JP3701932B2 - Ndフィルタの製造方法及びndフィルタ、並びにこれらのndフィルタを有する光量絞り装置及びカメラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、NDフィルタの製造方法及びNDフィルタ、並びにこれらのNDフィルタを有する光量絞り装置及びカメラに関し、特にビデオカメラあるいはスチルビデオカメラ等の撮影系に使用するに適したグラデーション濃度分布を有するNDフィルタの製造方法及びNDフィルタ、並びにこれらのNDフィルタを有する光量絞り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光量絞り装置は、銀塩フィルムあるいはCCD等への固体撮像素子へ入射する光量を制御するため、撮影光学系の光路中に設けられており、被写界が明るい場合に光量をより小さく絞り込むように構成されている。
従って、快晴時や高輝度の被写界を撮影すると絞りは小絞りとなり、絞りのハンチング現象や光の回折の影響も受け易く、像性能の劣化を生じる。
これに対する対策として絞り羽根にフィルム状のND(Neutral Density)フィルタを取りつけて被写界の明るさが同一でも絞りの開口が大きくなる様な工夫をしている。
【0003】
近年、撮像素子の感度が向上するに従い、前記NDフィルタの濃度を濃くして、光の透過率をさらに低下させ、被写界の明るさが同一でも絞りの開口を大きくする様になっている。しかしながら、この様にNDフィルタの濃度が濃くなると図9に示す様な状態でNDフィルタを通過した光aとNDフィルタを通過しない光bの光量差が大きく異なり、画面内で明るさが異なる“シェーディング”現象が起きたり、解像度が低下してしまうという欠点がある。この欠点を解決するためにNDフィルタの濃度を光軸中心に向かって順次透過率が大となる様な構造を取る必要が出てきている。
【0004】
因みに図9で906A,906B,906C,906Dは撮影光学系906を構成するレンズ、907は固体撮像素子で908はローパスフィルタである。また911から914は絞り装置を構成する部材で、911がNDフィルタ、912と913が対向的に移動する絞り羽根で、2枚の絞り羽根は略菱形の開口を形成する。NDフィルタは普通、絞り羽根に接着されている。914は絞り羽根支持板である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般的にNDフィルタの作製方法としては、フィルム状をなす材料(セルロースアセテート、PET(ポリエチレンテレフタレート)、塩化ビニル等)中に光を吸収する有機色素または顔料を混ぜ、練り込むタイプのものと、前記材料に光を吸収する有機色素または顔料を塗布するタイプのものがある。これらの製造方法では、濃度が均一なフィルタは作製可能であるが、同一フィルタ内で濃度が変化するタイプのフィルタ(グラデーションフィルタ)は作製が著しく困難である。
【0006】
このような濃度可変タイプ(グラデーションタイプ)のNDフィルタに関して、本発明者らは、特許第2754518号公報(特開平05−281593)、特許第2771078号公報(特開平06−095208)、特許第2771084号公報(特開平06−175193)において、マイクロ写真法による濃度可変タイプ(グラデーションタイプ)のNDフィルタの作製方法等を提案している。当時のビデオカメラではこの方法により作製したNDフィルタで画質の向上が図られたが、近年のCCDの更なる高感度化、小型化、高画質対応により特に特殊条件での使用(例えば逆光下での小径絞り状態)において、銀塩粒子による光の散乱による影響により画質が劣化してしまうことがある。
【0007】
また、特開平11−38206号公報には、真空蒸着法により楕円形グラデーションフィルタの製造方法が開示されている。この方法では、微少領域(例えば3mmの範囲で透過率3%から80%までの変化等)での濃度変化ができない欠点がある。
【0008】
さらに、上記高画質対応の対策として、単一濃度のNDフィルタを複数の絞り羽根に接着して、駆動させることにより、単一濃度フィルタでも複数重なった部分と重ならない部分とから、濃度変化させることは可能である。しかしながら、この方法ではNDフィルタの枚数が増えることによるコストアップ、及び絞り羽根に複数枚NDフィルタが存在することにより厚くなってしまい、近年の小型・省スペース化に対応できない等の欠点がある。
【0009】
さらに、近年、段階的な多濃度NDフィルタが使用され始めてきているが、濃度の異なる領域で、光路長が変わるとその分だけ透過位相が変化し、画質の劣化(解像度低下)を引き起こすことがわかってきた。この画質の劣化は透過位相差がλ/2の時最も大きくなり、比較的良好なのは、λ/4〜λ/8以下の時である(λ:540nm)。このような現象の解決には光路長を補正する層が必要である。
