JP3685331B2 - Ndフィルタの製造方法、並びにこれらのndフィルタを有する光量絞り装置及びカメラ - Google Patents

Ndフィルタの製造方法、並びにこれらのndフィルタを有する光量絞り装置及びカメラ Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、NDフィルタの製造方法、並びにこれらのNDフィルタを有する光量絞り装置及びカメラに関し、特にビデオカメラあるいはスチルビデオカメラ等の撮影系に使用するに適したグラデーション濃度分布を有するNDフィルタの製造方法、並びにこの製造方法により製造されたNDフィルタを有する光量絞り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光量絞り装置は、銀塩フィルムあるいはCCD等への固体撮像素子へ入射する光量を制御するため、撮影光学系の光路中に設けられており、被写界が明るい場合に光量をより小さく絞り込むように構成されている。
従って、快晴時や高輝度の被写界を撮影すると絞りは小絞りとなり、絞りのハンチング現象や光の回折の影響も受け易く、像性能の劣化を生じる。
これに対する対策として絞り羽根にフィルム状のND(Neutral Density)フィルタを取りつけて被写界の明るさが同一でも絞りの開口が大きくなる様な工夫をしている。
【0003】
近年、撮像素子の感度が向上するに従い、前記NDフィルタの濃度を濃くして、光の透過率をさらに低下させ、被写界の明るさが同一でも絞りの開口を大きくする様になっている。しかしながら、この様にNDフィルタの濃度が濃くなると図8に示す様な状態でNDフィルタを通過した光aとNDフィルタを通過しない光bの光量差が大きく異なり、画面内で明るさが異なる“シェーディング”現象が起きたり、解像度が低下してしまうという欠点がある。この欠点を解決するためにNDフィルタの濃度を光軸中心に向かって順次透過率が大となる様な構造を取る必要が出てきている。
【0004】
因みに図8で806A,806B,806C,806Dは撮影光学系806を構成するレンズ、807は固体撮像素子で808はローパスフィルタである。また811から814は絞り装置を構成する部材で、811がNDフィルタ、812と813が対向的に移動する絞り羽根で、2枚の絞り羽根は略菱形の開口を形成する。NDフィルタは普通、絞り羽根に接着されている。814は絞り羽根支持板である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般的にNDフィルタの作製方法としては、フィルム状をなす材料(セルロースアセテート、PET(ポリエチレンテレフタレート)、塩化ビニル等)中に光を吸収する有機色素または顔料を混ぜ、練り込むタイプのものと、前記材料に光を吸収する有機色素または顔料を塗布するタイプのものがある。これらの製造方法では、濃度が均一なフィルタは作製可能であるが、同一フィルタ内で濃度が変化するタイプのフィルタ(グラデーションフィルタ)は作製が著しく困難である。
【0006】
このような濃度可変タイプ(グラデーションタイプ)のNDフィルタに関して、本発明者らは、特許第2754518号公報(特開平05−281593)、特許第2771078号公報(特開平06−095208)、特許第2771084号公報(特開平06−175193)において、マイクロ写真法による濃度可変タイプ(グラデーションタイプ)のNDフィルタの作製方法等を提案している。当時のビデオカメラではこの方法により作製したNDフィルタで画質の向上が図られたが、近年のCCDの更なる高感度化、小型化、高画質対応により特に特殊条件での使用(例えば逆光下での小径絞り状態)において、銀塩粒子による光の散乱による影響により画質が劣化してしまうことがある。
【0007】
また、特開平11−38206号公報には、真空蒸着法により楕円形グラデーションフィルタの製造方法が開示されている。この方法では、微少領域(例えば3mmの範囲で透過率3%から80%までの変化等)での濃度変化ができない欠点がある。
【0008】
さらに、上記高画質対応の対策として、単一濃度のNDフィルタを複数の絞り羽根に接着して、駆動させることにより、単一濃度フィルタでも複数重なった部分と重ならない部分とから、濃度変化させることは可能である。しかしながら、この方法ではNDフィルタの枚数が増えることによるコストアップ、及び絞り羽根に複数枚NDフィルタが存在することにより厚くなってしまい、近年の小型・省スペース化に対応できない等の欠点がある。
【0009】
