JP5478203B2 - 撮像装置 - Google Patents

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本発明は、所定の波長領域の透過を制限するエッジフィルタ又はバンドパスフィルタ等の光学フィルタを有する撮像装置に関するものである。
ビデオカメラ等の撮像装置に使用される固体撮像素子は、人間の眼の感度特性に対応させるために、透過波長を調節する光学フィルタと組み合わせて使用されることが多い。具体的には、UV(紫外線)カットフィルタやIR(近赤外線)カットフィルタのエッジフィルタ、或るいはこれらを1枚のフィルタで実現したUVIRカットフィルタ等のバンドパスフィルタがある。
これらのエッジフィルタやバンドパスフィルタ等の光学フィルタは、所望の波長領域の光の透過を制限するために、透過を制限する領域のフィルタ素材に吸収材料を練り込んだり、基材上に塗布する吸収タイプのものが知られている。また、基材上に複数層から成る蒸着膜を積層することにより、蒸着膜の干渉を利用し反射させる反射タイプのものも知られている。
しかしながら、吸収タイプの光学フィルタにおいては、所望の吸収率を得るためには相応の厚さを必要とし、特にコスト的な要素と、光学系の薄型化の観点等からは、近年では反射タイプのものがより好ましいとされている。
このようなIRカットフィルタ等の光学フィルタにおいて、基材上に複数層から成る蒸着膜を成膜した反射タイプの場合に、透過帯から不透過帯へと遷移する波長領域を理想的に0nmにすることは極めて困難である。多くの場合に、遷移するポイントは50nm前後の波長領域を有し、この間で透過率が100%から0%、或いは0%から100%に変化することになる。
従って、この遷移領域に該当する波長の光においては、例えば特許文献1に記載されているように、少なからず光がフィルタを透過し、透過した光の一部が更に撮像素子面で反射し、再度、撮像素子面側からフィルタ面に入射する。この反射光は上述の遷移領域に該当する波長の光のため、反射タイプのフィルタの場合には一部はフィルタを透過するが、一部はフィルタで再び反射して、撮像素子に到達してしまい、ゴーストとなり画像を著しく劣化させることがある。
簡便には、各波長における入射光の透過率×再入射光の反射率が、光学フィルタにおけるゴースト光となる。このような反射タイプの光学フィルタにおいて、ゴースト光の強度は例えば紫外線側の半値波長や近赤外線側の半値波長において最大となる。撮像素子の感度等によりその影響は様々ではあるが、IRカットフィルタ等の反射タイプの光学フィルタでは原理的に発生する問題であり、特に近年の撮像素子の高感度化により、これらの問題が顕在化されてきている。
これに対して特許文献1においては、ゴーストの発生する波長領域を、IRカットフィルタとは別のカラーフィルタを調節することにより、感度を変更して回避している。また、特許文献2においては、フィルタを光軸に対して傾けて配置することにより、フィルタを透過した光の多重反射によるフィルタへの再入射光の反射を撮像素子に入射する割合を低減し、ゴースト光の発生を低減する方法が開示されている。
特開2002−281515号公報 特開2001−218106号公報
しかしながら、特許文献1に示すカラーフィルタの感度を変更する方法においては、具体的にはエッジフィルタ又はバンドパスフィルタの遷移領域の特性に合わせて感度を低下することになるので、画質が低下し易い。
また、特許文献2に示す光軸から傾けて光学フィルタを配置した場合においては、撮像素子外に反射光が向くようにするために、必要以上のスペースが必要となり、近年における撮像装置の小型化の要求を満足させることができない。
このような課題を解決するために、曲面形状を有する基板に蒸着膜を成膜することも考えられるが、曲面上に均一な蒸着膜を成膜し、フィルタ全域の透過特性を均一に制御することは極めて困難である。更に、曲面形状を有する基板に蒸着膜を成膜するために特別な機構を必要とし、生産性を大きく低減させてしまい、製品コストを増大させてしまうという問題を有している。