【0010】
そこで、本発明は、光の散乱による画質の劣化が生ぜず、高画質化に対応することが可能となり、各濃度において分光特性がフラットで、低反射率であり、膜厚が連続的に変化することによる光路長の違いから発生する透過位相差を補正することができるグラデーション濃度分布を有するNDフィルタの製造方法及びNDフィルタ、並びにこれらのNDフィルタを有し光量の均一性の向上を図ることができる光量絞り装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、つぎの(1)〜(14)のように構成したグラデーション濃度分布を有するNDフィルタの製造方法及びNDフィルタ、並びにこれらのNDフィルタを有する光量絞り装置及びカメラを提供するものである。
(1)基板上に少なくとも2種類以上の膜を成膜してNDフィルタを製造するに際し、
ドーム内に回転可能に配置された基板保持部材に保持された前記基板を第1のスリット型マスクと一体的に前記基板保持部材の回転軸を中心に公転させてグラデーション濃度分布をもつ第1層の膜を成膜する工程と、
該第1のスリット型マスクと位置をずらせた第2のスリット型のマスクを前記基板と一体的に前記基板保持部材の回転軸を中心に公転させて前記第1層とは逆方向のグラデーション濃度分布をもつ第2層から最表層手前の膜を成膜する工程と、
最表層の膜を前記のマスクを用いずに成膜する工程と、
を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。
(2)前記第1及び第2のスリット型マスクにおけるスリット間の幅と、該スリット型マスクと前記基板との距離とを、それぞれ調整して任意のグラデーション濃度分布を形成することを特徴とする上記(1)に記載のNDフィルタの製造方法。
(3)前記第1層の膜及び第2層から最表層手前の膜に引き続いて前記最表層の膜を成膜した後に、成膜された前記基板を100℃から130℃の温度で空気中で熱処理する工程を有することを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載のNDフィルタの製造方法。
(4)前記最表層の膜を、光学膜厚n×d(但し;nは屈折率、dは機械膜厚)で1/4λ(λ=500nmから600nm)の一定膜厚に成膜することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のNDフィルタの製造方法。
(5)前記屈折率nを、可視域の波長域で1.5以下とすることを特徴とする上記(4)に記載のNDフィルタの製造方法。
(6)基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、
前記膜は、最表層以外の膜がグラデーション濃度分布をもつ第1層の膜及び前記第1層とは逆方向のグラデーション濃度分布をもつ第2層から最表層手前の膜で構成され、最表層の膜が一定の膜厚で構成されていることを特徴とするNDフィルタ。
(7)前記第2層から最表層手前の膜は、膜厚が連続的に変化していることを特徴とする上記(6)に記載のNDフィルタ。
(8)前記第1層の膜は、光路長n×d(但し;nは屈折率、dは機械膜厚)の違いから発生する透過位相差を補正するため、膜厚が前記第2層から最表層手前の膜と逆方向に連続的に変化していることを特徴とする上記(6)または上記(7)に記載のNDフィルタ。
(9)前記第1層の膜は、NDフィルタの濃度が薄くなるに従い、膜厚が厚くなるように構成されていることを特徴とする上記(8)に記載のNDフィルタ。
(10)前記最表層の膜は、光学膜厚n×d(但し;nは屈折率、dは機械膜厚)で1/4λ(λ=500nmから600nm)であることを特徴とする上記(6)に記載のNDフィルタ。
(11)前記屈折率nは、可視域の波長域で1.5以下であることを特徴とする上記(10)に記載のNDフィルタ。
(12)前記NDフィルタは、膜側反射率が3%未満、透過位相差(光路長差)の全体バラツキがMax−Minでλ/4以下(λ:540nm)であることを特徴とする上記(6)〜(11)のいずれかに記載のNDフィルタ。
(13)相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、該絞り羽根により形成された開口内の少なくとも一部に配置される光量調整のためのNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、
