基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに成膜された前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配を持つ膜とに、成膜すると共に、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜する成膜工程を有することを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタの製造方法は、基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜とに、成膜すると共に、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜する成膜工程を有することを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタは、基板に対して所定間隔をおいて傾斜して配置された複数の遮蔽板によるマスクと、遮蔽板による所定間隔外の基板上面を覆うと共に前記遮蔽板との間に任意の隙間が設けられたマスクとを用い、前記基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、第1層から最表層手前までの膜が、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜された膜であり、最表層の膜が、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜で構成されていることを特徴としている。その際、この最表層の膜を、本発明においては、前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配に成膜された膜で構成することができる。
また、本発明においてはこの最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに成膜された前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配に成膜された膜と、によって構成することができる。
また、本発明においてはこの最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜と、によって構成することができる。
また、本発明の光量絞り装置は、相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、該絞り羽根により形成された開口内の少なくとも一部に配置される光量調整のためのNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、前記NDフィルタが、上記したNDフィルタによって構成されていることを特徴としている。
また、本発明のカメラは、光学系と、該光学系を通過する光量を制限する上記した光量絞り装置と、該光学系によって形成される像を受ける固体撮像素子を有することを特徴としている。
図1は真空蒸着機におけるチャンバー内の簡易図であり、1は成膜を施す基板、2は実際に成膜を実施する基材、3は基材2を固定する為の基板治具、4は蒸着傘、5は蒸着源である。また、本実施の形態として説明する基板1とは、図1(b)に示すように基板治具3に基材2がセットされた状態のものを意味している。
ここで、マスク6は図2に示すように2枚の遮蔽板7で構成したが、2枚以上の任意の複数枚によって構成するようにしてもよい。なお、図2(a)は基板1とマスク6との位置関係を立体的に観た図であり、図2(b)は同様の基板1とマスク6との位置関係を断面的に観た図である。図2中のA及びBは、図3中のA及びBに対応している。
本実施の形態におけるマスクは、図2の2枚の遮蔽板7によって構成されマスク6に加え、この2枚の遮蔽板7間の外側における基板上面を覆うマスク8によって構成されており、一方の遮蔽板7とマスク8との間には任意の隙間が設けられている。
このようなマスク6とマスク8とを用いて、図1の真空蒸着機によって基材2上にグラデーション濃度分布を有する膜を形成した。図5に図4で示すマスク6とマスク8を基板上に設けた場合のシミュレーションによる膜厚分布例を示す。
なお、図4(b)中のC及びDは、図5中のC及びDに対応している。
また、本実施の形態では例えば図8で示すようにマーキング部の濃度を最大濃度部と同じ濃度としたが、マーキングの役割を果たすことが可能であれば、例えば図9で示すようにマーキング部の濃度は境界が認識できる程度であれば良い。
本実施例は、上記した本発明及び実施の形態を適用したものである。
以下に、本実施例によるNDフィルタの製造方法について説明する。
まず、図1に示されるような真空蒸着機のチャンバー内における各成膜基板上の蒸着源側に、図4で示すように、マスク6とマスク8の2つのマスクを設置し、材質厚75μmのプラスチック基材(以下、PET基材と記す)上に、真空蒸着法により図10に示す膜構成のうち第1層から最表層手前までを形成した。
さらに具体的に、マスク6における遮蔽板7の基板とマスクとが形成する角は45度、マスク6における遮蔽板7と遮蔽板7との距離は20mm、基板からマスク6の最も離れた部分の距離が10mmの位置に固定し、遮蔽板7とマスク8との隙間は約0.3mmとした。
基材の材質は耐熱性(ガラス転移点Tg)が高く、可視域の波長域で透明性が高く、また吸水率が低いPETを選択した。ここで、本実施例ではPETを選択したが、脂環式ポリオレフィン樹脂等を用いる事でも同様のNDフィルタを作製する事も可能であると考えられる。
なお、ここで、第1層から最表層まで、図4で示す様なマスク6とマスク8を用い、全層を膜厚変化させ成膜すると、反射防止条件が合わなくなり、反射率の上昇が起き、画質上では“ゴースト現象”や“フレア現象”が発生してしまうことから、これらを考慮し、最表層ではマスクを外し基板全面の膜厚が等しくなる様に成膜した。
このような現象が起きる要因としては、真空蒸着時の基板温度が低いことがあげられる。
膜の封止密度は成膜時の基板温度が大きく影響し、温度が低いと封止密度が低くなり、水分・酸素等を透過しやすく、そのため吸収膜であるTixOy自体の酸化が促進される事と、それを保護するAl2O3膜等の誘電体膜の保護効果が少ない事との両方の影響から透過率が上昇するものと考えられる。熱処理を行うと環境安定性が向上するのは、“エージング効果”であると考えられる。
通常、ガラス基板を用いる場合、基板温度は200℃〜250℃、望ましくは300℃前後まで加熱して成膜する。しかし、今回のように基板がプラスチックの場合、基板が熱収縮を起こさない温度で成膜する必要があり、その基板温度は150℃未満に制約される。
このようにして作製されたNDフィルタを使用する際の一例を示すと、図14のようなパターンを作製して、略三角形の形状に切りぬき、その後羽根に貼って図15の状態になる。フィルタ1枚は図16のようになっていて、0が端面部でそこからX1、X2、X3までが濃度勾配部である。X3からX4は最大濃度部が形成されている。X4からX5はフィルタを羽根に接着するための接着領域である。X6には濃度傾斜終了位置と成膜が施されていない部分との境界を示すマーキング部が存在している。
また、図17に示すようにマーキング部X7を接着領域に設け、前後の濃度に比べマーキングとしての役割を果たせる程度に濃度を異ならせ、マーキングする方法でも同様の効果を得ることが可能である。
さらに、図14の外周部などに例えばマスクなどを用いることで、マーキングをする方法も考えられる。