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、エッジフィルタ又はバンドパスフィルタ等の光学フィルタの生産性と性能を損うことなく、撮像装置内に大きなスペースも必要とせず、ゴーストの発生を低減できる撮像装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る撮像装置は、入射光を結像させる撮像光学系と、前記入射光が結像する結像面に配置された撮像手段と、前記撮像光学系の一部に配置し、シート状の樹脂基板の上に薄膜を積層して成る薄膜積層構造体を介して所定の波長領域の光線の透過を制限し干渉による反射タイプの光学フィルタとを有し、前記樹脂基板の両面に異なる膜厚の前記薄膜積層構造体をそれぞれ設けることにより凸形状又は凹形状とした前記反射タイプの光学フィルタを、前記凸形状又は凹形状に沿って外力を与えることにより前記入射光の反射ゴースト光の影響が低減するように更に凸形状又は凹形状に変形させてその変形状態を保持し、前記光学フィルタの凸形状又は凹形状の面が前記撮像手段に対向して位置するように前記光学フィルタを配置したことを特徴とする。
本発明に係る撮像装置によれば、複数層の薄膜を積層した干渉膜構成の反射タイプの光学フィルタを凸形状としているので、撮像素子からの反射に起因して発生するゴーストの発生を低減することができる。
また、フィルタの基板に蒸着膜を成膜するための特別な装置を必要としないため、光学フィルタの製造が簡便で、コストの上昇を防止することができる。
実施例1における撮像装置の光学系の構成図である。 樹脂基板にマスクを重ねた状態の平面図である。 UVIRカットフィルタの膜構成図である。 蒸着膜を成膜した後に、光学フィルタを切り抜いた状態の平面図である。 設計上のUVIRカットフィルタの分光透過率特性グラフ図である。 枠体により光学フィルタを変形する場合の説明図である。 枠体と光学フィルタとの配置の説明図である。 実施例2の光学フィルタに圧電体を配置した状態の正面図である。 圧電体の電極の断面図である。 光学フィルタを圧電体により変形した状態の斜視図である。 光量絞り装置の構成図である。
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施例のビデオカメラ等の撮像装置の光学系の構成図を示しており、レンズ1、光量調節部材2、レンズ3〜5、光学フィルタ6が順次に配列され、入射光を撮像手段に導く撮像光学系7が形成されている。そして、この撮像光学系7の後方に、入射光を結像する撮像手段としてCCD等から成る撮像素子8が配置されている。撮像光学系7においては絞り羽根2a、2b等を透過した光線を、光学フィルタ6で撮像手段である撮像素子8の特性に合わせて制限し、適正な画像を得るように構成されている。
光学フィルタ6は干渉による反射タイプのUVIRカットフィルタやIRカットフィルタであり、少なくとも光路中の光学フィルタとして使用する面内で、撮像素子8に対向する面が枠体6aにより凸形状となるようにされている。このとき、光学フィルタ6の透過帯から不透過帯へと遷移する所定の波長領域の光線は、反射タイプのフィルタであることから、一部が光学フィルタ6を透過して、撮像素子8に入射する。そして、撮像素子8の結像面で反射し、再び光学フィルタ6に裏側から入射する。その際に、一部は光学フィルタ6を透過するが、一部は更に光学フィルタ6で反射し、撮像素子8の結像面方向に向かう。
しかし、光学フィルタ6は上述のように撮像素子8に対向する面が凸となるように配置されているため、反射光の向かう方向は撮像素子8の中心から遠去かる方向となる。これにより、有害なゴースト等が少なく、より高精度な撮像装置が実現できる。
なお、光学フィルタ6は撮像素子8に対向する面が凸となるように配置したが、撮像光学系の構成によっては逆の方が良好な場合もあり、よりゴースト等の発生の少ないように配置する方向を決定すればよい。
これらの光学フィルタ6を出し入れ自由に駆動することも可能である。具体的には、撮像光学系7を透過して撮像素子8に結像した光量を判断して、光学フィルタ6を駆動する。入射した光量が通常の撮影に十分な量であるときは、撮像素子8にかかるように光学フィルタ6を移動させる。
