JP4623724B2 - Ndフィルタの製造方法、ndフィルタ、光量絞り装置、該光量絞り装置を有するカメラ - Google Patents
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光量絞りは銀塩フィルムあるいはCCD等への固体撮像素子へ入射する光量を制御するため、撮影光学系の光路中に設けられており、被写界が明るい場合に光量をより小さく絞り込まれるように構成されている。
従って、快晴時や高輝度の被写界を撮影すると絞りは小絞りとなり、絞りのハンチング現象や光の回折の影響も受け易く、像性能の劣化を生じる。
これに対する対策として、絞り羽根にフィルム状のND(Neutral Density)フィルタを取り付けて被写界の明るさが同一でも絞りの開口が大きくなる様な工夫がされている。
さらに、これら以外にも上記高画質対応の対策として、単一濃度のNDフィルタを複数の絞り羽根に接着して、駆動させることにより、単一濃度フィルタでも複数重なった部分と重ならない部分とから、濃度変化させることは可能である。
また、特許文献4の方法では、微少領域(例えば3mmの範囲で透過率3%から80%までの変化等)での濃度変化ができない等の欠点がある。
さらに、上記したこれら以外の、単一濃度のNDフィルタを複数の絞り羽根に接着して、駆動させることにより、単一濃度フィルタでも複数重なった部分と重ならない部分とから、濃度変化させる方法では、NDフィルタの枚数が増えることによりコスト高となり、あるいは絞り羽根に複数枚NDフィルタが存在することによって厚くなり、近年の小型・省スペース化に対応できない等の欠点がある。
しかしながら、このようなグラデーション濃度勾配を持つNDフィルタ膜の場合、最大濃度部18と濃度勾配部19との境界を判断することが非常に難しく、そのため、濃度傾斜開始位置20から濃度傾斜終了位置21までの距離を把握すること、あるいは作製した膜の濃度分布を短時間で高精度に測定または評価すること、等が著しく困難であるという問題を有している。
すなわち、本発明のNDフィルタの製造方法は、基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、前記マスクを用いずに最表層の膜を一定膜厚に成膜すると共に、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜する成膜工程を有することを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタの製造方法は、基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、前記マスクを用いずに最表層の膜を前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配を持つ膜に、成膜すると共に、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜する成膜工程を有することを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタの製造方法は、基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに成膜された前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配を持つ膜に、成膜すると共に、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜する成膜工程を有することを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタの製造方法は、基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜に、成膜すると共に、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜する成膜工程を有することを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタは、基板上に該基板と所定距離を置いて配置されたスリット型マスクと、該スリット型マスクのスリットの幅内で基板に密着させて配置された遮蔽部を有するマスクを用い、前記基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、第1層から最表層手前までの膜が、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜された膜であり、最表層の膜が、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜で構成されていることを特徴としている。その際、この最表層の膜を、本発明においては前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配に成膜された膜で構成することができる。また、本発明においてはこの最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに成膜された前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配に成膜された膜と、によって構成することができる。また、本発明においてはこの最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜と、によって構成することができる。
また、本発明の光量絞り装置は、相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、該絞り羽根により形成された開口内の少なくとも一部に配置される光量調整のためのNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、前記NDフィルタが、上記したNDフィルタによって構成されていることを特徴としている。
また、本発明のカメラは、光学系と、該光学系を通過する光量を制限する上記した光量絞り装置と、該光学系によって形成される像を受ける固体撮像素子を有することを特徴としている。
