JP4164355B2 - 光量調整装置及びそれを用いた光学機器 - Google Patents

光量調整装置及びそれを用いた光学機器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の光学機器に好適な光量調整装置に関し、特に、画素ピッチの小さな撮像素子を用いたカメラの撮影レンズに利用しても光学性能の劣化を抑制することが可能な技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビデオカメラ等の光学機器の撮影光学系には、複数枚の絞り羽根で形成する開口径を変化させて光量を調整する光量調整装置(絞り装置)が使用されている。このような絞り装置では、高輝度被写体を撮影時に開口径が小さくなりすぎると光の回折による光学性能劣化が問題となる。
【0003】
そこで、明るい被写体条件でも開口径が小さくなり過ぎないようにするため、絞り羽根とND(Neutral Density)フィルターを併用した光量調整装置が提案され実用化されている。
【0004】
特許文献1には、絞り羽根で形成される開口内に位置するようにNDフィルターが絞り羽根に貼付けられ、NDフィルターはそれぞれ均一な透過率に設定された第1の領域の透過率と連続的に透過率が変化する第2の領域とを有し、前記絞り装置の絞り開口が設定された小絞り開口になるときに、前記フィルター部材の第1の領域だけが前記絞り羽根により形成される絞り開口内に位置することを特徴とした絞り装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、開放から所定の開口面積までは機械的な絞り羽根を移動させ、一定の絞り値以下の小絞り制御は濃淡によって透光度が連続的に変化するNDフィルターを透過率の高いフィルター部から順に開口に進入させる絞り装置が開示されている。
【0006】
特許文献3では、複数の濃度領域を有するNDフィルターの透過率による回折現象が与える光学性能への影響を説明し、対策を施した露出制御機構を有する撮像装置が開示されている。
【0007】
従来のこれらの提案においては、開放から小絞りに至るまでの中間絞り状態での光学性能劣化の主因は、絞り羽根により形成される開口部を覆うNDフィルター透過率の差に起因する回折の影響が支配的と考えられており、複数の濃度領域を有するNDフィルターの各領域の透過率や開口面積に着目した回折の影響への対策案が提案されていた。
【0008】
一方、中間絞り状態での光学性能劣化の原因は、NDフィルター透過率差に起因する回折の影響だけでなく、NDフィルターの厚み成分に起因する透過波面位相差も大きく影響している。
【0009】
絞り開口部の一部を厚みのあるフィルターが覆うと光学性能が劣化する現象は経験的に知られているが、フィルター厚み成分がどのように光学性能に影響するかを解析し、その具体的な対策をなした例は知られていない。
【0010】
NDフィルターの厚みが光学性能に与える影響への回避策として、特許文献4では、透明な部分と透過率が連続的または段階的に変化する部分を有するNDフィルターを固定の円形絞り開口を全て覆う状態で可動させて透過光量を調整する構成が提案されている。
【0011】
【特許文献1】
特登録2754518号
【特許文献2】
特開昭52−117127号公報
【特許文献3】
特開2000−106649号公報
【特許文献4】
特開平6−265971号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、同公報に記載された発明は、フィルター部材を通過する部分とフィルター部材を通過しない素通し部分との大きな位相差についてのみ着目したもので、この大きな位相差が収差となって結像性能を劣化させると記述されている。しかし、濃度変化を有するフィルター部材を通過する光の透過波面位相差については記述されておらず、実際に透過率変化のあるNDフィルターを実現するときに、透過率変化を与えるために生じるであろう微小厚み変化または微小屈折率変化による光の波長λ以下の微小な透過波面位相差についての問題提起と対策については何ら示されていない。