光量が不十分なときは、撮像素子8にかからないように光路外に退避させる。光学フィルタ6の有無により、結像する光線に光路差が発生してしまい、画像が劣化してしまうことがあるが、このような場合には光学フィルタ6と同じ基材をダミーとして挿入することにより、画像劣化を低減することができる。
光学フィルタは平板状の樹脂基板に蒸着膜を積層した後に、外力によって凸形状を形成しているため、容易に各層の特性を略均一にでき、良好な光学特性を有する撮像装置が得られる。
図2に示すように、光学フィルタ6の樹脂基板11には板厚0.1mmのノルボルネン系材料であるシート状のノルボルネン系材料であるArton(JSR製、製品名)フィルムが用いられている。樹脂基板11上には樹脂基板11と同じ大きさの素材に複数の孔部12を穿けたマスク13を重ね、樹脂基板11の孔部12内の範囲に複数層から成るUVIRカット膜を積層して光学フィルタ6を製造する。
図3はUVIRカットフィルタである光学フィルタ6の膜構成図を示し、高屈折率材料にはTiO2、低屈折率材料にはSiO2が使用されている。平面状の樹脂基板11上にはSiO2膜21aとTiO2膜21bを交互に積層し、樹脂基板11上の両面にそれぞれ17層/27層を積層し、両面で計47層の膜構成としている。TiO2は屈折率が高く膜設計上有利な材料であるために用いている。また、SiO2は成膜条件によって勿論微妙に異なりはするが、イオンプレーティングによる成膜条件においては、TiO2と膜応力の発生方向が反対になり、屈折率も低く膜設計上有利な材料であるために選択している。
成膜工程においては、先ず縦横共に100mmの正方形状の樹脂基板11の表面に、マスク13を重ねて、17層から成る蒸着膜21を積層する。その後に、樹脂基板11の表裏を代え、表面を蒸着する際に用いたものと同様のマスク13を重ねて、裏面に27層から成る蒸着膜21を積層する。
図4に示すように、樹脂基板11上に複数層から成る蒸着膜21を成膜した後にマスク13を剥し、蒸着膜21を成膜した周囲を切り抜くことにより、光学フィルタ6が製造される。
本実施例においては、樹脂基板11上に蒸着膜21を成膜した後に、何らかの手段を用いて光学フィルタ6を凸形状に変形させる必要があるため、樹脂基板11として板厚が0.1mm以下のシート状のArtonフィルムを選択している。このArtonフィルムはガラス転移温度が100℃以上あり、曲げ弾性率が約3000MPa程度と比較的高く、樹脂基板11の割れやうねりを低減できる理由から選択している。また、本実施例においてはノルボルネン系材料の合成樹脂を使用したが、ポリイミド系の樹脂フィルム等も好適な基材の1つであり、更にはこれらの基材に限らずPETやPEN、PC等を用いてもよい。
本実施例の光学フィルタ6においては、樹脂基板11上に蒸着により複数層の薄膜である蒸着膜21を成膜したが、蒸着以外の物理的成膜方法により成膜してもよいし、スピンコータ等を利用した塗装法を用いてもよい。
また本実施例においては、樹脂基板11にノルボルネン系材料である合成樹脂を用いたことにより、成膜プロセスにおいて、熱に起因した問題が発生する。合成樹脂はガラスと比較して、ガラス転移温度が極端に低く、樹脂基板11と蒸着膜との線膨張係数の差に起因する基板の不規則な反りや、この反りに伴う蒸着膜表面における皺やクラックの発生を生じさせる虞れがある。そのため、成膜中に発生する熱の対策を施す必要があり、耐熱温度の高い基板材料を選択したり、低温のプロセスで成膜する方法を考える必要がある。
本実施例においては、成膜装置に吸熱機構を設け、成膜中に樹脂基板11に発生する熱を強制的に除去する手法を選択している。そこで、成膜プロセスで到達する樹脂基板11上の最高温度を予め測定し、その温度に耐えることができる基板材料を選択する必要がある。
本実施例においては、成膜プロセスの安定性を考慮し、先に実験した到達最高温度に或る程度の許容値を加味し、ガラス転移温度を適性判断のパラメータとし、概ね70℃以上のガラス転移温度を有するノルボルネン系材料を選択している。そして、成膜中は成膜開始から成膜終了までの樹脂基板11の裏面を例えば水温10℃の冷却水を用いて、冷却しながら蒸着を行い温度制御を行っている。その結果、予め樹脂基板11の表面に設置しておいた真空中専用のサーモラベルにより測定したところ、成膜中の最大温度は両面共に60℃以下であり、概ね50℃弱程度であった。
