JP2004253892A - 光量調整装置 - Google Patents

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Yasunori Murata
安規 村田
Daisuke Ito
大介 伊藤
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Abstract

【課題】ND蒸着膜の合せ目誤差による光学性能劣化を低減した光量調整装置を実現すること。
【解決手段】絞り羽根S11,12によって形成された開口を通過する光の光量を減衰するためのNDフィルターP1を備えた光量調整装置において、NDフィルターP1は、隣接する領域の濃度差が0.5以下であり、隣接する領域を透過する所定の波長λの光の位相差が{n±1/5}λ以下である複数の領域N11,N12,N13を有し、隣接する領域間の境界の隙間が無くなるように、各領域を構成する光学膜の重なり量を絞りF4の絞り開口換算直径に対し0%以上10%以下とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮影装置に好適な光量調整装置に関し、画素ピッチの小さな撮像素子においても光学性能の劣化を抑制することが可能な技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビデオカメラ等の撮影装置の撮影光学系には、複数枚の絞り羽根で形成する開口径を変化させて光量を調整する光量調整装置が使用されている。このような絞り装置では、開口径が小さくなりすぎると光の回折による光学性能劣化が問題となる。
【0003】
そこで、明るい被写体条件でも開口径が小さくなり過ぎないようにするため、絞り羽根とND(Neutral Density)フィルターを併用した光量調整装置が提案され実用化されている。
【0004】
特許文献1には、絞り羽根で形成される開口内に位置するようにNDフィルターが絞り羽根に貼付けられ、NDフィルターはそれぞれ均一な透過率に設定された複数の領域を有し、開口の外側から内側に向かって順に透過率が大きくなるよう設定した絞り装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、開放から所定の開口面積までは機械的な絞り羽根を移動させ、一定の絞り値以下の小絞り制御は濃淡によって透光度が連続的に変化しているNDフィルターを透過率の高いフィルター部から順に開口に進入させる絞り装置が開示されている。
【0006】
特許文献3には、複数の濃度領域を有するNDフィルターの透過率が与える光学性能への影響を説明し、対策を施した露出制御機構を有する撮像装置が開示されている。
【0007】
従来のこれらの提案においては、開放から小絞りに至るまでの中間絞り状態での光学性能劣化の主因は、絞り羽根により形成される開口部を覆うNDフィルター透過率の差に起因する回折の影響が支配的と考えられており、複数の濃度領域を有するNDフィルターの各領域の透過率や面積に着目した回折の影響への対策案が提案されていた。
【0008】
一方、中間絞り状態での光学性能劣化の原因は、NDフィルター透過率差に起因する回折の影響だけでなく、NDフィルターの厚み成分に起因する透過波面位相差も大きく影響している。
【0009】
絞り開口部の一部を厚みのあるフィルターが覆うと光学性能が劣化することは経験的に知られているがどのように光学性能に影響するかを解析し、その具体的な対策をなした例は知られていない。
【0010】
NDフィルターの厚みが光学性能に与える影響への回避策として、特許文献4では、透明な部分と透過率が連続的または段階的に変化する部分を有するNDフィルターを固定の円形絞り開口を全て覆う状態で可動させて透過光量を調整する構成が提案されている。
【0011】
しかしながら、特許文献4に記載された発明は、フィルター部材を通過する部分としない部分との大きな位相差についてのみ着目したもので、実際に透過率変化のあるNDフィルターを実現するときに、透過率変化を与えるために生じるであろう微小厚み変化または微小屈折率変化による光の波長λ以下の微小な透過波面位相差についての問題提起と対策については何ら示されていない。
【0012】
【特許文献1】
特許公報第2592949号
【特許文献2】
特開昭52−117127号公報
【特許文献3】
特開2000−106649号公報
【特許文献4】
特開平6−265971号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者の検討によれば、このような光の波長オーダー以下の微小な透過波面位相差の影響が、ある条件下では光学性能に非常に大きな影響を与えていることが分かった。
【0014】
また、透過波面位相差は与える光学性能への影響と、NDフィルターの隣接する異なる透過率の領域の濃度差が与える光学性能への出方が異なり、透過波面位相差と濃度差のこの2つの要素の相乗作用により、ある条件下で光学性能に大きく影響を与えていることも分かった。
【0015】
また、実際に複数の透過率領域を有するNDフィルターを透過率の異なる薄膜により製造する場合、隣接する薄膜と薄膜との境界部の合わせ目に微小な「重なり」や「隙間」が製造誤差として発生する。この薄膜の合わせ目の微小な誤差がある条件下で光学性能に大きく影響を与えていることも分かった。
【0016】
本発明は、絞りと、NDフィルターのような透過光を減衰させるフィルター部材とを併用して光量調整を行なう光量調整装置において、複数の透過率領域を有するフィルター部材の隣接する濃度差及び微小な厚み成分の影響、そして隣接する薄膜の合わせ目の影響による光学性能劣化を低減することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、開口を形成するための絞りと、その開口を通過する光の光量を減衰するためのフィルター部材を備えた光量調整装置において、フィルター部材は段階的に透過率が異なる複数の領域を有し、複数の領域のうち隣接する領域の濃度差を0.5以下、隣接する領域を透過する所定の波長λの光の位相差を{n±1/5}λの範囲とすると共に、隣接する領域間の境界の隙間が無くなるように、各領域を構成する光学膜の重なり量を絞りF4の絞り開口換算直径に対し0%以上10%以下に設定している。