前記NDフィルタが、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法によって製造されたNDフィルタ、または上記(6)〜(12)のいずれかに記載のNDフィルタによって構成されていることを特徴とする光量絞り装置。
(14)光学系と、該光学系を通過する光量を制限する上記(13)に記載の光量絞り装置と、該光学系によって形成される像を受ける固体撮像素子を有することを特徴とするカメラ。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施の形態について説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態によって何ら限定されるものではない。特に、以下の図4等の説明においては、NDフィルターの成膜の実施方法として、真空蒸着法を用いた場合を例にとって説明しているが、本発明はスパッタリング法・インクジェットプリンティング法・スプレー法等においても同様な効果を得ることができ、これらの成膜法は一般的に知られていることでもあるから、ここでは記述を省略している。
【0013】
図4は、本実施の形態を説明するため、一例として用いる真空蒸着機におけるチャンバー内の簡易図であり、図4において101は蒸着傘(基板保持部材)、102は成膜を施す基板、103は蒸着源、104は実際に成膜を実施する基材、105は基材104を固定する為の基板治具である。
また、本実施の形態において説明する基板102とは、図4(b)に示すように基板治具105に基材104がセットされた状態を示しているものとする。
【0014】
図5は、本実施の形態を説明するために、一例として用いるスリット型マスク形状を有するスリット型マスクであり、図5において106はスリット型マスク、107はスリット型マスクにおけるスリット間の幅、108は基板とスリット型マスクとの距離である。
【0015】
本実施の形態において用いる真空蒸着法においては、図4の様にチャンバー内の基板は蒸着傘101に備え付けられ、この蒸着傘101と共に基板102が回転し成膜が行われる。この基板102の成膜側に例えば図5(a)に示すようなスリット型のマスクを設けることにより、蒸着源103と基板102との位置関係から、蒸着する蒸着粒子はスリットを通過し基板102に到達できたり、スリット型マスクに遮られ基板102まで到達できなかったりすることになり、図6(a)に示すような膜厚分布を得ることとなる。
【0016】
図6(a)は、実際に図5(a)に示すスリット型マスクを用いて膜厚分布シミュレーションを実施した結果であり、図6(b)は図6(a)のパラメータである基板上の位置Δxの説明図、図6(c−1)は蒸着傘中の位置の鳥瞰図、図6(c−2)は蒸着傘中の位置の断面図をそれぞれ示している。109は蒸着傘101中の基板位置である。
【0017】
図6(a)で示されている膜厚分布は、当然、蒸着傘中の基板位置109や、マスクのスリット間の幅107や、基板とマスクとの距離108等によっても異なったものになる。このことは図6(a)に示すように、蒸着傘中の基板位置109により、膜厚分布が一致しない結果から考慮しても明らかであろう。したがって、反対にマスクのスリット間の幅107や基板とマスクとの距離108を調整することにより、基板上に成膜される薄膜は任意のグラデーション膜厚分布を得ることになる。膜厚が増加すると言うことは、膜の濃度が濃くなり透過率が下がることを意味しているため、任意の膜厚分布を得ることとは、言い換えれば本発明が課題とする任意のグラデーション濃度分布を得ることと言える。
【0018】
また、このような任意のグラデーション濃度分布を作製するためのスリット型マスクの形状は、本実施例では図5(a)に示すような形状のスリット型マスクを用い、図6(a)におけるシミュレーション結果と共に説明してきたが、実際は、図5(b)、(c)に示すように、ノコギリ歯型であったり、クシ型であったり、作製したいNDフィルターのグラデーション濃度分布によって、様々のものを用いることができる。
【0019】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。図3の(a−1)は基板にマスクをセットした状態を上から見た図、同図の(a−2)は矢印方向から見た図である。
本実施例においては、まず、材質厚75μmのプラスチック基材(以下、PET基材と記す)上に、真空蒸着法により図7に示す膜構成のうち、その第1層をつぎのようにして形成した。
【0020】
本実施例においては、スリットマスクは図5(a)のノーマル型を使用し、図3に示す様に配置した。同図において値302はPET基板であり、303は成膜治具である。