そこで、本発明は、光の散乱による画質の劣化が生ぜず、高画質化に対応することが可能となる低コストのグラデーション濃度分布を有するNDフィルタの製造方法、並びにこの製造方法により製造されたNDフィルタを有し光量の均一性の向上を図ることができる光量絞り装置及びカメラを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、つぎの(1)〜()のように構成したグラデーション濃度分布を有するNDフィルタの製造方法、並びにこの製造方法により製造されたNDフィルタを有する光量絞り装置及びカメラを提供するものである。
(1)基板上に少なくとも2種類以上の膜を成膜してNDフィルタを製造するに際し、最表層以外の膜を連続的に膜厚が変化するグラデーション濃度分布を形成するための網点状のパターンを有するマスクを前記基板との距離が1mm〜50mmの範囲に設定した状態で成膜する工程と、最表層の膜を前記マスクを用いずに成膜する工程とを有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。
(2)前記網点状のパターンを有するマスクは、該網点状のパターンの孔径と孔の中心間の距離が、段階的または無段階的に変化するマスクであることを特徴とする上記(1)に記載のNDフィルタの製造方法。
)前記最表層以外の膜に引き続いて前記最表層の膜を成膜した後に、成膜された前記基板を100℃から130℃の温度で空気中で熱処理する工程を有することを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載のNDフィルタの製造方法。
)前記最表層の膜を、光学膜厚n×d(但し;nは屈折率、dは機械膜厚)で1/4λ(λ=500nmから600nm)の一定膜厚に成膜することを特徴とする上記(1)〜()のいずれかに記載のNDフィルタの製造方法。
)前記屈折率nを、可視域の波長域で1.5以下とすることを特徴とする上記()に記載のNDフィルタの製造方法。
)相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、該絞り羽根により形成された開口内の少なくとも一部に配置される光量調整のためのNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、
前記NDフィルタが、上記(1)〜()のいずれかに記載の製造方法により製造されたNDフィルタによって構成されていることを特徴とする光量絞り装置。
)光学系と、該光学系を通過する光量を制限する上記()に記載の光量絞り装置と、該光学系によって形成される像を受ける固体撮像素子を有することを特徴とするカメラ。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について説明する。
本実施形態において、濃度分布を有するNDフィルタの製造に際しては、蒸着方法・スパッタリング法等の真空成膜法・インクジェットプリンティング法・スプレー法等による膜生成法を使用する。その手順は、まずNDフィルタにおける濃度変化パターンを形成するため、網点状マスクを膜生成源(蒸着源・インクジェットヘッド・スプレーガン)とNDフィルタのプラスチック基材の間にセットし、まず第1層から最表層より手前まで成膜する。その後、網点状マスクをセットしないで最表層を成膜する。このようなプロセスにより、高画質化に対応可能な濃度可変タイプ(グラデーションタイプ)のNDフィルタを作成することが可能となる。
【0012】
具体的には、例えば膜生成法として真空蒸着法用い、プラスチック基板上に網点状のパターンの孔径と孔の中心間の距離が段階的に、または無段階的に変化するように形成された網点状マスクを、プラスチック基板より1mm〜50mmの範囲で浮かせセットし、少なくとも2種類以上の膜を使用して第1層から最表層手前まで、段階的あるいは連続的に膜厚が変化する膜を成膜する。
【0013】
例えば、真空蒸着法を用いる場合には、基板の成膜側に例えば図2または図3に示すような網点状のパターンの孔径と孔の中心間の距離が段階的または無段階的に変化するマスクを設けることにより、これらの位置関係等から、膜厚分布の異なる膜が上記基板上に成膜されることになる。
【0014】
このような膜厚分布の変化は、上記したように網点状のパターンの孔径と孔の中心間の距離が段階的または無段階的に変化する等のマスク形状や、基板とマスクとの距離等によって異なったものになる。したがって、上記マスクにおける網点状のパターンの孔径と孔の中心間の距離や、あるいは基板とマスクとの距離等を調整することにより、基板上に任意の膜厚分布を有するものを成膜することが可能となる。ここで、膜厚が増加すると言うことは、膜の濃度が濃くなり透過率が下がることを意味しており、したがって任意の膜厚分布を得ることとは、言い換えれば本発明が課題とする、任意のグラデーション濃度分布を得ることが可能となることを意味している。