本実施例における成膜方法としては、アシストを付加した他の成膜方法と比べ、比較的膜に起因する応力を小さい値に制御できる理由から、DCパルス重畳型のRFのイオンプレーティング法を採用している。
しかし、成膜中の温度が通常成膜に比べて低くなるため、何らかのアシストを付加したり、スパッタ等の比較的高エネルギで成膜され、膜密度が高くなるプロセスを選択することが好ましい。具体的には、スパッタ法、IAD法、イオンプレーティング法、IBS法、クラスタ蒸着法等が用いられる。成膜方法は膜厚を比較的正確に制御でき、再現性の高い膜を得ることができる成膜方法であればよく、必要とされる膜の性質や、基板を含めた各材料の制約条件等から最適な方法を選択すればよい。
上述の方法により製作したUVIRカットの光学フィルタ6を高温高湿の環境試験を行った結果、1000時間後では環境試験開始前と比較してIR側の半値波長での透過率変化はシフト量が2nm以下となった。同様の環境試験を数サンプルに対して行ったが、全てのサンプルにおいて同様な結果が得られた。
また、光学フィルタ6の外観に関しても良好であり、反りや凹凸、更に皺やクラック等は発生せず、環境試験後も皺やクラック等の発生は確認できなかった。同様に作製された別サンプルにおいて、高温試験を実施したが、1000時間経過後であっても、皺やクラック等の発生は確認できなかった。更に、熱衝撃試験を実施したが、500サイクル経過後であっても、皺やクラック等の発生は確認できなかった。
図5は本実施例1における設計上のUVIRカットの光学フィルタ6の分光透過率特性グラフ図を示している。上述の方法により製作されたUVIRカットフィルタである光学フィルタ6は、設計値と略同様の分光透過率特性を得ることができた。
一般的なUVIRカットフィルタである光学フィルタ6の場合には、図5に示すように可視波長領域から紫外波長領域にかけての所望する波長領域に第1の阻止波長領域を有している。更に、可視波長領域から近赤外波長領域にかけての所望する波長領域に第2の阻止波長領域、第2の阻止波長領域から更に近赤外波長にかけての所望の波長領域に第3の阻止波長領域を有し、3つの阻止波長領域により構成されている。
ここで、1つの阻止波長領域を構成する薄膜積層構造を1つのブロックとして考えると、第1〜第3の阻止波長領域を形成する3つのブロックにより形成される。この3つのブロックそれぞれは異なる中心波長を有し、その波長をλとした場合に、基本的に高屈折率材料と低屈折率材料を交互にλ/4ずつ積層している。所望の光学特性を得るために、各層の膜厚に概ね0.7〜1.3倍程度の微調を加え、積層された構成等が一般的である。
UVIRカットフィルタやIRカットフィルタは比較的積層する膜数が多く、膜応力に起因した反りの問題を引き起こし易く、特に樹脂基板11が合成樹脂の場合には顕著な問題となる。そこで、この問題を低減するために、樹脂基板11の両面に同じ材料、同じ膜厚で積層する場合が平衡がとれ、最も膜応力を低減でき好ましい。
しかし、この場合には蒸着膜21の構成設計が困難となり、樹脂基板11の片面に設計した場合と同じ積層数となるように膜設計を行った場合に、光学特性が大きく犠牲となる可能性が高い。また、光学特性と膜応力の緩和を同時に満足するために積層数が増え、光学フィルタ6の製作の工数アップの要因となる。そこで、或る阻止波長領域を有する薄膜積層構造体を樹脂基板11の両面に分割することが好適である。
このように、通常の平板状の樹脂基板11に薄膜積層体を構成するため、成膜の管理がし易く、光学フィルタ6の平面性を維持でき、また均一な特性とすることができる。なお、ここで云う均一な特性とは、製造時の意図しない要素による透過率の変化であるばらつき等も含んでいる。
本実施例のように、樹脂基板11の表裏両面に成膜する構成の光学フィルタ6の場合に、樹脂基板11の両面での蒸着膜21の膜応力を意図して異ならせることにより、光学フィルタ6を任意形状に変形させることも可能である。