【0013】
本発明者の検討によれば、このような光の波長オーダー以下の微小な透過波面位相差が、ある条件下では光学性能に非常に大きな影響を与えていることが分かった。
【0014】
また、透過波面位相差が与える光学性能への影響と、NDフィルターの隣接する透過率領域の濃度差が与える光学性能への影響の出方が異なり、透過波面位相差と濃度差のこの2つの要素の相乗作用により、ある条件下で光学性能に大きく影響を与えていることも分った。
【0015】
そこで本発明は、光学系の光学性能劣化の少ない光量調整装置の実現を目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為、本発明の光量調整装置は、開口を形成するための絞り羽根と、該開口を通過する光の光量を減衰するためのフィルター部材とを備えた光量調整装置において、前記フィルター部材は透過率が連続的に変化するグラデーションND領域と透過率が80%以上で均一透過率の透明部領域とを有し、グラデーションND領域と透明部領域との境界部を通過する所定の波長λの光の位相差がλ/5以下であることを特徴としている。
【0017】
ここで、本発明における「所定の波長」とは、光量調整装置の使用状態によって適宜定めるものであり、例えば、使用波長帯域の中心波長などが用いられ、可視光域が使用波長帯域である場合には、λ=550nmであることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
具体的な例を示して本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は本実施形態の実施例1の絞り羽根とグラデーションNDフィルター(フィルター部材)の配置を示している。図1(a)、(b)において、1、2は絞り羽根で、1、2を相対的に移動させ絞り開口の状態を調整している。3はグラデーションNDフィルターであり、基板であるフィルム状の樹脂製フィルターベースの表面に透過光量を減衰させるためのND蒸着膜が楔状に傾斜膜として蒸着されている。図1(a)は部品側面図であり、図(b)は部品正面図である。図1(c)〜(f)は各開口の状態を示しており、(c)は開放F1.8状態、(d)は開放F3.3状態、(e)開放F5状態、(f)は閉切状態を示している。
【0020】
グラデーションNDフィルター3は、ND蒸着膜の膜厚が一定でND1.3(透過率5.0%)(透過率=10−ND濃度)のND領域5と、膜厚を連続的に変化させ、ND濃度がND1.2(透過率6.3%)からND濃度0.1(透過率79.4%)まで連続的に変化するグラデーションND領域6と、ND蒸着膜が蒸着されていない透過率90%の透明部領域7とを有している。
【0021】
透過光量を減衰させるためのND蒸着膜の膜構成を表1に示す。尚、各層の機械膜厚、光学膜厚は、ND領域における値である。
【0022】
【表1】
Figure 0004164355
【0023】
ND蒸着膜は23層構成で、透過率5%、濃度ND1.3の膜構成の例を示している。第1層から第22層までは可視光領域全域に渡り均一な透過率の減衰を行う役割をしており、第1層から第22層までの膜厚を比例縮小又は比例拡大することでグラデーションND領域においてND濃度を変化させることが可能である。
【0024】
但し、各層の光学膜厚がλ/4を超えると、傾斜膜で膜厚が変化するときに光学特性の変化が大きくなるので、各層の光学膜厚をλ/4以下に抑えることが好ましい。第23層は空気と接する最終層で、表面反射を防止するために設けている。また、望ましくは第23層は、膜厚が連続的に変化する傾斜膜ではなく、膜厚が一定であることが望ましい。
【0025】
図2に実施例1のグラデーションNDフィルタの断面図を示した。図2(A)では、フィルター部材であるフィルム状の樹脂製フィルターベース8の表面にND蒸着膜9が成膜されている。NDフィルターは、ND蒸着膜の膜厚が一定の領域であるND領域(断面A−A’)と、ND蒸着膜の膜厚が連続的に変化するグラデーションND領域(断面B−B’〜断面C−C’)と、ND蒸着膜の無い透明部領域(断面E−E’)とから構成されている。