【0015】
以上のように、段階的あるいは連続的に膜厚が変化する膜を成膜した後、網点状マスクを使用しないで膜の可視域の波長域で屈折率nが1.5以下からなる一定膜厚の最表層を、光学膜厚(n×d)で1/4λ λ=500nmから600nmの条件で成膜することにより、反射特性も改善することができるものである。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1においては、まず、材質厚75μmのプラスチック基材(以下、PET基材と記す)上に、真空蒸着法により図7に示す膜構成のうち、第1層から最表層手前までを、つぎのようにして形成した。
本実施例においては、網点状マスクは図2に示す段階的に変化するものを使用し、図6の様にセットした。
また、膜生成法として、膜厚を比較的容易に制御でき、かつ可視域の波長域で散乱が非常に小さいことから、真空蒸着法を選択した。
また、基材の材質としては、耐熱性(ガラス転移点Tg)が高く、可視域の波長域で透明性が高く、また吸水率が低い、PETを選択した。
その際、PET基材とマスクとの距離dは、30mmとした。
【0017】
つぎに、網点状マスクを外し、最表層を光学膜厚n×d(nは屈折率、dは機械膜厚)で、1/4λ λ:540nmの条件で一定膜厚に成膜した。この最表層の膜の屈折率nは、可視域の波長域で1.5以下のものを選んだ。具体的には、MgF2を使用した。
【0018】
以上の様に、第1層から最表層まで成膜した後、110℃の温度で1時間、空気中で熱処理を行った。110℃を選んだのは、100℃未満では環境安定性の効果が不十分であり、130℃を超えると基材の熱的劣化を生じて膜にクラックが発生する等問題が発生する。したがって、熱処理の温度は、110℃から130℃の間が適当である。
【0019】
濃度(D)と透過率(T)の関係はD=Log101/T=−Log10Tの関係がある。
ここで重要なのは、網点状マスクの孔径と孔の中心間の距離及び、PET基材とマスクとの距離dである。網点状マスクの孔径と孔の中心間の距離により所望の濃度パターンを得ることができることから、これらを必要に応じて、随時選べば良い。
【0020】
また、PET基材とマスクとの距離dは1mmから50mmが適当である。
距離dが1mmより小さいとPET上に形成される濃度パターンが網点状になり、濃度の高い部分と全く蒸着されないPET基材の部分が形成されてしまい、本発明の課題である、画質の向上が達成できない。これは、画質向上には濃度が徐々に変化するパターンが良いのであるが、濃度差の大きい部分が形成されてしまうためである。これに対して、距離dが50mmより大きい場合、膜の回り込みが大きくなり、マスクのPET基材に形成される濃度パターンが均一化されてしまい、良好な濃度変化が得られなくなる。
【0021】
環境安定性を調べるため、前記プラスチックNDフィルタを60℃85%240時間の放置試験を行い、試験前後での透過率を測定すると、その差が0.2%以下とほとんど差は見られなかった。参考として、熱処理を行わないものを同様な環境試験を行い、試験前後での透過率を測定すると2%前後増加していた。
【0022】
このような現象が起きる要因としては、真空蒸着時の基板温度が低いことがあげられる。
膜の封止密度は成膜時の基板温度が大きく影響し、温度が低いと封止密度が低くなり、水分・酸素等を透過しやすく、そのため吸収膜であるTixy自体の酸化が促進されること、及びそれを保護するAl23膜等の誘電体膜の保護効果が少ないこと、の両方の影響から透過率が上昇するものと考えられる。上記した熱処理を行うと環境安定性が向上するのは、“エージング効果”であると考えられる。
【0023】
以上のように第1層から最表層まで成膜した後、図4(a)のようなパターンを作製して、略三角形状のNDフイルターとして切りぬき、その後、図1に示すようにこのNDフイルター1を絞り羽根2に貼った状態として、光量絞り装置に用いる。絞り装置は、図8を用いて説明したものと同様のもので、相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根を備えている。フィルター1枚は図4(b)のようになっていて、0が端面部でそこからX123までが濃度変化領域である。X3からX4は最も濃い均一濃度が形成されている。X4からX5はフィルターを羽根に接着するための接着領域である。