しかし、このような場合に、片面側の膜応力が強くなってしまうことに起因して、成膜プロセス中にうねりを発生しまう虞れがある。また、湿度や熱雰囲気の条件によっては、膜応力が変化して初期形状が変化する可能性を有している。
そのため本実施例においては、光学フィルタ6の製造後に、光学フィルタ6に恒久的に外力を与えることにより、撮像手段である撮像素子8と対向する面が撮像素子8に向かって凸形状となるようにして、撮像装置に組み込むようにしている。
具体的には、製造したUVIRカットフィルタである光学フィルタ6を、図6に示すような湾曲した枠体6aに円柱表面状の凸形状となるように固定する。光学フィルタ6の形状としては、撮像素子8に向かって凸形状、或いは凹形状とすることができ、製品の仕様とゴースト光の発生状態に応じて最適な形状を選択すればよい。
また、本実施例におけるUVIRカットフィルタのように、両面膜構成の場合に膜応力が両面で完全に一致させることは困難であり、製造直後の光学フィルタ6自体も多少なりとも面方向に対して全体的に凹形状、或いは凸形状を有している。従って、枠体6aに固定時に光学フィルタ6に掛かるストレスを考慮すると、例えば図7(a)よりも(b)のように、光学フィルタ6を枠体6aの形状により近い形状で配置し、固定することが望ましい。
なお、枠体6aは周囲の温度や湿度が変化した場合であっても、変形しない材質、構造とする必要がある。場合によっては、或る程度の強度も必要とされるが、製品仕様によって最適な材質や形状を決定すればよい。
実施例2においては、λ=450〜600nm程度の領域を透過領域とし、λ=700nm以降の近赤外光領域の透過を制限する不透過領域を設け、UV側には特に規定を設けないエッジフィルタであるIRカットフィルタを作製した。
実施例1と同様に、樹脂基板11上の両面にSiO2膜21aとTiO2膜21bの交互に積層し、樹脂基板11上の両面17層/27層を積層し、両面で44層膜の構成とする。
実施例2においては、実施例1のように枠体6aには固定せず、図8に示すようにIRカットフィルタである光学フィルタ6の上辺、下辺に沿って長方形状の圧電体(PZT)31を配置し、接着剤で固定する。この際に、図9に示すように圧電体31には、絶縁層32を介して予め電極33a、33bが形成されており、かつ電極配線の都合により電極構造を有する素子を選択している。
この圧電体31の電極33a、33bに電圧を印加し、圧電体31を変位させることにより、光学フィルタ6を図8から図10に示すように変形させることができる。また、この電圧を調整することにより、任意の形状に光学フィルタ6を変形させることができる。
更に、これにフィードバック機構を設ければ、形状の経時的変化等に対応して、系全体としてゴースト光の影響を低減できるように自動的に調整する機構を実現することも可能となる。このフィードバック機構に関しては様々な手法が考えられる。
例えば、撮像素子8で得られる撮影画像をソフト的に解析し、圧電体31の印加電圧を調整することにより、光学フィルタ6の変形量を調整して自動補正する方法や、撮影画像から撮影者が判断し、外部入力により手動操作で補正する方法等が考えられる。また、光学フィルタ6に圧電体31を積層する代りに、光学フィルタ6の表面に圧電膜を直接貼り付けてもよい。
図11はビデオカメラ或いはデジタルスチルカメラ等の撮影系に使用するに適した光量調節部材2の構成図を示している。光量調節部材2はCCDやCMOSセンサから成る撮像素子8への入射光量を制御するために設けられているものであり、被写界が明るくなるにつれ、絞り羽根2a、2bの動作を制御して、より小さく絞り込まれてゆく構造になっている。
このとき、小絞り状態時に発生する像性能の劣化に対する対策として、絞り羽根2aの近傍にはND(Neutral Density)フィルタ41を配置し、被写界の明るさが同一であっても、絞りの開口をより大きくできる構造にしている。
入射光が光量調節部材2を通過し、撮像光学系に入射し、撮像素子8に到達することにより電気的な信号に変換され画像が形成される。