【0026】
図2(A)では、ND蒸着膜の膜厚が一番厚いND領域は濃度ND1.3となっている。グラデーションND領域では傾斜蒸着膜によりND濃度1.2から0.1の範囲で連続的に変化させている。
【0027】
グラデーション領域において、ND濃度が低下するにつれ、傾斜膜の各層の膜厚は少なくなる。しかし、膜厚が少なくなりすぎると、多層膜の膜厚の制御が難しく、各層間の膜厚比や層構成を維持するのが困難になる。従って、例えば、グラデーションND領域でND濃度を1.2から0の範囲で連続的に変化させようとすると、ND濃度0.1以下の領域では、膜厚が少なく層構成や膜厚比が乱れ、分光特性が不安定になりやすい問題がある。
【0028】
そこで本実施例では、分光特性が不安定なND濃度0.1以下の領域を排除している。具体的には、成膜時に、図2(A)の10の領域を覆うようにフィルターベース8の表面にマスクを密着させて成膜を行うことにより、この領域に傾斜膜が成膜されるのを防いでいる。この結果、グラデーションND領域と透明部領域の境界部において、透過波面位相段差が生じるが、透過波面位相差はλ/5以下に抑えることで、光学性能の劣化を実施上問題ないレベルにしている。
【0029】
また、ND蒸着膜9の第23層は空気と接する最終層で、表面反射を防止するために設けている。グラデーション領域では、この第23層も傾斜膜となっており、この状態では、表面反射防止効果が不安定である。この対策として、図2(B)に示すように、ND蒸着膜の傾斜膜とは傾きが逆向きで、かつ傾きの絶対値が等しい逆傾斜反射防止膜11を最終層に再度蒸着し、最終層の膜厚を一定にして表面反射防止効果を安定させている。更に、透明部領域においても最終層を蒸着し、表面反射防止効果を得ている。
【0030】
この膜は濃度ND1.3で光学膜厚は787nm、機械膜厚は496nmである。光路長差は光学膜厚と機械膜厚との差291nmである。
【0031】
波長λ=550nmで計算すると、この膜厚段差部を透過する光の透過波面位相差は0.53λになる。ND濃度と膜厚はほぼ比例関係にあるので、透過波面位相差が1/5λに相当するND濃度は、
ND1.3×0.2λ/0.53λ≒ND0.5
となる。従って透過波面位相段差を1/5λ以下に抑えるためには、グラデーションND傾斜膜のカットする部分のND濃度はND0.5以下であれば良い。
【0032】
次に、本実施形態の実施例2について説明する。実施例2のNDフィルター断面概略図を図3に示す。図2と共通な部分は同一の符号を用いている。実施例2のNDフィルターは、ND領域(断面A−A’)のND濃度が1.5であり、グラデーションND領域(断面B−B’〜断面C−C’)ではND領域から透明部領域(断面E−E’)に向かうにつれ、ND濃度が1.5から0.5に連続的に変化している。ND蒸着膜9は23層構成であり、各層の材質は実施例1と同一である。また、各層の膜厚は、実施例1の各層の膜厚を1.5/1.3倍したものである。
【0033】
グラデーションND領域は濃度ND1.5からND0.5の傾斜膜を設定し、ND0.5以下の膜厚部分は成膜時にマスクでカットしている。マスクでカットした境界部分に透過波面位相差がλ/5生じる。
【0034】
次に、本実施の形態の実施例3について説明する。実施例3のNDフィルター断面概略図を図4に示す。図中、図2と共通な部分は同一の符号を用いている。実施例3のNDフィルターは、ND領域(断面A−A’)のND濃度が1.7であり、グラデーションND領域(断面B−B’〜断面C−C’)ではND領域から透明部領域(断面E−E’)に向かうにつれ、ND濃度が1.7から0.1に連続的に変化している。ND蒸着膜は23層構成であり、各層の材質は実施例1と同一である。また、各層の膜厚は実施例1の各層の膜厚を2.0/1.3倍したものである。
【0035】
グラデーションND領域は濃度ND1.7からND0.1の傾斜膜を設定し、ND0.1以下の膜厚部分は成膜時にマスクでカットしている。
【0036】
次に本実施形態の各実施例のグラデーションNDフィルターが光学性能にどのように効果があるかを説明する。
