JP4976698B2 - Ndフィルタ - Google Patents

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Description

本発明は、ビデオカメラやスチルビデオカメラ等に使用されるNDフィルタに関するものである。
濃度が連続的に変化するND(Neutral Density)フィルタの用途としては、例えば、表示パネルの濃度分布を補正する補正板として使用されたり、顕微鏡等に光を供給する光量調整用のフィルタとして使用されている。また、近年では、マイクロレンズアレイ作製用のフォトマスク等に使用されたり、多岐の分野において使用されている。
従来から、光量絞りは銀塩フィルム、或いはCCDやCMOSセンサのような固体撮像素子への入射光量を制御するために設けられており、被写界が明るくなるにつれ、より小さく絞り込まれる構造となっている。従って、快晴時や高輝度の被写界を撮影する際には、絞りは所謂小絞りとなり、ハンチング現象や光の回折現象等の影響も受け易いことから、像性能に劣化を生じさせる場合がある。
これに対する対策として、絞りの近傍にNDフィルタを配置したり、或いは絞り羽根にNDフィルタを貼り付けることにより入射光量の制御を行い、被写界の明るさが同一であっても、絞り開口部をより大きくできるような工夫がなされている。
また近年では、撮像素子の感度が向上するに従って、NDフィルタの濃度を濃くすることによって光の透過率を更に低下させ、高感度のCCD、CMOSセンサ等から成る撮像素子を使用しても、絞り開口部が小さくなり過ぎないようにしている。
しかし、このようにNDフィルタの濃度を濃くすると、NDフィルタを透過した光束と、NDフィルタの存在しない部分を通過した光束との光量差が大きく異なることになる。そのため、画面内で明るさが異なるシェーディング現象が発生したり、解像度が低下してしまうという欠点が生ずる。この欠点を解決するために、NDフィルタの濃度を連続的に変化させ、このNDフィルタを光軸上で移動させることにより、連続的に透過率を変化させる所謂グラデーション構造を採る必要がある。
一般的なNDフィルタの作製方法としては、基材中に光を吸収する有機色素又は顔料を混入して練り込むか、基材に光を吸収する有機色素又は顔料を塗布して作製される。これらの製造方法では、濃度が均一なNDフィルタは作製可能であるが、分光透過率の波長依存性が大きい欠点があり、更に濃度が連続的に変化するグラデーション勾配を有するNDフィルタを作製することは極めて困難である。
また特許文献1には、真空蒸着法により楕円形のグラデーションフィルタの製造方法が開示されている。しかし、この方法では例えば3mm程度の狭い範囲内において、透過率を3〜80%まで変化させたりすることができない等の欠点がある。
絞り羽根に貼り付けた単一濃度のNDフィルタを複数枚重ねることにより、濃度を変化させることは可能である。しかし、この方法ではNDフィルタの枚数が増加することによりコストアップとなる。更には、絞り羽根に複数枚のNDフィルタを貼り付けることによる占有体積が大きくなり、小型・省スペース化や軽量化に対応できない等の欠点が生ずる。
これらの理由により、本発明者らは特許文献2に示すように、連続的に濃度が変化するグラデーション勾配を有するNDフィルタを作製する方法を提案している。このNDフィルタを形成する基板には、任意形状への加工性、小型化・軽量化等の要望に伴い、シート状の合成樹脂材料を使用し、濃度が連続的に変化するグラデーション勾配を有する薄膜を成膜する。この合成樹脂材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、VC(塩化ビニル)、PC(ポリカーボネート)、PO(ポリオレフィン)等が使用できる。