図のようにマスク301を基板302から離して設定することにより、第1層の膜は図3の(a−2)の304に示す様な膜厚分布となる。この時の膜厚は濃度分布から生じる、位相差をキャンセルする膜厚に設定する。
また、膜生成法として、膜厚を比較的容易に制御でき、かつ可視域の波長域で散乱が非常に小さいことから、真空蒸着法を選択した。
また、基材の材質としては、耐熱性(ガラス転移点Tg)が高く、可視域の波長域で透明性が高く、また吸水率が低い、PETを選択した。
【0021】
次に、このスリットマスク301を外し、別のスリットマスク301’を用いて第2層から最表層手前までを成膜した。図3の(b−1)は基板にマスクをセットした状態を上から見た図、同図の(b−2)は矢印方向から見た図である。
これにより第2層から最表層手前までの膜は図3の(b−2)の305に示す様な膜厚分布となる。
【0022】
最後に、スリットマスク301’を外し、最表層を光学膜厚n×d(nは屈折率dは機械膜厚)で1/4λ λ:540nmの条件により成膜した。この最表層の膜の屈折率nは可視域の波長域で1.5以下のものを選んだ。具体的にはMgF2を使用した。
【0023】
以上のように第1層から最表層まで成膜した後、110℃ 1時間、空気中で熱処理を行った。110℃を選んだのは、100℃未満では環境安定性向上の効果が不十分であり、130℃を超えると基材の熱的劣化を生じて膜にクラックが発生する等問題が発生する。したがって、熱処理の温度は、110℃から130℃の間が適当である。
【0024】
環境安定性を調べるため、前記プラスチックNDフィルタを60℃85%240時間の放置試験を行い、試験前後での透過率を測定すると、その差が0.2%以下とほとんど差は見られなかった。参考として、熱処理を行わないものを同様な環境試験を行い、試験前後での透過率を測定すると2%前後増加していた。
このような現象が起きる要因としては、真空蒸着時の基板温度が低いことがあげられる。
膜の封止密度は成膜時の基板温度が大きく影響し、温度が低いと封止密度が低くなり、水分・酸素等を透過しやすく、そのため吸収膜であるTixOy自体の酸化が促進されること、及びそれを保護するAl2O3膜等の誘電体膜の保護効果が少ないことの両方の影響から透過率が上昇するものと考えられる。熱処理を行うと環境安定性が向上するのは、“エージング効果”であると考えられる。
【0025】
通常、ガラス基板を用いる場合、基板温度は200℃〜250℃、望ましくは300℃前後まで加熱して成膜する。
しかし、今回のように基板がプラスチックの場合、基板が熱収縮を起こさない温度で成膜する必要があり、その基板温度は150℃未満に制約される。
【0026】
一例を示すと、図2(a)のようなパターンを作製して、略三角形の形状に切りぬき、その後、この切りぬいたフィルター11を羽根12に貼って図1の状態になる。絞り装置は、図9を用いて説明したものと同様のもので、相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根を備えている。フィルター1枚は図2(b)のようになっていて、0が端面部でそこからX1X2X3までが濃度変化領域である。X3からX4は最も濃い均一濃度が形成されている。X4からX5はフィルターを羽根に接着するための接着領域である。
【0027】
この時の距離と膜厚の構成は、図8に示すようになった。
まず、第2層から最表層手前までについて述べる。
0,X1,X2,X3領域では連続的にそれぞれの膜厚が増加している。この変化の仕方は前記スリットマスクのスリット幅と基板とスリット間のスペースで所望のパターンに設定できる。
X3,X4,X5領域では一定濃度のため、各膜厚も一定膜厚である。
次に、最表層膜であるが、これは反射防止・環境安定性も兼ねている膜で光学膜厚n×dで1/4λ (λ=500nm〜600nm)と0〜X5までの領域で一定膜厚である。
【0028】
また、第1層膜は、0,X1,X2,X3領域では、第2層から最表層手前までとは反対に、連続的に膜厚が減少している。この変化の仕方は概ねスリット幅を広げると傾斜は緩やかになり、浮かせ距離を増やしていくと均一濃度領域が増える傾向にある。
第1層の膜厚は、第2層から最表層手前までの膜厚変化を補正する膜厚に設定する。この2つのパラメータにより所望の傾斜状態、均一濃度の領域の制御が可能である。
【0029】
このような膜構成にすることにより、0,X1,X2,X3領域の連続的に濃度が変化することに対する光路長の差を補正することが可能となり、各領域の透過位相の変化を抑えることが可能となる。その結果、高画質の維持が可能となった。