【0018】
なお、濃度は透過率を用いて「濃度=−log(透過率)」で表せる。
【0019】
ここで、本発明における「所定の波長」とは、光量調整装置の使用状態によって適宜定めるものであり、例えば、使用波長帯域の中心波長などが用いられ、可視光域が使用波長帯域である場合には、λ=550nmであることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
本実施形態の光量調整装置(絞り装置)の説明をする前に、透過波面位相差が像に対してどのような影響を与えるかについて説明する。
【0021】
まず、絞り開口部の一部を厚みのあるフィルターが覆うと光学的にどのような現象が発生するかについて図9を用いて説明する。
【0022】
図9(a)〜(e)は、無収差の理想レンズLの前方(物体側)にフィルターPと開口絞りSを配置し、波長λの単色光の平面波である平行光線が入射した場合の幾何光学的な結像点I近傍の点像強度分布Qを示している。
【0023】
図9(a)はフィルターPが厚みゼロで透過波面に影響を与えていない状態である。この場合、強度分布QはFナンバーFと光線の波長λの関係による回折像となる。(参照:「レンズ設計のための波面光学」草川徹著、東海大学出版会)
絞りSが円形開口の場合、半径が1.22Fλの1つの点像が結像され、その周りにリング状の弱い光の回折光が形成される。ここで、絞りSの開口の半分に相当するフィルターPの紙面下側の領域の厚みを微小量増加させ、図9(b)に示すように透過波面位相差が(1/4)λになるよう設定すると、強い強度の点像の横に小さな強度の点像が出現する。
【0024】
更にフィルターPの下側領域の厚みを増加させ、図9(c)に示すように透過波面位相差が(2/4)λになるよう設定すると、強度分布Qは1つの点像にならず紙面内で上下方向に分離した2点の像強度分布になる。これは、幾何光学的な結像点Iに集光するべき光のうち、瞳の紙面上側半分を通過する光の波面と紙面下側半分の波面の位相が(1/2)λずれているため、波動光学的には波の打ち消し合い現象が発生し、結像点I上での強度がゼロになってしまうからである。その一方でエネルギー保存法則により結像点Iに集光するべき光エネルギーが消失することはないので、結像点Iの紙面上下方向に分散され2つの点に集まることになる。
【0025】
更にフィルターPの下側領域の厚みを増加させ、図9(d)に示すように透過波面位相差が(3/4)λになるよう設定すると、2点像の上側の強度が弱まり下側の強度が強くなる。
【0026】
更にフィルターPの下側領域の厚みを増加させ、図9(e)に示すように透過波面位相差が(4/4)λになるよう設定すると、強度分布Qは再び1つの点像の回折像になり図9(a)と同様な状態に戻る。
【0027】
更にフィルターPの下側領域の厚みを増加させると、強度分布Qは透過波面位相差に応じて周期的に変化を繰り返すことになる。
【0028】
図9(c)に示した透過波面位相差が(1/2)λの場合に分離する2点像の間隔ΔyはΔy≒2Fλの関係があり、Fナンバーと波長λに比例する。例えばFナンバーF=4で波長λ=550nmの場合は、2点像の間隔Δy≒4.4μmになる。これは2点分離のローパスフィルターと同じ原理で、カットオフ周波数が1/(2Δy)=114本/mmのローパスフィルターをかけた場合と同じような効果が発生し、光学系のMTFが劣化することを意味している。
【0029】
光学計算で無収差の理想レンズを設定し、図9(a)〜(e)の状態の点像強度分布を計算した結果を図10〜14に示す。図10〜14は、それぞれ、単色光λ=550nm、FナンバーF=2の円形絞りという条件で、絞り開口の半分の領域の透過波面位相差が(0/4)λから(4/4)λまで(1/4)λずつ増加するようにフィルター厚を増加させた場合の点像強度分布である。図10〜14において、(a)〜(c)は点像強度分布をそれぞれ鳥瞰図示、上面図示、側面図示したものである。
【0030】
ひとつの波長からなる単色光の場合は、フィルター厚の変化に伴う透過波面位相差に応じて結像点Iの強度分布が周期的に変化することが図10〜14からも分かる。
【0031】
ところで、実際に撮影系で使用される光は単色光ではなく、種々の波長の光が混合した白色光である。図10〜14と同じ条件設定で白色光の点像強度分布を計算した結果を図15〜19に示す。なお、白色光としては、標準的な比視感度に合わせて可視光400nm〜700nmの範囲で550nm近傍に感度ピークをもつカラーウエイトを設定している。
【0032】
波長λ=550nmでの透過波面位相差がゼロλから1λまでの点像強度分布の変化は、白色光の場合も単色光の場合とほぼ同じように、点像が1点から2点に分離し再び1点に変化することが図15〜19から分かる。
【0033】
図17は、波長λ=550nmでの透過波面位相差が(1/2)λのとき、白色光の強度分布が2点分離像になった状態を示している。前述したように、2点分離像の分離幅はFナンバーと波長λに比例するので、波長の長い赤い光の2点分離像の分離幅は広く、逆に波長の短い青い光の2点分離像の分離幅は狭くなる。したがって、図17に示した白色光の2点分離像は色にじみをもった像になっている。単色光の場合は2点分離像の中間の谷間の部分の強度はゼロになるが、白色光の場合は谷間の部分の強度は色にじみの影響でゼロにはならない。
【0034】
図19は、波長λ=550nmでの透過波面位相差がちょうど(4/4)λ=1λのときの白色光の点像強度分布を示している。フィルターを透過する光の位相差は波長によって異なり白色光全ての波長の位相差が1λにはならないため、図19(b)から明らかなように、点像強度分布は完全な円形にならず上下方向に少し伸びた楕円形状になっている。
【0035】
このように白色光の場合、透過波面位相差が略2λ以下の比較的小さい領域であれば、単色光の場合と同様に結像点Iの強度分布が周期的に1点になったり2点になったりする。しかしながら、透過波面位相差が数λ以上の大きな領域では、透過波面位相差の波長によるずれが大きくなり、単色光とは点像強度分布に対して異なる挙動を示すことになる。これについて次に説明する。