連続的に濃度を変化させる方法としては、真空蒸着法やスパッタ法等により基板上に薄膜を成膜し、その積層される薄膜の膜厚分布の一部を順次に厚く、又は順次に薄くなるように制御する。或いは、吸収係数を順次に小さく、又は順次に大きくなるように制御する方法等も考えられている。
ただし、このような連続的に濃度が変化するグラデーション勾配を有するNDフィルタの場合には、連続的に濃度変化する全領域に渡り、反射率を低減させることは極めて困難である。そして、一部領域での反射光に起因して、フレアやゴーストが発生する等の、画像に悪影響を与えてしまう問題がある。
そこで、先の特許文献2、3等においては、ND膜の最表層に反射防止膜としてMgF2膜やSiO2膜等の低屈折率材料を略一定膜厚で成膜し、これにより連続的に濃度が変化する全領域においての反射率を低減することを図っていた。
特開平11−38206号公報 特開2004−117470号公報 特開2004−205777号公報
従来のNDフィルタは、最表層にMgF2膜やSiO2膜等の低屈折率材料から成る反射防止膜を略一定膜厚で成膜することにより、画質を向上させるために重要な反射率の低減を図っている。しかし、近年の固体撮像素子の更なる高感度化、高精細化等の高性能化に伴い、現在では同程度の反射率低減を図ったとしても、撮影画像にゴーストやフレア等の不具合を発生してしまう場合がある。
これは濃度Dが概ね0.3以上の領域においては、入射光そのものが可視光波長全域に渡って減衰されるため反射光が比較的少なく、画像を劣化させる程度の問題になることは殆どない。しかし、濃度Dが0.3以下の低濃度領域においては、入射光が減衰される割合が小さく、上述した特許文献では必ずしも低濃度領域の反射を十分に低減できず、画像劣化の原因となる場合がある。ここで、濃度Dは透過率Tから、D=log10(1/T)で求めた値である。
更に、これに加えて特許文献2、3に示すように、膜厚を連続的に変化させるグラデーション勾配を有するNDフィルタの場合には、濃度が濃い領域ほど必然的に膜厚が厚くなり、膜応力は当然大きくなる。上述の反射光対策として、最表層に更に反射防止層を追加して成膜した場合には、濃度Dが約0.8以上の濃度領域であると、クラックや皺が発生する可能性が極めて高くなってしまうという別の問題が生ずる。
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、クラックや皺等を発生させることなく、濃度が0.3以下程度の低濃度領域における可視波長領域の分光反射率を低減したNDフィルタを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係るNDフィルタの技術的特徴は、合成樹脂材から成る透明基板上に光減衰膜を成膜し、該光減衰膜により低濃度から高濃度に連続的又は段階的に濃度が変化する領域を有するNDフィルタにおいて、前記光減衰膜の上層に1つの材質から成る第1の反射防止膜を成膜し、前記低濃度領域の前記光減衰膜の上層に成膜した前記第1の反射防止膜の上層に、複数の材質から成る多層膜による第2の反射防止膜を成膜したことにある
また、本発明に係るNDフィルタの技術的特徴は、合成樹脂材から成る透明基板上に光減衰膜を成膜し、該光減衰膜により低濃度から高濃度に連続的又は段階的に濃度が変化する領域を有するNDフィルタにおいて、前記光減衰膜の上層に1つの材質から成る第1の反射防止膜を成膜した領域と、前記低濃度領域の前記光減衰膜の上層で前記第1の反射防止膜が成膜されない領域とを有し、前記第1の反射防止膜が成膜されない領域には複数の材質から成る多層膜による第2の反射防止膜を成膜したことにある。
本発明に係るNDフィルタによれば、クラックや皺等を発生させることなく、低濃度領域における可視波長領域の分光反射率を低減したNDフィルタを得ることができる。また、従来のNDフィルタの反射に起因したフレアやゴースト等による画像劣化の要因となる諸問題の解決を図ることができる。