また、反射率も各領域でほぼ一定にすることが可能となり、“ゴースト”“フレア”現象が抑えられた。
【0030】
光路長差を補正する補正層は、第1層が最適である。理由は、第1層の膜厚を変化させるのが、最も透過率・反射率の分光特性に影響が無いからである。
また、この時の距離と透過率、距離と反射率の関係は図10、図11に示すようになった。
さらに、分光透過率は、図12,分光反射率は、図13に示すようになった。
【0031】
因みにスリット幅は0.02m,マスクと基板との浮かせ距離は0.01mの結果である。
距離と膜厚の関係は、この変化の仕方は、概ねスリット幅を広げると傾斜は緩やかになり、浮かせ距離を増やしていくと均一濃度領域が増える傾向にある。この2つのパラメータにより所望の傾斜状態、均一濃度の領域の制御が可能である。
さらに、図5(b),(c)のようにスリットを直線からノコギリ歯型、クシ歯型にすることにより、より細かな制御が可能となる。例えば、裾を長く取りたい時は、ノコギリ歯型の方が有利である。
【0032】
以上説明した実施例によれば、各濃度において分光特性がフラットなグラデーションNDフィルターの作製が可能となり、グラデーションの変化に対する様々なニーズに対応できる。さらに、蒸着後に熱処理を行うことにより、環境安定性を向上させることができる。
また、部分的に膜厚が変化する時に発生する、反射防止条件の変化による反射率の増大を抑制することができ、膜厚が連続的に変化することによる光路長の違いから発生する透過位相差を補正することが可能となり、高画質対応の要請に応えられる絞り装置を実現することができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、光の散乱による画質の劣化が生ぜず、高画質化に対応することが可能となり、各濃度において分光特性がフラットで、低反射率であり、膜厚が連続的にが変化することによる光路長の違いから発生する透過位相差を補正することができるグラデーション濃度分布を有するNDフィルタの製造方法及びNDフィルタ、並びにこれらのNDフィルタを有し光量の均一性の向上を図ることができる光量絞り装置及びカメラを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で得られたグラデーションNDフィルタを絞り羽根に取り付けた状態を示す斜視図。
【図2】本発明の実施例におけるフィルタ製造の際のプレス抜き状態を説明する図であり、(a)は略三角形状の切りぬきパターンを示す図、(b)は切りぬかれた略三角形状のNDフィルタの構成を示す図。
【図3】(a−1)は本実施例の第1層の成膜時の基板上にセットされたスリットマスクを上から見た図であり、(a−2)は(a−1)を矢印方向から見た図で、スリットマスクと基板にスペースを設けることにより第1層の膜の付き方を表した図。また、(b−1)は本実施例の第2層から最表層手前までの成膜時の基板上にセットされたスリットマスクを上から見た図であり、(b−2)は(b−1)を矢印方向から見た図で、スリットマスクと基板にスペースを設けることにより第2層から最表層手前までの膜の付き方を表した図。
【図4】本発明の実施の形態における真空蒸着法によるNDフィルタの製造方法を説明するための図であり、(a)は真空蒸着機におけるチャンバー内の構成図、(b)は基板の拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態、及び実施例に用いられるスリット型マスクとマスク形状を示す図。
【図6】本発明の実施の形態におけるスリット型マスクによる膜厚分布シミュレーション例を示す図。
【図7】本発明の実施の形態及び実施例等を説明するための蒸着NDフィルタの膜構成を示す図。
【図8】本発明の実施例におけるNDグラデーションフィルタとそれに対応した各膜厚の状態を表した図。
【図9】従来技術を説明するためのビデオカメラに使用される撮影光学系を表わした図。
【図10】実施例における距離と透過率の関係を表わしたグラフ。
【図11】実施例における距離と反射率の関係を表わしたグラフ。
【図12】実施例における分光透過率を表わしたグラフ。
【図13】実施例における分光反射率を表わしたグラフ。
【符号の説明】
11:NDフィルター
12:絞り羽根
101:蒸着傘
102:基板
103:蒸着源
104:基材
105:基板治具
106:スリット型マスク
107:マスクのスリット間の幅
108:基板とマスクとの距離
109:蒸着傘中の基板位置
301、301’:スリットマスク
302:PET基板
303:成膜治具
304:第1層の膜
305:第2層から最表層手前までの膜
906A,906B,906C,