【0037】
撮像素子イメージサイズ対角3mm、画素ピッチ2.5μm用の撮影レンズを想定する。
撮影レンズの仕様は、焦点距離2.5mm、FNo.1.8とし、無収差の理想レンズを用いて説明する。
【0038】
レンズ断面図を図5に示す。無収差の理想レンズLに入射する光を絞りSが絞り込み、入射光束の開口径Dを調整する。入射光束は理想レンズLで集光され、焦点距離fの位置にある像面Iに結像される。
【0039】
この絞りSの開口形状を変化させると共に、絞り開口を通過する光量を減衰させるためのフィルター部材が絞り開口部にかかる面積を制御し光量調整を行う。
【0040】
この理想レンズでの軸上光学性能(MTF)が光量調整時にどのように変化するかを説明する。光学性能を示すMTF計算条件は、白色カラーウエイトでの波動工学的なMTF計算。評価空間周波数は、100本/mmとした。
【0041】
画素ピッチが2.5μmの撮像素子でのナイキスト周波数は1000/(2×2.5μm)=200本/mm。MTF計算で用いる評価空間周波数をナイキスト周波数の半分に設定した。
【0042】
無収差理想レンズでのNDフィルターを併用しない場合、2枚羽根絞りで絞り開口が開放状態F1.8〜小絞りF16まで絞り込んだ状態でのFNo.と光学性能を示すMTF値との関係を図6に示す。
【0043】
図中のグラフは左縦軸にMTF値、横軸に絞り開口FNo.、そして右縦軸にTNo.を示している。グラフの上側に絞り開口形状の概略イメージ図を示している。(A)は開放状態、(B)はF2.4状態、(C)はF3.3状態、(D)はF5状態、(E)はF8状態、(F)はF16状態の絞り羽根が作る開口状態を示している。
【0044】
無収差の理想レンズでは、絞り開放時の結像性能が最も高く、絞り込むにしたがって回折の影響で光学性能が劣化する。開放状態(A)ではMTF値は98%、少し絞り込みF2.4状態(B)では80%、更に絞り込みF3.3状態(C)では72%、F5状態(D)では50%、F8状態(E)では30%まで劣化する。更に絞り込みF16状態(F)ではMTF値は10%以下となりここまで絞り込むと評価空間周波数での被写体像が解像しない。このままではTNo.22程度の高輝度被写体には対応できない。
【0045】
次に、高輝度被写体に対応するための従来例を図7に示す。
【0046】
絞り羽根の一方にND濃度0.8(透過率15.8%)のNDフィルターを、絞り開口F5状態(D)で絞り開口を全て覆う大きさに設定し貼り付けている。図中の左上側に絞り羽根に貼り付けたNDフィルター部の断面概略図を示している。
【0047】
濃度0.8のNDフィルター(透過率15.8%)を併用することによりTNo.22の高輝度被写体でも絞り開口F9程度でMTF値は26%を確保できている。しかし、NDフィルターが絞り開口覆いきる手前のF3.3状態(C)から覆いきるF5状態(D)の間の状態でMTF値は30%まで光学性能が一旦大きく劣化する問題が発生する。
【0048】
従来、この光学性能劣化の主原因は濃度のあるNDフィルター部と絞り羽根で形成される素通し部分の開口部が小絞り状態となり回折の影響で光学性能が劣化すると考えられていた。
【0049】
しかし、本発明者の検討では、回折の影響だけでなく、NDフィルターのフィルターベース厚みによる大きな透過波面位相差の影響と蒸着膜厚程度の微小な透過波面位相差の影響が大きく影響していることが判った。
【0050】
ND濃度による回折の影響とフィルターベース厚による大きな透過波面位相差及び蒸着膜厚程度の微小な透過波面位相差による影響が光学性能へ与える影響について実例を示して説明する。
【0051】
図7に示した従来例のND0.8フィルター部をグラデーションNDに置き換えた場合、ND濃度の影響による回折の影響がどの程度光学性能改善に寄与するかを検討した。
【0052】
グラデーションNDは濃度ND0.2からND1.2に設定した例を図8に示す。MTF値のウイークポイントは、F3.3状態(C)とF5状態(D)の間に存在し、ウイークポイントでのMTF値は31%であまり改善が見られない。これはND濃度による回折の影響よりも、開口部に存在するNDフィルターベースの厚み段差部分による透過波面位相差の影響が光学性能を大きく劣化させているからである。