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明のNDフィルタの基礎材となるグラデーション勾配を有するNDフィルタ基材の断面図を示している。PET基板1上には、真空蒸着法により誘電体膜と可視光吸収膜を交互に光減衰膜であるND膜2、反射防止膜としてMgF2膜3が順次に積層されている。
図2はこの膜構成図を示し、ND膜2として、誘電体膜であるAl23膜2aと可視光吸収膜であるTiOx膜2bとが交互に積層され、最表層にMgF2膜3が積層されている。
基板1には、ガラス転移点Tgが高く、かつ可視光の波長域において透明性が高く、更に吸水率が低く、曲げ弾性率が大きいPET樹脂を選択している。なお、PET樹脂以外にもポリオレフィン樹脂、PMMA、ポリカーボネート等を使用することも可能である。
図3はこのグラデーション勾配を有するNDフィルタ基材の濃度分布図を示しており、横軸に基板上の位置、縦軸を濃度とし連続的に濃度変化するグラデーション濃度分布を示している。真空蒸着法により基板1上に薄膜を成膜し、積層される薄膜の膜厚分布を制御することにより、濃度を連続的又は段階的に変化させる手段を選択している。また、真空蒸着法は膜厚を比較的容易に制御でき、かつ可視領域の波長で散乱が極めて小さいことから選択した。
連続的に濃度を変化させる方法としては、その他にも基板表面に所望の波長領域の透過を吸収する吸収剤を塗布することにより連続的に変化させる方法や、前述したように薄膜の膜厚分布や吸収係数を制御する方法等がある。
一般的には、これらの中で膜厚分布の一部を変化させる方法が最も正確に制御可能である。一般的なグラデーション勾配を有するNDフィルタ又は多濃度タイプのNDフィルタ作製方法としては、上述の真空蒸着法、スパッタリング法、IAD法、IBS法、イオンプレーティング法等の様々な方法により基板上に薄膜を成膜することができる。
図4は真空蒸着法により濃度分布を与えるために使用する基板とマスクの斜視図、図5は断面図を示している。材質厚75μmのPET基板1上に、複数枚の遮蔽板11a、11bから成るマスク11を斜設する。基板1とマスク11とが成す角度、マスク11を構成する遮蔽板11aと遮蔽板11bとの距離、基板1からマスク11の最も離れた部分の距離を適切に設定することにより、基板1上に所望の濃度変化を有する薄膜を成膜することが可能となる。
基板1にND膜2を成膜した後に、真空蒸着装置のチャンバから基板1上に設けたマスク11を真空雰囲気中において取り外す。そして、更に最表層に反射防止膜であるMgF2膜3を光学膜厚n×d(nは屈折率、dは機械膜厚)でλ/4(λ=540nm)成膜することにより、NDフィルタ基材を作製する。
最表層のMgF2膜3は反射率低減を目的としており、膜の屈折率nが可視域の波長域で1.5以下のものを選択し、具体的にはMgF2を使用した。最表層の反射防止膜にSiO2膜等を使用した場合でも、ほぼ同様のNDフィルタ基材を作製することが可能である。
ND膜2の膜厚により、濃度が連続的に変化するグラデーション勾配を有するNDフィルタ基材の場合には、通常では濃度が薄い、つまり透過率が高いほど反射率が高くなってゆく。これは濃度が濃いほど光の吸収が大きいため、入射光に対してND膜2を透過してから発生する反射光が、各光路でND膜2を再度透過することにより大きく減衰されるからである。更に、ND膜2を透過してから発生する反射に、基板1の面での反射や基板1の裏面での反射等を足し合わせた合計としての反射が小さくなる。これらの理由により、ND膜2の膜厚が薄い低濃度領域においては反射が比較的大きくなってしまい、この反射が画像に悪影響を与えてしまうことがある。
従って、最も反射率が高くなる最小濃度領域を最適に反射低減できるように、ND膜2の膜構成を設計する必要がある。そして、このND膜2の上層の全領域に渡って略一定膜厚の反射防止膜であるMgF2膜3を成膜することにより、グラデーション勾配を有する領域の反射を全体的に低減することが可能となる。