【0036】
波長λ=550nmでの透過波面位相差が5.5λと6λ発生した場合の単色光と白色光の点像強度分布の違いを計算した結果を図20〜23に示す。
【0037】
図20は単色光で位相差5.5λ発生条件での単色光点像強度分布、図21は白色光での点像強度分布である。
【0038】
図22は単色光で位相差6λ発生条件での単色光点像強度分布、図23は白色光での点像強度分布である。
【0039】
単色光の場合、図20に示した透過波面位相差5.5λでは(1/2)位相ずれているため図12と同様に2点に分離した強度分布を持つが、白色光の場合は既に2点像とはならない。各波長の位相差が全て(1/2)位相ではなく波長による位相差が大きくなり、図21に示すように位相差が存在する方向(図21の上下方向)に伸びた楕円形状の1つの点像強度分布となる。
【0040】
次に透過波面位相差6λの場合を見ると、単色光の場合は丁度位相が合った状態なので、図22に示すように1点の円形の点像強度分布になる。白色光の場合は、図23に示すように位相差が存在する方向(図23の上下方向)に伸びた楕円形の強度分布になっている。
【0041】
図21と図23の強度分布を比較すると、白色光の場合は透過波面位相差が5.5λから6λに変化してもほとんど点像強度分布に変化がないことが分かる。これは、絞り開口である瞳面での透過波面位相差が略2λ以下の微小な場合と5λ以上の大きな場合とで、透過波面位相差が光学性能へ与える影響が白色光では大きく異なっていることを示している。
【0042】
NDフィルターを用いた光量調整装置において、透過波面位相差が略2λ以下の領域とは、NDフィルター基板が開口を全て覆っている状態で、NDフィルター基板上での光学薄膜程度の厚みによって生ずる位相差を意味している。この領域では透過波面位相差はnλ(n=0,1)から{n+(1/2)}λに変化するとき光学性能が急激に劣化し、{n+(1/2)}λから(n+1)λに変化すると光学性能がある程度まで回復する。
【0043】
一方、透過波面位相差が5λ以上の領域とは、NDフィルター基板の端縁部が絞り開口に掛かっている状態でのNDフィルター基板自身の厚みによって生ずる位相差などを意味しており、この領域では多少の透過波面位相差が変動しても光学性能はあまり変化しない。
【0044】
これに関して、光学性能評価としてMTF値を用い、透過波面位相差との関係がどのようになっているかを図24を用いて説明する。ここではNDフィルターの透過率に起因する回折の影響は考慮せず、フィルターの厚み成分に起因した透過波面位相差によるMTF値の変化のみに限定して話を進める。
【0045】
図24は、絞り開口の下側半分領域のフィルター厚みをゼロから徐々に増加させ、透過波面位相差を6λまで変化させた場合の無収差理想レンズ系での白色光の波動光学的MTF計算値である。
【0046】
図24(a)は空間周波数50本/mm、図24(b)は空間周波数100本/mmの白色MTF値をグラフ表示している。グラフの縦軸はMTF値、横軸は波長λ=550nmでの透過波面位相差である。円形開口のFナンバーがF1,F1.4、F2、F2.8、F4、F5.6,F8の状態での各MTF値をグラフに示している。
【0047】
ここで、MTF計算で評価する空間周波数について説明する。撮像素子の画素ピッチがPμmの場合、この撮像素子が解像できる限界の空間周波数は1/(2×P)までである。通常この限界の空間周波数近傍よりも高い周波数はモアレや偽色信号の原因となるためローパスフィルターでカットする。画質評価として重要な空間周波数は撮像素子の限界周波数の半分程度である。
【0048】
そこで、評価空間周波数=1/(4×P)と定義し、撮像素子の画素ピッチが5μmの場合は50本/mm、画素ピッチが2.5μmの場合は100本/mmを評価空間周波数とした。
【0049】
例えば、有効画素数38万画素、受光素子画面対角寸法4.5mmのビデオカメラ用の撮像素子の場合、画素ピッチは約5μmで評価空間周波数50本/mmになり、垂直方向テレビジョン解像度に換算すると270TV本に相当する。有効画素数が同じ条件で受光素子画面対角寸法が2.25mmの撮像素子の場合、画素ピッチは約2.5μmで評価空間周波数100本/mmとなる。この場合も垂直方向テレビジョン解像度に換算すると270TV本に相当する。
【0050】
透過波面位相差が光学性能へ与える影響についての説明に話を戻す。
【0051】
評価空間周波数における目標MTF値を仮に70%以上と設定する。なお、ここでのMTF計算は、NDフィルター透過率を考慮していないことと無収差理想レンズ系であることを考慮して少し高めの値を目標MTF値に仮設定しているが、この値は目安であり絶対的な数値目標ではない。
【0052】
まず、図24(a)に示す空間周波数50本/mmでの白色MTF値の説明をする。
【0053】
F8まで開口を絞り込んだ状態での透過波面位相差がゼロλの場合はMTF値72%を確保しているが、透過波面位相差が(1/2)λになるとMTF値は21%まで急激に劣化する。更に透過波面位相差を増加させ1λの状態でMTF値は62%まで回復する。透過波面位相差を更に増加させるとMTF値は振動しながら変動し、透過波面位相差が5λ以上でMTF値42%程度に安定する。F8状態で目標MTF値を満足させるためには透過波面位相差をほぼゼロλ近傍設定にする必要がある。
【0054】
F5.6状態をみると、透過波面位相差ゼロλではMTF値80%を確保しているが、透過波面位相差(1/2)λ状態で44%まで劣化し、透過波面位相差1λでMTF値76%まで回復するが、その後振動しながら透過波面位相差5λ以上でMTF値61%程度に安定する。
【0055】
F4状態をみると、透過波面位相差がゼロλの場合はMTF値85%、透過波面位相差(1/2)λ発生時は58%まで劣化し、透過波面位相差1λでMTF値82%まで回復するが、その後振動しながら透過波面位相差5λ以上でMTF値72%に安定する。
【0056】
F2.8状態をみると、透過波面位相差がゼロλの場合はMTF値90%、透過波面位相差(1/2)λ発生時でも71%を確保し、透過波面位相差1λでMTF値88%まで回復し、その後振動しながら透過波面位相差5λ以上でMTF値80%に安定する。