906D:撮影光学系906を構成するレンズ
907:固体撮像素子
908:ローパスフィルター
911:NDフィルター
912,913:絞り羽根
914:絞り羽根支持板
Claims (14)
- 基板上に少なくとも2種類以上の膜を成膜してNDフィルタを製造するに際し、
ドーム内に回転可能に配置された基板保持部材に保持された前記基板を第1のスリット型マスクと一体的に前記基板保持部材の回転軸を中心に公転させてグラデーション濃度分布をもつ第1層の膜を成膜する工程と、
該第1のスリット型マスクと位置をずらせた第2のスリット型のマスクを前記基板と一体的に前記基板保持部材の回転軸を中心に公転させて前記第1層とは逆方向のグラデーション濃度分布をもつ第2層から最表層手前の膜を成膜する工程と、
最表層の膜を前記のマスクを用いずに成膜する工程と、
を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。 - 前記第1及び第2のスリット型マスクにおけるスリット間の幅と、該スリット型マスクと前記基板との距離とを、それぞれ調整して任意のグラデーション濃度分布を形成することを特徴とする請求項1に記載のNDフィルタの製造方法。
- 前記第1層の膜及び第2層から最表層手前の膜に引き続いて前記最表層の膜を成膜した後に、成膜された前記基板を100℃から130℃の温度で空気中で熱処理する工程を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNDフィルタの製造方法。
- 前記最表層の膜を、光学膜厚n×d(但し;nは屈折率、dは機械膜厚)で1/4λ(λ=500nmから600nm)の一定膜厚に成膜することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のNDフィルタの製造方法。
- 前記屈折率nを、可視域の波長域で1.5以下とすることを特徴とする請求項4に記載のNDフィルタの製造方法。
- 基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、
前記膜は、最表層以外の膜がグラデーション濃度分布をもつ第1層の膜及び前記第1層とは逆方向のグラデーション濃度分布をもつ第2層から最表層手前の膜で構成され、最表層の膜が一定の膜厚で構成されていることを特徴とするNDフィルタ。 - 前記第2層から最表層手前の膜は、膜厚が連続的に変化していることを特徴とする請求項6に記載のNDフィルタ。
- 前記第1層の膜は、光路長n×d(但し;nは屈折率、dは機械膜厚)の違いから発生する透過位相差を補正するため、膜厚が前記第2層から最表層手前の膜と逆方向に連続的に変化していることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のNDフィルタ。
- 前記第1層の膜は、NDフィルタの濃度が薄くなるに従い、膜厚が厚くなるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のNDフィルタ。
- 前記最表層の膜は、光学膜厚n×d(但し;nは屈折率、dは機械膜厚)で1/4λ(λ=500nmから600nm)であることを特徴とする請求項6に記載のNDフィルタ。
- 前記屈折率nは、可視域の波長域で1.5以下であることを特徴とする請求項10に記載のNDフィルタ。
- 前記NDフィルタは、膜側反射率が3%未満、透過位相差(光路長差)の全体バラツキがMax−Minでλ/4以下(λ:540nm)であることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載のNDフィルタ。
- 相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、該絞り羽根により形成された開口内の少なくとも一部に配置される光量調整のためのNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、
前記NDフィルタが、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたNDフィルタ、または請求項6〜12のいずれか1項に記載のNDフィルタによって構成されていることを特徴とする光量絞り装置。 - 光学系と、該光学系を通過する光量を制限する請求項13に記載の光量絞り装置と、該光学系によって形成される像を受ける固体撮像素子を有することを特徴とするカメラ。
Priority Applications (4)
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