図1は真空蒸着機におけるチャンバー内の簡易図であり、1は成膜を施す基板、2は実際に成膜を実施する基材、3は基材2を固定する為の基板治具、4は蒸着傘、5は蒸着源である。また、本実施の形態として説明する基板1とは、図1(b)に示すように基板治具3に基材2がセットされた状態のものを意味している。
以上により、最大濃度部とグラデーション勾配部との境界部分の濃度が最大濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる分布とした、最大濃度部とグラデーション濃度勾配部との境界を判断するマーキングの機能を果たす濃度を含んだグラデーションNDフィルタを作製することができる。その際、マスクの形状、マスクの配置位置、マスクの枚数、蒸着源からの基板位置などを変化させる事で様々な濃度分布を得る事が可能である。
また、本実施形態においては、最大濃度部とグラデーション濃度勾配部との境界を、その前後に比べ極端に薄い濃度にすることでマーキングの役割を果たす濃度を作製したが、最大濃度部とグラデーション濃度勾配部との境界をその前後に比べ極端に濃い濃度にすることでも、同様の機能を果たすことが可能である。
本実施例は、上記した本発明及び実施の形態を適用したものである。
以下に、本実施例によるNDフィルタの製造方法について説明する。
まず、図1に示されるような真空蒸着機のチャンバー内における各成膜基板上の蒸着源側に、図4で示すように、スリット型マスク6と遮蔽マスク7の2つのマスクを設置し、材質厚75μmのプラスチック基材(以下、PET基材と記す)上に、真空蒸着法により図10に示す膜構成のうち第1層から最表層手前までを形成した。
さらに具体的に、スリット型マスク6はスリット幅を10mm、基板からの距離が10mmの位置に固定し、遮蔽マスク7は遮蔽幅を約0.2mmとし基板上に密着させて設置した。ここで、遮蔽マスク7による遮蔽幅は、小さ過ぎるとフィルタを通過した光が回折現象を起こしてしまい、また大き過ぎるとグラデーション濃度勾配を持つNDフィルタの用途を果たすことができなくなってしまう場合があることから、0.01mmから0.3mm程度にする事が望ましい。遮蔽幅を0.2mmとした際、良好な結果が得られたことから、本実施例では0.2mmを採用した。
基材の材質は耐熱性(ガラス転移点Tg)が高く、可視域の波長域で透明性が高く、また吸水率が低いPETを選択した。ここで、本実施例ではPETを選択したが、脂環式ポリオレフィン樹脂等を用いることでも同様のNDフィルタを作製する事も可能であると考えられる。
なお、ここで、第1層から最表層まで、図4で示す様なマスクを用い、全層を膜厚変化させ成膜すると、反射防止条件が合わなくなり、反射率の上昇が起き、画質上では“ゴースト現象”や“フレア現象”が発生してしまうことから、これらを考慮し、最表層ではマスクを外して基板全面の膜厚が等しくなる様に成膜した。
また、図12に示すように、第8層目の成膜終了後、例えば光学膜厚n×dでλ/32λ:540nmの条件によりMgF2を成膜し、その後チャンバーから各基板に設けたマスクを取り外し、8層目までの濃度傾斜と反対の傾斜で相似した傾斜を形成するように、マスクを調整し直し、最表層としてMgF2を再度成膜するようにしてもよい。こうすることで、グラデーション仕様によっては、前記した最表層としてMgF2を一定で光学膜厚n×dをλ/4λ:540nmの条件により形成し反射防止を図る以上に、濃度傾斜部の反射をより低減することが可能となる。このように丸数字1及び2で示すように、最表層のMgF2を2度に分けて成膜することで、マスクを取り外すためにチャンバーを大気等にさらした際に、第8層目におけるTixOyの酸化の防止が可能となる。したがって、丸数字1で示す最表層のMgF2の膜厚は、酸化防止を実現できる厚さであれば良い。
膜の封止密度は成膜時の基板温度が大きく影響し、温度が低いと封止密度が低くなり、水分・酸素等を透過しやすく、そのため吸収膜であるTixOY自体の酸化が促進される事と、それを保護するAl2O3膜等の誘電体膜の保護効果が少ない事との両方の影響から透過率が上昇するものと考えられる。熱処理を行うと環境安定性が向上するのは、“エージング効果”であると考えられる。
通常、ガラス基板を用いる場合、基板温度は200℃〜250℃、望ましくは300℃前後まで加熱して成膜する。しかし、今回のように基板がプラスチックの場合、基板が熱収縮を起こさない温度で成膜する必要があり、その基板温度は150℃未満に制約される。
このように作製されたNDフィルタを使用する際の一例を示すと、図14のようなパターンを作製して、略三角形の形状に切りぬき、その後、この略三角形の形状に切りぬかれたNDフィルタ16を絞り羽根17に貼って図15の状態になる。フィルタ1枚は図16のようになっていて、0が端面部でそこからX1、X2、X3までが濃度変化領域である。X3からX4は最も濃い均一濃度が形成されている。X4からX5はフィルタを羽根に接着するための接着領域である。X3上に濃度勾配部と最大濃度部との境界を示すマーキング部が存在している。
以上の実施例と比較するため、最大濃度部と濃度勾配部との境界の判別が容易となる濃度分布を有しないNDフィルタの作製に関する比較例について説明する。この比較例においては、真空蒸着法によってグラデーション濃度分布を有する膜を形成するに際し、遮蔽マスク7を備えない図2に示すようなマスクを用いた点において実施例1と異なっているだけであり、他は全て実施例1と同じ条件で成膜したものであるから、実施例1と重複する部分の説明は省略する。
このような比較例によっても、膜厚分布は図3に示すシミュレーションの結果とほぼ同等な、グラデーション濃度分布の結果が得られた。但し第1層から第8層までの分布である。最表層は一定膜厚である。
また、比較例のものにおいても図17のようなパターンを作製し、図18のように略三角形の形状に切りぬき、その後、絞り羽根17に貼って実施例1と同様に図15のように構成することができる。
2:基材
3:基板治具
4:蒸着傘
5:蒸着源
6:スリット型マスク
7:遮蔽マスク
Claims (13)