【0057】
F2.8よりも明るい開口絞り状態であれば透過波面位相差の影響でMTF値が70%よりも下がることがない。
【0058】
次に、図24(b)に示す空間周波数100本/mmでの白色MTF値の説明をする。
【0059】
F8まで開口を絞り込んだ状態では回折の影響で、MTF値は45%まで劣化し、透過波面位相差が5λ以上でMTF値5%程度まで劣化してしまう。F8状態では目標MTF値を満足させることは不可能である。
【0060】
F5.6状態をみると、透過波面位相差ゼロλでMTF値61%、透過波面位相差(1/2)λ状態で6%まで劣化し、透過波面位相差1λでMTF値53%まで回復するが、その後振動しながら透過波面位相差5λ以上でMTF値27%程度に安定する。F5.6状態でもまだ回折の影響が大きく目標MTF値を満足させることはできない。
【0061】
F4状態をみると、透過波面位相差ゼロλではMTF値72%を確保しているが、透過波面位相差(1/2)λ状態で21%まで劣化し、透過波面位相差1λでMTF値66%まで回復するが、その後振動しながら透過波面位相差5λ以上でMTF値45%程度に安定する。F4状態で目標MTF値を満足させるには透過波面位相差はゼロλ近傍に設定する必要がある。ということは絞り開口F4状態でNDフィルターを挿入するとフィルター厚みによる大きな透過波面位相差が発生し目標MTF値を満足できなくなる。
【0062】
F2.8状態をみると、透過波面位相差ゼロλではMTF値80%を確保しているが、透過波面位相差(1/2)λ状態で43%まで劣化し、透過波面位相差1λでMTF値76%まで回復するが、その後振動しながら透過波面位相差5λ以上でMTF値60%程度に安定する。
【0063】
F2状態をみると、透過波面位相差ゼロλではMTF値85%を確保しているが、透過波面位相差(1/2)λ状態で58%まで劣化し、透過波面位相差1λでMTF値73%まで回復するが、その後振動しながら透過波面位相差5λ以上でMTF値71%程度に安定する。
【0064】
F1.4状態をみると、透過波面位相差ゼロλではMTF値90%を確保しているが、透過波面位相差(1/2)λ状態で70%まで劣化し、透過波面位相差1λでMTF値88%まで回復し、その後振動しながら透過波面位相差5λ以上でMTF値89%程度に安定する。
【0065】
絞り開口部にフィルターが挿入されフィルター端縁部が開口中央に位置する状態は透過波面位相差が5λ以上の状態である。この透過波面位相差状態において、評価空間周波数が50本/mmの場合はF4まで絞り込んでもMTF値70%を確保することができる。一方、評価空間周波数が100本/mmの場合は、F2まで開口を広げなくてはMTF値70%を確保することができない。
【0066】
ところで、NDフィルターとしては、材料の中に光を吸収する有機色素または顔料を混ぜ練り込むタイプのものと、材料の表面に光学薄膜を蒸着するものとが知られている。練り込みタイプNDフィルターの特徴は、均一な濃度のフィルターを大量に安価で加工可能な点であるが、蒸着タイプNDフィルターに比べて分光透過率の波長依存性が劣るため、撮影装置用の絞り装置として用いられるNDフィルターとしては蒸着タイプが優れている。蒸着タイプNDフィルターは、金属膜や誘電体膜を複数層重ねることで分光透過率の波長依存性が少なくかつ反射防止膜としての作用も併せ持たせることが可能である。
【0067】
蒸着タイプNDフィルターを用いて濃度を段階的に複数領域設定した例を図28に示す。図中、P3は蒸着タイプNDフィルターで2種類の濃度領域を持った例を示している。フィルター基板B3の表面全面にND膜N31を蒸着し、裏面の異なる面積領域にND膜N32を蒸着している。この場合、図示しているように裏面のND蒸着膜境界部でND膜厚の段差に起因する透過波面位相差が発生する。
【0068】
図24において透過波面位相差が略2λ以下の領域とは、この膜厚の段差などに起因した微小な透過波面位相差が存在する場合を意味している。
【0069】
次に、絞り開口部をNDフィルターが順次覆っていった場合、濃度差が光学性能へ与える影響、透過波面位相差が光学性能へ与える影響、そして濃度差と透過波面位相差の双方の相乗作用が光学性能へ与える影響について説明する。
【0070】
単純化モデルとして、収差のない理想レンズを想定し、絞り開口部は正方形を45度傾けた形状でF4に開口を絞った状態とする。この絞り開口部をNDフィルターの濃度差が存在する境界、透過波面位相差が生ずる境界、又はその双方が存在する境界が順次移動し、濃度の高い(透過率が低い)領域、所定の厚みを有する領域、その双方を備えた領域が絞り開口を覆っていく状態を計算上で設定する。図25〜図27に、これらの領域の開口部に掛かる比率が0割から10割まで変化したときの空間周波数50本/mmの白色MTF計算値を示す。
【0071】
図25は境界の前後の領域に濃度差のみを設定し、濃度差0、濃度差0.5、濃度差1.0、濃度差1.5の場合の計算値を示している。ここで、濃度と透過率の関係は「濃度=−log(透過率)」である。したがって、
濃度0.0は透過率100%
濃度0.5は透過率32%
濃度1.0は透過率10%
濃度1.5は透過率3%
である。
【0072】
境界前後の領域の濃度差によって、MTF値は濃度の高い領域が絞り開口部を7割から8割覆った状態で最も低下することが分かる。これは絞り羽根と濃度差が存在する境界で形成される濃度の低い(透過率の高い)部分の開口形状が小絞り状態となり、回折の影響でMTF値の劣化が発生しているためである。
【0073】
また、濃度差0.5程度ではMTF値の劣化は少なく、濃度の高い領域が絞り開口部を7割から8割覆った状態でも目標の70%以上を十分確保できている。一方、濃度差0.5を越えるとMTF値は大きく劣化しはじめ、濃度の高い領域が絞り開口部を7割から8割覆った状態で、濃度差1.0ではMTF値68%、濃度差1.5ではMTF値53%まで急激に低下する。
【0074】
図26は境界の前後の領域に透過波面位相差のみを設定し、位相差0λ、0.25λ、0.5λ、6λ、0.2λの状態での計算値を示している。
【0075】