【0053】
次に図9に示す例は、従来例図7で示したND0.8フィルターに透明部を追加し、フィルターベースがF3.3状態(C)で開口を覆う設定とした。フィルターにはND0.8の蒸着ND部分の蒸着膜厚とほぼ等価な膜厚の透明部補正膜を施し、透明部分とND0.8部分を透過する光の透過波面位相段差が生じないように設定した。このタイプのNDフィルターの場合、絞り開放状態からフィルター厚みによる大きな透過波面位相差の影響を受けるので、開放状態(A)からF2.4状態(B)で光学性能が52%程度まで劣化するがフィルターが絞り開口を覆いきるF3.3状態(C)からF5状態(D)の間ではMTF値は50%以上あり、光学性能劣化が少ない。
【0054】
これは、ND0.8フィルター部分と絞り羽根が作る素通し部分の開口形状による小絞り回折の影響よりも、フィルターベース厚みによる大きな透過波面位相差の影響が大きいことを示している。フィルターベース厚みによる大きな透過波面位相差の影響だけでなく、光学膜厚程度の微小な透過波面位相差も光学性能を大きく劣化させることが本発明者の検討で明らかになった。
【0055】
図9に示した例の透明部補正膜がない場合を図10に示す。
【0056】
フィルター透明部とND0.8蒸着膜の境界部には透過波面位相段差が生じる。表1に示すND蒸着膜ND1.3設定で透過波面位相差0.53λであるので、ND0.8の膜厚段差で生じる透過波面位相差は0.33λになる。この微小な透過波面位相差が光学性能を大きく劣化させる様子を図10に示す。
【0057】
絞り開口F3.3状態(C)からND0.8蒸着膜が開口を覆いきるF5状態(D)の間でMTF値が23%まで大きく劣化する。絞り開口部をフィルターベースが全て覆いきっているので、影響しているのはND0.8蒸着膜厚による透過波面位相差である。
【0058】
本発明者の検討では、絞り開口の半分領域に微小な透過波面位相差が発生する場合、透過波面位相差がλ/2発生する場合が最も光学性能を劣化させることが判った。
この原理は、光を波として取り扱って説明する。絞り開口を通過する光線のうち、半分領域の光線の位相がλ/2ずれた状態では、結像点で一点に集まるべき光の半分領域の光の位相がλ/2位相ずれているため、結像点において波の打ち消し合いにより光の強度が結像点でゼロになる、しかし、光のエネルギーが消滅するわけではなく、結像点に集まるはずの光は、結像点の近傍に2点分離した点像となる。この現象のために光学性能が劣化する。
【0059】
透過波面位相段差が1λになると結像性能がある程度回復し、1.5λで再び劣化し、2λである程度回復する。透過波面位相差が2λから3λ程度までは周期的に振幅が減衰しながら変化する。透過波面位相差が数λ以上の場合は光学性能の変化は周期的には変化せず落ち着く、このときの光学性能劣化は透過波面位相差がλ/4発生した場合の値に近い。フィルターベース厚みによる大きな透過波面位相差による光学性能劣化がこの場合に相当する。
【0060】
一方、ND0.8蒸着膜による微小な透過波面位相差は0.33λであり、λ/4より大きく、最悪条件のλ/2に近いため、フィルターベース厚の影響よりも光学性能劣化が大きくなっている。
【0061】
上述した本実施の形態の各実施例においては、透過波面位相段差の改善に着目し、蒸着NDフィルターに傾斜膜によるグラデーションND領域を設定し、フィルターの透明部部分とグラデーションND領域との境界部の透過波面位相段差を小さくし光学性能劣化を低減している。
図11に実施例1のグラデーションNDフィルタを有する光量絞りのMTF値とTNo.を示す。
【0062】
フィルターの大きさは絞り開口F3.3状態(C)で覆いきるサイズに設定し、グラデーションND領域は濃度ND1.2からND0.2の濃度変化が、絞り開口F5状態(D)を覆いきるサイズに設定し、透明部とグラデーションND境界部の濃度差をND0.2としている。