また、グラデーション勾配を有するNDフィルタ基材の別の成膜方法としては、図6に示すように真空蒸着法により基板1上に膜厚分布の一部を連続的に変化させたND膜2を成膜する。このND膜2上にND膜2と同様の方法で、マスク11を使用して更にMgF2膜3を成膜する。しかし、このMgF2膜3はND膜2と同様に均一な膜厚でなく傾斜膜のため、濃度傾斜領域全域としての反射特性が稍々劣るという問題がある。
このように、図4、図5で示すようなマスク11を用い、図6に示すように全層を膜厚変化させて成膜すると、反射防止条件が合わなくなり、反射率の上昇が生じ、画質上ではゴースト現象やフレア現象が発生してしまう場合がある。このことを考慮すると、MgF2膜3を成膜する際にはマスク11を取り外し、図1に示すようにND膜2の全面に渡って略一定膜厚となるように成膜することが好ましい。
NDフィルタ基板に皺やクラック等を生じさせることなく、全ての濃度領域全域において、できるだけ反射を低減することを目的とするには、最表層の反射防止膜は一定膜厚となる構成とすることが望ましい。しかし、濃度0.8以下の領域で別途に反射防止層等を設ける構成を前提とする場合には、濃度0.8以上での反射が悪影響を及ぼさない程度に納まれば、全層を濃度傾斜させることも可能である。
真空蒸着装置において、チャンバ内の真空雰囲気中でマスク11を取り除くには、特殊な機構が必要であることから、チャンバ内を真空状態を保持したまま、又は同レベルの真空状態においてマスク11を取り外すことは困難である。従って、チャンバ内を一度大気中に晒し、マスク11を取り外して再調整を実施する場合には、ND膜2の最表層である第8層のTiOx膜2bの酸化を防止するために、MgF2膜3を2回に分けて成膜することが好ましい。
例えば、第8層のTiOx膜2bの成膜終了後に、図7に示すように第8層のTiOx膜2bにMgF2膜3a、3bの2回に分けて成膜する。先ず、1回目に成膜するMgF2膜3aは、マスク11を設けた状態のまま、ND膜2上に濃度の最も濃い領域が最も厚く光学膜厚n×dでλ/32(λ=540nm)となるように成膜する。このMgF2膜3aを成膜したことにより、マスク11を取り外すためにチャンバ内を大気等に晒しても、第8層のTiOx膜2bの酸化を防止できる。なお、このMgF2膜3aの膜厚はλ/32に限定されず、第8層のTiOx膜2bの酸化を防止できる程度の厚さであればよい。
そして、マスク11を取り外した状態で、再びチャンバ内を真空状態として、MgF2膜3a上に光学膜厚n×dで7λ/32の2回目のMgF2膜3bを成膜する。MgF2膜3aは図4、図5で示すようなマスク11を使用して成膜したため、膜厚はND膜2と同様にグラデーション勾配を有する形状になる。しかし、それは最も厚い部分がλ/32の膜厚であり、マスク11を取り外した後に成膜した7λ/32の略一定膜厚のMgF2膜3bが支配的な膜厚となるため、MgF2膜3aの膜厚傾斜部の影響は殆ど受けずに、効率良く反射を抑制することができる。
図8に示すNDフィルタ基材においては、最表層のMgF2膜3aはND膜2の第8層のTiOx膜2bまでと同様に、マスク11を設けた状態のまま成膜する。次に、このMgF2膜3aの濃度傾斜と反対の傾斜を形成するように、マスク11を再調整し、更に濃度の均一な濃度領域には重ねて成膜されないようにマスク等で覆い、MgF2膜3a上の濃度傾斜領域にMgF2膜3cを成膜する。そして、MgF2膜3a、3cとを合計して全ての濃度領域に渡り、反射防止膜が略一定膜厚になるようにする。
同様に、図9に示すNDフィルタ基板においては、ND膜2の第8層のTiOx膜2bまでと同様のマスク11を設けた状態のまま、MgF2膜3aを最も厚い部分で光学膜厚n×dがλ/8となるように成膜する。次に、このMgF2膜3aの濃度傾斜と反対の傾斜を形成するように、マスク11を再調整し、最も膜厚の薄い部分の光学膜厚n×dがλ/8(λ=540nm)のMgF2膜3dを成膜する。これにより、MgF2膜3a、3dとを合計して全ての濃度領域に渡り、反射防止膜が略一定膜厚となるようにできる。