境界前後の領域の透過波面位相差によって、境界を挟んだ一方の領域に対して所定の位相差を有する他方の領域が絞り開口部を丁度5割覆った状態(境界前後の領域のそれぞれが開口部を占める面積が等しくなった状態)でMTF値が最も低くなることが分かる。そして、この5割覆った状態において、位相差が0λの場合、0.25λの場合、そして0.5λの場合を比較すると、位相差が大きくなるにつれてMTF値が下がっている。このような位相差変化によるMTF値の変化は、すでに図24で説明したように位相差が2λ程度までは周期的に変化し、5λ以上の範囲ではほぼ一定の値に落ち着くという振る舞いを示す。
【0076】
図26において、位相差0.25λと6λのMTF値を比較すると、ほぼ同じ値になっている。これは蒸着膜の膜厚による透過波面位相差が1/4λである場合と、NDフィルターの基板厚による大きな透過波面位相差が発生する場合とで、光学性能に与える影響が同程度であることを意味している。
【0077】
次に、境界前後の領域の濃度差と透過波面位相差の双方の相乗作用が光学性能に与える影響について説明する。
【0078】
図27は境界の前後の領域に濃度差0.5、透過波面位相差0.2λをそれぞれ単独に設定した場合と、同時に設定した場合のMTF計算値を示している。
【0079】
前述したように濃度差がMTF値に与える影響は、濃度の高い領域が絞り開口部を7割から8割覆った状態で最も大きい。一方、透過波面位相差がMTF値に与える影響は、境界前後の領域の開口部を占める面積が等しくなった状態で最も大きい。この2つの条件が同時に発生した場合、その相乗作用で開口部の6割から7割程度を覆った状態で光学性能に与える影響が最も大きくなることを図27は示している。
【0080】
以上、図25〜図27を用いて説明したように、境界の前後の領域の濃度差だけを小さく抑えても、位相差が大きければ光学性能は劣化し、逆に位相差だけを小さく抑えても濃度差が大きければ光学性能が劣化する。そこで、光学性能劣化を極力低減するためには、透過波面位相差と濃度差をバランスよく設定することが必要であることが判る。
【0081】
実際に複数の透過率領域を有するNDフィルターを透過率の異なる薄膜により製造する場合、隣接する薄膜と薄膜との境界部の合わせ目を全てゼロにすることは困難で、微小な「重なり」や「隙間」が製造誤差として発生する。
【0082】
この薄膜の合わせ目の微小な誤差が光学性能にどのように影響するかを図28、図29で説明する。
【0083】
図28、図29は収差のない理想レンズでの絞りF4状態の開口部をフィルターが覆った状態でのバーティカル方向のMTF計算値を示している。
【0084】
図28はF4絞り開口を覆うフィルターの上側半分領域はND0.0(透過率100%)、下側半分領域にND0.5(透過率32%)の薄膜が隣接して成膜されている。
【0085】
ND0.0薄膜とND0.5薄膜との膜厚は同じ光学膜厚に設定し薄膜の合せ目がぴったり一致しているときは透過波面位相差はゼロ波長になるが、薄膜の合せ目に「隙間」「重なり」が生じると透過波面位相差が0.4波長発生するように膜厚を設定した。
【0086】
図28の左側は隣接する薄膜の合せ目に隙間のある状態を示しており、中央は合せ目に「隙間」も「重なり」もない状態、そして右側は薄膜の重なりがある状態を示している。隣接する薄膜の合せ目の「隙間量」「重なり量」の誤差量は、F4絞り開口の面積を円形開口に換算した時の開口直径に対する比率で示している。焦点距離f=4.5mmの理想レンズの直前にフィルターを設定すると、F4換算開口径はφ1.125mmになる、薄膜の合せ目誤差+10%は、薄膜の重なり量0.1125mmに相当する。
【0087】
図28の左側は合せ目誤差として「隙間」が20%空いている状態を示し、右側は「重なり」が20%ある状態を示している。「隙間」も「重なり」もない状態でMTFは最も高く、合せ目誤差が±10%発生すると隙間状態でも重なり状態でもほぼ同程度MTFが劣化することを示している。薄膜の合せ目の誤差により水平方向にスリット状の透過波面位相差の段差が生じる。このスリット状の透過波面位相差が「隙間」側でも「重なり」側でも同様にMTFを劣化させている。
【0088】
図29は上側半分領域にND0.5(透過率32%)の薄膜、下側半分領域にND1.0(透過率10%)の薄膜を成膜したフィルターがF4開口部を覆っている状態を示している。ND濃度条件以外は図28の条件と同条件を設定した。
【0089】
隣接する薄膜の合せ目誤差が「隙間」側と「重なり」側ではMTFへの影響が異なる。重なり側に10%の誤差は発生してもMTF値は50%を維持しているが、「隙間」側に−10%の誤差が発生するとMTF値は10%以下まで劣化してしまう。濃度を有する薄膜と薄膜の間に「隙間」誤差は生じると、隙間部の透過率が高いため、スリット状の強い光が通過する。水平方向のスリット状隙間部を通過する強い光は垂直方向に回折現象を起こすためバーティカル方向のMTF値を大きく劣化させる。一方、「重なり」誤差では、重なり部の濃度が濃くなるためスリット状の重なり部を透過する光は減衰され、MTFへの悪影響が少なくなっていることが判る。図29条件での薄膜合せ目誤差がゼロ状態、隙間誤差−10%状態、重なり誤差+10%状態での点像強度分布を図30、図31、図32に示す。点像強度分布の状態を(a)鳥瞰図、(b)等高線図、(c)側面図で表現している。
【0090】
図30は薄膜の合せ目誤差量がゼロで水平方向のスリット状の透過波面位相差はない状態であるため、回折による上下方向の点像象度の分布は殆んどない。対角方向に4本の筋が伸びているのは、絞り開口が菱形形状のため菱形の各辺の垂直方向に回折の影響で光の筋が現れている様子をあらわしている。
【0091】
図31は薄膜の合せ目誤差量が「隙間」−10%状態での点像強度分布をしめしている。ND0.5膜とND1.0膜の間に水平方向のスリット状に光が抜けているため回折の影響を大きく受けて上下方向に光の筋が伸びている様子が確認できる。
【0092】
次に、薄膜の合せ目誤差量を「重なり」側に+10%発生させた状態での点像強度分布を図32に示す。スリット状の薄膜の重なり部分は濃度1.5になり透過率が少なくなるため、この部分で発生する回折の影響が少なくなり、上下方向の光の筋の伸び方が図31よりも弱くなっていることが確認できる。