(比較例)
以上の実施例と比較するため、濃度が最小値となる濃度傾斜終了位置と成膜が施されていない部分との境界の判別が容易となる濃度分布を有しないNDフィルタの作製に関する比較例について説明する。この比較例においては、真空蒸着法によってグラデーション濃度分布を有する膜を形成するに際し、図4のマスク8を備えない図2に示すようなマスクを用いた点において実施例と異なっているだけであり、他は全て実施例と同じ条件で成膜したものであるから、実施例と重複する部分の説明は省略する。
このような比較例によっても、膜厚分布は図3に示すシミュレーションの結果とほぼ同等な、グラデーション濃度分布の結果が得られた。但し第1層から第8層までの分布である。最表層は一定膜厚である。
また、比較例のものにおいても図18のようなパターンを作製し、図19のように略三角形の形状に切りぬき、その後、絞り羽根15に貼って実施例と同様に図15のように構成することができる。
2:基材
3:基板治具
4:蒸着傘
5:蒸着源
6:マスク
7:遮蔽板
8:マスク
Claims (12)
- 基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、前記マスクを用いずに最表層の膜を一定膜厚に成膜すると共に、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜する成膜工程を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。 - 基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、前記マスクを用いずに最表層の膜を前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配を持つ膜に、成膜すると共に、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜する成膜工程を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。 - 基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに成膜された前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配を持つ膜とに、成膜すると共に、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜する成膜工程を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。 - 基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜とに、成膜すると共に、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜する成膜工程を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。 - 前記成膜工程において、前記マスクとして、前記基板に対して所定間隔をおいて傾斜して配置された複数の遮蔽板によるマスクと、遮蔽板による所定間隔外の基板上面を覆うと共に前記遮蔽板との間に任意の隙間が設けられたマスクと、を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のNDフィルタの製造方法。
- 前記最表層の膜を成膜した後に、100℃から130℃の温度で空気中において熱処理する工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のNDフィルタの製造方法。
- 基板に対して所定間隔をおいて傾斜して配置された複数の遮蔽板によるマスクと、遮蔽板による所定間隔外の基板上面を覆うと共に前記遮蔽板との間に任意の隙間が設けられたマスクとを用い、前記基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、
第1層から最表層手前までの膜が、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜された膜であり、
最表層の膜が、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜で構成されていることを特徴とするNDフィルタ。 - 基板に対して所定間隔をおいて傾斜して配置された複数の遮蔽板によるマスクと、遮蔽板による所定間隔外の基板上面を覆うと共に前記遮蔽板との間に任意の隙間が設けられたマスクとを用い、前記基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、
第1層から最表層手前までの膜が、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜された膜であり、
最表層の膜が、前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配に成膜された膜で構成されていることを特徴とするNDフィルタ。 - 基板に対して所定間隔をおいて傾斜して配置された複数の遮蔽板によるマスクと、遮蔽板による所定間隔外の基板上面を覆うと共に前記遮蔽板との間に任意の隙間が設けられたマスクとを用い、前記基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、
第1層から最表層手前までの膜が、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜された膜であり、
最表層の膜が、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに成膜された前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配に成膜された膜と、によって構成されていることを特徴とするNDフィルタ。 - 基板に対して所定間隔をおいて傾斜して配置された複数の遮蔽板によるマスクと、遮蔽板による所定間隔外の基板上面を覆うと共に前記遮蔽板との間に任意の隙間が設けられたマスクとを用い、前記基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、
第1層から最表層手前までの膜が、前記濃度勾配部における最小濃度部と成膜が施されていない部分との境界に、該境界を認識できる程度に前記最小濃度部よりも濃い濃度部を形成するように成膜された膜であり、
最表層の膜が、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜と、によって構成されていることを特徴とするNDフィルタ。 - 相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、該絞り羽根により形成された開口内の少なくとも一部に配置される光量調整のためのNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、
前記NDフィルタが、請求項7〜10のいずれか1項に記載のNDフィルタによって構成されていることを特徴とする光量絞り装置。 - 光学系と、該光学系を通過する光量を制限する請求項11に記載の光量絞り装置と、該光学系によって形成される像を受ける固体撮像素子を有することを特徴とするカメラ。
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