【0024】
本実施例において、距離(X)と第1層〜第8層及び第9層(最表層)における膜厚との関係は、図9、図10に示すようになった。
また、距離(X)と透過率、距離(X)と反射率の関係は図11、図12に示すようになった。
さらに、分光透過率は、図13、分光反射率は、図14に示すようになった。
【0025】
[実施例2]
実施例2においては、まず、材質厚75μmのPET基材上に、真空蒸着法により図7に示す膜構成のうち、第1層から最表層手前までを、つぎのようにして形成した。
本実施例においては、網点状マスクは図3に示す連続的に変化するものを使用し、図6の様にセットした。
また、膜生成法として、膜厚を比較的容易に制御でき、かつ可視域の波長域で散乱が非常に小さいことから、真空蒸着法を選択した。
また、基材の材質は、耐熱性(ガラス転移点Tg)が高く、可視域の波長域で透明性が高く、また吸水率が低い、PETを選択した。
その際、PET基材とマスクとの距離dは、30mmとした。
【0026】
つぎに、網点状マスクを外し、最表層を光学膜厚n×d(nは屈折率、dは機械膜厚)で、1/4λ λ:540nmの条件で成膜した。この最表層の膜の屈折率nは可視域の波長域で1.5以下のものを選んだ。具体的には、MgF2を使用した。
【0027】
以上の様に、第1層から最表層まで成膜した後、110℃の温度で1時間、空気中で熱処理を行った。110℃を選んだ理由は実施例1と同様である。
また、網点状マスクの孔径と孔の中心間の距離により所望の濃度パターンを得る99ことができることから、これらを必要に応じて、随時選べば良いこと、PET基材とマスクとの距離dは1mmから50mmが適当であること、等についても実施例1と同様である。
また、環境安定性を調べるため、実施例1と同様に、前記プラスチックNDフィルタを60℃85%240時間の放置試験を行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0028】
以上のように第1層から最表層まで成膜した後、図5(a)のようなパターンを作製して、略三角形状のNDフイルターとして切りぬき、その後、図1に示すようにこのNDフイルター1を絞り羽根2に貼った状態として、図8に示したような光量絞り装置に用いる。フィルター1枚は図5(b)のようになっていて、0が端面部でそこからX123までが濃度変化領域である。X3からX4は最も濃い均一濃度が形成されている。X4からX5はフィルターを羽根に接着するための接着領域である。
【0029】
本実施例において、距離(X)と第1層〜第8層及び第9層(最表層)における膜厚との関係は、図15、図16に示すようになった。
また、距離(X)と透過率、距離(X)と反射率の関係は図17、図18に示すようになった。
さらに、分光透過率は、図19、分光反射率は、図20に示すようになった。
【0030】
[実施例3]
実施例3においては、まず、材質厚75μmのPET基材上に、真空蒸着法により図7に示す膜構成のうち、第1層から最表層手前までを、つぎのようにして形成した。
本実施例においては、網点状マスクは図3に示す連続的に変化するものを使用し、図6の様にセットした。
また、膜生成法として、膜厚を比較的容易に制御でき、かつ可視域の波長域で散乱が非常に小さいことから、真空蒸着法を選択した。
また、基材の材質は、耐熱性(ガラス転移点Tg)が高く、可視域の波長域で透明性が高く、また吸水率が低い、PETを選択した。
その際、PET基材とマスクとの距離dは、30mmとした。
【0031】
つぎに、網点状マスクを外し、最表層を光学膜厚n×d(nは屈折率、dは機械膜厚)で、1/4λ λ:540nmの条件で成膜した。この最表層の膜の屈折率nは可視域の波長域で1.5以下のものを選んだ。具体的には、MgF2を使用した。
本実施例では、実施例1及び実施例2におけるその後の空気中での熱処理を行わなかった。
【0032】
環境安定性を調べるため、前記プラスチックNDフィルタを60℃85%240時間の放置試験を行い、試験前後での透過率を測定すると、1.0%から3.0%ほど上昇していた。
環境試験前後での変化が大きい理由として、真空蒸着時の基板温度が低いことが挙げられる。膜の封止密度は成膜時の基板温度が大きく影響し、温度が低いと封止密度が低くなり、水分、酸素等を透過し易く、そのため吸収膜であるTixy自体の酸化が促進されること、及びそれを保護するAl23膜等の誘電体膜の保護効果が少ないことの両方の影響から透過率が上昇する。
通常、ガラス基板を用いる場合、基板温度は200℃から250℃、望ましくは300℃前後まで加熱して成膜する。