【0093】
図31に示すスリット状の隙間誤差による回折光の光の筋の伸びは、MTF値を劣化させるだけでなく、被写体に高輝度点光源があるとその点光源から上下方向に尾を引いた回折ゴーストが発生する。(ここで以後「尾引きゴースト」と称する。)この尾引きゴーストは一般的な輝度の被写体では顕在化しないが、高輝度の被写体では顕著に現れ画質の品位を下げる。
【0094】
特にND濃度の濃い薄膜と薄膜との合わせ目には隙間が発生すると悪影響が大きいため、濃度0.5を超える薄膜と薄膜との合せ目の誤差は0%から5%以下に押えることが望ましい。
【0095】
濃度が薄い薄膜と薄膜との合せ目誤差はMTFへの影響は「隙間」も「重なり」も同程度に発生するのであるが、各薄膜は表面反射を防止する反射防止膜の役割も担っているため、隣接する薄膜と薄膜の間に「隙間」は生じると隙間部分に反射防止効果がなくなり、スリット状に反射率の高い領域ができてしまい、ここでの表面反射がゴーストの原因になるため好ましくない。
【0096】
(実施例1)
本発明の実施例1を図1に示す。図1は本発明を応用した光量調整装置(絞り装置)の実施例である。図1(A)は開放絞り状態で開口部の一部をNDフィルターが覆っている状態、図1(B)は中間絞り状態でNDフィルターのN12領域とN13領域が開口部を覆っている状態、図1(C)は最小絞りでNDフィルターのN3領域が開口部を覆っている状態を示している。
【0097】
図中、S11,S12は絞り開口を形成するための絞り羽根であり、相対的に移動させることによって開口面積を変えることができる。P1はNDフィルター(フィルター部材)である。また、NDフィルターP1は、透過率が小さい(濃度の濃い)領域N13、透過率が次に小さい(透過率が中程の)領域N12、そして透過率の大きい(濃度の薄い)領域N11が基板B1上に形成されている。基板B1には、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル、アクリル樹脂等の合成樹脂フィルムが用いられる。合成樹脂フィルムを使用する主な理由は、比重が軽いことと、薄く加工しても割れにくい点である。基板B1の厚みは100μm〜50μm程度である。
【0098】
NDフィルター部P1を透過する透過波面の様子を図2に示す。図2での各濃度領域N11,N12,N13は、領域N11と領域N12の濃度差、及び領域N12と領域N13の濃度差がいずれも0.5以下となるように、蒸着膜で各透過率を設定している。そして各濃度領域の膜厚及びその材料の屈折率を適宜設定することにより、製造誤差を含めた透過波面位相差が(1/5)λ以下になるようにしている。透過波面位相差が(1/5)λ以下とは、特開平7−63915号公報に開示されたNDフィルター(多層膜の平均屈折率≒1.63)を想定すると、各濃度領域の実際の段差(機械的な膜厚段差)が0.17μm以下に相当する。隣接する蒸着膜N11とN12、N12とN13との合わせ目には隙間が生じないように設定している。実際に生産する場合には加工誤差をゼロにすることは不可能で製造誤差による微小なばらつきが避けられない。製造誤差を考慮し薄膜と薄膜との合せ目の狙い値を若干重なり方向にずらし、製造誤差を含め膜と膜との合せ目には隙間が生じないように設定する。
【0099】
NDフィルターP1の各領域N11,N12は、図3に示すように、フィルム状の基板B1上に3つの役割をもつ蒸着層を有している。すなわち、透過波面位相差を補正するためのベースコート層31、波長によらず均一に透過率を落とすためのND層32、表面反射を防止するARコート層33である。
【0100】
透過波面位相差を補正するためのベースコート層31は、基板B1上にAl2O3やSiO2等の基板B1の屈折率に近い誘電体膜の膜厚を適切に設定し蒸着することで透過波面位相差を補正する。透過率を下げるためのND層32は多層膜で構成し、波長依存性が少なくなるように設定する。ND層32は、各領域N11,N12,N13毎に透過率を変えるため厚さが異なっており、これが透過波面位相差の主要因となっている。ベースコート層31はこれを補正するためのものである。そして最終層として表面反射を防止するARコート層33を蒸着する。ARコート層33はMgF2などの誘電体膜を蒸着している。
【0101】
図24に示した透過波面位相差と白色MTFの関係を参照すると、透過波面位相差が(1/5)λを超えるとMTF値は急激に劣化し、透過波面位相差が(1/4)λから(3/4)λの状態では透過波面位相差が5λ以上発生した状態よりもMTF値が下がってしまう。これは、Fナンバーが大きな状態(絞り開口が小さい状態)で特に顕著であり、Fナンバーが小さな状態(絞り開口が大きい状態)では透過波面位相差が全くない状態と比べてもMTF値の劣化は比較的少ない。
【0102】
本実施例において、図1(A)に示すように絞り開口内に数μm以上の厚みのあるNDフィルターP1の端縁部が存在する状態は、透過波面位相差が5λ以上発生する状態に相当する。しかし、図1(A)のようにFナンバーの小さな場合に、この状態となるように設定しているため、光学性能の劣化は実施上問題ないレベルに抑えられる。
【0103】
一方、図1(B)や(C)のようにFナンバーの大きな場合には、NDフィルターP1が開口全体を覆うように設定し、しかもNDフィルターP1の透過波面位相差が(1/5)λ以下になるように設定しているので、光学性能の劣化を抑制できる。
【0104】
なお、本実施例では透過波面位相差が(1/5)λ以下、すなわち0λ近傍となるように設定しているが、MTF値の低下が許容範囲内であれば、透過波面位相差を1λ近傍又は2λ近傍に設定してもよい。
【0105】
すなわち、透過波面位相差が、
{n±(1/5)}λ(n=0,1,2)
であればよい。
【0106】
そして、NDフィルターP1の各領域N11とN12、N12とN13との蒸着膜との合せ目には隙間がなく、製造誤差を含め膜の重なり量は、絞りF4開口面積の換算直径の0%から+10%以内に設定する。
【0107】
このような構成により、絞り込んだ状態でもMTF値の劣化を最小限度に抑え、画質の向上を図ることができる光量調整装置が実現できる。また、本実施例の光量調整装置をビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮影装置に用いれば、画質の劣化を抑えつつ、画素ピッチの小さな撮像素子を用いることが可能となる。