開放状態(A)ではフィルター厚み境界部がほぼ開放の半分にあるのでMTF値が68%まで下がっているが、許容できるレベルである。絞りF2.4状態(B)でもMTF値49%を維持している。従来光学性能劣化が問題となっていたF3.3状態(C)からF5状態(D)の間での光学性能劣化は無く、MTF値は59%まで上がり良好な値を維持している。更に絞りF8状態(E)でTNo.22に相当し、そのときのMTF値は30%を維持している。
【0063】
次に、図12に実施例2のグラデーションNDフィルタを有する光量絞りのMTF値とTNo.を示す。
【0064】
グラデーションND領域のND濃度をND1.5〜ND0.5とした。透明部とグラデーションND領域の境界部にND濃度段差ND0.5存在する場合である。この境界部での透過波面位相差はλ/5存在する。
【0065】
絞りF3.3状態(C)からF5状態(D)の間でMTF値は22%まで劣化する。光学性能劣化の主原因は透明部とグラデーションND領域の境界部に透過波面位相差がλ/5存在するからである。この実施例からグラデーションNDを用いても境界部の透過波面位相差がλ/5以上存在すると光学性能向上の効果がないことがわかる。
【0066】
次に、図13に実施例3のグラデーションNDフィルタを有する光量絞りのMTF値とTNo.を示す。
【0067】
グラデーションNDのND濃度をND1.7〜ND0.2とした。
【0068】
開放状態(A)からF5状態(D)までMTF値は42%以上を維持しており良好である。ND濃度の濃い部分がND1.7(透過率2%)であるため高輝度被写体時TNo.22状態でも絞り開口はF6.8で、MTF値は45%を維持できている。しかし、ND濃度が1.7よりも濃くなりすぎると、中間絞り状態において開口部に透明部分と濃度ND1.7の部分が存在するため、撮影画面の上側と下側の光量に差が生じ、シェーディングと呼ばれる光量むらの問題が発生する。そのためグラデーションNDの濃度はND1.7以下の範囲で設定することが好ましい。
【0069】
次に、本実施の形態の実施例3について説明する。実施例3は、実施例1〜3のグラデーションNDフィルターを用いた光量調整装置を有する光学系の実施形態である。
【0070】
図14は、実施例1〜3で説明したグラデーションNDフィルターを用いた光量調整装置を適用した光学系の概略構成図である。
【0071】
図14において、15は屈折系、反射系、回折系等によって構成された撮影光学系、16は光学系10を通過する光を制限し、明るさを調整する絞り、12は光学系15によって形成される被写体像を受光面で受光し電気信号に変換するCCDやCMOS等の固体撮像素子(光電変換素子)である。本実施例において、絞り16には実施例1〜3で説明したグラデーションNDフィルターを用いた光量調整装置を用いている。
【0072】
このように、撮影光学系等の光学系の絞りとして、実施例1〜3で説明したグラデーションNDフィルターを用いた光量調整装置を用いることによって、絞り込んだときのNDフィルターの透過波面位相差による影響を少なくして画質の向上を図ることができる。また、画素ピッチの小さな撮像素子を用いることが可能となる。
【0073】
次に、本実施の形態の実施例5について説明する。実施例5は、実施例4で説明した撮影光学系を用いた撮影装置の実施形態である。
【0074】
図15において、20は撮影装置本体、15は実施例4で説明した撮影光学系、16は実施例1〜3で説明したグラデーションNDフィルターを用いた光量調整装置によって構成される絞り、12は撮影光学系15によって形成される被写体像を受光する固体撮像素子、13は撮像素子12が受光した被写体像を記録する記録媒体、14は被写体像を観察するためのファインダーである。ファインダー14としては、光学ファインダーや液晶パネル等の表示素子に表示された被写体像を観察するタイプのファインダーが考えられる。
【0075】
このように実施例4で説明した撮影光学系をビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像素子上に被写体像を形成するタイプの撮影装置に適用することにより、NDフィルターの透過波面位相差による影響を少なくして画質の向上を図ることができる。また、画素ピッチの小さな撮像素子を用いることが可能となる。