しかし、今回の様に基板がプラスチックの場合、基板が熱収縮を起こさない温度で成膜する必要が有り、その基板温度は150℃未満に制約される。
【0033】
本実施例において、距離(X)と第1層〜第8層及び第9層(最表層)における膜厚との関係は、図21、図22に示すようになった。
また、距離(X)と透過率、距離(X)と反射率の関係は図23、図24に示すようになった。
さらに、分光透過率は、図25、分光反射率は、図26に示すようになった。
【0034】
(比較例1)
比較例1においては、材質厚75μmのPET基材上に、真空蒸着法により第1層から第9層の最表層までの全層を段階的に各膜厚を変化させて図7に示す膜構成を、つぎのようにして形成した。
本比較例においては、網点状マスクは図2に示す段階的に変化するものを使用し、図6の様にセットした。
また、膜生成法として、膜厚を比較的容易に制御でき、かつ可視域の波長域で散乱が非常に小さいことから、真空蒸着法を選択した。
また、基材の材質は、耐熱性(ガラス転移点Tg)が高く、可視域の波長域で透明性が高く、また吸水率が低い、PETを選択した。
その際、PET基材とマスクとの距離dは、30mmとした。
【0035】
本比較例において、距離(X)と第1層〜第8層及び第9層(最表層)における膜厚との関係は、図27に示すようになった。この図27に示されるように最表層も含めて段階的に各膜厚を変化させると、反射率の増大が起こり、画質の劣化として“ゴースト”“フレア”現象が発生する。
また、距離(X)と透過率、距離(X)と反射率の関係は図28、図29に示すようになった。
さらに、分光透過率は、図30、分光反射率は、図31に示すようになった。
【0036】
(比較例2)
比較例2においては、材質厚75μmのPET基材上に、真空蒸着法により第1層から第9層の最表層までの全層を段階的に各膜厚を変化させて図7に示す膜構成を、つぎのようにして形成した。
本比較例においては、網点状マスクは図2に示す段階的に変化するものを使用し、図6の様にセットした。
また、膜生成法として、膜厚を比較的容易に制御でき、かつ可視域の波長域で散乱が非常に小さいことから、真空蒸着法を選択した。
また、基材の材質は、耐熱性(ガラス転移点Tg)が高く、可視域の波長域で透明性が高く、また吸水率が低い、PETを選択した。
その際、PET基材とマスクとの距離dは、30mmとした。
【0037】
本比較例において、距離(X)と第1層〜第8層及び第9層(最表層)における膜厚との関係は、図32に示すようになった。この図32に示されるように最表層も含めて連続的に各膜厚を変化させると、反射率の増大が起こり、画質の劣化として“ゴースト”“フレア”現象が発生する。
また、距離(X)と透過率、距離(X)と反射率の関係は図33、図34に示すようになった。
さらに、分光透過率は、図35、分光反射率は、図36に示すようになった。
【0038】
以上説明したように、第1層から最表層手前まで、段階的あるいは連続的に膜厚を変化させ、最表層の膜厚のみは、屈折率nは可視域の波長域で1.5以下の膜を使用し、光学膜厚で1/4λ λ=500nmから600nmに一定値することにより、反射率を低減させることが可能となる。
【0039】
通常、単層膜の反射防止条件は使用波長をλとすると、光学膜厚で1/4λの時である。
膜の屈折率nは、小さい方が反射率は低減する。
今回の場合、第1層から最表層手前までの各々の膜厚が段階的あるいは連続的に変化する場合、最表層の最適膜厚は、光学膜厚 n×dで 1/4λ λ=500nmから600nmが適当である。この範囲から外れると反射率が上昇してくる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、光の散乱による画質の劣化が生ぜず、高画質化に対応することが可能となる低コストのグラデーション濃度分布を有するNDフィルタの製造方法、並びにこの製造方法により製造されたNDフィルタを有し光量の均一性の向上を図ることができる光量絞り装置及びカメラを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で得られたグラデーションNDフィルタを絞り羽根に取り付けた状態を示す斜視図。
【図2】本発明の実施例1に用いられる段階的に変化させた網点状マスクを示す図。
【図3】本発明の実施例2に用いられる段階的に変化させた網点状マスクを示す図。
【図4】本発明の実施例1におけるフィルタ製造の際のプレス抜き状態を説明する図であり、(a)は略三角形状の切りぬきパターンを示す図、(b)は切りぬかれた略三角形状のNDフィルタの構成を示す図。