【0108】
(実施例2)
本発明の実施例2を図4に示す。図4は実施例1と同様に本発明を応用した光量調整装置(絞り装置)の実施例であるが、実施例1とは異なり、絞り羽根とNDフィルターを独立して駆動して光量調整を行う装置の実施例である。
【0109】
図中、S21,S22は開口を形成するための絞り羽根であり、相対的に移動させることによって開口面積を変えることができる。P2はNDフィルターであり、絞り羽根S11,S12とは独立に駆動可能である。本実施例では、図4(a)に示す開放状態から図4(b)に示す所定の絞り状態までは絞り羽根S21,S22で開口を絞ることで光量調整を行い、それ以降は開口面積を固定として、図4(c)に示すようにNDフィルターP2を透過率の大きな領域から透過率の小さな領域の順に開口内に挿入することで光量調整を行なう。
【0110】
NDフィルターP2は、基板B2の一方の面に減光作用のない領域N21、所定の透過率の領域N22が形成され、他方の面に領域N22と同じ透過率の領域N23、領域N22,N23よりも透過率が小さい領域N24が形成されている。したがって、光が領域N21と領域N23を通過する場合に透過率が最も小さく、領域N22と領域N23を通過する場合に透過率が次に小さく、領域N22と領域N24を通過する場合に透過率が最も大きくなる。このように本実施例のNDフィルターP2は、2種類の透過率を有する蒸着ND膜を組合せ、3種類の透過率(濃度)を設定している。そして、領域N21及び領域N23を合わせた濃度と領域N22及び領域N23を合わせた濃度の差、領域N22及び領域N23を合わせた濃度と領域N22及び領域N24を合わせた濃度の差が共に0.5以下となるように設定している。
【0111】
なお、基板B2は実施例1で説明した基板B1と同様のものが用いられる。
【0112】
NDフィルター部P2を透過する透過波面の様子を図5に示す。本実施例でも領域N21,N22,N23,N24の膜厚及びその材料の屈折率を適宜設定することにより、製造誤差を含めた透過波面位相差が(1/5)λ以下(機械的な膜厚段差0.17μm以下)になるようにしている。
【0113】
NDフィルターP2の拡大断面図を図6に示す。本実施例の各領域N21,N22,N23も実施例1の各濃度領域と同様に、ベースコート層61、ND層62、ARコート層63によって構成されている。本実施例において、特徴的なのは減光作用を持たない領域N21がベースコート層61とARコート層63のみによって構成されていることである。本実施例においても、このベースコート層61の膜厚を適切に設定することで、各領域の透過波面位相差が(1/5)λ以下になるように補正している。なお、ベースコート層61、ND層62、ARコート層63に用いられる材料は実施例1と同様である。
【0114】
蒸着膜N21とN22、N23とN24との合せ目には隙間が生じないように、製造誤差を含め膜の重なり量は、絞りF4開口面積の換算直径の0%から+10%以内に設定する。
【0115】
なお、本実施例においても実施例1と同様に、透過波面位相差を1λ近傍又は2λ近傍に設定してもよい。
【0116】
本実施例も実施例1と同様に、絞り込んだ状態でもMTF値の劣化を最小限度に抑え、画質の向上を図ることができる光量調整装置が実現できる。また、本実施例の光量調整装置をビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮影装置に用いれば、画質の劣化を抑えつつ、画素ピッチの小さな撮像素子を用いることが可能となる。
【0117】
(実施例3)
図7は、実施例1,2で説明した光量調整装置を適用した光学系の概略構成図である。
【0118】
図7において、10は屈折系、反射系、回折系等によって構成された撮影光学系、11は光学系10を通過する光を制限し、明るさを調整する絞り、12は光学系10によって形成される被写体像を受光面で受光し電気信号に変換するCCDやCMOS等の撮像素子(光電変換素子)である。本実施例において、絞り11には実施例1や2で説明した光量調整装置を用いている。
【0119】
このように、撮影光学系等の光学系の絞りとして、実施例1,2で説明したような光量調整装置を用いることによって、絞り込んだときのNDフィルターの透過波面位相差とND濃度差そしてND蒸着膜の合せ目誤差による影響を少なくして画質の向上を図ることができ、画素ピッチの小さな撮像素子を用いることが可能となる。
【0120】
(実施例4)
次に実施例3で説明した撮影光学系を用いた撮影装置の実施形態を図8を用いて説明する。
【0121】
図8において、20は撮影装置本体、10は実施例4で説明した撮影光学系、11は実施例1や2の光量調整装置によって構成される絞り、12は撮影光学系10によって形成される被写体像を受光する撮像素子、13は撮像素子12が受光した被写体像を記録する記録媒体、14は被写体像を観察するためのファインダーである。ファインダー14としては、光学ファインダーや液晶パネル等の表示素子に表示された被写体像を観察するタイプのファインダーが考えられる。
【0122】
このように実施例4で説明した撮影光学系をビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像素子上に被写体像を形成するタイプの撮影装置に適用することにより、NDフィルターの透過波面位相差による影響とND濃度差そしてND蒸着膜の合せ目誤差による影響を少なくして画質の向上を図ることができる。また、画素ピッチの小さな撮像素子を用いることが可能となる。
【0123】
以下に本発明のとり得る態様について列挙する。
(態様1)開口を形成するための絞りと、該開口を通過する光の光量を減衰するためのフィルター部材を備えた光量調整装置において、前記フィルター部材は段階的に透過率が異なる複数の領域を有し、該複数の領域のうち隣接する領域の濃度差を0.5以下、該隣接する領域を透過する所定の波長λの光の位相差を{n±1/5}λの範囲とすると共に、該隣接する領域間の境界の隙間が無くなるように、各領域を構成する光学膜の重なり量を絞りF4の絞り開口換算直径に対し0%以上10%以下とすることを特徴とする光量調整装置。