- 基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、前記マスクを用いずに最表層の膜を一定膜厚に成膜すると共に、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜する成膜工程を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。 - 基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、前記マスクを用いずに最表層の膜を前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配を持つ膜に、成膜すると共に、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜する成膜工程を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。 - 基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに成膜された前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配を持つ膜に、成膜すると共に、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜する成膜工程を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。 - 基板上にマスクを設け、最大濃度部と該最大濃度部から順次に濃度が薄くなる濃度勾配部によるグラデーション濃度分布を有する膜を形成するNDフィルタの製造方法において、
第1層から最表層手前までの膜を成膜した後に、最表層の膜を、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜に、成膜すると共に、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜する成膜工程を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。 - 前記成膜工程において、前記マスクとして、基板上に該基板と所定距離を置いて配置されたスリット型マスクと、該スリット型マスクのスリットの幅内で基板に密着させて配置された遮蔽部を有するマスクを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のNDフィルタの製造方法。
- 前記遮蔽部を有するマスクは、遮蔽幅が0.01mm〜0.3mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のNDフィルタの製造方法。
- 前記最表層の膜を成膜した後に、100℃から130℃の温度で空気中において熱処理する工程を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のNDフィルタの製造方法。
- 基板上に該基板と所定距離を置いて配置されたスリット型マスクと、該スリット型マスクのスリットの幅内で基板に密着させて配置された遮蔽部を有するマスクを用い、前記基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、
第1層から最表層手前までの膜が、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜された膜であり、
最表層の膜が、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜で構成されていることを特徴とするNDフィルタ。 - 基板上に該基板と所定距離を置いて配置されたスリット型マスクと、該スリット型マスクのスリットの幅内で基板に密着させて配置された遮蔽部を有するマスクを用い、前記基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、
第1層から最表層手前までの膜が、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜された膜であり、
最表層の膜が、前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配に成膜された膜で構成されていることを特徴とするNDフィルタ。 - 基板上に該基板と所定距離を置いて配置されたスリット型マスクと、該スリット型マスクのスリットの幅内で基板に密着させて配置された遮蔽部を有するマスクを用い、前記基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、
第1層から最表層手前までの膜が、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜された膜であり、
最表層の膜が、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに成膜された前記濃度勾配部と全く反対の濃度勾配に成膜された膜と、によって構成されていることを特徴とするNDフィルタ。 - 基板上に該基板と所定距離を置いて配置されたスリット型マスクと、該スリット型マスクのスリットの幅内で基板に密着させて配置された遮蔽部を有するマスクを用い、前記基板上に少なくとも2種類以上の膜を有するNDフィルタであって、
第1層から最表層手前までの膜が、前記最大濃度部と前記濃度勾配部との境界部分の濃度が、前記最大濃度部の濃度に比べ、境界を認識できる程度に異なる濃度となるように成膜された膜であり、
最表層の膜が、前記マスクを用いて成膜された膜と、前記マスクを用いずに一定膜厚に成膜された膜と、によって構成されていることを特徴とするNDフィルタ。 - 相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、該絞り羽根により形成された開口内の少なくとも一部に配置される光量調整のためのNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、
前記NDフィルタが、請求項8〜11のいずれか1項に記載のNDフィルタによって構成されていることを特徴とする光量絞り装置。 - 光学系と、該光学系を通過する光量を制限する請求項12に記載の光量絞り装置と、該光学系によって形成される像を受ける固体撮像素子を有することを特徴とするカメラ。
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