この光量調節部材2内のNDフィルタ41の位置に、NDフィルタ41の代りに実施例1、2において作成した光学フィルタ6を配置することが可能である。或いは、絞り羽根支持板2c、2dに光学フィルタ6を固定するように配置することもできる。光学系の構成によっても異なるが、一般的に撮像素子直前に光学フィルタ6を配置した場合よりも、撮像素子からより離れたこのような位置に光学フィルタ6を配置した方が、ゴーストが問題となることが多い。ただし、本実施例の構成であれば、光量調節部材2に配置した場合であっても、ゴーストを著しく低減することが可能である。
この場合に、光学フィルタ6を配置する位置や、光量調節部材2の機械的な機構にも依存するが、実施例1、2で作製した光学フィルタ6と必要な外形が異なる場合も想定されるが、最適な形状を選択すればよい。
実施例1、2と同様の膜設計、成膜プロセスで、成膜時に使用するマスク13の形状を変更するだけで、同様の光学フィルタ6を作製することが可能である。これにより、作製された光学フィルタ6を撮像光学系に配置することにより、より高精度化が実現できる。
また実施例1、2において、光学フィルタの凸形状は円柱表面状としたが、球面状や楕円球面状とすることもできる。
1、3〜5 レンズ
2 光量調節部材
6 光学フィルタ
6a 枠体
7 撮像光学系
8 撮像素子
11 樹脂基板
21 蒸着膜
21a SiO2
21b TiO2
31 圧電体
41 NDフィルタ

Claims (9)

  1. 入射光を結像させる撮像光学系と、前記入射光が結像する結像面に配置された撮像手段と、前記撮像光学系の一部に配置し、シート状の樹脂基板の上に薄膜を積層して成る薄膜積層構造体を介して所定の波長領域の光線の透過を制限し干渉による反射タイプの光学フィルタとを有し、前記樹脂基板の両面に異なる膜厚の前記薄膜積層構造体をそれぞれ設けることにより凸形状又は凹形状とした前記反射タイプの光学フィルタを、前記凸形状又は凹形状に沿って外力を与えることにより前記入射光の反射ゴースト光の影響が低減するように更に凸形状又は凹形状に変形させてその変形状態を保持し、前記光学フィルタの凸形状又は凹形状の面が前記撮像手段に対向して位置するように前記光学フィルタを配置したことを特徴とする撮像装置。
  2. 前記光学フィルタは湾曲した枠体に固定することによって更に凸形状又は凹形状に変形することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
  3. 前記光学フィルタの少なくとも一部に圧電体又は圧電膜を取り付け、前記圧電体又は前記圧電膜による変位の状態を印加電圧によって調整可能とし、更に凸形状又は凹形状に変形することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
  4. 前記光学フィルタは近赤外波長及び/又は紫外波長領域の光線の透過を制限することを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の撮像装置。
  5. 前記光学フィルタを前記撮像手段に対向する位置に出し入れ可能としたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の撮像装置。
  6. 前記薄膜積層構造体は複数層の薄膜を積層して、中心波長がそれぞれ異なる3つの阻止波長領域を持つように前記樹脂基板の両面にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つの請求項に記載の撮像装置。
  7. 前記薄膜積層構造体は複数層の薄膜を積層して、可視波長領域から近赤外波長領域にかけて複数の阻止領域を持つように前記樹脂基板の両面にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つの請求項に記載の撮像装置。
  8. 前記薄膜積層構造体は複数層の蒸着膜を積層して形成したことを特徴とする請求項1〜7の何れか1つの請求項に記載の撮像装置。
  9. 前記樹脂基板はノルボルネン系材料である合成樹脂から形成したことを特徴とする請求項1〜8の何れか1つの請求項に記載の撮像装置。
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