【0124】
但し、濃度=−log(透過率)
n=0,1,2
である。
(態様2)前記フィルター部材は多層膜によって形成された透過率の異なる複数の領域を有することを特徴とする態様1に記載の光量調整装置。
(態様3)前記多層膜は反射を低減させるための層を有することを特徴とする態様2に記載の光量調整装置。
(態様4)前記絞りは複数の絞り羽根によって構成され、該複数の絞り羽根を相対的に移動することによって前記開口の面積が変化することを特徴とする態様1乃至3いずれか1つに記載の光量調整装置。
(態様5)前記フィルター部材は、前記複数の絞り羽根の1つに固定され、前記複数の絞り羽根の相対的な移動に伴って、前記フィルター部材が前記開口を覆う面積が変化することを特徴とする態様4に記載の光量調整装置。
(態様6)前記フィルター部材は、前記複数の絞り羽根とは独立に移動可能であることを特徴とする態様4に記載の光量調整装置。
(態様7)前記所定の波長λは使用波長帯域の中心波長であることを特徴とする態様1乃至6いずれか1つに記載の光量調整装置。
(態様8)前記所定の波長λは550nmであることを特徴とする態様1乃至7いずれか1つに記載の光量調整装置。
(態様9)態様1乃至8いずれか1つに記載の光量調整装置を有することを特徴とする光学系。
(態様10)光電変換素子上に像を形成することを特徴とする態様9に記載の光学系。
(態様11)態様1乃至8いずれか1つに記載の光量調整装置を有する光学系と、該光学系によって形成される像を受光する光電変換素子とを備えることを特徴とする撮影装置。
【0125】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、フィルター部材の微小な厚み成分の影響とND濃度差による影響、そしてND蒸着膜の合せ目誤差による光学性能劣化を低減した光量調整装置を実現できる。
【0126】
また本発明の光量調整装置を、撮像素子に像を形成する撮影装置の撮影光学系に用いれば、画素ピッチの小さな撮像素子であっても良好な画像情報を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の光量調整装置の概略構成図である。
【図2】実施例1の光量調整装置のNDフィルターを透過した波面の位相の様子を示す図である。
【図3】実施例1のNDフィルターの拡大断面図である。
【図4】実施例2の光量調整装置の概略構成図である。
【図5】実施例2の光量調整装置のNDフィルターを透過した波面の位相の様子を示す図である。
【図6】実施例2のNDフィルターの拡大断面図である。
【図7】光量調整装置を備えた光学系の概略構成図である。
【図8】光量調整装置を備えた撮影装置の概略構成図である。
【図9】透過波面位相差が光学性能へ与える影響を説明するための図である。
【図10】位相差(0/4)λのときの単色光の点像強度分布を示した図である。
【図11】位相差(1/4)λのときの単色光の点像強度分布を示した図である。
【図12】位相差(2/4)λのときの単色光の点像強度分布を示した図である。
【図13】位相差(3/4)λのときの単色光の点像強度分布を示した図である。
【図14】位相差(4/4)λのときの単色光の点像強度分布を示した図である。
【図15】位相差(0/4)λのときの白色光の点像強度分布を示した図である。
【図16】位相差(1/4)λのときの白色光の点像強度分布を示した図である。
【図17】位相差(2/4)λのときの白色光の点像強度分布を示した図である。
【図18】位相差(3/4)λのときの白色光の点像強度分布を示した図である。
【図19】位相差(4/4)λのときの白色光の点像強度分布を示した図である。
【図20】位相差5.5λのときの単色光の点像強度分布を示した図である。
【図21】位相差5.5λのときの白色光の点像強度分布を示した図である。
【図22】位相差6.0λのときの単色光の点像強度分布を示した図である。
【図23】位相差6.0λのときの白色光の点像強度分布を示した図である。
【図24】空間周波数50本/mm及び空間周波数100本/mmの白色MTF値と透過波面位相差の関係を示すグラフである。
【図25】絞りF4状態での開口部への濃度段差の境界部掛かり量とMTF変化を示す図である。
【図26】絞りF4状態での開口部への位相差の境界部掛かり量とMTF変化を示す図である。
【図27】絞りF4状態での開口部への濃度段差と位相差の境界部掛かり量とMTF変化を示す図である。
【図28】絞りF4状態での開口部へND0とND0.5薄膜合せ目誤差に対するMTF変化を示す図である。
【図29】絞りF4状態での開口部へND0.5とND1.0薄膜合せ目誤差に対するMTF変化を示す図である。
【図30】絞りF4状態での開口部へND0.5とND1.0薄膜合せ目誤差ゼロでの点像強度分布図である。
【図31】絞りF4状態での開口部へND0.5とND1.0薄膜合せ目誤差−10%での点像強度分布図である。
【図32】絞りF4状態での開口部へND0.5とND1.0薄膜合せ目誤差+10%での点像強度分布図である。
【符号の説明】
S11 絞り羽根
S12 絞り羽根
P1 NDフィルター
N11 NDフィルター上の濃度領域(透過率大)
N12 NDフィルター上の濃度領域(透過率中)
N13 NDフィルター上の濃度領域(透過率小)
B1 基板

Claims (1)

  1. 開口を形成するための絞りと、該開口を通過する光の光量を減衰するためのフィルター部材を備えた光量調整装置において、前記フィルター部材は段階的に透過率が異なる複数の領域を有し、該複数の領域のうち隣接する領域の濃度差を0.5以下、該隣接する領域を透過する所定の波長λの光の位相差を{n±1/5}λの範囲とすると共に、該隣接する領域間の境界の隙間が無くなるように、各領域を構成する光学膜の重なり量を絞りF4の絞り開口換算直径に対し0%以上10%以下とすることを特徴とする光量調整装置。
    但し、濃度=−log(透過率)
    n=0,1,2
    である。
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