これらの図7〜図9に示すNDフィルタ基材は、図1に示すNDフィルタと比較すると、真空雰囲気中でマスク11を取り外すための特殊な機構を備えた真空蒸着膜を必要としない。更に、最表層の合計したMgF2膜3から成る反射防止膜は略均一な膜厚であるため、濃度傾斜領域の反射率を全体的に低減できる。
しかし、近年の固体撮像素子の高性能化に伴い、より反射率が低いNDフィルタが必要とされており、反射防止層には更なる低反射を実現する必要が生じている。要求される仕様によっては、反射防止対策をND膜2上の全領域に成膜するMgF2膜のみで行うのではなく、部分的に複数層から成る別の反射防止膜を付加して行う構成が必要とされる。
また、濃度を濃くするためにはND膜2の膜厚をより厚くする必要が生じ、濃度が変化する全領域に複数層の反射防止膜を成膜した場合には、反射率の低減が実現可能である。しかし、PET基板1を使用したNDフィルタの場合には、膜厚の厚い反射防止膜を蒸着すると熱応力により膜厚の厚くなる高濃度領域においてクラックや皺等が発生する虞れが生じ、別の問題が発生する可能性がある。
上述のような方法により製作されたNDフィルタは、全濃度領域においてNDフィルタの反射光に起因して発生する画像劣化の可能性を低減できている。しかし、低濃度領域においては、更に反射光の低減が求められている。
これらの理由から本実施例においては、先ず基板1上に最大濃度が1.0で濃度が連続的に変化するグラデーション勾配を有するND膜2を成膜し、最表層に図1、図6〜図9に示すような単層又は複数層のMgF2膜3を成膜してNDフィルタ基材を製作する。
更に本発明の実施例1では、図10に示すようにND膜2の可視波長領域の分光反射率が比較的大きく、膜厚が比較的薄い低濃度領域、例えば濃度0.3以下の領域のMgF2膜3上に、多層膜から成る反射防止膜4を成膜することにより反射防止機能を向上させている。なお、この反射防止膜4は図11に示すように、SiO2膜4aとTiO2膜4bとを交互に積層した5層構成の略一定膜厚であり、低濃度領域だけに成膜するように、部分的にマスキングして真空蒸着法により成膜している。
反射防止膜4の膜構成に関しては、本実施例では濃度が最も薄い部分の反射率を最も低減できるような膜構成としている。しかし、必ずしもこのような構成である必要はなく、NDフィルタに求められる仕様によって最適な設計は様々である。また、ND膜2の構成によっては、種々の組合わせを採用することができ、図6〜図9に示したNDフィルタ基材に対し、図12〜図15に示すように反射防止膜4を組み合わせることができる。
図16は実施例2におけるNDフィルタの断面図を示しており、先ずは実施例1と同様に基板1上にND膜2、MgF2膜3a、3bが積層されたNDフィルタ基材に、反射防止膜4が積層されている。即ち、ND膜2の例えば濃度0.3以下の領域に成膜するようにマスク11を再調整し、反射防止膜4を図11に示すような膜構成で連続的に膜厚を変化させて真空蒸着法により成膜している。
この反射防止膜4の膜厚分布はND膜2が薄くなると厚くなり、ND膜2の膜厚が厚くなると、反射防止膜4の膜厚は薄くなる構成とすることが望ましい。このような膜厚とすることにより、MgF2膜3bと反射防止膜4の膜厚段差による境界面での急激な位相差に起因する光学特性への悪影響を防止することができる。例えば、図10に示したNDフィルタと比較すると、全体的に緩やかな膜厚分布とすることができる。
また本実施例2においては、濃度0.3以下の領域に反射防止膜4を部分的に成膜したが、要求される仕様によっては、0.2〜0.8の範囲の濃度以下の領域においても反射防止膜4を成膜することは十分に考えられる。なお、濃度0.8以上の領域においては、上述したように皺、クラック等の別な問題が発生することを考慮して膜設計を行う必要がある。更に、このような場合には、合計の成膜層数が増加し、成膜時間も長くなることが懸念されるため、成膜による基板1への熱応力や膜応力の影響を考慮して膜設計等を行う必要がある。