【0087】
【発明の効果】
本発明により、光学系の光学性能の劣化が少ない光量調整装置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の実施例1のフィルター部材と絞り羽根による開口形状を示す概略図
【図2】本実施形態の実施例1のフィルター断面説明図
【図3】本実施形態の実施例2のフィルター断面説明図
【図4】本実施形態の実施例3のフィルター断面説明図
【図5】本実施形態の実施例の効果を説明するために用いたレンズ断面図
【図6】本実施形態の実施例の効果を説明するために用いるレンズのNDフィルター無し状態での基準状態での開放から小絞りまでのMTF変化説明図
【図7】従来タイプの単濃度NDフィルター併用時の説明図
【図8】従来タイプのグラデーションNDフィルター併用時の説明図
【図9】透過波面位相差と回折の影響を確認するための説明図
【図10】透過波面位相差と回折の影響を確認するための説明図
【図11】本実施形態の実施例1の効果を説明する図
【図12】本実施形態の実施例2の効果を説明する図
【図13】本実施形態の実施例3の効果を説明する図
【図14】本実施形態の実施例4の光学系の説明図
【図15】本実施形態の実施例5の撮影装置の説明図
【符号の説明】
1 絞り羽根
2 絞り羽根
3 グラデーションNDフィルタ(フィルター部材)
5 ND領域
6 グラデーションND領域
7 透明部
8 フィルター部材
9 ND蒸着膜
11 逆傾斜反射防止膜
S 絞り
L 理想レンズ
D 入射光束の開口径
I 像面
f 焦点距離

Claims (10)

  1. 開口を形成するための絞り羽根と、該開口を通過する光の光量を減衰するためのフィルター部材とを備えた光量調整装置において、前記フィルター部材は透過率が連続的に変化するグラデーションND領域と透過率が80%以上で均一透過率の透明部領域とを有し、前記グラデーションND領域と前記透明部領域との境界部を通過する所定の波長λの光の位相差がλ/5以下であることを特徴とする光量調整装置。
  2. 前記グラデーションND領域と前記透明部領域との境界部にはND濃度0.1以上0.5以下の濃度段差を有することを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。
    ここで、透過率とND濃度の関係は
    透過率=10 −ND濃度
    波長λ=550nm
    である。
  3. 前記グラデーションND領域は、誘電体多層膜より構成され、前記誘電体多層膜の厚みを連続的に変化させることによりND濃度を連続的に変化させていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調整装置。
  4. 前記グラデーションND領域はND濃度0.1から1.7の範囲でND濃度が連続的に変化していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光量調整装置。
  5. 前記誘電体多層膜の各層の光学膜厚はλ/4以下であることを特徴とする請求項3に記載の光量調整装置。
  6. 前記所定の波長λは使用波長帯域の中心波長であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光量調整装置。
  7. 前記所定の波長λは550nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の光量調整装置。
  8. 請求項1〜7いずれか1つに記載の光量調整装置を有することを特徴とする光学系。
  9. 請求項8に記載の光学系を有することを特徴とする撮像装置。
  10. 請求項8に記載の光学系と光電変換素子とを有することを特徴とするデジタルカメラ。
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