【図5】本発明の実施例2におけるフィルタ製造の際のプレス抜き状態を説明する図であり、(a)は略三角形状の切りぬきパターンを示す図、(b)は切りぬかれた略三角形状のNDフィルタの構成を示す図。
【図6】本発明の実施例及び比較例を説明するためのPET基材とマスクのセット方法の概略図。
【図7】本発明の実施例及び比較例を説明するための蒸着NDフィルタの膜構成を示す図。
【図8】本発明を説明するための絞り装置を有する撮影装置の概略図。
【図9】本発明の実施例1における膜厚変化特性図。
【図10】本発明の実施例1における膜厚変化特性図。
【図11】本発明の実施例1における透過率特性図。
【図12】本発明の実施例1における反射率特性図。
【図13】本発明の実施例1における分光透過率を示す図。
【図14】本発明の本発明の実施例1における分光反射率を示す図。
【図15】本発明の実施例2における膜厚変化特性図。
【図16】本発明の実施例2における膜厚変化特性図。
【図17】本発明の実施例2における透過率特性図。
【図18】本発明の実施例2における反射率特性図。
【図19】本発明の実施例2における分光透過率を示す図。
【図20】本発明の実施例2における分光反射率を示す図。
【図21】本発明の実施例3における膜厚変化特性図。
【図22】本発明の実施例3における膜厚変化特性図。
【図23】本発明の実施例3における透過率特性図。
【図24】本発明の実施例3における反射率特性図。
【図25】本発明の実施例3における分光透過率を示す図。
【図26】本発明の実施例3における分光反射率を示す図。
【図27】比較例1における膜厚変化特性図。
【図28】比較例1における透過率特性図。
【図29】比較例1における反射率特性図。
【図30】比較例1における分光透過率を示す図。
【図31】比較例1における分光反射率を示す図。
【図32】比較例2における膜厚変化特性図。
【図33】比較例2における透過率特性図。
【図34】比較例2における反射率特性図。
【図35】比較例2における分光透過率。
【図36】比較例2における分光反射率。
【符号の説明】
1:NDフィルター
2:絞り羽根
806A,806B,806C,
806D:撮影光学系806を構成するレンズ
807:固体撮像素子
808:ローパスフィルター
811:NDフィルター
812,813:絞り羽根
814:絞り羽根支持板

Claims (7)

  1. 基板上に少なくとも2種類以上の膜を成膜してNDフィルタを製造するに際し、最表層以外の膜を連続的に膜厚が変化するグラデーション濃度分布を形成するための網点状のパターンを有するマスクを前記基板との距離が1mm〜50mmの範囲に設定した状態で成膜する工程と、最表層の膜を前記マスクを用いずに成膜する工程とを有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。
  2. 前記網点状のパターンを有するマスクは、該網点状のパターンの孔径と孔の中心間の距離が、段階的または無段階的に変化するマスクであることを特徴とする請求項1に記載のNDフィルタの製造方法。
  3. 前記最表層以外の膜に引き続いて前記最表層の膜を成膜した後に、成膜された前記基板を100℃から130℃の温度で空気中で熱処理する工程を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNDフィルタの製造方法。
  4. 前記最表層の膜を、光学膜厚n×d(但し;nは屈折率、dは機械膜厚)で1/4λ(λ=500nmから600nm)の一定膜厚に成膜することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のNDフィルタの製造方法。
  5. 前記屈折率nを、可視域の波長域で1.5以下とすることを特徴とする請求項に記載のNDフィルタの製造方法。
  6. 相対的に駆動されて絞り開口の大きさを可変する複数の絞り羽根と、該絞り羽根により形成された開口内の少なくとも一部に配置される光量調整のためのNDフィルタとを備えた光量絞り装置において、
    前記NDフィルタが、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたNDフィルタによって構成されていることを特徴とする光量絞り装置。
  7. 光学系と、該光学系を通過する光量を制限する請求項に記載の光量絞り装置と、該光学系によって形成される像を受ける固体撮像素子を有することを特徴とするカメラ。
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