実施例2においては、ND膜2上にMgF2膜3から成る反射防止膜と、図11に示す多層膜から成る反射防止膜4とを重ねて成膜した。しかし、更に反射率の低減を必要とする場合には、図17に示すように、基板1の反射防止膜4を成膜した面と反対側の面に、別途に反射防止膜5を設けることもできる。
この反射防止膜5の膜構成も様々とすることができ、例えば図12〜図16に示すNDフィルタの基板1の裏面に、図17と同様に反射防止膜5を成膜することも可能である。この反射防止膜5においても、膜構成が単層膜であったり、多層膜であったり、或いは成膜領域がND膜2の裏面全域であったり、一部領域とすることができる。
このような構成とすることにより、基板1の裏面で反射される光をこの反射防止膜5により減少させることができ、更に反射率を低減させることができる。
図18、図19は図10、図13のNDフィルタの改良例をそれぞれ示し、MgF2膜3a、3bを成膜する際に、所定濃度以下の領域をマスキングして成膜した後に、ND膜2上のMgF2膜3a、3bが成膜されなかった領域に反射防止膜4が形成されている。図10に示すように、MgF2膜3上に反射防止膜4を成膜する方法では、例えば更なる反射の低減を要求されて、反射防止膜4の積層数を増加した場合に、膜厚が厚くなることにより熱応力によりクラックが入る可能性があるのに対し、この方法ではその問題の発生を著しく低減することができる。
また、図20は図19のNDフィルタの更なる改良例を示しており、ND膜2上に成膜した反射防止膜であるMgF2膜3a、3bの合計の膜厚と、反射防止膜4の膜厚が同等の膜厚になるように成膜している。この方法によれば、膜厚段差による境界面での急激な位相差の発生に起因する光学特性への悪影響を低減することができる。
なお、NDフィルタ基材はND膜2と反射防止膜4を成膜した後に、温度110℃で1時間の熱処理を行う。110℃を選択した理由は、100℃未満では環境安定性向上の効果が不十分であり、130℃を超えると基板1の熱的劣化を生じて、膜にクラックが発生する等問題が生ずるためである。本実施例の条件下においては、熱処理の温度は110〜130℃の間が適当である。
更に、環境安定性を調べるため、上述の熱処理を施したNDフィルタを温度60℃、湿度85%で240時間の放置試験を行い、試験前後での透過率を測定すると、その差が0.2%以下と殆ど差は見られなかった。参考として、熱処理を行わないものを同様な環境試験を行うと、試験前後での透過率を測定すると2%前後増加した。
このような現象が起きる要因としては、真空蒸着時の基板温度が低いことが挙げられる。膜の封止密度は成膜時の基板温度が大きく影響し、温度が低いと封止密度が低くなり、水分・酸素等を透過し易く、そのため可視光吸収膜であるTiOx膜2bの酸化が促進される。更に、このTiOx膜2bを保護するAl23膜2a等の誘電体膜の保護効果が少ないこととの両方の影響から透過率が上昇するものと推測される。熱処理を行うと環境安定性が向上するのは、エージング効果であると考えられる。
また、基板1にガラス基板を用いる場合には、基板温度は200〜250℃、望ましくは300℃前後まで加熱して成膜できる。しかし、基板1が合成樹脂材の場合には、基板が熱収縮を起こさない温度で成膜する必要があり、基板1や成膜時間等の諸条件によっても異なるが、その基板温度は130℃未満に制約される。
図21はこのように作製されたNDフィルタの分光反射率のグラフ図を示す。濃度1.0、0.75、0.5、0.3、0.1におけるND膜面での可視波長領域の分光反射率を示しており、それぞれの濃度領域において、可視波長領域の分光反射率が4%以下となっている。
最大濃度1.0のグラデーション勾配を有するNDフィルタにおいて、例えば図1に示したようなNDフィルタ基材の場合に、ND膜面の可視波長領域における分光反射率は通常7〜9%程度となる。本実施例で作製したNDフィルタでは、分光反射率が大幅に低減されていることが分かる。
また、本実施例に示すNDフィルタは反射防止膜の層数等のパラメータを最適化することにより、更なる反射率低減が可能であり、外観においても皺やクラック等の発生はない。
本実施例では、濃度が連続的に変化するグラデーション勾配を有するNDフィルタの濃度0.3以下の領域全面に、反射防止4を成膜した場合を説明したが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、反射防止膜4を成膜する領域は濃度0.2以下の領域全面であったり、濃度0.4以下の領域全面であってもよい。また、NDフィルタの仕様により、濃度0.2以下の濃度領域全面を含む濃度0.8以下の任意の濃度領域であれば、皺やクラック等外観上の欠陥を生じさせることなく、反射防止膜4を成膜することができる。
上記各実施例においては、反射防止層を複数の材料から成る多層膜で実現しているが、反射を防止する特殊な表面加工を施した反射防止層としてもよい。
NDフィルタ基材の断面図である。 NDフィルタ基材の膜構成図である。 NDフィルタ基材の濃度分布図である。 基板とマスクの斜視図である。 基板とマスクの断面図である。 NDフィルタ基材の断面図である。 NDフィルタ基材の断面図である。 NDフィルタ基材の断面図である。 NDフィルタ基材の断面図である。 NDフィルタの断面図である。 反射防止膜の構成図である。 NDフィルタの断面図である。 NDフィルタの断面図である。 NDフィルタの断面図である。 NDフィルタの断面図である。 NDフィルタの断面図である。 NDフィルタの断面図である。 NDフィルタの断面図である。 NDフィルタの断面図である。 NDフィルタの断面図である。 NDフィルタの分光反射率のグラフ図である。
符号の説明
1 基板
2 ND膜
2a Al23
2b TiOx
3、3a、3b、3c、3d MgF2
4、5 反射防止膜
4a SiO2
4b TiO2
11 マスク

Claims (5)

  1. 合成樹脂材から成る透明基板上に光減衰膜を成膜し、該光減衰膜により低濃度から高濃度に連続的又は段階的に濃度が変化する領域を有するNDフィルタにおいて、前記光減衰膜の上層に1つの材質から成る第1の反射防止膜を成膜し、前記低濃度領域の前記光減衰膜の上層に成膜した前記第1の反射防止膜の上層に、複数の材質から成る多層膜による第2の反射防止膜を成膜したことを特徴とするNDフィルタ。
  2. 合成樹脂材から成る透明基板上に光減衰膜を成膜し、該光減衰膜により低濃度から高濃度に連続的又は段階的に濃度が変化する領域を有するNDフィルタにおいて、前記光減衰膜の上層に1つの材質から成る第1の反射防止膜を成膜した領域と、前記低濃度領域の前記光減衰膜の上層で前記第1の反射防止膜が成膜されない領域とを有し、前記第1の反射防止膜が成膜されない領域には複数の材質から成る多層膜による第2の反射防止膜を成膜したことを特徴とするNDフィルタ。
  3. 前記低濃度領域は濃度0.8以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のNDフィルタ。
  4. 前記第1の反射防止膜はMgF 2 から成り、前記第2の反射防止膜はTiO 2 とSiO 2 の積層から成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載のNDフィルタ。
  5. 請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載のNDフィルタを搭載したことを特徴とする光量絞り装置。
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